説明

自転車用ヘッド部品

【課題】 自転車用ヘッド部品において、ハンドルステムの上下位置を容易に調整できかつフォークコラムに充分に固定できるようにする。
【解決手段】 自転車用ヘッド部品10は、両端に配置される上下1対の玉軸受ユニット11a,11bを有する自転車のヘッドパイプ102aにフロントフォーク98のフォークコラム98aを装着するための部品であって、調整部材15と、第1ロック部材16とを備えている。調整部材は、フォークコラムが通過可能な筒状部20、筒状部の一端外周面に形成された雄ねじ部21、筒状部の他端に設けられヘッドパイプの上部に装着される玉軸受に接触可能な接触部22、及び筒状部の雄ねじ部形成部分に軸方向に沿いかつ周方向に間隔を隔てて形成された複数のスロット23を有する部材である。第1ロック部材は、内周側に雄ねじ部21に螺合する雌ねじ部25を有し、筒状部を外周側から押圧してフォークコラムに固定可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド部品、特に、両端に配置される上下1対の軸受を有する自転車のヘッドパイプにフロントフォークのフォークコラムを装着するための自転車用ヘッド部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車のフロントフォークは、フレームのヘッドパイプに回動自在に装着される。ヘッドパイプの両端には、玉軸受が装着されており、フォークコラムには、ヘッド部品と呼ばれるフロントフォーク装着用の部品が取り付けられている。従来のヘッド部品は、フロントフォークのフォークコラムの外周部に形成された雄ねじ部に螺合する上玉押しと、上玉押しをロックするロックナットとを有している(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、最近では、フォークコラムに雄ねじ部を有さないフロントフォークが広く使用されている。このような雄ねじ部を有さない形状のフロントフォークの場合、フォークコラムがヘッドパイプから上方に突出し、突出したフォークコラムの外周部にハンドルステムが装着される。このようなフロントフォークを装着する従来のヘッド部品は、フォークコラムの内部に係止されたロックナットと、ロックナットに螺合する調整ボルトと、調整ボルトによりハンドルステムの上部に装着される蓋部材と、上側の玉軸受とフォークコラムとの間に設けられスリットを有するコンプレッションリングとを有している(たとえば、特許文献2参照)。このような構造の従来のヘッド部品では、コンプレッションリングとハンドルステムとをフォークコラムに装着した後、蓋部材をハンドルステムの上部に装着し、調整ボルトをロックナットに螺合させることによりフロントフォークをヘッドパイプに装着している。また、玉軸受の玉当たりは、コンプレッションリングをフォークコラムと軸受との間に挿入密着させて調整ボルトの締め付け加減により調整している。さらにハンドルステムの高さは、リング状のスペーサをハンドルステムと上玉押しとの間やハンドルステムと蓋部材との間に装着することにより調整されている。
【0004】
しかし、このような構造の従来のヘッド部品では、ロックナットがフォークコラム内部で係止されているために、たとえばフロントフォークの玉当たりを調整しようとすると、ハンドルステムの固定を緩めて調整しなければならず、玉当たりの調整が煩わしい。
【0005】
そこで、フォークコラムの外周面にロック部材を設けフォークコラムをヘッドパイプに装着することが考えられる。このような構成を実現する場合、ハンドルステムの外周に取り付けられる従来のヘッド部品を流用することが考えられる(たとえば、特許文献3参照)。従来のベッド部品は、上下延びるスリットを有しスリットに上下に設けられた2本のボルトによりハンドルステムに固定される円形の空間を有するリング状のロック部材(第1及び第2固定手段の一例)と、ロック部材の下半分の空間に装着される上玉押し(調整部材の一例)とを有している。ロック部材の下半分の空間の内周面には、雌ねじ部が形成されており、ロック部材の上半分の空間はハンドルステムに接触するように雌ねじ部より小径に形成されている。上玉押しは、上側の玉軸受に接触可能であり、ハンドルステムが貫通可能な円筒状の部材であり、上部外周面には、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成されている。また、中間部外周面には、スパナなどを係止可能な平面視六角形の外形の工具係止部が形成されている。
【0006】
このような構成の従来のヘッド部品をハンドルステムではなくフォークコラムの装着に用いる場合、上玉押し及びロック部材をこの順でフォークコラムに装着し、上側のボルトによりロック部材の上半分をフォークコラムに固定する。このとき、下側のボルトは緩めておく。そして、上玉押しをスパナなどの工具で回して玉軸受の玉当たりを調整し、フォークコラムががたつきなくかつ滑らかに回動するようにする。玉当たりの調整が終わると、下側のボルトも締め付けてヘッド部品をフォークコラムに固定し、フロントフォークの装着を完了する。
【特許文献1】米国特許第5330220号公報
【特許文献2】米国特許第5095770号公報
