説明

航空機のナセルを外囲装着する装置

本発明の目的は、上方でパイロンに固定される部分(14)(パイロンフェアリングと呼ぶ)および湾曲した輪郭を持つ少なくとも1つのカウル(16)に続く吸気口(12)を有する航空機のナセルであって、該ナセルが、少なくとも1つの可撓性素子(38)の形状をした外囲装着用の装置と、少なくとも1つの前記可撓性素子(38)を少なくとも1つの前記カウルの湾曲した輪郭に沿わせることができる誘導手段(40)と、パイロンフェアリングの第1の縁(78)に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子(38)の第1の固定箇所(42)と、パイロンフェアリングの第2の縁(80)に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子(38)のもうひとつの固定箇所とを有し、該固定箇所(42)によってパイロンフェアリング(14)と少なくとも1つの前記カウル(16)との間をナセルの長手方向軸に平行な方向に沿って動く相関的な往復運動を起こすことができることを特徴とする航空機のナセルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気進入現象を制限するために航空機のナセルを外囲装着する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の推進装置にはナセルが備えられ、このナセルの内部には、航空機のそれ以外の部分とパイロンを介して接続する動力装置がほぼ同心となるように配置されている。
【0003】
ナセルは、ダクトと前方の吸気口との境界を定める内壁と、動力装置を通過して燃焼に加担する吸気流の第1の部分(第1の流束と呼ぶ)と、送風機によって駆動される空気流で、ナセルの内壁と動力装置の外壁とが境界線となる環状ダクトに流れる空気流の第2の部分(第2の流束と呼ぶ)とを有する。
【0004】
また、ナセルは、断面がほぼ円筒状で吸気口から後方の出口まで伸びて複数の素子が並列することによって構成される外壁と、前方に概ね強硬な吸気口とを有し、この吸気口はナセルのカウル(カウリングともいう)に続いている。
【0005】
吸気口は、空力学的な空気流によって発生する力や潜在的な衝撃に耐え得るように湾曲した形状で、多数の補強材が用いられているため、強硬にできている。
【0006】
カウリングは、ナセルの内部に設置された動力装置にアクセスできるように可動式になっている。このカウリングは、開閉運動の種類に応じてさまざまな方法でナセル以外の部分と連結し、パイロンの固定部付近にあるナセルの上部からナセルの下部まで伸び、半円筒形状をしている。
【0007】
カウリングには一般に、内表面に緊張線のある鋼板が備えられ、相対的な剛性が得られるようになっている。カウリングの滑らかな外表面は、カウリングが閉鎖位置にあるときは常にその他の素子(特に吸気口)の外表面と同一線上にくるようになっている。
【0008】
カウリングの縁付近には、カウリングを閉鎖位置に保つためのロック手段が設けられている。
【0009】
さらに、カウリングによって閉塞される開口部のフレームは、周縁部に接触面を有し、カウリングがこの接触面を押圧することによってカウリングの外表面が常に吸気口の外表面と同一線上にくるようになる。
【0010】
場合によっては、フレームの接触面には、圧縮可能な接合部品などの変形可能な素子を備えてもよい。
【0011】
相対的剛性を考慮すると、飛行中にカウリングが変形する可能性があるため、空気は吸気口との接合部周辺でカウリングの下からナセル内部に進入する可能性がある。この空気進入と呼ぶ現象により、航空機の空力学的性能が低下し、特に飛行機雲が増加し、燃費が悪くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この現象を制限するための対策が、カウリング付近に設ける緊張線の数を増加することである。しかしながら、この対策では、緊張線の追加により積載質量が増大して航空機の燃料消費量が増加することには変わりがないため、望ましい結果に反する結果となる。
【0013】
