説明

自脱型コンバイン

【課題】運転部からの前方下方の視界性を向上させることができ、コンパクトなコンバインを実現する。
【解決手段】自脱型コンバインにおいて、刈取り部3の運転部側引起し装置9Rを、正面視で運転部4と重なる位置に配設すると共に、運転部側引起し装置9Rの上下中央部又は下部に、刈取り部フレーム29基端部から前方に延出された運転部側引起し伝動軸52を接続し、運転部側引起し伝動軸52からの動力を、運転部側引起し装置9Rの背部に沿って配設された伝動機構を介して、運転部側引起し装置9R上部の入力軸59に伝達し、運転部側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の右又は左の側部に備えられた運転部と、走行機体の前部に横向き支点周りに上下揺動可能に連結支持されて刈取り部を支持する刈取り部フレームとを備えた自脱型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンからの動力が縦伝動パイプ(特許文献1の図5の36)内の縦伝動軸52を介して横伝動パイプ(特許文献1の図4の37)内の横伝動軸(特許文献1の43)に伝達され、この横伝動軸に伝達された動力が横伝動パイプ(特許文献1の図4の37)から支持パイプ(特許文献1の図5の39)に内装された引起伝動軸(特許文献1の図6の44)に伝達されて、引起伝動軸に連動連結された引起スプロケット軸(特許文献1の図6の46)が回転し右の穀稈引起ケース(特許文献1の図4の22a)の引起タイン(特許文献1の図4の22a)が回転駆動するように構成された自脱型コンバインが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−74952号公報(図2,図3,図4,図5,図6,段落番号「0033」の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自脱型コンバインでは、横伝動パイプからの動力が斜め上方前方向きに配設された支持パイプを介して穀稈引起ケースの上部に接続されている。従って、穀稈引起ケースを正面視で運転部(特許文献1の図3の10)と重なる位置に配設すると、支持パイプが運転部の前方に位置することになり、支持パイプが刈取前処理装置(特許文献1の図3の3)を運転部に近づける妨げになって、刈取前処理装置を運転部に近づけることが困難であった。その結果、刈取前処理装置が運転部に着座した運転者からの前方下方の視界を妨げることになり、刈取前処理装置の前部に位置する分草体(特許文献1の図3の15)等が見え難くなって、作物と分草体との位置決め等が行い難く、刈取作業の作業性が悪くなり易いといった問題があった。
【0005】
また、刈取前処理装置が運転部から前方に離れた位置に配設されていると、コンバインの全長が長くなって、例えばコンバインを運搬する際や保管する際等に、コンバインを運搬するトラック等の荷台やコンバインを保管するスペースを広く確保する必要があるといった問題があった。
本発明は、運転部からの前方下方の視界性を向上させることができ、コンパクトなコンバインを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、自脱型コンバインを次のように構成することにある。
走行機体の右又は左の側部に備えられた運転部と、走行機体の前部に横向き支点周りに上下揺動可能に連結支持されて刈取り部を支持する刈取り部フレームとを備え、
前記刈取り部の運転部側引起し装置を、正面視で前記運転部と重なる位置に配設すると共に、
前記運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に、前記刈取り部フレーム基端部から前方に延出された運転部側引起し伝動軸を接続し、
前記運転部側引起し伝動軸からの動力を、前記運転部側引起し装置の背部に沿って配設された伝動機構を介して、前記運転部側引起し装置上部の入力軸に伝達し、前記運転部側引起し装置を回転駆動可能に構成する。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、刈取り部フレーム基端部から前方に延出された引起しフレームを運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に接続することで、刈取り部フレームから前方に延出された運転部側引起し伝動軸が低い位置に配設されることになり、運転部側引起し装置の上部の背部の空間に運転部側引起し伝動軸が位置することなく、運転部側引起し装置を回転駆動できる。伝達機構は運転部側引起し装置の背部に沿って配設されているため、運転部側引起し装置の上部の背部に前後にコンパクトに伝達機構を配設することができる。その結果、運転部側引起し装置の上部の背部に空間を形成することができ、この運転部側引起し装置の上部の背部に形成された空間に運転部を位置させることにより、刈取り部を後方の運転部に近い位置に配設することができる。
【0008】
本発明の第1特徴によると、運転部側引起し装置を正面視で運転部と重なる位置に配設することにより、刈取り部を運転部側へ近づけて左右にコンパクトなコンバインを構成できるとともに、刈取り部を後方の運転部に近い位置に配設することにより、前後にコンパクトなコンバインを構成できる。その結果、コンバインの全長及び全幅を短く設定することができ、前後及び左右にコンパクトなコンバインを実現できる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、運転部から刈取り部の前部(例えばデバイダやデバイダに導入される作物)が見え易くなって、運転部からの前方下方の視界性を向上でき、作物の刈取作業(例えば作物とデバイダとの位置決め作業)の作業性を向上できる。
【0010】
本発明の第1特徴によると、コンバインを運搬する際や保管する際等に、コンバインを運搬するトラック等の荷台やコンバインを保管するスペースを狭く設定でき、効率よくコンバインの運搬や保管等を行うことができる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の自脱型コンバインにおいて、次のように構成することにある。
前記伝動機構をチェーン伝動機構によって構成し、
前記チェーン伝動機構のチェーン配置面が前記運転部側引起し装置の背部に沿って配設されている。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、チェーン伝動機構により伝動機構の厚みを薄く設定することができ、この厚みが薄く設定された方向が前後向きになるように、チェーン伝動機構を運転部側引起し装置の背部に配設できる。その結果、運転部側引起し装置の背部から後方に突出する伝動機構の厚みを薄く構成することができ、この厚みを薄く構成することにより形成された空間に運転部を位置させることにより、刈取り部を更に後方の運転部に近い位置に配設することができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、運転部からの前方下方の視界性を更に向上でき、作物の刈取作業の作業性を更に向上できる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、自脱型コンバインを次のように構成することにある。
走行機体の右又は左の側部に備えられた運転部と、走行機体に横向き支点周りに上下揺動可能に連結支持されて刈取り部を支持する刈取り部フレームとを備え、
前記刈取り部の運転部側引起し装置を、正面視で前記運転部と重なる位置に配設すると共に、
前記運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に入力軸を備えて、前記刈取り部フレーム基端部から前方に延出された運転部側引起し伝動軸を前記入力軸に接続し、前記運転部側引起し装置を回転駆動可能に構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、刈取り部フレーム基端部から前方に延出された引起しフレームを運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に備えられた入力軸に接続することで、刈取り部フレームから前方に延出された運転部側引起し伝動軸が低い位置に配設されることとなり、運転部側引起し装置の上部の背部の空間に運転部側引起し伝動軸が位置することなく、運転部側引起し装置を回転駆動できる。その結果、運転部側引起し装置の上部の背部に空間を形成することができ、この運転部側引起し装置の上部の背部に形成された空間に運転部を位置させることにより、刈取り部を後方の運転部に近い位置に配設することができる。