【特許文献3】中華民国特許第225753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のヘッド部品では、上側のボルトを締め付けることによりフォークコラムにロック部材を固定することができる。このため、ハンドルステムを緩めることなく軸受の調整を行える。しかし、下側のボルトを締め付けたとき、上玉押しの回り止めは実現できるが、上玉押しが変形しないため、上玉押しをフォークコラムに充分に締め付け固定することができない。このため、従来のヘッド部品をフォークコラムの固定に流用すると、フォークコラムへの固定が不十分になるおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、フォークコラムの外周で固定する自転車用ヘッド部品において、軸受を容易に調整できるとともにフォークコラムに充分に固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る自転車用ヘッド部品は、両端に配置される上下1対の軸受を有する自転車のヘッドパイプにフロントフォークのフォークコラムを装着するための部品であって、調整部材と、第1固定手段とを備えている。調整部材は、フォークコラムが通過可能な筒状部、筒状部の一端外周面に形成された雄ねじ部、筒状部の他端に設けられヘッドパイプの上部に装着される軸受に接触可能な接触部、及び筒状部の雄ねじ部形成部分に軸方向に沿いかつ周方向に間隔を隔てて形成された複数のスロットを有する部材である。第1固定手段は、内周側に雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有し、筒状部を外周側から押圧してフォークコラムに固定可能な手段である。
【0010】
このヘッド部品を組み込む際には、第1固定手段を調整部材の雌ねじ部にねじ込む。そして、ヘッドパイプの下端に配置された軸受をフロントフォークの肩部に接触させた状態で、ヘッドパイプを貫通したフォークコラムの上端から外周面に調整部材に第1固定手段が組み込まれた組立体をヘッドパイプの上端に配置された軸受に接触するように装着する。調整部材を含む組立体を装着すると、第1固定手段を回り止めしかつ上方に移動しないように規制した状態で調整部材をスパナ等の工具を利用して回す。すると、第1固定手段は、フォークコラムに対して回らないので、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する調整部材が第1固定手段に対して上下に移動し軸受の当たりを調整できる。軸受の当たりの調整が終わると、第1固定手段により筒状部を押圧してさらにフォークコラムに第1固定手段を固定する。このとき、筒状部の雌ねじ部の形成部分には軸方向に沿って複数のスロットが形成されているため、第1固定手段により筒状部を押圧すると、筒状部がフォークコラム側に変形し、筒状部を介して第1固定手段がフォークコラムに固定される。ここでは、フォークコラムの外周部に調整部材と第1固定手段を配置したので、ハンドルステムにかかわらず軸受の調整を行える。このため、軸受の調整が容易である。また、調整部材の筒状部にスロットを設けて筒状部がフォークコラム側に変形しやすいようにしたので、第1固定手段とともに調整部材もフォークコラムに固定され、ヘッド部品をフォークコラムに確実に固定できる。
【0011】
発明2に係る自転車用ヘッド部品は、発明1に記載の部品において、筒状部の上方でフォークコラムを外周側から押圧してフォークコラムに固定可能であり、第1固定手段に対して回転不能な第2固定手段をさらに備える。
【0012】
この場合には、ヘッド部品を組み込む際には、第1固定手段を調整部材の雌ねじ部にねじ込むとともに、第2固定手段を第1固定手段に回転不能に装着する。そして、ヘッドパイプの下端に配置された軸受をフロントフォークの肩部に接触させた状態でヘッドパイプを貫通したフォークコラムの上端から外周面に調整部材に第1及び第2固定手段が組み込まれた組立体をヘッドパイプの上端に配置された軸受に接触するように装着する。調整部材を含む組立体を装着すると、第2固定手段によりフォークコラムの外周面を押圧して第2固定手段をフォークコラムに固定する。これにより、フォークコラムに対して第2固定手段が上方に移動しなくなるとともに回転しなくなり、第2固定手段に対して回転不能な第1固定手段も回転しなくなるとともに上方に移動しなくなる。この状態で調整部材をスパナ等の工具を利用して回すと、第1固定手段は、フォークコラムに対して回らないので、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する調整部材が第1固定手段に対して上下に移動し軸受の当たりを調整できる。軸受の当たりの調整が終わると、第1固定手段により筒状部を押圧してさらにフォークコラムに第1固定手段を固定する。このとき、筒状部の雌ねじ部の形成部分には軸方向に沿って複数のスロットが形成されているため、第1固定手段により筒状部を押圧すると、筒状部がフォークコラム側に変形し、筒状部を介して第1固定手段がフォークコラムに固定される。ここでは、フォークコラムの外周部に調整部材と第1及び第2固定手段を配置したので、発明1と同様に、ハンドルステムに関わらず軸受を調整できる。このため、軸受の調整が容易である。また、調整部材の筒状部にスロットを設けて筒状部がフォークコラム側に変形しやすいようにしたので、第2固定手段とともに第1固定手段もフォークコラムに固定され、ヘッド部品をフォークコラムに確実に固定できる。なお、この場合、ヘッド部品によるフロントフォークの装着が終わると、第2固定手段を取り外すようにしてもよい。
【0013】
発明3に係る自転車用ヘッド部品は、発明2に記載の部品において、第1固定手段は、内周に雌ねじ部を有しフォークコラムに装着可能な第1リング部、第1リング部の径方向外方に突出する第1突出部、及び第1突出部に第1リング部の内周部から径方向に沿って形成された第1スリットを有する第1リング部材と、第1突出部に装着され第1スリットの幅を調整するための第1締結部材とを有し、第2固定手段は、フォークコラムに装着可能な第2リング部、第2リング部の径方向外方に突出する第2突出部、及び第2突出部に第2リング部の内周部から径方向に沿って形成された第2スリットを有し、第1リング部材に対して回転不能な第2リング部材と、第2突出部に装着され第2スリットの幅を調整するための第2締結部材とを有する。この場合には、第1リング部を調整部材にねじ込んで装着した後に第2リング部を第1リング部に装着する。そして、フォークコラムに調整部材とともに装着し、第2締結部材を第2スリット幅が狭まるように第2突出部に締結し、第2リング部材をフォークコラムに固定する。この状態で、調整部材をまわして軸受の当たりを調整し、その後第1締結部材を第1スリットが狭まるように第1突出部に締結する。これにより、筒状部が押圧され第1リング部材がフォークコラムに固定される。ここでは、第1固定手段と第2固定手段とを分割したので、第2固定手段(第2リング部材)がフォークコラムにより確実に固定される。
