説明

自転車用変速位置検出装置及び自転車

【課題】、非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易で組立て性及び組付け性が良好な自転車用変速位置検出装置を得る。
【解決手段】検出装置20のケース32内では、変速用ワイヤ18が分割されており、変速シフタ側のインナワイヤ40Aの端部に設けられた係止体50が、変速装置側のインナワイヤ40Bの端部に設けられた連結体52に係止されている。連結体52の小径部52Bには永久磁石44が外挿され、ナット46により永久磁石44が連結体52の大径部52Aの側面に当たる位置に固定されている。ケース32の下部には、回路基板34が配設されており、回路基板34上に非接触センサ36A、36Bが設けられている。変速シフタ16の操作によりインナワイヤ40Aが軸方向に移動したとき、永久磁石44の位置が非接触センサ36A、36Bで検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用変速位置検出装置、及びこの自転車用変速位置検出装置を備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補助動力付きの自転車では、変速段毎に適切なアシスト制御を行う必要があることから、変速段を検出する検出装置が設けられている。
【0003】
下記特許文献1には、変速段を検出する変速位置検出部に、初期位置設定手段として、変速位置検出のためのブラシ板に対する電極ドラムの回転方向の相対位置を調整する調整手段を配設し、実際の変速段と検出手段による変速位置との間のずれを調整するようにした構成が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、シェル内を横切る制御ケーブルに基準部材をねじ止めにより固定することで、基準部材を制御ケーブルと共に移動させ、基準部材に設けられた移動接触子をシェル内部の導電性チャネルに接触させることにより、基準部材のシェルに対する位置を検出する構成が開示されている。
【0005】
さらに、下記特許文献3には、ギヤチェンジ用ワイヤのインナに摩擦力により指示部材を係合することにより、インナに連動して指示部材を移動させ、ギヤチェンジ用ワイヤに設けられた表示装置内の磁気センサにより指示部材の位置を検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−296652号公報
【特許文献2】特開2001−187594号公報
【特許文献3】特許第3365910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、変速ケーブルの牽引量に応じて回転するローラ部材に対して電極ドラムを回転方向の相対位置を調整可能に配設しており、部品点数が多く、検出装置の組み付けが複雑である。
【0008】
特許文献2に記載の構成では、組付け時にシェル内部の導電性チャネルに対する基準部材の位置出しが難しい。
【0009】
特許文献3に記載の構成では、インナに摩擦力により指示部材を係合するため、組付け時に表示装置内の磁気センサに対する指示部材の位置出しが難しい。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易で組立て性及び組付け性が良好な自転車用変速位置検出装置及び自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明に係る自転車用変速位置検出装置は、変速段の切り替え操作をするための操作装置に接続される操作側ワイヤの端部と変速段に応じて自転車のギヤ比を制御するための変速装置に接続される変速側ワイヤの端部とを連結する連結手段と、前記連結手段に取り付けられた被検出体と、前記連結手段を移動可能に収容する収容部材と、前記収容部材に設けられ、前記被検出体の位置を非接触で検知する非接触センサと、を有するものである。
【0012】
請求項1に記載の発明では、操作装置に接続される操作側ワイヤの端部と変速装置に接続される変速側ワイヤの端部とが連結手段によって連結されており、連結手段に被検出体が取り付けられている。すなわち、操作装置と変速装置との間に接続されるワイヤが操作側ワイヤと変速側ワイヤに分割されていることで、検出装置の組立て性が良好となる。また、収容部材から操作側ワイヤの端部と変速側ワイヤの端部とが連結される連結手段までの長さを決めておき、連結手段に被検出体を取り付けることで、収容部材に設けられた非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自転車用変速位置検出装置において、前記操作側ワイヤと前記変速側ワイヤは、それぞれアウタチューブの内部に長手方向に移動可能に挿通されており、前記収容部材の長手方向両側に、前記操作側ワイヤが挿通された前記アウタチューブと、前記変速側ワイヤが挿通された前記アウタチューブが固定されているものである。
