説明

舗装用コンクリート版

【課題】耐久性に優れた舗装部を施工性よく構築し得る舗装用コンクリート版を提供する。
【解決手段】矩形板状を呈した舗装用コンクリート版であり、対向連結端面9,10で開口する長連結孔11と短連結孔12を対向して有する。長連結孔11は、底部17が水平直線状の奥側孔部15に拡大する拡大孔部16が連設され、短連結孔12の連結端面側の孔部分は拡大孔部23とされている。長連結孔11と短連結孔12の奥端側には、版上面20で開口する縦孔21,26が連設されている。丸軸状の連結鉄筋2が、長連結孔11と短連結孔12とに股がって水平に挿入され、一方の縦孔から充填材が充填される。連通した拡大孔部16,23が存する部分で、連結鉄筋2がその全周に亘って充填材で被覆される。短連結孔12の拡大孔部23は、長連結孔11から短連結孔12に向けて移動する連結鉄筋2の先端部をガイドする傾斜ガイド面60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装部を構築するために使用される舗装用コンクリート版に関するものである。より詳しくは、連結鉄筋を介して相互が連結されて路盤上に敷設されることにより耐久性に優れた舗装部を構築できると共に、相互の連結を容易且つ確実に行い得るように構成された舗装用コンクリート版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直線状の連結鉄筋を介して相互が連結されて路盤上に敷設されることにより構築された舗装構造の一例として特許文献1記載のものが提案されている。この舗装構造aを構築するために用いられる舗装用コンクリート版bは、図29に示すように、対向する連結端面c,dの対向方向eに延長し且つ該連結端面c,dで開口する、長さの長い円形孔状の長連結孔fと長さの短い円形孔状の短連結孔gが同心に設けられており、該長連結孔fの奥端側と該短連結孔gの奥端側の夫々に、版上面hで開口する縦孔j,jが連設されていた。
【0003】
該舗装用コンクリート版bを用いて前記舗装構造a(図29(C))を構築するに際して、連結鉄筋kを該長連結孔fと該短連結孔gとに股がるように水平に挿入された状態とするには、先ず図29(A)に示すように、該連結鉄筋kをその全長に亘って前記長連結孔fに予め収容しておく。その後、該長連結孔fと該短連結孔gとが連通状態となるように、連結端面c,d相互をパッキン材mを介して当接させる。然る後、前記短連結孔gに通した紐材nの先端pを該連結鉄筋kの先端部qに磁気吸着等の手段rで係合させて該紐材nを引っ張ることにより該連結鉄筋kを該短連結孔gの奥端sに向けて水平状態で移動させ、図29(B)に示すように、該連結鉄筋kの長さの略半分を前記短連結孔gに挿入状態にするものであった。そして、該連結鉄筋kを該長連結孔fと該短連結孔gとに股がるように水平に挿入された状態として後、図29(C)に示すように、該両連結孔f,gに充填材tを充填していた。
【0004】
このようにしてコンクリート版b,b相互を連結する際、前記長連結孔fに収容されていた連結鉄筋kを、前記紐材nを引っ張ることにより短連結孔g側に円滑に移動させることができなければならない。そのためには、該長連結孔fの開口端uと該短連結孔gの開口端vとを精度良く合致させる必要がある。コンクリート版bの前記敷設時の施工誤差によって、例えば図30に示すように、該両開口端u,vの連設部分で段差wが生ずると、前記連結鉄筋kの移動方向の先端部xが該段差wに当って、該連結鉄筋kの移動が困難乃至不可能となる施工性不良の問題が発生した。
【0005】
又、前記長連結孔f及び前記短連結孔gに連結鉄筋kを挿入状態になし得たとしても、該連結鉄筋kは図29(B)に示すように、重力の作用によってその下端yが孔底部zに線接触状態で載置されることになるので、長連結孔fと短連結孔gとに前記のようにして充填材tを充填した状態で、該充填材の硬化物a1は、図31に示すように、該下端y側では薄層部b1とならざるを得なかった。
【0006】
ところで、コンクリート版相互を連結鉄筋kを用いて連結する目的は、該連結鉄筋kの荷重伝達力によって、構築された舗装部を自動車が走行することに伴う自動車荷重(主として、大型トラックの走行等による重交通荷重)を、連結された一方のコンクリート版から他方のコンクリート版に効果的に伝達させることによって荷重分散を図り、これによりコンクリート版相互の連結部分c1を安定化して舗装部の耐久性向上を図らんとするものであった。しかしながら、前記のように薄層部b1が形成されると、自動車の走行に伴う繰り返し荷重が該連結部分c1に加わることによって前記薄層部b1が連結鉄筋kから剥がれて破壊されやすく、周辺の充填材硬化物も徐々に破壊されていくことから、該連結鉄筋kの前記荷重伝達力が徐々に低下することになる。又、このように充填材硬化物の破壊が進行すると、コンクリート版b,b相互の連結部分c1に水が浸入して連結鉄筋kの腐食を招くため、該連結鉄筋kの強度低下に起因してその荷重伝達力が低下することともなった。更には、かかる荷重伝達力の低下によって前記連結部分c1に段差が生じやすく、自動車の走行性を悪化させるばかりか、段差が生じたことによって前記連結部分b1に応力が集中しやすく、これによって、充填材の硬化物a1の破壊が一層進行しやすい問題が発生した。
【0007】
このように、特許文献1に係る舗装用コンクリート版の舗装構造aにあっては、施工性不良の問題と、連結部分の耐久性不良の2つの問題があったのである。この内、施工性不良を改善する舗装用コンクリート版bとして、特許文献2記載のものが提案されている。該舗装用コンクリート版bは図32(A)に示すように、前記と同様にして、対向する連結端面c,dで開口し且つ該対向方向eに延長する、長さの長い長連結孔fと長さの短い短連結孔gが設けられており、該長連結孔fは水平孔として形成される一方、該短連結孔gは、その奥端側d1から前記連結端面dに向けて拡大するテーパ孔として形成されていた。そして、前記長連結孔fと前記短連結孔gとに股がるように連結鉄筋kが水平挿入状態とされるのであるが、舗装用コンクリート版b,b相互の連結に先立って、該連結鉄筋kを全長に亘って前記長連結孔fに収容しておく。その後、該連結鉄筋kを前記短連結孔gの奥端側d1に向けて移動させるのであるが、その際、前記連結鉄筋kの端部e1に一端側f1を連結した引張部材g1の他端側h1を前記連結端面c,dの当接部分j1において上部に引き出し、該引張部材g1を引っ張ることによって、図32(A)に矢印で示すように、前記連結鉄筋kを前記短連結孔g内に移動させるように構成されており、図32(B)に示すように、該連結鉄筋kの先端部k1が前記短連結孔gの奥端m1に達することによって、連結鉄筋kが両連結孔f,gに水平に挿入された状態となされた。
