説明

航空機または宇宙船の構造用部品、および航空機または宇宙船の胴体部品配置構造

関連する胴体部(5)を連結させ、関連する胴体部(5)とほぼ一致する熱膨張係数を有する胴体部連結領域(10)と;関連する設置要素を連結させ、関連する設置要素とほぼ一致する熱膨張係数を有する内部連結領域(11)と;胴体部連結領域(10)と内部連結領域(11)を連結させる分離領域(12)とからなる航空機または宇宙船の構造用部品(2)であって、領域(10、12、11)の少なくとも1つが高い熱伝導抵抗(R13、R14、R15)を持つ構造用部品(2)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機または宇宙船の構造用部品、および航空機または宇宙船の胴体部品配置構造に関する。
【0002】
本発明と本発明が解決しようとする問題は、たとえば、フォーマ、縦通材等、所望のあらゆる構造用部品に適用できるが、以下、詳細な説明はレール状の構造用部品を参照して行う。
【0003】
航空機または宇宙船およびキャビンコンポーネントの内部での設置要素、システム設備、それらの負荷は、現在は主に、個別の「ブラケット」を介してこの種の航空機の胴体の一次構造に導入される。これらのブラケットは、典型的には、フォーマや胴体部に固定され、フォーマおよび胴体部が上述の設備および部品からの負荷を受ける。
【0004】
DE10 2006060364A1には、熱膨張係数の低いカーボンファイバー製のスキンと、熱膨張係数の高い構造用部品とを含む胴体部品配置構造が開示されている。この胴体部品配置構造は、熱伝導率の低いサーマルストッパーを具備し、該構造用部品がサーマルストッパーによりスキンに連結されている、この機械的構成はサーマルストッパーとして絶縁層を有する。これらの部品はいずれもリベット接続により連結される。この場合の難点は、一方で、大量の個別のパーツが必要となることであり、他方で、連結部には切断加工が必要とされ、それに伴うオンサイトでの設置時間や清浄手段もある程度必要となることである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、航空機または宇宙船の改良構造用部品を提供することである。本発明の構造用部品においては、上述の問題は存在しないか、あるいは顕著に低減されているうえ、利点もある。また、本発明は、航空機または宇宙船の胴体部品配置構造の提供を第二の目的とする。
【0006】
本発明によれば、これらの目的は、請求項1の技術的特徴を有する構造用部品および胴体部品配置構造により達成される。
【0007】
結果として、関連する胴体部と連結し、関連する胴体部とほぼ一致する熱膨張係数を有する胴体部連結領域を含む航空機または宇宙船の構造用部品が提供される。また、本構造用部品は、関連する設置要素と連結し、関連する設置要素とほぼ一致する熱膨張係数を有する内部連結領域をも有する。分離領域は、胴体部連結領域および内部連結領域との連結に用いられる。このうち少なくとも1つは、高い熱伝導抵抗を有する。
【0008】
本発明の根底にあるのは、上記部分の少なくとも1つが高い熱伝導抵抗を有し、他の部分は、その熱膨張係数が連結されることになる材料の熱膨張係数とほぼ一致するように、連結されることになる材料に適合していることである。
【0009】
このように、本発明は、特に前述の方法に対し、その部品の熱膨張係数にかかわらず、構造用部品に連結されることになる部品の材料全てに適用可能であるという利点を有する。
【0010】
胴体部連結領域と、分離領域と、内部連結領域とは、好ましくは1つの構造用部品として一体的に形成される。
【0011】
ワンピース構造用部品においてこの種の一体的な分離層を使用することで、大量の個別のパーツ、および掘削、バリ取り、洗浄、リベット打ち・ねじ止め等の複雑な機械的連結手段は、もはや必要とされなくなる。
【0012】
この場合、構造用部品は、共通のマトリクス材を有する複合部品として形成されることになる。結果として、たとえば、同様に複合部品として製造される胴体部の場合であれば、単純な方法で胴体部に構造用部品を連結することが可能である。この場合、胴体部連結領域は、胴体部となる胴体部複合材料と同一または類似の材料、たとえば、カーボンファイバーで構成される。
