説明

自転車傾き防止装置

【課題】タイヤ幅が異なる自転車がセットされても自転車が傾くのを防止できる自転車傾き防止装置を提供する。
【解決手段】本発明の自転車傾き防止装置は、互いに平行な中心線の回りを回転可能な一対のローラ11a,11bと、一対のローラ11a,11bの上に自転車のタイヤが乗り上げたとき、一対のローラ間に自転車のタイヤが入るように一対のローラ11a,11bの間隔を広くすると共に、一対のローラ11a,11bにタイヤが挟まれた自転車が傾こうとしたとき、傾く側に配置されるローラ11aの位置を固定して自転車が傾くのを防止するローラ支持部21a,21bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立した状態の自転車が傾くのを防止する自転車傾き防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車は年齢・性別に関わらず、あらゆる人々に利用されている。日本の市街地の土地は狭くかつ高いので、市街地に自転車を駐輪するための充分なスペースを確保することが困難である。これが原因で、市街地のどこへいっても自転車が迷惑駐輪されている。この問題を解決するために、地上や地下のスペースを有効に活用する機械式自転車駐輪設備が開発されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
機械式自転車駐輪設備は、例えば地下式の場合、地下に穴を掘り、地下に躯体を構築し、その地下躯体の収容スペースに自転車を効率的に収容したものである。地上部には自転車を搬入するための入出庫口が建設される。地下部には多数の自転車収納部を持つ保管棚が配置される。利用者が地上部の入出庫口に自転車をセットすると、入出庫口の扉が開き、入出庫口の中から移載装置が出てきて自転車を掴み、自転車を入出庫口の中に引き込む。入出庫口の中に引き込まれた自転車はエレベータ付きの搬送装置によって保管棚に自動的に搬送される。
【0004】
ところで、入出庫口にセットされた自立した状態の自転車が傾くと、移載装置が自転車を掴むのが困難になる。このため、地上式や地下式等に係わらず自転車が傾くのを防止する自転車傾き防止装置が必要になる。従来の自転車傾き防止装置においては、入出庫口に自転車のタイヤが落ち込む溝を設け、溝の側面に自転車がよりかかることによって自転車の傾きを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263472号公報
【特許文献2】特開2001−317226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自転車の種類の多様化に伴い、自転車のタイヤ幅も多様化している、例えば、日常的な用途に使われる一般用自転車のタイヤ幅は30mmであるのに対し、荒野、山岳地帯等での走行に適したマウンテンバイクのタイヤ幅は50〜55mmと太い。
【0007】
従来の自転車傾き防止装置においては、自転車のタイヤ幅が細くても太くても溝にセットできるように、溝の幅を太いタイヤに合わせる必要がある。しかし、例えばタイヤ幅30mmの自転車を幅55mmの溝にセットすると、タイヤの片側に12.5mmのすきまが発生し、その分自転車が傾いてしまうという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、タイヤ幅が異なる自転車がセットされても自転車が傾くのを防止できる自転車傾き防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、自立した状態の自転車が傾くのを防止する自転車傾き防止装置であって、互いに平行な中心線の回りを回転可能な一対のローラと、前記一対のローラの上に自転車のタイヤが乗り上げたとき、前記一対のローラ間に自転車のタイヤが入るように前記一対のローラの間隔を広くする一方、前記一対のローラにタイヤが挟まれた自転車が傾こうとしたとき、傾く側に配置されるローラの位置を固定して自転車が傾くのを防止するローラ支持部と、を備える自転車傾き防止装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤ幅が異なる自転車がセットされても、タイヤ幅に合わせて間隔を調整した一対のローラが自転車のタイヤを左右から挟むことができる。そして、自転車が傾こうとしたとき、傾く側に配置されるローラの位置が固定されるので、自転車が傾くのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】入出庫口手前の自転車受け渡し部の垂直断面図