【0014】
発明4に係る自転車用ヘッド部品は、発明3に記載の部品において、第1スリットと第2スリットとが第1及び第2リング部の径方向に対向して配置されるように、第1及び第2固定手段は配置される。この場合には、第1及び第2突出部にそれぞれ設けられた第1及び第2スリットが径方向に対向して配置されるので、第1及び第2リング部の厚みを第1及び第2突出部の厚みより薄くすることにより第1及び第2固定手段全体の厚みを薄くすることができ、ヘッド部品の小型軽量化を図ることができる。
【0015】
発明5に係る自転車用ヘッド部品は、発明4に記載の部品において、第1締結手段と第2締結手段とが第1及び第2リング部の径方向に対向して配置されるように、第1及び第2固定手段は配置される。この場合には、第1及び第2締結手段が径方向に対向して配置されるので、第1及び第2リング部の厚みを第1及び第2突出部の厚みより薄くすることにより第1及び第2固定手段全体の厚みを薄くすることができ、ヘッド部品の小型軽量化を図ることができる。
【0016】
発明6に係る自転車用ヘッド部品は、発明3に記載の部品において、第1スリットと第2スリットとが径方向の同じ位置に配置されるように、第1及び第2固定手段は配置される。この場合には、第1及び第2スリットの幅を縮めるための第1及び第2締結部材を同じ径方向位置に配置できるので、締結作業が容易である。
【0017】
発明7に係る自転車用ヘッド部品は、発明6に記載の部品において、第1及び第2リング部は、それぞれ開閉自在な第1及び第2ヒンジ部をそれぞれさらに有する。この場合には、第1及び第2リングが開閉するので、第1及び第2リングの着脱が容易になる。また、ヒンジにより両リング部が締まりやすくなるので、フォークコラムに対する締め付け固定力が強くなる。
【0018】
発明8に係る自転車用ヘッド部品は、発明3から7のいずれかに記載の部品において、第1リング部と第2リング部とは、周方向に形成された段差により回り止めされる。この場合には、段差により簡単に回り止めできる。
【0019】
発明9に係る自転車用ヘッド部品は、発明3から7のいずれかに記載の部品において、第1リング部と第2リング部とは、径方向に突出及び凹む凹凸嵌合により回り止めされる。
【0020】
発明10に係る自転車用ヘッド部品は、発明3から9のいずれかに記載の部品において、第2リング部は、筒状部の先端を受け入れる逃がし部と、逃がし部より小径でフォークコラムの外周面に接触可能な接触部とを有する。この場合には、第2リング部側に筒状部の先端を配置できるので当たりの調整範囲を広くすることができる。
【0021】
発明11に係る自転車用ヘッド部品は、発明2に記載の部品において、第2固定手段は、フォークコラムに装着可能であり径方向内方に突出してフォークコラムに食い込み可能な食い込み部を有する第3リング部、第3リング部の径方向外方に突出する第3突出部、及び第3突出部に第3リング部の内周部から径方向に沿って形成された第3スリットを有する第3リング部材と、第3突出部に装着され前記第3スリットの幅を調整するための第3締結部材とを有し、第1固定手段は、内周に雌ねじ部を有し第3リング部と一体形成された第4リング部を有する。この場合には、まず、第3締結部材を食い込み部がフォークコラムの外周面に食い込む程度に第3突出部に締結する。この状態で調整部材を回して当たりを調整し、最後に第3締結部材で確実に締結する。ここでは、1つの締結部材でヘッド部品をフォークコラムに充分に固定できる。
【0022】
発明12に係る自転車用ヘッド部品は、発明1から11のいずれかに記載の部品において、軸受をシールするシール部材をさらに備える。この場合には、軸受への異物の侵入を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フォークコラムの外周部に調整部材と第1固定手段を配置したので、ハンドルステムに関わらず軸受を調整できる。このため、軸受の調整が容易である。また、筒状部にスロットを設けて筒状部がフォークコラム側に変形しやすいようにしたので、第1固定手段とともに調整部材もフォークコラムに固定され、ヘッド部品をフォークコラムに確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
図1において、本発明の第1実施形態を採用した自転車100は、ロードレーサであり、フロントフォーク98及びフロントフォーク98がヘッドパイプ102aに回動自在に装着されたダイヤモンド形のフレーム体102を有するフレーム101と、フロントフォーク98に固定されたハンドル部104と、チェーン95やペダルPDが装着されたクランク96や前後のディレーラ97f,97rや前後のスプロケット群99f,99r等からなる駆動部105と、フロントフォーク98及びフレーム体102後部に装着された前輪及び後輪106f,106rと、前後のブレーキ装置107f,107rとを備えている。
【0025】
ハンドル部104は、図1に示すように、ハンドルステム111と、ハンドルステム111の上端で嵌合固定されたハンドルバー112とで構成されている。ハンドルステム111は、図1及び図2に示すように、フロントフォーク98の上部のフォークコラム98aの上端部に嵌合固定されている。ハンドルバー112は、ドロップハンドル型のものであり、左右1対のブレーキレバー113f,113rを備えている。
【0026】
