説明

航空機の動的構造負荷の最小化

外部励振(1)によって導入される航空機(2)の動的構造負荷の最小化は、外部励振(1)を示す信号(x)を生成するステップと、航空機(2)に対して導入される動的構造負荷を低減するために、先行制御ルールに従って、前記励振を示す信号(x)から、航空機(2)の制御要素を駆動するための先行制御信号(y)を導出するステップと、前記先行制御の実績を示す誤差信号(e、e*)を生成するステップと、動的構造負荷を最小化するように、前記誤差信号(e、e*)および/または前記励振を示す信号(x)によって先行制御ルールを最適化するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部励振によって航空機に対して導入される動的構造負荷を最小化することに関する。
【背景技術】
【0002】
動的構造負荷は、例えば、風、突風、乱気流または類似の影響、およびパイロット/フライトコントロールシステム(FCS)の要求による外部励振によって航空機の構造に対して導入される。航空機構造の可撓特性の結果として、そのような励振が所与の大きさを超過する振動または動揺をもたらす恐れがあり、そのため、この振動または動揺は、とりわけ可撓性の航空機構造の固有振動、すなわち特有の振動の範囲内の周波数で航空機構造に対して有害になり得る。翼および胴体の高アスペクト比の状況において、航空機構造の質量を低減することが求められるならば、過度の動的構造負荷に対して対策をとる必要がある。
【0003】
ドイツ特許第19841632C2号の文献から、外部励振で導入される航空機の構造的振動を補償するための方法が既知であり、この方法は、センサ配置を用いて航空機の機体の少なくとも1点の速度を検出するステップと、フライトコントローラに前記少なくとも1点の機体速度を供給するステップと、励起された振動を最小化するように航空機の操縦翼面の動作を生成するステップとを含む。
【0004】
さらに、米国特許第5515444号から、そのコンプレッサがうるさい1次音場を生成するターボファンエンジンの航空機エンジンダクトノイズを低減するためのアクティブノイズコントロールシステムが既知である。このアクティブノイズコントロールシステムは、発せられた音と相関性がある基準音響信号を生成するために、ファンに隣接してエンジン内に取り付けられたブレード透過センサと、誤差音響信号を生成するために、1次音場に反応するような位置に配置された分散型誤差センサとを備える。前記うるさい1次音場を補償するために、配列または圧電駆動されたパネルで構成された音響駆動手段がエンジンのファン吸気口内に取り付けられる。コントローラは、音響駆動手段を駆動するために、基準音響信号および誤差音響信号に応答して前記1次音場とほぼ同等の振幅であるが逆位相を有する2次音場を生成することによって効果的にエンジンノイズを低減する。
【特許文献1】ドイツ特許第19841632C2号
【特許文献2】米国特許第5515444号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、航空機の動的構造負荷の効果的な最小化を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の、外部励振によって導入される航空機の動的構造負荷を最小化する方法によって達成される。さらに、この目的は、請求項15に記載の、外部励振によって導入される航空機構造の動的構造負荷を最小化するための装置によって達成される。
【0007】
本発明のその他の特徴は、それぞれの従属請求項に含まれる。
【0008】
本発明は、外部励振によって航空機に対して導入される航空機の動的構造負荷を最小化する方法を提供するものであり、前記外部励振を示す信号を生成するステップと、航空機に対して導入される動的構造負荷を低減するように、先行制御ルールに従って、前記励振を示す信号から、航空機の制御要素を駆動するための先行制御信号を導出するステップと、前記先行制御の実績を示す誤差信号を生成するステップと、動的構造負荷を最小化するように、前記誤差信号および/または前記励振を示す信号によって先行制御ルールを最適化するステップとを含む。
【0009】
誤差信号として前記先行制御の実績を示す前記信号を生成することは、航空機構造の構造負荷を示すことであり得る。
【0010】
前記励振を示す信号を生成するステップは、乱気流、風および突風の強さおよび方向、迎え角、偏揺れ角およびオイラー角のうち1つまたは複数を示す信号を検出するステップを含み得る。パイロットによって引き起こされた負荷/動揺を最小化するように、パイロット/FCSの要求の情報が励振を示す信号に加えられ得る。
【0011】
前記誤差信号を生成する前記ステップは、航空機構造の所与の位置での加速度、応力または歪みの1つまたは複数を示す信号を検出するステップを含み得る。
【0012】
