説明

航空機エンジンモジュールの搬送用台車

準備ステーション(3)から組立ステーション(4)まで航空機エンジンモジュール(2)を搬送するように設計された台車(1)は、ドリー(8)上に、ボール上を摺動することによって水平方向に移動可能とされることが可能な補強構造体(10)と、2つの垂直可動ブラケット(24)と、モジュールの支持体(31)の下で摺動するための可動指状部(27)と、を含む。モジュール(2)は、台車(1)によって安全に支持されており、持ち上げおよび搬送されることが可能であり、その内部が空であることを確認するために一時的に倒すことも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機エンジンモジュールの搬送用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンモジュールは嵩張って重いが、繊細なアイテムなので、組み立てられる前にこれらのモジュールを搬送することは困難な場合が多く、これらはエンジンを組み立てるために、隣り合うモジュールとドッキングするための正確な位置に置かれなければならない。加えて、回転子と固定子との間に異物が導入されておらず、したがって動作したときにエンジンを損傷する可能性がないことを確認するために、実装される前にいくつかのモジュールは反転される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2825477号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの動作を遂行する従来の方法は、非専用台車または車輪付き荷台上にモジュールを配置するためにホイストを使用すること、エンジンのアセンブリの場所まで台車を移動させること、そして再びこれを反転してドッキングさせるためにホイストを用いてモジュールを持ち上げることからなる。これらの動作は、時折相当な力を使う必要があるので、厄介で困難で、骨が折れる。これらは、二人の人間の介入を必要とする。最も繊細な点は、モジュールが衝撃を受けずに台車上に載置されるとき、モジュールが一時的に反転されるとき、および組み合わせられるモジュールにドッキングされるとき、2ミリメートル以内の精度が要求されるときである。その結果、手順はかなり長いものとなる。
【0005】
米国特許第2825477号明細書は、車輪付きフレーム、2つの伸長式垂直アーム、およびアームの上で横軸によって支持される架台を含む、航空機エンジンを共有するための台車を記載しており、架台の上にエンジンが実装および取り付けられてもよく、可変傾斜を有するように横軸を中心に回転する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は特定のタイプの搬送台車に関し、これは特に航空機エンジンモジュール向けに設計され、これらが準備された作業ステーションであってもよい元の場所と、隣り合うモジュールの組み立て場所との間の移動を容易にするようにも設計されている。これは、その状態を確認するためにモジュールを一時的に傾ける必要があるという特定の制約を、満たす。
【0007】
一般的な形態において、これは車輪付きフレーム、および実装されたモデルをフレーム上に受容するための補強構造体を含む、航空機エンジンモジュールを搬送するための台車に関し、補強構造体は、受容構造体の各々が垂直移動アームを含む、台車の2つの側面上に位置する2つのモジュール受容構造体と、ブラケットが台車の横軸を中心に回転する、アームの上端部のブラケットと、台車の横方向にブラケット上を移動するモジュール支持指状部と、指状部上にモジュールを係止させる手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
したがって指状部は、これらが互いに近接して、モジュールを握持して持ち上げることが可能な位置と、これらが後退して、モジュールを都合よくその間に位置決めさせることが可能な位置との間で、移動可能である。係止手段は、ブラケットが反転されているときでも、指状部上にモジュールを保持する。ブラケットを持ち上げることにより、モジュールが握持されることが可能である。
【0009】
モジュールは、シャフトがブラケットに属する(または逆の)ときにアームに属する回転装置を用いて、それによってブラケットがアームに接続されるシャフトの回転を直接制御することによって、通常の水平位置と、不純物が落下することが可能な垂直位置との間で、円の4分の1だけこれを回転するのに十分な大角度を通じて、回転可能である。指状部および係止手段は、たとえば平面との留め具、または埋め込まれた多角形断面、すなわち正方形断面の調整によって、これらと接触しているモジュール支持手段と協働することにより、タイミングの悪いモジュールの回転運動を停止するために、設計されている。
【0010】
モジュールの受容または取り外しの間の台車の位置は、位置決め装置を動作させることによって調整および保持されることが可能であり、これはフレームの長手方向面に位置する傾斜または面取り縁を備えるスロット、および固定された留め具で構成されることが可能である。
【0011】