【0014】
請求項2に記載の発明では、収容部材の長手方向両側に、操作側ワイヤが挿通されたアウタチューブと変速側ワイヤが挿通されたアウタチューブとが固定されており、収容部材における操作側ワイヤのアウタチューブの固定位置から操作側ワイヤの端部までの長さを決めておくことで、収容部材に設けられた非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易となる。したがって、操作装置で切り換えられた変速段に応じて操作側ワイヤと変速側ワイヤとの連結手段が長手方向に移動したときに、非接触センサによって、被検出体の位置をより正確に検出することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自転車用変速位置検出装置において、前記連結手段は、前記操作側ワイヤ又は前記変速側ワイヤの端部に設けられた係止体と、前記変速側ワイヤ又は前記操作側ワイヤの端部に固定され、前記変速側ワイヤと前記操作側ワイヤとが略直線状に沿って配置されるように前記係止体が係止される被係止部を備えた連結体と、前記連結体に前記被検出体を固定する固定部材と、を有するものである。
【0016】
請求項3に記載の発明では、変速側ワイヤ又は操作側ワイヤの端部に被係止部を備えた連結体が設けられており、操作側ワイヤ又は変速側ワイヤの端部に設けられた係止体を被係止部に係止することで、変速側ワイヤと操作側ワイヤとが略直線状に配置される。連結体には、固定部材により被検出体が固定される。このため、操作側ワイヤの端部と変速側ワイヤの端部との連結、及び被検出体の組付けが容易である。また、変速側ワイヤと操作側ワイヤとを略直線状に配置して、操作側ワイヤ及び変速側ワイヤを連結する連結体に固定された被検出体が長手方向に移動したときの位置を検出するので、収容部材の形状を薄くすることができ、自転車への組付け性が良好となる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の自転車用変速位置検出装置において、前記被検出体が磁石又は強磁性体であり、前記非接触センサが磁界の変化を検出する磁気センサであるものである。
【0018】
請求項4に記載の発明では、被検出体が磁石又は高磁性体であり、被検出体の磁界の変化を磁気センサで検出することで、被検出体の位置を非接触で検出することができるため、接触方式で起こりうる磨耗による検出不良の心配がない。
【0019】
請求項5に記載の発明に係る自転車は、自転車に設けられ、変速段の切り替え操作をするための操作装置と、変速段に応じて自転車のギヤ比を制御するための変速装置と、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の自転車用変速位置検出装置を介して前記操作装置と前記変速装置に接続されるワイヤと、を有するものである。
【0020】
請求項5に記載の発明では、操作装置と変速装置との間でワイヤが操作側ワイヤと変速側ワイヤに分割されていることにより、自転車用変速位置検出装置の組立て性が良好となる。また、収容部材から操作側ワイヤの端部と変速側ワイヤの端部とが連結される連結手段までの長さを決めておき、連結手段に被検出体を取り付けることで、収容部材に設けられた非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る自転車用変速位置検出装置は、収容部材に設けられた非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易で組立て性が良好である。
【0022】
請求項2の発明に係る自転車用変速位置検出装置は、収容部材に設けられた非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易で組立て性が良好である。
【0023】
請求項3の発明に係る自転車用変速位置検出装置は、操作側ワイヤの端部と変速側ワイヤの端部との連結、及び被検出体の位置出しが容易で組立て性及び自転車への組付け性が良好である。
【0024】
請求項4の発明に係る自転車用変速位置検出装置は、非接触センサにより被検出体の位置をより正確に検出することができる。
【0025】
