説明

航空機胴体のフレーム要素

【課題】航空機胴体の三角形領域、胴体タブ・フレーム領域、およびフレームの上部を構成する部品の設計を単純化するために、横断部材の一部分とフレームの一セクションが単一部品に一体化した航空機胴体のフレーム要素を提案する。
【解決手段】単一部品に一体化された横断部材の一部分1a、101a、102aとフレームの一セクション1b、101b、102bとを備える航空機胴体のフレーム要素101、102、103と、上部フレーム5、床横断部材3、および下部フレーム4を連結し、床ストラットに置き換わるセグメント1cを備える航空機胴体フレームとを備えさせ、横断部材のアセンブリと、フレーム要素101、102の横断部材の部分で、航空機の貨物室横断部材または手荷物用収納部を取り付ける横断部材を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機胴体のフレーム要素の実現化に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の航空機では、客室床、航空機の外板、および床ストラットの間に位置する領域は「三角形領域」と呼ばれている。
【0003】
既存の航空機では、床横断部材、フレーム、およびストラットは単純な部品であり、特に嵌込みによって堅固に、または接手を用いて可撓的に互いに組み立てられる。
【0004】
「胴体タブ・フレーム」と呼ばれる、貨物室横断部材の下に位置するフレームの部分は、湾曲したフレーム要素と、貨物室床の取り付け部として機能する横断部材とを備える。
【0005】
フレームの上部は、上部湾曲フレーム要素と、手荷物用収納部がその下に固定される横断部材とを備える。
【0006】
これら部材は、ねじ、リベット、または他の締結手段によって一体的に結合される。
【0007】
これら要素を互いに組み立てるには、特に床横断部材と上部フレームとの間に取り付けなければならない締結具が多数あるため、多大な時間を必要とする。
【0008】
特に横断部材/フレームは、伝達力が比較的大きい領域、すなわち嵌込みトルクの大きい領域で結合されなければならない。このため、フレームおよび横断部材の高さを局所的に高くすることで、結合に必要な締結具をすべて配置することが可能になる。
【0009】
部品の製造コストを低減し、連結部品の成形を簡単にするために、フレームは、押出し断面材、機械加工部材、折曲げ部材、または一体に組み立てられフレームなどのフレーム要素を形成する部材で実現することができる。
【0010】
取り付ける締結具の数が多いので、横断部材との結合部で一定の高さを保つことは、一般に、不可能である。このために、単体部品のコストが増加する。
【0011】
特許文献1には、上部フレームに床横断部材および下部フレームへの連結アームを備えた特定の実現法が記載されている。
【0012】
しかし、大型航空機に、そのような上部フレームを実現するには厄介かつ複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2,877,916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、航空機胴体の組立コストおよび時間の低減、機能性を変えずに構造の質量を低減することによる航空機の性能の改善、機体の構成部品数の低減、および、部品を単純化させることにより実現する製造コストの低減、である。
【0015】
具体的には、本発明の目的は、三角形領域、胴体タブ・フレーム領域、およびフレームの上部を構成する部品の設計を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、本発明は、横断部材の一部分とフレームの一セクションが単一部品に一体化した航空機胴体のフレーム要素を提案する。
【0017】
第1の実施形態によれば、航空機胴体のフレーム要素は金属部品で構成される。
【0018】
フレーム要素は、有利には、機械加工部品で構成される。
【0019】
第2の実施形態によれば、フレーム要素は、一体型の複合材部品で構成される。
【0020】
フレーム要素は、有利には、横断部材の一部分と、フレームの一セクションと、少なくとも1つのストラットとを備え、当該横断部材の一部分、フレームの一セクション、およびストラットは、一体型の三角形を形成する単一部品に一体化される。
【0021】
その場合、フレーム要素は、概ね三角形の角に結合部分を備える。
【0022】
この結合要素の領域は小さい力しか受けないので、これらの部品の断面の高さは、結合部分を連結するセグメントに対して一定のままである。