もうひとつの問題点をあげると、パイロンに固定されるナセルの上方部(パイロンフェアリングとも呼ぶ)は、ナセルとパイロンとの接合部付近に飛行機雲が発生するのを制限する機能を持つ。ナセルは、飛行中に空力荷重を受けて、パイロンに対してわずかに動き、パイロンフェアリングに対しても動き、特にナセルの長手方向軸に沿って動く。また、パイロンフェアリングは、ナセルのエンジンカバーがパイロンフェアリングに対して長手方向軸に沿って動くこの相対的な動きの自由度を吸収するための複雑なシステムを備えている。
【0014】
また、本発明は、空気進入現象を制限することを標的とし、パイロンフェアリングとナセルとの間の接続を簡易化する一方で積載質量が顕著に増大することのない装置を提供して、先行技術の不都合を緩和することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明は、上方でパイロンに固定される部分(パイロンフェアリングと呼ぶ)および湾曲した輪郭を持つ少なくとも1つのカウルに続く吸気口を有する航空機のナセルであって、該ナセルが、少なくとも1つの可撓性素子の形状をした外囲装着用の装置と、少なくとも1つの前記可撓性素子を少なくとも1つの前記カウルの湾曲した輪郭に沿わせることができる誘導手段と、パイロンフェアリングの第1の縁に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子の第1の固定箇所と、パイロンフェアリングの第2の縁に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子のもうひとつの固定箇所とを有し、該固定箇所によってパイロンフェアリングと少なくとも1つの前記カウルとの間をナセルの長手方向軸に平行な方向に沿って動く相関的な往復運動を起こすことができることを特徴とする航空機のナセルを目的とする。
【0016】
その他の特徴および利点は、添付の図を参照し、例としてのみ挙げた本発明の以下の説明から明らかとなる。以下、図面を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ナセルの前方を示す斜視図である。
【図2】本発明によるナセルを外囲装着する装置の概略斜視図である。
【図3】本発明の装置を側面から見た概略図である。
【図4】本発明の装置の図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】本発明の装置の図3のV−V線に沿った断面図である。
【図6】ナセルを外囲装着する装置の上方の固定箇所を示す斜視図である。
【図7】ナセルを外囲装着する装置の下方の固定箇所を示す斜視図である。
【図8】ナセルを外囲装着する装置の誘導手段の実施形態を示す斜視図である。
【図9】ナセルを外囲装着する装置が制御する指標手段をナセル内部から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、パイロンを介して航空機のナセル以外の部分と結合する航空機のナセルを符号10で示した。
【0019】
本出願は特に、ナセルの外表面に焦点を当てている。また、当業者に周知の内部は詳細には説明しない。
【0020】
ナセル10は一般に、ほぼ円筒状の横断面を有する。ナセルの外表面は前方に吸気口12を有し、その隣には、パイロンと結合する部分で特にパイロンの周辺で上部にある少なくとも1つの部分14(パイロンフェアリングという)と、少なくとも1つの可動部16とを備えている。
【0021】
吸気口は、前方にほぼ円形を描くリップ18を有し、このリップはナセルの長手方向軸とほぼ垂直な面(垂直ではない面でもよい)にあり、リップのうち12時の位置にある部分がわずかに前方に出ている。ただし、ほかの形状をした吸気口を考案してもよい。
【0022】
吸気口は、特に飛行中、空力学的な空気流によって発生する力や潜在的な衝撃に耐え得るように湾曲した形状で、多数の補強材が用いられているため、強硬にできている。
【0023】
吸気口12は当業者には周知のものであるため詳細な説明はしない。
【0024】
パイロンフェアリングとも呼ばれる固定上方部14は、ナセルとパイロンの接合部付近に飛行機雲が発生するのを制限するのに適応した形状をしている。この固定上方部は当業者には周知のものであるため詳細な説明はしない。
【0025】
ナセルは、飛行中の空力荷重を受けてパイロンに対してわずかに動き、パイロンフェアリングに対しても動き、特にナセルの長手方向軸に沿って動く。
【0026】