請求項5の発明に係る自転車は、自転車用変速位置検出装置の非接触センサに対する被検出体の位置出しが容易で組立て性及び自転車への組付け性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変速位置検出装置が設けられた電動アシスト自転車を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す電動アシスト自転車に設けられた変速位置検出装置を示す斜視図である。
【図3】変速位置検出装置の連結手段を示す分解斜視図である。
【図4】(A)〜(D)は、変速位置検出装置の変速シフタ側のインナワイヤと変速装置側のインナワイヤとを連結する過程、及び連結された状態を示す斜視図である。
【図5】変速位置検出装置により各変速位置が検出される状態を示す構成図である。
【図6】変速位置検出装置が設けられた電動アシスト自転車のアシスト範囲を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る変速位置検出装置の連結手段を示す分解斜視図である。
【図8】図7に示す変速位置検出装置の連結手段に用いられるストッパーを示す構成図で、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1には、本発明の第1実施形態である変速位置検出装置が設けられた電動アシスト自転車が側面図にて示されている。
【0029】
図1に示されるように、電動アシスト自転車10は、ハンドル12のグリップ部14付近に配設された操作装置としての変速シフタ16と、この変速シフタ16に接続された変速用ワイヤ18と、この変速用ワイヤ18の途中に設けられ変速位置を検出する自転車用変速位置検出装置としての検出装置20と、検出装置20の変速シフタ16と反対側の変速用ワイヤ18が接続されると共に後輪ハブ22に設けられた変速装置24と、電動アシスト自転車10の中央下部のペダルクランク部26に設けられた電動アシストユニット28と、を備えている。
【0030】
電動アシストユニット28は、ペダルクランク軸に一体に固定された駆動スプロケットと、ペダルクランク軸に固定された駆動ギヤと、この駆動ギヤを減速ギヤ等を介して駆動する補助動力電動モータと、この補助動力電動モータに電力を供給するシートポスト等に配設された補助動力電源と、を備えている。
【0031】
変速装置24は、後輪ハブ22内に装着された内装式変速装置であり、変速シフタ16の操作によって変速用ワイヤ18内に挿通された後述するインナワイヤ40A、40Bの動作により順次変速されるようになっている。本実施形態では、変速シフタ16の操作により変速段が1速〜3速に切り換えられ、これらの変速段に応じて変速装置24で後輪ハブ22のギヤ比が制御されるようになっている。
【0032】
検出装置20は、電動アシスト自転車10の後輪チェーンステー30の所定位置に図示しないクランプ等の取付具により取り付けられている。図2に示されるように、検出装置20は、変速用ワイヤ18のインナワイヤ40A、40Bを長手方向に移動可能に収容する収容部材としてのケース32と、ケース32内の下部に配設された回路基板34と、回路基板34上に複数個(本実施形態では2個)設けられた非接触センサ36A、36Bと、を備えている。
【0033】
ケース32内では、変速用ワイヤ18が分割されている。すなわち、変速用ワイヤ18は、変速シフタ16(図1参照)に接続される変速用ワイヤ18Aと、変速装置24(図1参照)に接続される変速用ワイヤ18Bとに分かれている。変速用ワイヤ18Aは、アウタチューブとしてのチューブ状のアウタワイヤ38Aの内部にインナワイヤ40A(操作側ワイヤ)が長手方向(軸方向)に移動可能に挿通されている。インナワイヤ40Aは、変速シフタ16により切り換えられた変速段に応じて長手方向に沿って所定量に移動するようになっている。変速用ワイヤ18Bは、アウタチューブとしてのチューブ状のアウタワイヤ38Bの内部にインナワイヤ40B(変速側ワイヤ)が長手方向(軸方向)に移動可能に挿通されている。
【0034】
ケース32は、図2の側方に開口する矩形状の箱体であり、図2では前後方向(長手方向と直交する方向)の後方側のみが図示されている。図示を省略するが、ケース32の前後方向の前方側には、ケース32と前後対称に形成されたケースが配置され、これらのケースでインナワイヤ40A、40Bと、回路基板34と、非接触センサ36A、36B等が覆われる構成となっている。
【0035】
また、検出装置20のケース32内には、インナワイヤ40Bの端部とインナワイヤ40Aの端部とを長手方向(軸方向)に沿って略直線状に連結する連結手段42と、連結手段42の後述する連結体52に取り付けられた被検出体としての永久磁石44と、永久磁石44を連結体52に固定する固定部材としてのナット46と、を備えている。
【0036】