前記誤差信号を生成する前記ステップは、構造負荷に含まれている航空機の操縦翼面へのパイロットまたはフライトコントローラの命令の寄与を減じるステップを含み得る。前記パイロットまたはフライトコントローラの命令の影響を減じる前記ステップは、航空機の剛体モデルに基づいて実行され得る。
【0013】
前記励振を示す信号は、航空機の可撓体モデル、またはオブザーバ/カルマンフィルタから生成され得る。
【0014】
前記先行制御ルールを最適化する前記ステップは、パイロットまたはフライトコントローラの命令の影響を減じるための周波数分離を含み得る。前記先行制御ルールを最適化する前記ステップは、反復アルゴリズムを含み得る。
【0015】
動的構造負荷を最小化するように制御要素を駆動する前記ステップは、航空機の昇降舵、方向舵、補助翼または他の操縦翼面の1つまたは複数を作動させるステップを含み得る。動的構造負荷を最小化するように制御要素を駆動する前記ステップは、電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータの1つまたは複数を駆動して航空機構造へ負荷減衰力を直接導入するステップを含み得る。
【0016】
前記先行制御ルールを最適化する前記ステップは、航空機の伝達関数または他の任意の数学モデルを生成するステップを含み得る。
【0017】
前記伝達関数を生成する前記ステップは、複数n個の適応フィルタ(nは同定されるべき航空機の伝達関数の数に相当する)によって帯域制限されたランダムノイズまたはチャープ信号または任意の他の同定信号をフィルタリングするステップを含むオンラインシステム同定ステップと、前記フィルタリングされたベクトル形式の応答を誤差信号から減じるステップとによって実行され得る。システム同定ステップは、1次制御経路を推定するステップを含み得る。(航空機の構造の振動/負荷の低減のために、2次制御経路は、容易に1次制御経路から推定することができ、1次制御経路は、2次制御経路より同定するのが簡単である。)
【0018】
さらに、本発明は、外部励振によって航空機に対して導入される航空機構造の動的構造負荷を最小化するための装置を提供し、この装置は、前記航空機構造の前記外部励振を示す信号を生成するための励振信号生成装置と、前記航空機に対して導入される動的構造負荷を低減するように、先行制御ルールに従って、前記励振を示す信号から、前記航空機の制御要素を駆動するための先行制御信号を導出するための制御回路と、前記先行制御の実績を示す信号を誤差信号として生成するための誤差信号生成装置と、前記動的構造負荷を最小化するように、前記誤差信号および/または励振を示す信号によって先行制御ルールを最適化するための最適化回路とを備える。
【0019】
前記誤差信号生成装置は、前記先行制御の実績を示す前記信号を前記航空機構造の構造負荷を示す誤差信号として生成するために与えられ得る。
【0020】
前記励振信号生成装置は、乱気流、風および突風の強さおよび方向、迎え角、偏揺れ角、およびオイラー角のうち1つまたは複数を示す信号を検出するためのセンサ手段を含み得る。
【0021】
前記誤差信号生成装置は、航空機構造の所与の位置での加速度、応力または歪みの1つまたは複数を示す信号を検出するために与えられ得る。さらに、前記誤差信号生成装置は、構造負荷に含まれている、前記航空機の操縦翼面へのパイロットまたはフライトコントローラの命令の寄与を減じるために与えられ得る。
【0022】
前記誤差信号生成装置も、前記航空機の剛体モデルに基づいてパイロットまたはフライトコントローラの命令の影響を減じるために与えられ得る。
【0023】
前記励振信号生成装置は、前記航空機の可撓体モデル、またはオブザーバ/カルマンフィルタから、励振を示す信号を生成するために与えられ得る。
【0024】
前記最適化回路は、コントローラがいかなる影響も及ぼさないことになっている周波数範囲を無効にすることができるように、周波数分離によって先行制御ルールを最適化するための周波数分離器を含み得る。前記最適化回路は、反復アルゴリズムによって先行制御ルールを最適化するために与えられ得る。
【0025】
動的構造負荷を最小化するように駆動される制御要素は、航空機の昇降舵、方向舵、補助翼または他の操縦翼面の1つまたは複数を含み得る。さらに、動的構造負荷を最小化するように駆動される制御要素は、航空機構造へ負荷減衰力を直接導入するために、電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータの1つまたは複数を含み得る。
【0026】
前記最適化回路は、前記先行制御ルールを最適化するための航空機の伝達関数を生成するために与えられ得る。前記最適化回路は、複数n個の適応フィルタ(nは同定されるべき航空機の伝達関数の数に相当する)によって帯域制限されたランダムノイズまたはチャープ信号をフィルタリングするステップを含むオンラインシステム同定ステップによって前記伝達関数を生成するために、及びフィルタリングされたベクトル形式の応答を誤差信号から減じるために与えられ得る。
