説明

自脱型コンバインの排ワラ処理部

【課題】 排ワラ結束装置から放出されてきたワラ束を縦向き姿勢の案内板で受け止めて所定姿勢で落下案内するよう構成した自脱型コンバインの排ワラ処理部であって、案内板を強固に支持してワラ束を常に所望の姿勢に案内し、排ワラ結束装置の紐通し作業やワラ詰まりに対する除去作業などを容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 案内板83の左右両端側箇所を、機体側から後向きに延出された左右の支持フレーム81,82の後端部にそれぞれ連結支持し、案内板83の左右一端側においては、案内板83の上端部近くから上下中間部、あるいは、それより下方部位に亘る上下に大きい支持幅をもって案内板83を支持フレーム81の後端部に連結支持するとともに、案内板83の左右他端側においては、案内板83の上端部近くから前記支持幅より小さい支持幅をもって支持フレーム82の後端部に連結支持してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置から横倒れ姿勢で搬送されてきた排ワラを、排ワラ結束装置で所定量づつ結束して機体後方へ放出して機体通過跡に放置してゆくよう構成した自脱型コンバインの排ワラ処理部に関する。
【背景技術】
【0002】
上記排ワラ処理部としては、例えば特許文献1に示されるように、脱穀装置から横倒れ姿勢で搬送されてきた排ワラを、排ワラ結束装置で所定量づつ結束して機体後方へ放出するとともに、放出されたワラ束を幅広の案内板で受け止めて、回収しやすい所定姿勢で落下案内するよう構成したものが知られている。
【特許文献1】特開平7−184467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、排ワラを結束処理する自脱型コンバインにおいては、ワラ束数を少なくして回収処理を容易に行うためにワラ束の大束化が進んでおり、そのために、排ワラ結束装置から勢いよく放出される重量の大きいワラ束は案内板に大きい衝撃をもって受け止められることになり、ワラ束受け止め衝撃を繰り返し受けているうちに案内板が変形したり向きが変わってしまい、放出されたワラ束の地上での姿勢が変化してしまうおそれがあった。
【0004】
排ワラ結束装置においては、結束紐の交換および紐通し作業や結節機構に詰まったワラ屑の除去作業が行われるが、このような作業において結束装置の後方に配備された案内板が邪魔になりやすいものであった。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、案内板を強固に支持してワラ束を常に所望の姿勢に案内することができるとともに、排ワラ結束装置の結束紐の交換および紐通し作業や、ワラ詰まりに対する除去作業などを容易に行うことができる排ワラ処理部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、脱穀装置から横倒れ姿勢で搬送されてきた排ワラを排ワラ結束装置で所定量づつ結束して機体後方へ放出するとともに、放出されたワラ束を縦向き姿勢の案内板で受け止めて所定姿勢で落下案内するよう構成した自脱型コンバインの排ワラ処理部であって、
前記案内板の左右両端側箇所を、機体側から後向きに延出された左右の支持フレームの後端部にそれぞれ連結支持し、案内板の左右一端側においては、案内板の上端部近くから上下中間部、あるいは、それより下方部位に亘る上下に大きい支持幅をもって案内板を支持フレームの後端部に連結支持するとともに、案内板の左右他端側においては、案内板の上端部近くから前記支持幅より小さい支持幅をもって支持フレームの後端部に連結支持してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、案内板は、その左右両端側においてそれぞれ支持フレームに連結支持されているので、左右の中央一箇所で連結支持される場合に比べて案内板の横向姿勢が強固に確保され、ワラ束の受け止めによって大きい衝撃力が案内板に作用しても、案内板の横向姿勢が変わることはなく、受け止めたワラ束の横向姿勢を一定にして案内放出することができる。
【0008】
案内板の左右一端側においては、上下に大きい支持幅をもって支持フレームに連結支持されているので、案内板が大きい受け止め衝撃力で後方に変形するおそれがなく、受け止めたワラ束の下方への案内機能が変化することはない。
【0009】
案内板の左右他端側は、案内板の上端部近くから小さい支持幅をもって支持フレームの後端部に連結支持されていて、この側の支持フレームが高い位置にあるので、支持フレームに邪魔されることなく、作業者が排ワラ結束装置と案内板の間に入り込んで詰まり除去作業や紐通し作業を容易に行うことができる。