図3及び図4に示されるように、連結手段42は、インナワイヤ40Aの端末部に設けられた係止体50と、インナワイヤ40Bの端部に設けられ係止体50が係止される被係止部としての壁部56を備えた連結体52と、を備えている。係止体50は、インナワイヤ40Aの直径より大きい円柱状部材からなり、係止体50の先端部50Aは半球状となっている。
【0037】
連結体52は、略円柱状部材からなり、軸方向一端側に形成された大径部52Aと、軸方向他端側に形成され大径部52Aよりも小径の小径部52Bと、を備えている。大径部52Aの内部には、係止体50がガイドされる円筒状のガイド孔54Aが形成されている。大径部52Aには、係止体50が挿入される円筒状の挿入口54Bがガイド孔54Aの軸方向に対して斜め方向に形成されており、この挿入口54Bはガイド孔54Aと連通している。
【0038】
また、大径部52Aの一部と小径部52Bに跨った位置には、大径部52A及び小径部52Bの中心部から半径方向に沿ってワイヤ挿通孔54Cが形成されている。ワイヤ挿通孔54Cの軸方向と直交する方向の幅は、インナワイヤ40Aの直径より若干大きく形成されている。図4(B)及び図4(C)に示されるように、ワイヤ挿通孔54Cは、挿入口54Bと連通しており、挿入口54Bに挿入されたインナワイヤ40Aを回動させることにより、インナワイヤ40Aを連結体52の軸方向に保持させる構成となっている。
【0039】
大径部52Aのガイド孔54Aがワイヤ挿通孔54Cに繋がる位置には、ワイヤ挿通孔54Cにインナワイヤ40Aが連結体52の軸方向に保持されたときに、係止体50が係止される壁部56が設けられている。ワイヤ挿通孔54Cは、係止体50を脱離させないように、係止体50の直径よりも幅(軸方向と直交する方向の幅)が小さく形成されている。そして、インナワイヤ40Aがワイヤ挿通孔54Cに保持されたときに、係止体50の軸方向の端面(後端部50B)が壁部56に係止され、係止体50の周面がガイド孔54Aにガイドされるようになっている。
【0040】
図3に示されるように、永久磁石44は環状に形成されており、永久磁石44の内径が小径部52Bの外径よりも大きく形成され、永久磁石44が小径部52Bに外挿される構成となっている。永久磁石44の内径は大径部52Aの外径よりも小さく形成されており、永久磁石44が小径部52Bに外挿されたときに大径部52Aの側面に当たる位置まで差し込まれる。小径部52Bの外周面の先端側には、ナット46が螺合される雄ねじ部53が形成されている。永久磁石44が小径部52Bに外挿された状態で、ナット46が雄ねじ部53に螺合されることで、永久磁石44が大径部52Aの側面に当たる位置に固定されるようになっている。
【0041】
図2に示されるように、ケース32内では、連結体52の大径部52Aの側面に当たる位置に永久磁石44が固定されており、永久磁石44と対向する位置には、回路基板34上に設けられた非接触センサ36A、36Bが配置されている。非接触センサ36A、36Bは、永久磁石44の磁界を検出する磁気センサである。ケース32内には、長手方向と直交する方向に2つの壁部32A、32Bが設けられており、壁部32A、32Bには、ナット46の外径よりも大きい開口32Cが形成されている。回路基板34は壁部32A、32Bの間に挿入されている。回路基板34には、非接触センサ36A、36Bで検出された信号を電動アシストユニット28に送るケーブル60が接続されている。
【0042】
図5に示されるように、変速シフタ16(図1参照)の操作によって変速段が1速から2速、3速に順次切り換えられると、インナワイヤ40Aが軸方向に沿って変速シフタ16側の方向(矢印C方向)に所定の距離だけ順次移動する。インナワイヤ40Aが移動する所定の距離は、非接触センサ36Aと非接触センサ36Bの距離とほぼ同じに設定されている。永久磁石44がそれぞれの非接触センサ36A、36Bのほぼ真上に移動したときに(永久磁石44の軸方向のS極とN極の中間部が非接触センサ36A、36Bのほぼ真上に来たとき)、永久磁石44の磁界が非接触センサ36A、36Bで検出されるようになっている。これによって、変速位置が検出されるようになっている。
【0043】
また、ケース32の長手方向一端部には、アウタワイヤ38Bの外周面に取り付けられたアウタキャップ62が保持される筒状部32Dが設けられている。ケース32の側壁の筒状部32Dの中心部には、インナワイヤ40Bが軸方向に移動可能に挿通される孔部32Eが設けられている。ケース32の長手方向他端部には、アウタワイヤ38Aの外周面に取り付けられたアウタキャップ64が保持される筒状部32Fが設けられている。ケース32の側壁の筒状部32Fの中心部には、インナワイヤ40Aが軸方向に移動可能に挿通される孔部(図示省略)が設けられている。
