説明

自走式掃除機

【課題】床面の状態に応じた態様で掃除を行うことにより良好に掃除を行う。
【解決手段】自走式掃除機1の本体2の底面左端部に、2つの段差検知センサ(左外側段差検知センサ363と左内側段差検知センサ364)を左右に並べて配置する。段差を検知した場合には、左内側段差検知センサ364で床面を検出し、左外側段差検知センサ363で段差を検出しながら本体2を走行させることにより、本体2が段差に落下しないように、段差の手前側の床面に沿って本体2を走行させる。
【効果】段差を検出する度に本体2を後退させるような構成と比較して、段差の手前側の床面上にあるごみを短時間で良好に吸い込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体を床面に沿って自走させて、自動で掃除を行うことができる自走式掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、掃除機に移動機能を付加し、マイクロコンピュータと各種センサを搭載した、いわゆる自立誘導型の自走式掃除機が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。この種の自走式掃除機によれば、本体を床面において運転を開始させるだけで、本体が床面上を自動的に移動して床面上が満遍なく掃除されるので、掃除の手間がかからず非常に便利である。
【0003】
床面に段差がある場合などには、そのまま本体を走行させると、本体が段差に落下してしまう。この場合、掃除が中断してしまうだけでなく、自走式掃除機の本体が故障してしまうおそれがある。そこで、床面の段差を検知するための手段を設けて、段差を検知した場合には、それに応じた制御を行うようにした自走式掃除機が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
また、床面の種類としては、フローリング、畳、絨毯などがあり、それらの床面の種類に応じた態様で掃除を行わなければ、フローリングや畳を傷つけたり、絨毯に絡まっている糸くずなどのごみを良好に吸い込むことができなかったりするおそれがある。
【特許文献1】特開平6−327599号公報
【特許文献2】特開2004−174149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、床面の状態に応じた態様で掃除を行うことにより良好に掃除を行うことができる自走式掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、本体(2)を床面に沿って自走させ、上記本体に備えられた吸込口(6)から床面上のごみを吸い込むことにより、自動で掃除を行うことができる自走式掃除機(1)であって、上記本体が走行する床面を検出するための床面検出手段(364)と、上記床面上にある段差を検出するための段差検出手段(363)と、上記床面検出手段で床面を検出し、上記段差検出手段で段差を検出しながら上記本体を走行させることにより、上記本体が段差に落下しないように、段差の手前側の床面に沿って上記本体を走行させる手段(51,SF8)とを含むことを特徴とする自走式掃除機である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素などを表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、本体が段差に落下しないように、段差の手前側の床面に沿って本体を走行させることができるので、段差を検出する度に本体を後退させるような構成と比較して、段差の手前側の床面上にあるごみを短時間で良好に吸い込むことができる。したがって、床面の状態に応じた態様で掃除を行うことにより良好に掃除を行うことができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記本体(2)の下面に上下動可能に配置された車輪(3)と、上記車輪が床面の段差に落下して、その自重により下方に変位した場合に、上記本体の運転を停止させる緊急停止手段(51)とをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の自走式洗濯機(1)である。
この構成によれば、床面の段差に車輪が落下して本体が走行不可能となった状態で、自走式掃除機の運転が無駄に継続されるのを防止できる。
【0009】
請求項3記載の発明は、本体(2)を床面に沿って自走させ、上記本体に備えられた吸込口(6)から床面上のごみを吸い込むことにより、自動で掃除を行うことができる自走式掃除機(1)であって、上記本体の下面に上下動可能に配置された車輪(4L,4R)と、上記車輪を下方に向かって付勢する付勢手段と、上記車輪の上下位置を検出する車輪位置検出手段(63L,63R)と、上記車輪位置検出手段により検出される上記車輪の上下位置に応じて異なる態様で、上記本体の動作を制御する制御手段(51)とを含むことを特徴とする自走式掃除機である。
【0010】
たとえば、車輪が絨毯の上にあるような場合には、その車輪が絨毯内にもぐり込み、本体の底面(特に、吸込口の周辺)が絨毯の毛先で受けられる場合がある。この場合、車輪に作用する本体の自重が減少し、本体に対する車輪の突出量が大きくなる。
この発明の構成によれば、車輪の上下位置(車輪の本体に対する突出量)に応じて異なる態様で本体の動作が制御されるので、床面の状態に応じた態様で掃除を行うことにより良好に掃除を行うことができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、回転可能に設けられ、床面上のごみを上記本体(2)側に掻き寄せるための掻き寄せ手段(40)をさらに含み、上記制御手段(51)は、上記車輪位置検出手段(63L,63R)により検出される上記車輪(4L,4R)の上下位置が下方であるほど、上記掻き寄せ手段の回転数を上昇させる(SG4)ものであることを特徴とする請求項3記載の自走式掃除機(1)である。
【0012】
この構成によれば、本体が絨毯上にあるときのように、車輪の上下位置が下方である場合(車輪の本体に対する突出量が大きい場合)には、掻き寄せ手段の回転数が上昇されるので、絨毯に絡まっている糸くずなどのごみを良好に吸い込むことができる。
また、本体がフローリング上や畳上にあるときのように、車輪の上下位置が上方である場合(車輪の本体に対する突出量が小さい場合)には、掻き寄せ手段の回転数が低下されるので、より少ない電力でフローリング上や畳上にあるごみを良好に吸い込むことができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、上記吸込口(6)から床面上のごみを吸い込むために駆動される吸込モータ(11)をさらに含み、上記制御手段(51)は、上記車輪位置検出手段(63L,63R)により検出される上記車輪(4L,4R)の上下位置が下方であるほど、上記吸込モータの回転数を上昇させる(SG2)ものであることを特徴とする請求項3または4記載の自走式掃除機(1)である。