【0010】
従って、第1の発明によると、案内板を強固に支持してワラ束を常に所望の姿勢に案内することができるとともに、排ワラ結束装置の結束紐の紐通し作業や、ワラ詰まりに対する除去作業などを容易に行うことができる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
排ワラ結束装置から放出されたワラ束を、前記案内板の上下に大きい支持幅の範囲で受け止めるよう構成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、ワラ束の受け止めによって大きい衝撃力が案内板に作用しても、案内板が後方に変形することを確実に防止することができ、第1の発明の上記効果を助長する。
【0013】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記案内板の排ワラ穂先側において前記案内板を上下に大きい支持幅をもって連結支持するとともに、案内板の排ワラ株元側において案内板の上端部近くから前記支持幅より小さい支持幅をもって連結支持してあるものである。
【0014】
上記構成によると、排ワラ結束装置における排ワラ詰まりの除去作業は、排ワラ株元側から排ワラ結束装置と案内板の間に作業者が入り込むことになるが、排ワラ株元側は、排ワラ搬送装置の詰まり除去作業を行う側でもあり、排ワラ搬送系から排ワラ結束装置の間での詰まり除去や清掃作業を行う際に作業者が大きく動き回る必要がなく、作業を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、自脱型コンバインの全体側面が、図2に、機体後部における排ワラ処理部の側面が、図3に、排ワラ処理部の平面がそれぞれ示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に複数条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、アンローダ付きの穀粒回収タンク6、等が搭載されてコンバイン本機Aが構成されている。
【0016】
刈取り部3には、刈取り部フレーム7が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム7の後端基部が、走行機体2の前端部に立設された支持台8に横向きの支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されるとともに、油圧シリンダ9で上下に駆動揺動されるようになっている。
【0017】
刈取り部フレーム7には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す複数台の引起し装置10、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置11、刈取り穀稈を刈幅内の中間部位に搬送して合流する合流用搬送装置12、および、合流された穀稈を脱穀装置5の横外側に備えられたフィードチェーン13の始端部にまで搬送する供給搬送装置14、等が備えられている。
【0018】
前記供給搬送装置14は、穂先係止搬送機構15と、株元挟持搬送機構16と、フィードチェーン13の前方に配備された中継搬送機構17とで構成されており、合流用搬送装置12で合流搬送された立姿勢の穀稈は、供給搬送装置14で後方上方に搬送されながら横倒れ姿勢に変更されてフィードチェーン13の始端部に受け渡されるようになっている。
【0019】
前記株元挟持搬送機構16は、前部支点を中心に上下揺動して搬送終端位置を変更することで、フィードチェーン13への穀稈受け渡し位置を稈長方向に変更して脱穀装置5への穀稈挿入長さを変更調節する機能、いわゆる扱き深さ調節機能が備えられており、搬送される穀稈の長さが図示されない稈長検出手段で検出され、その検出情報に基づいて株元挟持搬送機構16が自動的に位置変更され、刈取り穀稈の稈長変化にかかわらず脱穀装置5への穀稈挿入長さを設定された長さに安定維持する自動扱き深さ制御が実行されるようになっている。
【0020】
図2,図3に示すように、脱穀装置5の後部上方には、フィードチェーン13で挟持されて扱室から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラを受け取って後方かつ穂先側(機体右方)に向けて斜めに搬送する排ワラ搬送装置20が設けられている。この排ワラ搬送装置20は、縦回し巻回された搬送チェーン21の下側径路に対向して挟持レール22を配備したアッパーチェーン型の株元側搬送機構20Aと、その穂先側に平行に配備された穂先側係止搬送機構20Bとで構成されている。