【0016】
本発明の第3特徴によると、運転部側引起し装置を正面視で運転部と重なる位置に配設することにより、刈取り部を運転部側へ近づけて左右にコンパクトなコンバインを構成できるとともに、刈取り部を後方の運転部に近い位置に配設することにより、前後にコンパクトなコンバインを構成できる。その結果、コンバインの全長及び全幅を短く設定することができ、前後及び左右にコンパクトなコンバインを実現できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、運転部から刈取り部の前部(例えばデバイダやデバイダに導入される作物)が見え易くなって、運転部からの前方下方の視界性を向上でき、作物の刈取作業(例えば作物とデバイダとの位置決め作業)の作業性を向上できる。
【0018】
本発明の第3特徴によると、コンバインを運搬する際や保管する際等に、コンバインを運搬するトラック等の荷台やコンバインを保管するスペースを狭く設定でき、効率よくコンバインの運搬や保管等を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔コンバインの全体構成〕
図1〜図4に基づいて、本発明に係る自脱型コンバインの全体構成について説明する。図1及び図2は、コンバインの全体左側面図及び全体右側面図をそれぞれ示し、図3及び図4は、コンバインの全体平面図及び全体正面図を示す。
【0020】
図1〜図4に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に、3条刈り仕様に構成された刈取り部3が揺動昇降自在に連結されており、走行機体2の右側前部に運転部4が設けられている。走行機体2の左側後部に脱穀装置5が搭載され、走行機体2の右側後部に穀粒回収タンク6、穀粒排出オーガ7等が搭載されている。走行機体2の後部には、排ワラ処理装置8が搭載されており、脱穀装置5による脱穀処理により発生した排ワラの処理ができるように構成されている。
【0021】
穀粒排出オーガ7は、長手方向の前後中間部で折り畳み可能に構成されており、コンバインを移動させる場合や保管する場合には、この穀粒排出オーガ7を折り畳んで、走行機体2から穀粒排出オーガ7が突出することがないように構成されている。なお、穀粒排出オーガ7をスライドさせることにより伸縮可能に構成してもよい。
【0022】
刈取り部3には、植立作物を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の右側引起し装置9R(運転部側引起し装置に相当)及び左側引起し装置9Lと、引起し装置9R,9Lにより引起した植立作物を切断するバリカン型の刈取装置10と、引起し中の作物を係止搬送する左右一対の右側及び左側の補助搬送装置11R,11Lと、作物の株元を掻き込み合流する左右一対の掻き込み回転パッカ12R,12Lと、合流された刈取り作物を後方上方に向けて挟持搬送する供給搬送装置13とを備えて構成されており、油圧シリンダ14を操作することにより刈取り部3全体が刈取り部3後部上部の横向きの支点p周りに上下に揺動して、刈取り部3を昇降できるように構成されている。
【0023】
供給搬送装置13は、作物の株元側を挟持して搬送する株元挟持搬送機構13aと作物の穂先側を係止して搬送する穂先係止搬送機構13bとを備えて構成されており、この供給搬送装置13全体を支点p中心に上下に揺動調節することで、搬送される作物の挟持位置を変更して、脱穀装置5に備えられたフィードチェーン15への作物の受け渡し位置を作物の稈長方向に変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。
【0024】
刈取り部3から供給された作物は、脱穀装置5において脱穀処理された穀粒が穀粒回収タンク6に貯留され、脱穀処理によって発生した排ワラが排ワラ処理装置8によって処理されて、走行機体2の後方に処理されたワラ屑が排出されるように構成されている。
【0025】
走行機体2の右側部には、前後に長い平面視での形状が縦長の長方形状のデッキ部2aが形成されており、このデッキ部2aの上面側の前後中央部に運転座席4aを支持する座席支持部材4bが載置されて固定されており、デッキ部2aの上面側の後部に穀粒回収タンク6が載置されて固定されている。デッキ部2aの前端には、斜め後方上方に傾斜したアーチ状の補助具16及びこの補助具16を前方から覆う前部カバー17が装着されており、この補助具16及び前部カバー17と座席支持部材4bとの間に作業者が搭乗する搭乗空間が形成されている。
【0026】
穀粒回収タンク6の前部下部には、後方に凹入した凹入部6Aが形成されており、この凹入部6Aに座席支持部材4bの後部が位置するように配設されている。その結果、運転座席4a後方の空間を有効に活用して穀粒回収タンク6の容量を大きく確保しながら、運転座席4aを後方に位置させることができるように構成されている。
【0027】
補助具16及び前部カバー17は、刈取り部3の引起し装置9Rに沿って斜め後方上方に傾斜する形状に構成されており、搭乗空間の前部に位置する前部カバー17の下部に操作ペダル18が配設されている。その結果、操作ペダル18を配設する空間を確保しながら、刈取り部3を後方に位置させることができるように構成されている。
【0028】
前部カバー17の右側下部には、内方側に凹入した凹入部17Aが形成されており、この凹入部17Aに前部カバー17の前方から操作可能な操作レバーが装着された操作ペダル18が配設されている。その結果、前部カバー17に形成された凹入部17Aを、操作ペダル18を配設する空間として活用しながら、操作レバー18を前方に延出する空間として活用できる。
【0029】
以上のように、補助具16、前部カバー17、運転座席4a及び穀粒回収タンク6の形状及び配置を工夫することにより、刈取り部3を後方に移動させながら、運転座席4aに着座した作業者の脚部に位置する搭乗空間を比較的広く確保でき、コンバインの操作性を損なうことなく刈取り部3を後方に移動させることが可能になる。その結果、脱穀装置5や排ワラ処理装置8の配置等を変更することなく刈取り部3を後方に移動させることができ、コンバインの全長を短く抑えることができる。
【0030】
〔コンバインの伝動構造〕
図5に基づいて、コンバインの伝動構造について説明する。図5は、コンバインの伝動構造の概略図を示す。図5に示すように、運転部4における運転座席4aの下方にエンジン21が配備されており、このエンジン21からの動力の一部がミッションケース22内に内装された静油圧式の無段変速装置(HST)23に伝達され、左右のクローラ走行装置1が無段変速で前後進駆動されるとともに、エンジン21からの動力の一部が脱穀装置5に分岐伝達されるように構成されている。
【0031】
ミッションケース22にはPTO軸24が備えられ、このPTO軸24にベルト伝動機構25を介して刈取り部3の支点pに沿って横架された刈取軸27が連動連結されており、エンジン21からの動力がミッションケース22によって分岐伝動されて刈取軸27が回転駆動するように構成されている。
【0032】
刈取軸27の左端部にベベルギア伝達機構32を介して出力軸33が連動連結され、この出力軸33の両端部に株元挟持搬送機構13aと穂先係止搬送機構13bとが連動連結されており、刈取軸27からの動力が分岐されて供給搬送装置13が駆動するように構成されている。
【0033】
刈取軸27からベベルギア伝達機構28を介して前向きの伝動軸30が前方上方に向けて延出されており、伝動軸30の延出端からベベルギア伝達機構35を介して横向きの刈取伝動軸36が連動連結されている。
【0034】
刈取伝動軸36の左端部にベベルギア伝達機構40を介して左側引起伝動軸39が連動連結され、この左側引起伝動軸39の上端部にベベルギア伝達機構43を介して左側引起し装置9Lの前向きの左側引起し入力軸42が連動連結されており、刈取伝動軸36が回転すると、ベベルギア伝達機構40、左側引起伝動軸39及びベベル伝達機構43を介して左側引起し入力軸42が回転駆動され、左側引起し装置9Lが回転駆動するように構成されている。
【0035】
刈取伝動軸36の右端部に、ベベルギア伝達機構53を介して縦向きの右側引起伝動軸52(運転部側引起し伝動軸に相当)が連動連結されており、この右側引起伝動軸52にパッカ駆動軸54が外嵌されている。右側引起伝動軸52の上部は減速機構56aを介してパッカ駆動軸54に連動連結されており、右側引起伝動軸52の回転が減速機構56aにより減速されてパッカ駆動軸54に伝達されるように構成されている。
