説明

航空機のタービン・エンジン用吸気口

本発明による吸気口(2)は一片の繊維とレジンとの複合体材料(23)で作製されて、フランジ(24)側で補強リング(26)により補強されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機のタービン・エンジン、特にこのようなタービン・エンジンの吸気口に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のタービン・エンジンでは、吸気口の内壁とファン・ケーシングは金属製であり、上記吸気口の内壁の後端と上記のファン・ケーシングの前端とは協働作用をする周方向突出フランジを有し、螺子、ボルト等の固定具を用いて結合でき、その固定具の軸はタービン・エンジンの長手方向軸に対し平行であり、上記固定具は上記のフランジを通過する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レジンと繊維との複合体の機械的、熱的および質量特性があれば、上記吸気口の内壁はそのような複合体で作製された構成要素の形態で全体を作製することは望ましい。然し、これらの目的でなされたテストにより、上記の繊維は使用中上記の内壁の周方向フランジとその他の筒状部分との間の90度エルボで薄層に剥離し、この剥離により上記の構成要素の機械的強度がかなり落ち、この構成要素を破壊さえするので望ましくないことが証明された。
【0004】
本発明の目的はこの短所を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明によれば、航空機のタービン・エンジンは長手方向の軸を有し、
− 筒状内壁を備えた吸気口と、
− 上記の吸気口により空気が供給され、同様に筒状であるケーシングに包まれているファンとからなり、
上記吸気口の内壁の後端と上記のファン・ケーシングの前端とは、それぞれ、周方向に突出する連結フランジを備え、螺子、ボルト等の第1固定具を用いて結合され、上記の第1固定具は上記のフランジを通過し、その軸は上記のタービン・エンジンの長手方向軸に対し少なくともほぼ平行であり、
− 上記吸気口の内壁は、上記の後端の連結用フランジを含み、レジンと繊維との複合体で作製された構成要素で形成されており、
− 上記のファン・ケーシングの前端の反対側で、上記の後端の周方向に突出するフランジは上記の内壁に、少なくともほぼカヴェット型の環状プロフィールにより連結され、
− 補強リングが上記の後端に取り付けられ、上記のほぼカヴェット型の環状プロフィールを支持し、第2固定具により上記の後端に固定され、上記の第2固定具の軸は上記のタービン・エンジンの長手方向軸に対し少なくともほぼ直交し、
− 上記の第1固定具が上記の補強リングを通過し、この補強リングが上記のフランジに押圧されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
よって、上記の複合体製フランジの形状と上記の補強リングの存在とにより、上記の内壁の上記のフランジとその他の筒状部分との間のL字形エルボ部での剥離は生じない。
【0007】
上記の複合体は炭素繊維、グラス・ファイバー、ホウ素繊維、炭化珪素繊維等で作成されてもよいが、炭素繊維が好ましい。更に、この複合体で作成された構成要素はどの既知の方法 (フィラメントの巻回、コイル状の巻回、ひだ状繊維あるいはプリプレグ(prepregs)織物等)により得られる。
【0008】
更に、複合体で作成された構成要素の強度を高めるため、上記の複合体の一体部分を形成する、複合体で作成された補強材を上記の補強リングの下に設けるのが好ましい。即ち、この場所では、複合体で作成された上記の構成要素の厚さはその他の個所より大きい。
【0009】
上記の補強リングは金属製が望ましい。チタンが上記の補強リングを作製するため特に適した材料であることが分っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付図面の図により本発明がどのように実施されるかが簡単に理解される。これらの図中同一符号は同一要素を示す。
その前方部分が図1に部分的に略示されている既知のタイプのタービン・エンジン1は長手方向軸L−Lを有する。上記の前方部分は本質的に筒状吸気口2とファン3とからなる。
【0011】
上記の筒状吸気口2は先縁4を有し、例えば、アルミニウムで作製された金属製筒状内壁5を備え、この内壁5は内側で防音カバー6を支持する。外側カウル7が上記の吸気口を囲み、上記の内壁5と共に、上記の先縁4の反対側で環状後方隔壁9により閉鎖されている、断面環状の室8を形成する。
【0012】
ファン3はブレード10を有し、例えば、アルミニウムで形成された、金属製筒状構成要素12からなるファン・ケーシング11により囲まれており、上記の筒状構成要素12は内側で防音筒状カバー13を支持する。
【0013】
吸気口2の後端2Rとファン・ケーシング11の前端11Aとは結合面Jに沿って結合されている。
【0014】
図2で拡大して示されているように、後端2Rと前端11Aとは、内壁5と筒状構成要素の周囲で外側に突出する2つの協働する環状フランジ14と15とを用いて組み合わされていて、ボルト16により相互に押圧され、そのボルト16の軸l−lは長手方向軸L−Lに平行であり、上記ボルト16は上記のフランジ14と15とに開けられた、対向する穿孔17と18とを通過する。図2の既知の例では、環状フランジ14は内壁5に取り付けられ、ボルト19と20とによりこれに結合されている。その反対に、この例では、フランジ15は筒状構成要素12と一部品として機械加工されている。
【0015】
更に、各ボルト16とスリーブ21が組み合わされており、このスリーブ21にはボルト16が貫通していて、このボルト16によりスリーブが上記のフランジ15に固定されている。上記のスリーブ21は軸方向に可塑圧縮されるように作成されている。よって、ファン3のブレード10が破壊し、ケーシング11を打撃すると、その衝撃エネルギーは、上記のスリーブ21の変形により少なくとも部分的に吸収される。
