説明

航空機胴体に設ける開口枠部

本発明の目的は、外板が境界となる航空機胴体に設置する開口に設けるドア枠部であって、前記枠部は、前記開口の両側に配置する垂直な2つの部分構造(62)の間を連結する上方縦補剛材および下方縦補剛材を有し、この部分構造に、ドアによってかかる半径方向の応力を受ける少なくとも1つの突起部(56)を設るドア枠部において、垂直部分構造(62)はそれぞれ、少なくとも3枚の複合材製の壁を有し、該壁が互いに連結して閉鎖した中空の断面を形成してボックスビーム構造となることを特徴とするドア枠部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機胴体に設ける開口枠部に関する。
【背景技術】
【0002】
図1から図3には、例として胴体12を有する航空機10の前方を示した。この胴体には、例えば乗客の通行を可能にする開口14が設けられ、この開口は、航空機の外部16と内部環境18とを隔てるいわゆる乗降用ドアというドアで封鎖することができる。
【0003】
従来の方法では、航空機の胴体は、とりわけ第1の一連の縦補剛材(縦通材)および第2の一連の横補剛材(フレーム)を有する構造で補強した外板20を備えている。ドア構造と胴体構造との間の応力を受けるため、開口14の周囲にはドア枠部22を設ける。
【0004】
乗降用ドアの場合、このドアは、ドア枠部22の辺りに航空機の外部に向かう主に半径方向の応力(図3に矢印Fで表示)をもたらし、この応力は枠部22に設ける突起部24で受ける。
【0005】
この種の応力を受けるため、枠部22は、まぐさという上方縦補剛材26と、敷居という下方縦補剛材28と、開口14の両側の垂直補剛材30とを有する縁フレームを備えるとともに、一定の距離を置いて開口の両側に配置する少なくとも2つの垂直補剛材32で構成する二次フレームと、まぐさ26および敷居28で隔てた2つの上方縦補剛材および下方縦補剛材34とを備える。この縁フレームと二次フレームとを連結するために、リブ、つまり補強材を設ける。したがって、開口12の両側に梯子状の構造を形成するように、補剛材30および32を肋材36というリブで連結する。文献WO03/104080には、このような梯子状の構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO03/104080
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3に示すように、枠部22にある各突起部24にかかる強力な応力Fによって発生するモーメントは、二次フレームに生じる第1の抗力R1と、縁フレームに生じる第2の抗力R2との2つの相反する抗力が受ける。この種の構想によれば、応力の均衡は、対応する肋材によってドアの各突起部と水平に局地的に保たれる。
【0008】
ドア枠部22にかかる荷重は、これらの半径方向の応力に限るものではない。一般に、ドア枠部は胴体全体を保護するものである。
【0009】
第1の実施形態によれば、ドア枠部22および胴体の外板を構成する部材はすべて金属であり、垂直補剛材30および32ならびに肋材36は、従来の方法で加工した厚鋼板で作製する。加工後、これらのさまざまな部材を組立てて梯子状の部分構造を形成したのち、このように形成したこれらの部分構造の上に外板を置く。金属製の外板に基づくこの方法は、多数の固定部を必要とするという欠点があると同時に、外板の厚みおよび連続的に載置する面を正確に制御し、この外板の間が平行になるように制御するという利点がある。航空機にかかる重みを軽減するため、複合材料を使用する傾向にある。
【0010】
複合材製のドア枠部に関する第1の実施変形例は、縁フレーム、二次フレームおよび肋材を有する第1の組立部品を作製することである。これらの組立部品を支える部品を1つ作製するだけで、複雑な工具が必要になる。その上、複合材製の外板を用いた組み立てには、プリプレグ板で作製した外板の数が限られているためにシムを使用する必要があり、そのために組み立て時間が大幅に増大する。
【0011】
複合材製のドア枠部に関するもう一つの実施変形例は、複合材製の部材すべてを別々に作製したのち、金属製のドア枠部の部材を組み立てる要領でこの部材を組み立てる。ただし、この方法は、複合材部品を経済的な方法で作製すると、別の部品を横に取り付ける際に寸法公差の問題が生じるため、納得のいくものではない。最後に、複合材部材を金属部品(縁フレーム、二次フレーム、肋材)と同じ設計で組み立てると、部品を形成する板面の外部にかかる応力に対してこの複合材部品の外装が弱いため、応力を最適な形で受けることができない。
【0012】