【0021】
脱穀装置5の後端に円盤型の排ワラカッタCが連結されるとともに、この排ワラカッタCの後方に排ワラ結束装置Bが配備され、排ワラ結束装置Bの株元側に、搬入されてくる排ワラの株端を左右に揺動する叩き板61によって叩き揃える株揃え装置Dが配備されている。さらに、排ワラ結束装置Bの後方には、放出されてきたワラ束Rを受け止めて横向姿勢で落下させて圃場に放置してゆく放出案内機構Eが配備されている。
【0022】
図4に示すように、排ワラカッタCの上部には、後支点aを中心に上下揺動可能に流路切換え板30が配備されており、この流路切換え板30を下げて排ワラカッタCの上部入口を閉塞することで、排ワラ搬送装置20によっ搬送されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ結束装置Bに供給し、流路切換え板30を上げて排ワラカッタCの上部入口を開放することで、搬送されてきた排ワラを細断して下方に放出することができるようになっている。
【0023】
前記排ワラ結束装置Bは、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラを所定量づつ収集して結束し、結束されたワラ束を機体後方に放出するものであり、排ワラ穂先側に配備された縦長の伝動ケース31の上下中間部位に排ワラを収集する集束空間Sが形成されている。
【0024】
前記集束空間Sの下側となる伝動ケース31の下部には、搬送されてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むクランク式の掻き込みパッカー32、結束紐供給用のニードル33、集束空間Sに集められた排ワラの集束圧を機械的に感知する感知ドア34、等が装備されるとともに、集束空間Sの上側となる伝動ケース31の上部には、搬送されてきた排ワラを掻き込みパッカー32の作用域に送り込むクランク式の補助パッカー35、集束空間Sの上壁を構成する紐案内板36、ノッタ・ビル方式に構成された周知の結節機構37、クランク式の放出機構38が装備されている。前記補助パッカー35および掻き込みパッカー32は常時駆動されるとともに、下部のニードル33と上部の結節機構37、および、放出機構38は集束圧感知に基づいて間欠的に同調駆動されるようになっている。
【0025】
上記排ワラ結束装置Bの基本的な結束作動を以下に説明する。搬送されてきた排ワラは、先ず補助パッカー35によって後方に送り込まれ、引き続き掻き込みパッカー32の掻き込み作用を受けて集束空間Sに送り込まれる。感知ドア34に作用する集束圧が設定値未満の間は、ケース内装の1回転クラッチ(図示せず)が切られており、ニードル33は集束空間Sの下方に退避した待機位置で停止している。また、このニードル33に同調連動されている結節機構37および放出機構38も待機状態で停止している。
【0026】
集束空間Sに所定量の排ワラが集束されると、掻き込みパッカー32の掻き込み作動に伴って発生した設定値以上の集束圧を受けて感知ドア34が後退変位し、これによって1回転クラッチが起動可能状態になる。そして、次回の掻き込みパッカー32の掻き込み作動(最終回の掻き込み作動)に同調して所定のタイミングで1回転クラッチが入り作動してニードル33が駆動開始されるとともに結節機構37への駆動力伝達が開始される。
【0027】
掻き込みパッカー32が最終回の掻き込み作動を行うと、排ワラ搬送通路を横断する掻き込みパッカー32で排ワラを前後に押し分けた空間を通ってニードル33が排ワラ搬入経路を下から上に横断移動し、結節機構37の下方に配備されている紐案内板36を通過し、結節機構37の紐ホルダー37bに先端部が保持されている結束紐を集束空間Sの排ワラに前方から巻き付けながら結節機構37に供給する。そして、このニードル33による紐供給作動に同調して結節機構37が作動し、結節ビル37aによる紐の結節、紐ホルダ37bによる供給紐の切断および切断端の保持、等の結節作動が順次行われる。
【0028】
その後、結節機構37と同調作動する放出機構38の放出アーム39が結束ワラを後方に押し出し移動させ、これに伴って結束紐が結節ビル37aから抜き出されて結び目が形成され、引き続く放出アーム39の後方移動によってワラ束が集束空間Sから後方に放出されてゆく。なお、この時点では感知ドア34は下方に後退して集束空間Sの後部出口を開放している。
【0029】
