説明

自転車用スタンド

【解決手段】後輪を回転可能に支持する後輪軸側のリヤエンド7に連結されたフレームのうちチェーンステー5に対し着脱可能に連結される保持体9と、フレームのうちシートステー6に対し保持体9の上側で着脱可能に支えられる支持体10とを有する取付部材8を備えている。保持体9に対する支持体10の向きを変更することができる。取付部材8に対し脚バー28を回動可能に支持して、脚バー28を取付部材8から下方へ向けて回動させた接地可能状態Pと、脚バー28を後方へ向けて回動させた走行可能状態とを取り得る。
【効果】チェーンステー5とシートステー6とがリヤエンド7で互いに交差するフレームを有するスポーツ車や一般車などの広範囲の自転車に対し、片脚スタンド1を着脱可能に連結することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ車などの自転車において着脱可能なスタンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、後輪を着脱することができるクイックレリ−ズ装置を備えたスポーツ車が開示されている。このスポーツ車では、後輪の着脱に伴いサイドスタンド(片脚スタンド)も着脱することができる。従って、後輪及びサイドスタンドを着脱して輪行を可能にするばかりでなく、サイドスタンドにより停止時の保持や不使用時の保管などを容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1で開示されたサイドスタンド(片脚スタンド)の着脱構造はクイックレリ−ズ装置を備えたスポーツ車については採用することができるが、クイックレリ−ズ装置を備えていないスポーツ車についてはこの特許文献1にかかるサイドスタンドを採用することができない。
【0005】
この発明は、各種のスポーツ車やスポーツ車以外の一般車などの広範囲の自転車に採用することができるスタンドの着脱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜5)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる自転車用スタンド(1)おいては、後輪(2)を回転可能に支持する後輪軸(3)側のリヤエンド(7)に連結されたフレーム(4)のうち、チェーンステー(5)とシートステー(6)とに対し連結される取付部材(8)を備え、この取付部材(8)は、チェーンステー(5)に対し着脱可能に連結される保持体(9)と、シートステー(6)に対し着脱可能に連結される支持体(10)とを有し、その取付部材(8)に対し脚バー(28)を回動可能に支持して、その脚バー(28)を取付部材(8)から下方へ向けて回動させた接地可能状態(P)と、その脚バー(28)を後方へ向けて回動させた走行可能状態(Q)とを取り得るようにし、前記取付部材(8)の支持体(10)は前記取付部材(8)の保持体(9)に対し向き変更調節可能に設けられている。
【0007】
請求項1の発明では、スポーツ車や一般車などの広範囲の自転車に設けられているフレーム(4)のチェーンステー(5)やシートステー(6)を有効に利用してスタンド(1)を着脱可能に取り付けることができる。また、チェーンステー(5)に対するシートステー(6)の交差角度に合わせて支持体(10)の向きを変更調節することができるので、チェーンステー(5)とシートステー(6)とがリヤエンド(7)で互いに交差するフレーム(4)を有する広範囲の自転車において、スタンド(1)を着脱可能に取り付けることができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記取付部材(8)の支持体(10)は、シートステー(6)を載せて支持する受け部(19)を有している。請求項2の発明では、支持体(10)をシートステー(6)に対し容易に着脱することができる。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記取付部材(8)の保持体(9)は、例えばねじ締結される挟持部材(11,12)によりチェーンステー(5)に挟持された状態でリヤエンド(7)に隣接してチェーンステー(5)に配設され、前記取付部材(8)の支持体(10)は、この保持体(9)の上側でこの保持体(9)に対し例えばねじ締結により着脱可能に支持されるとともに、回動可能に支持されて向き変更調節可能に設けられた状態でリヤエンド(7)に隣接してシートステー(6)に配設されている。請求項3の発明では、リヤエンド(7)の付近でフレーム(4)のチェーンステー(5)及びシートステー(6)に取付部材(8)をコンパクト且つ強固に連結することができる。