【0014】
この構成によれば、本体が絨毯上にあるときのように、車輪の上下位置が下方である場合(車輪の本体に対する突出量が大きい場合)には、吸込モータの回転数が上昇されるので、絨毯に絡まっている糸くずなどのごみを良好に吸い込むことができる。
また、本体がフローリング上や畳上にあるときのように、車輪の上下位置が上方である場合(車輪の本体に対する突出量が小さい場合)には、吸込モータの回転数が低下されるので、より少ない電力でフローリング上や畳上にあるごみを良好に吸い込むことができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、上記本体(2)を走行させるための走行手段(8L,8R)をさらに含み、上記制御手段(51)は、上記車輪位置検出手段(63L,63R)により検出される上記車輪(4L,4R)の上下位置が下方であるほど、上記走行手段により走行される上記本体の速度を低下させる(SG5)ものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の自走式掃除機(1)である。
【0016】
この構成によれば、本体が絨毯上にあるときのように、車輪の上下位置が下方である場合(車輪の本体に対する突出量が大きい場合)には、本体の走行速度が低下されるので、絨毯に絡まっている糸くずなどのごみを良好に吸い込むことができる。
また、本体がフローリング上や畳上にあるときのように、車輪の上下位置が上方である場合(車輪の本体に対する突出量が小さい場合)には、本体の走行速度が上昇されるので、より少ない電力でフローリング上や畳上にあるごみを良好に吸い込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る自走式掃除機1の平面図である。図2は、この自走式掃除機1の正面図である。図3は、この自走式掃除機1を前後方向に沿った鉛直面で切断したときの断面を左側から見た図である。図4は、この自走式掃除機1の底面図である。図1における自走式掃除機1の下側を前方、上側を後方、右側を左方、左側を右方として説明する。
【0018】
図1〜図4を参照して、この自走式掃除機1は、直径33cm程度の平面視略円形の本体2を備え、この本体2の底面に回転可能に取り付けられた複数の車輪(1つの前輪3、左右1対の後輪4L,4Rおよび1つの補助輪5)を床面に沿って転動させることにより本体2を床面に沿って自走させつつ、本体2に備えられた吸込口6から床面上のごみを吸い込むことにより、自動で掃除を行うことができるものである。
【0019】
本体2の底面前側の左右方向中央部には、その一端部に前輪3を回転自在に保持する前輪保持部材7の他端部が揺動可能に取り付けられており、これにより、前輪3が本体2の底面に対して上下動可能となっている。1対の後輪4L,4Rは、本体2の底面の前後方向中央部に、左右に互いに一定間隔(たとえば、258mm程度)を空けて左右対称に配置されている。各後輪4L,4Rの直径は、たとえば、80mm程度である。1対の後輪4L,4Rには、それぞれ別個の走行用モータ8L,8Rが連結されており、これらの走行用モータ8L,8Rを駆動させることにより、本体2を走行させることができるようになっている。補助輪5は、本体2の底面後側の左右方向中央部に、回転自在に取り付けられている。
【0020】
この自走式掃除機1が前方に向かって走行しているときに、床面の段差に前輪3が落下した場合には、前輪保持部材7が本体2の自重から解放され、下方に向かって揺動することとなる。本体2には、前輪保持部材7が下方に揺動して前輪3が下がったことを検知するための前輪スイッチ(図示せず)が備えられていて、この前輪スイッチからの入力信号に基づいて、床面の段差に前輪3が落下したか否かを検知することができるようになっている。
【0021】
1対の後輪4L,4Rは、それぞれ別個の後輪保持部材9L,9Rにより回転可能に保持されており、これらの後輪保持部材9L,9Rは、本体2内に上下方向に延びるように配置された軸10L,10Rに対して、上下方向に変位可能に取り付けられている。各後輪保持部材9L,9Rは、たとえば、ばねなどの付勢手段により下方に付勢されている。したがって、本体2を床面上に置いた状態では、本体2の自重により、各後輪保持部材9L,9Rが付勢手段の付勢力に抗して上方に変位した状態となる。左右の後輪保持部材9L,9Rとそれらに対応する軸10L,10Rとの間には、それぞれ、ポテンショメータ(図示せず)が介装されている。
【0022】
本体2内には、吸込口6からごみを吸い込むために駆動される吸込モータ11と、吸込口6から吸い込まれたごみを捕獲するための集塵装置12とが備えられている。集塵装置12は、本体2内の後側を上下方向に延びる風路13を介して吸込口6に連通する集塵室14内に配置されている(図3参照)。集塵装置12は、たとえば、使い捨ての紙パックであって、台紙15と、台紙15に形成された入口15Aを覆うように台紙15の前面に取り付けられた紙フィルタ16とを備えている。
【0023】
集塵装置12は、風路13と集塵室14とを連通する連通孔17に取り付けられたパッキン18に台紙15が押し当てられることにより、入口15Aが連通孔17に対向した状態で、台紙15が固定部19により固定されている。集塵室14の上面は開口されており、その開口を上面カバー20で開閉することができるようになっている。集塵装置12内に一定量以上のごみが溜まった場合には、上面カバー20を開いて集塵室14を開放することにより、集塵装置12を集塵室14から取り外し、新しい集塵装置12を集塵室14内に装着することができる。
【0024】
ただし、集塵装置12は、使い捨てのものに限らず、繰り返し使用可能なものであってもよい。この場合、集塵装置12内に一定量以上のごみが溜まった場合には、上面カバー20を開いて集塵室14を開放することにより、集塵装置12を集塵室14から取り外し、集塵装置12内に溜まったごみを捨てて、再び集塵室14内に装着することができる。
吸込口6は、本体2の底面後側に、左右方向に延びるように形成されている。本体2内には、左右方向に延びる回転軸21を中心に回転可能なパワーブラシ22が、吸込口6に臨むように配置されている。パワーブラシ22の回転軸21の外周面には、螺旋状の羽根が突出形成されている。回転軸21の一端部(右端部)の前方側には、パワーブラシ22を回転駆動するためのパワーブラシ用モータ23が配置されており、そのパワーブラシ用モータ23の駆動軸24とパワーブラシ22の回転軸21とにベルト25が掛け回されている。
【0025】
この自走式掃除機1で掃除を行う際には、吸込モータ11およびパワーブラシ用モータ23が回転駆動され、吸込モータ11の吸込力と高速回転するパワーブラシ22の作用により、吸込口6から床面上の空気が勢いよく吸い込まれ、その空気が風路13を通って集塵室14内の集塵装置12に導かれる。そして、集塵装置12に導かれた空気が紙フィルタ16を通過する過程で、その空気に含まれるごみ(塵埃など)が捕獲される。ごみが捕獲された後の空気は、集塵室14から吸込モータ11内に吸い込まれた後、吸込モータ11の外部に漏れ出し、本体2の隙間から機外に排出される。