【0036】
パッカ駆動軸54には、右側の補助搬送装置11Rと右側の掻き込み回転パッカ12Rとが連動連結され、刈取伝動軸36から分岐された動力により右側引起伝動軸52が回転し減速機構56aを介してパッカ駆動軸54が回転すると、補助搬送装置11R及び回転パッカ12Rが回転駆動されるように構成されている。
【0037】
左側の掻き込み回転パッカ12Lは右側の掻き込み回転パッカ12Rに噛み合い連動されており、この左側の掻き込み回転パッカ12Lに噛み合い伝達された動力で左側の補助搬送装置11Lが回転駆動されるように構成されている。左側の回転パッカ12Lの形状は、右側の回転パッカ12Rの形状と同じ形状に設定されており、右側及び左側の回転パッカ12R,12Lが略同じ速度で回転するように構成されている。
【0038】
右側引起伝動軸52の上端部に、ベベルギア伝達機構58を介して中間駆動軸57が連動連結され、この中間駆動軸57がチェーン伝動機構70を介して右側引起し装置9Rの前向きの右側引起し入力軸59(入力軸に相当)に連動連結されており、右側引起伝動軸52が回転すると、ベベルギア伝達機構58、中間駆動軸57、チェーン伝動機構70(伝動機構に相当)を介して右側引起し入力軸59が回転駆動され、右側引起し装置9Rが回転駆動するように構成されている。
【0039】
刈取伝動軸36の右端部に、ベベルギア伝達機構19を介してクランク機構20が連動連結されており、刈取伝動軸36が回転すると、クランク機構20が駆動して刈取り装置10の刈刃10aが一定のストロークで左右に往復駆動されるように構成されている。
【0040】
〔刈取り部の伝動系の詳細構造〕
図5〜図10に基づいて、刈取り部3への伝動系の詳細構造について説明する。図6は、刈取り部3への伝動系の展開図を示し、図7及び図8は、左側引起し装置9Lへの伝動系の左側面図及び右側引起し装置9Rへの伝動系の右側面図をそれぞれ示す。図9は、チェーン伝動機構70付近の縦断右側面図を示し、図10は、引起し装置9L,9Rの縦断正面図を示す。
【0041】
図5に示すように、エンジン21からの動力がベルト伝動機構25を介して横向き筒状のギアケース26に内装された刈取軸27に伝達されており、刈取軸27に伝達された動力がギアケース26に内装されたベベルギア伝達機構28を介して刈取り部フレーム29に内装された伝動軸30に分岐伝動されている。
【0042】
図6及び図7に示すように、ギアケース26から前方に延出された刈取り部フレーム29の前端部には、ベベルギアケース34が装着されており、このベベルギアケース34に内装され2対のベベルギアにより構成されたベベルギア伝達機構35を介して伝動軸30からの動力が刈取伝動軸36に伝達される。ベベルギアケース34の左側端部には、カウンタケース37が装着されており、このカウンタケース37の内部に刈取伝動軸36が延出されている。
【0043】
カウンタケース37の左側部には、筒状のカウンタブラケット38が装着されており、このカウンタブラケット38に内装された左側引起伝動軸39がカウンタケース37に内装されたベベルギア伝達機構40を介して刈取伝動軸36と連動連結されている。カウンタブラケット38の上端部には、左側ベベルギアケース41が装着されており、前向きの左側引起し入力軸42が左側ベベルギアケース41に内装されたベベルギア伝達機構43を介して左側引起伝動軸39と連動連結されている。
【0044】
図7及び図10に示すように、左側ベベルギアケース41が左側引起し装置9Lの引起しケース44に連結されており、この引起しケース44の内部に位置するように、左側ベベルギアケース41から前方上方に左側引起し入力軸42が延出されている。左側引起し入力軸42の先端部には、駆動スプロケット45が連動連結されており、この駆動スプロケット45と、その横において上下変位可能かつ上方にバネ付勢して配備されたテンションスプロケット46と、引起しケース44の下部に配備されたチェーン案内ローラ47とに亘って引起しチェーン48が横回し状に巻回張設されている。
【0045】
引起しチェーン48には引起し爪49が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されており、引起しチェーン48に沿った倒伏姿勢で下方へ移動してきた引起し爪49は、チェーン案内ローラ47の外周に案内されて起立しながら引起し径路に回り込み移行し、引起し径路脇に固定配備された案内レール50によって起立案内された状態で上方へ移動するよう構成されている。
【0046】
図6及び図8に示すように、ベベルギアケース34の右側部には、ギアケース51が装着されており、このギアケース51に内装されたベベルギア伝達機構53を介して右側引起伝動軸52が刈取伝動軸36と連動連結されている。右側引起伝動軸52には、上端部が右側ベベルギアケース56に回動自在に支持されたパッカ駆動軸54が外嵌されており、このパッカ駆動軸54の下端部に、右側引起伝動軸52に回動自在に外嵌されたパッカ駆動用フランジ55が固定されている。
【0047】
右側引起伝動軸52の上端部には、右側ベベルギアケース56が装着されており、この右側ベベルギアケース56から延出された前向きの中間駆動軸57が右側ベベルギアケース56に内装されたベベルギア伝達機構58を介して右側引起伝動軸52と連動連結されている。右側ベベルギアケース56には、4つのギアを咬合して構成された減速機構56aが内装されており、右側引起伝動軸52の回転がこの減速機構56aにより減速されて、右側ベベルギアケース56に支持されたパッカ駆動軸54が回転するように構成されている。
【0048】
パッカ駆動軸54に右側の補助搬送装置11Rのプーリ91が固定され、パッカ駆動用フランジ55に右側の回転パッカ12Rが固定されて、刈取伝動軸36から分岐された動力により右側引起伝動軸52が回転し減速機構56aを介してパッカ駆動軸54が回転すると、補助搬送装置11R及び回転パッカ12Rが回転駆動されるように構成されている。
【0049】
図8及び図9に示すように、右側ベベルギアケース56が右側引起し装置9Rの引起しケース60にブラケット61を介して連結されている。ブラケット61は、平面視で後向きに開口した断面形状がコ字状に成形されており、右側ベベルギアケース56をブラケット61に固定すると、ブラケット61の前板61aと右側ベベルギアケース56の前端部との間に所定の隙間が形成されて、この隙間に右側ベベルギアケース56から前方に延出された中間駆動軸57が配設されるように構成されている。
【0050】
中間駆動軸57には、下部スプロケット71が固定され、この下部スプロケット71と、後述する上部スプロケット72とに亘って伝動チェーン73が巻回張設されており、伝動チェーン73のチェーン配置面が引起しケース60の後面パネル60Rに沿うように伝動チェーン73が配設されている。引起しケース60の上部には、右側引起し入力軸59がベアリング75を介して軸受部材76によって前後向きの軸心周りで回動自在に支持されており、この右側引起し入力軸59の前端部に、駆動スプロケット62が連動連結されている。
【0051】
右側引起し入力軸59の後部には、上部スプロケット72がキー構造により右側引起し入力軸59と連動連結されており、右側引起し入力軸59の後端部には、ベアリング77が外嵌されて後述するチェーンカバー74に回動自在に支持されている。ベアリング75、上部スプロケット72、及びベアリング77は、前後に隙間を開けずに配設されており、引起しケース60の後面パネル60Rから後方に突出する長さを短くできるように構成されている。
【0052】
上記のように、中間駆動軸57に連動連結された下部スプロケット71と、右側引起し入力軸59に連動連結された上部スプロケット72とに亘って伝動チェーン73を横回し状に巻回張設することで、チェーン伝動機構70が構成されており、中間駆動軸57からの動力をチェーン伝動機構70を介して右側引起し入力軸59に伝達でき、中間駆動軸57からの動力を引起しケース60の後面パネル60Rに沿って前後にコンパクトに右側引起し入力軸59に伝達できる。
【0053】
