説明

自走式一人乗用型種いも植付機

【課題】運転に注意を集中することにより、種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少しても、蒔き付け作業を適切に行なえて、種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【解決手段】車体2の種いも蒔付用開口部6に臨ませて畝立用培土器24を設置し、その畝立用培土器24に、左右の犂刃25を両前端が閉じて後方に行く程開くようにV字状に配置し、その両犂刃25間の後部側に後端が上がって前方に行く程下がる傾斜したガイド上面を有する種いも蒔付用ガイド部材27を、両犂刃25の上端より少し下げて掛け渡し、その前部側に上下に貫通する蒔付口28を設けた種いも蒔付ガイド付きV形状犂を設置する。そして、更に種いも蒔付タイミング音発生装置を設置し、補助運転用ハンドル61を装着脱可能にして備えると好ましくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の根菜類、球根類等の種いもを植え付ける自走式一人乗用型種いも植付機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の根菜類、球根類等を食用或いは観賞用の作物として栽培している。これ等の球根菜類ではいずれも地中にある根、茎、葉等に養分が蓄えられ、そこが球状又は塊状に生長する。それ故、球状又は塊状部分を地中から掘り上げて収穫する。又、栽培のためには地中から掘り上げた球状又は塊状部分を種いもとして再度植え付ける必要がある。そして、栽培面積が広い場合等には労力負担の軽減と植え付け効率の向上を考慮して、種いも植え付け用の機械を使用する。
【0003】
このような球根菜類用種いもの植付機は通常トラクターと連結して使用しているが、乗用型トラクターは高価であり、全体が大型化する。しかも、種いもを手で1個1個補給する等、植え付けに常時2人以上の人手を必要とする。そこで、種いもの植え付けを行なえる自走式一人乗用型農作業機が提示されている。本出願人も先に車体に、走行駆動用エンジンと、クローラ式走行体と、その走行駆動用エンジンから走行体に駆動力を伝えるトランスミッションを設置し、種いも蒔付用の上下方向に貫通する開口部を設け、その種いも蒔付用開口部に臨ませて畝立用培土器を設置し、更に種いも蒔付用開口部の付近に運転席を設け、覆土器を設置した自走式一人乗用型種いも植付機を提示した。
【特許文献1】特願2004‐185358
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この自走式一人乗用型種いも植付機には畝立用培土器として、左右の犂刃を両前端が閉じて後方に行く程開くようにV字状に配置したV形状犂を設置している。そして、種いもの植え付け時に作業者が乗車して前方を注意し、左右サイドクラッチレバーを操作する等して運転しながら、畝立用培土器で左右に土盛りして畝を作り、その畝間の溝内に種いもを順次蒔き付けし、覆土すると植え付けを行なえる。その際、溝を一直線状に作るため運転に注意を集中すると、どうしても種いもの蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少してしまう。それ故、溝に蒔き付けた種いもの位置が一直線状に作った溝の中心線からずれ易く、安定しなくなって一直線状に並ばなくなる。又、蒔き付け作業に注意を集中すると、運転がおろそかになって溝が曲がり易くなるため、溝に蒔き付けた種いもが一直線状に並ばなくなる。すると、種いも植え付け畝間が一定でなくなって、その後の除草、施肥、土寄せ等の農作業を行なうのに不都合となる。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、運転に注意を集中ことにより、種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少しても、蒔き付け作業を適切に行えて、種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業にも適した自走式一人乗用型種いも植付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による自走式一人乗用型種いも植付機は車体に、走行駆動用エンジンと、クローラ式走行体と、その走行駆動用エンジンから走行体に駆動力を伝えるトランスミッションを設置し、種いも蒔付用の上下方向に貫通する開口部を設け、種いも蒔付用開口部に臨ませて畝立用培土器を設置し、更に種いも蒔付用開口部の付近に運転席を設け、覆土器を設置する。
