説明

航空レーザ測量システム

【課題】航空機にレーザ測距器等を搭載して地形情報を取得するのに、データ処理を簡素化して処理時間を短縮し、災害発生時の地形変異を迅速に把握する。
【解決手段】航空機に複数台のレーザ測距器を搭載し、各台のレーザ発射方向の角度をずらして固定し、これらのレーザ照射点の距離を測るレーザ測距手段と、レーザ測距手段より取得した測距データにGPS受信機による位置情報及びIMUによる姿勢情報を組み合せてレーザ照射点の3次元的位置を計算する位置計算手段と、を有し、これらにより航空機の飛行線に平行な複数本の線上の地形情報を読み取り、災害発生時の地形の変異を迅速に把握する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機にレーザ測距器等を搭載して地形情報を取得する航空レーザ測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ測距器にGPS受信機とIMU(姿勢計測装置)を組み合わせ、航空機より地表に向けレーザを発射してレーザ照射点(計測点)の3次元的位置を測量することが行われている。
レーザ測距器はレーザが地表で反射して戻ってくる時間から航空機と地表の距離を測定する。GPS受信機は衛星の電波から航空機の3次元的位置を測定する。IMUは航空機の姿勢や加速度を測り、それらからレーザ光の発射方向を補正する。これらの測定データを組み合せることにより、計測点の緯度経度標高が高精度に測量できる(先行技術文献参照)。
【0003】
近年のレーザ測距器は、1秒当り数万回〜10万回程度のレーザ発射能力があり、このレーザ光を航空機の進行方向に対し左右方向にスキャンすることにより、1回の飛行で幅広い帯状領域を測量できる。飛行高度2000mでスキャン角度が20度の場合、測定領域の幅は約700mで、計測点の間隔は50〜60cmである(国土地理院のHP「航空レーザ測定」参照)。
【0004】
このように従来のスキャン方式は広い領域を効率的に測定できるが、半面、計測点の数が膨大でデータの処理に時間がかかり、またレーザの反射ミラーなどスキャニング機構が高価で耐久性に欠けるという問題が指摘されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】公共測量 作業規程の準則 解説と運用 326,327頁 社団法人 日本測量協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するもので、スキャン方式に替え固定式のレーザ発射器を複数台備えることによりデータ処理を簡素化して処理時間を短縮すると共に、レーザ発射器1台が故障しても高い冗長性を実現してシステムの作動を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、航空機にレーザ測距器、GPS受信機及びIMUを搭載し、地表に向けレーザを発射してレーザ照射点の3次元的位置を測量する航空レーザ測量システムにおいて、複数台のレーザ測距器のレーザ発射方向を互いの角度を変えて固定し、そのうち少なくも1以上のレーザ照射点を航空機の飛行方向直下より横にずれた地点に位置させ、これにより各台でレーザ照射点の距離を測るレーザ測距手段と、レーザ測距手段より取得した測距データにGPS受信機による位置情報及びIMUによる姿勢情報を組み合せてレーザ照射点の3次元的位置を計算する位置計算手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載する複数台のレーザ測距器を、3軸のサーボで水平に姿勢制御する水平架台に設置することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載のレーザ測距器を3台とし、そのうち1台のレーザ発射方向を航空機の飛行線直下に向けて固定すると共に、他の2台のレーザ発射方向を飛行線直下に対し左右に所定角度ずらして固定することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、航空機にレーザ測距器、GPS受信機及びIMUを搭載し、地表に向けレーザを発射してレーザ照射点の3次元的位置を測量する航空レーザ測量システムにおいて、複数台のレーザ測距器のレーザ発射方向を互いの角度を変えて固定