【0008】
この移動は、該連結鉄筋kの移動方向の先端部k1が前記テーパ孔の内周下面n1(図32(A))にガイドされて行われるようになされていた。かかることから、長連結孔fの開口端と短連結孔gの開口端の連設部分で段差が生じたとしても、該連結鉄筋kを短連結孔g内に無理なく挿入させることができた。このように特許文献2によるときは、連結鉄筋kを挿入し易いために、特許文献1における前記施工性不良の問題が解決できる利点があった。
【0009】
しかしながら、連結部分の耐久性不良に関する前記問題点は依然として解決されていなかった。これについて説明する。特許文献2による舗装部aは図32(B)に示すように、先端部k1が前記短連結孔gの奥端m1に達して前記連結鉄筋kが前記長連結孔fと前記短連結孔gに水平に挿入された状態で、前記長連結孔fの奥端側に設けられた縦孔jや前記短連結孔gの奥端側に設けられた縦孔jからグラウト材等の充填材が充填され、両連結孔f,gと連結鉄筋kとの隙間p1が充填材tで埋められる構成であった。このように充填材tが充填されることにより、短連結孔g側においては、連結鉄筋kがその全周に亘って充填材tで巻かれた状態が得られたが、前記長連結孔f側においては、特許文献1における場合と同様、図31に示すように、連結鉄筋kの下端側に充填材の薄層部b1が形成された。
【0010】
短連結孔g側において連結鉄筋kがその全周に亘って充填材tで巻かれた状態となるため、短連結孔g側では、特許文献1に関連して指摘したような硬化した充填材が破壊する問題が解消されているかのように見える。しかしながら、両コンクリート版b,bの連結部分の長連結孔f側においては、前記したと同様の現象が生じて充填材の硬化物a1の破壊が生ずるため、この破壊が短連結孔g側に伝播して前記連結部分における硬化物a1の破壊が進行しやすく易い。従って、連結鉄筋に期待される荷重伝達機能が発揮されず、接合された一方のコンクリート版から他方のコンクリート版への荷重伝達が悪く、連結部分の耐久性不良に関する前記問題点は依然として解決されていなかったのである。
【0011】
ところで、連結鉄筋kの荷重伝達力が向上されていると一見考えられる舗装用コンクリート版の舗装構造として、特許文献3の第4図に記載のものが存在する。この第4図に示されている舗装構造aに用いる舗装用コンクリート版bは、図33に示すように、対向する連結端面c,dで開口し且つ該対向方向eに延長する、長さの長い長連結孔fと長さの短い短連結孔gが設けられており、該長連結孔f及び該短連結孔gの径は、連結鉄筋kの径よりも大きく形成されていた。そして、該連結鉄筋kが該長連結孔f及び該短連結孔g内で浮いた状態にあり、該長連結孔fと短連結孔gに連設された縦孔j,jから充填された充填材が該連結鉄筋kをその全周に亘って被覆した状態が示されている。これからすれば、連結鉄筋kの荷重伝達力が向上されているように見える。
【0012】
しかしながら、直線状の該連結鉄筋kを該長連結孔f及び該短連結孔g内で如何にして浮いた状態に支持するかの具体的な手段については、特許文献3には全く記載されておらず、これを示唆する記載も存在しない。何らかのスペーサを介在させて支持したり、連結鉄筋を吊り下げる等の手段が考えられないではないが、これらは、目視不能の状態での作業とならざるを得ず、何れも、簡易で確実な施工方法とは言い難い。仮に施工できたとしても、全ての連結鉄筋に関してかかる施工を実施することは多大の手間を要し、又品質の均一な舗装構造を構成できない問題があった。従って、特許文献3記載の舗装構造は実施不可能乃至実施が困難と解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−117233号公報
【特許文献2】特開2009−197561号公報
【特許文献3】実公平3−15605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、連結鉄筋による相互連結を容易且つ確実に行うことができて舗装部構築の施工性向上を図り得ると共に、耐久性に優れた舗装部を構築し得る舗装用コンクリート版の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る舗装用コンクリート版(以下コンクリート版という)の第1の態様は、相互が連結されて路盤上に敷設されることにより舗装部を構築する舗装用コンクリート版であって、対向する連結端面で開口し且つ該対向方向に延長する、長さの長い長連結孔と長さの短い短連結孔が対向状態に設けられており、該長連結孔は、奥側孔部に、前記連結端面に向けて拡大する拡大孔部が連設され、該長連結孔の奥側孔部の底部は水平直線状を呈し、該長連結孔と該短連結孔の奥端側には、版上面で開口する縦孔が連設されており、又、前記短連結孔は、少なくとも前記連結端面側の孔部分が、該連結端面に向けて拡大する拡大孔部とされている。そして、前記長連結孔と前記短連結孔とを連通させて前記連結端面相互が直接的に又はパッキン材を介在させて当接され、該長連結孔と該短連結孔とに股がるように、丸軸状を呈する直線状の連結鉄筋が水平状態に挿入された状態で、前記何れか一方の縦孔から充填材が充填されることにより、連通した前記拡大孔部が存する部分で、前記連結鉄筋がその全周に亘って充填材で被覆された状態となるようになされている。