【図2】V字形ガイド部材の断面図
【図3】自転車傾き防止装置のローラの側面図
【図4】本発明の第一の実施形態の自転車傾き防止装置の正面図(自転車がセットされる前の状態)
【図5】図4の自転車傾き防止装置の右側の拡大図
【図6】本発明の第一の実施形態の自転車傾き防止装置の正面図(自転車が一対のローラに乗り上げた状態)
【図7】図6の自転車傾き防止装置の右側の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面に基づいて、本発明の一実施形態の自転車傾き防止装置を詳細に説明する。図1は自転車傾き装置が組み込まれる機械式自転車駐輪設備の受け渡し部の垂直断面図を示す。受け渡し部は入出庫ブースの手前に設けられる。
【0013】
機械式自転車駐輪設備の全体の動作は以下のとおりである。利用者が受け渡し部1に自転車をセットし、駐輪開始のボタンを押すと(又はカードを挿入すると)、入出庫ブース2の扉が開き、扉の中から移載装置3が出てきて自転車の前輪を掴む。移載装置3が受け渡し部1上の自転車を入出庫ブース2内に引き込むと、入出庫ブース2の扉が閉じられる。その後、図示しない搬送装置が自転車を地下部の所定の保管棚まで自転車を搬送する。
【0014】
自転車を出庫するときは上記と逆の動作が行われる。利用者が出庫開始のボタンを押すと(又はカードを挿入すると)、搬送装置が目的の自転車を保管棚から取り出し、入出庫ブース2まで搬送する。自転車が入出庫ブース2まで搬送されると、入出庫ブースの扉が開き、中から自転車を掴んだ移載装置3が出てきて、自転車を受け渡し部1に出庫する。
【0015】
受け渡し部1には穴1aが掘られ、穴1a内にベースフレーム4が据え付けられる。ベースフレーム4には、自転車の前後方向に細長く伸びて、断面V字形状に形成されるガイド部材6(図2も参照)が取り付けられる。ガイド部材6は、入出庫ブース2から離れるにしたがって下方に位置するように傾斜している。ガイド部材6の途中の、自転車の後輪に対応する部分には、凹部7が設けられる。凹部7はガイド部材6よりも一段低くなっている。利用者が自転車を受け渡し部1にセットすると、自転車の後輪が凹部7に落ち込み、自転車が前後方向に位置決めされる。ガイド部材6の下端(図1の右側の端)には、自転車傾き防止装置8が設けられる。自転車傾き防止装置8は、自転車の前後方向と平行な水平方向を向く中心線を持つ一対のローラ11a,11bを備える。一対のローラ11a,11bが自転車の後輪を挟むことによって、自立した状態の自転車が傾くのを防止する。
【0016】
自転車傾き防止装置8の上方には、タイヤを左右から挟むように押さえ板9が設けられる。タイヤ幅の広いタイヤがセットされたとき、一対のローラ11a,11bと共に押さえ板9が自転車の傾きを防止してもよい。
【0017】
図3はローラ11a,11bの側面図を示す。ローラ11a,11bは円筒形を基礎とした形状をなすと共に、その軸線方向の一端部側に端に向かって徐々に直径が狭くなるテーパ部12を有する。テーパ部12が自転車の前側に円筒形の本体部13が自転車の後ろ側に位置する。テーパ部12を形成することで、移載装置によって入出庫ブース2から出された自転車が一対のローラ11a,11b間に入り易くなる。ローラ11a,11bの中心には、軸線方向に貫通する貫通孔14が空けられる。貫通孔14には、ホルダ16a,16bに保持されるローラ軸17a,17b(図4参照)が挿入される。ローラ11a,11bはローラ軸17a,17bの回りを回転する。ローラ11a,11bは樹脂製でも、金属製でもよい。
【0018】
図4は、本発明の第一の実施形態の自転車傾き防止装置の正面図を示す。図4は自転車がセットされる前の状態を示し、図中二点鎖線は幅α(例えば30mm)のタイヤ及び幅β(例えば55mm)のタイヤの仮想線を示す。
【0019】
自転車傾き防止装置は、一対のローラ11a,11bを回転可能に支持する一対のローラ支持機構21a,21bを備える。一対のローラ支持機構21a,21bは、ガイド部材6の中心線に関して左右対称であるので、ここでは図5の拡大図に示す右側のローラ支持機構21aについて説明する。
【0020】
図5に示すように、ローラ支持機構21aは、ローラ11aを回転可能に支持するホルダ16aと、ローラ11aが自転車のタイヤに対して進退するのを案内する案内部18aと、ローラ11aを自転車のタイヤに向かって付勢する付勢部としての圧縮ばね19aと、ホルダ16aに当接及び離間可能に設けられるストッパとしてのカム20aと、カム20aを作動させる作動レバー22aと、を備える。
【0021】