【0010】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項4の発明にかかる取付部材(8)と脚バー(28)とにおいて、脚バー(28)を回動可能に支持する回動支持部(24,32)の外周には前記接地可能状態(P)と走行可能状態(Q)とでそれぞれ取付部材(8)に対する脚バー(28)の回動を規制する係止部(25,26,37)を設けるとともに、脚バー(28)に収容した押圧体(36)の押圧力により取付部材(8)に対する脚バー(28)の接地可能状態(P)と走行可能状態(Q)とを保持し、その押圧体(36)による押圧力に抗して取付部材(8)及び脚バー(28)の係止部(25,26,37)を互いに係脱させて脚バー(28)を接地可能状態(P)と走行可能状態(Q)との間で取付部材(8)に対し回動し得る。請求項4の発明では、取付部材(8)に対する脚バー(28)の回動支持構造をコンパクトにまとめることができる。
【0011】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、取付部材(8)と脚バー(28)とは後輪軸(3)の左右両側のうち一方の側に配設されている。請求項5の発明では、請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を片脚スタンド(1)に採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、スポーツ車や一般車などの広範囲の自転車に対し既存のフレーム(4)を有効に利用してスタンド(1)を着脱可能に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本実施形態にかかる自転車の片脚スタンドにおいてその使用状態を示す部分拡大側面図であり、(b)は同じく部分拡大背面図である。
【図2】(a)は本実施形態にかかる自転車において片脚スタンドの使用状態を示す側面図であり、(b)は使用状態の片脚スタンドを示す部分拡大断面図である。
【図3】(a)は本実施形態にかかる自転車において片脚スタンドの不使用状態を示す側面図であり、(b)は不使用状態の片脚スタンドを示す部分拡大断面図である。
【図4】本実施形態にかかる自転車の片脚スタンドにおいてその使用状態と不使用状態との間の回動途中状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本実施形態にかかる自転車において片脚スタンドを取り外した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る自転車用スタンドについて図面を参照して説明する。
図1及び図2に示す使用状態の片脚スタンド1(サイドスタンド)は、後輪2を回転可能に支持する後輪軸3の左側で、チェーンステー5とシートステー6とが互いに交差するリヤエンド7に隣接してフレーム4に配設されている。
【0015】
前記片脚スタンド1は保持体9と支持体10とを有する取付部材8を備えている。保持体9は挟持基板11(挟持部材)と挟持蓋板12(挟持部材)とを備えている。挟持基板11は、挟持蓋板12が重合される挟持板部13と、挟持板部13の上端部から上方へ延設された連結板部14と、挟持板部13の下端部から下方へ延設された連結板部15とを備えている。
【0016】
前記挟持基板11の挟持板部13と挟持蓋板12とにそれぞれ形成された挟持溝16a,16bは相対向して挿通孔16を形成している。挿通孔16の上下両側で挟持蓋板12側から挿入されたボルト17が挟持板部13に螺合されているとともに、挟持板部13側でボルト17にナット18が螺合されて、挟持蓋板12が挟持基板11の挟持板部13に対し着脱可能に連結されている。
【0017】
前記支持体10は、上方へV字形状に延びる受け板部19(受け部)と、受け板部19から下方へ延びる連結板部20とを備えている。連結板部20は前記挟持基板11の連結板部14にばね座金21を介して重合され、連結板部20側から挿入されたボルト22が連結板部14に螺合されているとともに、連結板部14側でボルト22にナット23が螺合されて、支持体10が挟持基板11の連結板部14に対し着脱可能に連結されている。支持体10は連結板部14に対しボルト22の軸心22aを中心に回動し、受け板部19上の載置溝19aの向きを適宜変更して調節した状態でボルト22及びナット23により支持体10を位置決めすることができる。
【0018】