結節機構37で結節作動が完了して結束紐の新しい切断端が紐ホルダー37bにくわえ込み保持されるとニードル33は後退移動し、ニードル33が集束空間Sの下方の待機位置に戻った時点で1回転クラッチが自動的に切られ、ニードル33の駆動、結節機構37の駆動、および、放出機構38の駆動が停止されるとともに、感知ドア34が集束空間Sの後端を閉じる元の感知位置に上昇復帰し、これで1回の結束作動が完了し、後続の排ワラが引き続き集束されてゆく。
【0030】
前記ニードル33には待機位置に向けて復帰回動させる戻しバネ40が装着されており、待機位置に戻って駆動が解除されたニードル33がその復帰作動の反動で上方に回動することが抑制されている。
【0031】
排ワラ結束装置Bの穂先側下方には図示されない巻き紐を横向き姿勢で収容する円筒状の紐ケース24が配備されている。この紐ケース24の穂先側(右側)は開閉可能に構成され、巻き紐を挿抜することができるようになっている。紐ケース24の株元側(左側)は蓋板24aで閉塞されており、この蓋板24aの中心に、収容した巻き紐から繰出した結束紐を導出する紐繰出し孔25が形成されている。蓋板24aの外側面には、紐ブレーキ26、紐案内ローラ27、図示されない弛み取り杆、等が装備されるとともに、紐通し管28の入口側の端部が連結支持されている。
【0032】
前記紐繰出し孔25から外部に引き出された結束紐は紐ブレーキ26に通されて適度の繰出し抵抗が与えられた後、紐案内ローラ27および図示されていない弛み取り杆に案内されて紐通し管28の入口に挿入される。図9に示すように、蓋板24aに設けた支持ブラケット23に支軸18が固定され、この支軸18に軸受けブッシュ19を介して紐案内ローラ27が遊転自在に支承されている。この紐案内ローラ27は鉄材を切削加工して形成されており、結束紐hとの摺接によって摩耗することなく長期間に亘って好適な巻き掛け案内作用を発揮する。なお、支持ブラケット23には、板バネ材からなる外れ止め片29が片持ち状に装着されており、外れ止め片の遊端を撓ませながら結束紐hを紐案内ローラ27の周溝に導き入れることができるようになっている。
【0033】
前記紐通し管28の出口端は、待機位置にある前記ニードル33の先端近くに延出されており、紐通し管28の出口端から導出した結束紐をニードル33の先端に形成されている図示されない紐通し孔に通した後、集束空間Sを下から上へ横断させて紐案内板36に挿通し、紐案内板36の上方に位置する結節機構37の紐ホルダ37bにくわえ込ませることになる。
【0034】
以上のように構成された排ワラ結束装置Bにおける各部の詳細な構成を以下に説明する。
【0035】
図5に示すように、最初に排ワラを掻き込み搬送する補助パッカー35は、ニードル33が位置する結束作用位置に対して排ワラ株元側に離れた位置で作用する株元側補助パッカー35Aと、結束作用位置に対して排ワラ穂先側に離れた位置で作用する穂先側補助パッカー35Bとで構成されている。株元側補助パッカー35Aおよび穂先側補助パッカー35Bは、それぞれ、横向きに支架されて常時回転駆動されるクランク軸41、このクランク軸41の両端に連結された左右一対のクランクアーム42、装置固定部に支点bを中心にして前後揺動可能に装着された揺動アーム43、および、クランクアーム42の遊端と揺動アーム43の遊端とに亘って枢支連結された板材製のパッカーアーム44とから構成されている。クランクアーム42の回転に伴うクランク作動によってパッカーアーム44の先端が前後に長い回動軌跡をもって循環回動することで、排ワラを掻き込みパッカー32の作用域に向けて搬送するようになっている。
【0036】
前記クランク軸41には、クランクアーム径よりも大径に構成された円形ドラム状の回転体45が取り付けられ、クランク構造部にワラ屑などが巻き付くことが阻止されている。回転体45がクランク軸41と一体に回転することで、回転体45の外周面が排ワラを後方に送込む機能を発揮する。
【0037】
なお、図7,図8に示すように、排ワラ株元側で作用する補助パッカー35におけるパッカーアーム44の内、穂先側に位置するパッカーアーム44は左右2連式に構成されている。排ワラ穂先側で作用する補助パッカー35におけるパッカーアーム44は、排ワラ搬送装置20によって斜め後方に搬送された排ワラが搬送の勢いで穂先側にずれ動くことを掻き込み係止作用によって抑制する機能を発揮し、株元側の大きいボリューム箇所で結束作用が行われて過剰ボリュームによるロックが発生することが未然に防止される。
【0038】