又、前記長連結孔の長さは、少なくとも、前記連結鉄筋を全長に亘って収容できる長さに設定されると共に、該連結鉄筋は該長連結孔の前記奥側孔部の水平な底部で水平状態に支持される如くなされており、前記短連結孔の前記拡大孔部は、前記長連結孔に挿入された状態にある前記連結鉄筋が前記短連結孔の奥端側に向けて水平状態に移動せしめられる際に該連結鉄筋の移動方向の先端部をガイドし得る、前記連結端面に向けて下方に傾斜する傾斜ガイド面を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係るコンクリート版の第2の態様は、前記コンクリート版において、前記短連結孔は、底部が水平直線状を呈する奥側孔部に前記連結端面に向けて拡大する拡大孔部が連設されたものとし、該拡大孔部は、前記長連結孔に挿入された状態にある前記連結鉄筋が前記短連結孔の奥端側に向けて水平状態に移動せしめられる際に該連結鉄筋の移動方向の先端部をガイドし得る、前記連結端面に向けて下方に傾斜する傾斜ガイド面を有する如く構成するのがよい。
【0017】
前記第1、第2のコンクリート版において、前記短連結孔の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状を呈する排気溝を設けたものとし、該排気溝が、前記縦孔に連通すると共に、前記連結端面で開口する如く、且つ、該短連結孔の軸線方向に直線状に延長する如く設けるのがよい。
【0018】
前記第1、第2のコンクリート版において、前記長連結孔の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状を呈する排気溝を設けたものとし、該排気溝が、前記縦孔に連通すると共に、前記連結端面で開口する如く、且つ、該長連結孔の軸線方向に直線状に延長する如く設けるのがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
本発明に係るコンクリート版は、対向する連結端面で開口し且つ該対向方向に延長する、長さの長い長連結孔と長さの短い短連結孔が対向状態で設けられており、該長連結孔は、奥側孔部に、前記連結端面に向けて拡大する拡大孔部が連設されると共に該長連結孔の奥側孔部の底部は水平直線状を呈し、該長連結孔と該短連結孔の奥端側には、版上面で開口する縦孔が連設されており、又、前記短連結孔は、少なくとも前記連結端面側の孔部分が、該連結端面に向けて拡大する拡大孔部とされている。従って本発明によるときは、
【0020】
(1) 長連結孔に挿入状態にある直線状の連結鉄筋を短連結孔の奥端側に向けて移動させて、長連結孔と短連結孔とに股がるように水平状態に挿入させる際、施工誤差によって、長連結孔の開口端と短連結孔の開口端の連設部分でずれが生じたとしても、該連結鉄筋の移動方向の先端部が前記傾斜ガイド面で円滑にガイドされるため、該連結鉄筋を短連結孔の奥端側に向けて水平状態で移動させることができる。かかることから、連結鉄筋によるコンクリート版相互の連結施工を容易且つ能率的に行うことができる。
【0021】
(2) そして、長連結孔と短連結孔とに股がるように直線状の連結鉄筋が水平状態に挿入された状態で、前記縦孔からグラウト等の充填材を充填することにより、連通した拡大孔部が存する部分で、連結鉄筋がその全周に亘って充填材で被覆された状態となし得る。かかることから、構築された舗装部を走行する自動車荷重を、連結された一方のコンクリート版から他方のコンクリート版に効果的に伝達させて荷重分散を図ることができる。これによって、コンクリート版の連結部分における荷重伝達機能が長期間に亘って安定的に確保されることとなり、耐久性に優れた舗装部を構築し得ることとなる。
【0022】
(3) 短連結孔の上部分や長連結孔の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状を呈する排気溝を、縦孔に連通し且つ連結端面で開口する如く設ける場合は、前記縦孔から充填材を充填させる際に、長連結孔や短連結孔におけるエアを該排気溝を経て縦孔から順次円滑に排気させることができるため、充填材の充填作業を円滑に行うことができる。
【0023】
(4) 前記短連結孔を、底部が水平直線状を呈する奥側孔部に拡大孔部を連設したものとして構成する場合は、連結鉄筋が左右の奥側孔部の有する、水平直線状を呈する底部で下方から支持された状態となるため、該連結鉄筋の、前記長連結孔と前記短連結孔とに股がった状態をより安定化させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るコンクリート版相互を連結して敷設することにより舗装部を構成した状態を示す平面図である。
【図2】コンクリート版を長連結孔側から見た斜視図である。
【図3】コンクリート版を短連結孔側から見た斜視図である。
【図4】コンクリート版を示す平面図である。
【図5】その部分断面図である。
【図6】長連結孔側を示す部分斜視図である。
【図7】短連結孔側を示す部分斜視図である。
【図8】長連結孔と短連結孔の他の態様を示す斜視図である。
【図9】無散水型融雪パネルとして応用されたコンクリート版を示す平面図と側面図である。
【図10】長連結孔に連結鉄筋を収容した状態を示す断面図である。
【図11】その状態において長連結孔と短連結孔相互を連通させた状態を示す断面図である。
【図12】連結鉄筋を短連結孔側に向けて押し具で押している状態を示す断面図である。
【図13】連結鉄筋を長連結孔と短連結孔とに股がるように挿入した状態を示す断面図である。
【図14】長連結孔と短連結孔の開口端が施工誤差により位置ずれした状態を示す断面図である。
【図15】長連結孔に収容されている連結鉄筋を押し具により短連結孔に向けて稍移動させた状態を示す断面図である。
【図16】連結鉄筋を短連結孔に向けて更に移動させている状態を示す断面図である。
【図17】連結鉄筋を長連結孔と短連結孔とに股がるように収容した状態を示す断面図である。
【図18】連結鉄筋をこのように挿入した状態で、長連結孔の縦孔からグラウトを充填した状態を示す断面図である。
【図19】コンクリート版相互の連結部分で、連結鉄筋が硬化充填材で被覆された状態を示す断面図である。