そのため、ナセルの外表面は、複数の素子が並列する外表面で構成される。
【0027】
カウルまたはカウリングとも呼ばれる可動部16によって、ナセルの内部にアクセスし、特に動力装置のメンテナンスを行うための開口部ができるようになっている。
【0028】
図2および図3に示す構図では、ナセルは中央垂直面を中心にほぼ左右対称となるように配置されるカウル16を2つ有し、このカウルはナセルの前方の吸気口12から伸び、上方部にある固定部14から伸びて下方部で合流し、場合によっては後方で1つまたは複数の固定部と隣接することもある(図示せず、詳細説明なし)。
【0029】
ただし、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、多くの変形例も範囲内である。したがって、ナセルはカウル16を1つのみ有してもよい。
【0030】
本発明では1つのカウルを適用して説明する。
【0031】
カウルは連結手段を有し、この連結手段が開口部20を閉鎖してカウルの外表面がナセルを形成するほかの素子と同じ高さになる閉鎖位置に相当する第1の状態と、カウルが開口部20を少なくとも部分的に解放する開口位置に相当するもうひとつの状態とを操作する。
【0032】
連結手段ならびにカウルを動かすことができる操縦手段は、当業者には周知のものであるため詳細には説明しない。
【0033】
さらに、カウルは、カウルを閉鎖位置に保持することができるロック手段24を有する。下方部で隣接する2つのカウルがあることにより、ロック手段はカウルの下方の縁に配置することが好ましく、連結手段は上方の縁近辺に配置する。このロック手段は、同じく当業者には周知のものであるため詳細には説明しない。
【0034】
図4および図5に示すように、開口部20の境界は周縁であり、周縁部の一部26は矢印28で示す空力流の流れる方向からみてカウル16の上流にある。
【0035】
図に示す例では、カウル16の上流にある開口部の縁26は吸気口12の後方縁と一致する。しかし、この開口部の縁は別の固定素子または可動式素子の領域にあってもよい。
【0036】
開口部の周縁は、ナセルの内側にずれて位置する支持面30を有し、この支持面を閉鎖位置にあるカウル16が押圧し、このカウルがナセルの内部に入り過ぎないようにするとともに、カウルの外表面がナセルの外表面と同一線上にくるようになる。
【0037】
一実施形態によれば、この支持面30はT字部32の一方の分枝の上面と一致し、もう一方の分枝の上面は開口部の周縁で吸気口の壁の内表面に固定されている。
【0038】
さらに、圧縮可能な接合材などの可撓性素子を支持面30の近辺に取り付けて気密性を確保することもできる。
【0039】
カウル16は、空力流28と交わるように広がる縁34を有し、この縁が空気流の流れる方向からみてカウルの上流に位置し、開口部の縁26の隣に位置して空力流の乱れを制限する。
【0040】
カウル16は、たとえば鋼板などの緊張線(図示せず)で補強された壁36を有する。この壁36は、横断面に沿った湾曲する断面を有し、この断面はナセルの円形状の輪郭と一致するものである。
【0041】
空気進入現象を制限するため、カウル16は上流の縁34の近辺に、特に飛行中に、好ましくは零下の温度で収縮作用の負荷がかかっても収縮しない可撓性素子38を有する補強装置と、可撓性素子38がカウルの湾曲した輪郭に沿うようにする誘導手段40とを有し、可撓性素子38は、カウルの湾曲した輪郭の第1の端部の近辺に第1の固定箇所と、カウルの湾曲した輪郭の第2の端部の近辺に第2の固定箇所44とを有し、2つの固定箇所42と44との間は緊張した状態にある。
【0042】
この方法によって、積載質量を大幅に増大させることなくカウルの剛性を向上させ、空気進入現象の発生を制限することができるとともに、飛行機雲の弊害を軽減することができる。ナセルの内部に位置するこの装置によって、カウルがナセルの外側へ向かって半径方向に動くのを阻止することができる。
【0043】
さまざまな図に示した一実施形態では、可撓性素子38はケーブルまたはこれと同類の形状をしている。変形例では、可撓性素子としてバンドを使用してもよい。
【0044】
可撓性素子とは、互いに結合する1つまたは複数の可撓性素子を意味する。
【0045】
有利なように、可撓性素子はプレストレスを与えた素子であってもよい。
【0046】
