説明

航空機用着陸脚の操作システム及びそのようなシステムを備える航空機

本発明は、ゲートアセンブリによって閉じられる脚格納室に関節式に接続して装着された航空機の着陸脚の操作システムであって、様々な操作を始動させるための脚格納室の全体制御指令ユニット、ゲート制御指令系統(16)、着陸脚制御指令系統(15)を備え、この航空機が、正常動作、非常動作及び整備段階中であるとき、全体制御指令ユニット、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統は電気エネルギー源によって制御指令され、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統は各々電気接続によってのみ全体制御指令ユニットに接続されていることを特徴とする、着陸脚の操作システムに関する。本発明は、また、この操作システムを備える航空機に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機が離着陸をするための車輪列を有する着陸脚の操作システムに関するものである。航空機の機体の外に着陸脚を出したり戻したりすることのできるシステムを着陸脚の操作システムと呼ぶ。実際、多数の航空機では着陸脚は引込み式であり、すなわち航空機の機体の内部に配置された脚格納室内に関節式に装着されている。したがって、飛行段階中、着陸脚は機体の内部のゲートアセンブリによって閉じられた脚格納室内にある。航空機の着陸段階の前に、ゲートが開いた後、着陸脚は脚格納室から出される。本発明は、正常動作中、非常動作中または整備段階中にゲートを開き、着陸脚を出す制御指令システムに関するものである。
【0002】
本発明は、航空機の分野、特に、着陸脚の昇降の分野で利用される。
【背景技術】
【0003】
現在、大部分の航空機は一つまたは複数の引込み式の着陸脚を備える。単純に脚と呼ばれる各着陸脚は、「脚格納室」と呼ばれる機体の収容部内に装着されている。飛行段階中、脚格納室はゲートアセンブリによって閉じられており、それによって航空機の航空力学的な輪郭を保持している。着陸及び離陸段階中、着陸脚は出ており、すなわち、その格納部の外で、降下位置と称する位置にある。航空機の着陸段階前、着陸脚はその収容部から出て、すなわち通常、自動的に、パイロットの命令に基づき、引込まれた上昇位置から降下位置にまで移動する。
【0004】
実際、いわゆる「正常」動作中、着陸脚は脚格納室から自動的に出る。システムの故障の場合には、非常用システムが、着陸脚が機械的に出るように確保する。
【0005】
正常動作中には、脚格納室のゲートが、ひとたび開いてからでなければ、着陸脚は出ることができない。したがって、着陸脚を出すシステムのシーケンスが設けられており、そのシーケンスにおいては、まずゲートが開かれ、次いで着陸脚が降りる。逆のシーケンスによって、航空機の離陸後に脚格納室に脚を戻すことができる。
【0006】
非常動作中には、着陸脚は重力によって脚格納室から出て、それによりゲートが開く。脚格納室のゲートは、主要なゲートであるプリンシパルゲートを一つまたは複数、及び一つまたは複数の該プリンシパルゲートとは別個の第二次的なゲートであるセカンダリゲートを一つまたは複数備えている。プリンシパルゲートは着陸脚が降下位置になるとすぐに再度閉じられるようになっている。セカンダリゲートは着陸脚の脚アームを通過させるようになっており、したがって、着陸脚が出ている限り開いたままである。
【0007】
航空機が地上にいるとき、脚格納室のプリンシパルゲートは閉じており、セカンダリゲートは着陸脚の脚アーム用の最低限の空間だけを残すように開いている。しかしながら、整備の必要性のため、プリンシパルゲートを開く必要があることもある。
【0008】
現状は、着陸脚を昇降するシステムは混合的システムであり、すなわち複数のエネルギー源を使用する。より正確には、正常動作中には、システムは電気エネルギーに組み合わせられた油圧エネルギーを使用する。非常動作中には、システムは機械運動学系統に組み合わせられた電気エネルギーを使用する。整備動作中には、システムは機械的エネルギーに組み合わせられた人的エネルギーを使用する。
【0009】
正常動作のために、システムは以下の構成要素を備える:
‐脚格納室専用の油圧回路を航空機全体の油圧回路に接続することを確保する、電気的に制御指令されるバルブ、すなわち電気バルブ。この電気バルブはコックピットから制御指令され、脚格納室の油圧回路の作動を実施することを確保する。
‐ゲートの油圧及び電気制御指令系統。この系統は、
‐ゲートを閉じた位置に保持確保する少なくとも一つのゲートロックフック、
‐ゲートの可動性を確保する少なくとも一つのゲート用パワーシリンダ、及び
‐ゲート用パワーシリンダを制御指令するゲート用電気バルブ
を備える。
【0010】