図9及び図10に示すように、チェーン伝動機構70は、後方からチェーンカバー74で覆われている。チェーンカバー74は、上下に長い帯板状の後面板74aと、この後面板74aの左右両側部から前方に折り曲げ成形された左右の側板74bと、後面板74aの上部に側面視での形状がL字状に折り曲げられた上部連結部74cと、左右の側板74bの下部に形成された下部連結部74dとを備えて構成されている。上部連結部74cには、前後向きの取付穴が形成されており、この取付穴を介してチェーンカバー74の上部が後面パネル60Rに締め付け固定されている。下部連結部74dには、左右向きの取付穴が形成されており、この取付穴を介してチェーンカバー74の下部がブラケット61に締め付け固定されている。
【0054】
チェーンカバー74の後面板74aの上部には、円形の開口部74eが形成されており、この開口部74eにベアリング77が内嵌されて固定されている。このように、チェーンカバー74によりベアリング77を支持する構成を採用することにより、例えばベアリング77をチェーンカバー74で後方から覆うように構成する場合に比べ、チェーンカバー74の前後方向の幅を狭く設定することができ、引起しケース60の後面パネル60Rから後方へ突出するチェーンカバー74の寸法を小さく抑えることができる。
【0055】
図10に示すように、右側引起し装置9Rは、右側引起し入力軸59に連結された駆動スプロケット62と、その横において上下変位可能かつ上方にバネ付勢して配備されたテンションスプロケット63と、引起しケース60の下部に並列配備された第1及び第2チェーン案内ローラ64,65とに亘って引起しチェーン66を横回し状に巻回張設して構成されている。
【0056】
引起しチェーン66には引起し爪67が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されており、引起しチェーン66が下方へ移動する戻り径路では、引起し爪67が引起しチェーン66に沿った倒伏姿勢で下方へ移動し、第1チェーン案内ローラ64の外周に案内されて起立しながら横移動径路に回り込み、引き続き固定配備された第1案内レール68によって起立姿勢を維持された状態で横移動するよう構成されている。横移動径路に沿って起立姿勢で横移動してきた引起し爪67は、第2チェーン案内ローラ65の外周に案内されて起立姿勢を維持しながら引起し径路に導かれ、引起し径路脇に固定配備された第2案内レール69によって起立案内された状態で上方へ移動し、第2案内レール69の上端から外れた引起し爪67は倒伏して戻り径路に回り込んでゆくよう構成されている。
【0057】
引起し装置9R,9Lの引起し径路は互いに対向して隣接するように配置され、各引起しチェーン48,66が同速度で回動駆動されることで、各引起し装置9R,9Lの引起し爪49,67が引起し径路において互いに突き合わせ状態を維持して上方へ移動して、作物を逃がすことなく引き起こすようになっている。
【0058】
右側引起し装置9Rにおける引起しチェーン66の巻回周長は、左側引起し装置9Lにおける引起しチェーン48の巻回周長よりも、引起し爪67,49の爪ピッチの整数倍だけ長いものとなっている。この例では、右側引起し装置9Rにおける引起しチェーン66の巻回径路上端に位置する駆動スプロケット62の軸心位置を、左側引起し装置9Lにおける引起しチェーン48の巻回径路上端に位置する駆動スプロケット62の軸心位置より高く設定することで、長い周長の引起しチェーン66と短い周長の引起しチェーン48とを引起し爪67,49の突き合せ状態で同調駆動できるように構成されている。右側引起し装置9Rの引起しケース60は、左側引起し装置9Lの引起しケース44とアーチ形の補強フレーム78で架橋連結されている。
【0059】
第1チェーン案内ローラ64は第2チェーン案内ローラ65より小径に構成されて、第1チェーン案内ローラ64によるチェーン巻回曲率が、第2チェーン案内ローラ65によるチェーン巻回曲率より小さくなっている。これによって、第1チェーン案内ローラ64に案内されて起立回動する引起し爪67の先端回動軌跡の曲率が小さくなり、作物の掻き込み洩れを少なくすることができる。
【0060】
右側引起し装置9Rにおける第2チェーン案内ローラ65を大径に構成することで、刈り幅Wの右端近くに位置する作物が引起し装置9Rの下端をくぐり抜けて引起し径路に導かれる際に、引起し装置9Rの下端における引起し径路側の角部によって作物がきつく折られることが回避されている。
【0061】
右側引起し装置9Rの下端部の横回し移動幅aは、左側引起し装置9Lにおける下端部の横回し移動幅bよりも大きく設定されており、これにより、刈取り部3の刈り幅W、つまり、引起し装置9R,9Lの前端に配備した右側デバイダ80Rの先端部と左側デバイダ80Lの先端部との間隔が左右のクローラ走行装置1の踏み代Hにできるだけ近くなるよう設定されている(図4参照)。
【0062】
〔デバイダの詳細構造〕
図3,図4,図11〜図13に基づいて、デバイダ80の詳細構造について説明する。図11は、刈取り部3の一部省略平面図を示し、図12は、刈取り部3の縦断正面図を示す。図13は、作物とデバイダ80の関係を説明する概略平面図を示す。図3及び図4に示すように、このコンバインのデバイダ80は、運転部4側に位置する右側デバイダ80Rと、運転部4側とは逆側に位置する左側デバイダ80Lと、右側デバイダ80Rと左側デバイダ80Lの間に位置する中央デバイダ80Cとを備えて構成されている。
【0063】
図11及び図12に示すように、ベベルギアケース34の右側端部に右側刈取フレーム81が締め付け固定されており、この右側刈取フレーム81は、ベベルギアケース34の右側端部から右側に延出され、この右側に延出した端部から前方に延出された形状に成形されている。右側刈取フレーム81の前端部に、右側デバイダ80Rを取り付ける右側取付フレーム84が前後位置調節可能に内嵌されて固定されており、この右側取付フレーム84の前端部の複数箇所に右側デバイダ80Rが取付高さ調節可能に締め付け固定されている(図8参照)。右側デバイダ80Rは、平面視で、右側取付フレーム84への取付部から斜め左側後方に傾斜するように構成されており、3条刈り作業時における右側に位置する作物を中央側へ案内できるように構成されている。
【0064】
ベベルギアケース34の中央部下部に、中央刈取フレーム82が締め付け固定されており、この中央刈取フレーム82は、ベベルギアケース34から前方に延出されている。中央刈取フレーム82の前端部に、中央デバイダ80Cを取り付ける中央取付フレーム85が前後位置調節可能に内嵌されて固定されており、この中央取付フレーム85の前端部の複数箇所に中央デバイダ80Cが取付高さ調節可能に締め付け固定されている。
【0065】
ベベルギアケース34の左側に装着されたカウンタケース37の左側端部に左側刈取フレーム83が締め付け固定されており、この左側刈取フレーム83は、カウンタケース37から前方に延出されている。左側刈取フレーム83の前端部に、左側デバイダ80Lを取り付ける左側取付フレーム86が前後位置調節可能に内嵌されて固定されており、この左側取付フレーム86の前端部の複数箇所に左側デバイダ80Lが取付高さ調節可能に締め付け固定されている(図7参照)。
【0066】
図11に示すように、右側デバイダ80Rの左側部には、右側デバイダ80Rの先端部から斜め後方左方でかつ上方に延出された前部案内ガイド109Rが装備されており、右の前部案内ガイド109Rと右側デバイダ80Rとの協働で、前方から導入した作物を後方中央に導くことができるように構成されている。左側デバイダ80Lの右側部には、左側デバイダ80Lの先端部から斜め後方右方でかつ上方に延出された前部案内ガイド109Lが装備されており、左の前部案内ガイド109Lと左側デバイダ80Lとの協働で、前方から導入した作物を後方中央に導くことができるように構成されている。中央デバイダ80Cの後部には、中央取付フレーム85の先端部から斜め後方上方に延出された前部案内ガイド109が装備されており、中央デバイダ80Cと中央の前部案内ガイド109Cとの協働で、前方から導入した作物を後方に導くことができるように構成されている。
【0067】
右側デバイダ80Rの先端部と中央デバイダ80Cの先端部との右側刈り幅W1が約550ミリメートル(以下mmと表示する)に設定され、左側デバイダ80Lの先端部と中央デバイダ80Cの先端部との左側刈り幅W2が約350mmに設定されて、左側デバイダ80Lの先端部と右側デバイダ80Rの先端部との刈り幅Wが約900mmに設定されている。
【0068】