前記挟持基板11の連結板部15には回動支持部24が形成され、回動支持部24の外周で一対の係止凹部25,26(係止部)が突部27を介して周方向へ形成されている。回動支持部24の回動中心24aに対する両係止凹部25,26の半径は互いに等しく設定されているとともに、回動支持部24の回動中心24aに対する突部27の半径は両係止凹部25,26の半径よりも大きく設定されている。
【0019】
前記片脚スタンド1は、前記取付部材8以外に、頭部29と接地棒30とを有する脚バー28も備えている。脚バー28の頭部29は、上下方向へ延びる貫通孔31aを有する筒部31と、筒部31の上端部から上方へ相対向して延設された一対の腕部33を有する回動支持部32とを備えている。接地棒30の上端部は筒部31の下端部から貫通孔31aに挿入されてピン30aにより固定されている。前記挟持基板11の回動支持部24は回動支持部32の両腕部33間に挿嵌され、両腕部33と回動支持部24とに挿嵌された筒体34に支軸35が挿着されている。これらの回動支持部24,32で脚バー28は取付部材8に対し回動可能に支持されている。
【0020】
頭部29の筒部31の貫通孔31aには接地棒30の上端部に支持された圧縮コイルばね36(押圧体)が収容され、圧縮コイルばね36上に載置されたT字形状の係止体37(係止部)が圧縮コイルばね36の弾性力(押圧力)により前記挟持基板11の回動支持部24に向けて上方へ付勢されている。
【0021】
次に、片脚スタンド1の使い方について述べる。
前記取付部材8の保持体9において、リヤエンド7に隣接する位置で挟持基板11の挟持板部13の挟持溝16aにチェーンステー5を挿入するとともに、挟持蓋板12を挟持板部13に当てがってその挟持蓋板12の挟持溝16bにチェーンステー5を挿入し、両挟持溝16a,16b間の挿通孔16にチェーンステー5を挿通した状態で、その挟持基板11と挟持蓋板12とを仮固定する。また、前記取付部材8の支持体10において、リヤエンド7に隣接する位置で受け板部19の載置溝19aにシートステー6を挿入した状態で、連結板部20を挟持基板11の連結板部14に仮固定する。チェーンステー5及びシートステー6に合わせて保持体9及び支持体10の位置を設定した後に、それらを本固定してフレーム4に対し位置決めする。
【0022】
図1及び図2に示すように、脚バー28を取付部材8の下方へ向けて回動させると、片脚スタンド1が接地可能状態Pとなり、圧縮コイルばね36により付勢された係止体37が挟持基板11の連結板部14の係止凹部25に係入されて接地可能状態Pが保持される。
【0023】
図4に示すように、接地可能状態Pの脚バー28を取付部材8の後方へ向けて回動させると、係止体37が挟持基板11の連結板部14の突部27に当接して圧縮コイルばね36の弾性力に抗して押圧される。
【0024】
その後、図3に示すように、係止体37が突部27を乗り越えて挟持基板11の連結板部14の係止凹部26に係入されると、片脚スタンド1が地面から上方へ浮いて走行可能状態Qとなり、圧縮コイルばね36により付勢された係止体37が挟持基板11の連結板部14の係止凹部26に係入されて走行可能状態Qが保持される。
【0025】
走行可能状態Qの脚バー28を取付部材8の下方へ向けて回動させると、圧縮コイルばね36により付勢された係止体37が係止凹部26から突部27を経て係止凹部25に係入されて接地可能状態Pに戻る。
【0026】
チェーンステー5から前記取付部材8の保持体9を取り外すとともに、シートステー6から前記取付部材8の支持体10を取り外すと、図5に示すように、片脚スタンド1を有しない自転車として使用することができる。
【0027】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 既存のフレーム4のチェーンステー5及びシートステー6を有効に利用して片脚スタンド1の取付部材8を着脱可能に取り付けているので、片脚スタンド1をスポーツ車や一般車などの広範囲の自転車に採用することができる。
【0028】
(2) フレーム4のチェーンステー5に保持体9を取り付けているばかりでなく、フレーム4のシートステー6に支持体10を取り付けているので、フレーム4に取付部材8を強固に連結することができる。
【0029】
(3) リヤエンド7の付近でフレーム4のチェーンステー5及びシートステー6に取付部材8を取り付けているので、スポーツ車や一般車などの広範囲の自転車に片脚スタンド1をコンパクトに連結することができる。
【0030】