【0026】
本体2内における集塵室14の下方には、この自走式掃除機1の制御に必要な各種電気部品が実装面に実装されたメイン基板26やサブ基板27が、それらの実装面が下方を向くようにして水平に配置されている。本体2の底面には、メイン基板26やサブ基板27の前端部に対向する位置に開口28が形成されており、この開口28を開閉蓋29により開閉することができるようになっている(図3参照)。
【0027】
このような構成によれば、メイン基板26やサブ基板27の実装面が開口28に臨んでいるので、開口28を介して上記電気部品に含まれるコネクタの接続作業を容易に行うことができる。また、開口28を開閉蓋29で覆うことにより、開口28を介して本体2内にごみが進入するのを防止できるので、この自走式掃除機1が故障するのを防止できる。さらに、本体2内にメイン基板26やサブ基板27を組み込んだ後に、開口28を介してコネクタの接続作業を行うことができるので、作業性がより向上する。
【0028】
本体2の外周面(側面)の前後方向中央部から前側にかけての部分は、平面視略半円弧状のバンパ30により覆われている。バンパ30の後面の左右両側には、それぞれ後方に向かって軸31L,31Rが突出しており、これらの軸31L,31Rが本体2により前後方向に変位可能に保持されている。各軸31L,31Rには、付勢手段としてのばね32L,32Rが取り付けられており、それぞればね32L,32Rにより前方側に付勢されている。
【0029】
この自走式掃除機1が前方に向かって走行しているときに、本体2が前方の障害物に衝突した場合には、バンパ30がばね32L,32Rの付勢力に抗して後方に変位する。各軸31L,31Rの後端部には、各軸31L,31Rが後方に変位したことを検知するためのバンパスイッチ33L,33Rが配置されており、このバンパスイッチ33L,33Rを用いて、本体2が前方の障害物に衝突したか否かを検知することができる。
【0030】
バンパ30の外周面には、それぞれ略円形に形成された複数(たとえば。16個)の凹部34が、水平方向に互いに一定間隔を空けて配置されている。各凹部34は、たとえば、バンパ30の外周面の周方向に沿って約11.25°毎に、それぞれバンパ30の外周面の径方向へと窪むように形成されている。この自走式掃除機1には、超音波を発信する発信部351A〜358Aと、発信部351A〜358Aから発信された超音波の反射波を受信する受信部351B〜358Bとを含む複数対(たとえば、8対)の超音波センサ(障害物検知センサ351〜358)が備えられており、これらの8対の障害物検知センサ351〜358の発信部351A〜358Aおよび受信部351B〜358Bが、16個の凹部34内に1つずつ配置されている。
【0031】
より具体的には、左端の互いに隣接する2つの凹部34には1対の第1障害物検知センサ351が、その右側に隣接する2つの凹部34には1対の第2障害物検知センサ352が、その右側に隣接する2つの凹部34には1対の第3障害物検知センサ353が、その右側に隣接する2つの凹部34には1対の第4障害物検知センサ354が、その右側に隣接する(バンパ30の前端部の)2つの凹部34には1対の第5障害物検知センサ355が、その右側に隣接する2つの凹部34には1対の第6障害物検知センサ356が、その右側に隣接する2つの凹部34には1対の第7障害物検知センサ357が、その右側に隣接する(右端の)2つの凹部34には1対の第8障害物検知センサ358が、それぞれ配置されている。
【0032】
これにより、第1〜第8障害物検知センサ351〜358が、バンパ30の外周面の周方向に沿って約22.5°毎に配置されている。これらの第1〜第8障害物検知センサ351〜358は、その発信部351A〜358Aから水平方向に向かって超音波を発信し、障害物で反射する反射波を受信部351B〜358Bで受信することにより、本体2と障害物との距離を検出し、これにより、障害物があるか否かを検知するためのものであり、本体2の前方側約180°の方向にある障害物を検知することができる。
【0033】
本体2の底面には、赤外線を照射する発光部と、発光部から照射された赤外線の反射光を受光する受光部とを含む光学式の赤外線センサからなる段差検知センサが、底面の前端部に1つ(前段差検知センサ361)、底面の右端部に1つ(右段差検知センサ362)、底面の左端部に左右方向に並べて2つ(左外側段差検知センサ363および左内側段差検知センサ364)、それぞれ配置されている。これらの段差検知センサ361〜364は、その発光部から下方に向かって赤外線を照射し、床面で反射する反射光を受光部で受光することにより、本体2の底面と床面との距離を検出し、これにより、床面に段差があるか否かを検知するためのものである。
【0034】
本体2の上面の前側(上面カバー20の前方)には、複数(たとえば、3つ)のLED素子を含むLED表示部37と、この自走式掃除機1の電源のオン/オフやモード選択などの操作を行うためのキー操作部38と、この自走式掃除機1の上方にある対象物との距離を検出する上面センサ39とが配置されている。上面センサ39は、赤外線を照射する発光部39Aと、発光部39Aから照射された赤外線の反射光を受光する受光部39Bとを含む光学式の赤外線センサからなり、その発光部39Aから上方に向かって赤外線を照射し、対象物で反射する反射光を受光部39Bで受光することにより、上方に対象物があるか否かを検知するためのものである。
【0035】
この自走式掃除機1では、通常運転モードの他に、吸込モータ11の駆動電圧が通常運転モードの半分になるように制御されるエコノミー運転モードや、床面に置かれた本体2の周囲の所定範囲内(たとえば、1m四方)で本体2を走行させるスポット運転モードなどで運転を行うことができる。スポット運転モードでは、吸込モータ11の駆動電圧が通常運転モードの2倍になるように制御される。
【0036】
本体2の左前下方には、床面上のごみを本体2側に掻き寄せるための回転ブラシ40が、鉛直方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に配置されている。回転ブラシ40は、円板状のブラシ保持部材41と、このブラシ保持部材41の下面周縁部から下方に延びるように保持された複数本のブラシ42とを備えている。ブラシ保持部材41の上面中央部には、略く字状のアーム43の一端部が固定されており、このアーム43の他端部が、本体2内に上下方向に延びるように配置された揺動軸44を中心に揺動可能に保持されている。
【0037】
アーム43の屈曲部には、回転ブラシ用モータ45が設けられており、アーム43内には、回転ブラシ用モータ45の駆動力をブラシ保持部材41に伝達するための伝達機構(図示せず)が備えられている。回転ブラシ用モータ45が回転されると、その駆動力が伝達機構を介してブラシ保持部材41に伝達され、回転ブラシ40が、図1における時計回り(図4における反時計回り)に回転されるようになっている。