【0007】
そして、上記畝立用培土器に、左右の犂刃を両前端が閉じて後方に行く程開くようにV字状に配置し、その両犂刃間の後部側に、後端が上がって前方に行く程下がる傾斜したガイド上面を有する種いも蒔付用ガイド部材を、両犂刃の上端より下げて掛け渡し、その前部側に上下に貫通する蒔付口を設けた種いも蒔付ガイド付きV形状犂を設置する。
【0008】
又、上記種いも植付機に、走行体のクローラベルトを支えるベルト支持車輪の回転位置を指示するベルト支持車輪回転位置指示手段と、その指示手段から出力を得て、植付機が一定距離前進する毎に種いも蒔き付けタイミングを音により知らせる音発生手段とからなる種いも蒔付タイミング音発生装置を設置する。
【0009】
又、上記種いも植付機の補助運転用ハンドルとして、大略コ字状に屈曲し、その中央部付近を握り箇所、両側にある端部を夫々取付箇所にした握り棒と、その握り棒の各端部付近を夫々軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にして取り付けた棒状の両サイドクラッチレバー操作用補助レバーと、その両サイドクラッチレバー操作用補助レバーの各軸端部付近を夫々軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にして取り付け、他端部を軸にして両サイドクラッチレバーとの結合、分離可能な連結箇所にする棒状の両連結棒とからなる組立体を用いる。
【0010】
しかも、上記補助運転用ハンドル装着脱構造として、種いも植付機の車体の左右後端に、握り棒の各端部が結合、分離可能なハンドル支持部を夫々設け、更に車体の左右に配置した両サイドクラッチレバーに両連結棒の各他端部が結合、分離可能な軸支箇所を夫々設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自走式一人乗用型種いも植付機は、畝立用培土器に種いも蒔付ガイド付きV形状犂を設置することにより、種いもの蒔き付け時に、そのV形状犂の両犂刃間の後部側に両犂刃の上端より下げて掛け渡した蒔付用ガイド部材の広いガイド上面を利用して、種いもをそのガイド上面上に置き、又は直近上方で離して落下させることができる。すると、ガイド上面は後端が上がって前方に行く程下がる傾斜面となっているので、種いもがそのガイド上面に乗って落下して行き、前部側に設けた上下に貫通する小さな蒔付口内に落下する。すると、運転に注意を集中して、種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少しても、植え付け溝を一直線状に作って、種いもを蒔付口から落下させて溝の中心線位置に順次蒔き付けることができる。それ故、蒔き付け作業を適切に行なえて、種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【0012】
又、本発明の自走式一人乗用型種いも植付機は、種いも蒔付タイミング音発生装置を設置することにより、種いも植付機の前進時に、指示手段によってベルト支持車輪の回転位置を指示し、音発生手段によってその指示手段から出力を得て、植付機が一定距離前進する毎に蒔き付けタイミングを知らせる音を発生することができる。それ故、作業者は音に合わせて種いもの蒔き付けを行なえばよく、運転に注意を集中して種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少しても、蒔き付け作業を適切に行なえて、種いも植え付け株間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【0013】