現状は、ゲートの油圧及び電気制御指令系統は、ゲート回路と呼ばれる油圧回路である。ゲート用バルブは、この制御指令系統の入力点を構成する。それは電気的に制御指令される。バルブが開くと、制御指令系統全体に流体が流れ、ゲートフックのロックの解除を確保し、ゲート用パワーシリンダに給電し、それによってゲートを開かせることを確保する。
【0011】
システムは、さらに、
‐着陸脚を引込んだ位置に保持確保する少なくとも一つの着陸脚保持フック、
‐着陸脚の可動性を確保する少なくとも一つの着陸脚用パワーシリンダ、及び
‐着陸脚用パワーシリンダを制御指令する着陸脚用電気バルブ
を備える脚制御指令系統を備える。
【0012】
現状は、着陸脚制御指令系統は着陸脚回路と呼ばれる油圧回路である。着陸脚用バルブは、この制御指令系統の入力点を構成する。それは電気的に制御指令される。バルブが開くと、制御指令系統全体に流体が流れ、確実に着陸脚保持フックのロックを解除し、着陸脚用パワーシリンダに給電し、それによって確実に着陸脚を出させる。
【0013】
着陸脚が降下位置にあるとき、着陸脚の給電は切断される。このとき、ゲート用パワーシリンダが作動してプリンシパルゲートを閉じ、このときセカンダリゲートは着陸脚の脚アームの通過用の最小限の空間だけを残すように開いたままでいる。ひとたびプリンシパルゲートが閉じると、ゲート用パワーシリンダの給電が遮断され、前記ゲートが不都合な時に開くことを防止する。次に、脚格納室専用の油圧回路は、全体の油圧回路との接続を解除される。
【0014】
シーケンス制御指令される油圧回路によって、まず、ゲートが開かれ、次に着陸脚が出されるが、これは、電気計算機によって制御指令される。したがって、ゲート用の電気バルブと着陸脚用の別の電気バルブを有することによって、これらの各バルブを多少とも時間をずらして、異なる瞬間に開くことができ、それによりゲートを開き、着陸脚を出すというシーケンスを得ることができる。
【0015】
脚格納室への着陸脚の再上昇のシーケンス化は、着陸脚が出る降下シーケンスに対して反対の順序である。それは、電気的及び油圧で制御指令された、着陸脚が出る場合と同様の段階を備えるが、逆の順序で実施される。
【0016】
このように、正常動作中、全体制御指令バルブと脚及びゲートの油圧回路のバルブはコックピットから、例えば、パイロットの命令に従って、航空機の着陸脚の搭載コンピュータによって電気的に制御指令される。
【0017】
全体油圧回路、すなわち、脚格納室専用の油圧回路の故障の場合、非常動作が設けられている。この非常動作(英語でフリーフォール(Free Fall)と呼ばれる)は、図1に示した特定のシステムによって得られる。図1は、脚格納室内に設置された非常用システムを示している。
【0018】
図1は、従来の非常用システムが内部に装着された脚格納室を概略的に示したものである。このシステムは、例えば着陸脚の計算機によって電気的に制御指令されるアクチュエータ1を備える。このアクチュエータ1は、運動的系統2(リンク機構とも呼ばれる)によってゲートフック3、着陸脚用フック7及びバルブ4に機械的に接続されている。この図面では、ゲート用制御指令系統6がそのロックフック3とともに、及び、着陸脚制御指令系統5がその保持フック7とともにより詳細に示されている。バルブ4によって、ゲート用パワーシリンダ及び脚用パワーシリンダ内でピストンが自由に滑動することができる。
【0019】
この非常動作では、ゲート用フック及び着陸脚用フックのロック解除作業のシーケンス化は、アクチュエータ1の作動によって機械的に確実に行われる。
【0020】
もちろん、この非常動作モードでは、ゲートは開いたままであり、着陸脚は戻せないことは理解されるであろう。
【0021】
着陸脚を出すシステムの別の動作モードでは、特に航空機が地上にいるとき、整備上の理由などから脚格納室のプリンシパルゲートを手動で開けることができるようにすることが重要である。実際、航空機が地上にいて、着陸脚上に載っているとき、このゲートは閉じている。整備士は、検査を実施するために脚格納室内に入り込めるようでなくてはならない。地上では、エンジンが停止しているので、油圧エネルギーは利用できない。そのとき、ゲートは、ゲートの近傍に配置された機械的な取っ手によって機械的に開かれる。そのような従来の整備システムの実施例は、図2に示されている。その図は、脚格納室に固定された整備システムを概略的に示している。
【0022】
整備システムは、運動的系統9(リンク機構とも呼ばれる)によってゲート制御指令系統6に接続された機械的取っ手8を備える。運動的系統9は、脚格納室の隔壁上にガイドによって固定されたボール付き制御指令とすることができる。取っ手8を作動させると、運動的系統は運動するように駆動され、プリンシパルゲートが開くように制御指令する。より正確には、取っ手8を例えば角度90°で回転させると、運動的系統9は直線運動するように駆動され、以下のシーケンスを実行する:
‐ゲート用パワーシリンダの給電専用の油圧回路の絶縁(安全性への配慮から、全体油圧回路に偶発的に接続することでプリンシパルゲートが不都合な時に閉じることを回避するため);
‐バルブ10が開き、パワーシリンダがゲートが開くことを妨げないように、ゲート用パワーシリンダのチャンバ内で流体の自由な循環を可能にする;
‐プリンシパルゲートのフックの機械的なロック解除。
【0023】
プリンシパルゲートは、このとき重力によって、または手動で開く。
【0024】
整備システムでは、手動取っ手は航空機の機体上に固定されるか、一般的にはゲートの近傍に形成された閉じた空洞部内に固定されており、したがって、これにより地面から比較的高い位置に配置されていることになる。この点から、整備士は、この取っ手をつかみ、それを作動させてゲートを開くことができるように、場合によっては梯子に登らなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
また、これまでに説明してきたように、着陸脚を出したり戻したりする昇降の制御指令構造は複雑で、動作モードによって異なる運動的系統のように、場所をとる構成要素を多数必要とする。
【0026】
さらに、様々な動作モードで利用できるようにするために、いくつかの構成要素は様々なエネルギー源によって制御指令可能であり、それによって構成要素が複雑化する。例えば、着陸脚用フックは、正常動作用の油圧入力と非常動作用の機械入力という独立した2つの入力を備える。同様に、ゲートフックは、正常動作中の油圧入力、非常モードでの機械入力及び整備専用の機械入力という3つの別個の独立した入力を備える。その結果として、制御指令系統とのインターフェースがかなり大きな場所をとることになる。
【0027】
その上、ゲート用フック及び着陸脚用フックは与圧されていない区画に配置されているが、制御指令系統は主として与圧された区画に位置する。この点から、このリンク機構が、与圧された区画の圧力に影響を与えずに、この区画の隔壁を通り抜けられるようにするためには、あらゆる種類の注意を払わなければならない。
【0028】
現在、航空機の製造業者は、一回の飛行で、ますます容積が大きくて重い積荷を輸送することのできる航空機を構想しようとしている。そのため、ますます大きなサイズの航空機を構想しようとしている。そのような航空機では、着陸脚の数が従来の航空機より多くなることがあり、それによって、着陸脚について前述した問題が増倍することになる。さらに、この脚の数の増加によって航空機の質量がかなり増加する。
【0029】
また、サイズの極めて大きなこれらの航空機では、着陸脚のホイールは従来の着陸脚のホイールより大きくなることがあり、それによって機体は地面からより高い位置におかれる。質量及び設置の理由から、取っ手は与圧されていない区域に配置されなければならず、これには与圧された隔壁にリンク機構を通過させるための孔を開けることが必要となり、それに伴い、与圧に関係するあらゆる問題が生じる。そのため、この取っ手は地面からかなり離れ、人の身長より高い位置にあることになり、整備士らが落下するおそれが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、まさに上記の技術の問題点を解決することを目的とする。この目的のため、本発明は、動作モードが何であれ、ゲートを開く制御指令と着陸脚を出す制御指令が電気的に実現される、航空機の着陸脚操作システムを提案する。実際、電気エネルギーは、正常動作中または油圧エネルギーの消失の場合はジェットエンジンの作動によって、低減モード(油圧及び電気エネルギーの消失)の場合は航空機を操縦するのに十分な電気エネルギーの量を発生することのできる非常用プロペラによって、整備段階中では場合によっては地上の補助エネルギー源(バッテリ、地上電源車など)を使用して、常に航空機の機上で利用できる。したがって、本発明は、正常動作中、非常動作中及び整備動作中に、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統の油圧及び機械制御指令を電気制御指令に代えることを提案する。
【0031】
より正確には、本発明は、ゲートアセンブリによって閉じられる脚格納室にヒンジ結合式に装着された航空機の着陸脚の操作システムであって、該システムは、
‐様々な操作を始動させるための脚格納室全体の制御指令ユニット、
‐ゲート制御指令系統、
‐着陸脚制御指令系統
を備えるシステムであり、
航空機が正常動作、非常動作及び整備段階中であるとき、全体制御指令ユニット、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統が電気エネルギー源によって制御指令されることを特徴とする、着陸脚操作システムに関するものである。
【0032】
本発明は、また、下記の一つまたは複数の特徴を備えることができる。
‐前記ゲート制御指令系統が、電気的に制御指令されるゲートロック装置を少なくとも一つ、ゲート作動具を少なくとも一つ、及び電気的に制御指令される作動具の制御指令具を一つ備えること。
‐前記脚制御指令系統が、電気的に制御指令される脚保持装置を少なくとも一つと、脚作動具を少なくとも一つと、電気的に制御指令される作動具の制御指令具を一つ備えること。
‐前記電気エネルギー源が、正常動作中、航空機の利用できる全体の給電であること。
‐前記電気エネルギー源が、非常動作中、航空機の全体の供給電力、または、航空機の全体の供給電力が利用できないときは非常用プロペラを備える航空機のセカンダリ電源であること。
‐前記電気エネルギー源が、整備段階中では、航空機の利用できる電源または地上の補助電源であること。
‐前記ゲート制御指令系統が、ゲートロック装置に結合された電気アクチュエータを少なくとも一つ及びゲート作動具の制御指令具に結合された電気アクチュエータを一つ備えること。
‐前記脚制御指令系統が、着陸脚保持装置に結合された電気アクチュエータを少なくとも一つ及び脚作動具の制御指令具に結合された電気アクチュエータを一つ備えること。
‐前記ゲート制御指令系統が、整備段階中、プリンシパルゲートが開くことを制御指令する電気制御指令具を備えること。
‐前記全体制御指令ユニットが、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統に電気的に接続されていること。
‐前記全体制御指令ユニットと、ゲート制御指令系統、着陸脚制御指令系統間との電気接続が有線接続であること。
‐前記全体制御指令ユニットが、ゲートロック装置及び着陸脚保持装置の作動、及び作動具におけるシーケンス化を確保すること。
【0033】
本発明は、また、この着陸脚操作システムを備える航空機に関するものである。
【0034】
‐図1は、既に述べたように、従来技術の、非常動作中における着陸脚を出すシステムを示したものである。
‐図2は、既に述べたように、従来技術の、整備段階中における着陸脚を出すシステムを示したものである。
‐図3は、本発明に係る着陸脚を出すシステムを示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、電気的に制御指令される着陸脚操作システムを提案するものである。本発明のこのシステムは、図3に示されている。
【0036】
この操作システムは、ゲート制御指令系統16及び着陸脚制御指令系統15を備えており、これらの系統はそれ自体全体制御指令ユニットによって制御指令されている。
【0037】
本発明では、ゲート制御指令系統16は、各ゲートそれぞれの少なくとも一つのロック装置、各ゲートそれぞれの少なくとも一つの作動具及びこの作動具の制御指令具を備える。既に説明したように、航空機の脚格納室は複数のゲート、すなわち、一つまたは複数のプリンシパルゲート及び少なくとも一つのセカンダリゲートを備える。本発明は、着陸脚用プリンシパルゲートへの利用において説明される。本発明は、また、航空機のあらゆるプリンシパルゲート(航空機が複数のプリンシパルゲートを有する場合)及び航空機の一つまたは複数のセカンダリゲートに適用されることが注目すべきであるが、ただし、この場合、その一つ(または複数)のセカンダリゲートは着陸脚が出ている間は開いたままであるのはもちろんのことである。
【0038】
各ゲートは、パワーシリンダまたは電気モータなどの少なくとも一つの作動具によってそれぞれ作動される。以下の説明では、作動具はパワーシリンダであるものとする。パワーシリンダは、制御指令具18によって制御指令される。この制御指令具は、電気バルブ、すなわち、電気モータによって電気的に制御指令される油圧バルブとすることができる。
【0039】
各ゲートは、それぞれロック装置17によってロック位置に保持される。このロック装置は、フックまたは自動停止パワーシリンダとすることができ、または着陸脚に接続され、着陸脚が出る段階が開始されるときに適切な運動によってゲートを開くことができるコネクティングロッドシステムとすることができる。以下の説明では、ロック装置は電気的に制御指令されるフックとする。したがって、本発明では、ロックフックは電気アクチュエータに結合されている。
【0040】
換言すれば、本発明の好ましい一実施態様では、ゲート制御指令系統は、
‐電気アクチュエータから電気的に制御指令されるロックフック、及び、
‐電気バルブによって油圧制御指令されるゲート用パワーシリンダ
を備える。
【0041】
本発明では、着陸脚制御指令系統15は、着陸脚保持装置、少なくとも一つの脚作動具及びこの作動具の制御指令具を備える。したがって、着陸脚はパワーシリンダまたは電気モータなどの作動具によって作動される。下記では、作動具はパワーシリンダであるものとする。このパワーシリンダは電気バルブの型の制御指令具14の手段によって制御指令される。
【0042】
戻った位置では、着陸脚はフックまたは自動停止パワーシリンダとすることができる保持装置13によって保持される。以下の説明では、保持装置は電気的に制御指令されるフックであるものとする。本発明では、保持フックは電気的アクチュエータに結合されている。