場合によっては、可撓性素子38は、カウルが閉鎖位置、つまり可動しない位置にあるときのみに緊張状態となるか、プレストレスを与えるようにしてもよい。
【0047】
可撓性素子38は、外装46の中に配置することが好ましい。
【0048】
一実施形態によれば、誘導手段40は、カウルの内表面に直接または直接ではない方法で張り付けた山形鋼48を少なくとも1つ有し、この断面形状が可撓性素子38の入る空間を形成し、この可撓性素子が山形鋼とカウルとの間に収容される。この誘導手段40によって可撓性素子をカウルの輪郭に沿わせることができる。
【0049】
場合によっては、誘導手段40は、山形鋼を1つのみ有するか、間隔を空けて(または空けずに)並列する複数の山形鋼を有する。
【0050】
この誘導手段40はさまざまな形状をとることができ、環境規制に応じて金属または複合材料製とすることができる。図4および5には異なる2つの変形例を示した。図5では、誘導手段を形成する山形鋼は、カウルの内表面に直接張り付けられている。図4では、山形鋼は台板50(この機能については後述する)に張り付けられ、この台板自体はカウルの内表面に張り付けられている。
【0051】
図8に示すもうひとつの変形例によれば、誘導手段はローラー51を有し、この各ローラー51の各端部に設けられた台板があることによってローラーはカウル36に固定されている。この変形例では、可撓性素子38はローラー51とカウルとの間を通過してカウルの輪郭に概ね沿うようになっている。各ローラー51は、可撓性素子38がカウル36の輪郭に概ね沿うように適した間隔を空けて並んでいる。
【0052】
ほかの変形例によれば、誘導手段は、たとえば山形鋼およびローラーなどのさまざまな誘導手段を組み合わせたものであってもよい。
【0053】
この装置は、飛行時、および好ましくはカウルが閉鎖位置にあるときに、可撓性素子およびプレストレス材の張付手段52を備えることができる。
【0054】
有利なように、ケーブルの引張手段52は、カウルのロック手段24によって制御され、ロック手段がカウルの閉鎖位置に相当するロック状態にある際はケーブルが緊張し、ロック手段24がカウルの開口位置に相当するアンロック状態にある際はケーブルが弛緩するようになっている。
【0055】
一実施形態によれば、可撓性素子はケーブルの形状をして外装46の中に収まっており、両端がストッパー54と接触している。外装の各端部では、この外装よりも長いケーブル38は外装で被覆されてはおらず、この端部は、上方部ではカウル16とパイロンフェアリング14との間にある連結手段22に結合し(詳細については後述する)、下方部ではロック手段24とカウルとの間に結合している。
【0056】
したがって、ロック手段24は、ロック状態にあるときに可撓性素子38を緊張させる。逆に、ロック手段24がアンロック状態にあるときは、ケーブルを弛緩させる。
【0057】
装置は、好ましくはケーブルの少なくとも一方の端部が外装で被覆されていないケーブルの長さを調節するローレットなどのプレストレス材の調整手段56を有する。
【0058】
空気進入現象を、特に3時および9時の位置にある最も被害を受けやすい箇所でさらに制限するため、図9に詳細を示す安全指標58を設け、少なくとも1つの安全指標が、3時および9時の位置にある被害を受けやすい箇所の周辺で各カウル16に固定されるようにすることができる。1つの安全指標が掛け金60を有し、この掛け金がカウル16と結合している回転軸62の回りを回転し、通常は吸気口12の方であるカウル16の上流側で掛け金60の端部が縁26の内表面を押圧する状態である実線で示すロック位置と、掛け金60の端部が縁26から離れる状態である点線で示すもうひとつのアンロック位置とを形成する。したがって、ロック位置では掛け金60は、カウルがナセルの外側へ向かって半径方向に動くのを抑制して空気進入現象を防止する。アンロック位置では、掛け金60は縁26に保持されずにカウル16を開口させる。
【0059】
力がすべて回転軸62に取られないように、支持面を有する部品64がカウル16と結合し、縁26と協働するカウル16の縁近辺で回転軸62と縁26との間に位置している。この支持部品64は、カウル16に固定されている部分とカウルの内表面から離れている部分66とを有する。この支持部品64の配置は、掛け金60がロック位置となるときは66の部分とカウル16との間に入るように回転軸62および掛け金に応じて調整され、支持部品64が力の一部を受けるようにする。