【0038】
本体2の底面には、アーム43の揺動軸44を中心に円弧状の開口46が形成されている(図4参照)。アーム43は、その他端部が開口46を介して本体2内に入り込み、揺動軸44に取り付けられている。アーム43は、その屈曲部が開口46の一端部(左端部)に位置する第1の姿勢と、屈曲部が開口46の他端部(右端部)に位置する第2の姿勢との間で揺動可能となっている。アーム43が第1の姿勢にあるときには、図4に示すように、ブラシ保持部材41が本体2の左端よりも左方に張り出し、かつ、本体2の前端よりも前方に張り出している。一方、アーム43が第2の姿勢にあるときには、図5に示すように、ブラシ保持部材41が本体2の下方に位置し、平面視で本体2から張り出さない状態となっている。
【0039】
揺動軸44には、付勢手段としてのばね47が取り付けられており、アーム43は、ばね47の付勢力により第1の姿勢側へと付勢されている。アーム43は、アーム用モータ(図示せず)の駆動により、ばね47の付勢力に抗して第2の姿勢側へと揺動可能であり、ラッチ機構(図示せず)により第2の姿勢で係止保持することができるようになっている。
【0040】
揺動軸44は、外周面にねじが切られたボルト状をなし、ナット(図示せず)にねじ込まれることにより保持されている。したがって、揺動軸44を回転させることにより、ナットに対して揺動軸44を上下動させることができる。揺動軸44にはブラシ上下用モータ(図示せず)が連結されており、このブラシ上下用モータが駆動されることにより、揺動軸44が回転し、アーム43およびアーム43に取り付けられた回転ブラシ40が上下動するようになっている。
【0041】
図6は、回転ブラシ40の周辺の構成を拡大して示す平面図である。
本体2内には、アーム43が図6に実線で示すような第1の姿勢にある状態でアーム43に対して第2の姿勢側と反対側(図6における時計回り)に力が加わった場合に、アーム43に接触してオンされるリバーススイッチ48と、アーム43が図6に破線で示すような第2の姿勢にあるときにアーム43に接触してオンされるリミットスイッチ49とが配置されている。上下に細長い障害物などは、障害物検知センサ351〜358で検知できない場合があり、このような障害物が回転ブラシ40に衝突したときには、アーム43が揺動して、リバーススイッチ48やリミットスイッチ49がオンされる場合がある。したがって、リバーススイッチ48やリミットスイッチ49を用いて、本体2が障害物に衝突したか否かを検知することができる。
【0042】
本体2の走行中に、リバーススイッチ48やリミットスイッチ49により本体2が障害物に衝突したと検知した場合には、後述のようにバンパスイッチ33L,33Rにより本体2が障害物に衝突したと検知した場合と同様に、本体2が回転されるなどしてその進行方向が変更されるようになっている。このとき、本体2の進行方向が平面視で時計回り(本体2の進行方向に対して回転ブラシ40が配置されている側(左側)から反対側(右側))に変更されるようになっていれば、障害物の周囲のごみを本体2側に良好に掻き寄せることができる。
【0043】
図7は、この自走式掃除機1の電気的構成を示すブロック図である。
図7を参照して、この自走式掃除機1は、メイン基板26と、サブ基板27と、表示基板50とを備えている。メイン基板26は、CPU51と、吸込モータ駆動部52と、パワーブラシ用モータ駆動部53と、アーム用モータ駆動部54Aと、ブラシ上下用モータ駆動部54Bと、回転ブラシ用モータ駆動部55と、電流検出部56と、走行用モータドライバ57と、電池容量電圧変換部58と、電源回路部59と、発光制御・受光増幅部60と、スピーカ61とを備えている。吸込モータ駆動部52、パワーブラシ用モータ駆動部53、アーム用モータ駆動部54A、ブラシ上下用モータ駆動部54B、回転ブラシ用モータ駆動部55、走行用モータドライバ57、電池容量電圧変換部58、発光制御・受光増幅部60およびスピーカ61は、それぞれCPU51に直接接続されている。
【0044】
吸込モータ11は、吸込モータ駆動部52に接続されている。パワーブラシ用モータ23は、パワーブラシ用モータ駆動部53に接続されている。アーム用モータ62Aは、アーム用モータ駆動部54Aに接続されている。ブラシ上下用モータ62Bは、ブラシ上下用モータ駆動部54Bに接続されている。回転ブラシ用モータ45は、回転ブラシ用モータ駆動部55に接続されている。電流検出部56は、回転ブラシ用モータ駆動部55から回転ブラシ用モータ45へと流れる駆動電流を検出して、CPU51に与えるためのものであり、CPU51は、電流検出部56で検出する電流値に基づいて、回転ブラシ40が障害物に引っ掛かるなどしてロックしていないかどうかを検知することができる。
【0045】
リミットスイッチ49およびリバーススイッチ48は、それぞれCPU51に接続されている。左右のポテンショメータ63L,63Rは、それぞれCPU51に接続されている。左右の走行用モータ8L,8Rは、それぞれ走行用モータドライバ57に接続されている。
左右の走行用モータ8L,8Rには、それぞれ走行距離検出用の磁気式(たとえば、8極2相)のエンコーダ部64L,64Rが対応付けて設けられており、これらのエンコーダ部64L,64Rは走行用モータドライバ57に接続されている。走行用モータドライバ57には、エンコーダ部64L,64Rから入力される波形を整形するためのエンコーダ波形整形部65が備えられている。
【0046】
電源回路部59には、電源スイッチ66を介してバッテリ67(たとえば、24V)が接続されており、この電源回路部59は、電池容量電圧変換部58を介してCPU51に接続されている。電源回路部59は、バッテリ67の電圧をCPU51に供給するのに適した電圧に変換するためのものである。また、電池容量電圧変換部58は、バッテリ67の過放電を防止するためのものである。
【0047】
LED表示部37およびキー操作部38は、表示基板50を介してCPU51に接続されている。左右のバンパスイッチ33L,33Rは、それぞれCPU51に接続されている。前輪スイッチ68は、CPU51に接続されている。障害物検知センサ351〜358は、サブ基板27を介してCPU51に接続されている。段差検知センサ361〜364および上面センサ39は、それぞれ、発光制御・受光増幅部60に接続されている。
【0048】
図8は、障害物検知センサ351〜358の受信部351B〜358Bにおける受信波形の一例を示す図である。図9は、障害物検知センサ351〜358により障害物を検知する際のCPU51による制御の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、障害物検知センサ351〜358の受信部351B〜358Bにおける受信波形には、発信部351A〜358Aから発信される超音波の障害物での反射波の他に、発信部351A〜358Aから発信される超音波の直接波やノイズなどが表れる。そこで、障害物検知センサ351〜358により障害物を検知する際には、受信部351B〜358Bにおける出力電圧Vを2つの閾値V1,V2(V1<V2)と比較することにより、直接波やノイズの影響で、障害物があると誤検知してしまうのを防止できるようになっている。
