説明

航空機

【課題】バード・ストライクを阻止するのに有効なジェット・エンジンを備える航空機を提供すること。
【解決手段】鳥叩き落とし装置2の鳥叩き落とし棒21は、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの前面において、ジェット・エンジン1の外部に設けられ、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの開口面積よりも大きな回転面積を持って回転する。回転駆動装置22は、鳥叩き落とし棒21を回転駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェット・エンジンを有する航空機に関し、更に詳しくは、航空機におけるバード・ストライクを阻止する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
航空機におけるバード・ストライク(Bird Strike)は、飛行の不安定な離陸動作中(滑走、離陸直後)もしくは着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こりやすい現象であるため、航空機の安全な運行のためには、解決しなければならない重要な問題である。航空機のバード・ストライクは、日本国内において2006年には1233件の報告があった。例えば東京国際空港では118件、神戸空港では94件などである。これらによるエンジンの損傷や航空機の空港への引き返しなどによる損失は毎年国内だけで数億円程度あるといわれる。これを防ぐため各航空会社や空港はさまざまな対策を講じているが、これといった有効策がないのが現状である。
【0003】
バード・ストライクを防止する手段として、特許文献1は、ジェット・エンジンの空気吸入口部構造において、前記ストラットのエンジン前方側の先端部に、入口ダクト内に侵入する異物を切断するための切断刃を設けた構造を開示している。この特許文献1に開示された技術は、判りやすく言えば、鳥を「ミンチ」状にして、ストラットに掛かる衝撃を緩和しようとするものであって、バード・ストライクそのものを阻止しようとするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−23857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、バード・ストライクを阻止するのに有効なジェット・エンジンを備える航空機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る航空機は、ジェット・エンジンに、鳥叩き落とし装置を備えている。前記鳥叩き落とし装置は、鳥叩き落とし棒と、回転駆動装置とを備えている。前記鳥叩き落とし棒は、前記ジェット・エンジンの空気吸入口の前面において、前記ジェット・エンジンの外部に設けられ、前記ジェット・エンジンの前記空気吸入口の開口面積よりも大きな回転面積を持って回転する。前記回転駆動装置は、前記鳥叩き落とし棒を回転駆動する。
【0007】
上述したように、本発明に係る航空機では、ジェット・エンジンに鳥叩き落とし装置が備えられており、この鳥叩き落とし装置は、鳥叩き落とし棒を備えており、鳥叩き落とし棒は、ジェット・エンジンの空気吸入口の前面において、前記ジェット・エンジンの外部に設けられ、前記ジェット・エンジンの前記空気吸入口の開口面積よりも大きな回転面積を持って回転する。従って、ジェット・エンジンの空気吸入口に向かう鳥は、その内部に吸入される前に、回転する鳥叩き落とし棒によって叩き落され、排除されることになるから、バード・ストライクが阻止されることになる。
【0008】
鳥叩き落とし棒は、回転駆動装置によって回転駆動される。回転駆動装置は、ジェット・エンジンの回転を利用し、それを鳥叩き落とし棒に伝達するものであってもよいし、モータなどの回転駆動源を有し、ジェット・エンジンとは別に備えられていてもよい。
【0009】
回転駆動装置が、ジェット・エンジンの回転を利用し、それを鳥叩き落とし棒に伝達する構成の場合には、ジェット・エンジンと鳥叩き落とし棒との間にクラッチ機構を設け、必要な場合だけに限って、クラッチ機構によりジェット・エンジンの回転を鳥叩き落とし棒に伝えて、これを回転させることができる。鳥叩き落とし棒は、単数であってもよいし、複数本であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によれば、バード・ストライクを阻止するのに有効なジェット・エンジンを備える航空機を提供することができる。
【0011】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る航空機の一部を示す部分破断面図である。
【図2】図1に示した航空機を空気吸入側から見た図である。
【図3】本発明に係る別の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明に係る航空機の別の実施の形態について、その一部を示す部分破断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2を参照すると、本発明に係る航空機は、ジェット・エンジン1を有する。ジェット・エンジン1は、航空機の翼3の下面などに取り付けられている。ジェット・エンジン1を有する航空機の全体像、ジェット・エンジン1の取付構造、さらには、ジェット・エンジン1の内部構造などは周知であり、説明を要しない。ジェット・エンジン1は、例えば、図1に示すように、空気吸入口Aの側から、その反対側の排気口Bに向かって、空気吸入羽根12、圧縮機13、燃焼室(図示しない)、タービン(図示しない)、及び、排気口を順次に配置した構造である。