左右のパッカーアーム44の間には、リミットスイッチからなる排ワラ存否センサ46が回転体の外径内に隠されて配備されている。この排ワラ存否センサ46は、排ワラ搬入経路に突入して前後に揺動偏位する感知レバー47によって操作されるようになっており、感知レバー47が搬送排ワラに押されて後方に揺動することで排ワラの存在が感知され、排ワラの存在が感知されている間は、後述するように、搬入されてくる排ワラの株端位置検出に基づいて、前記株揃え装置Dが自動的に排ワラ稈長に対応した最適な叩き位置となるように電動モータ48によって左右ネジ送り制御され、また、排ワラ搬入が途絶えたことが感知レバー47の前方復帰によって感知されると、株端位置の検出情報に関係なく株揃え装置Dは現在位置に保持されるようになっている。
【0039】
前記集束空間Sの下側に、供給されてきた排ワラを下方から受け止めるように丸棒材からなる排ワラ支持部材50がニードル33の移動軌跡の横側に近接して配備固定されている。この排ワラ支持部材50は集束空間Sの後後部出口から前部入口を越えて前方にまで延出されるとともに、排ワラ支持部材50の収束空間始端部に相当する部位で、かつ、ニードル33の通過軌跡の直後に位置させて落込み段差部50aが屈曲形成されている。
【0040】
この構成によると、排ワラ結束装置Bの入口部に供給されてきた排ワラは下方から排ワラ支持部材50で受け止め支持され、その後、掻き込みパッカー32の掻き込み作用を受けて集束空間Sに押し込み供給されることになるが、集束空間Sは、排ワラ支持部材50の落込み段差部50aよって上下幅が大きくなっているので、掻き込みパッカー32で集束空間Sに押し込み供給された排ワラは落込み段差部50aにおいて落ち込むことになり、それより前方(集束空間の入口方向)への逆流が落込み段差部50aによって阻止される。
【0041】
排ワラ支持部材50より排ワラ株元側には平板からなる搬送デッキ51が配備されるとともに、この搬送デッキ51の排ワラ受け止め高さが、排ワラ支持部材50の落込み段差部50aの底面よりも更に低い位置に設定されており、落込み段差部50aを越えて集束空間Sに送込まれた排ワラの株元側が低い搬送デッキ51で下方から受け止め支持される。このように、穂先側に比べて嵩高い株元側が搬送デッキ51で低く受け止められることで、大量の排ワラを崩れ動くことなく安定して集束することができるようになっている。
【0042】
集束空間Sの上方には、湾曲板バネ材からなる分離バネ52と支持バネ53がそれぞれ後ろ向き片持ち状に配備されている。支持バネ53は搬送デッキ51に対向して配備されて、集束中の排ワラを集束空間Sの後部において受け止めるものであり、集束作動中は排ワラが集束空間Sから後方に逃げるのを阻止するとともに、ワラ束放出時には上方に撓んで逃げることができる。また、分離バネ52は支持バネ53よりも株端側に配備されており、集束空間Sに掻き込み供給される排ワラの通過を上方への弾性変形によって許容するが、ワラ束が放出される際に、結束されていない後続の排ワラがワラ束に引きずられて出て行くのをバネ先端で掻き取り阻止する。
【0043】
図7に示すように、集束空間Sの上方に位置する紐案内板36の下面には排ワラ持ち込み防止用のリブ36aが左右一対突設され、この一対のリブ36aの間にニードル通過孔36bが形成されている。そして、この紐案内板36に下方から対向するように前記掻き込みパッカー32が配備されている。
【0044】
図7に示すように、掻き込みパッカー32は、前後幅広に形成された左右一対のパッカーアーム32a,32bと、棒材からなる掻き込みアーム32cを備えており、両パッカーアーム32a,32bが紐案内板36における左右の前記リブ36aの外側において案内板下面に対向配備されるとともに、掻き込みアーム32cは前記搬送デッキ51よりも排ワラ株元側に離れた位置で作用するように株元側のパッカーアーム32bから延出されている。
【0045】
パッカーアーム32a,32bの中間部が、常時回転するパッカー駆動軸54に固着したクランクアーム55の遊端部に枢支連結されるとともに、装置固定部に支点c回りに揺動可能に装着した揺動アーム56の遊端部とパッカーアーム32a,32bの下端部とが枢支連結され、クランクアーム55の連続回転によってパッカーアーム32a,32bの先端が所定の軌跡Pa,Pbをもって循環回動して、前記補助パッカー35で送り込まれてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むよう構成されている。
【0046】
株元側パッカーアーム32bの先端が穂先側パッカーアーム32aの先端よりも低く設定され、穂先側パッカーアーム32aの先端軌跡Paが紐案内板36のリブ36aの下端より上方にまで及ぶのに対して、株元側パッカーアーム32bの先端軌跡Pbは紐案内板36のリブ36aの下端近くを通過するようになっている。これによると、穂先側パッカーアーム32aの先端軌跡Paと紐案内板36の下面との最小間隔t1よりも、株元側パッカーアーム32bの先端軌跡Pbと紐案内板36の下面との最小間隔t2が大きいものとなるので、各パッカーアーム32a,32bの先端部で排ワラが紐案内板36の近くにまで掻き込まれた際、嵩高い排ワラ株元側が過剰な力で紐案内板36およびリブ36aに押付けられることがなくなり、高流量の排ワラ搬送が行われても、掻き込みパッカー32と紐案内板36との間で排ワラ噛み込みロック現象が未然に回避されるようになっている。