ホルダ16aは、本体部16a−1から張り出し、ローラ11aを軸線方向に挟むブラケット16a−2を備える。ブラケット16a−2にはローラ軸17aが取り付けられる。ホルダ16aは案内部18aに直線運動可能に案内される。
【0022】
案内部18aは直線的に伸びるガイド軸18a−1を有する。ホルダ16aにはガイド軸18a−1にスライド可能に嵌められる孔部が形成される。ホルダ16aが案内部18aのガイド軸18a−1に沿って直線運動することで、ホルダ16aに支持されたローラ11aが自転車のタイヤに対して進退する。案内部18aの基部18a−2は、ベースフレーム4に設けた所定のピン支点23aに回転可能に連結される。案内部18aの基部18a−2はガイド軸18a−1よりも径が拡大していて、案内部18aの基部18a−1とホルダ16aとの間には、ガイド軸を巻くようにローラ11aを自転車のタイヤに付勢する圧縮ばね19aが介在される。なお、図4に示す自転車のタイヤがセットされていない状態においては、案内部18aのピン支点23aとローラ11aのローラ軸17aとを結んだ線はタイヤに向かって水平方向から上方に傾斜している。
【0023】
ホルダ16aのタイヤ側への移動、すなわちローラ11aのタイヤ側への移動は、案内部18aによって制限されている。ホルダ16aのタイヤ側への移動は、一対のローラ11a,11bの間隔が最も細いタイヤ幅αに一致するように制限される。
【0024】
ストッパとしてのカム20aは、ホルダ16aに当接及び離間可能である。カム20aは、ベースフレーム4に設けた所定のカム支点25aに回転可能に連結される。カム支点25aを挟んで一方の側には引張りばね26aが取り付けられ、他方の側には作動レバー22aと係合するピン27aが取り付けられる。引張りばね26aがカム20aを引っ張ると、カム20aがカム支点25aを中心にして時計方向に回転する。これにより、カム外周のカム面がホルダ16aを押圧する。ホルダ16aを挟んでカム20aの反対側にはベースフレーム4に設けたバックアップ板28aが配置されており、ホルダ16aはバックアップ板28aとカム20aとの間に挟まれる。
【0025】
作動レバー22aは、一方向に細長く伸びるレバー本体31aと、レバー本体31aに回転可能に取り付けられる作動ローラ32aと、を備える。レバー本体31aは、ベースフレーム4に設けた所定のレバー支点34aに回転可能に連結される。作動ローラ32aはレバー本体31aの途中に設けられていて、圧縮ばね33aによってホルダ16aに付勢されている。レバー本体31aの先端はカム20aのピン27aに係合可能である。レバー本体31aがレバー支点34aの回りを時計方向に回転すると、レバー本体31aの先端部がカム20aのピン27aに係合し、レバー本体31aの回転に連動してカム本体20aが反時計方向に回転する。
【0026】
自転車傾き防止装置の動作は以下のとおりである。細いタイヤ幅αの自転車がセットされたとき、一対のローラ11a,11bの間隔は細いタイヤ幅αに一致するように設定されるので、一対のローラ11a,11bの間隔は変化することなく、タイヤは一対のローラ11a,11b間に入る。タイヤは回転可能な一対のローラ11a,11b間を真っすぐに落ちる。
【0027】
自転車が傾こうとしたとき、ローラには図5の矢印に示す力P1が働く。このため、ホルダ16aが図5中右方向に移動しようとする。しかし、引張りばね26aのばね力によってカム20aがホルダを押圧していて、ホルダ16aがバックアップ板28aとカム20aとの間に挟まれているので、ホルダ16aが図5中右方向に移動しようとすると、カム20aがホルダ16aに噛み付き、摩擦力によってホルダ16aの位置が固定される。したがって、自転車が傾くのを防止できる。
【0028】
太いタイヤ幅βの自転車がセットされたとき、図6に示すように、タイヤ幅βが一対のローラ11a,11bの間隔よりも大きいので、タイヤが一対のローラ11a,11bの上に乗り上げ、一対のローラ11a,11bには上から押し下げる力P2が作用する。この押し下げる力P2によって、ホルダ16a,16bに支持されたローラ11a,11bは案内部18a,18bのピン支点23a,23bを中心にして下方に下がる。
【0029】