図4に示すように、正面視で左側デバイダ80Lの先端部がクローラ走行装置1の左側のクローラベルト1aの外端と部分的に重なるように、左側デバイダ80Lが配設されており、正面視で右側デバイダ80Rの先端部がクローラ走行装置1の右側のクローラベルト1aの外端部と重なるように、右側デバイダ80Rが配設されている。中央デバイダ80Cは、クローラ走行装置1の左右のクローラベルト1aの間に位置するように配設されており、右側引起し装置9Rと左側引起し装置9Lの左右中間位置に中央デバイダ80Cの先端部が位置するように配設されている。
【0069】
刈取り部3の刈り幅Wは、左右のクローラ走行装置1の踏み代Hと略同じ寸法(踏み代Hより少し小さい寸法)に設定されており、右側デバイダ80Rの先端部及び左側デバイダ80Lの先端部が、左右のクローラ走行装置1の踏み代Hの両外端に近い位置に位置するように、刈り幅W(右側デバイダ80R及び左側デバイダ80Lの先端部の位置)が設定されている。
【0070】
図13(イ)に示すように、2条刈り作業時には、両引起し装置9R,9Lのそれぞれで1条づつ引き起しを行い、図13(ロ)に示すように、3条刈り作業時には両引起し装置9R,9Lで3条の引き起しを行う。
【0071】
〔刈り幅の設定方法〕
図14に基づいて、刈り幅W(右側刈り幅W1及び左側刈り幅W2)の設定方法について説明する。図14は、刈り幅W(右側刈り幅W1及び左側刈り幅W2)の設定方法を説明するための概略平面図を示す。なお、以下の説明において、コンバインで刈取処理する作物の互いに隣接する株と株との間の距離を条間ピッチPと称し、条間ピッチPが約300mmの場合を例にとって説明する。また、一株の作物の外径を株直径Dと称し、株直径Dが約50mmの場合を例にとって説明する。なお、図14(イ)及び(ロ)は、図14(ハ)及び本実施形態のコンバインに記載の刈り幅Wとは別の、刈り幅Wの設定方法の説明のために示すものである。
【0072】
図14(イ)に示すような刈り幅Wa(右側刈り幅W1a及び左側刈り幅W2a)の寸法設定では、デバイダ80を位置決めする幅方向の範囲が狭くなって、デバイダ80の位置決めを正確に行う必要があり、刈取作業の作業性が悪くなるおそれがある。
【0073】
また、図14(イ)に示すように、例えば左側刈り幅W2aが条間ピッチPより小さい寸法(例えばW2a=250mm)に設定され、刈り幅Waが条間ピッチPの2倍より少し大きい寸法(例えばWa=700mm)に設定されていると、中央デバイダ80Caを株の左側に近い位置に位置決めした場合に、左側デバイダ80Laの先端部が未刈作物と干渉するおそれがある。
【0074】
具体的には、運転座席4aに着座した作業者が右側デバイダ80Raと中央デバイダ80Caを見ながら、右側デバイダ80Raと中央デバイダ80Caとの間に2条分の未刈作物を導入するように位置決めしようとすると、コンバインの操作に加えてデバイダ80の位置関係の確認が必要になり、左側デバイダ80Laと未刈作物との位置関係を十分に確認できず、中央デバイダ80Caを株の左側に近い位置に位置決めした場合に、左側デバイダ80Laの先端部が未刈作物と干渉するおそれがある。
【0075】
図14(ロ)に示すように、例えば刈り幅Wbが条間ピッチPの2倍より少し大きい寸法(例えばWb=700mm)に設定され、左側刈り幅W2bが条間ピッチPと同じ寸法(例えばW2b=300mm)に設定されていると、中央デバイダ80Cbを株の左側の近い位置に位置決めした場合であっても、左側デバイダ80Lbの先端部の未刈作物との干渉を防止できる。しかし、この場合においても、デバイダ80を位置決めする幅方向の範囲は狭いままで、デバイダ80の位置決めを正確に行う必要があり、刈取作業の作業性が悪くなるおそれがある。
【0076】
図14(ハ)に示すように、刈り幅Wを条間ピッチPの3倍の約900mmに設定し、左側刈り幅W2を条間ピッチPに株直径Dを加えた約350mmに設定すると(右側刈り幅W1を約550mmに設定すると)、中央デバイダ80Cを株の左側の近い位置に位置決めした場合であっても、左側デバイダ80Lの先端部の未刈作物との干渉を防止でき、かつ右側デバイダ80R,左側デバイダ80L,中央デバイダ80Cを位置決めする幅方向の範囲X,Y,Zを広く確保することができる。その結果、デバイダ80の位置決めが容易に行うことができ、刈取作業の作業性を向上できる。
【0077】
なお、左側刈り幅W2を約300mmより大きい異なる寸法(例えば330mm,400mm)に設定してもよく、右側刈り幅W1を約450mm〜約650mmの範囲内で大きい寸法又は小さい寸法(例えば500mm,600mm)に設定してもよく、更には、刈り幅Wを約750mm〜約950mmの範囲内で大きい寸法又は小さい寸法(例えば800mm,930mm)に設定してもよい。
【0078】
図14(ハ)に示した刈り幅W(右側刈り幅W1及び左側刈り幅W2)では、デバイダ80の位置決め範囲を広く確保できるだけでなく、例えば条間ピッチPや株直径Dに誤差がある場合であっても、容易にデバイダ80の位置決めを行うことができるような最適な寸法に設定されている。
【0079】
〔搬送ガイド部付近の詳細構造〕
図11,図12,図15,図16,図17に基づいて、搬送ガイド部100の詳細構造について説明する。図15は、搬送ガイド部100付近を斜め前方上方から見た横断平面図を示し、図16及び図17は、搬送ガイド部100を斜め前方上方から見た平面図及び搬送ガイド部100の右側面図をそれぞれ示す。
【0080】
図11及び図15に示すように、右側刈取フレーム81と左側刈取フレーム83とに亘って刈取装置10が横架されており、この刈取装置10の上方に位置するように左側の補助搬送装置11L及び右側の補助搬送装置11Rが配設されている。
【0081】
左側刈取フレーム83の前端部から上方右方に左側引起しフレーム88が延出されており、この左側引起しフレーム88に左の引起し装置9Lの下部が固定されている(図7参照)。右側刈取フレーム81の前端部から上方左方に右側引起しフレーム87が延出されており、この右側引起しフレーム87に右の引起し装置9Rの下部が固定されている(図8参照)。
【0082】
図15に示すように、左側の補助搬送装置11Lの駆動軸心P1は、平面視で、右側の補助搬送装置11Rの駆動軸心P2と同一の左右向きの直線L1上に高さを変えて配設されており、中央刈取フレーム82の中央を通る前後向きの直線L2から右側の補助搬送装置11Rの駆動軸心P2までの距離が、中央刈取フレーム82の前後向きの直線L2から左側の補助搬送装置11Lの駆動軸心P1までの距離より長くなるように、左側及び右側の補助搬送装置11L,11Rの駆動軸心P1,P2の位置が設定されている。
【0083】
右側の補助搬送装置11Rの回動軸心P4は、左側の補助搬送装置11Lの回動軸心P3より後方に位置するように、左側及び右側の補助搬送装置11L,11Rの回動軸心P3,P4の位置が設定されており、右側の補助搬送装置11Rの駆動軸心P2を通る前後向きの直線L4から回動軸心P4までの距離が、左側の補助搬送装置11Lの駆動軸心P1を通る前後向きの直線L3から回動軸心P3までの距離の略2倍になるように設定されている。
【0084】
図11及び図15に示すように、右側の補助搬送装置11Rの回動軸心P4には、右側引起しフレーム87に固着されたブラケット89を介してプーリ90が回動自在に支持されており、このプーリ90とパッカ駆動軸54に連動連結されたプーリ91とに亘って、ループ状の補助搬送ベルト本体92aに補助搬送爪92bを等ピッチで装着した補助搬送ベルト92が巻回張設されている。
【0085】
左側の補助搬送装置11Rの駆動軸心P1には、プーリ93及び回転パッカ12Lがカウンタブラケット38から延出されたブラケット94に回動自在に支持されており(図12参照)、パッカ駆動軸54に連動連結された回転パッカ12Rが回転すると、回転パッカ12Lが回転し、プーリ93が回転するように構成されている。左側の補助搬送装置11Lの回動軸心P3には、左側引起しフレーム88に固着されたブラケット95を介してプーリ96が回動自在に支持されており、このプーリ96とプーリ93とに亘って、ループ状の補助搬送ベルト本体97aに補助搬送爪97bを等ピッチで装着した補助搬送ベルト97が巻回張設されている。
【0086】
図15に示すように、右側の補助搬送装置11Rの駆動軸心P2と回動軸心P4との間の距離Laが、左側の補助搬送装置11Lの駆動軸心P1と回動軸心P3との間の距離Lbより長くなるように設定されており、前後向きの直線L4と、前方から導入される作物に対向する補助搬送ベルト92の直線部分とにより形成される角度αが、前後向きの直線L3と、前方から導入される作物に対向する補助搬送ベルト97の直線部分とにより形成される角度βより大きくなるように設定されている。