フロントフォーク98は、図2及び図3に示すように、本発明の一実施形態によるヘッド部品10によりフレーム体102の前部に配置されたヘッドパイプ102aに回動自在に装着されている。ヘッドパイプ102aの両端には、上下1対の玉軸受ユニット11a,11bが装着されており、ヘッド部品10は、ヘッドパイプ102aにフロントフォーク98のフォークコラム98aをフォーク肩98bとの間で挟んで玉軸受ユニット11a,11bとの玉当たりを調整しつつ装着可能である。フォークコラム98aの上部はキャップ部材51により塞がれている。キャップ部材51はたとえば合成樹脂製であり、フォークコラム98a内周面に弾性係止されている。
【0027】
ヘッド部品10は、図2〜図4に示すように、玉軸受ユニット11a,11bとの玉当たりを調整するための調整部材15と、フォークコラム98aに固定可能であり調整部材15に螺合する第1ロック部材(第1固定手段の一例)16とを有している。また、ヘッド部品10は、ヘッドパイプ102aの下部で玉軸受ユニット11bとフォーク肩98bとに接触する装着リング18と、装着リング18に装着されヘッドパイプ102aの下端に接触して玉軸受ユニット11bをシールするシール部材19と、調整部材15の外周側をカバーするカバー部材50とを有している。
【0028】
調整部材15は、たとえば金属製の部材であり、フォークコラム98aが通過可能な筒状部20と、筒状部20の上端外周面に形成された雄ねじ部21と、筒状部20の下端に設けられヘッドパイプ102aの上部に装着される玉軸受ユニット11aに接触可能な接触部22と、筒状部20の雄ねじ部21形成部分に軸方向に沿いかつ周方向に間隔を隔てて形成された複数のスロット23と、筒状部20の雄ねじ部21と接触部22との間の外周面に形成された工具係止部24とを有している。
【0029】
筒状部20には、内径がたとえば28mm程度でフォークコラム98aがすきまばめ程度の隙間で通過可能な貫通孔20aが形成されている。雄ねじ部21は、たとえば、M32程度の大きさのねじであり、第1ロック部材16に螺合する。接触部22は、たとえば下方に向かうテーパ面で構成され、玉軸受ユニット11aに接触して押圧し、玉軸受ユニット11a,11bの押圧力を変化させて玉当たりを調整するために設けられている。玉当たりの調整は、がたつかずかつスムーズに回動するようにフロントフォーク98をヘッドパイプ102aに装着するために行われる。スロット23は、たとえば、周方向に等間隔に8箇所設けられている。このスロット23を形成することにより、筒状部20の雄ねじ部21形成部分が中心側に変形しやすくなる。工具係止部24は、スパナなどの工具により調整部材15を回転させることができるようにするために設けられている。工具係止部24は、たとえば互いに平行に配置された4組の面取り部24a〜24dにより構成されている。工具係止部24と接触部22との間には大径の鍔部20bが形成されている。鍔部20bは、工具係止部24にスパナ等の工具を装着したときに、工具が下方にずれないようにするために設けられている。この結果、工具の工具係止部24への装着が容易になる。
【0030】
第1ロック部材16は、内周側に雄ねじ部21に螺合する雌ねじ部25を有し、筒状部20を外周側から押圧してフォークコラム98aに固定可能なものである。第1ロック部材16は、内周面に雌ねじ部25を有する第1リング部30、第1リング部30の径方向外方に突出する第1突出部31、及び第1突出部31に形成された第1スリット32を有する第1リング部材26と、第1突出部31に装着され第1スリット32の幅を調整するための第1締め付けボルト27とを有している。
【0031】
第1リング部30は、調整部材15にねじ込まれた状態でフォークコラム98aに装着可能である。第1スリット32は、第1リング部30の内周部から径方向に沿って形成されており、第1リング部30を狭めてフォークコラム98aに第1ロック部材16を固定するために設けられている。
【0032】
第1締め付けボルト27は、たとえば六角穴付きボルトであり、第1突出部31に第1スリット32と直交する方向に沿って装着されている。第1突出部31の第1スリット32を挟んだ一方には、第1締め付けボルト27が貫通する貫通孔及び第1締め付けボルト27の頭部を収納可能な座繰り穴が形成されている。また、他方には第1締め付けボルト27が螺合するねじ孔が形成されている。
【0033】
装着リング18は、上部に形成された玉軸受ユニット11bに接触する接触部18aと、中間部に形成された環状のシール装着溝18bと、径方向に沿って形成された第5スリット40とを有する鍔付き円板状の部材である。装着リング18は、フォークコラムの基端部であるフォーク肩98bに形成された段差により下方への移動が規制されている。接触部18aは、上方に向かうテーパ面で構成されている。これにより、調整部材15により玉軸受ユニット11aを下方に押圧すると、その力がフォーク肩98bを介して玉軸受ユニット11bにも伝わって押圧され、両玉軸受ユニット11a,11bの玉当たりを調整できる。
【0034】
シール部材19は、先端に尖ったリップを有する、たとえばニトリルゴム等の弾性体製の部材である。シール部材19は、先端リップ部がヘッドパイプ102aの下面に接触しており、ヘッドパイプ102aとフォークコラム98aの隙間からの液体を含む異物の侵入を防止するために設けられている。これにより玉軸受ユニット11bがシールされ、下側からの異物の侵入を防止できる。
【0035】
カバー部材50は、たとえば伸縮性を有するゴム製の部材であり、湾曲した外観を有している。カバー部材50は、フロントフォーク98の装着が完了まで下端を逆転させて調整部材15を露出させておき、フロントフォーク98の装着が完了すると下端を反転させてヘッドパイプ102a上部に装着し調整部材15をカバーする。これにより玉軸受ユニット11aをシールできる。
【0036】
次に、このような構成のヘッド部品10を用いてフロントフォーク98をヘッドパイプ102aに装着する組立手順について説明する。
【0037】