し、そのうち少なくも1以上のレーザ照射点を航空機の飛行方向直下より横にずれた地点に位置させ、これにより各台でレーザ照射点の距離を測るレーザ測距手段と、レーザ測距手段より取得した測距データにGPS受信機による位置情報及びIMUによる姿勢情報を組み合せてレーザ照射点の3次元的位置を計算する位置計算手段と、位置計算手段より取得した位置情報からPC画面の地図上に測線を作成する測線作成手段と、測線作成手段より取得した測線データと既得の地図データとを比べて断面データを求める断面データ取得手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、角度をずらしてレーザ発射方向を固定したレーザ測距器を複数台設置するから、各台のレーザ照射点が描く測線が航空機の飛行方向に平行に複数本得られ、そのうえ計測点が限られた測線上に位置するため、地上座標の算出が容易で位置計算が簡素化し計算処理の時間を短縮できる。またレーザ発射方向が固定のため、従来の精密なスキャニング機構が省略でき故障しにくいという効果がある。さらにレーザ測距器が複数台あるため、1台が万一故障してもシステム全体の停止が回避でき、冗長性が高いという効果がある。
【0012】
また請求項2の発明によれば、水平架台にレーザ測距器を載せ、これらを水平姿勢に維持するから、航空機の機体姿勢が乱れても支障なく機体直下の測定ができ、安定した位置データが取得できる。また水平架台により機体直下を測定できるため、IMUに高度な姿勢計測精度は要求されない。このため低価格品のIMUで用が済むという効果がある。
【0013】
請求項3の発明によれば、3台のレーザ測距器のち1台のレーザ発射方向を航空機の飛行線直下に向けて固定し、他の2台のレーザ発射方向をその左右に所定角度ずらして固定するので、機体直下の地形を飛行方向に沿って帯状に計測できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、位置計算手段より取得した位置情報からPC画面の地図上に
測線を作成し、この測線データと既得の地図データとを比べて断面データを求めるので、土砂崩れなど災害で変異した地整情報を即座に把握して、災害復旧に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施した航空レーザ測量システムの機構図
【図2】図1のシステム全体の構成を示す模式図
【図3】図1のシステムにおける水平架台の機能ブロック図
【図4】図1のシステムにおける計測装置の機能ブロック図
【図5】図1のシステムによる地上座標計算フロー図
【図6】図1のシステムによる断面データ測量説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の図の実施形態を説明する。
Hは航空機たとえばヘリコプタAに取り付けた水平防振架台で、これにジャイロセンサGを接続し、その姿勢計測データに基づいて、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸のサーボ1,2及び3をフィードバック制御して、架台Hの姿勢をヘリAの傾きに関係なく水平に維持する。架台Hはバネを介してヘリAに取付ければ、ヘリの振動を受けにくい。
架台Hのイメージは図2のとおりで、サーボ1,2及び3により架台Hをロール軸、ピッチ軸及びヨー軸の3軸回りに、それぞれo角、p角及びk角だけ回転する。4はこれらサーボ1〜3及びジャイロセンサGを制御する制御部で、5はその電源部を示す。これらの制御系統の仕組みは、図3のブロック図のとおりで、3基のサーボをジャイロセンサGの姿勢計測データにより制御する。
【0017】
架台Hには、IMUのほかに3台のレーザ測距器7,8及び9を載せる。GPS受信機6はGPS衛星の電波を受信してヘリAの3次元的位置を測定する。3次元的位置とは緯度経度標高のことで、図1では、X、Y及びZの3軸上の位置で示される。レーザ測距器7,8及び9は公知で、そのうち1台のレーザ測距器7のレーザ発射方向Loを、航空機の飛行線直下に向けて固定し、他の2台のレーザ測距器8及び9のレーザ発射方向La、Lbを、飛行線直下に対し左右に例えば10度だけずらして固定する(図1、6参照)。