【0049】
CPU51は、この自走式掃除機1を走行させている間、障害物検知センサ351〜358の受信部351B〜358Bにおける出力電圧Vを閾値V1と比較し、V>V1となったか否かを監視している(図9のステップSA1)。
メイン基板26には、この自走式掃除機1の運転開始からの時間を計時する計時手段と、時間を記憶するための時間記憶部とが備えられている(図示せず)。V>V1となった場合には(ステップSA1でYES)、CPU51は、運転開始からそのときまでの時間t1を時間記憶部に保持(記憶)する(ステップSA2)。その後、CPU51は、V≦V1となったか否か(ステップSA3)、および、V>V2となったか否か(ステップSA4)を監視する。そして、V>V2となることなくV≦V1となった場合には(ステップSA3でYES)、CPU51は、出力電圧Vの変化が直接波やノイズの影響によるものと判断して、再び、V>V1となったか否かを監視する(ステップSA1)。
【0050】
一方、V≦V1となることなくV>V2となった場合には(ステップSA4でYES)、CPU51は、運転開始からそのときまでの時間t2を時間記憶部に保持(記憶)し(ステップSA5)、Δt=t2−t3の計算式によりΔtを算出する(ステップSA6)。そして、Δt<350msecの場合には(ステップSA7でYES)、CPU51は、(V2−V1)/Δtの傾きを有する直線を用いた近似計算(図8参照)により、障害物を検出した時点(出力電圧Vの変化が開始した時点)の時間tを算出し(ステップSA8)、その時間tに基づいて障害物との距離を検出する(ステップSA10)。
【0051】
Δt≧350msecの場合には(ステップSA7でNO)、ステップSA8のような近似計算により生じる誤差が大きいため、CPU51は、t=t2−Δt/3の計算式により、障害物を検出した時点(出力電圧Vの変化が開始した時点)の時間tを算出し(ステップSA9)、その時間tに基づいて障害物との距離を検出する(ステップSA10)。障害物がやわらかいものである場合などには、Δt≧350msecとなりやすい。
【0052】
図10は、通常運転モードまたはエコノミー運転モードで運転を行う際のCPU51による制御の流れを示すフローチャートである。
図10を参照して、通常運転モードまたはエコノミー運転モードで運転が開始されると、CPU51は、まず、左右の走行用モータ8L,8Rを同じ速度で回転駆動させ、1対の後輪4L,4Rを同じ速度で回転させることにより、本体2を前方に直進させる(ステップSB1)。本体2を前方に直進させている間、CPU51は、バンパスイッチ33L,33Rがオンしたか否か(ステップSB2)、第2〜第8障害物検知センサ352〜358により本体2の前方に障害物を検知したか否か(ステップSB4)、および、本体2が予め定められた最大走行距離(たとえば、10m)以上直進したか否か(ステップSB6)を監視している。本体2が最大走行距離以上直進したか否かの判断は、左右の走行用モータ8L,8Rのエンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて行われる。
【0053】
本体2が最大走行距離以上直進した場合には(ステップSB6でYES)、CPU51は、この自走式掃除機1の運転を強制的に終了させる。バンパスイッチ33L,33Rがオンした場合(ステップSB2でYES)、すなわち、バンパ30が壁に衝突した場合には、CPU51は、本体2を壁から回避させるための制御(壁回避)を行う(ステップSB3)。第2〜第8障害物検知センサ352〜358により障害物を検知した場合(ステップSB4でYES)、すなわち、本体2の前方の所定距離以内(たとえば、50mm以内)に障害物がある場合、CPU51は、本体2が障害物に衝突するのを回避するための制御(衝突回避)を行う(ステップSB5)。
【0054】
図11は、壁回避の際のCPU51による制御の流れを示すフローチャートである。
図11を参照して、壁回避の際、CPU51は、まず、停止コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを停止させる(ステップSC1)。そして、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて後輪4L,4Rの回転が停止したか否かを確認し(ステップSC2)、その停止を確認すると(ステップSC2でYES)、後退コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを回転させることにより、本体2を後退させる(ステップSC3)。後退コマンドは、所定速度(たとえば、150mm/s)で所定距離(たとえば、50mm)だけ本体2を後退させるためのコマンドである。
【0055】
その後、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて本体2の後退が完了したか否かを判断し(ステップSC4)、後退が完了すると(ステップSC4でYES)、回転コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを回転させることにより、本体2を回転させる(ステップSC5)。回転コマンドは、所定回転速度(たとえば、50°/s)で所定角度(たとえば、左のバンパスイッチ33Lがオンした場合には45°、右のバンパスイッチ33Rがオンした場合には90°)だけ本体2を回転させるためのコマンドである。そして、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて本体2の回転が完了したか否かを判断し(ステップSC6)、回転が完了した時点で(ステップSC6でYES)、壁回避を終了する。
【0056】
図12は、衝突回避の際のCPU51による制御の流れを示すフローチャートである。
図12を参照して、衝突回避の際、CPU51は、まず、停止コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを停止させる(ステップSD1)。そして、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて後輪4L,4Rの回転が停止したか否かを確認し(ステップSD2)、その停止を確認すると(ステップSD2でYES)、回転コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを回転させることにより、本体2を回転させる(ステップSD3)。回転コマンドは、所定回転速度(たとえば、50°/s)で所定角度(たとえば、0〜180°の間でランダムに決定された角度)だけ本体2を回転させるためのコマンドである。
【0057】