組立前に、シール部材19を装着リング18に装着したり、調整部材15に第1ロック部材16をねじ込む等の準備をおこなう。準備が終わると、フォークコラム98aの上部から装着リング18を装着してフォーク肩98aに当接させるとともに玉軸受ユニット11bをフォークコラム98aに装着リング18に接触するように上部から装着する。この状態でフロントフォーク98のフォークコラム98aを下側からヘッドパイプ102aを貫通して装着し、玉軸受ユニット11bをヘッドパイプ102aの下端に装着する。
【0038】
次に、ヘッドパイプ102aから飛び出したフォークコラム98aの上部から玉軸受ユニット11a及び第1ロック部材16が装着された調整部材15をこの順に挿入し、玉軸受ユニット11aをヘッドパイプ102aの上端の所定の位置に装着する。また、調整部材15を接触部22が玉軸受ユニット11aに接触する位置まで下げる。この状態で適宜の治具等を用いて第1ロック部材16を回り止めするとともに上方への移動を規制し、その状態でスパナ等の工具を工具係止部24に装着して調整部材15をたとえば反時計回りに回す。すると、第1ロック部材16が回転不能かつ上方への移動が規制された状態であるので、調整部材15が下方に移動し、押圧力が徐々に強くなり、玉当たりが徐々にきつくなる。そして、フロントフォーク98ががたつきなくスムーズに回動するようになり玉当たりの調整が終わると、第1締め付けボルト27を締め付けて第1ロック部材16をフォークコラム98aに固定する。第1締め付けボルト27を締め付けると、筒状部20にはスロット23が形成されているため、第1リング部30により筒状部20が締め付けられ、調整部材15が、フォークコラム98aにきつく抱きついて回り止めされる。この結果、第1ロック部材16がフォークコラム98aに固定される。
【0039】
これらの作業が終了すると、カバー部材50を反転させて調整部材15の周囲に装着する。そして、ハンドルステム111を任意の上下位置でフォークコラム98aの上端に装着する。
【0040】
ここでは、フォークコラム98aの外周部に調整部材15と第1ロック部材16を配置したので、ハンドルステム111を装着することなく玉当たりの調整を行える。このため、ハンドルステム111に関わりなく玉当たりを調整できる。したがって、ハンドル部104の上下位置の調整が容易であるとともに軸受ユニット11a,11bの玉当たりの調整も容易である。なお、上方への移動を規制する治具として、たとえばハンドルステム111を第1ロック部材16に接触させた状態でフォークコラム98aに固定し、これにより第1ロック部材16の上方への移動を規制してもよい。この場合にも、第1ロック部材16がフォークコラム98aに固定された後はハンドルステム111の上下位置の調整が容易である。また、別の部材をフォークコラム98aに固定して第1ロック部材16の上方への移動を規制してもよい。この場合、玉当たりの調整が終わると固定した部材を取り外すのが好ましい。ここでは、不必要な部品を省いてヘッド部品10の軽量かつコンパクト化を図ることもできる。
【0041】
また、筒状部20にスロット23を設けて筒状部20がフォークコラム98a側に変形しやすいようにしたので、第1ロック部材16がフォークコラム98に固定され、ヘッド部品10をフォークコラム98aに確実に固定できる。
【0042】
〔第2実施形態〕
前記第1実施形態では1つの第1ロック部材16によりヘッド部品10をフォークステム98aに固定したが、図5〜図7に示すように、第1及び第2ロック部材16’,17’によりヘッド部品10’をフォークコラム98aに固定するようにしてもよい。
【0043】
本発明の第2実施形態によるヘッド部品10’は、図5〜図7に示すように、玉軸受ユニット11a,11bとの玉当たりを調整するための調整部材15と、フォークコラム98aに固定可能であり調整部材15の上方に上下に並べて配置された第1及び第2ロック部材(第1及び第2固定手段の一例)16’,17’とを有している。また、ヘッド部品10’は、ヘッドパイプ102aの下部で玉軸受ユニット11bとフォーク肩98bとに接触する装着リング18と、装着リング18に装着されヘッドパイプ102aの下端に接触して玉軸受ユニット11bをシールするシール部材19と、調整部材15の外周側をカバーするカバー部材50とを有している。
【0044】
調整部材15は、第1実施形態と同様な部材であり、フォークコラム98aが通過可能な筒状部20と、筒状部20の上端外周面に形成された雄ねじ部21と、筒状部20の下端に設けられヘッドパイプ102aの上部に装着される玉軸受ユニット11aに接触可能な接触部22と、筒状部20の雄ねじ部21形成部分に軸方向に沿いかつ周方向に間隔を隔てて形成された複数のスロット23と、筒状部20の雄ねじ部21と接触部22との間の外周面に形成された工具係止部24とを有している。調整部材15の詳細な構成は第1実施形態と同様なため説明を省略する。
【0045】
第1ロック部材16’は、第2ロック部材17’に対して回転不能であり、内周側に雄ねじ部21に螺合する雌ねじ部25を有し、筒状部20を外周側から押圧してフォークコラム98aに固定可能なものである。第1ロック部材16’は、内周面に雌ねじ部25を有する第1リング部30、第1リング部30の径方向外方に突出する第1突出部31、及び第1突出部31に形成された第1スリット32を有する第1リング部材26と、第1突出部31に装着され第1スリット32の幅を調整するための第1締め付けボルト27を有している。
【0046】
第1リング部30は、調整部材15にねじ込まれた状態でフォークコラム98aに装着可能である。第1突出部31は、後述する第2リング部33の略2倍の厚みを有しており、第2ロック部材17’の後述する第2リング部材28の第2リング部33と実質的に面一となるような厚みである。第1突出部31には、第2リング部33の外周面に接触する円弧状に凹んだ第1凹み部31aが形成されている。
【0047】