【0023】
一体型の三角形は、有利には、航空機の外板の曲率に適合するように、湾曲セグメントを備える。
【0024】
代替実施形態によれば、フレームのそのセクションは、航空機のフレームの湾曲した上部または下部セクションである。
【0025】
その場合、フレーム要素は、航空機のフレームの湾曲した上部または下部セクションを横断部材に連結する少なくとも1つのストラットを備え得る。
【0026】
さらに、本発明は、本発明によるフレーム要素を備える、航空機胴体フレームおよび横断部材のアセンブリであって、フレーム要素が、上部フレーム、床横断部材、および下部フレームを連結し、床ストラットに置き換わるセグメントを備える、航空機胴体フレームおよび横断部材のアセンブリに関する。
【0027】
床横断部材、下部フレーム、および上部フレームの少なくとも1つは、隣接する要素との結合部で、有利には、張出し部のない一定の高さを有する。
【0028】
本発明は、さらに、本発明のフレーム要素を実現する代替実施形態によるフレーム要素を備える、航空機胴体フレームおよび横断部材のアセンブリであって、フレーム要素の横断部材の部分が、航空機の貨物室横断部材または手荷物用収納部を取り付ける横断部材を形成する、航空機胴体フレームおよび横断部材のアセンブリに関する。
【0029】
本発明は、本発明による航空機胴体フレームおよび横断部材のアセンブリの少なくとも1つを備える航空機にも当てはまる。
【0030】
図面を参照しながら、本発明の非限定的例の以下の説明を読むことにより、本発明の他の特徴および利点が明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるフレーム要素の様々な実施形態を取り付けた航空機胴体セクションの図である。
【図2A】本発明の特定の実施形態による胴体フレーム要素の2つの変形形態の一図である。
【図2B】本発明の特定の実施形態による胴体フレーム要素の2つの変形形態の一図である。
【図3】上部フレーム、床横断部材、および下部フレームに連結された図2のフレーム要素の図である。
【図4】上部形状および床横断部材を有する、図3のフレーム要素のアセンブリの斜視図である。
【図5】本発明による諸要素を備える航空機の横断面の斜視図である。
【図6A】従来技術によるフレーム要素に基づく横断部材のアセンブリの正面図である。
【図6B】本発明によるフレーム要素を用いたアセンブリの正面図である。
【図7A】本発明に適用可能な締結システムの2つの例の一図である。
【図7B】本発明に適用可能な締結システムの2つの例の一図である。
【図8】本発明に適用可能な締結システムの第3の例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による、航空機胴体のフレーム要素の実現化に関して説明する。
【0033】
本発明のフレーム要素を取り付けた胴体の一セクションを表す図1によれば、本発明の3つのフレーム要素を用いて、完全な航空機フレームおよび横断部材を実現している。
【0034】
第1の要素は、フレーム要素101であり、横断部材部分101aが航空機の貨物室横断部材の形状を有し、「胴体タブ・フレーム」と呼ばれる湾曲した下部フレーム・セグメント101bを備える。
【0035】
第2の要素は、フレーム要素102であり、横断部材部分102aが、航空機の手荷物用収納部を取り付けるための上部横断部材を形成し、機体の天井を支持する湾曲した上部フレーム・セグメント102bを備える。
【0036】
第3の要素103は、上部フレームと、床横断部材と、下部フレームまたは貨物室横断部材との間に配置されたフレーム要素である。
【0037】
連結セグメント4および5を合わせて完全なフレームを構成し、それに基づいて航空機の胴体200が組み立てられる。図1は、対象とするフレームの位置および大きさに応じて、本発明の諸フレーム要素を併せてまたは別々に用いて実現することができる、連続する2つのフレーム、アセンブリ、即ち航空機フレームの大部分を表す。
【0038】
本発明の航空機胴体のフレーム要素101、102、103は、金属部品、具体的には最適な機械的特性を有する機械加工部品で構成することができ、または複合材料の一体部品で構成することができ、この場合、フレーム要素は、たとえば、完成部品を実現するために後から重合される樹脂を含浸させた複合材料の積層を併置することによって実現され、この積層は、フレーム要素セグメントを作成して結合部分の位置を跨ぐことができ、または、セグメント全体を形成するように切り抜いて、重ね合わせることができる。
【0039】