【図20】排気溝が設けられた長連結孔を示す斜視図である。
【図21】連結鉄筋が長連結孔と短連結孔とに股がるように水平状態に挿入された状態で短連結孔の縦孔から充填材が充填された状態を示す断面図である。
【図22】本発明に係るコンクリート版のその他の実施例を示す断面図である。
【図23】本発明に係るコンクリート版のその他の実施例を示す断面図である。
【図24】本発明に係るコンクリート版のその他の実施例を示す断面図である。
【図25】本発明に係るコンクリート版のその他の実施例を示す断面図である。
【図26】本発明に係るコンクリート版のその他の実施例を示す断面図である。
【図27】縦孔の他の態様を示す断面図である。
【図28】縦孔のその他の態様を示す断面図である。
【図29】連結鉄筋を用いて舗装用コンクリート版相互を連結する従来の舗装構造を説明する断面図である。
【図30】従来の舗装構造の問題点を説明する断面図である。
【図31】従来の舗装構造の問題点を説明する断面図である。
【図32】連結鉄筋を用いて舗装用コンクリート版相互を連結する従来の他の舗装構造を説明する断面図である。
【図33】連結鉄筋を用いて舗装用コンクリート版相互を連結する従来のその他の舗装構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図1において本発明に係るコンクリート版1は、連結鉄筋2を介して相互が連結されて路盤3上に敷設されることにより、例えば片側一車線の舗装部5を構築するために用いられるものであり、長期間に亘って耐久性が要求される高速道路や自動車専用道路等の舗装部の構築に用いて好適である。図1において矢印は、自動車の走行方向を示している。
【0026】
該コンクリート版1はより具体的には、図2〜7に示すように、プレキャストコンクリート製の、平面視で例えば長方形状を呈する平板体として構成されており、その長辺長さL1(図4)は例えば4000mmに設定され、その短辺長さL2(図4)は例えば2000mmに設定され、その厚さL3(図3)は例えば300mmに設定されている。そして、両長辺側部分6,7には、対向する連結端面9,10で開口し且つ該対向方向Fに延長する、長さの長い長連結孔11と長さの短い短連結孔12が対向状態に設けられている。本実施例においては、該長連結孔11と該短連結孔12の組13が、該連結端面9,10の長さ方向に所要間隔を置いて4組設けられており、一方の長辺側部分6には長連結孔11のみが設けられ、他方の長辺側部分7には短連結孔12のみが設けられている。なお本実施例においては、該連結端面9,10の両側部分に2組づつ設けられている。
【0027】
該長連結孔11は、図5〜6に示すように、奥側孔部15に、前記連結端面9に向けて拡大する拡大孔部16が連設され、該奥側孔部15の底部17は水平直線状を呈し、該奥側孔部15の奥端側19には、版上面20で開口する縦孔21が連設されている。又、前記短連結孔12は、図5、図7に示すように、少なくとも前記連結端面10側の孔部分が、該連結端面10に向けて拡大する拡大孔部23とされている。本実施例においては、奥側孔部22に、前記連結端面10に向けて拡大する拡大孔部23が連設されている。そして、該奥側孔部22の奥端側25には、版上面20で開口する縦孔26が連設されている。以下、該長連結孔11と該短連結孔12についてより具体的に説明する。
【0028】
前記長連結孔11の全長は例えば525mmに設定されており、前記奥側孔部15は、図5〜6に示すように、底部17は水平直線状を呈するが上面部27は、奥端側19から前記連結端面9側に向けて上方に稍傾斜しており(この傾斜は、通常の抜き勾配である)、全体として円形状の孔部として構成されている。そして、その奥端29の径は例えば60mmに設定されると共にその先端(前記連結端面9側の端)30の径は例えば70mmに設定されている。又、該奥側孔部15の奥端側19に連設されている前記縦孔21は、本実施例においては垂直な円形孔として形成されており、該縦孔21の奥側内周部31は該奥側孔部15の奥端29に連なっている。該縦孔21の径は例えば50mmに設定されている。該縦孔21は本実施例においては、前記連結鉄筋2を後述のように移動させるための押し具32(図11)を挿入する押し具挿入孔として機能できると共に、後述のようにグラウト等の充填材を充填する(図18)充填孔として機能できる。
【0029】
そして前記拡大孔部16は、該奥側孔部15の先端30に一連に連なっており、その孔心方向の長さは例えば90mmに設定されている。又該拡大孔部16は、上側部分が欠けた円錐状面として形成され、その上面33は、前記奥側孔部15の上部27の延長線状に存する略水平面を呈しており、その下側内周面35は前記連結端面9に向けて円錐状面に拡大している。そして、該連結端面9での開口端36の形態は、上側の3割程度が水平縁37を呈しその下側部分が円弧縁39を呈しており、該開口端36の該水平縁37の長さは例えば100mmに設定され、前記水平な底部17と該開口端36の下端40との間の距離は例えば30mmに形成されている。又、該拡大孔部16の円錐状下側内周面35の曲率半径は例えば150mmに設定されている。
【0030】
一方、前記短連結孔12の全長は例えば250mmに設定されており、該短連結孔12の前記奥側孔部22は、図5、図7に示すように、底部41は水平直線状を呈するが上部42は、奥端側25から前記連結端面10側に向けて上方に稍傾斜しており、全体として円形状の孔部として構成されている。そして、その奥端43の径は例えば60mmに形成されると共にその先端(前記連結端面10側の端)45の径は例えば70mmに形成されている。又、該奥側孔部22の奥端側25に連設されている前記縦孔26は本実施例においては垂直な円形孔として形成されており、本実施例においては、前記奥側孔部22の奥端43から前記連結端面10側に稍偏位した状態で設けられており、該奥側孔部22の奥端43は、前記連結鉄筋2の先端部59と当接し得るストッパ部47として機能し得る。該縦孔26の径は例えば50mmに設定されている。該縦孔26は、本実施例においては、後述のようにグラウト等の充填材を充填する際におけるエア抜き孔として機能でき、又、充填の完了を確認するための孔として機能できる。