【0014】
本発明において、ジェット・エンジン1は、鳥叩き落とし装置2を備えている。鳥叩き落とし装置2は、鳥叩き落とし棒21と、回転駆動装置22とを備えている。鳥叩き落とし棒21は、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの前面において、ジェット・エンジン1の外部に設けられ、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの開口面積よりも大きな回転面積を持って、矢印Fで示す方向に回転する。即ち、鳥叩き落とし棒21は、その両端がジェット・エンジン1の外カバー10の外周面よりも外側に位置するような長さに設定する。回転駆動装置22は、回転軸23により、鳥叩き落とし棒21を回転駆動する。
【0015】
上述したように、本発明に係る航空機では、ジェット・エンジン1に鳥叩き落とし装置2が備えられている。この鳥叩き落とし装置2は、鳥叩き落とし棒21を備えており、鳥叩き落とし棒21は、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの前面において、ジェット・エンジン1の外部に設けられ、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aの開口面積よりも大きな回転面積を持って回転する。従って、ジェット・エンジン1の空気吸入口Aに向かう鳥は、その内部に吸入される前に、回転する鳥叩き落とし棒21によって叩き落され、排除されることになるから、バード・ストライクが阻止されることになる。
【0016】
鳥叩き落とし棒21は、回転駆動装置22によって回転駆動される。図1及び図2の実施の形態では、回転駆動装置22は、ジェット・エンジン1の回転体11の回転を受け、それを鳥叩き落とし棒21に伝達するようになっている。この場合には、ジェット・エンジン1と鳥叩き落とし棒21との間にクラッチ機構を設け、必要な場合だけに限って、クラッチ機構によりジェット・エンジン1の回転を鳥叩き落とし棒21に伝えて、これを回転させることができる。航空機におけるバード・ストライク(Bird Strike)は、離陸動作中(滑走、離陸直後)もしくは着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こりやすい現象であり、高高度を保って安定飛行しているときは起こらない現象である。そこで、回転駆動装置22に備えられたクラッチ機構により、離陸動作中もしくは着陸動作中に限って、ジェット・エンジン1の回転を鳥叩き落とし棒21伝達し、高高度の安定飛行時にはジェット・エンジン1の回転が鳥叩き落とし棒21伝達されないように、回転駆動装置22に備えられたクラッチ機構を切り替えるようにする。これにより、鳥叩き落とし装置2によるエネルギーロス、運転効率の低下を回避することができる。このような動作を行わせるために、鳥叩き落とし装置2の回転駆動装置22を、支持体14などによって、ジェット・エンジン1の外カバー10に取り付ける構造とすることが好ましい。
【0017】
鳥叩き落とし棒21は、断面円形状、角形状であってもよいし、或いは、板状、ブレード状等であってもよい。材質的には高強度のもの、例えば、チタン合金などが好ましい。図1及び図2の実施の形態では、鳥叩き落とし棒21は、単数であるが、図3に示すように、2本以上の複数本であってもよい。
【0018】
本発明に係る航空機の別の形態を示す図4を参照すると、回転駆動装置22は、ジェット・エンジンの回転体1の前面に回転体11から距離をおいて、分離して備えられ、支持体14によって、ジェット・エンジン1の外カバー10に吊り下げられている。この回転駆動装置22は、モータなどの回転駆動源を内蔵しており、ジェット・エンジン1の回転から分離して、鳥叩き落とし棒21を回転駆動する。この構造によれば、鳥叩き落とし装置2がジェット・エンジン1の回転負荷になることがないので効率が上がるし、鳥叩き落とし装置2の運転操作をジェット・エンジン1から分離して行うことができるので、飛行運転システムに対する影響が少なくて済む。
【0019】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0020】
1 ジェット・エンジン
2 鳥叩き落とし装置
21 鳥叩き落とし棒
22 回転駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット・エンジンを有する航空機であって、
前記ジェット・エンジンは、鳥叩き落とし装置を有しており、
鳥叩き落とし装置は、鳥叩き落とし棒と、回転駆動装置とを備えており、
前記鳥叩き落とし棒は、前記ジェット・エンジンの空気吸入口の前面において、前記ジェット・エンジンの外部に設けられ、前記ジェット・エンジンの前記空気吸入口の開口面積よりも大きな回転面積を持って回転するものであり、
前記回転駆動装置は、前記鳥叩き落とし棒を回転駆動する、
航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163234(P2011−163234A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27859(P2010−27859)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【特許番号】特許第4587494号(P4587494)
【特許公報発行日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(593182071)有限会社奥戸溶接 (2)
【出願人】(510039183)
【出願人】(510039024)