【0027】
本発明の実施形態が、図を参照しながら以下に開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、外部励振1によって導入される、航空機2の動的構造負荷を最小化する1つの原理の実施形態を示す。外部励振1は、例えば、風、突風または乱気流であり得る。励振1は、とりわけ、航空機2の可撓体特性による構造内の固有振動、すなわち特有の振動によって、航空機2の構造に動的構造負荷をもたらす。図1では、可撓体と見なされる航空機2に励振1が導入される。
【0029】
励振センサまたは基準センサ5によって励振1が検出され、これが外部励振1を示す信号xを生成する。基準センサ5は、この場合1つまたは複数のセンサあるいはセンサ配列である。先行制御ルールに従って航空機2の制御要素を駆動するための制御信号yを導出するために、外部励振1を示す信号xが適応型先行制御回路6および17に入力され、この先行制御ルールは、前記適応型先行制御回路6および17で実施される。制御要素を駆動するための制御信号yは、外部励振1によって航空機2に対して導入される動的構造負荷を低減する。航空機2に設けられている制御要素を駆動するために、制御信号yが航空機2に対して出力される。
【0030】
航空機2では、前記外部励振1によって航空機2に対して導入される構造負荷を示す信号が生成され、この信号は誤差信号e、e*として使用され、回路6、17の先行制御ルールの制御実績を記述している。動的構造負荷を最小化するために(すなわち航空機2の構造内の振動振幅を低減するために)、前記誤差信号e、e*によって先行制御ルールを最適化するための回路8、9に誤差信号e、e*が入力される。回路8、9における最適化は、振動および動的構造負荷の最小化を、航空機2の実負荷および飛行状態に適応させるやり方で実行される。最適化ルールが反復型でないとき、回路6、17の調整可能な先行制御ルールを最適化するために、信号xが更に使用される。
【0031】
基準センサ5は複数のセンサを備え得ると共に、これらは、風、乱気流および突風の強さおよび方向、迎え角、偏揺れ角など、例えばオイラー角などを検出する。航空機2内の誤差センサによって検出される誤差信号e、e*は、例えば、航空機構造の様々な所与の位置での加速度ならびに航空機構造の所与の位置での応力またはひずみを含み得る。動的構造負荷を最小化するように駆動される航空機2の制御要素は、昇降舵、方向舵、補助翼または他の操縦翼面を含み得ると共に、これらは、航空機構造へ負荷減衰力を直接導入するために、電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータを含み得る。
【0032】
さらに、特定の選択肢として、航空機2における望ましくない構造負荷および振動を同様に含むパイロットまたはフライトコントロールシステムの命令3、4が、励振を示す信号xに加えられる。したがって、パイロットまたはフライトシステムの命令による航空機の構造負荷および振動も最小化される。
【0033】
先行制御ルールの最適化は、適切な方法、すなわち最小2乗平均平方根誤差法または最小2乗平均平方根誤差(LMS、RLS)の再帰的方法または2次費用関数を最小化する方法に従って実行され得る。
【0034】
図2は、フィルタリングされた誤差信号eの生成を示す。航空機の操縦翼面へ出力されて対応する飛行操作による構造負荷をもたらすパイロットまたはフライトコントローラの命令3、4の寄与を減じるために、航空機2の内部モデル16が与えられる。しかし、これらの命令は、先行制御回路6、17の動作をもたらさないことになっている。これは、もちろん、一般にパイロットまたはフライトコントローラの命令が先行制御回路6、17によって補償されるのではなく、パイロットに引き起こされた動揺が補償されることになる、ということを意味する。この目的のために、内部モデル16は剛体モデルである。
【0035】
航空機の内部モデル16から出力された信号は、結合回路25で元の誤差信号e*と結合されてフィルタリングされた誤差信号eを生成し、この信号が最適化回路8、9に出力される。あるいは、航空機の操縦翼面向けの制御命令yは、内部モデル16に入力され得ると共に、外部励振を示す信号xは、結合回路25から取得することができる。
【0036】
元の誤差信号e*からパイロットまたはフライトコントローラの命令の影響を減じるためにのみ航空機2の内部モデル16を使用するように意図されるなら、内部モデル16は剛体モデルであり得る。しかし、内部モデル16が外部の励振を示す信号xを生成するように意図されるなら、これは航空機2の完全な可撓体モデルでなければならない。内部モデルは、励振を示す信号からの寄生フィードバックを減じるためにも使用され得る。
【0037】
