説明

自転車駐輪装置

【課題】料金徴収可能なロック機能を備えながら、広範囲の前輪径に適応可能な駐輪装置を提供する。
【解決手段】駐輪装置に備えられた車輪をロックするロック部の鉤型部材を、水平方向から予め定められた仰角で上向きに傾斜して固定する構成とする。これにより、大径の車輪の自転車を駐輪した場合であっても、スポークと鉤型部材とのなす角が小さくなるため、鉤型部材がスポークと干渉しにくくなり、大径から小径まで広範囲の車輪に対応可能となる。鉤型部材は、駐輪対象とする車輪径のうち最も小径の車輪の車軸の高さに固定することができる。鉤型部材の仰角は、駐輪対象とする車輪径のうち最も大径の車輪を駐輪した場合に、その車軸と前記鉤型部材とを結ぶ方向が水平方向に対してなす角度αよりも小さい角度に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐輪場等において用いられる、駐輪された自転車を保持する駐輪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐輪場等に設置される駐輪装置としては、例えば特許文献1に記載されている装置が知られている。この装置は、前輪ガイドに沿って自転車の前輪を挿入すると、前輪が押圧板を押し込み、これに応答した爪状の前輪ロック機構部が自転車前輪を挟み込んでロックする構成である。一方、ロックを解除する場合には、利用者がコインを投入し、これによって操作可能となる操作レバーを操作することにより、前輪ロック機構部のロックが解除される。
【0003】
このような駐輪装置を用いることにより、利用者は自転車を進めて自転車前輪で押圧板を押圧するだけで前輪をロックすることができると共に、コインを投入し操作レバーを操作するだけでロックを解除することができるので、利用者にとって操作性がよく、しかも自転車の盗難などを抑止することができる。
【特許文献1】特開2003−191876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駐輪装置は、一般に普及している各種のサイズの自転車に使用可能であることが望ましい。普及しているサイズは、リム呼びサイズで16〜28インチ、すなわちタイヤ外径で約400mmから660mmまで広範囲に渡っている。
【0005】
しかしながら、図8(a)に示したように、リム呼びサイズ26インチの前輪53に合わせてロック機構部50および前輪ガイド51を配置した駐輪装置は、図8(b)のように16インチの前輪53を駐輪しようとしても、車軸53aが前輪ガイド51にぶつかって前輪53を挿入することができない。この場合、図8(c)のように前輪ガイド51の高さを低くすると、前輪53を挿入できるようになるが、ロック機構部50が前輪53の上部に位置する。このため、その位置のスポークは大きく傾斜して水平方向の間隔が狭くなっており、ロック機構部50がスポークと干渉してロックがかかりにくい。また、自転車のフェンダー、フェンダーステー、前照灯等のアクセサリーが、ロック機構部と干渉してロックがかけられないことも多い。
【0006】
そこで、図8(c)のロック機構部54の位置までロック機構部の位置を下げると、16インチの前輪53に対してロック機構部54によるロックを容易にかけられるようになる。しかしながら、今度は26インチの自転車を駐輪しようとすると、図8(d)のようにロック機構部54が前輪53の下部に位置し、大きく傾斜して水平方向の間隔が狭くなっているスポークと干渉してロックがかかりにくい。しかも、前輪53がロック機構部54に乗り上がるような状態になりやすく、ロック機構部54内の押圧板を前輪53で押し込みにくくなる。
【0007】
本発明は、料金徴収可能なロック機能を備えた駐輪装置でありながら、広い範囲の前輪径に適応可能な駐輪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、駐輪装置に備えられた車輪をロックするロック部の鉤型部材を、水平方向から予め定められた仰角で上向きに傾斜して固定する構成とする。これにより、大径の車輪の自転車を駐輪した場合であっても、スポークと鉤型部材とのなす角が小さくなるため、鉤型部材がスポークと干渉しにくくなり、大径から小径まで広範囲の車輪に対応可能となる。
【0009】
鉤型部材は、駐輪対象とする車輪径のうち最も小径の車輪の車軸の高さ以下に固定することができる。
【0010】
仰角は、駐輪対象とする車輪径のうち最も大径の車輪を駐輪した場合に、その車軸と前記鉤型部材とを結ぶ方向が水平方向に対してなす角度αよりも小さい角度に設定することができる。具体的には、仰角は、実質的に角度αの1/2に等しい角度、または、前記角度αの1/2以下に設定することができる。
【0011】
車輪の左右に配置され、前記車輪を進行方向に沿ってガイドするガイド部材を設けることも可能であり、その場合、ガイド部材は、駐輪対象とする車輪径のうち最も小径の車輪の車軸の高さ以下に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態の駐輪装置について説明する。
本実施の形態の駐輪装置は、図1(a)および(b)にその側面図および正面図を示したように、1台の自転車を駐輪することのできる駐輪ユニット1を左右に2つ連結し、その間に料金徴収装置20を配置したものである。
【0013】