【0044】
本実施形態では、アウタワイヤ38Aの変速シフタ16(図1参照)からアウタキャップ64のケース32側の端面までの長さが決まっている。また、ケース32内での回路基板34の取付け位置により非接触センサ36A、36Bの位置も決まっている。このため、アウタワイヤ38Aのアウタキャップ64のケース32側の端面からインナワイヤ40Aの係止体50の後端部50Bまでの長さ(ケース32に対するインナワイヤ40Aの出代)を決めればよい。これによって、連結体52に取り付けられる永久磁石44の位置が決まるため、ケース32内の非接触センサ36A、36Bに対する永久磁石44の位置出しが容易となる。
【0045】
次に、本実施形態の検出装置20の作用について説明する。
【0046】
まず、インナワイヤ40Aとインナワイヤ40Bとの連結及び永久磁石44の組付けについて説明する。
【0047】
図4(A)に示されるように、インナワイヤ40Bの端部に設けられた連結体52の円形の挿入口54Bに、インナワイヤ40Aの端末部に設けられた係止体50の先端部50Aを斜め上方(矢印A方向)から挿入する。係止体50の先端部50Aは半球状であり、挿入口54Bに簡単に挿入することができる。なお、係止体50を挿入口54Bに挿入する前に、インナワイヤ40Aに予めナット46と永久磁石44を外挿しておく。
【0048】
係止体50が挿入口54Bからガイド孔54Aに挿入された状態で、図4(B)に示されるように、インナワイヤ40Aを下方側(矢印B方向)に回動してワイヤ挿通孔54Cに挿通させ、インナワイヤ40Aを連結体52の軸方向に位置させる。これにより、係止体50が回動してガイド孔54Aに内挿され、壁部56に係止体50の後端部50Bが係止される。
【0049】
その後、図2及び図3に示されるように、連結体52の小径部52Bに永久磁石44を外挿し、ナット46を雄ねじ部53に螺合することで、永久磁石44が大径部52Aの側面に当たる位置で固定される。これによって、インナワイヤ40Aとインナワイヤ40Bとの連結及び永久磁石44の組付けが完了する。
【0050】
図4(B)及び図4(D)に示されるように、インナワイヤ40Aの係止体50をインナワイヤ40Bの連結体52に取り付けた状態では、係止体50の先端部50Aが大径部52Aにおける挿入口54Bよりもガイド孔54Aの奥側に位置している。これにより、図4(C)に示されるように、インナワイヤ40Aが軸方向に沿ってインナワイヤ40B側(図中左側)に移動しても、係止体50はガイド孔54Aにガイドされて奥側(図中左側)に移動するため、係止体50が挿入口54Bから外れることはない。さらに、小径部52Bの雄ねじ部53にナット46が螺合されることで、インナワイヤ40Aがワイヤ挿通孔54Cから外れることがない。このため、インナワイヤ40Aの連結体52からの外れや不完全な状態での係止を防止することができる。
【0051】
この検出装置20では、図2に示されるように、アウタワイヤ38Bに取り付けられたアウタキャップ62がケース32の筒状部32Dに保持され、アウタワイヤ38Aに取り付けられたアウタキャップ64がケース32の筒状部32Fに保持されている。これにより、アウタワイヤ38Aの変速シフタ16(図1参照)からアウタキャップ64のケース32側の端面までの長さと、アウタキャップ64のケース32側の端面からインナワイヤ40Aの係止体50の後端部50Bまでの長さ(ケース32に対するインナワイヤ40Aの出代)を決めておくことで、連結体52に取り付けられる永久磁石44の位置が決まる。このため、ケース32内の非接触センサ36A、36Bに対する永久磁石44の位置出しが容易であり、検出装置20の組立て性が良い。
【0052】
また、連結手段42によりインナワイヤ40Aの係止体50をインナワイヤ40Bの連結体52に略直線状に取り付けるため、ケース32の外形を凹凸の少ない薄い形状にすることができ、電動アシスト自転車10への組付け性が良好となる。
【0053】
この検出装置20では、図5に示されるように、電動アシスト自転車10の運転者が変速シフタ16(図1参照)を操作して変速段を1速から2速、3速に順次切り換えると、変速シフタ16に連動してインナワイヤ40Aが軸方向に沿って変速シフタ16側の方向(矢印C方向)に所定の距離だけ順次移動する。図5(A)に示されるように、1速のときは、永久磁石44が非接触センサ36A、36Bから遠い位置にあり、永久磁石44は非接触センサ36A、36Bで検出されず、非接触センサ36Aからセンサ信号は出力されない。
【0054】