又、本発明の自走式一人乗用型種いも植付機は、補助運転用ハンドルを備え、その補助運転用ハンドル装着脱構造を設けることにより、種いも植付機を特に急斜面の等高線に沿って前進させる場合に、補助運転用ハンドルを装着して用いることができる。その際、乗用以外の作業者が一人加わって、植付機の直近後方を歩行しながら握り棒を持って植付機を支持し、適宜左右のサイドクラッチレバー操作用補助レバーを操作する等し、乗用作業者の運転操作と協力する。それ故、急斜面の走行時に植付機のずれ落ちを防止し、直進性を確保できるので、種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図1〜6を参照して、本発明の実施の最良形態を説明する。
図1は本発明を適用した自走式一人乗用型種いも植付機の概略平面図、図2はその概略右側面図である。この自走式一人乗用型種いも植付機1はその車体2として、前後に長い長方形状の枠を上側に配置して主枠3にし、その主枠3の下側に重なるように走行体支持枠4を配置して一体に結合し、更にそれ等の枠3、4に対し桟や補助枠を結合して概略箱形状の骨格を形成して用いる。しかも、その車体2には中央より後部に亘る部分に、主枠3の左右枠部材3b、3dと、それ等の下側に夫々平行に配設された走行体支持枠4の左右枠部材に掛け渡して結合した中央桟5と、主枠3の後枠部材3cとで仕切った上下に貫通する広い開口部6を設けておく。すると、その開口部6を通じて種いもの蒔き付けを行うことができる。
【0015】
このような車体2に対し、その左右外側近傍に走行体7(7a、7b)をクローラ式にし、その各クローラ式走行体7の長さを車体2を構成する主枠3の長さとほぼ等しくし、その主枠3の前側に少し突出するようにして主枠3に沿わせて夫々設置する。そして、車体2の前部上に燃料タンク8付きの走行駆動用エンジン9を設置し、そのエンジン9の近傍前側の少し下方にトランスミッション10を設置する。その際、例えば走行駆動用エンジン9に3馬力のガソリンエンジンを用い、トランスミッション10に前進2段、後進1段の速度切替、前後進切替を行えるものを用いる。
【0016】
すると、エンジン9で発生した回転動力をプーリ11、12、Vベルト13等を介してトランスミッション10に伝えて、主枠3の前枠部材3aの下方に配設した左右のクローラ式走行体7の前回動軸14に伝達でき、更にその前回動軸14の両端部に備え付けられているベルト支持駆動用前車輪15によって、左右のクローラベルト16(16a、16b)に夫々伝達できる。そして、後回動軸は左右の各軸17(17a、17b)に分けて、主枠3の後枠部材3c寄りの下方近くに配設し、その両軸17に備え付けたベルト支持従動用後車輪18によって、左右のクローラベルト16を夫々支える。しかし、後回動軸17には駆動力は伝達されない。なお、前後車輪15、18の間にベルト支持用の補助輪を複数個配設する。
【0017】
又、車体2の中央桟5より少し前側の中央部上に放出管20付きの肥料タンク21を設置する。この放出管20付きの肥料タンク21として、最上部に肥料蒔付用の広い開口を有し、その開口を開閉する上蓋22を備え、内部を肥料収容部にし、下部周壁を順次下方に行く程狭めて最下部付近に吐出口を設けたものを用いる。そして、その最下部に吐出口の開度を調節する吐出口開度調節バルブ23を備え、更に肥料放出管20を連結する。
【0018】
又、車体2の例えば中央桟5の左右中央付近に畝立用培土器24を支持して、その培土器24を種いも蒔付用開口部6に臨ませて設置する。この畝立用培土器24として、左右の板状犂刃25(25a、25b)を両前端が閉じて結合し、後方に行く程開くようにV字状に配置したV形状犂と、その犂の前端部内側に下部を結合し、それより上側に複数例えば4個の止め穴を配設した溝深さ調節棒26との結合体を用いる。そして、図3に示すようにV形状犂に備えた両犂刃25間の後部側に、後端が上がって前方に行く程下がり、水平方向に対して急傾斜例えば45度傾斜した広い台形状のガイド上面を有する種いも蒔付用ガイド部材例えば板体27を、両犂刃25の上端より下げて掛け渡して固着し、その前部側に上下に貫通する小さな蒔付口28を設ける。すると、V形状犂が種いも蒔付ガイド付きになる。