【0060】
掛け金60は、可撓性素子38と結合して、可撓性素子38が緊張する動きとロック位置での指標58の回転が同時に起きるようにすることができる。このために、可撓性素子38と指標58との間の連結手段68は、可撓性素子38に固定される素子70を有し、この可撓性素子の一部は指標58に設けられたスリット72内を摺動することができる。このように、可撓性素子38が緊張することによって連結素子70は縁26と平行な方向に動き、指標58が回転する。
【0061】
さらに、カウルの補強装置は縁34の近辺に、凹部76の中に入る溝74を有することもでき、この凹部の開口部はナセルの外側に向けられ、支持面30の近辺に配置されている。図4に示す一実施形態によれば、溝74はカウルと山形鋼40との間に介在する台板50の近辺に設けられている。
【0062】
溝74および/または凹部76は、横断面に沿った1部分または複数の部分に設置してもよいし、カウルの縁34の全長に沿って伸びても、そうでなくてもよい。
【0063】
変形例では、カウルの縁および開口部の縁の近辺はその他の形状を取ってもよい。このような補足的な形状は、前述のような静的なタイプのもの、または動的なタイプのものでもよく、この形状によって1つまたは複数の自由度を持つことができる。
【0064】
図2に示す変形例は、パイロンの足元からナセルの下部まで広がる2つのカウルがあるナセルの場合であり、この2つのカウルは、ナセルを外囲装着するための装置となる補強装置を備えている。
【0065】
変形例では、ナセルを外囲装着する装置は、互いに直接的または間接的に結合する1つまたは複数の可撓性素子38を有することができ、そのうちの1素子は、パイロンフェアリングの第1の縁78の近辺にある固定箇所42と結合し、もうひとつの素子は、パイロンフェアリングの第2の縁80の近辺にある固定箇所42と結合する。この可撓性素子38は2つの固定箇所の間で緊張状態となり、カウルおよびパイロンフェアリングに半径方向の圧力をかける。可撓性素子は、特に飛行中の零下の温度で収縮する特性があり、これによって半径方向の力が増大することが好ましい。
【0066】
上記のように、ケーブルの引張手段52はカウルのロック手段24によって制御され、ロック手段がカウルの閉鎖位置に相当するロック状態にある際はケーブルが緊張し、ロック手段がカウルの開口位置に相当するアンロック状態にある際は弛緩するようになっている。
【0067】
固定箇所42は、パイロンフェアリングの前方に位置していることが好ましい。
【0068】
本発明によれば、固定箇所42によって、パイロンフェアリング14とカウル16との間でナセルの長手方向軸に平行な方向に沿った相関的な運動が可能になる。この構成によって、先行技術による複雑な連結システムを撤去してパイロンフェアリングとナセルとの間の連結を容易にすることができる。
【0069】
図6に示す一実施形態では、固定箇所42がパイロンフェアリング14の内表面の近辺に固定された台板82を有し、カウル16の内表面の下に位置している。この台板82は長手方向に伸びる軸84を支持し、この軸84の各端部が台板82と接続している。固定箇所42と接続している可撓性素子38は、一方の端部に軸84に沿って摺動することができるリング86を有する。したがって、軸84とリング86との間の連結によって、特に長手方向に対して垂直な面へ力をかけることができると同時に、長手方向に沿って2つの素子の間に相対的な動きを起こすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方でパイロンに固定される部分(14)(パイロンフェアリングと呼ぶ)および湾曲した輪郭を持つ少なくとも1つのカウルに続く吸気口(12)を有する航空機のナセルであって、該ナセルが、少なくとも1つの可撓性素子(38)の形状をした外囲装着用の装置と、少なくとも1つの前記可撓性素子(38)を少なくとも1つの前記カウルの湾曲した輪郭に沿わせることができる誘導手段(40)と、パイロンフェアリングの第1の縁(78)に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子(38)の第1の固定箇所(42)と、パイロンフェアリングの第2の縁(80)に固定される少なくとも1つの前記可撓性素子(38)のもうひとつの固定箇所とを有し、前記固定箇所(42)によってパイロンフェアリング(14)と少なくとも1つの前記カウル(16)との間でナセルの長手方向軸に平行な方向に沿って動く相関的な往復運動を起こすことができることを特徴とする航空機のナセル。