【0047】
前記ニードル33は、ドア軸57を中心にして回動可能に装着されるとともに、ニードル駆動軸58に設けられた駆動アーム59とニードル33とが連動リンク60で連動連結されており、ケース内装の1回転クラッチが入れられることでニードル駆動軸58が起動され、駆動アーム59が1回転する内の前半の回転によってニードル33は待機位置から上方に揺動して集束空間Sを越え紐供給作動を行い、駆動アーム59の後半の回転によってニードル33が下方に揺動して元の待機位置にまで復帰作動するよう構成されている。
【0048】
次に、前記株揃え装置Dについて説明する。
【0049】
図8に示すように、株揃え装置Dは、集束空間Sの株元側に縦向き姿勢で配備した前後および上下に幅広の叩き板61を、その前端の縦向き支点dを中心にして左右揺動させるよう構成したものであり、叩き板61を脱着可能に連結した丸パイプ製の支持アーム62の前端が前記縦向き支点dに枢支連結されるとともに、支持アーム62の前後中間部が、六角駆動軸63によって縦軸心e周りに回転駆動されるクランクアーム64に連動連結されている。六角駆動軸63は、排ワラ結束装置Bにおける株元側のサイドフレーム65に横架支承されて排ワラカッターCから動力を受けており、この六角駆動軸63の左右2組の補助パッカー35(35A,35B)を駆動するクランク軸41とがそれぞれチェーン66を介して連動されている。
【0050】
前記六角駆動軸63には駆動ケース67が左右スライド可能に外嵌装着されており、六角駆動軸63にベベルギヤ連動されて駆動ケース67の下方に突出された縦向きクランク軸68の下端に前記クランクアーム64が連結されている。前記叩き板61を連結支持した支持アーム62には前後長孔69aを備えた連動部材69が連結され、クランクアーム64の遊端ローラ70が前後長孔69aに係合され、クランクアーム64の回動に伴って支持アーム62が一定の角度で左右に揺動されるようになっている。
【0051】
前記駆動ケース67にはブラケット71が連結されており、このブラケット71から前向き片持ち状に延出された支持フレーム72の前部に、前記支持アーム62の前端が前記縦向き支点d周りに揺動可能に枢支連結されている。
【0052】
前記ブラケット71の上部に装着された一対の遊転ローラ73,74が、排ワラ結束装置Bの前端上部に横架固定された角パイプ製の結束フレーム75の下面および背面に転動可能に接触案内されており、株揃え装置D全体が一定の姿勢を維持した状態で六角駆動軸63に沿って左右に移動可能に支持されている。
【0053】
図5に示すように、前記結束フレーム75の株元側端部(左端)に連結された前記サイドフレーム64に、前記電動モータ48によって正逆駆動されるネジ軸76が横架装備され、このネジ軸76が、前記ブラケット71に連結された雌ネジ部材77に挿通されており、ネジ軸76の正逆回動によって株揃え装置D全体が排ワラ稈長方向(左右方向)にねじ送り移動されるようになっている。
【0054】
株揃え装置Dにおける前記支持フレーム72の前部には株端位置検出センサS1が装着されている。この株端位置検出センサS1は、所定の小間隔をもって前後揺動可能に配備された一対の接触子78の揺動をそれぞれリミットスイッチ79で検知するよう構成されており、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラの株端が両接触子78の間に位置するように、リミットスイッチ79の作動状態に基づいて前記電動モータ48が駆動制御されるようになっている。
【0055】
つまり、穂先側(右側)の接触子78だけが排ワラに押圧されて後方に揺動され、穂先側のリミットスイッチ79だけがオン操作されている状態では、排ワラの株端が両接触子78の間に位置しており、この状態が株揃え装置Dが株端に対して好適な位置にあるものとされ、電動モータ48は停止している。両方の接触子78が排ワラに押圧されて後方に揺動され、両方のリミットスイッチ79がオン操作されている状態では、排ワラの株端が叩き揃え好適位置よりも株元側に外れており、株揃え装置Dを株元側に移動させる方向に電動モータ48が作動される。両方の接触子78が排ワラに押されることなく前方復帰位置にあり、両方のリミットスイッチ79がオフ状態にある状態では、排ワラの株端が叩き揃え好適位置よりも穂先側に外れており、株揃え装置Dを穂先側に移動させる方向に電動モータ48が作動される。