(4) チェーンステー5に対するシートステー6の交差角度に合わせて保持体9に対する支持体10の向きを変更することができるので、チェーンステー5とシートステー6とがリヤエンド7で互いに交差するフレーム4を有する広範囲の自転車において片脚スタンド1を着脱可能に取り付けることができる。
【0031】
(5) 取付部材8と脚バー28との間の回動支持部24,32で、脚バー28内に収容した圧縮コイルばね36及び係止体37により、取付部材8に対する脚バー28の回動を規制して脚バー28を接地可能状態Pと走行可能状態Qとで保持しているので、それらの回動支持構造をコンパクトにまとめることができる。
【0032】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 自転車用スタンドとしては、後輪軸3の左右両側でそれぞれ取付部材8をフレーム4に取り付けるとともに左右の取付部材8間をU状の脚バーにより連結した両脚スタンドを採用することができる。
【0033】
・ 取付部材において、チェーンステー5に対し着脱可能に挟持した保持体と同様に、その保持体に対し回動可能に設けた支持体もシートステー6に対し着脱可能に挟持してもよい。
【0034】
・ 取付部材において、支持体を省略してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…片脚スタンド、2…後輪、3…後輪軸、4…フレーム、5…チェーンステー、6…シートステー、7…リヤエンド、8…片脚スタンドの取付部材、9…取付部材の保持体、10…取付部材の支持体、11…挟持基板(挟持部材)、12…挟持蓋板(挟持部材)、19…受け板部(受け部)、24…取付部材の回動支持部、25,26…取付部材の係止凹部(係止部)、28…片脚スタンドの脚バー、32…脚バーの回動支持部、36…脚バーの圧縮コイルばね(押圧体)、37…脚バーの係止体(係止部)、P…接地可能状態、Q…走行可能状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪を回転可能に支持する後輪軸側のリヤエンドに連結されたフレームのうち、チェーンステーとシートステーとに対し連結される取付部材を備え、この取付部材は、チェーンステーに対し着脱可能に連結される保持体と、シートステーに対し着脱可能に連結される支持体とを有し、その取付部材に対し脚バーを回動可能に支持して、その脚バーを取付部材から下方へ向けて回動させた接地可能状態と、その脚バーを後方へ向けて回動させた走行可能状態とを取り得るようにし、前記取付部材の支持体は前記取付部材の保持体に対し向き変更調節可能に設けられていることを特徴とする自転車用スタンド。
【請求項2】
前記取付部材の支持体は、シートステーを載せて支持する受け部を有していることを特徴とする請求項1に記載の自転車用スタンド。
【請求項3】
前記取付部材の保持体は、挟持部材によりチェーンステーに挟持された状態でリヤエンドに隣接してチェーンステーに配設され、前記取付部材の支持体は、この保持体の上側で回動可能に支持されて向き変更調節可能に設けられた状態でリヤエンドに隣接してシートステーに配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自転車用スタンド。
【請求項4】
前記取付部材と脚バーとにおいて脚バーを回動可能に支持する回動支持部の外周には前記接地可能状態と走行可能状態とでそれぞれ取付部材に対する脚バーの回動を規制する係止部を設けるとともに、脚バーに収容した押圧体の押圧力により取付部材に対する脚バーの接地可能状態と走行可能状態とを保持し、その押圧体による押圧力に抗して取付部材及び脚バーの係止部を互いに係脱させて脚バーを接地可能状態と走行可能状態との間で取付部材に対し回動し得ることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項に記載の自転車用スタンド。
【請求項5】
前記取付部材と脚バーとは、後輪軸の左右両側のうち一方の側に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載の自転車用スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162133(P2012−162133A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22799(P2011−22799)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(591186866)株式会社箕浦 (8)