図3は、航空機の動的構造負荷を最小化するための装置の一実施形態を概略ブロック図で示す。風、突風または乱気流であり得る外部励振1が航空機2の構造に対して導入される。励振1は、航空機構造内に、動揺および振動、とりわけ固有振動、すなわち特有の振動を引き起こす。航空機2は、パイロットの命令3およびフライトコントローラ4によって制御される。風の励振1は基準センサ5によって検出される。これは、レーザ光センサまたは他の風センサ(例えばαセンサ、βセンサ)であり得る。
【0038】
一般に風速および風向の3次元情報を含むこの励振信号または基準信号は、航空機2の構造振動および構造負荷を低減し、かつ最小化するように、航空機2の制御要素を駆動するために、先行制御回路6へ送られる。前述のように、制御要素は、昇降舵、方向舵、補助翼または空気力学的に有効な他の操縦翼面であり、かつ/または、構造負荷を直接最小化するための機械的制御要素で、航空機構造へ負荷減衰力を直接導入する電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータであり得る。
【0039】
適応化および最適化のために、前記先行制御回路6には、航空機2内で検出されると共に最小化されるべき、誤差センサ7によって生成される1つまたは複数の誤差信号、オンラインシステム同定部9によってもたらされる、航空機2の伝達関数に関するさらなる情報、および構造負荷最小化システムによって補償されないことになっている、パイロットおよびフライトコントローラの命令に関する情報、の入力がある。
【0040】
オンラインシステム同定部9は、各アクチュエータ向けに帯域制限されたランダムノイズを生成するランダムノイズ発生器8に接続される。ランダムノイズ信号は、どれも励振信号または基準信号と相関性があってはならない。優れた信号対雑音比を与えるために、別々のアクチュエータに関する伝達関数を同時に測定するべきではない。ノイズ信号は、構造負荷を最小化するために、アクチュエータまたは制御要素へ送られると共に、システム同定部9へ送られる。システム同定部9では、同定ノイズ信号はn個の適応フィルタ(例えばFIR、IIR、ニューロンネットワークなど)を通る。nは、航空機の同定されるべき伝達関数の数である。
【0041】
それらの適応フィルタのエンティティは、航空機2のフィルタモデルを与える。同定ノイズ信号に対するこのフィルタモデルの応答10は、減算手段11によって、航空機2の誤差センサ7によって生成された誤差信号からベクトル形式で減じられる。同定ノイズ信号と相関性がある誤差信号のそれらの部分は、同定ノイズ信号に対する航空機2の応答である。このベクトル減算の結果は、航空機の伝達関数とフィルタモデルとの間の誤差を示す。
【0042】
フィルタ係数12は、周波数領域へ変換されて適応型先行制御回路6へ送られる。フィルタモデル係数12の適応は、LMSアルゴリズムまたはRLSアルゴリズムあるいは別のアルゴリズムによって行うことができる。これは、システム同定部9において誤差センサ7から出力された信号内の同定ノイズ信号と相関性がある部分だけが考慮されることを確実なものにするために、発生器8によって生成された同定ノイズ信号を使用する。航空機2の加速度、機体速度などもフライトコントローラ4へ入力される。
【0043】
適応型先行制御回路6の一実施形態が図4に示されている。誤差センサ7によって生成された航空機2の誤差信号と基準センサ5(図3)の基準信号は、どちらもパイロットおよびフライトコントローラの命令によってもたらされた一般的情報を含む。動的構造負荷最小化システムによる、パイロットおよびフライトコントローラの命令の不本意な最小化または補償を回避するために、基準信号および誤差信号から、それぞれ結合回路15および14によって、パイロットおよびフライトコントローラの命令の寄与が減じられる。基準センサ5の信号および誤差センサ7の信号に対するパイロットおよびフライトコントローラの命令3、4の寄与または影響は、航空機2の内部剛体モデル16を用いて計算される。この内部モデル16は、剛体航空機の飛行の機械的特性だけを含んでおり、通常、航空機を設計するときに良く分かっている。
【0044】
補償された誤差信号および基準信号は、フィルタモデルの周波数領域の係数と共に適応型先行制御回路17に入力される。構造負荷/動揺を最小化するために、通常ベクトル形式である先行制御回路17の出力は、妥当性チェックユニット18へ送られ、また、様々なアクチュエータ20への制御コマンドの最適な分配のために回路19へ入力される。
【0045】
適応型先行制御の一実施形態が図5aに与えられている。適応フィルタ24の調節は、反復型外乱アルゴリズム23を用いて行うことができるが、これは、フィルタ係数をΔwだけ変化させ、誤差信号が小さくなるか大きくなるか調べるものである。誤差信号が減少したら、フィルタ係数をもう一度Δwだけ変化させ、そうでなければ-Δwだけ変化させることになる、などである。そのような反復アルゴリズムについては、航空機の伝達関数に関する情報およびオンラインシステム同定部は不要である。