【0016】
図3に示されている、本発明による実施例には、図2に関し上記した要素2、2R、3、6、9、11乃至13、11A、15、16、18、21およびJが再度見られる。その反面、筒状内壁5とフランジ14とは省略されて、炭素繊維をベースとする好ましい複合体で作製された、筒状内壁23(筒状内壁5と置き換わっている)とフランジ24(フランジ14と置き換わっている)とからなる単一の構成要素22と置き換わっている。
【0017】
ファン・ケーシング11の反対側では、フランジ24がカヴェット25により筒状壁23に連結されている(同様に図4参照)。加えて、上記のフランジ24とカヴェット25とは複合体により強化されていて、その厚さEは筒状壁23の厚さeより大きい。
【0018】
例えば、チタンで作製されている補強リング26は、上記の複合体で作製された上記の構成要素22に、上記のカヴェット25を支持するように取り付けられ、ボルト27によりカヴェット25に固定されていて、ボルト27の軸x−xは上記の軸L−Lに対し直交する。加えて、ボルト16は、上記の補強リング26と、貫通孔28(穿孔17と類似のもの)とを貫通し、フランジ15と24とに押圧される。
【0019】
補強リング26は、適宜、(図3に描写されているように) 伸びて、環状後方隔壁9を形成してもよい。
【0020】
ボルト27は、後端2Rにアクセスする必要がないように所謂“盲ボルト”タイプであるのが好ましい。よって、防音カバー6は後方に伸ばせることができる。
【0021】
本発明による吸気口ではインピーダンスが破壊せず、よって全体的防音性能を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】既知のタービン・エンジンの前方部分の部分略半断面図である。
【図2】図1に示す既知のタービン・エンジンにおける、吸気口の後端とファン・ケーシングの前端との結合の一例を示す、拡大部分略半断面図である。
【図3】本発明の実施例を示す図2に対応する図である。
【図4】図3に示す要素の切欠部分斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
2…吸気口、2R…吸気口の後端、3…ファン、11…ファン・ケーシング、15・24…フランジ、16…第1固定具、22…構成要素、23…吸気口の内壁、24…連結用フランジ、25…環状プロフィール、26…補強リング、27…第2固定具、E…複合体の厚さ、L−L…長手方向の軸、l−l…第1固定具の軸、x−x…第2固定具の軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のタービン・エンジンは長手方向の軸(L−L)を有し、
− 筒状内壁を備えた吸気口(2)と、
− 上記の吸気口により空気が供給され、同様に筒状であるケーシング(11)に包まれているファン(3)とからなり、
上記吸気口の内壁の後端と上記のファン・ケーシングの前端とは、それぞれ、周方向に突出する協働連結フランジを備え、螺子、ボルト等の第1固定具(16)を用いて結合され、この第1固定具(16)は上記のフランジを通過し、その軸(l−l)は上記のタービン・エンジンの長手方向軸(L-L)に対し少なくともほぼ平行であり、
− 上記吸気口(2)の内壁(23)は、上記の後端(2R)の連結用フランジ(24)を含み、レジンと繊維との複合体で作製された構成要素(22)で形成されており、
− 上記のファン・ケーシング(11)の前端の反対側で、上記の後端(2R)の周方向に突出するフランジ(24)は上記の内壁(23)に、少なくともほぼカヴェット型の環状プロフィール(25)により連結され、
− 補強リング(26)が上記の後端(2R)に取り付けられ、上記の少なくともほぼカヴェット型の環状プロフィール(25)を支持し、第2固定具(27)により上記の後端(2R)に固定され、上記の第2固定具(27)の軸(x−x)は上記のタービン・エンジンの長手方向軸(L−L)に対し少なくともほぼ直交し、
− 上記の第1固定具(16)が上記の補強リング(26)を通過し、この補強リング(26)は上記の協働フランジ(15、24) に押圧されることを特徴とするタービン・エンジン。
【請求項2】
上記の複合体が炭素繊維に基づくことを特徴とする請求項1に記載したタービン・エンジン。
【請求項3】
上記の補強リング(26)の下では、上記の複合体(22)の厚さ(E)が上記の内壁(23)のその他の筒状部分より大きいことを特徴とする請求項1あるいは2に記載したタービン・エンジン。
【請求項4】
上記の補強リング(26)が金属製であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載したタービン・エンジン。
【請求項5】
上記の補強リング(26)がチタン製であることを特徴とする請求項4に記載したタービン・エンジン。
【請求項6】
上記の第2固定具(27)がブラインド状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載したタービン・エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−542972(P2009−542972A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518918(P2009−518918)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001132
【国際公開番号】WO2008/006959
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(506355257)エアバス フランス (117)