【0031】
そして前記拡大孔部23は、該奥側孔部22の先端45に一連に連なっており、その孔心方向の長さは例えば90mmに設定されている。又該拡大孔部23は、上側部分が欠けた円錐状面として形成され、その上面50は、前記奥側孔部22の上部42の延長線状に存する略水平面を呈しており、その下側内周面51は前記連結端面10に向けて円錐状面に拡大している。そして、該連結端面10での開口端52の形態は、上側の3割程度が水平縁53を呈しその下側部分が円弧縁55を呈しており、該開口端52の該水平縁53の長さは例えば100mmに設定され、前記水平な底部41と該開口端52の下端56との間の距離は例えば30mmに形成されている。又、該拡大孔部23の円錐状下側内周面51の曲率半径は例えば150mmに設定されている。
【0032】
そして、前記円錐状の下側内周面51は、後述のように連結鉄筋2の移動方向の先端部59をガイドする傾斜ガイド面60であり、前記連結端面10に向けて下方に傾斜し、該傾斜ガイド面60が前記奥側孔部22の水平な底部41に連設されている。本実施例においては、該傾斜ガイド面60が、前記円形状の孔部からなる奥側孔部22の水平な底部41に、上に突の円弧面58(図5)を介して接続されている。
【0033】
又、本実施例においては図5、図7に示すように、前記短連結孔12の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状(例えば台形溝状)を呈し、且つ、該短連結孔12の軸線方向に直線状に延長する排気溝61が設けられている。該排気溝61は前記拡大孔部23の上面50においては、その幅方向の中央部位に設けられると共に、前記円形状の孔部としての前記奥側孔部22においては、その上部42に設けられており、前記連結端面10で開口し且つ前記縦孔26に連通した連続状態で設けられている。又、該排気溝61の上面部62は、排気の容易化を図るために、水平乃至前記奥端43に向けて上方に稍傾斜する如く設けられている。
【0034】
又前記連結端面9,10の、前記拡大孔部16,23の上側部分には、本実施例においては図5〜7に示すように、上方及び両端で開放された目地用欠切凹部63,63が設けられている。該目地用欠切凹部63,63の深さは例えば70mmに設定されると共に、前記対向方向Fで見た幅は例えば3mmに設定されている。
【0035】
本実施例において、前記拡大孔部16,23を、上側部分が欠けた円錐状面に形成して前記上面33,50を水平に形成しているのは、円錐状の下側内周面35,51に連続する円錐状の面として形成した場合の該目地用欠切凹部63,63との干渉を防止し、乃至、該目地用欠切凹部63,63に接近して該目地用欠切凹部63が存する部分の強度低下を防止するためである。勿論、コンクリート版1の厚さが十分に厚い場合は、例えば図8(A)(B)に示すように、拡大孔部16,23を、完全な円錐状面に形成することもできる。
【0036】
かかる構成を有するコンクリート版1は、本実施例においては例えば図9に示すような無散水型融雪パネル65に応用されており、コンクリート版1の上面側部分66において、例えば13mm径の耐熱ポリエチレン管からなる放熱管67が、短辺側部分68,68で円弧状に折り返されて蛇行状態で埋設されており、例えば、版下面69の1つのコーナ部において、放熱管の接続用凹部70が設けられている。
【0037】
次に、前記構成を有するコンクリート版1を前記路盤3上に敷設して融雪機能を有する舗装部5を構築する作業工程を説明する。
【0038】
コンクリート版1,1相互を連結するに先立って、図10に示すように、前記長連結孔11に、丸軸状を呈する直線状の前記連結鉄筋2をその全長に亘って収容しておく。該連結鉄筋2は周面が平滑な断面円形の丸棒状に形成されることや、丸棒状の異形鉄筋等として構成され得る。図10においては、周面が平滑な丸棒状を呈する連結鉄筋2を用いる場合が示されている。
【0039】
本実施例においては、該連結鉄筋2の径は38mmに設定されると共にその長さは500mmに設定されている。従って該連結鉄筋2は、全長が525mmに設定されている前記長連結孔11内にその全長に亘って収容できる。この収容の際、図10に示すように、連結鉄筋2の先端部59を前記連結端面9と面一状態にしておく。このようにすれば、該長連結孔11の奥端側19において、25mm程度の余裕空間72が生ずるため、例えば図11〜12に矢印で示すように、前記縦孔21の上端開口76から例えば蛇腹状の樹脂管としての押し具32を挿入してその先端部73で該連結鉄筋2の奥側の端部46を前記短連結孔12の奥端側25に向けて押すことができる。又、該連結鉄筋2の長さを500mmに設定すると共に、前記拡大孔部23の長さを90mmに設定しているため、該連結鉄筋2を短連結孔12の奥端側25に向けて移動させる際に、該連結鉄筋2を前記長連結孔11の奥側孔部15の水平直線状の底部17で水平状態に支持させて安定状態で水平移動させることができる。
【0040】
このようにして連結鉄筋2を長連結孔11内に収容して後、図11に示すように、該長連結孔11と前記短連結孔12とを連通させて前記連結端面9,10相互を当接させる。この当接は、該連結端面9,10相互を直接的に当接させてもよいのであるが、本実施例においては、該長連結孔11と該短連結孔12との連通部分を周方向に取り囲む例えば円環状のゴム質等のパッキン材(図示せず)を介在させて当接させる。該パッキン材は、例えば、幅が5mm程度で厚さが2〜3mm程度のものであり、前記短連結孔12の開口端(拡大孔部23の開口端)52を取り囲むように前記連結端面10に貼着される。
【0041】
このように連結端面9,10相互を当接させる際、図11に示すように、前記長連結孔11の開口端36と前記短連結孔12の開口端(拡大孔部23の開口端)52とが完全に合致する場合もあるが、施工誤差によって3〜5mm程度位置ずれする場合がある。図14においては、施工誤差によって、前記短連結孔12の開口端52が前記長連結孔11の開口端36よりも5mm程度下側に位置して段差75が生じた場合を示している。