【0046】
適応型先行制御の別の実施形態が図5bに与えられている。外部励振に関する情報を含む、補償された基準信号がn個の適応フィルタ22に入力される。nは構造負荷減衰アクチュエータの数に誤差センサの数を掛けたものである。適応フィルタは、構造負荷を最小化するためのアクチュエータ20または制御要素に対する制御命令の最適な分配のために、妥当性チェックユニット18および回路19へ制御命令を出力する。フィルタ係数の調節は、すなわち、“filtered X-LMSアルゴリズム”21によって行うことができるが、これは最先端技術である。“filtered X 動作”は、周波数領域におけるオンラインシステム同定部のフィルタモデルの係数を用いて実行することができる。
【0047】
図6は、Z方向の加速度(航空機の翼表面に対して垂直な加速度)を検出するための3つのセンサのフィルタ配置の実施形態を示す。加速度センサNzLFおよびNzRFは翼端にあり、NzSPは、航空機の質量中心のZ加速度を測定するためのものである。しかし、胴体の垂直加速度および水平加速度を減衰させるために、胴体の前方部分および/または後方部分に加速度センサを設けてy方向およびz方向の加速度を測定することも可能である。
【0048】
風による外部励振によって航空機に対して導入される構造負荷を最小化する例が図7に示され、誤差信号の平均が周波数の関数として示されている。点線は構造負荷の最小化なしでの誤差信号を示し、実線は構造負荷を最小化したときの誤差信号を示す。最高ピークは、翼の1番目の垂直曲げ振動、すなわち翼の可撓特性によってもたらされた固有振動、すなわち特有の振動を示す。曲げ振動、したがって構造負荷の大幅な低減が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態による、外部またはパイロット/FCSの励振によって航空機に対して導入される動的構造負荷を最小化する方法および装置を開示するためのブロック図である。
【図2】本発明で使用される誤差信号の生成を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明による、外部励振によって導入される航空機の動的構造負荷を最小化する本発明の別の実施形態の方法および装置を説明するための概略ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態で使用される適応型の先行調整回路または先行制御回路の概略ブロック図である。
【図5a】適応型先行制御を説明するための別の概略ブロック図である。
【図5b】適応型先行制御を説明するための別の概略ブロック図である。
【図6】航空機の動的構造負荷を最小化するために本発明の一実施形態によって使用することができるセンサ配置を示す、航空機の概略図である。
【図7】外部励振によって航空機に対して導入された構造負荷を示す誤差信号の平均の大きさを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 励振
2 航空機
3 パイロットの命令
4 フライトコントローラの命令
5 基準センサ
6 適応型先行制御回路
7 誤差センサ
8 帯域制限されたランダムノイズまたはチャープ信号の発生器
9 システム同定部
10 フィルタモデルの応答
11 減算手段
12 フィルタ係数
14 結合回路
15 結合回路
16 航空機の内部モデル
17 適応型先行制御
18 妥当性チェックユニット
19 操縦翼面駆動回路
20 アクチュエータ(操縦翼面)
21 LMSアルゴリズム
22 適応フィルタ
23 反復型外乱アルゴリズム
24 適応フィルタ
25 結合回路
x 励振を示す信号
y 制御信号
e* 元の誤差信号
e フィルタリングされた誤差信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部励振(1)によって航空機(2)に対して導入される前記航空機の動的構造負荷を最小化する方法であって、
前記外部励振(1)を示す信号(x)を生成するステップと、
前記航空機(2)に対して導入される前記動的構造負荷を低減するように、先行制御ルールに従って、前記励振を示す信号(x)から、前記航空機(2)の制御要素(20)を駆動するための先行制御信号(y)を導出するステップと、
前記先行制御の実績を示す誤差信号(e、e*)を生成するステップと、
前記動的構造負荷を最小化するように、前記誤差信号(e、e*)および/または前記励振を示す信号(x)によって前記先行制御ルールを最適化するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
誤差信号(e)として前記先行制御の実績を示す前記信号が、前記航空機構造の構造負荷を示す