【0056】
次に、前記放出案内機構Eの構造について説明する。
【0057】
図2,図3に示すように、放出案内機構Eは、排ワラ結束装置Bの上部左右箇所から後向きに延出された支持フレーム81、82の後端部に縦向き姿勢の案内板83を連結して構成されている。
【0058】
排ワラ穂先側の支持フレーム81は、排ワラ結束装置Bの前記伝動ケース31に前端部を連結した2本の縦向き板材で構成されており、各支持フレーム81の後端部が屈折されて、案内板83における右側上端部と上下中間箇所の右端部とを大きい上下支持幅でもって連結支持している。他方、排ワラ株元側の支持フレーム82は、前記結束フレーム75に前端部を連結した縦向き板材で構成されており、その後端部が、案内板83における左側上端部を小さい上下支持幅でもって連結支持している。
【0059】
案内板83は、矩形に裁断した金属あるいは硬質樹脂の板材を、その上下中間で前向きに凹入する折り目mを形成して剛性が高められており、排ワラ結束装置Bから放出されてきたワラ束Rは、穂先側の支持フレーム81による上下支持幅の中間において受け止められ、機体進行方向と直交する横向き姿勢に案内されて地上に放置されてゆく。
【0060】
結束紐の補給は紐ケース24の排ワラ穂先側を開放して行われ、排ワラ結束装置Bの結節機構37などにワラ詰まりが発生すると、作業者が排ワラ結束装置Bと案内板83との間に入り込んで詰まり除去作業を行うことになる。この場合、作業者は、支持フレーム82が高い位置にある排ワラ株元側から排ワラ結束装置Bと案内板83との間に入り込ことで、大きく屈みこむことなく作業空間に入り込むことができる。
【0061】
〔他の実施例〕
(1)前記案内板83を大きい上下支持幅で連結する支持フレーム81は、少なくとも案内板83を連結支持する後端部を上下幅広く構成した単一のフレーム材で構成することもできる。
(2)前記案内板83の左右中間部位の上端部を、排ワラ結束装置B側から後方に延出された別の支持フレームの後端に連結して、更に高い強度で案内板83を支持する形態で実施するもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】排ワラ処理部の側面図
【図3】排ワラ処理部の平面図
【図4】排ワラ処理部における排ワラカッタと排ワラ結束装置を示す側面図
【図5】排ワラ結束装置および株揃え装置を示す背面図
【図6】排ワラ結束装置の側面図
【図7】排ワラ結束装置の要部を示す一部切欠き背面図
【図8】株揃え装置の側面図
【図9】結束紐案内構造の断面図
【符号の説明】
【0063】
5 脱穀装置
81 支持フレーム
82 支持フレーム
83 案内板
B 排ワラ結束装置
R ワラ束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置から横倒れ姿勢で搬送されてきた排ワラを排ワラ結束装置で所定量づつ結束して機体後方へ放出するとともに、放出されたワラ束を縦向き姿勢の案内板で受け止めて所定姿勢で落下案内するよう構成した自脱型コンバインの排ワラ処理部であって、
前記案内板の左右両端側箇所を、機体側から後向きに延出された左右の支持フレームの後端部にそれぞれ連結支持し、案内板の左右一端側においては、案内板の上端部近くから上下中間部、あるいは、それより下方部位に亘る上下に大きい支持幅をもって案内板を支持フレームの後端部に連結支持するとともに、案内板の左右他端側においては、案内板の上端部近くから前記支持幅より小さい支持幅をもって支持フレームの後端部に連結支持してあることを特徴とする自脱型コンバインの排ワラ処理部。
【請求項2】
排ワラ結束装置から放出されたワラ束を、前記案内板の上下に大きい支持幅の範囲で受け止めるよう構成してある請求項1記載の自脱型コンバインの排ワラ処理部。
【請求項3】
前記案内板の排ワラ穂先側において前記案内板を上下に大きい支持幅をもって連結支持するとともに、案内板の排ワラ株元側において案内板の上端部近くから前記支持幅より小さい支持幅をもって連結支持してある請求項1または2記載の自脱型コンバインの排ワラ処理部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−48701(P2008−48701A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230676(P2006−230676)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】