その後、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて本体2の回転が完了したか否かを判断し(ステップSD4)、回転が完了した時点で(ステップSD4でYES)、衝突回避を終了する。
壁回避や衝突回避の際、前方に直進していた本体2は、停止コマンドにより停止されることとなるが、このとき、本体2に急ブレーキがかかることにより、本体2内(集塵室14内)に配置された集塵装置12が振動することとなる。これにより、集塵装置12の入口付近に溜まっているごみを前方側に振るい落とすことができるので、集塵装置12の入口付近にごみが溜まることにより吸引力が低下するのを防止できる。
【0058】
再び、図10を参照して、CPU51は、壁回避(ステップSB3)または衝突回避(ステップSB5)を行った後、ラッチ機構による係止を解除することにより、回転が停止した状態で第2の姿勢で本体2に収容されている回転ブラシ40を、ばね47の付勢力で第1の姿勢に突出させるとともに、回転ブラシ用モータ45を駆動させることにより回転ブラシ40を回転させ(ステップSB7)、本体2を壁に沿って走行させるための制御(壁ぎわ走行)を行う(ステップSB8)。
【0059】
壁ぎわ走行では、CPU51は、第1および第2障害物検知センサ351,352により本体2と壁との距離を検出し、その検出する距離が所定範囲内になるように走行用モータ8L,8Rを駆動することにより、本体2を壁に衝突させることなく壁に沿って走行させる。この際、本体2が室内を右回りに走行することにより、本体2の左前方に配置された回転ブラシ40が壁に沿うように本体2が走行するようになっている。したがって、壁ぎわの床面上にあるごみを回転ブラシ40により良好に本体2側に掻き寄せることができる。
【0060】
CPU51は、壁ぎわ走行の間、本体2が壁に沿って室内を一周したか否か(ステップSB9)、および、本体2が予め定められた最大走行時間(たとえば、10分)以上走行したか否か(ステップSB11)を監視している。本体2が壁に沿って室内を一周したか否かの判断は、たとえば、壁に沿って床面を複数のマス(たとえば、25cmマス)に分割し、左右の走行用モータ8L,8Rのエンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて、壁ぎわ走行開始時の本体2の位置を含むマス(開始マス)の後方側のマス(たとえば、後方側2つ目のマス)から、前方に向かって本体2が開始マスに戻ったか否かを検知するとともに、壁ぎわ走行開始時の本体2の角度と、本体2が開始マスに戻ったときの角度との差が所定角度(たとえば、60°)未満であるか否かを検知することにより行う。すなわち、開始マスの後方側のマス(たとえば、後方側2つ目のマス)から、前方に向かって本体2が開始マスに戻り、かつ、壁ぎわ走行開始時の本体2の角度と、本体2が開始マスに戻ったときの角度との差が所定角度未満である場合に、CPU51は、本体2が壁に沿って室内を一周したと検知することとなる。
【0061】
本体2が壁に沿って室内を一周したと検知した場合には(ステップSB9でYES)、CPU51は、その本体2が一周するのに要した時間から室内の広さを予測して走行時間を決定し(ステップSB10)、その走行時間だけ本体2をランダムに走行させる(ステップSB13)。一方、本体2が最大走行時間以上走行したと検知した場合には(ステップSB11でYES)、CPU51は、強制的に所定の走行時間を決定し(ステップSB12)、その走行時間だけ本体2をランダムに走行させる(ステップSB13)。
【0062】
本体2が決定された走行時間だけランダムに走行した後、CPU51は、上面センサ39からの入力信号に基づいて、本体2の上方の所定距離以内(たとえば、20cm以内)に対象物があるか否かを検知し(ステップSB14)、対象物がなければ(ステップSB14でNO)、そのまま運転を終了する。一方、本体2の上方の上記所定距離以内に対象物がある場合には(ステップSB14でYES)、CPU51は、左右の走行用モータ8L,8Rを同じ速度で回転駆動させ、1対の後輪4L,4Rを同じ速度で回転させることにより、本体2を前方または後方に直進させる(ステップSB15)。この際、CPU51は、本体2の上方の対象物との距離が上記所定距離以内であるか否かを監視しており(ステップSB16)、対象物との距離が上記所定距離よりも大きくなるまで本体2を直進させ、対象物との距離が上記所定距離よりも大きくなった時点で(ステップSB16でNO)、運転を終了する。
【0063】
このような構成によれば、本体2がベッドや机の下に入り込んだ状態で運転が終了するのを防止できるので、本体2がどこに行ったのか分からなくなったり、本体2を取り出すことが困難になったりすることがなく、便利である。
ただし、本体2の上方の所定距離以内に対象物がある場合(ステップSB14でYES)、本体2を直進させるような構成に限らず、たとえば、本体2を所定方向(たとえば、平面視で時計回り)に回転させるような構成であってもよい。
【0064】
図13は、ランダム走行中のCPU51による制御の流れを示すフローチャートである。
図13を参照して、ランダム走行が開始されると、CPU51は、まず、一定時間だけ左右の走行用モータ8L,8Rを異なる速度で回転駆動させ、1対の後輪4L,4Rを異なる速度で回転させることにより、本体2を所定方向(たとえば、平面視で時計回り)にランダムに回転させる(ステップSE1)。このとき、回転ブラシ40は第1の姿勢に突出した状態で回転している。
【0065】
ランダム回転が終了すると、CPU51は、回転ブラシ用モータ45を停止させることにより回転ブラシ40の回転を停止させるとともに、アーム用モータ62Aを駆動させることにより回転ブラシ40を第2の姿勢で本体2に収容する(ステップSE2)。その後、CPU51は、左右の走行用モータ8L,8Rを同じ速度で回転駆動させ、1対の後輪4L,4Rを同じ速度で回転させることにより、本体2を前方に直進させる(ステップSE3)。本体2を前方に直進させている間、CPU51は、バンパスイッチ33L,33Rがオンしたか否か(ステップSE4)、および、第2〜第8障害物検知センサ352〜358により本体2の前方に障害物を検知したか否か(ステップSE5)を監視している。
【0066】
バンパスイッチ33L,33Rがオンした場合(ステップSE4でYES)、または、第2〜第8障害物検知センサ352〜358により障害物を検知した場合(ステップSE5でYES)には、CPU51は、ラッチ機構による係止を解除することにより、回転が停止した状態で第2の姿勢で本体2に収容されている回転ブラシ40を、ばね47の付勢力で第1の姿勢に突出させるとともに、回転ブラシ用モータ45を駆動させることにより回転ブラシ40を回転させる(ステップSE6)。そして、図10のステップSB10またはステップSB12で設定されている走行時間がまだ経過していなければ(ステップSE7でNO)、CPU51は、再び、一定時間だけ左右の走行用モータ8L,8Rを異なる速度で回転駆動させ、1対の後輪4L,4Rを異なる速度で回転させることにより、本体2をランダムに回転させる(ステップSE1)。このとき、回転ブラシ40は第1の姿勢に突出した状態で回転している。