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励振を示す信号(x)を生成するステップが、乱気流、風および突風の強さおよび方向、迎え角、偏揺れ角のうち1つまたは複数を示す信号を検出するステップを含む
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
パイロットまたはフライトコントロールシステムの命令によってもたらされる動的構造負荷を低減するために、そのようなパイロットまたはフライトコントロールシステムの命令に関する情報が、前記励振を示す信号(x)に加えられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記誤差信号(e、e*)を生成するステップが、前記航空機構造の所与の位置での加速度、応力または歪みの1つまたは複数を示す信号を検出するステップを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記誤差信号(e、e*)を生成する前記ステップが、前記構造負荷に含まれている、前記航空機(2)の操縦翼面へのパイロットまたはフライトコントローラの命令(3、4)の寄与を減じるステップを含む
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
パイロットまたはフライトコントローラの命令(3、4)の前記影響を減じる前記ステップが、前記航空機(2)の剛体モデル(16)に基づいて実行される
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記励振を示す信号(x)が、前記航空機(2)の可撓体モデル(16)、またはオブザーバ/カルマンフィルタから生成される
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記先行制御ルールを最適化する前記ステップが、制御されないことになっている一定の周波数範囲、具体的にはパイロットの命令の周波数範囲を無効にするための周波数分離を含む
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記先行制御ルールを最適化するステップが、反復アルゴリズム(23)を含む
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
動的構造負荷を最小化するように制御要素(20)を駆動する前記ステップが、前記航空機(2)の昇降舵、方向舵、補助翼または他の操縦翼面の1つまたは複数を駆動するステップを含む
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
動的構造負荷を最小化するように制御要素を駆動する前記ステップが、電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータの1つまたは複数を駆動して前記航空機構造へ負荷減衰力を直接導入するステップを含む
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記先行制御ルールを最適化するステップが、前記航空機(2)の伝達関数を生成するステップを含む
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記伝達関数を生成する前記ステップが、複数n個の適応フィルタ(22)(nは同定されるべき前記航空機の伝達関数の数に相当する)によって帯域制限されたランダムノイズまたはチャープ信号をフィルタリングするステップを含むオンラインシステム同定ステップ(9)と、前記フィルタリングされたベクトル形式の応答を前記誤差信号から減じるステップとによって実行される
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
外部励振(1)によって航空機(2)に対して導入される航空機構造の動的構造負荷を最小化するための装置であって、
前記航空機構造の前記外部励振(1)を示す信号(x)を生成するための励振信号生成装置(5)と、
前記航空機(2)に対して導入される前記動的構造負荷を低減するように、先行制御ルールに従って、前記励振を示す信号(x)から、前記航空機(2)の制御要素を駆動するための制御信号(y)を導出するための制御回路(6、17)と、
前記先行制御の実績を示す信号を誤差信号(e、e*)として生成するための誤差信号生成装置(7、25)と、
前記動的構造負荷を最小化するように、前記誤差信号(e、e*)および/または励振を示す信号(x)によって前記先行制御ルールを最適化するための最適化回路(8、9)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記誤差信号生成装置(7、25)が、前記先行制御の実績を示す前記信号を前記航空機構造の構造負荷を示す誤差信号(e、e*)として生成する
ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記励振信号生成装置(5)が、乱気流、風および突風の強さおよび方向、迎え角、偏揺れ角のうち1つまたは複数を示す信号を検出するためのセンサ手段を含む
ことを特徴とする請求項15または16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記誤差信号生成装置(7、25)が、前記航空機構造の所与の位置での加速度、応力または歪みの1つまたは複数を示す信号を検出するための手段(7)を与えられる
ことを特徴とする請求項15から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記誤差信号生成装置(7、25)が、前記構造負荷に含まれている、前記航空機(2)の操縦翼面へのパイロットまたはフライトコントローラの命令(3、4)の寄与を減じるための手段を与えられる
ことを特徴とする請求項15から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記誤差信号生成装置(7、25)が、前記航空機(2)の剛体モデル(16)に基づいてパイロットまたはフライトコントローラの命令(3、4)の前記影響を減じるために与えられる
ことを特徴とする請求項15から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記励振信号生成装置(5)が、前記航空機(2)の可撓体モデル(16)、またはオブザーバ/カルマンフィルタから、前記励振を示す信号を生成するために与えられる
ことを特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記最適化回路が、パイロットまたはフライトコントローラの命令(3、4)の前記影響を減じるための周波数分離によって前記先行制御ルールを最適化するための周波数分離器を含む
ことを特徴とする請求項15から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記最適化回路(8、9)が、反復アルゴリズムによって前記先行制御ルールを最適化するために与えられる
ことを特徴とする請求項15から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
動的構造負荷を最小化するように駆動される制御要素(20)が、前記航空機(2)の昇降舵、方向舵、補助翼または他の操縦翼面の1つまたは複数を含む
ことを特徴とする請求項15から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
動的構造負荷を最小化するように駆動される制御要素(20)が、前記航空機構造へ負荷減衰力を直接導入するために、電気機械式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータまたは圧電型アクチュエータの1つまたは複数を含む
ことを特徴とする請求項15から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記最適化回路(8、9)が、前記先行制御ルールを最適化するための前記航空機の伝達関数を生成するために与えられる
ことを特徴とする請求項15から25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記最適化回路(8、9)が、複数n個の適応フィルタ(nは同定されるべき前記航空機の伝達関数の数に相当する)によって帯域制限されたランダムノイズまたはチャープ信号をフィルタリングするステップを含むオンラインシステム同定ステップ(9)によって前記伝達関数を生成するために、及び前記フィルタリングされたベクトル形式の応答を前記誤差信号から減じるために与えられる
ことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
パイロットまたはフライトコントロールシステムの命令(3、4)によってもたらされる動的構造負荷を低減するために、そのようなパイロットまたはフライトコントロールシステムの命令に関する情報が、前記励振を示す信号(x)に加えられる
ことを特徴とする請求項15から27のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−524547(P2009−524547A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551701(P2008−551701)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000445
【国際公開番号】WO2007/085378
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)