ブラケットを正確に位置決めするのに非常に役立つ、台車の、またはむしろ補強構造体の位置のより精密な調整は、補強構造体がその上を摺動するフレーム上に組み立てられたボールと、フレーム上に補強構造体を締め付けるためのクランプとの組み合わせを、特徴とする:すると、補強構造体をフレーム上に固定すること、あるいは望ましいと思われるいずれかの正確さで平面のいずれの方向にもその上で移動させることが、可能である。垂直移動アームと組み合わせることで、ブラケットを全ての空間的方向に移動させることが可能であり、これによってモジュールの握持を容易にすることも可能である。
【0012】
本発明の好適な設計によれば、指状部はブラケットの軸を中心に回転する。係止手段については、これらは指状部に実装された、閉鎖装置を備えるクランプを含むことができる。
【0013】
ここで本発明は、以下の図面を参照して、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】台車およびその周辺の全体図である。
【図2】フレームと補強構造体との間の接合を示す詳細図である。
【図3】台車上のモジュールの支持手段をより具体的に示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
台車は、図1において参照番号1が付されている。そしてこれはモジュール2を支承し、この場合これは、航空機エンジンの、ファンを備える主要なアセンブリモジュールである。モジュール2は固定されたブラケット3上に事前に実装されており、これは台車1に載せられてアセンブリガントリ4の方まで搬送され、そこで別のモジュール5とドッキングしなければならないか、または直接ガントリ4まで搬送されなければならない。ステーション3は、モジュール2が最初に摺動させられる傾斜した円柱7がそこから立ち上がるブラケット6で構成される。
【0016】
台車1は、下部フレーム8、フレーム8に実装されて台車1が移動できるようにする車輪9、および台車8に実装された補強構造体10を含む。モジュール2は、補強構造体10によって、台車1上に静止する。図2は、補強構造体10が台車8上に摺動しながら実装されている様子を示しており、これらを包囲する低壁12によって台車上に保持されるボール11の上に平坦な下面を置いて、タブ19上に位置している。この設計は、補強構造体10をモジュール2に対して、またモジュール2を隣り合うモジュール5またはガントリ4に対して高い精度で位置決めするために、台車8を固定したまま高い精度で補強構造体10が移動できるようにし、これによって、プロセスの厳しい段階を容易にする。しかしながら、搬送中、補強構造体10はこれらを接続するクランプ13によって台車8にしっかりと取り付けられたまま保持され、これらは周知のタイプのトグルクランプであってもよく、その各々はスキッド15で終端する可動ロッド14を含み、これは、補強構造体に実装され、カムで終端するレバーからなる、レバー16の作用によって台車8の下に押しつけられることが可能である。台車8および補強構造体10は、ロッド14が引かれると互いに対して押しつけられる。図示されないが、その他のクランプが、車輪9を係止するために追加されることも可能である。
【0017】
補強構造体10は、台車1の側面の各々に、図3により詳細に示されている、モジュール2を受容する構造体17を支承する。各受容構造体17は、ほぼ菱形の、タブ19で終端している、剛性金属部材を備えるフレーム18を含む。フレーム18は、垂直に指向しているアーム20をその中央に担持し、これはウォームネジ23で終端している変速機22によってこれを制御するハンドル21の作用の下、垂直に摺動もする。アーム20の上部は、厚板の形状のブラケット24を担持しており、これは台車1の長手方向面に合わせられ、ブラケット24に属するシャフト25によってアーム20に接続されており、台車1の横方向に合わせられ、4分の1以上の回転によってブラケット24を上向きに傾斜させるように、アーム20に属する空気ドライバ26によって駆動されることが可能である。ブラケット24は、前端部に、図示された位置において、垂直方向に位置決めされたシャフト28を中心に回転可能な指状部27を、担持する。その上面は、たとえばピン30からなる閉止装置がその分岐部を通じて実装されるときに、閉鎖容積の限界を定めることが可能なクランプ29を、支持する。クランプ29の開口部は台車1の中心に向かって合わせられており、そして指状部27は台車1の前方に向かって合わせられている。
【0018】
モジュール2は、正方形断面を備える2つのロッド31を支承しており、これらは半径方向逆向きに、そしてほぼ水平に合わせられており、元の位置に向かう方向で、当業者にとって周知の装置に属しており、その握持を容易にするためにモジュール32内に埋め込まれ、その後取り外されることが可能である。多角形断面を有し、同一の断面のクランプ29内に適合したロッド31は、モジュール2をしっかりと保持し、これがタイミング悪く回転するのを防止する。
【0019】