【0087】
右側刈取フレーム81の前端部から斜め後方左方に向かって帯板状の右側案内ガイド98が固定されている。左側刈取フレーム83の前端部から斜め後方右方に向かって帯板状の左側案内ガイド99が固定されており、この左側案内ガイド99の後端部は、カウンタブラケット38の下部に固定されている(図12参照)。
【0088】
図12に示すように、右側の補助搬送装置11Rは、圃場面Tから高さh1の位置に配設された回転パッカ12L,12Rから高さh2の位置(圃場面Tから高さhの位置)に配設され、左側の補助搬送装置11Lは、圃場面Tから高さh1の位置に配設された回転パッカ12L,12Rから高さh3(高さh2より小さい高さ)の位置に配設されており、右側の補助搬送装置11Rが左側の補助搬送装置11Lよりも高い位置に配置されている。これにより、3条刈り作業時に刈り幅Wの右端近くに位置する作物が補助搬送装置11Rによって刈り幅Wの中央側に係止搬送される際に、作物が無理に屈曲されることがないよう構成されている。
【0089】
図15,16,17に示すように、中央刈取フレーム82の先端部に、下部搬送ガイド102と、右側搬送ガイド105と、左側搬送ガイド106と、右側上部搬送ガイド107と、左側上部搬送ガイド108とが装着されて、搬送ガイド部100が構成されている。
【0090】
図16及び図17に示すように、中央刈取フレーム82の上部に、側面視での縦断面形状が下向きのコ字状のブラケット101が固着されており、このブラケット101の上部に下部搬送ガイド102、右側搬送ガイド105、左側搬送ガイド106、右側上部搬送ガイド107、左側上部搬送ガイド108が取り付けられている。
【0091】
下部搬送ガイド102は、下部ブラケット103と、右及び左の下部ガイド体104R,104Lとを備えて構成されている。下部ブラケット103は、側面視で、ブラケット101への取り付け部から斜め後方上方に屈曲した形状に成形されており、この斜めに傾斜した部分の下面側に沿って右及び左の下部ガイド体104R,104Lの前端部が固着されている。
【0092】
図16に示すように、右の下部ガイド体104Rの平面視での形状は、下部ブラケット103に固着した部分から斜め右方後方に延出され、その延出端から湾曲部104Raを介して斜め左方後方に延出されたく字状に成形されている。左の下部ガイド体104Lの平面視での形状は、下部ブラケット103に固着した部分から斜め左方後方に延出され、その延出端から湾曲部104Laを介して斜め右方後方に延出された逆く字状に成形されている。右の下部ガイド体104Rと、左の下部ガイド体104Lの形状は、略同じ形状に設定されており、直線L2に対して右及び左の下部ガイド体104R,104Lの後端が少し右側に位置をずらして配設されている。
【0093】
図17に示すように、右及び左の下部ガイド体104R,104Lは、同じ高さに設定されており、側面視での右及び左の下部ガイド体104R,104Lの斜め後方上方へ傾斜する角度は、補助搬送装置11及び回転パッカ12の取付角度と略平行になるように設定されている。右及び左の下部ガイド体104R,104Lの線径は、後述する右側搬送ガイド105、左側搬送ガイド106、右側上部搬送ガイド107,左側上部搬送ガイド108の線径より大きく設定されており、株元に近い位置で作物を案内することによる強度を確保できるように構成されている。
【0094】
図16及び図17に示すように、右側搬送ガイド105は、ブラケット101に固定した部分から斜め右方後方に延出された前部案内部105aと、この前部案内部105aの後端から湾曲部105cを介して斜め左方後方に延出された後部案内部105bとを備えて、平面視で、く字状に湾曲した形状に成形されている。一方、左側搬送ガイド106は、ブラケット101に固定した部分から斜め左方後方に延出された前部案内部106aと、この前部案内部106aの後端から湾曲部106cを介して斜め右方後方に延出された後部案内部106bとを備えて、平面視で、逆く字状に湾曲した形状に成形されている。
【0095】
図15及び図16に示すように、右側搬送ガイド105の後部案内部105bは、右側の補助搬送装置11Rの補助搬送ベルト92に対向するように配設されており、補助搬送ベルト92との間の距離が後部案内部105bの先端に向かうに従って徐々に狭くなるように設定されている。左側搬送ガイド106の後部案内部106bは、左側の補助搬送装置11Lの補助搬送ベルト97に対向するように配設されており、補助搬送ベルト97との間の距離が後部案内部106bの先端に向かうに従って徐々に狭くなるように設定されている。
【0096】
図16に示すように、右側搬送ガイド105の前部案内部105aの長さが、左側搬送ガイド106の前部案内部106aの長さより長くなり、右側搬送ガイド105の後部案内部105bの長さが左側搬送ガイド106の後部案内部106bの長さより短くなるように、右側搬送ガイド105の湾曲部105cの位置が左側搬送ガイド106の湾曲部106cの位置よりも後方に位置するように、右側及び左側搬送ガイド105,106の平面視での形状が設定されている。
【0097】
図17に示すように、側面視での左側搬送ガイド106の斜め後方上方へ傾斜する角度は、補助搬送装置11及び回転パッカ12の取付角度と略平行になるように設定されている。右側搬送ガイド105は、左側搬送ガイド106より高い位置に位置するように、ブラケット101に固定した部分から後方に延出する右側搬送ガイド105の角度が、左側搬送ガイド106の斜め後方上方へ傾斜する角度よりも大きい角度に設定されており、側面視での右側搬送ガイド105と左側搬送ガイド106との距離が徐々に後方に末広がり状に広くなるように設定されている。
【0098】
図16に示すように、右側上部搬送ガイド107は、ブラケット101に固定した部分から斜め右方後方に延出された前部案内部107aと、この前部案内部107aの後端から湾曲部107cを介して斜め左方後方に延出された後部案内部107bとを備えて、平面視で、く字状に屈曲した形状に成形されている。一方、左側上部搬送ガイド108は、ブラケット101に固定した部分から斜め左方後方に延出された前部案内部108aと、この前部案内部108aの後端から湾曲部108cを介して斜め右方後方に延出された後部案内部108bとを備えて、平面視で、逆く字状に屈曲した形状に成形されている。
【0099】
図15及び図16に示すように、右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bは、右側の補助搬送装置11Rの補助搬送ベルト92に対向するように配設され、補助搬送ベルト92との間の距離が後部案内部107bの先端に向かうに従って徐々に狭くなるように設定されており、平面視で右側搬送ガイド105の後部案内部105bより補助搬送ベルト92に近い位置に配設されている。左側上部搬送ガイド108の後部案内部108bは、左側の補助搬送装置11Lの補助搬送ベルト97に対向するように配設され、補助搬送ベルト97との間の平面視での距離が後部案内部108bの先端に向かうに従って徐々に狭くなるように設定されており、平面視で左側搬送ガイド106の後部案内部106bより補助搬送ベルト97から少し遠い位置に配設されて、先端部が左側搬送ガイド106の後部案内部106bと略同じ位置に位置するように配設されている。
【0100】
図16に示すように、右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bの先端部は、平面視で左側に屈曲した形状に成形されており、この屈曲した後部案内部107bの先端部が、平面視で右側搬送ガイド105の後部案内部105bと略平行になるように構成されている。
【0101】
右側上部搬送ガイド107の前部案内部107aの長さが、左側上部搬送ガイド108の前部案内部108aの長さより長くなるように、右側上部搬送ガイド107の湾曲部107cの位置が左側搬送ガイド108の湾曲部108cの位置よりも後方に位置するように、右側及び左側上部搬送ガイド107,108の平面視での形状が設定されている。また、右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bの長さは、左側搬送ガイド108の後部案内部108bの長さより長くなるように設定されている。
【0102】