【0013】
胴体部が金属製である場合、胴体部複合材料は金属箔からなる。この構造用部品の内部連結領域の内部複合材料は、同様にして構成される。この場合、さらなる手段を取り、追加の層により連結部を強化することもある。
【0014】
一実施形態では、分離領域は、高い熱伝導抵抗を有する分離複合材料と、マトリクス材とを含む。この場合、分離複合材料は、たとえばガラスクロスとして形成されるのが好ましい。このガラスクロスは、たとえば、繊維複合部品の製造に使用されるプリプレグの形態で構成される。
【0015】
この構造用部品の好適な構成では、複合材料および部品は全て、たとえばエポキシ樹脂など、同一のマトリクス材から製造されることが非常に有利である。航空機製造において、たとえば、複合材料の別の層を積層することは標準法であり、専用の機械加工装置を利用することも可能である。
【0016】
全機能が、本発明に係わる構造用部品、すなわち、胴体部への連結部、絶縁層およびレール構造等の運搬構造に一体化されている。この構造用部品は、一体的に(ワンピースで)製造可能である。追加の連結要素を省略することで、組み立てを簡素化できる。補強要素のようにして、対応する胴体部(たとえば縦通材)に接着結合することもできる。本発明に係わる構造用部品は、胴体部または設置部品の熱膨張係数にかかわりなく、いかなる材料の組合せでも可能である。胴体部との連結部は、胴体部材料と同一の材料からなる。
【0017】
胴体部品配置構造は、上述の構造用部品の少なくとも1つを含む。
【0018】
以下、実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の好適な実施形態に係わる胴体部品配置構造の概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係わる胴体部を含む構造用部品の一実施形態の概略斜視図である。
【図3】図3は、図2の概略斜視図の概略断面図である。
【0020】
図中、類似の参照番号は、特に指定のない限り類似または機能的に同一の部品を示す。
【0021】
図1に、本発明に係わる胴体部品配置構造1の概略斜視図を示す。胴体部5は、航空機または宇宙船(図示無し)のスキンの形態で示されている。この胴体部5は、曲線を描いており、内部空間6(たとえば航空機または宇宙船のキャビン)は、湾曲の中心(図中右側)に向かって配置され、外部空間7付近のスキンから離される。胴体部5は長手方向(大体、図中左から右方向)に縦通材8により補強される。フォーマ9は、胴体部5の周辺方向に取り付けられる。構造用部品2は、この例においては縦通材8と平行に、縦通材8間に広がっている。構造用部品は、たとえば、内殻や配管部等の設置要素(図示無し)を構造用部品2の内側部分4に取り付けるために備えられる。構造用部品2は、胴体連結部3により、胴体部5に固定される。
【0022】
航空機または宇宙船の操縦中、内部空間6は通常空調管理されており、この場合、約20℃の一定温度に保たれている。外部空間は温度が異なる場合が多い。たとえば、約18℃の格納庫温度、時期や場所に応じてマイナスの温度(たとえば−15℃)やプラスの温度(たとえば+40℃)になることもある飛行場の外気温や、高い飛行高度では−55℃を超す外気温などが考えられる。これらの温度の数値は、絶対値とすべきではなく、外部空間7と内部空間6との温度の違いが、内部空間6の内部温度との関連で、大きく変化する場合があることを示すべきものである。
【0023】
図2は、本発明に係わる胴体部を含む構造用部品2の一実施形態の概略斜視図である。この例においては、胴体部は、航空機または宇宙船(図示無し)のスキンであり、たとえば、CFRPなどの複合材料から構成される。構造用部品2は、胴体連結部3により胴体部5の内面に取り付けられ、この場合は上翼と下翼から構成されている。この場合、これらの翼は、胴体部5に実質的に垂直な内部空間6に向かって伸びる。胴体連結部3は、胴体部連結領域10に連結され、分離領域12を通過して、内部連結領域11に連結される。内部連結領域11は、内側部分4の部品であり、設置要素を固定するために備えられる。これらは、内部連結領域12に接着結合されるか、リベット留めされるかまたはネジ留めされる。あるいはその他の連結方法により連結される場合もある。