第1スリット32は、第1リング部30の内周部から径方向に沿って形成されており、第1リング部30を狭めてフォークコラム98aに第1ロック部材16’を固定するために設けられている。
【0048】
第1締め付けボルト27は、たとえば六角穴付きボルトであり、第1突出部31に第1スリット32と直交する方向に沿って装着されている。第1突出部31の第1スリット32を挟んだ一方には、第1締め付けボルト27が貫通する貫通孔及び第1締め付けボルト27の頭部を収納可能な座繰り穴が形成されている。また、他方には第1締め付けボルト27が螺合するねじ孔が形成されている。
【0049】
第2ロック部材17’は、筒状部20の上方でフォークコラム98aを外周側から押圧してフォークコラム98aに固定可能なものである。第2ロック部材17’は、フォークコラムに装着可能な第2リング部33、第2リング部33の径方向外方に突出する第2突出部34、及び第2突出部34に形成された第2スリット35を有し、第1リング部材26に対して回転不能な第2リング部材28と、第2突出部34に装着され第2スリット35の幅を調整するための第2締め付けボルト29とを有している。
【0050】
第2リング部33は、第1リング部30と略同一の厚みを有しており、上部内周面にフォークコラム98aが通過可能に形成された開口33aと、下部内周面に開口33aより大径であり調整部材15の筒状部20の先端を受け入れ可能に形成された逃がし部33b(図5)とを有している。第2突出部34は、第2リング部33の略2倍の厚みを有しており、第1ロック部材16’の第1リング部材26の第1リング部30と実質的に面一となるような厚みである。第2突出部34には、第1リング部30の外周面に接触する円弧状に凹んだ第2凹み部34aが形成されている。
【0051】
第1突出部31の第1凹み部31aには、回り止め凹部37が形成されており、第2リング部33の第1突出部31に対向する外周面には、回り止め凹部37に係合するように径方向外方に突出する回り止め凸部36が形成されている。このような凹凸嵌合により、第1リング部材26と第2リング部材28とは回り止めされている。この回り止め凸部36及び回り止め凹部37は、第1及び第2突出部31,34並びに第1及び第2スリット32,35が第1及び第2リング部30,33の径方向で対向するように形成されている。
【0052】
第2スリット35は、第2リング部33の内周部から径方向に沿って形成されており、第2リング部33を狭めてフォークコラム98aに第2ロック部材17’を固定するために設けられている。
【0053】
第2締め付けボルト29は、たとえば六角穴付きボルトであり、第2突出部34に第2スリット35と直交する方向に沿って装着されている。第2突出部34の第2スリット35を挟んだ一方には、第2締め付けボルト29が貫通する貫通孔及び第2締め付けボルト29の頭部を収納可能な座繰り穴が形成されている。また、他方には第2締め付けボルト29が螺合するねじ孔が形成されている。
【0054】
装着リング18は、シール部材19及びカバー部材50は、第1実施形態と同様な構成のための説明を省略する。
【0055】
次に、このような構成のヘッド部品10’を用いてフロントフォーク98をヘッドパイプ102aに装着する組立手順について説明する。
【0056】
組立前に、シール部材19を装着リング18に装着したり、調整部材15に第1ロック部材16’をねじ込むとともに、第1ロック部材16’に第2ロック部材17’も回り止めした状態で装着する等の準備をおこなう。準備が終わると、フォークコラム98aの上部から装着リング18を装着してフォーク肩98aに当接させるとともに玉軸受ユニット11bをフロックコラム98aに装着リング18に接触するように上部から装着する。この状態でフロントフォーク98のフォークコラム98aを下側からヘッドパイプ102aを貫通して装着し、玉軸受ユニット11bをヘッドパイプ102aの下端に装着する。
【0057】
次に、ヘッドパイプ102aから飛び出したフォークコラム98aの上部から玉軸受ユニット11a並びに第1及び第2ロック部材16’,17’が装着された調整部材15をこの順に挿入し、玉軸受ユニット11aをヘッドパイプ102aの上端に装着する。また、調整部材15を接触部22が玉軸受ユニット11aに接触する位置まで下げる。この状態で第2締め付けボルト29を締め付けて第2ロック部材17’をフォークコラム98aに固定する。これにより、第2ロック部材17’がフォークコラム98aに固定されるとともに、第2ロック部材17’により回り止めされた第1ロック部材16’の上方への移動が規制される。この状態でスパナ等の工具を工具係止部24に装着して調整部材15をたとえば反時計回りに回す。すると、ロック部材16’が回転不能かつ上方への移動が規制された状態であるため、調整部材15が下方に移動し、押圧力が徐々に強くなり、玉当たりが徐々にきつくなる。そして、フロントフォーク98ががたつきなくスムーズに回動するようになり玉当たりの調整が終わると、第1締め付けボルト27を締め付ける。第1締め付けボルト27を締め付けると、筒状部20にはスロット23が形成されているため、第1リング部30により筒状部20が締め付けられ、調整部材15が、フォークコラム98aにきつく抱きついて回り止めされる。この結果、第1ロック部材16’もフォークコラム98aに固定される。
【0058】
これらの作業が終了すると、カバー部材50を調整部材15の周囲に装着する。そして、ハンドルステム111を任意の上下位置でフォークコラム98aの上端に装着する。
【0059】
ここでも、フォークコラム98aの外周部に調整部材15と第1及び第2ロック部材16’,17’を配置したので、ハンドルステム111を装着することなく玉当たりの調整を行える。このため、ハンドルステム111に関わりなく玉当たりを調整できる。したがって、ハンドル部104の上下位置の調整が容易であるとともに軸受ユニット11a,11bの玉当たりの調整も容易である。また、筒状部20にスロット23を設けて筒状部20がフォークコラム98a側に変形しやすいようにしたので、第2ロック部材17’とともに第1ロック部材16’もフォークコラム98に固定され、ヘッド部品10’をフォークコラム98aに確実に固定できる。