【請求項2】
上方部にあるパイロンフェアリング(14)に続く吸気口(12)と、左右対称でナセルの下方部で隣接するように配置される2つの前記カウル(16)とを有する航空機のナセルであって、各カウルが1つの可撓性素子(38)を有し、各可撓性素子(38)が前記パイロンフェアリング(14)の近辺に第1の固定箇所と、前記カウルの下方部に第2の固定箇所とを有することを特徴とする、請求項1に記載の航空機のナセル。
【請求項3】
前記固定箇所(42)が前記パイロンフェアリング(14)に固定される軸(84)を有し、前記固定箇所(42)と結合する前記可撓性素子(38)の端部に設置されるリング(86)を前記軸に沿って摺動させることができることを特徴とする、請求項1または2に記載の航空機のナセル。
【請求項4】
飛行中に、好ましくは前記カウルが閉鎖位置にあるときに、前記可撓性素子(38)の引張手段(52)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の航空機のナセル。
【請求項5】
前記可撓性素子(38)の前記引張手段(52)は、前記可撓性素子(38)がカウルの閉鎖位置に相当するロック状態にあるときは緊張し、ロック手段(24)がカウルの開口位置に相当するアンロック状態にあるときは弛緩するように前記カウルの前記ロック手段(24)によって制御されることを特徴とする、請求項4に記載の航空機のナセル。
【請求項6】
前記可撓性素子(38)はプレストレス材であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の航空機のナセル。
【請求項7】
前記可撓性素子の前記プレストレス材を調整する手段(56)を有することを特徴とする、請求項6に記載の航空機のナセル。
【請求項8】
前記誘導手段(40)は、前記カウルの内表面に直接または直接ではない方法で張り付けた山形鋼(48)を少なくとも1つ有し、この断面形状が前記可撓性素子(38)の入る空間を形成し、前記可撓性素子が山形鋼とカウルとの間に収容されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の航空機のナセル。
【請求項9】
カウリングによって閉塞される開口部は支持面(30)を有し、閉鎖位置にある前記カウルが前記支持面を押圧することによって、前記カウルの外表面がナセルを形成するほかの素子のほかの外表面と同一線上にくることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の航空機のナセル。
【請求項10】
3時および/または9時の位置にある安全指標を有し、該安全指標が前記カウル(16)と結合する回転軸(62)の回りを回転する掛け金(60)を有し、該掛け金(60)の端部が前記吸気口(12)に固定される前記カウル(16)の上流側の縁(26)の内表面を押圧することができるロック位置と、前記掛け金(60)の端部が前記縁(26)から離れるもうひとつの前記アンロック位置とを形成し、前記ロック位置では前記掛け金(60)が、前記カウルがナセルの外側へ向かって半径方向に動くのを抑制して空気進入現象を防止することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の航空機のナセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−528298(P2011−528298A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517974(P2011−517974)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051401
【国際公開番号】WO2010/007311
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(509323440)エアバス オペレイションズ エスエーエス (13)