説明

舗装用コンクリート

【課題】長期強度の発現性に優れるとともに、初期強度の発現性にも優れ、寿命が長く、かつ舗装作業の開始から極めて早期に交通開放をすることができる舗装用コンクリートを提供する。
【解決手段】舗装用コンクリートは、2CaO・SiO含有量が30〜40質量%であるポルトランドセメント及びBET比表面積が5〜15m/gのポゾラン質微粉末を含む結合材を少なくとも含有するコンクリート組成物を硬化させてなり、材齢1日における曲げ強度が、3.5N/mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用コンクリートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路、幹線道路、生活道路等の舗装用材料として、舗装用コンクリート、舗装用アスファルト等が知られている。舗装用アスファルトは、舗装作業が比較的容易であって、舗装作業開始から交通開放までの期間を短縮することができるものの、舗装用コンクリートと比較すると耐久性に劣るため、路面にいわゆる「わだち堀れ」等が生じやすいという問題点がある。
【0003】
一方で、舗装用コンクリートは、道路の舗装以外にも、空港、港湾、工場敷地等の重荷重用の舗装として、また、ガレージ、通路等の軽荷重用の舗装として用いられたり、さらに、橋梁等のコンクリート床版の補強を目的とした増厚用コンクリートとして用いられたり、極めて広い範囲において使用されている。
【0004】
舗装用コンクリートは、舗装用アスファルトと比較すると耐久性に優れるため、路面にわだち掘れが生じ難く、また当該コンクリートを使用して道路を舗装すると、路面の色が明るくなり、夜間に運転する運転者に対して疲労感を感じさせ難い等の利点を有するが、コンクリート内の温度差により発生する応力、通行車両の輪荷重により発生する応力等により疲労し、いずれはひび割れ等が発生してしまうことが知られている。
【0005】
舗装用コンクリートにひび割れ等が発生してしまった場合には、新たに舗装用コンクリートを構築する必要があるが、コンクリートを用いた舗装作業には、コンクリートの打設、養生等の作業が困難であること、舗装作業の開始から交通開放までの期間が長期化すること、ひび割れ等により除去したコンクリートの処分が困難である等の問題がある。そのため、道路の修復等を目的とする舗装用コンクリートを使用した舗装作業の頻度を低減すべく、寿命の極めて長い舗装用コンクリートが望まれている。
【0006】
このような観点から、従来、セメント、ポゾラン質微粉末、所定の粒径を有する細骨材、減水剤及び水を含む配合物を硬化させてなる舗装用コンクリートが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−207402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の舗装用コンクリートは、コンクリート打設後の長期における強度(例えば、材齢28日以降の強度(曲げ強度、圧縮強度))の発現性に優れ、寿命の長いものであるものの、コンクリート打設後の極めて初期における強度(例えば、材齢1日程度の強度(曲げ強度、圧縮強度))の発現性に劣るものであるため、舗装用コンクリートにおける舗装作業開始からの早期交通開放という課題を解決するには至っていなかった。
【0009】
上記問題点に鑑みて、本発明は、長期強度の発現性に優れるとともに、初期強度の発現性にも優れ、寿命が長く、かつ舗装作業の開始から極めて早期に交通開放をすることができる舗装用コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、2CaO・SiO含有量が30〜40質量%であるポルトランドセメント及びBET比表面積が5〜15m/gのポゾラン質微粉末を含む結合材を少なくとも含有するコンクリート組成物を硬化させてなり、材齢1日における曲げ強度が、3.5N/mm以上であることを特徴とする舗装用コンクリートを提供する(請求項1)。
【0011】
舗装用コンクリートの設計基準強度は、曲げ強度で4.5N/mmと規定されており、舗装用コンクリートの打設後、交通開放可能となる曲げ強度は、配合強度の7割以上の曲げ強度(3.47N/mm以上)と規定されているが(2007年制定舗装標準示方書,土木学会舗装工学委員会編,2007年3月)、上記発明(請求項1)によれば、材齢1日において交通開放可能な曲げ強度以上の強度発現性を有するため、初期強度発現性に優れたものとすることができる。よって、上記発明(請求項1)に係る舗装用コンクリートを用いることで、舗装作業の開始から極めて早期に交通開放することが可能となる。
【0012】
上記発明(請求項1)においては、前記コンクリート組成物が、水結合材比が10〜20質量%となるように、前記結合材と水とを含有するのが好ましい(請求項2)。かかる発明(請求項2)のように水結合材比を低く設定することで、長期強度の発現性がより優れた舗装用コンクリートとすることができ、舗装用コンクリート(当該コンクリートで舗装された道路等)の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期強度の発現性に優れるとともに、初期強度の発現性にも優れ、寿命が長く、かつ舗装作業の開始から極めて早期に交通開放をすることができる舗装用コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る舗装用コンクリートは、所定のポルトランドセメント及びポゾラン質微粉末を含む結合材を少なくとも含有するコンクリート組成物を硬化させてなるものである。