【0042】
前記のようにして連結端面9,10相互を当接させて前記長連結孔11と前記短連結孔12とを連通させた後、図15に示すように該長連結孔11側の縦孔21の上端開口76から、蛇腹状棒としての前記押し具32を挿入し、前記余裕空間72において、該押し具32の先端部73で前記連結鉄筋2の奥側の端部46を前記短連結孔12の奥端側25に向けて押圧する。連結鉄筋2は、該押し具32で押されて前記奥端側25に向けて移動する。この移動は、該連結鉄筋2が、前記長連結孔11の前記奥側孔部15の水平直線状の底部17で水平状態に支持された状態で行われる。該連結鉄筋2が移動することにより、その移動方向の先端部59が、図15に示すように、円錐状面からなる前記傾斜ガイド面60に当たる。その後も押されることにより、該連結鉄筋2は、その先端部59が該傾斜ガイド面60に案内されつつ水平状態で移動し、最後は、上に突の前記円弧面58に円滑に案内されて、図16に示すように、短連結孔12の前記奥側孔部22の水平な底部41に載った状態となり、該連結鉄筋2は、矢印で示すように、該短連結孔12に更に押し込まれていく。
【0043】
この移動について、図11〜12、図14に基づいてより詳しく説明する。前記両拡大孔部16,23の連設された状態の長さは、本実施例においては180mmとなるが、前記連結鉄筋2の長さは500mmに設定されていることから、その重心位置はその長さ方向の中央部位に存する。その結果、連結鉄筋2が移動する際に、その移動方向で見た先側部分が該連設された拡大孔部16,23で落ち込む恐れがない。それ故、該連結鉄筋2を短連結孔12の奥端側25に向けて移動させる際に、該連結鉄筋2を前記長連結孔11の奥側孔部15の水平直線状の底部17で水平状態に支持させて安定状態で水平移動させることができるのである。
【0044】
又、両拡大孔部16,23を連設させる際に、平面視で位置ずれした場合は、前記のように、連結鉄筋の径が38mmで前記奥側孔部15,22の径が60mmに設定されていることから、該連結鉄筋2の先側部分を長連結孔11から短連結孔12に向けて無理なく移動させることができる。
【0045】
そして図13、図17に示すように、該連結鉄筋2の先端部59が前記奥側孔部22の奥側の端部(前記ストッパ部47)46に突き当たったことを押し具32を介して感知できれば、連結鉄筋2の所要の挿入が完了したと確認できる。
【0046】
これにより、前記連結鉄筋2が、該長連結孔11と該短連結孔12に夫々250mmの長さ分、挿入された状態となる。
【0047】
このようにして連結鉄筋2が、該長連結孔11と該短連結孔12とに股がるように水平状態に挿入された状態で、図18に矢印で示すように、前記長連結孔11の縦孔21から、例えばグラウトとしての充填材77が充填される。この充填の際、前記短連結孔12に設けられている前記直線状の排気溝61を経て前記縦孔26からエアが順次円滑に排気されるため、充填材の充填を円滑に行うことができる。そして前記縦孔26から充填材が溢れたことを以て、該長連結孔11と該短連結孔12への充填が完了したことを知ることができる。このようにして充填材77を充填する際、本実施例においては前記パッキン材を介在させて連結端面9,10相互を当接させているため、充填材77の充填をより確実に行うことができる。
【0048】
図18は、充填が完了した状態を示す断面図であり、連通した前記拡大孔部16,23が存する、コンクリート版1,1相互の連結部分79で、前記連結鉄筋2がその全周に亘って硬化充填材80で健全に被覆された状態となされ、硬化充填材80と連結鉄筋2とが密接に一体化している。本実施例においては、図18〜19に示すように、前記連結部分79において、連結鉄筋2の下側に30mm程度の厚さの充填材被覆部82aが形成されており、該連結鉄筋2の上側に32mm程度の厚さの充填材被覆部82bが形成されている。又、該連結鉄筋2の左右側においては40mm程度の厚さの充填材被覆部82c,82cが形成されている。
【0049】
このようにしてコンクリート版1,1相互を連結して後、前記目地用欠切凹部63,63の合致によって形成された目地溝83に防水性弾性目地材85が充填され、連結部分79への雨水の進入が極力防止されている。このようにして本発明によるときは、前記連結部分79において、連結鉄筋2がその全周に亘って所要厚さで硬化充填材80で被覆された状態となるのであり、特許文献1におけるような充填材の薄層部が形成されることがない。又、特許文献2におけるように連結部分の一方側において薄層部が形成されることもない。従って本発明によるときは、従来のように、硬化充填材が薄層部から破壊されると言った現象が生じない。
【0050】
このようにして構築されたコンクリート版の敷設層86の上部87に、図18に一点鎖線で示すようにアスファルト層89を設けることによって舗装部5を構築できる。なお、アスファルト層89が設けられないで該敷設層86そのものが舗装部5とされることもある。このように構築された舗装部5にあっては、応力が集中しやすいコンクリート版1,2の連結部分79において、硬化充填材80と連結鉄筋2とが密接に一体化していて連結鉄筋2の荷重伝達能力が高められている。かかることから、該舗装部5を大型トラックが走行する等に伴う重交通荷重は、接合された一方のコンクリート版から他方のコンクリート版に効果的に伝達されることになり、これによって荷重分散が図られることになる。
【実施例2】
【0051】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0052】