各駐輪ユニット1は、その主要部分として、自転車の前輪53を搭載するための駐輪台2と、前輪53を左右からガイドする前輪ガイド3と、前輪53を挟み込んだ状態で閉じることができるロック部4とを有している。左右の駐輪ユニット1は、搭載した自転車のハンドルが互いに干渉するのを避けるために、駐輪台2の高さに差をつけている。ここでは、向かって右側の駐輪ユニット1の駐輪台2を低く、左側の駐輪ユニット1の駐輪台2を高く配置している。
【0014】
一方、料金徴収装置20は、料金(コイン)の投入を受ける投入口21と、操作レバー22と、投入口21にコインが投入された場合にのみ操作レバー22を操作可能にする内部機構部(不図示)とを有している。投入口21と操作レバー22は、左右の駐輪ユニット1ごとに設けられている。
【0015】
2つの駐輪ユニット1は、その間に配置された料金徴収装置20と同一のベース10上に配置され、中空パイプ状の連結部5によって料金徴収装置20に連結されている。連結部5の内部には、ワイヤが配置され、ワイヤの一端は料金徴収装置20の操作レバー22に接続され、他端はロック部4のロック解除機構(ロック板36)に接続されている。これにより、コイン投入後操作レバー22を回転させることにより、ワイヤを巻き取って引っ張り、ロック部4のロックを解除する動作を実現している。尚、本実施の形態では2つの駐輪ユニット1で1つの料金徴収装置20を共有することとし、料金徴収装置20の台数を低減しているが、駐輪ユニット1毎に料金徴収装置20を設けてもよい。
【0016】
つぎに、駐輪ユニット1のロック部4の構造について図2(a)、(b)および図3(a)、(b)を用いて説明する。ロック部4は、前輪53のタイヤとリムとをその間に通した状態で閉じることが可能な一対の鉤型のアーム32と、アーム32を軸31によって回動可能に支持する支持部33と、支持部33に対してスライド可能な押圧板35と、2本のアーム32の基部の間に挿入されることによりアーム32の開方向への回動を妨げロックするロック板36とを有している。軸31には、一端が支持部33に固定され、他端がアーム32に固定されたバネ34が配置され、アーム32を開方向に付勢している。ロック板36は、図2(b)に示したように、両端が支持部33に固定された軸36aによって回転可能に支持されている。ロック板36の下部には押圧板35の先端突起35aと噛み合う凹部36bが設けられている。また、ロック板36の下部の一端には、固定具36cが固定されており、固定具36cには連結部5内のワイヤ37の端部が取り付けられている。
【0017】
したがって、駐輪時に前輪53をアーム32の間に挿入し、前輪43で押圧板35を図3(a)に示した矢印の方向に押すと、押圧板35がバネ31の付勢に逆らってアーム32を押し込み、アーム32は閉状態へと回動する。この回動により、アーム32の先端32aは、前輪53のスポークの間隙に入り込んで閉まる。前輪53のタイヤとリムは、閉じられた鉤型のアーム32の先端32aと押圧板35との間の空間を通過した状態になる。ロック板36は、閉状態となったアーム32基部に生じた間隙に図3(a)のように入り込み、ロック板36がはずれない限りアーム32は回動が抑止されるため、開くことができなくなる。また、ロック板36の凹部36aは、押圧板35の先端突起35aと係合するため、解除操作をしない限りアーム32は閉状態のままである(図3(b))。
【0018】
ロック状態を解除する場合には、ユーザが料金徴収装置20にコインを投入し操作レバー22を回転させてワイヤ37を巻き取る。これにより、図2(b)に示したようにロック板36の端部をワイヤ37によって下にひき下げられ、ロック板36の先端は持ち上がり、2本のアーム32基部の間隙からはずれる。これにより、アーム32のロックは解除され、回動可能になる。アーム32はバネ34によって開方向に付勢されているので押圧板35を押し戻しながら、開状態になる。なお、ロック部4は、図1(a)、(b)に示したようにアーム32および押圧板35の前面部の動作を妨げない形状のケース内に収容されている。
【0019】
本実施の形態では、リム呼びサイズで16〜28インチ、すなわちタイヤ外径で約400mmから660mmの前輪53の自転車を駐輪対象としている。これを実現するため、ロック部4は、アーム先端32aが、図4に示したように最小径(16インチ)の前輪53の車軸53aの高さに位置するように固定され、しかも、アーム先端32aに向かって仰角θで上向きになるように傾斜して固定されている。仰角θは、以下のように設定されている。図4に示したように最大径(28インチ)の前輪53を駐輪した場合に車軸53aと、ロック部4によるタイヤ保持位置53bとを結ぶ線が水平とのなす角をαとすると、θは、θ≦αとなるように定められる。より好ましくはθ≦α/2以下、もしくは、実質的にθ≒α/2に近い値になるように設定することができる。例えば、αは28インチの自転車でα=23°程度であるので、θ=9°程度に設定することができる。
【0020】
このように、ロック部4を低い位置に仰角θで上向きに傾斜させて固定することにより、図5のように小さな径(16インチ)の前輪53を駐輪する場合、ロック部4の高さは車軸53aと等しく、スポークはほぼ水平を向いているので、ロック部4のアームの長手方向とスポークとがなす角度はほぼθ(=9°)と小さく、両者は平行に近い関係になる。よって、ロック部4のアーム32を閉じて前輪53にロックを掛ける動作をする場合に、アーム32とスポークとは干渉しにくく、容易に前輪53をロックすることができる。また、ガイド3の高さを車軸53aよりも低くしているため、ガイド3が車軸53aやフェンダー等にぶつかる恐れもない。押圧板35に対する前輪53の押圧方向も角度θ傾斜するだけであるので、前輪53を挿入することによって問題なくアーム32を閉状態にすることができる。
