説明

航空機の乗客用座席

【課題】キャビン内部の狭い座席の場合にも、乗客に比較的より大きな空間利用を可能にする航空機の乗客用座席を提供することである。
【解決手段】本発明は、座席部分のような座席構成要素と、背もたれクッション13を支持する支持構造体11を備える背もたれ1とを有する航空機の乗客用座席であって、支持構造体の背面に、支持構造体に対し折り畳みかつ使用時の位置に延ばすことが可能な食台と、印刷物17及び旅行用具のような有用な対象物を収容するためのポケット状の容器15とが配置され、この場合、容器15は、背もたれ1の支持構造体11で、少なくとも部分的に、折り畳まれたトレイテーブル3と背もたれクッション13との間に広がる中空部によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席部分のような座席構成要素と、背もたれクッションを支持する支持構造体を有する背もたれとを有する航空機の乗客用座席であって、この支持構造体の後部に、後部の表面へ折り畳むことができかつ使用位置へ展開することができるトレイテーブルと、用具、特に印刷物及び旅行用具を保持するためのポケット状の収容部とが設けられる、航空機の乗客用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の航空機の乗客用座席は、従来の旅客機に、特に定期航空路線又はチャーター航空輸送に広く使用されている。周知のように、商業用航空輸送では、経済的理由のため、優先的な目的は、所定の使用可能な空間内に可能な限り多数の乗客用座席を設けることによって、内部キャビン空間を可能な限り最善に使用することである。しかし、同時に、各々の乗客が、いわゆる「居住空間」として、着座及び/又は旅行快適さに関して十分な利用可能なキャビン空間を有することが保証されなければならない。公知の乗客用座席は、エコノミークラスの航空輸送に特に当てはまるように、狭苦しいキャビン空間に着座する場合、適切な「居住空間」に課せられる要求を十分に満たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、キャビン内部の狭い座席の場合にも、乗客に比較的より大きな空間利用を可能にする航空機の乗客用座席を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
冒頭に述べた種類の航空機の乗客用座席では、この目的は、本発明に記載されているように、収容部が、背もたれの支持構造体で、少なくとも部分的に、折り畳まれたトレイテーブルと背もたれクッションとの間に広がる中空部によって形成される点で達成される。
【0005】
本発明に記載されているように、ポケット状の収容部が、背もたれの支持構造体の未使用の長い内部中空部内に移動されていることによって、すぐ後ろの乗客の膝領域のトレイテーブルのすぐ下にポケット状の収容部が装着される公知の航空機の乗客用座席と比較して、膝領域のより大きな自由空間をつくることができる。公知の航空機の乗客用座席では、特に旅行資料、従来の安全指示書及び他の旅行用具で満たされている場合、収容部により、膝及び脚部空間の自由が大きく制限されるが、これは本発明では回避される。
【0006】
有利には、本発明に記載されているような航空機の乗客用座席では、収容部を形成するために、支持構造体の上縁の領域から支持構造体の構造体要素に広がる未使用の長い中空部を使用することができ、構造体要素は、収容部の底部を形成し、かつ折り畳まれたトレイテーブルの表面領域内に位置する。
【0007】
そして、支持構造体の上縁に隣接する領域に収容部の主開口部を形成するための中空部は、後部に向かって開くことができる。主開口部、したがって支持構造体の上縁も、例えば表示スクリーン等を保持するために、支持構造体に追加の設置空間が形成されるように、ある量の高さ分を下方に移動することができる。
【0008】
トレイテーブルが展開されたときに露出するポケットの後壁としての支持構造体であって、収容部の底部を形成する構造体要素の上方にある背もたれの支持構造体は、支持構造体の2つの側縁の間を通過するプレートを有し、トレイテーブルをこのプレートの表面へ折り畳むことができる。
【0009】
このプレートは、トレイテーブルを折り畳み位置に固定するためのラッチ手段を有することができる。
【0010】
収容部の後壁を形成するプレートの下縁と、収容部の底部を形成する構造体要素との間に、収容部の溝状の底部側開口部を形成することができ、この開口部により、収容部に格納される小さな物品の取り出し及び収容部の容易な清掃が容易に可能である。
【0011】
収容部に配置された印刷物又はより小さな旅行用具が滑り出ることを防止するために、収容部の底部側開口部に隣接する構造体要素の縁部に、小さな突出リップを設けることができる。さらに、支持構造体は、収容部の下で横断方向に走る棒状体によってさらに強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術による3つの航空機の乗客用座席を有する座席列部分の簡単な部分切り取り概略図であり、座席の背もたれからの領域のみが見える。