また、本発明は、航空機胴体に設けられる開口枠部であって、その設計によって応力を最適な形で受ける開口枠部を提供することによって先行技術の欠点を緩和することを狙いする。もう一つの目的によれば、この設計によって複合材製枠部の作製を簡易化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために本発明は、外板が境界となる航空機胴体に設置する開口に設けるドア枠部であって、前記枠部は、開口の両側に配置する垂直な2つの部分構造の間を連結する上方縦補剛材および下方縦補剛材を有し、この部分構造に、ドアによってかかる半径方向の応力を受ける少なくとも1つの突起部を設けるドア枠部において、垂直部分構造はそれぞれ、少なくとも3枚の複合材製の壁を有し、この壁を互いに連結して閉鎖した中空の断面を形成してボックスビーム構造となることを特徴とするドア枠部を目的とする。
【0014】
その他の特徴および利点は、添付の図を参照しながら例として挙げた本発明に沿った以下の説明文を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】航空機前方の概略図である。
【図2】先行技術によるドア枠部を備える航空機を内部から見た斜視図である。
【図3】先行技術によるドア枠部の肋材を含む面に沿った断面図である。
【図4】本発明によるドア枠部を備える航空機を内部から見た斜視図である。
【図5】図4に示したドア枠部の縁の縦方向に沿った断面図である。
【図6】図5に示したドア枠部の縁を形成する補強材の内部を示す斜視図である。
【図7】本発明によるドア枠部の斜視図であり、先行技術による方法と比較した場合の場所の節約を示す図である。
【図8】組み立て前の本発明によるドア枠部の縁を形成する2つの部分を示す縦方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図4には、ドア(図示せず)でふさぐことができる開口40を設置するようになっている航空機胴体を示した。
【0017】
胴体は、補強材で構成する構造に取り付ける外板42を有し、この補強材は特に、縦通材という第1の一連の縦補強材44およびフレームという第2の一連の横補強材46である。
【0018】
この外板42によって、図5に符号48を付した航空機内部を、符号50を付した外部環境から絶縁することができる。
【0019】
非限定的な一適用例によれば、この開口40によって乗客が外部から内部へ、またはこの逆に通過することができる。
【0020】
とりわけ航空機のドアと構造との間の応力を伝達するため、開口40を枠部52で区切る。
【0021】
先行技術の場合と同じく、ドア枠部52は突起部56を備え、ドアはこの突起部を押圧し、とりわけ外部に向かう半径方向の応力(矢印Fで表示)を受けることができる。この突起部は、前記枠部の垂直支柱に配置することが好ましい。
【0022】
以下の説明において、航空機の縦軸とは航空機の前方から後方へ向かう、胴体の発電機とほぼ並行な軸のことである。横断面とは、縦軸に対して直角の面のことである。半径方向とは横断面上で縦軸を通過する方向である。縦面とは縦軸および半径方向を含む面のことである。
【0023】
ドア枠部52は、まぐさという上方縦通材58および敷居という下方縦補剛材60を備え、このまぐさ58および敷居60は、開口40の両側に配置する2つの垂直部分構造62の間を結合している。まぐさおよび敷居は、縦面に配置するリブの形状をしている。
【0024】
これらの補剛材58および60は一般に、断面がC型で、縦面に配置する中央部分およびフランジを有し、このフランジの一方は航空機の外板と接触する。
【0025】
これらの補剛材58および60は複合材料で作製する。ただし、金属などこれ以外の材料で作製してもよい。補剛材は、とりわけ垂直部分構造62の間を結合するのにさまざまな形を取り得るため、詳細には説明しない。
【0026】
本発明によれば、垂直部分構造62は複合材製であり、先行技術で用いられたような梯子形状の設計ではなく、ボックスビーム状の設計である。
【0027】
ボックスビーム状の設計とは、部分構造62が少なくとも3枚の壁を有し、この壁が互いに連結して閉鎖した中空の断面を形成する設計のことである。
【0028】
このようにするため、図5に示すように部分構造62は、開口側面に配置する第1の壁64およびこの第1の壁64に対してほぼ直角に配置する第2の壁66を備え、航空機の外板面で枠部を胴体に連結すると、前記第2の壁66は第1の壁64に連結して隣接し、ボックスビーム状となるように、内部に面する第1の壁64の端部と開口側面から離れている第2の壁66の端部とに連結する傾斜した第3の壁68を備える。
【0029】
図5に示すように、ボックスビーム形状によって、矢印70で示したこのボックスビーム形状のねじり荷重により突起部の応力が生成するモーメントの均衡を保つことができる。このねじれの流れはボックスビーム状の部分構造62に剪断応力を生成するが、この応力は、一般に積層部材形状に作製された壁面に残ったままとなるため、先行技術の梯子構造よりも複合材料での作製に好都合である。