【0060】
また、回り止め凸部36及び回り止め凹部37により、第1及び第2突出部31,34並びに第2及び第2スリット32,35が第1及び第2リング部30,33の径方向で対向するように配置されて第1及び第2ロック部材16’,17’が回り止めされている。その上、第1及び第2リング部30,33が第1及び第2突出部31,34の半分の厚みを有している。これらのことにより、両突出部31,34を上下に並べて配置する構成に比べて、締め付けボルト27,29のネジ径を小さくすることなくヘッド部品10全体の厚みを薄くすることができ、軽量化及びコンパクト化を図ることもできる。
【0061】
なお、玉当たりの調整が終わって第1ロック部材16’を固定した後に、第2ロック部材17’をフォークコラム98aから取り外してもよい。この場合、ハンドルステム111を取り付ける前に第2ロック部材17’を取り外せばよい。
【0062】
〔他の実施形態〕
(a)前記第2実施形態では、凹凸嵌合により第1ロック部材16’と第2ロック部材17’とを回り止めしたが、図8に示すように、たとえば第1及び第2リング部30,33にそれぞれ段差30d,33dを設け、段差30d,33dにより両ロック部材16’,17’の回り止めを行ってもよい。なお、この場合、段差30d,33dを第1及び第2リング部30,33の半円部分に設けるのが好ましい。たとえば、第1及び第2ロック部材16’,17’全体の厚みをTとした場合、第1及び第2リング部30,33をそれぞれ一方の半円部30e,33eの厚みを半分(T/2)の厚みより厚くし(たとえば、6mm)、他方の半円部30f,33fの厚みを全体の厚み(T)から一方の厚みを引いた値(たとえば、4mm)にして段差を形成すればよい。
【0063】
(b)前記第2実施形態では、第1及び第2ロック部材16’,17’の径方向で対向する位置に配置したが、図9に示すように、第1及び第2突出部31,34を第1及び第2ロック部材16’’,17’’の径方向の同じ位置に上下に並べて配置してもよい。この場合には、第1及び第2スリット32,35の幅を縮めるための第1及び第2締め付け部材27,29を同じ周方向位置に配置できるので、締結作業が容易である。
【0064】
またこの場合、図10に示すように、第1及び第2リング部30,33に開閉自在な第1及び第2ヒンジ部60,61をそれぞれ設けてもよい。この場合には、第1及び第2リング30,31が開閉するので、第1及び第2リング30,31の着脱が容易になる。なお、この場合にも、玉当たりの調整が終わって第1ロック部材16’’を固定した後に第2ロック部材17’’をフォークコラム98aから取り外してもよい。この場合、第2ヒンジ部61が設けられているので、ハンドステム111を装着した後でも第2ロック部材17’’を取り外すことができる。
【0065】
(c)前記第1実施形態では、第1ロック部材16をフォークコラム98aに直接接触させずに第1ロック手段で第1固定手段だけを構成した。しかし、図11に示すように、1つのロック部材70で2つの固定手段を構成してもよい。具体的には、第2固定手段は、フォークコラムに装着可能であり径方向内方に突出してフォークコラムに食い込み可能な食い込み部71を有する第3リング部82、第3リング部82の径方向外方に突出する第3突出部83、及び第3突出部83に第3リング部82の内周部から径方向に沿って形成された第3スリット84を有する第3リング部材85と、第3突出部83に装着され第3スリット84の幅を調整するための第3締め付けボルト86とを有している。第1固定手段は、内周に雌ねじ部25を有し第3リング部82と一体形成された第4リング部87を有する。
【0066】
この場合、締め付けボルト86を僅かに締め付けて食い込み部71をフォークコラム98aに食い込ませる。この状態で調整部材15により玉当たりを調整し、最後に締め付けボルト86を締め込んでロック部材70を固定する。
【0067】
(d)図12に示すように、ヘッド部品210の第1ロック部材116とハンドルステム211とを一体化してもよい。ここでは、ハンドルステム211は、第1スリット32に連なる第4スリット212を有しており、上部に径方向外方に突出する第4突出部213を有している。第4突出部213には、第4スリット212の幅を調整するための第4締め付けボルト215が取り付けられている。
【0068】
この場合、ハンドルステム211を調整部材15にねじ込んだ状態でフォークコラム98aに装着し、第4締め付けボルト215を締め付けた状態で調整部材15を回して玉当たりを調整する。そして、調整が終わると、第1締め付けボルト27を締め付け、装着を完了する。この場合には、ハンドルステム211の取付とフロントフォーク98の取付とを同時に行えるとともに、全体部品の軽量化及び簡素化を図ることができる。
【0069】
(e)前記実施形態では、軸受として玉軸受を例示したが軸受は玉軸受に限定されず、ニードル軸受等の転動体を有する転がり軸受であればどのような形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態が採用された自転車の側面図。
【図2】そのヘッド部分の半截断面図。
【図3】ヘッド部品装着部分の分解斜視図。
【図4】ヘッド部品の分解斜視図。
【図5】第2実施形態の図2に相当する図。
【図6】第2実施形態の図3に相当する図。
【図7】第2実施形態の図4に相当する図。
【図8】他の実施形態の図4に相当する図。
【図9】他の実施形態の図4に相当する図。
【図10】他の実施形態の図4に相当する図。
【図11】他の実施形態の図4に相当する図。
【図12】他の実施形態の図2に相当する図。
【符号の説明】
【0071】