【0024】
胴体部連結領域10は、胴体部複合材料13を含むが、分離領域12の分離複合材料15とは、材料、熱膨張係数および熱伝導抵抗の点で異なる。内部連結領域11の内部複合材料14も、分離複合材料15とは異なる。胴体連結部3、胴体部連結領域10、分離領域12および内部連結領域11は、複合部品または繊維複合部品として一体的に(ワンピースで)形成される。この場合、複合材料13、14および15は、それぞれ繊維または積層半加工複合材料を形成するが、この繊維または積層半加工複合材料は、たとえば、エポキシ樹脂等のマトリクス16であらゆる面が囲まれ含浸される。構造用部品2は、たとえばプリプレグにより、繊維複合部品として製造される。言うまでもなく、他の方法も可能である。この場合、複合材料13、14、15は、半加工品として所定の形状に置かれ、マトリクス16に含浸された後硬化される。強化層や対応する取り付け部分の挿入部同様、あらゆる形状が可能である。
【0025】
構造用部品2の熱転写作用について、図3を参照してさらに詳細に説明する。図3は、図2の概略断面図である。
【0026】
個々の部分10、12、11は、垂直の点線により分けられている。熱伝導抵抗の回路R5、R5−3、R13、R14、R15は、個々の部分10、12、11および胴体部5にそれぞれ対応し、この配置で下部に備えられる。
【0027】
内部空間6と外部空間7との上述した温度の違いが、この2空間で熱を伝導させる。周知のように、熱伝導は、放射、伝導および対流を介して行われる。ここでは、熱伝導のみを考慮し、個々の部分10、12、11の熱伝導抵抗R5、R5−3、R13、R14、R15と、この場合の部品について説明する。
【0028】
繊維複合材料(たとえば、CFRP)製の胴体部5の場合、胴体部複合材料13も、対応する繊維複合材料(たとえば、CFRP)で作成する。胴体部5が金属製であれば、胴体部複合材料13も、金属糸および/または金属箔/層の形態で同一または類似の金属で構成される。この結果、胴体部5および構造用部品2の胴体連結部は、ほぼ一致する熱膨張係数を持つことになる。分離領域12の分離複合材料15は、たとえば、ガラスクロスであり、内部連結領域の材料14は、設置要素(図示無し)に対応する複合材料(たとえば、金属および/または繊維複合材料)である。内部連結領域の複合材料14と設置要素の熱膨張係数は、ほぼ一致している。このように、胴体部5と構造用部品2との間と、設置要素と構造用部品2との間には、実質的なストレスがないか、または低減されたストレスのみが存在する。
【0029】
構造用部品2を介して、たとえば、熱源として約20℃の内部空間6からヒートシンクとして約−55℃の外部空間への熱の伝導が生じる。これは、図中略図として下部に描かれた熱伝導抵抗系に示されている。熱伝導抵抗値は、相対的にのみ与えられ;特定値は、関連する表から抽出される。内部連結領域11は、熱伝導抵抗R14を有するが、これは金属複合材料の場合は比較的低く、繊維複合材料の場合は比較的高い可能性がある。分離複合材料15の熱伝導抵抗R15がそれに続き、ガラスクロスの例によれば、非常に高い。分離複合材料は、このように、外に放出される熱に対するバリアを形成する。熱伝導抵抗R13は、胴体連結部複合材料13とその材料に対応しているため、CFRP材料の場合は比較的高く、金属の場合は比較的低い可能性がある。熱抵抗R5−13は、胴体連結部3と胴体部間の変遷を示すものであり、熱抵抗R5は、胴体部5の材料に対応し、CFRP材料の場合は比較的高く、金属の場合は比較的低い。
【0030】
このことから、設置要素および胴体部5の構成にかかわらず、分離複合材料15の高い熱伝導抵抗R15の形で、常に熱障壁が存在し、構造用部品2における圧縮を大幅に排除できることがわかる。
【0031】
ワンピース構造用部品2は、構造用部品内部の高い断熱性とともに、上述の統合機能の利点を併せ持つ複合部品である他の自動車部品と同一または類似の製造方法で、様式上の自由度が高い部品を提供する。
【0032】
以上、本発明を好適な実施形態に基づき説明してきたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、多種多様に異なる方法で組み合わせ、改変することが可能である。