図5(B)に示されるように、運転者が変速シフタ16(図1参照)を操作して1速から2速に切り換えると、インナワイヤ40Aが軸方向に沿って変速シフタ16側の方向(矢印C方向)に所定の距離移動し、永久磁石44が非接触センサ36Aのほぼ真上で停止する。このとき、永久磁石44が非接触センサ36Aで検出され、非接触センサ36Aからセンサ信号が出力される。
【0055】
図5(C)に示されるように、運転者が変速シフタ16(図1参照)を操作して2速から3速に切り換えると、インナワイヤ40Aが軸方向に沿って変速シフタ16側の方向(矢印C方向)に所定の距離移動し、永久磁石44が非接触センサ36Bのほぼ真上で停止する。このとき、永久磁石44が非接触センサ36Bで検出され、非接触センサ36Bからセンサ信号が出力される。
【0056】
このように、変速シフタ16(図1参照)の操作に連動して永久磁石44が各変速段に対応した位置で停止することにより、永久磁石44の位置が非接触センサ36A、36Bで検出される。
【0057】
変速シフタ16の操作により変速段が1速〜3速に切り換えられると、これらの変速段に応じて変速装置24で後輪ハブ22のギヤ比が制御される。また、検出装置20で検出されたセンサ信号は、電動アシストユニット28に入力される。
【0058】
このような検出装置20では、変速位置を正確に検出することができる。このため、検出された変速位置に応じて電動アシストユニット28により適切なアシスト制御を行うことができる。図6に示されるように、検出装置20で検出された変速位置に基づき、後輪23の回転数を検出し、走行速度が所定値(例えば10km/h)より遅い場合には、電動アシストユニット28に搭載された補助動力電動モータによりペダル27の踏み力を低減させる。例えば、走行速度が10km/h以上24km/h以下では、走行速度が速くなるにしたがって補助動力電動モータによるアシスト比率を下げ、走行速度が24km/hを超えると、アシスト力をゼロとする。これによって、本実施形態の電動アシスト自転車10では、低い変速段(1速、2速)でも強いアシスト力で制御することができ、アシスト範囲を拡大することができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態である変速位置の検出装置について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0060】
図7に示されるように、検出装置70は、連結手段72として、第1実施形態のナット46に代えて、樹脂製のストッパー74を備えている。図7及び図8に示されるように、ストッパー74は、環状部材からなり、軸方向一端部の外径が軸方向他端部の外径よりもやや小さく形成されると共に、軸方向一端部に半径方向内側に突出する突出部74Aが形成されている。また、ストッパー74の軸方向中間部から突出部74Aには、軸方向に沿って複数(本実施形態では6個)のスリット74Bが形成されている。これらのスリット74Bにより、複数(本実施形態では6個)の突出部74Aがそれぞれ弾性変形により半径方向に拡縮径するようになっている。
【0061】
また、連結体52の小径部52Bの周面には、周方向に沿ってストッパー74の複数の突出部74Aが嵌め込まれる溝部76が設けられている。
【0062】
このような検出装置70では、インナワイヤ40Aの係止体50がインナワイヤ40Bの連結体52に係止された状態で、永久磁石44を連結体52の小径部52Bに外挿した後、樹脂製のストッパー74を連結体52側に押し込んで、ストッパー74の複数の突出部74Aを連結体52の溝部76に嵌め込む。これによって、永久磁石44が連結体52に固定される。この検出装置70では、樹脂製のストッパー74を連結体52側に押し込むことで、永久磁石44を連結体52に固定することができるため、組立て性がさらに向上する。
【0063】
なお、ストッパー74に代えて、C形やE形の止め輪を用いて永久磁石44を連結体52に固定してもよい。
【0064】
なお、上記第1及び第2実施形態では、インナワイヤ40Aの係止体50をインナワイヤ40Bの連結体52の挿入口54Bに斜め方向から挿入し、インナワイヤ40Aを回動して係止体50をガイド孔54Aの壁部56に係止させたが、これに限定されず、インナワイヤ40Aの端部とインナワイヤ40Bの端部とを連結する連結手段として、他の構成を採用してもよい。例えば、インナワイヤ40Aの係止体の形状や、インナワイヤ40Bの連結体の被係止部の形状は、他の形状に変更してもよい。また、インナワイヤ40Aの係止体をインナワイヤ40Bの連結体にほぼ平行に移動させて係止体を連結体の被係止部に係止する構成でもよい。
【0065】
また、インナワイヤ40Bの端部に係止体を設け、この係止体をインナワイヤ40Aの端部に設けられた連結体に係止する構成でもよい。