【0021】
一方、図6のように大きな径(26インチ)の前輪53を挿入した場合、ロック部4は、前輪53の下方に位置し、その位置のスポークは水平に対して角度αで大きく傾いているが、ロック部4を仰角θで傾斜させて固定しているため、ロック部4とスポークとのなす角度は(α−θ)に低減される。特に、仰角θをθ≒α/2程度にした場合には、ロック部4とスポークとの成す角度は、α−θ≒θ程度となり、16インチの前輪53を挿入した場合と変わらない。したがって、26インチの前輪53を挿入した場合であっても、ロック部4のアーム32とスポークとのなす角は小さく、両者は平行に近い関係にあるため、アーム32とスポークとが干渉することなく、容易に前輪53をロックすることができる。
【0022】
また、押圧板35に対する前輪53の押圧方向も角度θ傾斜するだけであるので、26インチの大径の前輪53が押圧板35に乗り上がることなく押圧板35を押すことができ、アーム32を閉状態へとすることができる。
【0023】
このように、本実施の形態の駐輪装置はロック部4を仰角θで傾斜させたことにより、図7に示したように大径の前輪から小径の前輪までを受け入れ可能となる。
【0024】
以上のように、本発明によれば、料金徴収可能なロック機能を備えた駐輪装置でありながら、広範囲の前輪径に適応可能な駐輪装置を提供することができる。前輪の径ごとにロック部の高さを調整した複数種類の駐輪装置を設置する必要がなく、駐輪装置の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態の駐輪装置の(a)側面図、(b)正面図。
【図2】本実施の形態の駐輪装置のロック部4が開いた状態の(a)上面図、(b)A−A’断面図。
【図3】本実施の形態の駐輪装置のロック部4が閉じた状態の(a)上面図、(b)B−B’断面図。
【図4】本実施の形態の駐輪装置のロック部4の仰角θを示す説明図。
【図5】本実施の形態の駐輪装置に16インチの前輪53を挿入した状態を示す側面図。
【図6】本実施の形態の駐輪装置に26インチの前輪53を挿入した状態を示す側面図。
【図7】本実施の形態の駐輪装置が少なくとも16インチから26インチの前輪53を受け入れ可能であることを示す説明図。
【図8】(a)従来の駐輪装置に大径の前輪の自転車を駐輪する場合のロック機構部50との位置関係を示す側面図、(b)従来の駐輪装置に小径の前輪の自転車を駐輪する場合のロック機構部50との位置関係を示す側面図、(c)従来の駐輪装置のロック機構部50を低く固定し、小径の前輪の自転車を駐輪する場合の位置関係を示す側面図、(d)従来の駐輪装置のロック機構部50を低く固定し、大径の前輪の自転車を駐輪する場合の位置関係を示す側面図。
【符号の説明】
【0026】
1・・・駐輪ユニット、2・・・駐輪台、3・・・前輪ガイド、4・・・ロック部、5・・・連結部、20・・・料金徴収装置、21・・・コイン投入口、22・・・操作レバー、31・・・軸、32・・・アーム、33・・・支持部、34・・・バネ、35・・・押圧板、36・・・ロック板、36a・・・軸、37・・・ワイヤ、50・・・ロック機構部、51・・・前輪ガイド、53・・・前輪、53a・・・車軸、54・・・低くしたロック機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪をロックするロック部を有する駐輪装置であって、
前記ロック部は、車輪の一部を挟み込んだ状態で閉じることが可能な一対の鉤型部材を含み、該鉤型部材は、予め定められた高さであって、水平方向から予め定められた仰角で上向きに傾斜して固定されていることを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駐輪装置であって、前記鉤型部材は、駐輪対象とする車輪径のうち最も小径の車輪の車軸の高さ以下に固定されていることを特徴とする駐輪装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駐輪装置であって、前記仰角は、駐輪対象とする車輪径のうち最も大径の車輪を駐輪した場合に、その車軸と前記鉤型部材とを結ぶ方向が水平方向に対してなす角度αよりも小さい角度に設定されていることを特徴とする駐輪装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駐輪装置であって、前記仰角は、実質的に前記角度αの1/2に等しい角度、または、前記角度αの1/2以下に設定されていることを特徴とする駐輪装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の駐輪装置であって、前記車輪の左右に配置され、前記車輪を進行方向に沿ってガイドするガイド部材を有し、前記ガイド部材は、駐輪対象とする車輪径のうち最も小径の車輪の車軸の高さ以下に配置されていることを特徴とする駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−56396(P2006−56396A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240587(P2004−240587)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(593176829)日本サンサイクル株式会社 (2)
【出願人】(501496290)サンサイクルシステム株式会社 (3)