【0030】
別の一局面によれば、部分構造62に発生するこれらのねじれの流れは、まぐさ58と敷居60との接合領域で均衡に保たれる。
【0031】
一実施形態によれば、各部分構造62は、第1の壁64および傾斜壁68を有する第1の部分72と、第2の壁66を有し胴体の外板の一部を形成する第2の部分74とを備えている。
【0032】
ボックスビーム形状の第1の部分72は、図5および図6に詳細を示した。この部分は、第1の壁64を形成する第1の面と、この第1の面に対してほぼ直角な第2の面76と、傾斜壁68を形成する第3の面と、第2の部分74および場合によって胴体の外板42に対する支持面の役割を果たす第4の面78とがある1区画を含むプレートで構成する。
【0033】
ボックスビーム形状のこの第1の部分72は、これらの面が折れるのを防ぐための補強材を備えている。したがって、ボックスビーム形状の第1の部分72は、第3および第4の面の航空機内部に面する表面に対して直角に配置する第1の一連のリブ80と、第1、第2および第3の面の航空機の外部に面する表面に対して直角に配置する第2の一連のリブ82とを備えている。
【0034】
リブ80および82は、第1の部分72と接触する縁にのみフランジを備えている。
【0035】
リブ80および82は、ドア56の突起部と水平に配置することが好ましい。
【0036】
ボックスビーム形状の第2の部分74は、プレートの形状で、航空機胴体の外板の一部を構成する。
【0037】
2つの部分72と74との間を結合させるため、形剛84を設けて第2の部分74と第1の部分72の第1の壁64を形成する第1の面との間を結合させることができ、第2の部分74は第4の面78に当接する。この形剛84は、可溶性部品の働きをし、ボックスビーム形状の2つの部分72と74との間の接合を容易にしている。
【0038】
リブ82は、図5に示すように、前記リブ82と第2の部分74との間にスペース86が残るように適合した寸法にし、ボックスビーム形状の2つの部分72および74を組み立てる際に前記リブ82が前記第2の部分74と競合しないようにすることが好ましい。
【0039】
もう一つの利点によれば、枠部に胴体の外板を形成する第2の部分74が形剛84および第4の面78の辺りのみに接触していることにより、他の部品、とりわけボックスビーム形状の第1の部分72を押圧する役割を果たさない領域で、(板が弛緩する等の理由で)厚みを変える領域を決定することができる。
【0040】
傾斜壁68は、ボックスビーム形状の内部にアクセスできる孔88を備え、例えば突起部56の固定および場合によっては突起支持部90の固定ができるようにすることが有利である。
【0041】
リブ80および82にはアンダカットを形成する外板と接触する土台がないため、ボックスビーム形状の第1の部分72を複合材料で製造することが簡易になり、複雑な工具を必要とすることがない。
【0042】
さらに、これらの土台がなくなることによって、ボックスビーム形状の2つの部分72と74との間の接合を簡易化することができる。
【0043】
もう一つの利点によれば、このボックスビーム形状によって、とりわけ開口を円筒に近い形状をした胴体領域に設ける場合、図7に示すようなドア枠部の外形寸法を縮小することができる。
【0044】
このような領域では、胴体は、領域全体にわたって規則的かつ一定の間隔に従って配置する縦通材およびフレームで構成する構造を備える。図7に示すように、開口の幅がフレームの敷居2つ分とほぼ等しい場合、ボックスビーム形状の枠部にすることによって先行技術の梯子形状の構造(境界線を点線92で表示)よりもフレーム間の寸法を50%縮小することができる。
【0045】
もう一つの利点によれば、このボックスビーム形状によって、ドア枠部と胴体の残りの部分との結合が簡易になる。
【0046】
図5に示したように、ボックスビーム形状の第1の部分72、さらに詳細には第4の面78は、継目板の機能を果たすことができ、第2の部分74よりも先に延びて枠部で胴体の外板を形成する第2の部分74および胴体の外板42に単一の設置面ができるようにすることが有利である。この方法により、部品数が減る。
【0047】