【0019】
又、その畝立用培土器24の装着脱と支持位置を変えられる支持装置29として、中央桟5の左右中央付近に、溝深さ調節棒26が嵌まる垂直貫通穴と、その溝深さ調節棒26に設けた任意の止め穴に嵌まるハンドル付きねじ30を備えた箱形体を設置する。なお、V形状犂の両犂刃25の上下端をいずれも水平にし、溝深さ調節棒26を垂直に配置する。
【0020】
このようにして、溝深さ調節棒26の支持位置を左右クローラ式走行体7の前後中央より少し後方に配置すると、車体2によりV形状犂が引き摺られるので、左右に土盛りして畝を作り、その間に溝を円滑に形成できる。しかも、そのV形状犂の前端付近を除く大部分を種いも蒔付用開口部6の前部空間領域内に臨ませると、その中央部空間領域の左右中央付近に溝を配置できる。又、そのV形状犂の例えば左後端付近に肥料放出管20の口を配置しておくと、順次形成される両畝の盛り土内に肥料を良く混入させて施すことができる。
【0021】
又、車体2の後部中央付近に運転席31を設け、その運転席31を種いも蒔付用開口部6に臨ませる。又、車体2の後部例えばその後部端を形成する主枠3の後枠部材3cの左右中央付近に、畝の盛り土をならして、溝に蒔き付けた種いもに土を被せる覆土器32を取り付ける。この覆土器32として、両前端を大きく開き、両後端を結合した2枚の板体からなるV形状ならし33と、そのならし33の後端部内側に下部を結合し、それより上側に複数例えば3個の止め穴を配設したならし位置調節棒34との結合体を用いる。
【0022】
又、その覆土器32の装着脱と支持位置を変えられる支持装置35として、主枠3の後枠部材3cの左右中央付近に、ならし位置調節棒34が嵌まる垂直貫通穴と、そのならし位置調節棒34に設けた任意の止め穴に嵌まるハンドル付きねじ36を備えた箱形体を設置する。そして、ならし33の両板体の下端を前端側より後端側が少し上がるように傾斜させ、ならし位置調節棒34を垂直に配置する。すると、ならしの途中で走行の障害となる石がでて、ごみの塊等ができても両板体の後端部が前端部より上がってくぐり易くなっているので、それ等がならし33の中央部に集まり、後方に抜けて行く。なお、走行体支持枠4には後枠部材に相当するものを設けない。
【0023】
又、車体2の種いも蒔付用開口部6の付近に、走行駆動用エンジン9の出力を調節するエンジン出力調節レバー37、その走行駆動用エンジン9からトランスミッション10へ伝える駆動力の入り切りの単独操作、及びその駆動力の入り切りと肥料タンク21の吐出口の開閉との連動操作の一方を選択できる主クラッチレバー38、そのトランスミッション10から左右クローラ式走行体7に伝える駆動力の正逆回転方向を切り替える前後進切替レバー39、そのトランスミッション10から左右の各クローラ式走行体7への駆動力の伝達を夫々入り切り操作する左右サイドクラッチレバー40、41等の各操作レバーを設置する。
【0024】
その際、使用頻度の高い操作用レバーを運転席31の近くに設置するため、エンジン出力調節レバー37と主クラッチレバー38は種いも蒔付用開口部6を形成する左右縁部(主枠3の左右枠部材3b、3dの一部)の運転席31近くの内側に夫々配設し、左右サイドクラッチレバー40、41はその左右縁部の運転席31近くの外側に夫々配設する。しかし、前後進切替レバー39はその右縁部の中央桟5近くの内側に設置する。
【0025】
そして、エンジン出力調節レバー37と走行駆動用エンジン9との間、主クラッチレバー38とVベルト13を張ったり、緩めたりするクラッチテンション42との間、及び肥料タンク21の吐出口開度調節バルブ23のスライド式蓋板との間、左右サイドクラッチレバー40、41とトランスミッション10との間を夫々ワイヤーで接続する。しかし、前後進切替レバー39とトランスミッション10との間はロッドで接続する。すると、運転席31に腰掛けた作業者は必要なレバーを簡単に操作できて、植付機1の走行、停止と走行方向の選択、施肥等を適宜行える。
【0026】