図17に示すように、側面視での左側上部搬送ガイド108の前部案内部108aの斜め後方上方へ傾斜する角度は、搬送ガイド部100の前部に装備された前部案内ガイド109Cに略平行な角度に設定され、側面視での左側上部搬送ガイド108の後部案内部108bの斜め後方上方へ傾斜する角度は、補助搬送装置11及び回転パッカ12の取付角度と略平行な角度になるように設定されている。
【0103】
側面視での右側上部搬送ガイド107の前部案内部107aの斜め後方上方へ傾斜する角度は、搬送ガイド部100の前部に装備された前部案内ガイド109Cに略平行な角度に設定され、側面視での右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bの斜め後方上方へ傾斜する角度は、補助搬送装置11及び回転パッカ12の取付角度と略平行な角度になるように設定されている。
【0104】
右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bは、側面視で左側上部搬送ガイド108の後部案内部108bと平行になるように設定され、右側上部搬送ガイド107の後部案内部107bが左側上部搬送ガイド108の後部案内部108bより高い位置に位置するように設定されている。
【0105】
図16及び図17に示すように、右側搬送ガイド105、左側搬送ガイド106、右側上部搬送ガイド107、及び左側上部搬送ガイド108は、前後方向の取付位置を調節可能に、取付ブラケット110によってブラケット101の上面側に上方から締め付け固定されている。
【0106】
以上のように、搬送ガイド部100を構成することにより、下部搬送ガイド104の下部ガイド体104Rと、右側搬送ガイド105と、右側上部ガイド107との協働で、右側デバイダ80Rと中央デバイダ80Cとの間から供給されてきた2条分の作物を、倒れ過ぎを防止しながら、右側の補助搬送装置11R側に徐々に倒して右側の補助搬送装置11R側に寄せ集めて、無理なく後方に供給できる。また、下部搬送ガイド104の下部ガイド体104Lと、左側搬送ガイド106と、左側上部ガイド108との協働で、左側デバイダ80Lと中央デバイダ80Cとの間から供給されてきた1条分の作物を、左側の補助搬送装置11L側に徐々に寄せ集めて、無理なく後方に供給できる。
【0107】
〔右側引起し装置背部の空間について〕
図3,図4,図8に基づいて、右側引起し装置9R背部の空間Sについて説明する。図8に示すように、右側引起し装置9Rの上下中央部に右側引起伝動軸52を接続し、右側引起伝動軸52からの動力を、右側引起し装置9Rの背部に沿って配設されたチェーン伝動機構70を介して、右側引起し装置9R上部の右側引起し入力軸59に伝達する構成を採用することにより、右側引起し装置9R上部の背部に空間Sを形成することができる。
【0108】
これにより、この右側引起し装置9Rの上部の背部に形成された空間Sに、運転部4を位置させることができ、刈取り部3を後方の運転部4の前部カバー14に近い位置に配設することができる。その結果、図2に示すように、運転座席4aに着座した作業者からの前方下方の視界性を向上でき、作物の刈取作業(例えば作物とデバイダ80との位置決め作業)の作業性を向上できると共に、コンバインの全長及び全幅を短く設定することができ、コンバインを前後及び左右にコンパクトに構成できる。
【0109】
図3及び図4に示すように、デッキ部2aの前部における左側下部に、後方へ凹入するように切り欠かれた切欠き部2bが形成されており、右側引起し装置9Rの上下中央部に接続された右側ベベルギアケース56付近が、この切欠き部2bに入り込んで、運転部4の床面(作業者が搭乗する床面)を圃場面Tから低い位置に設定しながら、刈取り部3を後方に配設できるように構成されている。なお、切欠き部2bの形状として異なる形状を採用してもよい。
【0110】
また、右側ベベルギアケース56を右側引起し装置9Rの背部の上下中央部に配設し、重量の比較的軽いチェーン伝動機構70により右側引起し装置9Rを回転駆動させることにより、重量の比較的重い右側ベベルギアケース56及び右側ベベルギアケース56への伝動機構を低い位置に配設することができ、右側引起し装置9Rの重心高を低く抑えることができて、刈取り部3の低重心化を図ることができる。その結果、刈取り部3の昇降時の安定性及びコンバインの走行時の安定性を向上できる。
【0111】
〔作物の導入状況について〕
図18に基づいて、作物の導入状況(搬送ガイド部100の作用)について説明する。図18は、作物の導入状況を説明するための概略正面図を示す。なお、図18(ロ)は、右側の補助搬送装置11RAの高さを左側の補助搬送装置11LAの高さと同じ高さに設定し、かつ、右側搬送ガイド111の高さを左側搬送ガイド112の高さと同じ高さに設定した場合の作物の導入状況を比較のために示すものである。
【0112】
図18(ロ)に示すように、右側及び左側の補助搬送装置11RA,11LA、右側及び左側搬送ガイド111,112、右側及び左側上部搬送ガイド113,114の高さを設定すると、右側の補助搬送装置11RAと右側搬送ガイド111との間の空間が狭く、右側デバイダ80RAの近くから導入された作物が、株元から遠い位置で右側の補助搬送装置11RA及び右側搬送ガイド111によって押し倒されて、作物が左側に倒れ過ぎて後方に供給されると考えられる。特に、3条刈り作業時においては、中央デバイダ80CAと右側デバイダ80RAとの間から2条分の作物が導入されるため、中央デバイダ80CA側の作物の上に右側デバイダ80RA側の作物が重なって無理な状態で作物が左側に倒れて後方に供給されると考えられる。
【0113】
図18(イ)に示すように、右側の補助搬送装置11Rの高さを左側の補助搬送装置11Lの高さより高く設定すると共に、搬送ガイド部100を上記のように左右非対称な形状に構成することにより、右側の補助搬送装置11R及び右側搬送ガイド105によって右側デバイダ80Rの近くから導入された作物の倒れ込みが阻止されて、作物が左側へ倒れ込み難くなる。右側搬送ガイド105によって後方へ案内された作物は、右側の補助搬送装置11Rと右側搬送ガイド105との間の広く確保された空間を通って無理なく後方へ供給され、左側への倒れ込みが少ない状態で作物が刈取装置10により刈り取られて、脱穀装置5に供給される。その結果、作物を左側への倒れ込みが少ない状態で刈り取ることができ、きれいな刈り跡を形成できると共に、穂先が比較的揃った状態での作物を脱穀装置5に供給できる。
【0114】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、右側引起し装置9Rの上下中央部に右側引起し伝動軸52を接続し、チェーン伝動機構70を介して、右側引起し装置9R上部の右側引起し入力軸59に伝達するように構成した例を示したが、図19又は図20に示すような右側引起し装置9Rの伝動構造を採用してもよい。
【0115】
図19(イ)に示すように、右側引起し装置9Rの下部に、刈取り部フレーム29基端部から前方に延出された右側引起し伝動軸52Aを接続し、この右側引起し伝動軸52Aからの動力を、右側引起し装置9Rの背部に沿って配設されたチェーン伝動機構70Aを介して、右側引起し装置9R上部の右側引起し入力軸59Aに伝達し、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成してもよい。
【0116】
この場合、右側ギアケース56Aから前方に延出された右側引起し伝動軸52Aの先端部に、下部スプロケット71Aを連動連結し、この下部スプロケット71Aと右側引起し入力軸59Aに連動連結された上部スプロケット72Aとに亘って伝動チェーン73Aを巻回張設することで、チェーン伝動機構70Aを構成する。これにより、右側引起し装置9Rの背部に空間S1を形成することができる。
【0117】
図19(ロ)に示すように、ギアケース26から前方に延出された右側引起し伝動軸52Bを右側引起し装置9Rの上部に接続し、この右側引起し伝動軸52Bからの動力を、右側引起し装置9Rの背部に沿って配設されたチェーン伝動機構70Bを介して、右側引起し装置9Rの上下中央部(又は下部(図示せず))の右側引起し入力軸59Bに伝達し、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成してもよい。
【0118】