【0015】
上記ポルトランドセメントにおける2CaO・SiO(CS)含有量は、30〜40質量%であり、好ましくは30〜35質量%であり、特に好ましくは30〜32質量%である。CS含有量が30質量%未満であると、長期にわたる強度(曲げ強度及び圧縮強度)増進が得られなくなるおそれがあり、40質量%を超えると、舗装用コンクリートの初期強度(初期曲げ強度及び初期圧縮強度)の発現性が低下するおそれがある。
【0016】
また、3CaO・Al(CA)含有量は、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。CA含有量が7質量%以下であることで、所望の流動性を確保することができる。
【0017】
なお、上記ポルトランドセメントにおける3CaO・SiO(CS)含有量は特に限定されないが、7質量%以下であるのが好ましい。
【0018】
上記ポゾラン質微粉末としては、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。一般に、シリカフュームやシリカダストは、その平均粒径が1.0μm以下であり、結合材を調製するに際して粉砕等をする必要がなく、本実施形態におけるポゾラン質微粉末として好適に用いることができる。
【0019】
ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、5〜15m/gであり、好ましくは10〜13m/gである。BET比表面積が上記範囲内であることで、水結合材比を低くして高い強度(圧縮強度、曲げ強度)を得ることができる。
【0020】
上記結合材中におけるポゾラン質微粉末の配合量は、上記ポルトランドセメント100質量部に対して10〜50質量部であるのが好ましい。10質量部未満であると、低水結合材比(例えば、10〜20%程度)の配合条件において所望の流動性を確保するのが困難となるおそれがあり、50質量部を超えると、初期材齢における強度(曲げ強度、圧縮強度)を得ることができなくなるおそれがある。
【0021】
本実施形態における上記コンクリート組成物には、粗骨材及び細骨材が配合され得る。かかる粗骨材としては、砂利、砕石、各種軽量粗骨材、各種スラグ粗骨材、再生粗骨材又はこれらの混合物等を用いることができる。また、細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂等の砂系細骨材;各種スラグ細骨材;各種軽量細骨材;再生細骨材又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0022】
本実施形態における上記コンクリート組成物には、所望により各種混和剤が配合されていてもよく、特に水結合材比を低くしつつ所定の流動性を確保するために、減水剤が配合されているのが好ましい。なお、減水剤の配合量は、所定の流動性を確保し得るように適宜決定すればよい。
【0023】
上記コンクリート組成物に配合され得る減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本実施形態において、上記コンクリート組成物は、水結合材比が10〜20%となるように、結合材と水とが配合されてなるものであり、好ましくは、水結合材比が13%程度となるようにそれらが配合されてなるものである。水結合材比が上記範囲内であることで、強度(初期強度及び長期強度)の発現性能に優れた舗装用コンクリートとすることができる。
【0025】
本実施形態に係る舗装用コンクリートは、上記コンクリート組成物を混練し、施工現場(道路等)に敷設し、養生して硬化させることにより得られる。養生方法としては、例えば、養生シートを用いた加温養生、蒸気養生等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
このようにして得られる舗装用コンクリートは、材齢1日において交通開放に必要な3.47N/mm以上の曲げ強度(初期曲げ強度)を発揮することができ、好ましくは舗装用コンクリートの設計基準強度である4.5N/mm以上の曲げ強度を発揮することができる。また、上記舗装用コンクリートは、材齢28日以降において8.5N/mm以上の曲げ強度(長期曲げ強度)を発揮することができ、好ましくは9.5N/mm以上の曲げ強度を発揮することができる。
【0027】
さらに、上記舗装用コンクリートは、材齢1日において20N/mm以上の圧縮強度(初期圧縮強度)を発揮することができ、好ましくは30N/mm以上の圧縮強度を発揮することができる。さらにまた、上記舗装用コンクリートは、材齢28日以降において110〜135N/mmの圧縮強度(長期圧縮強度)を発揮することができ、125〜135N/mmの圧縮強度を発揮することができる。
【0028】