IMU及びGPS受信機6による姿勢データ及び位置データと、レーザ測距器7,8及び9の測距データを収録装置10に収録する。これらの制御系統の仕組みは、図4のブロック図のとおりで、11は制御部、12は電源部をそれぞれ示す。
【0018】
次に収録装置10のデータを測定時刻で同期して計測点の地上座標を算出する。この計算処理は公知のため詳細は省略するが、概略のフローは図5のとおりである。すなわち回転マトリクス処理と回転行列計算処理した姿勢データを使ってレーザ測距器7,8及び9の測距データを補正するための投影計算を行い、これから投影座標を求め、さらに投影座標にGPS受信機6の位置データを加えて座標計算を行い、このような座標計算から計測点の3次元的位置情報すなわち地上座標を算出する。
このように計測点の地上座標が得られたら、それよりPC画面の地図上に測線を作成し、さらにこの測線データと既得の地図データとを比べて断面データを求める。
断面データからは、たとえば図6のように、土砂崩れにより山の斜面に土砂Mが堆積した場合、事故現場の位置と堆積した土砂Mの高さや巾等の規模が直ちに把握できる。その結果、堆積した土砂で川の上流側に大量の水が溜まって決壊するなどの2次被害の防止に有効な策を講じることができる。
【0019】
ヘリAにビデオカメラ(図示省略)を搭載し、飛行中、上空から直下の地表を動画撮影し録画する。この録画情報と計測点の地上座標情報は、それらを取得した時間を秒単位で記録することにより、同じ時間軸に同期させ、被災地の地整情報をリアルタイムに画面表示することにより、被害の状況が迅速且つビジュアルに把握できる。
【符号の説明】
【0020】
Aはヘリコプタ
Hは水平防振架台
Gはジャイロセンサ
1〜3はサーボ
4及び11は制御部
5及び12は電源部
6はGPS受信機
7〜9はレーザ測距器
Lo、La、Lbはレーザ発射方向
10は収録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機にレーザ測距器、GPS受信機及びIMUを搭載し、地表に向けレーザを発射してレーザ照射点の3次元的位置を測量する航空レーザ測量システムにおいて、
複数台のレーザ測距器のレーザ発射方向を互いの角度を変えて固定し、そのうち少なくも1以上のレーザ照射点を航空機の飛行方向直下より横にずれた地点に位置させ、これにより各台でレーザ照射点の距離を測るレーザ測距手段と、レーザ測距手段より取得した測距データにGPS受信機による位置情報及びIMUによる姿勢情報を組み合せてレーザ照射点の3次元的位置を計算する位置計算手段と、を有することを特徴とする航空レーザ測量システム。
【請求項2】
前記複数台のレーザ測距器を3軸のサーボで水平に姿勢制御する水平架台に設置することを特徴とする請求項1記載の航空レーザ測量システム。
【請求項3】
前記レーザ測距器を3台とし、そのうち1台のレーザ発射方向を航空機の飛行線直下に向けて固定すると共に、他の2台のレーザ発射方向を飛行線直下に対し左右に所定角度ずらして固定することを特徴とする請求項1記載の航空レーザ測量システム。
【請求項4】
航空機にレーザ測距器、GPS受信機及びIMUを搭載し、地表に向けレーザを発射してレーザ照射点の3次元的位置を測量する航空レーザ測量システムにおいて、複数台のレーザ測距器のレーザ発射方向を互いの角度を変えて固定し、そのうち少なくも1以上のレーザ照射点を航空機の飛行方向直下より横にずれた地点に位置させ、これにより各台でレーザ照射点の距離を測るレーザ測距手段と、レーザ測距手段より取得した測距データにGPS受信機による位置情報及びIMUによる姿勢情報を組み合せてレーザ照射点の3次元的位置を計算する位置計算手段と、位置計算手段より取得した位置情報からPC画面の地図上に測線を作成する測線作成手段と、測線作成手段より取得した測線データと既得の地図データとを比べて断面データを求める断面データ取得手段とを有することを特徴とする航空レーザ測量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225706(P2012−225706A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91924(P2011−91924)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000213909)朝日航洋株式会社 (30)