もう一つの局面によれば、ボックスビーム形状の部分構造により、肋材および補剛材のフランジが外板と接触していたために複数の設置面を備えていた先行技術による方法とは逆に、単一の設置面があることにより、枠部と胴体の残りの部分との接合が簡易になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板が境界となる航空機胴体に設置する開口に設けるドア枠部であって、前記枠部は、前記開口の両側に配置する垂直な2つの部分構造(62)の間を連結する上方縦補剛材および下方縦補剛材を有し、この部分構造に、ドアによってかかる半径方向の応力を受ける少なくとも1つの突起部(56)を設けるドア枠部において、前記垂直部分構造(62)はそれぞれ、少なくとも3枚の複合材製の壁を有し、該壁が互いに連結して閉鎖した中空の断面を形成してボックスビーム構造となることを特徴とするドア枠部。
【請求項2】
複合材製の前記垂直な部分構造(62)はそれぞれ、第1の壁(64)と、該第1の壁(64)に連結し、該第1の壁(64)に対してほぼ直角に配置する第2の壁(66)と、前記第1の壁(64)および前記第2の壁(66)に連結してボックスビーム状となる傾斜した第3の壁(68)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項3】
前記第1の壁(64)は開口側面を形成し、前記第2の壁(66)は前記航空機の前記外板面に配置することができることを特徴とする、請求項2に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項4】
前記部分構造(62)はそれぞれ、胴体の外板で閉じた空洞を形成することができる第1の部分(72)を備えていることを特徴とする、請求項2または3に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項5】
ボックスビーム状の前記第1の部分(72)は、前記第1の壁(64)を形成する第1の面と、該第1の面に対してほぼ直角な第2の面(76)と、傾斜壁(68)を形成する第3の面と、胴体の外板に対する支持面の役割を果たす第4の面(78)とがある1区画を含むプレートで構成されることを特徴とする、請求項4に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項6】
ボックスビーム状の前記第1の部分(72)は、前記第1、前記第2および前記第3の面の航空機の外部に面する表面に対して直角に配置する第2の一連のリブ(82)を備えていることを特徴とする、請求項5に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項7】
前記リブ(82)は、該リブ(82)と胴体の外板との間にスペース(86)が残るように適合した寸法であることを特徴とする、請求項6に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項8】
ボックスビーム状の前記第1の部分(72)は、前記第3および前記第4の面の航空機内部に面する表面に対して直角に配置する第1の一連のリブ(80)を備えていることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項9】
ボックスビーム状の前記部分構造(62)はそれぞれ、前記第1の部分(72)の前記第1の壁(64)と胴体の外板との間とを結合するための形剛(84)を備えていることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項10】
前記部分構造(62)それぞれの前記第1の部分(72)の前記傾斜壁(68)は、ボックスビーム状の部分構造の内部にアクセスできる孔(88)を備えていることを特徴とする、請求項4から9のいずれか一項に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項11】
前記部分構造(62)はそれぞれ、胴体の外板面に配置する第2の部分(74)を備え、前記第1の部分は、継目板の機能を果たして枠部の前記第2の部分(74)および胴体の外板の残りの部分に単一の設置面を作る面(78)を有することを特徴とする、請求項4から10のいずれか一項に記載の航空機胴体に設置する開口に備えるドア枠部。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のドア枠部を有する航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−531343(P2012−531343A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516829(P2012−516829)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051317
【国際公開番号】WO2011/001081
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(509323440)エアバス オペレイションズ エスエーエス (13)