(1) 図20は、本発明に係るコンクリート版1の他の実施例を示すものであり、前記排気溝61が、前記長連結孔11の上部分に、前記連結端面9で開口し且つ前記縦孔2に連通した、該長連結孔11の軸線方向に直線状に延長した状態で設けられている。そして、該排気溝61の上面部27は、排気の容易化を図るために、水平乃至前記奥端29に向けて上方に傾斜する如く設けられている。このように構成した場合は、図21に示すように、連結鉄筋2が、該長連結孔11と該短連結孔12とに股がるように水平状態に挿入された状態で、前記短連結孔12の縦孔26から、例えばグラウトとしての充填材77が充填される。この充填の際、前記長連結孔11に設けられている前記排気溝61を経て前記縦孔21からエアが順次円滑に排気されるため、充填材の充填を円滑に行うことができる。そして前記縦孔21から充填材が溢れたことを以て、該長連結孔11と該短連結孔12への充填が完了したことを知ることができる。
【0053】
(2) 図22〜図25は、本発明に係るコンクリート版1のその他の実施例を示すものであり、前記長連結孔11と前記短連結孔12の組合わせの構成が異なる。これらの各図においては共に、長連結孔11と短連結孔12とを連通させて前記連結端面9,10相互が当接されると共に、該長連結孔11と該短連結孔12とに股がるように直線状の前記連結鉄筋2が水平状態に挿入されている。
【0054】
これらに共通する構成は前記したところと略同様であり、図22(A)に代表させて説明すれば、該長連結孔11と該短連結孔12は、対向する連結端面9,10で開口し且つ該対向方向に延長する、長さの異なる連結孔である。そして該長連結孔11は、奥側孔部15に、前記連結端面9に向けて拡大する拡大孔部16が連設され、該長連結孔11の奥側孔部の底部17は水平直線状を呈し、該長連結孔11と該短連結孔12の奥端側には、版上面20で開口する縦孔21,26が連設されている。又、前記短連結孔12は、少なくとも前記連結端面10側の孔部分が、該連結端面10に向けて拡大する拡大孔部23とされている。そして、前記長連結孔11の長さは、少なくとも、前記連結鉄筋2を全長に亘って収容できる長さに設定されると共に、該連結鉄筋2は該長連結孔11の前記奥側孔部15の水平な底部17で水平状態に支持される如くなされている。又、前記短連結孔12の前記拡大孔部23は、前記長連結孔11に挿入された状態にある前記連結鉄筋2が前記短連結孔12の奥端側25に向けて水平に移動せしめられる際に該連結鉄筋2の移動方向の先端部59をガイドする、前記連結端面10に向けて下方に傾斜する傾斜ガイド面60を有している。
【0055】
そして、前記長連結孔11と前記短連結孔12とに股がるように直線状の連結鉄筋2が水平状態に挿入された状態で、前記縦孔21から充填材が充填されることにより、連通した前記拡大孔部16,23が存する部分で前記連結鉄筋2がその全周に亘って充填材で充填される如くなされている。
【0056】
特に図22の各コンクリート版1にあっては、前記長連結孔11と前記短連結孔12の上部27,42が水平状態に形成されており、短連結孔12にあっては、前記連結端面10側の孔部分のみが拡大孔部23とされており、それに連なる奥側孔部22は拡大されていない。又、連通した前記拡大孔部16,23の下側部分78,78(拡大孔部23にあっては傾斜ガイド面60でもある)は、図22(A)にあっては、共に、上に突の円弧状面として形成されており、図22(B)にあっては、共に、直線状面として形成され、図22(C)(D)にあっては、上に突の円弧状面と直線状面の組み合わせとして構成されている。
【0057】
又、図23の各コンクリート版1における前記短連結孔12は、前記連結端面10側の孔部分のみが、全周に亘って拡大した拡大孔部23として形成され、該拡大孔部23に、底部41が水平である奥側孔部22が連設されている。そして、短連結孔12の拡大孔部23の前記傾斜ガイド面60は、上に突の円弧状面又は直線状傾斜面として構成されている。
【0058】
そして、該長連結孔11及び前記短連結孔12の奥側孔部15,22は、上部27,42が水平である孔部として形成されている。
【0059】
又、図24に示す各コンクリート版1は、長連結孔11と短連結孔12の上部27,42が、連結端面9,10に向けて上方に傾斜しており、その他の構成は図22における場合と同様である。
【0060】
又、図25に示すコンクリート版1は、前記短連結孔12の前記傾斜ガイド面60が、該短連結孔12の奥端側25から前記連結端面10に向けて下方に一様に傾斜する直線状傾斜面として形成されており、該短連結孔12の上部42は、水平又は連結端面10に向けて上方に傾斜状態に設けられている。そしてこれらにおいて、前記と同様にして、長連結孔11や短連結孔12に排気溝61を設けることもできる。
【0061】
(3) 前記長連結孔11を構成する拡大孔部23の下側部分23aは、前記のように円錐面状に構成することの他、例えば図26に示すように凹部として構成することもできる。
【0062】
(4) 前記各実施例においては、前記縦孔21,26を垂直孔として記載しているが、例えば図27に示すように、樹脂製のエルボ89を埋設することによって湾曲状態に構成されることがある。又は、図28に示すように、かかるエルボを使用しないで湾曲状態に構成されることもある。
【0063】
(5) 前記縦孔21や前記縦孔26から充填材を充填する際に、エアの排気に支障がない場合は、前記排気溝61を省略してもよい。
【0064】
(6) 前記拡大孔部16,23の孔心方向の長さは、前記長連結孔11に挿入された状態にある前記連結鉄筋2を前記短連結孔12の奥端側25向けて水平に移動させるに支障のないように設定される。そのためには、該連結鉄筋2の重心位置を考慮して、該連結鉄筋2が、連設された拡大孔部16,23部分を移動する際に、該連結鉄筋2の移動方向の先側部分が、連設された拡大孔部16,23が存する部分に落ち込むとがないように設定される。
【0065】
(7) 前記連結鉄筋2の長さや直径、前記拡大孔部16,23の孔心方向の長さ、前記硬化充填材80の被覆厚さは、該連結鉄筋2による荷重伝達能力が有効に発揮されるように設定されるものである。例えば、該連結鉄筋2の直径は22〜38mmに、その長さは400〜1000mmに、前記拡大孔部23の孔心方向の長さは80〜250mmに、連結鉄筋2の下側の硬化充填材80の被覆厚さは10〜50mmに、連結鉄筋2の上側の硬化充填材80の被覆厚さは10〜100mmに設定することができる。特に、長連結孔11の奥側孔部15を円形状孔部として構成する場合は、その径を連結鉄筋2の径よりも10〜50mm程度大きく設定するのがよい。