図2Aは、角に結合部分を備え且つ中央が空洞の、概ね三角形を有するフレームで構成される第3のフレーム要素103を表す。
【0040】
図2Aによれば、結合部分2a、2b、2cは、三角形の角の内側にあり、図2bでは、結合部分50、51、52は、三角形の角を越えて延出した張出し部である。
【0041】
フレーム要素103は、単一部品に一体化される、横断部材の一部分1a、フレームの一セクション1b、および床ストラット1cを備える。
【0042】
図3は、上部フレームおよび下部フレームが本発明のフレーム要素103に連結する領域での本発明の完全な航空機フレーム構造の一セクションを表し、そこには、1本の床横断部材3、1本の下部フレーム4または貨物室横断部材、および1本の上部フレーム5が示されている。
【0043】
本発明のフレーム要素の角に実現される床横断部材3、上部フレーム5、および下部フレーム4への結合部分2a、2b、2cは、フレーム要素103が単一の部品で実現された三角形であるので、従来の結合部分より少ない力を受ける領域になり、これら部分の断面の高さは、結合部分を連結するセグメント1a、1b、1cに対して実質的に一定のままになる。
【0044】
同様に、力の小さい領域で部品を結合するため、結合(三角形/フレーム、三角形/横断部材)に必要な締結具の数は少なくてよく、多くの締結具を取り付けるための張出し部を有する部品は必要なく、このように、結合部分2a、2b、2cは、強化張出し部を有さなくてよい。
【0045】
床横断部材は、力の小さい領域で三角形部品に連結されるため一定高さでよく、結果、製造コストが低減する。
【0046】
詳細には、床横断部材3は、図6Bに示されるように、フレーム要素に結合される箇所に張出し部を有することなく一定の高さlを維持しているのに対し、図6Aに示される従来技術の横断部材は、ストラットbとフレームdとの結合部cとの間の部分aにおいて、その中央部分aでの高さlに対して張り出し部lを備える。
【0047】
最後に、図3によってもやはり、本発明のフレーム要素は、力伝達領域での剛性を強化するスティフナを形成する強化リブ7を備える。
【0048】
フレーム要素103、床横断部材3、および上部フレーム5間の結合部を表す図4によれば、前述の部品を中間要素なしに組み立てることが可能である。
【0049】
具体的には、平坦または重ね合わせた連結部を実現するために、床横断部材は、本発明のフレーム要素に結合される領域において水平分枝の片側が取り除かれたIビームでもよい。
【0050】
また、図7Aに示されるような、従来技術の横断部材aとフレームdとの間の上部連結リンク10および下部連結リンク11や、これら同じ部品に対し図7Bに示されるような継目板13による連結、または、横断部材によるフレームdおよびストラットbとの表面接続に関し図8に示されるようなボルトまたはリベット連結部12を備える、従来技術による連結部を使用することもできる。
【0051】
航空機の一部分を表す図5に示されるように、本発明のフレーム要素1cにより上部フレーム部分5が下部フレーム4まで延長し、三角形の斜辺を形成するそのセグメント1bが、航空機胴体の外板6の曲率に適合するように湾曲している。
【0052】
横断部材3、下部フレーム要素4、および上部フレーム要素5は、本発明のフレーム要素103に結合される領域で同じ高さを有し、フレーム要素103がその領域の外側に一体の三角形部品を形成するだけであることから、製造が単純化されコストが低減する。
【0053】
このように、本発明の三角形フレーム要素に連結される部分は、結合領域の外側、詳細には、床横断部材側と下部フレームまたは貨物室横断部材側に位置するので、その一体型三角形部品に結合する領域内において同じ高さを有し、下部の三角形結合部2cは、特に、別の下部フレームおよび貨物室横断部材を受け入れるような寸法にすることができる。
【0054】
一体型三角形103を、組み立て部品(フレーム、ストラット、横断部材)の代わりに取り付けるのと同様に、弧と一体式の弦からなる一体型部品101および102を、貨物室横断部材の領域、または航空機上部のハット・ボックス(手荷物用収納部)につながる領域に取り付けることにより、組み立て部数を低減し、且つ取り付けた箇所の剛性をより高めることができる。
【0055】
一般的に言えば、この原理を適用して、ストラットを隣接する荷重支持要素に組み込むことができる。フレーム要素101および102は、フレーム要素103と同じ長所を有しており、特に特定の実施形態において、図1に示されるように、下部のフレーム要素101に1つまたは複数のストラット1cを備える。
【0056】
本発明のフレーム要素はまた、中空断面など、中空の本体を有するフレーム要素によって実現することもできる。
【0057】
本発明は、本明細書に示された例に限定されることなく、特に、本発明のフレーム要素を他のフレーム・セグメントに結合することに関し、他の原理、たとえば溶接、接着、圧着、偏心締結具、関節結合、嵌込みなどを考えることができる。
【0058】
同様に、重ね合わせや、シャックル式結合、突合せ結合により横断部材とフレームを結合することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1a 横断部材の一部分
1b フレームの一セクション
1c 床ストラット
2a 結合部分
2b 結合部分
2c 結合部分
3 床横断部材
4 下部フレーム
5 上部フレーム
6 外板
7 強化リブ
10 上部連結リンク
11 下部連結リンク
12 リベット連結部
13 継目板
50 結合部分
51 結合部分
52 結合部分
101 フレーム要素
101a 横断部材部分
101b 下部フレーム・セグメント
102 フレーム要素
102a 横断部材部分
102b 上部フレーム・セグメント
103 フレーム要素
200 航空機の胴体
a 横断部材
横断部材の中央部分
ストラットbと、フレームdとの結合部cと間の部分
b ストラット
c 結合部
d フレーム
l 高さ
高さ
張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一部品に一体化された横断部材の一部分(1a)とフレームの一セクション(1b)とを備える航空機胴体のフレーム要素(101、102、103)において、少なくとも1つのストラット(1c)をさらに備え、前記横断部材の一部分、前記フレームの一セクション、および前記ストラットが、一体型の三角形を形成する単一部品の3辺を形成することを特徴とする、航空機胴体のフレーム要素。
【請求項2】
金属部品で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項3】
機械加工部品で構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項4】
複合材料からなる一体部品で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項5】
全体的に三角形の角に結合部分(2a、2b、2c、50、51、52)を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項6】
前記結合部分が力の小さい領域にあることによって、各部品の断面の高さが、前記結合部分を連結するセグメント(1a、1b、1c)に対して一定であることを特徴とする、請求項5に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項8】
前記一体型の三角形が、航空機外板の曲率に適合するように、湾曲セグメント(1b)を備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の航空機胴体のフレーム要素。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項によるフレーム要素を備える、航空機胴体フレームと横断部材のアセンブリであって、前記フレーム要素(103)が、上部フレーム(5)、床横断部材(3)、および下部フレーム(4)を連結し、床ストラットに置き換わるセグメント(1c)を備えることを特徴とする、航空機胴体フレームと横断部材のアセンブリ。
【請求項10】
前記床横断部材(3)、前記下部フレーム(4)、および前記上部フレーム(5)の少なくとも1つが、隣接する要素に結合する箇所で、張出し部を有することなく一定高さ(l)であることを特徴とする、請求項9に記載の航空機胴体フレームと横断部材のアセンブリ。
【請求項11】
請求項9または10に記載の少なくとも1つの航空機胴体フレームと横断部材のアセンブリを備える航空機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−56662(P2013−56662A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−193366(P2012−193366)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(509265313)エアバス オペラシオン(エス.ア.エス) (20)