又、種いも蒔付用開口部6の左右縁部の前部付近から外側に向けて、種いもを収容したコンテナ等を乗せる種いも置台43(43a、43b)を夫々水平方向に大きく長方形状に張り出し、その左縁部付近又は右縁部付近を少し立ち上げて設ける。又、その左右縁部に対応する下側に配置した走行体支持枠4の左右枠部材の中央部付近から内側に向けて、作業者の足を乗せる足置台44(44a、44b)を夫々水平方向に小さく長方形状に張り出して夫々設ける。又、その走行体支持枠4の左右枠部材の内側に、畝立用培土器26で起された土や石、ごみ等が左右クローラ式走行体7へ侵入するのを防止するため、土石侵入防止部材45(45a、45b)として、例えば長方形状板材をその板面が垂直方向となるようにして夫々配設する。
【0027】
又、車体2の左右外側近傍に設置した両走行体7の一部に、種いも蒔付タイミング音発生装置46を設置する。そして、その種いも蒔付タイミング音発生装置46を、例えば右側のクローラベルト16bを支持する従動用後車輪18の回転位置を指示するベルト支持車輪回転位置指示手段と、その指示手段から出力を得て、植付機1が一定距離前進する毎に種いも蒔き付けタイミングを音により知らせる音発生手段とから構成する。その際、ベルト支持車輪回転位置指示手段として、例えば図4に示すような両端に打撃用突起47(47a、47b)を設けた細長い板体48を用い、その板体48を従動用後車輪18の外面に板体48の中央と後車輪軸17bとを一致させて固着する。なお、板体48を省略して従動用後車輪18の所定位置に打撃用突起47のみを固着してもよい。
【0028】
又、音発生手段として、例えば長柄49の中央を軸50で支え、その前側柄部に棒状の逆回転吸収用スプリング例えばコイルバネ51を介在して、先端に打撃用頭部52を設けたスイングハンマー53と、その打撃用頭部52を受ける音源用受け部材54とを用い、そのハンマー回動軸50と音源用受け部材54とを走行体支持枠4の前後回動軸14、17bを支持する右外枠の内側に固着する。そして、ハンマー53の打撃用頭部52が常時音源用受け部材54に当接するように付勢するため、軸50の端部に戻し用スプリング例えばコイルバネ55を装着する。その際、図5に示すように戻し用コイルバネ55の中央部56を軸50の端部に巻回し、更にそのコイルバネ55の一端部57を後側柄部の外上縁付近に設けた受け突部58に当接し、他端部59を上述した前後回動軸14、17bを支持する右外枠の内側に設けた受け突部60に当接する。又、長柄49の後端を打撃用突起47の回動領域に突出する。
【0029】
このような自走式一人乗用型種いも植付機1は作業者が乗車して運転しながら、種いもの蒔き付け作業を直接手で行うだけでよく、その蒔き付け直前に培土器26で畝立溝切りをし、放出管20付き肥料タンク21からその畝と溝付近に肥料を施し、蒔き付けた種いもに覆土器32で覆土をすることにより、種いもの植え付けに必要な作業を連続して一貫処理できる。しかも、例えば植付機1の寸法が左右クローラ式走行体7を設置した車体2の主要部分の長さが2m、幅が0.7m、全重量が250kgとコンパクトにでき、製品の価格も安くなる。
【0030】
種いも例えばじゃがいもを植え付ける場合、作業者が乗車して運転し、畑の端に植付機1を置いた後、植え付け作業を開始する。その際、作業者は運転席31に腰掛け、両足を足置台44に夫々乗せる。すると、前側に広く開いている車体2の蒔付用開口部6を通して両足の間から直接手でじゃがいもの蒔き付けを行える体勢になる。しかも、作業者が車体の後部に設けた運転席31に腰掛けると、車体2の前部に燃料タンク8付き走行駆動用エンジン9とトランスミッション10等が設置されているので、車体2の前後で重量バランスを取ることができ、車体2の左右外側近傍にクローラ式走行体7が配置されているので、走行の安定性と直進性を確保することができる。
【0031】
そして、車体2の種いも蒔付用開口部6の左右縁部付近に、土石侵入防止部材45を配設しておくと、走行時に畝立用培土器26で起された土や石、ごみが左右クローラ式走行体7へ侵入せずに円滑な走行を行える。しかも、平地では一度植付機1の走行方向を設定すると、走行途中で手による走行方向の修正操作をあまり必要としない。それ故、両方の手が空き種いも蒔き付け作業に専念できる。一方、傾斜地では植付機がずれ落ち易くなり、度々走行方向の修正操作が必要となって、運転に注意を集中しなければならず、どうしても種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力が減少する。