図7の拡大図に示すように、タイヤによるローラ11aの下方への押し下げに伴って、ホルダ16aが作動レバー22aの作動ローラ32aを下方に押し下げる。作動ローラ32aはレバー本体31aに支持されているので、作動ローラ32aの下方への押し下げに伴って、レバー本体31aがレバー支点34aを中心にして時計方向に回転する。レバー本体31aが時計方向に回転すると、レバー本体31aの先端部がカム20aのピン27aに係合し、カム20aが反時計方向に回転する。カム20aの反時計方向の回転に伴って、カム周囲のカム面がホルダ16aから離間するので、ホルダ16aがカム20aから解放される。このため、ホルダ16aは案内部18aに沿って図中矢印A方向に圧縮ばね19aのばね力に抗してスライドする。すなわち、一対のローラ11a,11bはタイヤによって押し下げられながら、一対のローラ11a,11bの間隔が広くなるようにピン支点23a,23bに向かって図7中矢印A方向に移動する。
【0030】
なお、レバー本体31aのレバー支点34aから先端部までの腕の長さは、レバー支点34aから作動ローラ32aまでの腕の長さよりも長い。ホルダ16aからカム20aが離間しても作動ローラ32aはホルダ16aに接触したままであるので、ホルダ16aの図中矢印A方向への移動は作動ローラ32aによって案内される。
【0031】
一対のローラ11a,11b間にタイヤが入った後は、一対のローラを11a,11b上から押し下げる力が働かなくなる。このため、図5に示すように、圧縮ばね33aの復元力によってレバー本体31aが元の位置に戻り、引張りばね26aの復元力によってカム20aがホルダ16aに当接した状態に戻る。そして、ホルダ16aはカム20aとバックアップ板28aとに挟まれた状態に戻る。なお、図4には一対のローラ11a,11bの間隔が太いタイヤ幅βよりも狭い状態が示されているが、実際には一対のローラ11a,11bの間隔は太いタイヤ幅βに合わせて広くなっている。
【0032】
図5に示すように自転車が倒れようとすると、ホルダ16aが右方向に移動しようとするが、カム20aがホルダ16aに噛み付くので、ホルダ16aの位置が固定される。したがって、自転車が傾くのを防止できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0034】
本発明の自転車傾き防止装置に適用される自転車の種類、タイヤ幅は限定されるものではない。例えばタイヤ幅が20mmのロードバイク、タイヤ幅が30mmの一般用自転車、タイヤ幅が50〜55mmのマウンテンバイク等を適用することができる。
【0035】
また、ローラ支持機構の具体的な構成は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
8…自転車傾き防止装置
11a,11b…ローラ
16a,16b…ホルダ
18a,18b…案内部
20a,20b…カム
21a,21b…ローラ支持機構
22a,22b…作動レバー
23a ,23b…ピン支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立した状態の自転車が傾くのを防止する自転車傾き防止装置であって、
互いに平行な中心線の回りを回転可能な一対のローラと、
前記一対のローラの上に自転車のタイヤが乗り上げたとき、前記一対のローラ間に自転車のタイヤが入るように前記一対のローラの間隔を広くする一方、前記一対のローラにタイヤが挟まれた自転車が傾こうとしたとき、傾く側に配置されるローラの位置を固定して自転車が傾くのを防止するローラ支持部と、
を備える自転車傾き防止装置。
【請求項2】
前記ローラ支持部は、前記一対のローラを支持する一対のローラ支持機構を備え、
各ローラ支持機構は、
ローラを回転可能に支持するホルダと、
前記ローラが自転車のタイヤに対して進退するのを案内する案内部と、
前記ローラを自転車のタイヤに付勢する付勢部と、
前記一対のローラの上に自転車のタイヤが乗り上げたとき、前記ホルダから離間する一方、前記一対のローラにタイヤが挟まれた自転車が傾こうとしたとき、前記ホルダに当接して前記傾く側に配置されるローラの位置を固定するストッパと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の自転車傾き防止装置。
【請求項3】
前記各ローラ支持機構はさらに、
前記一対のローラの上に自転車のタイヤが乗り上げたとき、前記ローラの下方向への移動に伴って、前記ストッパを前記ホルダから離間させる作動レバーを備えることを特徴とする請求項2に記載の自転車傾き防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197063(P2012−197063A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64106(P2011−64106)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)