【0033】
たとえば、個々の部分10、12、11は、配置の際に異なる展開が可能である。また、繰り返し連続して配置することも可能である。
【0034】
関連する胴体部5に連結され、関連する胴体部5とほぼ一致する熱膨張係数を有する胴体部連結領域10と;関連する設置要素に連結され、関連する設置要素とほぼ一致する熱膨張係数を有する内部連結領域11と;胴体部連結領域10と内部連結領域11とを連結させる分離領域12;とを含む航空機または宇宙船の構造用部品2の場合、上記部分10、12、11の少なくとも1つが高い熱伝導抵抗R13、R14、R15を有する。胴体部品配置構造1には、この種の構造用部品2が少なくとも1つ含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 胴体部品配置構造
2 構造用部品
3 胴体連結部
4 内側部分
5 胴体部
6 内部空間
7 外部空間
8 縦通材
9 フォーマ
10 胴体部連結領域
11 内部連結領域
12 分離領域
13 胴体部複合材料
14 内部複合材料
15 分離複合材料
16 マトリクス材
R5 胴体部の熱伝導抵抗
R5−3 胴体部と胴体連結部間を移行する熱伝導抵抗
R13 胴体部複合材料の熱伝導抵抗
R14 内部複合材料の熱伝導抵抗
R15 分離複合材料の熱伝導抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関連する胴体部(5)を連結させ、該関連する胴体部(5)とほぼ一致する熱膨張係数を有する胴体部連結領域(10)と;
関連する設置要素を連結させ、該関連する設置要素とほぼ一致する熱膨張係数を有する内部連結領域(11)と;
前記胴体部連結領域(10)と前記内部連結領域(11)を連結する分離領域(12)とを含む航空機または宇宙船の構造用部品(2)であって、
前記領域(10、12、11)の少なくとも1つが、高い熱伝導抵抗(R13、R14、R15)を有する材料構造である構造用部品(2)。
【請求項2】
前記胴体部連結領域(10)、前記分離領域(12)および前記内部連結領域(11)は互いに一体的に形成される請求項1に記載の構造用部品(2)。
【請求項3】
前記構造用部品(2)は、共通のマトリクス材(16)を有する複合部品として形成される請求項1または請求項2に記載の構造用部品(2)。
【請求項4】
前記分離領域(12)は高い熱伝導抵抗(R14)をもつ分離複合材料(14)と、前記マトリクス材(16)とを含む請求項3に記載の構造用部品(2)。
【請求項5】
前記分離複合材料(15)はガラスクロスとして形成される請求項4に記載の構造用部品(2)。
【請求項6】
前記胴体部連結領域(10)は、前記胴体部(5)に対応する材料からなる胴体部複合材料(13)と、前記マトリクス材(16)とを含む請求項3〜5の少なくとも1つに記載の構造用部品(2)。
【請求項7】
前記胴体部(5)が複合材料から構成される場合に、前記胴体部複合材料(13)は前記胴体部(5)と同一の前記複合材料からなる請求項6に記載の構造用部品(2)。
【請求項8】
前記胴体部(5)が金属材料から構成される場合に、前記胴体部複合材料(13)は金属箔からなる請求項6に記載の構造用部品(2)。
【請求項9】
前記内部連結領域(11)は、前記関連する設置要素とほぼ一致する熱膨張係数を有する内部複合材料(15)と、前記マトリクス材(16)とを含む請求項3〜8の少なくとも1つに記載の構造用部品(2)。
【請求項10】
請求項1〜9の少なくとも1つに記載の構造用部品(2)を少なくとも1つ含む胴体部品配置構造(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509811(P2012−509811A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537927(P2011−537927)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065227
【国際公開番号】WO2010/060824
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany