説明

航空機用ギャレーのコントロールシステム

【課題】ワイヤー通信に航空機規定上の制約がある航空機用ギャレーにおいてワイヤー無しの可視光と赤外光を使った通信ネットワークによるコントロールシステムを構築する。
【解決手段】航空機用ギャレー1に受光素子及び赤外線発光素子を備えたインサート機器6a〜6cが設置され、航空機用ギャレー1又はその周辺にインサート機器6a〜6cを制御する発光パネル4、赤外線受光素子5及び表示/操作パネル3を備えたギャレーコントローラ2が設置される。ギャレーコントローラ2の発光パネル4からインサート機器6a〜6cの受光素子への可視光通信データの送受信と、インサート機器6a〜6cの赤外線発光素子からギャレーコントローラ2赤外線受光素子5への赤外光通信データの送受信とにより、ギャレーコントローラ2とインサート機器間5の相互通信機能、及びギャレーコントローラ2からインサート機器6a〜6cへのリモート制御機能が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機用ギャレーのコントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用の厨房(以下「ギャレー」と称す)には、各種のギャレー搭載機器(以下「インサート機器」と称す)が存在している。インサート機器にはその機器専用の操作パネルが備わっており、機器の操作は、通常、この操作パネルを通して行われている。そのために、複数のインサート機器に対して、統括的に操作指示を与えて動作させたり、集中的に監視するようなことはできなかった。このため、これらのインサート機器を短時間にうちに手際良く正しく使いこなすコントロールシステムが要望されている。
しかしながら、こうしたコントロールシステムを実現するには、航空機内に何らかの通信システムを構築して、各インサート機器とコントローラ(表示/操作パネル)との間で頻繁な情報交換ができるようにする必要がある。航空機の機体側で利用されている既存の通信システムは、複雑で厄介な航空機用の通信規制を受けるために、インサート機器とコントローラ間の通信システムを簡単に構築することができなかった。
【0003】
このため、ギャレー内で簡単に構築することができる、ローカルな通信網の早期構築と、それによりギャレーコントローラとインサート機器間で情報交換をし、インサート機器の操作制御や動作状況の監視等をコントローラ上で簡便に行うことができる、航空機用ギャレーコントロールシステムの構築が切望されていた。
【0004】
航空機用ギャレーコントロールシステムの通信手段としてCANバス採用する提案がなされARINCにて審議された(ARINC PROJECT PAPER 812 ; DEFINITION OF STANDARD DATA INTERFACES FOR GALLEY INSERT (GAIN);EQUIPMENT; CAN COMMUUNICATION )が、未だ正式には発令には至っていない。このARINC812の提案では、CANバスのインターフェースをインサート機器とマスターとなるMGCU(Master Galley Contro1 Unit) 間でGalley Data Busのネットワークを構築し、情報交換のための相互通信を行い、必要な情報はMGCUを経由して機体側のネットワークに接続され、機体側と情報交信を行うという内容である。特に注目されているのは、ネットワークを通して、インサート機器が一斉に使われる食事滞の総消費電力を、スタート時間を調整することで総消費電力のピークを抑え分散化することができる点で、機体側の発電機の容量を低減し、省エネルギー化を実現する上で不可欠な方法と言われている。
【0005】
また、このGalley Data Busのネットワークを利用して、ギャレー内のインサート機器のコントロールとしてローカルに利用する提案もあった。これは、インサート機器にCANBUSのインターフェースの追加と、ギャレー本体にCANBUSの配線を施し、前記MGCUを追加することで実現可能である。
【0006】
一方、上記CANBUSのインターフェースを使う以外の方法として、照明光通信システムの考案がされており、照明機器の多様化と共に最近注目されてきている。大容量のデータを高速で伝送することを可能にした照明光通信システムの一例が特許文献1に記載されている。この照明光通信システムでは、送信装置は、送信すべきデータに応じて変調された変調光を有機EL光源より出射する。受信装置は、有機EL光源より出射された変調光を受光して電気信号に変換し、この変換された電気信号からデータを復調する。照明光通信システムの照明用光源として、高速応答性を材質的な特長とする有機EL素子を用いているので、例えば白色LEDと比較して、単位時間当たりのデータ送信量を高めることができ、大容量のデータを高速で伝送することを可能にしている。
【0007】
また、光を用いた通信に用いられ通信速度を高速にした発光装置及びそれを備える通信システムが提案されている(特許文献2参照)。この通信システムによれば、発光装置は入力されたデータに基づいて変調された光からなる信号光を発信することが可能な発光体を備えており、発光体はエレクトロルミネッセンス(EL)素子とされている。また、発光体は、変調がされない光からなる非信号光及び信号光を期間を異にして発し、非信号光は照明としての機能も果たす。更に、信号光は照明としての機能も果たしている。また、受光素子に送信された情報を記憶する手段を接続することによって、受光素子側における送信情報の記憶、書き込みを可能にしている。店頭に置かれている商品等に貼られているバーコードパターンを光の照射のみで書き換えることが可能になる。
【0008】
受信装置に電力の供給が不要な可視光通信の受信装置及び可視光通信システムが提案されている(特許文献3参照)。これによれば、データ送信装置は、受信されたデータを変調し、照明光(LED素子)の搬送波として変調し、データ受信装置に送信する。データ受信装置は、受信された照明光を太陽電池パネルの出力変化で検出し、検出された照明光を復調し、復調されたデータを表示部に表示する。
【0009】
一方、赤外線を使った通信手法は、広く一般家庭で普及している。また可視光を使った可視光通信も、最近、LEDや有機EL等、光の即応性の良い素子を使った照明の普及にあわせて注目されてきている。可視光通信コンソーシアム(VLCC) と赤外線データ協会(IrDA)は、IrDA通信方式と互換する「可視光通信標準規格」1.0版を2009年3月6日に発表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−271317号公報
【特許文献2】特開2003−115803号公報
【特許文献3】特開2008−227944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ギャレー内で使用するインサート機器を対象とした、コントロールシステムを実現するためには、前記、ARINC812の提案のように、何らかの通信システムを構築して、各インサート機器と機体側のコントローラ(表示/操作パネル)との間で頻繁な情報交換ができるようにする必要がある。ところが、機体側のコントローラは、機体側の制御操作を行うために既にネットワークが構築されており、このネットワークに接続し機体側と情報交換するためには、機体側の通信規定に合致した、信頼性の高いシステムが要求される。このため、機体側と一体化されたコントロールシステムを簡単にかつ安価なコストで実現することができないという問題があった。
【0012】
また、機体側との通信を断念し、ギャレー内のインサート機器とコントローラ間のローカルな通信システムとして、前記ARINC812の提案のように、CANBUSを使ってのネットワーク構築では、ワイヤー接続による障害が発生する恐れがある。ギャレー内のネットワーク環境を含めた各電子機器に対し、航空機規定、例えばRadio Technical Commission for AeronauticsのSpecial Committeeによって制定された、RTCA/DO・160という規格に従った、一連の標準的環境試験条件の規定を満たすことが要求される。特に、RTCA/DO・160の中のSection21.0では、無線周波数エネルギー放射の規格があり、電子機器から洩れる電磁気的雑音の放射、伝搬が規制されており、この対応のために多くの労力と対策コストを費やしているのが現状である。CANBUSのインターフェースでも例外ではなく、上記無線周波数エネルギー放射の規格による規定を簡単に逃れることは難しい。
【0013】
このように、簡便で安価なネットワークシステムを構築するには、上記のような課題があり、未だ実現に至っていない。このため、ワイヤーによる電気信号通信を一切使用せずに、ワイヤー無し通信ネットワークの構築がギャレーのコントロールシステムとして適当ではないかと考えられる。ギャレー内の狭い空間であれば、光を使ったワイヤー無しでの通信でも十分機能する方法が考えられる。インサート機器とコントローラ間の相互通信を行うには、二種類の光を使用し双方向通信を実現する必要がある。例えば、可視光と赤外光を適切に使用することも考えられる。
【0014】
本発明は、ワイヤー無しの可視光又は赤外光通信ネットワークを構築する方法についであり、ネットワーク通信やスペースが制限され、且つワイヤーによる通信に航空機規定による制約がある航空機用ギャレーにおいて、航空機搭載機器の制約を受けることなく、ネットワーク構築する方法を提案するものである。
この発明の目的は、ワイヤー無しで光を使った航空機用ギャレーにおける通信ネットワークによるコントロールシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、この発明による航空機用ギャレーコントロールシステムは、航空機用ギャレーに受光素子及び赤外線(IR)発光素子を備えたインサート機器が設置され、前記航空機用ギャレー又はその周辺に当該インサート機器を制御するため発光パネル、赤外線(IR)受光素子及び表示/操作パネルを備えたギャレーコントローラが設置されており、前記ギャレーコントローラの前記発光パネルから前記インサート機器の前記受光素子への可視光通信データの送信と、前記インサート機器の前記赤外線(IR)発光素子から前記ギャレーコントローラの前記赤外線(IR)受光素子への赤外線通信データの送信とにより、前記ギャレーコントローラと前記インサート機器間の相互通信機能、及び前記ギャレーコントローラから前記インサート機器へのリモート制御機能を備えることを特徴としている。
【0016】
この航空機用ギャレーコントロールシステムによれば、航空機用ギャレーに設置されたインサート機器と、航空機用ギャレー又はその周辺に設置されたギャレーコントローラとが、ワイヤー無しで、光又は赤外線によって相互に通信又はギャレーコントローラからインサート機器へのリモート制御が可能になる。
【0017】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記ギャレーコントローラの前記発光パネルは、前記インサート機器への前記可視光通信データのための発光に加えて、前記航空機用ギャレー内の照明のための発光機能を併せ持つことができる。発光パネルは、可視光通信機能と航空機用ギャレー内の照明機能とを兼ねることができ、機器の兼用によって航空機における部品点数の削減、重量軽減、省スペースを図ることができる。
【0018】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記インサート機器の前記受光センサと前記赤外線発光素子を前面パネルに設け、前記ギャレーコントローラの前記発光パネル及び前記赤外線(IR)受光素子を、前記各インサート機器の前面パネルと対面して設置する、又は前記航空機用ギャレー又はその周辺の天井又はそれに近い高所に設置することができる。前記ギャレーコントローラの前記発光パネル及び前記赤外線(IR)受光素子を前記各インサート機器の前面パネルと対面して設置することにより、ギャレーコントローラと各インサート機器の前面パネルとの間で通信用の可視光及び赤外光が遮られる可能性を可及的に少なくして通信を行うことができる。また、前記ギャレーコントローラの前記発光パネル及び前記赤外線(IR)受光素子を前記航空機用ギャレー又はその周辺の大略天井方向の適宜箇所に設置することにより、各インサート機器に対して上方に位置する天井又はそれに近い高所から、若しくは天井又はそれに近い高所に向かって通信用の可視光及び赤外光が遮られる可能性を可及的に少なくして通信を行うことができる。
【0019】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記インサート機器の前記受光センサと前記赤外線発光素子の上面に、入射又は出射する可視光及び赤外光の偏向角を変える偏向角変換素子を設けることができる。インサートの前面パネルに装着した受発光素子の上に光偏向素子を取り付けて使用することで、通信の手段として可視光及び赤外光を使った場合の光の方向性の問題の解消、即ち、偏向を揃えることで通信精度を向上させることができる。
【0020】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記インサート機器は、前記リモート制御機能の実行に際して、前記ギャレーコントローラから前記リモート制御機能を可能にするための情報の提供を受けると共に、与えられた一定時間内に前記リモート制御機能に関する自己の動作情報を前記ギャレーコントローラに発信するものとすることができる。ギャレーコントローラからインサート機器へのリモート制御機能を実施する際の、ギャレーコントローラとインサート機器との間の情報の遣り取りを行う。
【0021】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記ギャレーコントローラの前記表示/操作パネル上には、前記インサート機器の前記リモート制御機能における動作設定や操作を行うための操作スイッチを設けることができる。
【0022】
前記リモート制御機能おいて情報の遣り取りを行う航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記インサート機器から発信された情報を記憶するメモリーを備えており、前記ギャレーコントローラは、受信した前記情報のうち必要な情報を前記表示/操作パネルに表示し、前記各インサート機器の動作状況を一同に監視することができる。また、前記ギャレーコントローラは、前記インサート機器の前記動作状況の監視に基づいて、必要に応じた警報や警告を周囲に発報することができる。
【0023】
この航空機用ギャレーコントロールシステムにおいて、前記ギャレーコントローラの前記発光パネルの代わりに、前記表示パネルの背面発光を前記可視光通信データの送信用として代用させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明である航空機用ギャレーコントロールシステムは上記のように構成されているので、ギャレー内に構築されるネットワークがワイヤーを使ったものである場合には、航空機規定の制約を受けるために多大な時間と費用を要し、費用対効果が低くなってしまうのに対して、ワイヤー無しで、可視光や赤外線等の光を使った通信ネットワークが構築されることにより、航空機規定の制約を受けずにネットワークを組むことができる。したがって、通信ネットワーク構築費用を抑えることで費用対効果を引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムが適用された航空機用ギャレーとコントロールシステム光通信のイメージ図である。
【図2】図2は、図1に示す航空機用ギャレーコントロールシステムにおけるコントローラ(マスター)とインサート機器(スレーブ)間のデータ通信イメージ図である。
【図3】図3は、図1に示す航空機用ギャレーコントロールシステムのブロック図である。
【図4】図4は、図3に示す航空機用ギャレーコントロールシステムにおけるインサート機器とギャレーコントローラの設置イメージ図である。
【図5】図5は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムにおけるコントローラの表示/操作パネルのイメージ図である。
【図6】図6は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムにおけるインサート前面パネルの偏向角変換素子のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面に基づいて、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムの実施例を説明する。
【0027】
図1には、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムが適用された航空機用ギャレーの概要一例が斜視図として示されている。航空機用ギャレーは、航空機内に設けられる厨房設備であって、食品の冷蔵・冷凍保存、加熱調理、又はコーヒー・紅茶等の飲料の調理等を行う、オーブン、電子レンジ、コーヒーメーカー、冷凍庫、冷蔵庫等のインサート機器(ギャレー搭載機器)を多数備えている。図1に示すギャレーには、インサート機器は示されていないが、上段の各棚部には、オーブン、電子レンジ、コーヒーメーカー等の厨房機器が装填され、下段には、冷凍庫、冷蔵庫や各種収納機器が配置されるのが一般的である。
【0028】
航空機用ギャレーは、旅客機のスペースを大きく取らないようにコンパクトに構成されている。一方、航空機用ギャレーには、乗務員が乗客のニーズや乗客へのサービスに応じて常時出入りするところであり、各種インサート機器への食品・飲料の投入、調理操作、取り出し等の作業が頻繁に行われる。したがって、各インサート機器の操作を、航空機用ギャレー内に立ち入ってそれぞれ操作するのは煩わしいところであり、ギャレーコントローラで纏めて操作できれば、こうした航空機用ギャレー内の混雑が解消される。
【0029】
図1においてギャレーコントロールシステムの可視光及び赤外光通信イメージを示すように、航空機用ギャレー1の所定の箇所にギャレーコントローラ2の表示/操作パネル3が配置されている。ギャレーコントローラ2は、表示/操作パネル3における操作を介して、複数のインサート機器(好ましくは、ギャレーに搭載されるすべての機器)を操作対象としており、相互間の通信、或いは遠隔(リモート)でインサート機器の動作を制御することが可能である。可視光通信は、可視光光度を短期間(約lms以下)に変化させても、人間の目ではこの変化を感知することができないという盲点を利用した通信手段の一つである。
【0030】
インサート機器と通信を行うための送受信を司るためにギャレーコントローラ2が備える発光パネル4や赤外線(IR)受光素子5は、航空機用ギャレー1又はその周辺において、天井又はそれに近い高所に設置されている。航空機用ギャレー1に配設された各インサート機器との間では、こうした高い位置からの通信用の可視光及び赤外光の送受信が行われるので、航空機用ギャレー1に出入りする乗務員によって可視光及び赤外光が長期間に渡って遮られて送受信不能になる状態を回避することができる。
【0031】
図2は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムにおける、コントローラ(マスター)とインサート機器(スレーブ)間のデータ送信の順番を示す表である。データ通信の転送データ量を7Bit、フレーム長を60Bite、スレーブの台数を8台、データ通信速度を9600bpsとしたときの、マスターと8台のスレーブ間で通信が一巡する1サイクルに要する時間が0. 8秒であることを示している。マスターから特定のスレーブに対して通信が行われた後に、当該スレーブからマスターへの返信が行われ、そうした送受信が各スレーブについて順次行われることが示されている。インサート機器は、リモート制御機能の実行に際して、ギャレーコントローラ2からリモート制御機能を可能にするための情報の提供を受けると共に、与えられた一定時間内にリモート制御機能に関する自己の動作情報をギャレーコントローラに発信する。
【0032】
図3は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムのシステムブロックの一例を示す図である。ギャレーコントローラ2は、表示/操作パネル3、発光パネル4、赤外線受光素子5の他にCPU11を備えており、CPU11には、キー・マトリックス13に接続されるとともに入力データ14の入力を受け且つ出力データ15を出力する入出力インターフェース12、ROM16、表示/操作パネル3を制御する表示・操作パネルデータプロセッサ17、メモリーとしてのRAM18、電源20から電源供給を受けて発光パネル4を駆動するドライバ21を制御するトランスファデータプロセッサ19、及び赤外線受光素子5が受信したデータを処理するデータプロセッサ22が接続されている。
【0033】
一方、インサート機器6側では、ギャレーコントローラ2側の発光パネル4から送信される可視光通信データ9を受信する受光素子である受光センサ7と、ギャレーコントローラ2側の赤外線受光素子5に赤外光通信データ10を送信する赤外線発光素子8を備えている。通信データで光度変調された可視光は、受光センサ7としてアモルファスシリコン等の可視光センサを用いることで、可視光に含まれている通信データの識別を行うことができる。この際、周囲に他の可視光源が存在すると、通信データの識別に影響がでることがあるので注意を要する。インサート機器6は、また、全体の制御を司るCPU31を備えており、CPU31には、受光センサ7と赤外線発光素子8とに接続された入出力インターフェース32、ROM33、表示パネル35を制御する表示データプロセッサ34及びRAM36が接続されている。
【0034】
各インサート機器6の赤外線発光素子8から送信する赤外光通信データは、ギャレーコントローラ2側の発光パネル4の発信光が発する可視光のスペクトル(通常波長で380から780nm)と干渉しないようにする必要がある。すなわち、赤外線受光素子5には、可視光に反応する領域(通常使用される波長領域は、750から1000nmの短波長領域で可視光の領域と重なっている)がある場合があるので注意が必要である。各インサート機器6の識別を正しく行うためには、航空機用ギャレー1内のどの位置にインサート機器6が設置されているかを示すIDを設け、このIDに対応するインサート機器6と関連付けて通信を行うようにする。例えば、インサート機器6が航空機用ギャレー1から電源供給を受ける接続コネクタの空きpinにIDコードに該当する設置位置情報を設けておき、マスタ(ギャレーコントローラ2)よりそのIDコードで呼び出しを受けたスレーブ(インサート機器6)が交信を行うようにする。システム立ち上げ時にスレーブからの応答が認識できない場合は、そのIDは、以後、スキップして運用される。
【0035】
図4は、本発明による航空機用ギャレーコントロールシステムにおけるインサート機器とギャレーコントローラとの設置の様子を示すイメージ図である。航空機用ギャレー1には、複数のインサート機器6a,6b,6cが設置されており、インサート機器6a〜6cにおいては、受光センサ7と赤外線発光素子8とは前面パネルに設けられている。
【0036】
一方、インサート機器6a〜6cに対してその制御を行うための共通のギャレーコントローラ2が航空機用ギャレー1に配設されている。ギャレーコントローラ2は、インサート機器6a〜6c向けの可視光通信データ送信用の発光パネル4と、インサート機器6a〜6cからの赤外線通信データ送信用の赤外線受光素子5とを備えており、発光パネル4及び赤外線受光素子5は、図示のように、インサート機器6a〜6cの前面パネルと対面して設置されているか、或いは航空機用ギャレー1又はその周辺の天井又はその近傍で且つ高所に設置されている。それゆえ、インサート機器6a〜6cの前面パネルと発光パネル4及び赤外線受光素子5との間で、常時、可視光及び赤外光を遮るものはなく、実質的に可視光及び赤外光通信が確保されている。発光パネル4は、応答性の良い有機ELやLED等の素子を使うことを想定しており、天井に設置されていることもあり、航空機用ギャレー1内の照明のための発光機能を併せ持つことができる。
【0037】
ギャレーコントローラ2は、発光パネル4及び赤外線受光素子5と配線で接続された表示/操作パネル3を備えている。表示/操作パネル3は、乗務員が見やすく且つ操作しやすい高さ・位置に置かれている。表示/操作パネル3の背面発光にも応答性の良い有機ELやLED等が使われているため、ドライバ21の信号を表示/操作パネル3の発光素子に供給し、1000cd/m程度のパネル表面輝度を持たせることにより、ギャレーコントローラ2の発光パネル4に代わりに、照明用及び可視光通信データの送信用として代用することができる。
【0038】
図5は、ギャレーコントローラの表示/操作パネルの一例を示すイメージ図である。表示/操作パネル3には、航空機用ギャレー1に配設されているインサート機器にそれぞれ対応して(図示の例では00〜09の9台の機器)、機器の特定やモード、時間、温度等の作動状況等の表示40がなされている。ギャレーコントローラ2は、インサート機器から発信された情報を記憶するメモリーを備えており、ギャレーコントローラ2は、受信した情報のうち必要な情報を表示/操作パネル3に表示して、インサート機器6の動作状況を一同に監視することができる。ギャレーコントローラ2は更に、インサート機器6の動作状況の監視に基づいて、必要に応じた警報や警告を周囲に発報することができる。表示/操作パネル3には、また、セレクトスイッチ、UP/DOWNスイッチ、エンタースイッチ、キャンセルスイッチ、及びページスイッチを含む操作スイッチ列41が配置されており、これらのスイッチを用いて、インサート機器6のリモート制御機能の実行における動作設定や操作を行うことができる。
【0039】
図6は、インサート機器の前面パネルに偏向素子を設けた状態を示すイメージ図である。インサート機器6の受光センサ7と赤外線発光素子8の前面パネルの上面には、プリズムまたはミラー等から成り入射又は出射する可視光及び赤外光の偏向角を変える偏向角変換素子50が設けられている。受光センサ7と赤外線発光素子8に入射又は出射する可視光及び赤外光は、偏向角変換素子50を用いて可視光及び赤外光の方向を図示のように90度偏向させることで、水平から垂直上方(又は垂直上方から水平)に向きを変えるので、ギャレーコントローラ2の発光パネル4や赤外線受光素子5の取り付け位置をインサート機器6の真上に設置することも可能になる。
【0040】
偏向角変換素子50は、インサート機器6が更に正確な位置で可視光及び赤外光通信を行うために、受光センサ7の受光量をインサート機器6の前面パネルの表示器にてモニタし、受光量が最大になるように調整することができるような機構を備えている。このような機構の一例としては、偏向角変換素子50のインサート機器6への取付け角度を長孔(長い円弧孔)に沿って変更可能にし、取付け角度を変更するなかで受光量が最大になる角度で長孔への位置を固定することで、偏向角変換素子50を固定する機構が考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 航空機用ギャレー 2 ギャレーコントローラ
3 表示/操作パネル 4 発光パネル
5 赤外線(IR)受光素子 6,6a〜6c インサート機器