【図2】本発明に記載されているような航空機の乗客用座席の代表的な一実施形態の背もたれの領域のみの簡単な概略斜視後面図であり、トレイテーブルは省略されている。
【図3】図2の代表的な実施形態の背もたれの簡単な斜視後面図であり、図2と比較して拡大されている。
【図4】一体化された表示スクリーンを有する他の代表的な実施形態の簡単な概略斜視後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して本発明について以下により詳細に説明する。
【0014】
図1は、従来技術による3つの航空機の乗客用座席を有する座席列の部分を示しており、座席の背もたれの領域が示されている。関節状アーム5で従来の方法で移動できるように配置されたトレイテーブル3が、背もたれ1に折り畳まれた図1の不使用位置に示されている。この位置で、トレイテーブル3は、従来の方法で構成されかつ製造されるロックラッチ7によって取外し自在に固定することができる。
【0015】
トレイテーブル3の下に、ポケット状の収容部9があり、これらの収容部は、公知の航空機の乗客用座席では、網ポケット又は閉鎖壁部を有するポケットとして印刷物用のポケットの形態で製作される。図1に示されているように、これらのポケット状の収容部9は、印刷物、例えば航行時の従来の安全指示書で、旅行用具、他の印刷物等で満たされたとき、後方に隆起して、特に膝領域で、後ろに座る乗客の脚部領域を制限する。
【0016】
図2では、参照番号11は、本発明の代表的な一実施形態による背もたれ1の支持構造体を示しており、支持構造体11は背もたれクッション13を支持する。図2は、簡明のためトレイテーブルが省略されている背もたれ1の後部の図を示しており、トレイテーブルは、支持構造体11の後部の表面へ折り畳まれたとき、旋回ラッチ7によって折り畳み位置でロックすることができ、ラッチ7は、折り畳まれたトレイテーブル3の上縁をまたいで従来の方法で延びる。
【0017】
図3は、より明瞭にかつより大きなスケールで支持構造体11の詳細を示しており、支持構造体11において、背もたれクッション13を支持する支持構造体11の前部と、トレイテーブル3を支持構造体11の表面へ折り畳むことができ、かつラッチ7によって固定することができる領域の支持構造体の後部との間に広がる内部中空部は、物品、例えば印刷物17を保持するためのポケット状の収容部15として使用されることが明白である。中空部によって形成された収容部15の底部19は、支持構造体11の側縁から側縁に横断方向に走る構造体要素21によって形成される。トレイテーブル3が展開されたとき、物品が収容部15から落ちるのを防止するために、構造体要素21の上方で、収容部の後壁を形成するプレート23が支持構造体11の側縁から側縁に延びる。このプレート23は、図1に示したトレイテーブル3をロックするための移動可能ラッチ7を支持する。
【0018】
収容部の底部19を形成する構造体要素21と、プレート23との間に、溝状の開口部25を区画形成する距離がある。中空部によって形成された収容部15のこの底部側開口部25により、収容部の容易な清掃及びより小さな用具の快適な取り出しが可能である。印刷物17又は他の物品が意図することなく滑り出ることを防止するために、底部19と外側とを区切る構造体要素21の縁部に、リブの形態で僅かに突出するリップ部27がある。
【0019】
図示した代表的な実施形態では、収容部15は、背もたれ支持構造体11の不可欠な構成要素である。したがって、背もたれの剛性を持つセグメント部分を有する一種のハードなボックスが、収容部15用に具備される。このため、付加された収容部にもかかわらず、背もたれ構造体は、例えば衝突の場合に、生じる衝撃力が、特に座席の背もたれの領域で、座席の潰れをもたらすことができないように、以前と同様に剛性を持つ。U字状支持構造体11の2つの側部又は構造の棒状体の間の横断方向に走る連続プレート23は、この点で特に助けとなる。
【0020】
図4に示したような他の代表的な実施形態では、支持構造体11の上縁11aは、表示スクリーン31が支持構造体11に一体化されることができるように、詳細に示していないトレイテーブル3の方向へある高さだけ移動される。このように、背もたれの後部に均一な表面が得られ、この表面により、衝突又は衝撃の場合に、加えられる可能性がある身体の力を確実に受け入れかつ分布させて、このようにして、後部座席の乗客の負傷の危険を最小にすることができる。
【0021】