【0067】
このようにして、CPU51は、ステップSE1〜SE7の制御を繰り返し、設定されている走行時間が経過した時点で(ステップSE7でYES)、回転ブラシ用モータ45を停止させることにより回転ブラシ40の回転を停止させるとともに、アーム用モータ62Aを駆動させることにより回転ブラシ40を第2の姿勢で本体2に収容し(ステップSE8)、ランダム走行を終了する。
【0068】
この実施形態では、ランダム走行中、CPU51は、床面の段差に本体2が落下するのを回避するための制御(段差回避)や、1対の後輪4L,4Rの本体2からの突出量に応じて運転内容を変更する制御(後輪突出量応答制御)などを行うようになっている。
また、ランダム走行中に、床面の段差に前輪3が落下した場合には、CPU51は、その旨を前輪スイッチ68からの入力信号に基づいて検知し、この自走式掃除機1の運転を緊急停止させるようになっている。これにより、床面の段差に前輪3が落下して本体2が走行不可能となった状態で、自走式掃除機1の運転が無駄に継続されるのを防止できる。
【0069】
図14は、段差回避のためにCPU51が行う制御の内容を示すフローチャートである。
図14を参照して、ランダム走行中、CPU51は、各段差検知センサ361〜363からの入力信号に基づいて、いずれかの段差検知センサ361〜364により検知される本体2の底面と床面との距離が一定値以上となったか否か、すなわち段差があるか否かを検知している(ステップSF1)。
【0070】
いずれかの段差検知センサ361〜363からの入力信号に基づいて段差を検知した場合には(ステップSF1でYES)、CPU51は、停止コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを停止させる(ステップSF2)。そして、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて後輪4L,4Rの回転が停止したか否かを確認し(ステップSF3)、その停止を確認すると(ステップSF3でYES)、後退コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを回転させることにより、本体2を後退させる(ステップSF4)。後退コマンドは、所定速度(たとえば、150mm/s)で所定距離(たとえば、50mm)だけ本体2を後退させるためのコマンドである。
【0071】
その後、CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて本体2の後退が完了したか否かを判断し(ステップSF5)、後退が完了すると(ステップSF5でYES)、回転コマンドを発行して走行用モータ8L,8Rを回転させることにより、本体2を回転させる(ステップSF6)。回転コマンドは、所定回転速度(たとえば、50°/s)で所定角度(たとえば、右段差検知センサ362で段差を検知した場合には135°、前段差検知センサ361で段差を検知した場合には90°、左外側段差検知センサ363で段差を検知した場合には45°)だけ本体2を回転させるためのコマンドである。この回転により、左内側段差検知センサ364が床面の上方に位置し、左外側段差検知センサ363が段差の上方に位置した状態となる。
【0072】
CPU51は、エンコーダ部64L,64Rからの入力信号に基づいて本体2の回転が完了したか否かを判断する(ステップSF7)。そして、回転が完了した時点で(ステップSF7でYES)、CPU51は、左内側段差検知センサ364で床面を検出し、左外側段差検知センサ363で段差を検出しながら本体2を走行させることにより、本体2が段差に落下しないように、段差の手前側の床面に沿って本体2を走行させる(ステップSF8)。
【0073】
より具体的には、左外側段差検知センサ363および左内側段差検知センサ364の両方で段差が検知されなくなった場合、すなわち、左外側段差検知センサ363および左内側段差検知センサ364の両方で床面が検知された場合には、右側の後輪4Rの回転速度を左側の後輪4Lの回転速度よりも速くして、段差側に本体2を寄せて行き、逆に、左外側段差検知センサ363および左内側段差検知センサ364の両方で段差が検知された場合、すなわち、左外側段差検知センサ363および左内側段差検知センサ364の両方で床面が検知されなくなった場合には、左側の後輪4Lの回転速度を右側の後輪4Rの回転速度よりも速くして、段差と反対側に本体2を寄せて行くことにより、左内側段差検知センサ364で床面を検出し、左外側段差検知センサ363で段差を検出した状態を維持しながら本体2を走行させる。
【0074】
このような構成によれば、本体2を段差の手前側の床面に沿って走行させることができるので、段差を検出する度に本体2を後退させるような構成と比較して、段差の手前側の床面上にあるごみを短時間で良好に吸い込むことができる。
図15は、後輪突出量応答制御のためにCPU51が行う制御の内容を示すフローチャートである。
【0075】
図15を参照して、ランダム走行中、CPU51は、左右のポテンショメータ63L,63Rからの入力信号に基づいて、左右の後輪4L,4Rの本体2に対する突出量を監視している(ステップSG1)。そして、左右いずれかの後輪4L,4Rの本体2に対する突出量が所定値以上であれば(ステップSG1でYES)、CPU51は、吸込モータ11の駆動電圧を大きくすることにより吸込力を強くし(ステップSG2)、ブラシ上下用モータ62Bを駆動させることにより回転ブラシ40を上方に変位させ(ステップSG3)、回転ブラシ用モータ45の駆動電圧を大きくすることにより回転ブラシ40による掻き寄せ力を強くして(ステップSG4)、1対の走行用モータ8L,8Rの駆動電圧を小さくすることにより走行速度を遅く(たとえば、30cm/s)する(ステップSG5)。
【0076】
一方、左右の後輪4L,4Rの本体2に対する突出量が所定値未満であれば(ステップSG1でNO)、CPU51は、吸込モータ11の駆動電圧を小さくすることにより吸込力を弱くし(ステップSG6)、ブラシ上下用モータ62Bを駆動させることにより回転ブラシ40を下方に変位させ(ステップSG7)、回転ブラシ用モータ45の駆動電圧を小さくすることにより回転ブラシ40による掻き寄せ力を弱くして(ステップSG8)、1対の走行用モータ8L,8Rの駆動電圧を大きくすることにより走行速度を速く(たとえば、40cm/s)する(ステップSG9)。
【0077】
左右の後輪4L,4Rの少なくとも一方が絨毯の上にあるような場合には、その後輪4L,4Rが絨毯内にもぐり込み、本体2の底面(特に、吸込口6の周辺)が絨毯の毛先で受けられる場合がある。この場合、後輪4L,4Rに作用する本体2の自重が減少し、本体2に対する後輪4L,4Rの突出量が大きくなる。