【0032】
そこで、畝立用培土器24に種いも蒔付ガイド付きV形状犂を設置して用いると、平地より傾斜地の方が効果を発揮する。何故なら、種いも蒔き付け時に、そのV形状犂の両犂刃25間の後部側に両犂刃25の上端より下げて掛け渡し、後端が上がって前方へ行く程下がる傾斜したガイド上面を有する種いも蒔付用ガイド部材27の広いガイド上面を利用できる。そして、左右の種いも置き台43から種いもを手に取ってあまり気を使わずに、種いもを広いガイド上面に置き、又は直近上方で離し落下させてそのガイド上面に乗せることができる。
【0033】
すると、ガイド上面は後端が上がって前方に行く程下がり、その後端より前端が狭い台形状の傾斜面となっているので、種いもがそのガイド上面に乗って左右の両端にある両犂刃25の上端側部でガイドされながら落下して行き、前部側に設けた上下に貫通する小さな蒔付口28内に落下する。その結果、運転に注意を集中して植え付け溝を一直線状に作り、種いも蒔き付け作用に振り向ける注意力を減少しても、種いもを蒔付口28から落下させて溝の中心線位置に順次蒔き付けることができる。それ故、蒔き付け作業を適切に行なえて、覆土をすると、種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【0034】
又、走行体7に種いも蒔付タイミング音発生装置46を設置して用いると、植付機の前進時に、ベルト支持従動用後車輪18に備えた2個の打撃用突起47が指示手段として夫々機能し、後車輪18が一回転する毎に2回、即ち矢印で示す左方向に半回転する度に回転位置を打撃により指示する。すると、音発生手段を構成するスイングハンマー53が長柄49の後端に打撃力を受けて、軸50を中心に矢印で示す右方向に回転する。そして、ハンマー53がスイングして打撃用頭部52が一旦音源用受け部材54から上方に離れる。しかし、打撃用突起47が通過して下方に離れて行くと、戻し用コイルバネ55の復元作用により、再度ハンマー53が左方向に回転し、打撃用頭部52が音源用受け部材54を打つ。そこで、打撃用頭部52と音源用受け部材54とを例えば金属製にしておくと、後車輪18が半回転する毎に金属音を発生できる。なお、長柄49の前側柄部に逆回転吸収用コイルバネ51を介在しておくと、後車輪18が逆回転して打撃用突起47が長柄49の後端に打撃力を与えても、逆回転吸収用コイルバネ51の箇所が屈曲して打撃用頭部52と音源用受け部材54とが当接状態を保持するので、音が発生しない。
【0035】
そこで、作業者は運転に注意を集中して前方を見ながら手の感覚のみにより左右にある置台43上のコンテナから種いもを取り、音に合わせて下方を見ないで種いもの蒔き付けを行なえばよい。それ故、種いも蒔き付け作業に振り向ける注意力を減少しても、蒔き付け作業を適切に行なえて、覆土すると、種いも植え付け株間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。なお、ベルト支持従動用後車輪18として例えば直径16cmの車輪を用いると、その車輪が半回転する毎に音が発生するので、株間を約25cmに設定することができる。
【0036】
このような植え付け走行時には、主クラッチレバー38をその切替用ガイド部材66の走行駆動用エンジン9からトランスミッション10に伝える駆動力の入り切りと、肥料タンク21の吐出口開閉との連動操作を行なえる一方の細長い案内穴の最奥部まで移動して置く。すると、走行駆動用エンジン9からトランスミッション10へ駆動力が伝わって走行でき、更に肥料タンク21に備えた吐出口開度調節バルブ23の蓋板をスプリングの付勢力に抗して引くことによって、先に調節して肥料タンク21の吐出口に臨む調節板の穴の大きさが設定されている吐出穴を開いて、肥料タンク21から畝に肥料を施すことができる。
【0037】