すぐ後ろに配置された航空機の乗客用座席の膝領域のトレイテーブル33の下のポケットを取り去ることによって、本発明に記載の航空機の乗客用座席は、すぐ後ろに配置された航空機の乗客用座席の使用者に、「居住空間」の利用を可能にする。このように、対応する不都合をこうむる必要なしに、背もたれ1の支持構造体11内でこのようにしなければ使用されない中空部を印刷物用の収容部又はポケットとして使用することによって、より間隔の詰った座席を航空機に配備すること、及び対応する経済的な利点を享受することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席部分と、背もたれクッション(13)を支持する支持構造体(11)を有する背もたれ(1)とを有する航空機の乗客用座席であって、前記支持構造体の後部に、該後部の表面へ折り畳むことができかつ使用位置へ展開することができるトレイテーブル(3)と、用具を保持するためのポケット状の収容部(15)とが設けられる、航空機の乗客用座席において、
前記収容部(15)が、前記背もたれ(1)の前記支持構造体(11)の中で、少なくとも部分的に、前記折り畳まれたトレイテーブル(3)と前記背もたれクッション(13)との間に広がる中空部によって形成されることを特徴とする航空機の乗客用座席。
【請求項2】
前記中空部が、前記支持構造体(11)の上縁(11a)の領域から前記支持構造体(11)の構造体要素(21)へ広がり、該構造体要素が、前記収容部(15)の底部(19)を形成し、かつ前記折り畳まれたトレイテーブル(3)の表面領域の範囲内に位置することを特徴とする、請求項1に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項3】
前記支持構造体(11)の前記上縁に隣接する領域に前記収容部(15)の主開口部を形成するための前記中空部が、前記後部に向かって開いていることを特徴とする、請求項2に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項4】
前記収容部(15)の前記底部(19)を形成する前記構造体要素(21)の上方の前記背もたれ(1)の前記支持構造体(11)が、前記支持構造体(11)の2つの側縁の間を通過するプレート(23)を有し、該プレートが前記収容部(15)の後壁を形成し、前記トレイテーブル(3)を該プレートの表面へ折り畳むことができることを特徴とする、請求項2又は3に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項5】
前記支持構造体(11)の前記上縁(11a)が、表示スクリーン(31)を前記支持構造体(11)内に一体化できるように、前記トレイテーブル(3)の方向へある高さだけ移動されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項6】
前記収容部(15)の前記後壁を形成する前記プレート(23)が、前記トレイテーブル(3)を前記折り畳まれた位置に固定するためのラッチ手段(7)を有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項7】
前記収容部(15)の前記底部(19)を形成する前記構造体要素(21)と、前記収容部(15)の後壁を形成する前記プレート(23)との間に、前記収容部(15)の溝状の底部側開口部(25)が形成されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の航空機の乗客用座席。
【請求項8】
前記収容部(15)の前記底部(19)を形成する前記構造体要素(21)が、前記収容部(15)の前記底部側開口部(25)に隣接する前記構造体要素の縁部に、前記底部側開口部(27)の内側幅の中へ突出するリップ部(27)を有することを特徴とする、請求項7に記載の航空機の乗客用座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250707(P2012−250707A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199246(P2012−199246)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【分割の表示】特願2008−284710(P2008−284710)の分割
【原出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(502348855)レカロ エアークラフト シーティング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト (17)
【氏名又は名称原語表記】RECARO Aircraft Seating GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Daimlerstr. 21, D−74523 Schwaebisch Hall, Germany
【Fターム(参考)】