【0066】
(8) 前記連結鉄筋2の移動方向の先端部59をガイドし得る前記傾斜ガイド面60は、前記したような円錐状面として構成されることの他、連結鉄筋2の移動方向の先端部59をガイドして該連結鉄筋2を短連結孔12の奥端側25に向けて水平に移動させることができる限り、フラットな傾斜面等として構成することも可能である。
【0067】
(9) 前記短連結孔12を、奥側孔部22に拡大孔部23を連設して構成する場合、該奥側孔部22や、前記長連結孔11を構成する奥側孔部15は、横断面が円形状に構成されることの他、楕円形等の非円形状に構成されることもある。
【0068】
(10)前記各実施例においては、前記短連結孔12の奥端29をストッパ部47として機能させて、連結鉄筋2を前記長連結孔11と前記短連結孔12とに股がるように挿入状態としているが、該ストッパ部47は、該短連結孔12に設けられた突部として構成してもよい。
【0069】
(11)図1には、両長辺側部分6,7に加えて、両短辺側部分90,91をも前記と同様の要領により連結鉄筋2を用いて連結した場合が示されている。該連結鉄筋2の長さは、例えば1000mmに設定される。
【0070】
(12)前記長連結孔11に収容された状態にある前記連結鉄筋2を、前記短連結孔12の奥端側25に向けて水平に移動させる移動手段は、前記のような蛇腹状の樹脂管の他、連結鉄筋2を押して移動させることができる剛性を具え且つ屈曲可能である、鉄線や縒り線等の各種の押し具を用いて行うことができる。その他、短連結孔12に連設されている縦孔21に通した紐材の先端に設けた磁石を前記連結鉄筋の先端面に磁気吸着させ、該紐材を引っ張ることによって該連結鉄筋2を短連結孔12の奥端側25に向けて移動させる等の手段を採用することもできる。
【0071】
(13)前記実施例においては、前記連結端面9,10に目地用欠切凹部63,63が設けられているが、該目地用欠切凹部63,63は省略されることもある。
【0072】
(14)本発明に係るコンクリート版は、前記した無散水融雪板以外の一般の舗装用コンクリート版として応用されることもある。
【0073】
(15)本発明に係るコンクリート版は、主として、大型車が高頻度で走行する長期耐久性を要求される舗装部の構築に用いられるが、駐車場等のその他の舗装部を構築するために用いられることもある。
【符号の説明】
【0074】
1 コンクリート版
2 連結鉄筋
3 路盤
5 舗装部
6 長辺側部分
7 長辺側部分
9 連結端面
10 連結端面
11 長連結孔
12 短連結孔
15 奥側孔部
16 拡大孔部
17 底部
19 奥端側
20 版上面
21 縦孔
22 奥側孔部
23 拡大孔部
25 奥端側
26 縦孔
32 押し具
60 傾斜ガイド面
61 排気溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互が連結されて路盤上に敷設されることにより舗装部を構築する舗装用コンクリート版であって、対向する連結端面で開口し且つ該対向方向に延長する、長さの長い長連結孔と長さの短い短連結孔が対向状態に設けられており、該長連結孔は、奥側孔部に、前記連結端面に向けて拡大する拡大孔部が連設され、該長連結孔の奥側孔部の底部は水平直線状を呈し、該長連結孔と該短連結孔の奥端側には、版上面で開口する縦孔が連設されており、又、前記短連結孔は、少なくとも前記連結端面側の孔部分が、該連結端面に向けて拡大する拡大孔部とされており、
前記長連結孔と前記短連結孔とを連通させて前記連結端面相互が直接的に又はパッキン材を介在させて当接され、該長連結孔と該短連結孔とに股がるように、丸軸状を呈する直線状の連結鉄筋が水平状態に挿入された状態で、前記何れか一方の縦孔から充填材が充填されることにより、連通した前記拡大孔部が存する部分で、前記連結鉄筋がその全周に亘って充填材で被覆された状態となるようになされており、
前記長連結孔の長さは、少なくとも、前記連結鉄筋を全長に亘って収容できる長さに設定されると共に、該連結鉄筋は該長連結孔の前記奥側孔部の水平直線状の底部で水平状態に支持される如くなされており、前記短連結孔の前記拡大孔部は、前記長連結孔に挿入された状態にある前記連結鉄筋が前記短連結孔の奥端側に向けて水平状態に移動せしめられる際に該連結鉄筋の移動方向の先端部をガイドし得る、前記連結端面に向けて下方に傾斜する傾斜ガイド面を有することを特徴とする舗装用コンクリート版。
【請求項2】
前記短連結孔は、底部が水平直線状を呈する奥側孔部に、前記連結端面に向けて拡大する拡大孔部が連設されており、該拡大孔部は、前記長連結孔に挿入された状態にある前記連結鉄筋が前記短連結孔の奥端側に向けて水平状態に移動せしめられる際に該連結鉄筋の移動方向の先端部をガイドし得る、前記連結端面に向けて下方に傾斜する傾斜ガイド面を有することを特徴とする請求項1記載の舗装用コンクリート版。
【請求項3】
前記短連結孔の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状を呈する排気溝が、前記縦孔に連通すると共に、前記連結端面で開口する如く、且つ、該短連結孔の軸線方向に直線状に延長する如く設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の舗装用コンクリート版。
【請求項4】
前記長連結孔の上部分に、上方に向けて凹んだ溝状を呈する排気溝が、前記縦孔に連通すると共に、前記連結端面で開口する如く、且つ、該長連結孔の軸線方向に直線状に延長する如く設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の舗装用コンクリート版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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