【0066】
なお、上記第1及び第2実施形態では、永久磁石44をナット46により連結体52に固定したが、永久磁石44の取り付け構造はこれに限定されるものではない。例えば、インナワイヤ40Aの端部に設けられた連結体に永久磁石44を取り付ける構造でもよい。
【0067】
なお、上記第1及び第2実施形態では、被検出体として永久磁石44を用いたが、これに限定されず、例えば、被検出体として強磁性体を用い、コイルに強磁性体が挿入されたときに強磁性体が検出される構成としてもよい。
【0068】
なお、上記第1及び第2実施形態では、電動アシスト自転車10の後輪チェーンステー30に検出装置20を取り付けたが、これに限定されず、検出装置20の取り付け位置は、例えばハンドル部近辺などワイヤが通過するところならどこでも良く、また必ずしも固定しなくても良い。
【0069】
なお、上記第1及び第2実施形態では、非接触センサ36A、36Bにより3速までの変速位置を検出したが、これに限定されず、非接触センサを1つにして2速までの変速位置を検出するようにしたり、また、非接触センサの数を増やすことで、4速以上の変速位置を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 電動アシスト自転車(自転車)
16 変速シフタ(操作装置)
18 変速用ワイヤ(ワイヤ)
18A 変速用ワイヤ(操作装置に接続されるワイヤ)
18B 変速用ワイヤ(変速装置に接続されるワイヤ)
20 検出装置(自転車用変速位置検出装置)
24 変速装置
32 ケース(収容部材)
36A 非接触センサ
36B 非接触センサ
38A アウタワイヤ(アウタチューブ)
38B アウタワイヤ(アウタチューブ)
40A インナワイヤ(操作側ワイヤ)
40B インナワイヤ(変速側ワイヤ)
42 連結手段
44 永久磁石(被検出体)
46 ナット(固定部材)
50 係止体
52 連結体
56 壁部(被係止部)
70 検出装置(自転車用変速位置検出装置)
72 連結手段
74 ストッパー(固定部材)
76 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速段の切り替え操作をするための操作装置に接続される操作側ワイヤの端部と変速段に応じて自転車のギヤ比を制御するための変速装置に接続される変速側ワイヤの端部とを連結する連結手段と、
前記連結手段に取り付けられた被検出体と、
前記連結手段を移動可能に収容する収容部材と、
前記収容部材に設けられ、前記被検出体の位置を非接触で検知する非接触センサと、
を有する自転車用変速位置検出装置。
【請求項2】
前記操作側ワイヤと前記変速側ワイヤは、それぞれアウタチューブの内部に長手方向に移動可能に挿通されており、
前記収容部材の長手方向両側に、前記操作側ワイヤが挿通された前記アウタチューブと、前記変速側ワイヤが挿通された前記アウタチューブが固定されている請求項1に記載の自転車用変速位置検出装置。
【請求項3】
前記連結手段は、
前記操作側ワイヤ又は前記変速側ワイヤの端部に設けられた係止体と、
前記変速側ワイヤ又は前記操作側ワイヤの端部に固定され、前記変速側ワイヤと前記操作側ワイヤとが略直線状に沿って配置されるように前記係止体が係止される被係止部を備えた連結体と、
前記連結体に前記被検出体を固定する固定部材と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の自転車用変速位置検出装置。
【請求項4】
前記被検出体が磁石又は強磁性体であり、
前記非接触センサが磁界の変化を検出する磁気センサである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の自転車用変速位置検出装置。
【請求項5】
自転車に設けられ、変速段の切り替え操作をするための操作装置と、
変速段に応じて自転車のギヤ比を制御するための変速装置と、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の自転車用変速位置検出装置を介して前記操作装置と前記変速装置に接続されるワイヤと、
を有する自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−136655(P2011−136655A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298485(P2009−298485)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000112978)ブリヂストンサイクル株式会社 (78)