この場合、右側ギアケース56Bから前方に延出された引起し伝動軸52Bの先端部に、上部スプロケット72Bを連動連結し、この上部スプロケット72Bと右側引起し入力軸59Bに連動連結された下部スプロケット71Bとに亘って伝動チェーン73Bを巻回張設することで、チェーン伝動機構70Bを構成する。右側引起し入力軸59Bには、駆動スプロケット115が連動連結されており、この駆動スプロケット115と、スプロケット62と、テンションスプロケット63と、第1チェーン案内ローラ64と、第2チェーン案内ローラ65とに亘って引起しチェーン66を巻回張設し、駆動スプロケット115を回転駆動させることで、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成する。これにより、右側引起し装置9Rの背部に空間S2を形成することができる。
【0119】
図20(イ)に示すように、右側引起し装置9Rの上下中央部(又は下部(図示せず))に、刈取り部フレーム29基端部から前方に延出された右側引起し伝動軸52Cを接続し、この右側引起し伝動軸52Cからの動力を、右側引起し装置9Rの上下中央部に配設され右側ベベルギアケース56Cから前方に延出された右側引起し入力軸59Cに伝達し、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成してもよい。この場合、右側引起し入力軸59Cに連動連結された駆動スプロケット116と、スプロケット62と、テンションスプロケット63と、第1チェーン案内ローラ64と、第2チェーン案内ローラ65とに亘って引起しチェーン66を巻回張設し、駆動スプロケット116を回転駆動させることで、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成する。これにより、右側引起し装置9Rの背部に空間S3を形成することができる。
【0120】
図20(ロ)に示すように、右側引起し装置9Rの下部に、刈取り部フレーム29基端部から前方に延出された右側引起し伝動軸52Dを接続し、この右側引起し伝動軸52Dからの動力を、右側引起し装置9Rの下部に配設され右側ギアケース56Dから前方に延出された右側引起し入力軸59Dに伝達し、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成してもよい(なお、右側引起し伝動軸52Dを右側ギアケース56Dから前方に延出して、右側引起し伝動軸52Dにより右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成してもよい。)。
【0121】
この場合、右側引起し入力軸59Dに第2チェーン案内ローラ65を連動連結して駆動スプロケットとして機能するように構成し、この第2チェーン案内ローラ65と、スプロケット62と、テンションスプロケット63と、第1チェーン案内ローラ64とに亘って引起しチェーン66を巻回張設し、第2チェーン案内ローラ65を回転駆動させることで、右側引起し装置9Rを回転駆動可能に構成する。これにより、右側引起し装置9Rの上部及び上下中央部における背部に空間S4を形成することができる。
【0122】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、右側引起し伝動軸52からの動力を、チェーン伝動機構70を介して右側引起し装置9R上部の右側引起し入力軸59に伝達するように構成した例を示したが、右側引起し装置9Rと同様の動力伝達構造を左側引起し装置9Lに採用してもよい。これにより、右側引起し装置9Rと左側引起し装置9Lの部品を共通化することができ、製造コストを削減できるだけでなく、刈取り部3の重心高を更に低く設定することができる。
【0123】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、伝動機構としてチェーン伝動機構70を採用した例を示したが、伝動機構として異なる構成を採用してもよく、例えば巻回式の伝動機構(巻掛式の伝動機構)として、ゴムベルトに歯形(例えば台形歯形)が形成されたタイミングベルト及びこのタイミングベルトに噛み合うプーリー(図示せず)や、Vベルト及びV溝が形成されたプーリー(図示せず)等のベルト伝動機構(図示せず)を採用してもよい。この場合、ベルト伝動機構のベルト配置面が右側引起し装置9Rの背部に沿って配設されるようにタイミングベルト又はVベルトを横回し状に巻回張設する。これにより、伝動機構の更なる軽量化を図ることができる。
【0124】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、走行機体2の前部の右側に運転部4を備えたコンバインを例に示したが、走行機体2の前部の左側に運転部4を備えたコンバインにおいても同様に適用できる。この場合、左側引起し装置9Lへの伝動構造として前述の[発明を実施するための最良の形態]における右側引起し装置9Rへの伝動構造を採用すればよい。
【0125】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、右側引起し装置9Rと左側引起し装置9Lとを刈取り部3の前部に備えたコンバインを例に示したが、3つ以上の引起し装置(図示せず)を刈取り部3の前部に備えたコンバインにおいても同様に適用できる。
【0126】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、3条分の作物を処理可能に構成したコンバインを例に示したが、4条以上の作物を処理可能に構成したコンバインにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】コンバインの全体左側面図
【図2】コンバインの全体右側面図
【図3】コンバインの全体平面図
【図4】コンバインの正面図
【図5】コンバインの伝動構造の概略図
【図6】刈取り部への伝動系の展開図
【図7】左側引起し装置への伝動系の左側面図
【図8】右側引起し装置への伝動系の右側面図
【図9】チェーン伝動機構付近の縦断右側面図
【図10】引起し装置の縦断正面図
【図11】刈取り部の一部省略平面図
【図12】刈取り部の縦断正面図
【図13】作物とデバイダの関係を説明する概略平面図
【図14】刈り幅の設定方法を説明する概略平面図
【図15】搬送ガイド部付近の平面図
【図16】搬送ガイド部の平面図
【図17】搬送ガイド部の右側面図
【図18】作物の導入状況を説明する概略正面図
【図19】発明の実施の第1別形態での引起し装置への伝動構造を示す概略右側面図
【図20】発明の実施の第1別形態での引起し装置への伝動構造を示す概略右側面図
【符号の説明】
【0128】
2 走行機体
3 刈取り部
4 運転部
9R 右側引起し装置(運転部側引起し装置)
29 刈取り部フレーム
52 右側引起し伝動軸(運転部側引起し伝動軸)
59 右側引起し入力軸(入力軸)
70 チェーン伝動機構(伝動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の右又は左の側部に備えられた運転部と、走行機体の前部に横向き支点周りに上下揺動可能に連結支持されて刈取り部を支持する刈取り部フレームとを備え、
前記刈取り部の運転部側引起し装置を、正面視で前記運転部と重なる位置に配設すると共に、
前記運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に、前記刈取り部フレーム基端部から前方に延出された運転部側引起し伝動軸を接続し、
前記運転部側引起し伝動軸からの動力を、前記運転部側引起し装置の背部に沿って配設された伝動機構を介して、前記運転部側引起し装置上部の入力軸に伝達し、前記運転部側引起し装置を回転駆動可能に構成してある自脱型コンバイン。
【請求項2】
前記伝動機構をチェーン伝動機構によって構成し、
前記チェーン伝動機構のチェーン配置面が前記運転部側引起し装置の背部に沿って配設されている請求項1記載の自脱型コンバイン。
【請求項3】
走行機体の右又は左の側部に備えられた運転部と、走行機体に横向き支点周りに上下揺動可能に連結支持されて刈取り部を支持する刈取り部フレームとを備え、
前記刈取り部の運転部側引起し装置を、正面視で前記運転部と重なる位置に配設すると共に、
前記運転部側引起し装置の上下中央部又は下部に入力軸を備えて、前記刈取り部フレーム基端部から前方に延出された運転部側引起し伝動軸を前記入力軸に接続し、前記運転部側引起し装置を回転駆動可能に構成してある自脱型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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