10,10’,10’’,210 ヘッド部品
15 調整部材
16,16’,16’’ 第1ロック部材
17,17’,17’’ 第2ロック部材
18 装着リング
19 シール部材
20 筒状部
21 雄ねじ部
22 接触部
23 第1スリット
25 雌ねじ部
26,28 第1リング部材
27,29 第1及び第2締め付け部材
30,33 第1及び第2リング部
31,34 第1及び第2突出部
32,35 第2及び第2スリット
70 ロック部材
71 食い込み部
98 フロントフォーク
98a フォークコラム
102 フレーム体
102a ヘッドパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に配置される上下1対の軸受を有する自転車のヘッドパイプにフロントフォークのフォークコラムを装着するための自転車用ヘッド部品であって、
前記フォークコラムが通過可能な筒状部、前記筒状部の一端外周面に形成された雄ねじ部、前記筒状部の他端に設けられ前記ヘッドパイプの上部に装着される軸受に接触可能な接触部、及び前記筒状部の前記雄ねじ部形成部分に軸方向に沿いかつ周方向に間隔を隔てて形成された複数のスロットを有する調整部材と、
内周側に前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有し、前記筒状部を外周側から押圧して前記フォークコラムに固定可能な第1固定手段と、
を備えた自転車用ヘッド部品。
【請求項2】
前記筒状部の上方で前記フォークコラムを外周側から押圧して前記フォークコラムに固定可能であり、前記第1固定手段に対して回転不能な第2固定手段をさらに備える、請求項1に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項3】
前記第1固定手段は、
内周に前記雌ねじ部を有し前記フォークコラムに装着可能な第1リング部、前記第1リング部の径方向外方に突出する第1突出部、及び前記第1突出部に第1リング部の内周部から径方向に沿って形成された第1スリットを有する第1リング部材と、
前記第1突出部に装着され前記第1スリットの幅を調整するための第1締結部材とを有し、
前記第2固定手段は、
前記フォークコラムに装着可能な第2リング部、前記第2リング部の径方向外方に突出する第2突出部、及び前記第2突出部に第2リング部の内周部から径方向に沿って形成された第2スリットを有し、前記第1リング部材に対して回転不能な第2リング部材と、
前記第2突出部に装着され前記第2スリットの幅を調整するための第2締結部材とを有
する、請求項2に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項4】
前記第1スリットと前記第2スリットとが前記第1及び第2リング部の径方向に対向して配置されるように、前記第1及び第2固定手段は配置される、請求項3に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項5】
前記第1締結手段と前記第2締結手段とが前記第1及び第2リング部の径方向に対向して配置されるように、前記第1及び第2固定手段は配置される、請求項4に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項6】
前記第1スリットと前記第2スリットとが径方向の同じ位置に配置されるように、前記第1及び第2固定手段は配置される、請求項3に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項7】
前記第1及び第2リング部は、それぞれ開閉自在な第1及び第2ヒンジ部をそれぞれさらに有する、請求項6に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項8】
前記第1リング部材と前記第2リング部材とは、周方向に形成された段差により回り止めされる、請求項3から7のいずれか1項に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項9】
前記第1リング部材と前記第2リング部材とは、径方向に突出及び凹む凹凸嵌合により回り止めされる、請求項3から7のいずれか1項に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項10】
前記第2リング部は、前記筒状部の先端を受け入れる逃がし部と、前記逃がし部より小径で前記フォークコラムの外周面に接触可能な接触面とを有する、請求項3から9のいずれか1項に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項11】
前記第2固定手段は、
前記フォークコラムに装着可能であり径方向内方に突出して前記フォークコラムに食い込み可能な食い込み部を有する第3リング部、前記第3リング部の径方向外方に突出する第3突出部、及び前記第3突出部に第3リング部の内周部から径方向に沿って形成された第2スリットを有する第3リング部材と、
前記第3突出部に装着され前記第2スリットの幅を調整するための第3締結部材とを有し、
前記第1固定手段は、
内周に前記雌ねじ部を有し前記第3リング部と一体形成された第4リング部を有する、請求項2に記載の自転車用ヘッド部品。
【請求項12】
前記軸受をシールするシール部材をさらに備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の自転車用ヘッド部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−56410(P2006−56410A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240993(P2004−240993)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】