【0043】
したがって、本発明の好ましい実施態様では、着陸脚制御指令系統は、
‐電気アクチュエータから電気的に制御指令される着陸脚保持フック、及び
‐電気バルブによって油圧制御指令される着陸脚用パワーシリンダ
を備える。
【0044】
ゲート制御指令系統と同様に着陸脚制御指令系統は、例えばコックピットに配置された全体制御指令ユニットから電気的に制御指令される。これらの脚制御指令系統及びゲート制御指令系統の様々な構成要素、すなわち、パワーシリンダ及びフックはさらに従来の作動、すなわち、油圧的作動及び/または機械的作動を行う。本発明によると、これらの構成要素の制御指令は完全に電気的である。換言すれば、着陸脚制御指令系統及びゲート制御指令系統の各構成要素は、それぞれ、全体制御指令ユニットによって送信される電気制御指令命令を受信するように構成されている。このため、各構成要素は、それぞれ、電気的アクチュエータ、すなわち電気モータまたは電気バルブに接続されている。
【0045】
飛行中、航空機のその機上の電流は、例えば航空機のジェットエンジンによって供給される。したがって、本発明では、正常動作中、着陸脚及びその結果ゲートの操作に必要な電流は、機上の全ての電気エネルギーと同様に航空機のジェットエンジンによって供給されることができる。
【0046】
航空機上で正常な油圧システムが故障した場合、非常動作と呼ばれる低減モードが実行される。この低減 モードでは、着陸脚及びゲートの操作に必要な電気エネルギーは、航空機の利用可能な電源によって供給される。
【0047】
地上では、整備時に、電気エネルギーは補助電源によって供給されることができる。この補助電源は、例えば航空機のバッテリまたは地上電源車とすることができる。
【0048】
したがって、本発明では、着陸脚及びゲートの唯一の操作システムが、正常動作時でも、非常動作時でも、または整備段階中でも利用されることができることが分かる。本発明では、動作モード(正常時、非常時、整備時)にかかわらず、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統の唯一のエネルギー源は電気エネルギーである。したがって、各動作モードそれぞれ専用の機械的または油圧系統は、もはや存在しない。本発明では、ゲート制御指令系統及び脚制御指令系統は各々電気接続によってのみ全体制御指令ユニットに接続されている。この電気接続は電気ケーブルでも、または無線接続でもよい。
【0049】
リンク機構の設置で多くの場所を取り、可撓性が乏しく、設置がより困難で、さらに固定点に応力を生じさせるよりも、脚格納室の内部に電気ケーブルを通過させることの方が、より容易に設置可能であることは簡単に理解される。
【0050】
したがって、脚及びゲートの操作は、飛行中に、コックピットから、乗務員によって、機上のコンピュータから、スイッチ、位置の電気的センサに接続されたレバー、または他のあらゆる電気制御指令具の作動によって制御指令される。この電気制御指令具は、着陸脚が出る前にゲートが開き、次に着陸脚がひとたび出るとプリンシパルゲートが閉じることを確実にする所定のシーケンスに従ってゲートを開き着陸脚を出すという制御指令命令を伝達する。逆に、着陸脚を戻すときは、この所定のシーケンスは、着陸脚が再上昇する前に主要ゲートが開き、次に着陸脚がひとたび戻るとプリンシパルゲートも副次的ゲートも閉じることを確実にする。ゲートの開閉及び着陸脚の昇降という操作の連続性は、全体制御指令ユニットが送信する制御指令の命令のシーケンス化によって得られる。
【0051】
整備段階中に、プリンシパルゲートを開くことは、容易にアクセスできるように配置された電気制御指令具10によって制御指令できる。スイッチまたは制御指令レバー型のこの電気制御指令具10は、脚格納室のプリンシパルゲートが開くことを制御指令する。このスイッチは、電気ケーブルによってゲート制御指令系統16に接続された電気ボタンの形状を呈することができる。図3では、スイッチ10とゲート制御指令系統16の間の接続は、白抜きの双方向矢印によって象徴されている。そのような電気スイッチは、人の届く範囲に配置できるという利点がある。実際、この電気スイッチは手動の取っ手と比較して場所を取らないので機体の胴体表面に直接設置でき、さらに着陸脚自体に直接設置できる。この電気スイッチは、航空機の揚力を変化させるおそれもなく、その結果、閉じた空洞部内以外にも設置できる。この電気スイッチは、例えば、着陸脚の脚アームに設置することもできる。
【0052】
したがって、本発明のシステムによって、着陸脚の収容部を通過するシャフトもコネクティングロッドも他の機械的なリンク機構もないので、質量に係る節約利益だけでなく、場所に係る節約利益が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来技術の非常動作時における着陸脚を昇降するシステム。
【図2】従来技術の整備段階中における着陸脚を昇降するシステム。
【図3】本発明に係る着陸脚を昇降するシステム。
【符号の説明】
【0054】
1 アクチュエータ
2 運動的系統
3 ゲート用フック
4 バルブ
5 着陸脚制御指令
6 ゲート制御指令系統
7 着陸脚用フック
8 取っ手 グリップ
9 運動的系統 (リンク機構)
10 バルブ(図2)
10 電気制御指令具(図3)
13 着陸脚保持装置
14 作動具制御指令手段
15 着陸脚制御指令系統
16 ゲート制御指令系統
17 ゲートロック装置
18 制御指令具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートアセンブリによって閉じられる脚格納室内に関節式に接続して装着された航空機用の着陸脚の操作システムであって、該システムは、
‐様々な操作を始動させるための脚格納室の全体制御指令ユニット、
‐ゲート制御指令系統(16)、
‐着陸脚制御指令系統(15)
を備えるシステムであり、
前記航空機が、正常動作、非常動作及び整備段階中であるとき、全体制御指令ユニット、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統は電気エネルギー源によって制御指令され、ゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統は各々電気接続によってのみ全体制御指令ユニットに接続されていることを特徴とする、着陸脚の操作システム。
【請求項2】
前記ゲート制御指令系統(16)が、電気的に制御指令されるゲートロック装置(17)を少なくとも一つ、ゲート作動具を少なくとも一つ、及び電気的に制御指令される作動具制御指令具(18)を一つ備えることを特徴とする、請求項1に記載の着陸脚の操作システム。
【請求項3】
前記着陸脚制御指令系統(15)が、電気的に制御指令される着陸脚保持装置(13)を少なくとも一つと、脚作動具を少なくとも一つと、電気的に制御指令される作動具制御指令具(14)を一つ備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の着陸脚の操作システム。
【請求項4】
前記電気エネルギー源が、正常動作中、航空機の全体の供給電力であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項5】
前記電気エネルギー源が、非常動作中、航空機の全体の供給電力、または、プロペラを備える航空機のセカンダリ電源であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項6】
前記電気エネルギー源が、整備段階中では、地上の補助電源であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項7】
前記ゲート制御指令系統が、ゲートロック装置に結合された電気アクチュエータを少なくとも一つ、及びゲート作動具の制御指令具に結合された電気アクチュエータを一つ備えることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項8】
前記着陸脚制御指令系統が、着陸脚保持装置に結合された電気アクチュエータを少なくとも一つ、及び脚作動具の制御指令具に結合された電気アクチュエータを一つ備えることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項9】
前記ゲート制御指令系統が、整備段階中にプリンシパルゲートが開くことを制御指令する、航空機の外部に配置された電気制御指令具(10)を備えることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項10】
前記全体制御指令ユニットとゲート制御指令系統及び着陸脚制御指令系統間の電気接続が有線接続であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項11】
前記全体制御指令ユニットが、ゲートロック装置及び着陸脚保持装置の作動、及び作動具におけるシーケンス化を確保することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の着陸脚の操作システムを備えることを特徴とする、引込み式の着陸脚を備える航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−513283(P2008−513283A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531809(P2007−531809)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050746
【国際公開番号】WO2006/032811
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)