したがって、本体2が絨毯上にあるときのように、左右いずれかの後輪4L,4Rの本体2に対する突出量が大きい場合には、上記のように、吸込力を強くし(ステップSG2)、回転ブラシ40による掻き寄せ力を強くして(ステップSG4)、走行速度を遅くする(ステップSG5)ことにより、絨毯に絡まっている糸くずなどのごみを良好に吸い込むことができるとともに、回転ブラシ40を上方に変位させる(ステップSG3)ことにより、回転ブラシ40の絨毯に対する抵抗が大きくなって、本体2の走行方向がずれるのを防止できる。
【0078】
また、本体2がフローリング上や畳上にあるときのように、左右の後輪4L,4Rの本体2に対する突出量が小さい場合には、上記のように、吸込力を弱くし(ステップSG6)、回転ブラシ40による掻き寄せ力を弱くして(ステップSG8)、走行速度を速くする(ステップSG9)ことにより、より少ない電力でフローリング上や畳上にあるごみを良好に吸い込むことができるとともに、回転ブラシ40を下方に変位させる(ステップSG7)ことにより、回転する回転ブラシ40によってフローリング上や畳上のごみを本体2側に良好に掻き寄せることができる。
【0079】
さらに、この実施形態では、本体2が壁などの障害物付近にあるときに、回転ブラシ40が本体2から突出されて回転されるので(図10のステップSB7、図13のステップSE6)、障害物付近の吸い込みにくい場所にあるごみを、回転ブラシ40により本体2側に掻き寄せて良好に吸い込むことができる。
本体2が障害物付近にないときには、回転ブラシ40の回転が停止されて本体2に収容されるので、回転ブラシ40により床面を傷つけてしまうのを防止でき、回転ブラシ40と床面との摩擦力が走行する本体2の抵抗になるのを防止できるとともに、走行中に回転ブラシ40が障害物に引っ掛かるのを防止できる。また、本体2が障害物付近にないときには、回転ブラシ40の回転を停止して消費電力を抑えることができる。
【0080】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の一実施形態に係る自走式掃除機の平面図である。
【図2】この自走式掃除機の正面図である。
【図3】この自走式掃除機を前後方向に沿った鉛直面で切断したときの断面を左側から見た図である。
【図4】この自走式掃除機の底面図であって、アームが第1の姿勢にある状態を示している。
【図5】この自走式掃除機の底面図であって、アームが第2の姿勢にある状態を示している。
【図6】回転ブラシの周辺の構成を拡大して示す平面図である。
【図7】この自走式掃除機の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】障害物検知センサの受信部における受信波形の一例を示す図である。
【図9】障害物検知センサにより障害物を検知する際のCPUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】通常運転モードまたはエコノミー運転モードで運転を行う際のCPUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図11】壁回避の際のCPUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】衝突回避の際のCPUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図13】ランダム走行中のCPUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図14】段差回避のためにCPUが行う制御の内容を示すフローチャートである。
【図15】後輪突出量応答制御のためにCPUが行う制御の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1 自走式掃除機
2 本体
3 前輪
4L,4R 後輪
8L,8R 走行用モータ
6 吸込口
11 吸込モータ
40 回転ブラシ
51 CPU
63L,63R ポテンショメータ
363 左外側段差検知センサ
364 左内側段差検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を床面に沿って自走させ、上記本体に備えられた吸込口から床面上のごみを吸い込むことにより、自動で掃除を行うことができる自走式掃除機であって、
上記本体が走行する床面を検出するための床面検出手段と、
上記床面上にある段差を検出するための段差検出手段と、
上記床面検出手段で床面を検出し、上記段差検出手段で段差を検出しながら上記本体を走行させることにより、上記本体が段差に落下しないように、段差の手前側の床面に沿って上記本体を走行させる手段とを含むことを特徴とする自走式掃除機。
【請求項2】
上記本体の下面に上下動可能に配置された車輪と、
上記車輪が床面の段差に落下して、その自重により下方に変位した場合に、上記本体の運転を停止させる緊急停止手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の自走式洗濯機。
【請求項3】
本体を床面に沿って自走させ、上記本体に備えられた吸込口から床面上のごみを吸い込むことにより、自動で掃除を行うことができる自走式掃除機であって、
上記本体の下面に上下動可能に配置された車輪と、
上記車輪を下方に向かって付勢する付勢手段と、
上記車輪の上下位置を検出する車輪位置検出手段と、
上記車輪位置検出手段により検出される上記車輪の上下位置に応じて異なる態様で、上記本体の動作を制御する制御手段とを含むことを特徴とする自走式掃除機。
【請求項4】
回転可能に設けられ、床面上のごみを上記本体側に掻き寄せるための掻き寄せ手段をさらに含み、
上記制御手段は、上記車輪位置検出手段により検出される上記車輪の上下位置が下方であるほど、上記掻き寄せ手段の回転数を上昇させるものであることを特徴とする請求項3記載の自走式掃除機。
【請求項5】
上記吸込口から床面上のごみを吸い込むために駆動される吸込モータをさらに含み、
上記制御手段は、上記車輪位置検出手段により検出される上記車輪の上下位置が下方であるほど、上記吸込モータの回転数を上昇させるものであることを特徴とする請求項3または4記載の自走式掃除機。
【請求項6】
上記本体を走行させるための走行手段をさらに含み、
上記制御手段は、上記車輪位置検出手段により検出される上記車輪の上下位置が下方であるほど、上記走行手段により走行される上記本体の速度を低下させるものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の自走式掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−87507(P2006−87507A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273714(P2004−273714)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】