台車1がどのように使用されるかの説明が、ここに示される。これはステーション3の近くにもたらされ、モジュール2はもともとその円柱7上に位置している。台車1の位置は、その前縁にあるフレーム8のスロットからなり、台車1が前進するにつれて、ステーション3に対する所定位置の床にくぼんだエンボス33を貫通する、溝32によって調整されることが可能である。傾斜または面取りされている、溝32の側方境界は、エンボス33上を摺動し、ステーション3に対して台車1をセンタリングする。接近移動は、台車1を停止するための停止レール34によって停止されるが、これは図示されない、モジュール2の下部地点に対して、ブラケット24のうちの1つにしっかりと取り付けられている。
【0020】
すると、台車1はモジュール2の受容位置に非常に近くなる。その位置は、ボール11上で補強構造体10を移動させることによって、そしてクランプ13を締め直すことによって、調整される。ブラケット24の高さは、アーム20を個別に動かすことによって調整される。指状部27は、これらが台車1の前方を指す位置から、互いに向かって内向きに横方向に指し、クランプ29がロッド31を包囲する位置へ、回転させられる。ピン30は、これらのロッドを完全に固定するように、位置決めされる。アーム10のわずかな上方移動は、モジュール2が円柱7から持ち上げられることを可能にし、この後台車1は、モジュール2を取り外すために移動可能となる。空気ドライバ26は、その軸を垂直方向に位置決めすることによってモジュール2を倒すためにガントリに到着する前に、およびその回転子と固定子との間に導入された可能性のある全ての不純物を落下させる前に、スイッチを入れられる。逆方向の倒す動作はその後、再びモジュール2の回転軸を水平にするために、遂行される。モジュール2の支持は指状部27の平面上のロッド31の平面によってなされるので、倒す動作は妨害されずに遂行される。台車1はガントリ4に隣接して位置し、ここで溝32または別の長手側面に位置する同等の溝は、エンボス33に匹敵するエンボスを用いてまだ動作されることが可能である。モジュール2の位置は、モジュール2が全方向のこれらの移動によって隣り合うモジュール5とドッキングするように、フレーム8に対して補強構造体20を再び移動させることによって、およびアーム10を移動させることによって、調整される;この後モジュール2および5の組み立てが続いてもよく、その後クランプ29は解除され、指状部27はロッド31から回収される。台車1は取り外される。ホイストは使用されない。他のモジュールがまだ実装されていない場合には、全く同じやり方で、モジュール2はガントリ4の支持要素上に直接組み立てられることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機エンジンモジュール(2)を搬送するための台車(1)であって、車輪付きフレーム(8)、およびフレーム上に実装されたモデルを受容するための補強構造体(10)を含み、補強構造体は、各々が垂直移動アーム(20)を含む、台車の2つの側面上に位置する2つのモジュール受容構造体(17)と、台車の横軸を中心に回転する、アームの上端部のブラケット(24)と、台車の横方向にブラケット上を移動する、モジュール支持指状部(27)と、モジュールを係止させる手段(29、30)と、を含むことを特徴とする、台車。
【請求項2】
補強構造体(10)の摺動支持のためのボール(11)であって、フレーム(8)上に実装されている、ボール(11)と、フレーム上に補強構造体を締め付けるためのクランプ(13)と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。
【請求項3】
指状部(27)は支持軸(28)を中心に回転することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。
【請求項4】
係止手段は、指状部に実装された、閉止装置(30)を備えるクランプ(29)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。
【請求項5】
フレーム(8)は、位置決め装置(32)が装着された縁を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。
【請求項6】
位置決め装置は、傾斜または面取り側方境界を備えるフレームの縁のスロットからなることを特徴とする、請求項5に記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。
【請求項7】
モジュール(2)を停止されるための留め具(34)を含むことを特徴とする、請求項5または6のいずれかに記載の航空機エンジンモジュールを搬送するための台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511642(P2013−511642A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539343(P2012−539343)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067857
【国際公開番号】WO2011/061306
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)