このように、本実施形態に係る舗装用コンクリートは、舗装用コンクリートの要求強度(曲げ強度:4.5N/mm以上)を満足することができるとともに、優れた初期強度(圧縮強度及び曲げ強度)の発現性能を奏し得るため、本実施形態に係る舗装用コンクリートを用いて舗装作業を開始してから極めて早期に交通開放をすることができる。また、本実施形態に係る舗装用コンクリートは、優れた長期強度の発現性能をも奏し得るため、わだち掘れ等が生じ難く、寿命の極めて長いものとすることができる。
【0029】
上述したように、本実施形態に係る舗装用コンクリートは、初期強度及び長期強度の発現性に優れるものである。したがって、本実施形態に係る舗装用コンクリートによれば、道路等の舗装用として十分な強度発現性能を発揮し得るとともに、舗装作業開始から交通開放までの期間を極めて短縮することができる。
【0030】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0031】
上記実施形態に係る舗装用コンクリートは、極めて初期(材齢1日程度)における強度(曲げ強度、圧縮強度)及び長期強度の発現性に優れるため、橋梁等のコンクリート床版の補強を目的とした増厚用コンクリートとしても使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
〔実施例1〜6,比較例1〜3〕
表1に示す材料(水W、セメントC、シリカフュームSF、粗骨材G、細骨材S、高性能減水剤SP及び膨張材Ex)を用いて、表2に示す配合に従って、舗装用コンクリート組成物(実施例1〜6,比較例1〜3)を作製した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
〔圧縮強度の測定〕
上述のようにして作製された舗装用コンクリート組成物(実施例1〜6、比較例1〜3)について、JIS−A1108に準拠して圧縮強度を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
〔曲げ強度の測定〕
上述のようにして作製された舗装用コンクリート組成物(実施例1〜6、比較例1〜3)について、JIS−A1106に準拠して曲げ強度を測定した。結果を表3にあわせて示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示すように、実施例1〜6の舗装用コンクリート(硬化体)は、材齢1日において交通開放に必要な曲げ強度3.47N/mmを満足し、優れた初期強度発現性能を有することが判明した。特に、CS含有量が31質量%の舗装用コンクリート(実施例1〜5)は、材齢1日において舗装用コンクリートとしての設計基準強度である曲げ強度4.5N/mm以上を示し、極めて優れた初期強度発現性能を有することが判明した。一方、比較例1の舗装用コンクリート(硬化体)は、材齢1日において型枠から脱型することができず、初期強度発現性能が不十分であることが判明した。
【0040】
また、表3に示すように、実施例1〜6の舗装用コンクリートは、材齢28日において8.5N/mm以上の曲げ強度及び110N/mm以上の圧縮強度を発現し得ることが確認された。
【0041】
一般に、ポルトランドセメントに含まれるCSは、長期強度の発現性に関与していることが知られているため、ポルトランドセメントにおけるCSの含有率を高くすることで、長期強度の発現性能に優れたものとすることができる。しかしながら、実施例1〜6の舗装用コンクリートは、比較例1の舗装用コンクリートよりもCSの含有率が低いにもかかわらず、材齢28日における曲げ強度及び圧縮強度が高い水準を示した。
【0042】
この結果から、CS含有量が30〜40質量%のポルトランドセメントとシリカフューム(ポゾラン質微粉末)とを含む結合材を少なくとも含有するコンクリート組成物を硬化させることで、優れた初期強度発現性及び長期強度発現性を奏し得ることが判明した。よって、かかるコンクリートを道路等の舗装用コンクリートとして用いることにより、舗装作業の開始から交通開放までの期間を極めて短縮することができるとともに、当該コンクリートを用いた道路等の寿命を長期化し得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の舗装用コンクリートは、優れた初期強度発現性能及び長期強度発現性能を発揮し得るため、極めて早期に交通開放の必要な道路等の舗装用コンクリートとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2CaO・SiO含有量が30〜40質量%であるポルトランドセメント及びBET比表面積が5〜15m/gのポゾラン質微粉末を含む結合材を少なくとも含有するコンクリート組成物を硬化させてなり、
材齢1日における曲げ強度が、3.5N/mm以上であることを特徴とする舗装用コンクリート。
【請求項2】
前記コンクリート組成物は、水結合材比が10〜20質量%となるように、前記結合材と水とを含有することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリート。

【公開番号】特開2011−214231(P2011−214231A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80540(P2010−80540)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】