7 受光センサ(受光素子) 8 赤外線発光素子
9 可視光通信データ 10 赤外光通信データ
11 CPU 12 入出力インターフェース
13 キー・マトリックス
14 入力データ 15 出力データ
16 ROM 17 表示・操作パネルデータプロセッサ
18 RAM 19 トランスファデータプロセッサ
20 電源 21 ドライバ
22 データプロセッサ
31 CPU 32 入出力インターフェース
33 ROM 34 表示データプロセッサ
35 表示パネル 36 RAM
40 表示 41 操作スイッチ列
50 偏向角変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用ギャレーに受光素子及び赤外線(IR)発光素子を備えたインサート機器が設置され、前記航空機用ギャレー又はその周辺に当該インサート機器を制御するため発光パネル、赤外線(IR)受光素子及び表示/操作パネルを備えたギャレーコントローラが設置されており、前記ギャレーコントローラの前記発光パネルから前記インサート機器の前記受光素子への可視光通信データの送信と、前記インサート機器の前記赤外線(IR)発光素子から前記ギャレーコントローラの前記赤外線(IR)受光素子への赤外光通信データの送信とにより、前記ギャレーコントローラと前記インサート機器間の相互通信機能、及び前記ギャレーコントローラから前記インサート機器へのリモート制御機能を備えることを特徴とする航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項2】
前記ギャレーコントローラの前記発光パネルは、前記インサート機器への前記可視光通信データのための発光に加えて、前記航空機用ギャレー内の照明のための発光機能を併せ持つことを特徴とする請求項1に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項3】
前記インサート機器の前記受光センサと前記赤外線発光素子は前面パネルに設けられており、前記ギャレーコントローラの前記発光パネル及び前記赤外線(IR)受光素子は、前記各インサート機器の前面パネルと対面して設置されている、又は前記航空機用ギャレー又はその周辺の天井又はそれに近い高所に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項4】
前記インサート機器の前記受光センサと前記赤外線発光素子の上面には、入射又は出射する可視光及び赤外光の偏向角を変える偏向角変換素子が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項5】
前記インサート機器は、前記リモート制御機能の実行に際して、前記ギャレーコントローラから前記リモート制御機能を可能にするための情報の提供を受けると共に、与えられた一定時間内に前記リモート制御機能に関する自己の動作情報を前記ギャレーコントローラに発信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項6】
前記ギャレーコントローラの前記表示/操作パネル上には、前記インサート機器の前記リモート制御機能における動作設定や操作を行うための操作スイッチが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項7】
前記ギャレーコントローラは、前記インサート機器から発信された情報を記憶するメモリーを備えており、前記ギャレーコントローラは、受信した前記情報のうち必要な情報を前記表示/操作パネルに表示し、前記各インサート機器の動作状況を一同に監視することを特徴とする請求項5又は6に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項8】
前記ギャレーコントローラは、前記インサート機器の前記動作状況の監視に基づいて、必要に応じた警報や警告を周囲に発報することを特徴とする請求項7に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。
【請求項9】
前記ギャレーコントローラの前記発光パネルに代わりに、前記表示/操作パネルの背面発光を前記可視光通信データの送信用として代用させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の航空機用ギャレーコントロールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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