そして、種いもの蒔き付けを行いながら、畑の他端部に達したら植え付けを続けるため、植付機1を左又は右方向に転回しなければならない。そこで、先ず主クラッチレバー38を切替用ガイド部材66のニュートラルの位置に戻すと、走行駆動用エンジン9からトランスミッション10に伝わる駆動力が切れ、施肥が停止する。次に、左又は右のサイドクラッチレバー40、41を引き、左又は右クローラ式走行体7の回転を止めた後、主クラッチレバー38を他方の細長い案内穴の最奥部まで移動する。すると、植付機1を左又は右方向に回転できるので、植え付けの走行方向を設定した後、左又は右のサイドクラッチレバー40、41を戻すと、同様にして植え付けを行える。それ故、植付機1に乗車して、じゃがいもの植え付けを行うと、労力的負担を軽減できて、植え付け能率が向上する。
【0038】
上記実施の形態では、自走式一人乗用型種いも植付機1を用いて、平地又は30度未満の傾斜地等に対する種いもの植え付けについて説明したが、30度以上の急傾斜地に使用し、等高線に沿って前進させる場合、植付機1がずれ落ち易くなり、直進性を確保できなくなる。すると、補助運転用ハンドル61が必要となる。そこで、車体2の後端に補助運転用ハンドル61を装着脱可能にして設置する。その際、補助運転用ハンドル61として、図6に示すような大略コ字状に屈曲し、その中央部付近を握り箇所、両側部にある端部を夫々取付箇所にした管状の握り棒62と、その握り棒62の各端部付近を夫々穴付き軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にしてその穴に挿通し、割りピンで止めて取り付けたL形棒状の両サイドクラッチレバー操作用補助レバー63(63a、63b)と、その両サイドクラッチレバー操作用補助レバー63の各軸端部付近を夫々穴付き軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にしてその穴に挿通し、割りピンで止めて取り付け、他端部を軸にして両サイドクラッチレバー40、41と結合、分離可能な連結箇所にするコ形棒状の両連結棒64(64a、64b)とからなる組立体を用いる。
【0039】
又、種いも植付機1の補助運転用ハンドル装着脱構造として、車体2の主枠3の左右後隅部付近に、握り棒62の各端部が嵌め込み、引き抜きにより結合、分離可能な円筒状のハンドル支持部65(65a、65b)を夫々設け、更に車体2の左右に配置した両サイドクラッチレバー40、41に両連結棒64の各他端部が嵌め込み、引き抜きにより結合、分離可能な穴付き軸支箇所を夫々設ける。なお、握り棒62の両端部と対応するハンドル支持部65との結合には止めねじ、両連結棒64と対応するサイドクラッチレバー40、41との結合には割りピンを夫々用いる。
【0040】
このような補助運転用ハンドル61を装着した植付機1による種いも植え付け時、乗用以外の作業者が一人加わって、植付機1の直近後方を歩行しながら補助運転用ハンドル61の握り棒62を持ってずれ落ちないように植付機1を支持し、適宜左右のサイドクラッチレバー操作用補助レバー63を操作する等し、乗用作業者の運転操作と協同する。それ故、急斜面の走行時に植付機1のずれ落ちを防止し、直進性を確保できるので、急傾斜地において種いも植え付け畝間を一定に保ち易く、その後の農作業に適したものになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した自走式一人乗用型種いも植付機の概略平面図である。
【図2】同種いも植付機の概略右側面図である。
【図3】同種いも植付機の種いも蒔付用開口部に設置する種いもガイド付き畝立用培土器の平面図である。
【図4】同種いも植付機の走行体に設置する種いも蒔付タイミング音発生装置の右側面図である。
【図5】同音発生装置の戻し用コイルバネ付近を示す右側面図である。
【図6】同種いも植付機に設置する補助運転用ハンドルの背面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…自走式一人乗用型種いも植付機 2…車体 3…主枠 4…走行体支持枠 5…中央桟 6…種いも蒔付用開口部 7…クローラ式走行体 8…燃料タンク 9…走行駆動用エンジン 10…トランスミッション 11、12…プーリ 13…Vベルト 14、17…前後回動軸 15…ベルト支持駆動用前車輪 16…クローラベルト 18…ベルト支持従動用後車輪 20…肥料放出管 21…肥料タンク 23…吐出口開度調節バルブ 24…畝立用培土器 25…犂刃 26…溝深さ調節棒 27…種いも蒔付用ガイド部材 28…蒔付口 29、35…支持装置 31…運転席 32…覆土器 33…ならし 37…エンジン出力調節レバー 38…主クラッチレバー 39…前後進切替レバー 40、41…左右サイドクラッチレバー 42…クラッチテンション 43…種いも置台 44…足置台 45…土石侵入防止部材 46…種いも蒔付タイミング音発生装置 47…打撃用突起 49…長柄 50…軸 51…逆回転吸収用コイルバネ 52…打撃用頭部 53…スイングハンマー 54…音源用受け部材 55…戻し用コイルバネ 61…補助運転用ハンドル 62…握り棒 63…サイドクラッチレバー操作用補助レバー 64…連結棒 65…ハンドル支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に、走行駆動用エンジンと、クローラ式走行体と、その走行駆動用エンジンから走行体に駆動力を伝えるトランスミッションを設置し、種いも蒔付用の上下方向に貫通する開口部を設け、その種いも蒔付用開口部に臨ませて畝立用培土器を設置し、更に種いも蒔付用開口部の付近に運転席を設け、覆土器を設置した自走式一人乗用型種いも植付機であって、上記畝立用培土器に、左右の犂刃を両前端が閉じて後方に行く程開くようにV字状に配置し、その両犂刃間の後部側に、後端が上がって前方に行く程下がる傾斜したガイド上面を有する種いも蒔付用ガイド部材を、両犂刃の上端より下げて掛け渡し、その前部側に上下に貫通する蒔付口を設けた種いも蒔付ガイド付きV形状犂を設置することを特徴とする自走式一人乗用型種いも植付機。
【請求項2】
車体に、走行駆動用エンジンと、クローラ式走行体と、その走行駆動用エンジンから走行体に駆動力を伝えるトランスミッションを設置し、種いも蒔付用の上下方向に貫通する開口部を設け、種いも蒔付用開口部に臨ませて畝立用培土器を設置し、更に種いも蒔付用開口部の付近に運転席を設け、覆土器を設置した自走式一人乗用型種いも植付機であって、上記種いも植付機に、走行体のクローラベルトを支持するベルト支持車輪の回転位置を指示するベルト支持車輪回転位置指示手段と、その指示手段から出力を得て、植付機が一定距離前進する毎に種いも蒔き付けタイミングを音により知らせる音発生手段とからなる種いも蒔付タイミング音発生装置を設置することを特徴とする自走式一人乗用型種いも植付機。
【請求項3】
車体に、走行駆動用エンジンと、クローラ式走行体と、その走行駆動用エンジンから走行体に駆動力を伝えるトランスミッションを設置し、種いも蒔付用の上下方向に貫通する開口部を設け、その種いも蒔付用開口部に臨ませて畝立用培土器を設置し、更に種いも蒔付用開口部の付近に運転席を設け、覆土器を設置した自走式一人乗用型種いも植付機であって、上記種いも植付機の補助運転用ハンドルとして、大略コ字状に屈曲し、その中央部付近を握り箇所、両側にある端部を夫々取付箇所にした握り棒と、その握り棒の各端部付近を夫々軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にして取り付けた棒状の両サイドクラッチレバー操作用補助レバーと、その両サイドクラッチレバー操作用補助レバーの各軸端部付近を夫々軸支箇所にして、その各軸支箇所に夫々一端部を軸にして取り付け、他端部を軸にして両サイドクラッチレバーとの結合、分離可能な連結箇所にする棒状の両連結棒とからなる組立体を備え、その補助運転用ハンドル装着脱構造として、種いも植付機の車体の左右後端に、握り棒の各端部が結合、分離可能なハンドル支持部を夫々設け、更に車体の左右に配置した両サイドクラッチレバーに両連結棒の各他端部が結合、分離可能な軸支箇所を夫々設けることを特徴とする自走式一人乗用型種いも植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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