説明

舶用ボイラの蒸気温度制御方法及び制御装置

【課題】 舶用ボイラに適用して、より効率が高く安定した運転ができる蒸気温度制御方法および蒸気温度制御装置を提供する。
【解決手段】 煙道13が再熱器パス14と過熱器パス15に分割され、過熱蒸気は緩熱器18に通す蒸気量およびスプレ減温器36のスプレ量で温度制御して高圧蒸気タービンに供給し、再熱蒸気は再燃器パス14の再燃ダンパ25の開度により温度制御して中・低圧蒸気タービンに供給する舶用ボイラに適用する蒸気温度制御方法であって、再熱蒸気温度が、過熱蒸気と再熱蒸気の定格温度の差に基づいて決まるバイアスを過熱蒸気温度の実測値に加えた温度を設定値として制御されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主蒸気温度を調整する内部緩熱器と再熱蒸気温度を調整する再熱ダンパを備えた舶用ボイラにおいて、主蒸気温度と再熱蒸気温度の両方を安定的に制御する舶用ボイラ蒸気温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用タービンに使用する再熱ボイラは、たとえば、燃焼室に煙道が接続され、煙道は再熱器パス(RHパス)と過熱器パス(SHパス)に2分割されていて、各パスにダンパが設備されたものである。再熱器パスには節炭器と第1,第2の再熱器と第3の過熱器が配置され、過熱器パスには節炭器と第1,第2,第4の過熱器が配置される。再熱ボイラには、さらに、緩熱器が組み込まれた蒸気ドラムが設けられていて、蒸気ドラムで発生する蒸気は過熱器を通って過熱され、必要に応じてスプレ弁を通じて供給される水で冷やされ、緩熱器で冷やされる蒸気とバイパス路を通る蒸気に分割され、その後に合流混合して主蒸気として高圧蒸気タービンに供給される。
【0003】
舶用ボイラは、過熱器に水蒸気を通してたとえば565℃12MPaの過熱蒸気を生成し主蒸気として高圧蒸気タービンを駆動すると共に、高圧蒸気タービンから環流する水蒸気を再熱器に通してたとえば545℃3MPaの蒸気とし、中圧・低圧蒸気タービンを駆動する。蒸気タービンは1軸結合され協働して推進器を駆動する。
同じ構成のボイラが並列に2缶設置される場合もある。
【0004】
従来の蒸気温度制御方法では、主蒸気の温度は、緩熱器に導く蒸気量を蒸気流量調節弁で調整することにより制御する。なお、蒸気流量調節弁における差圧を確保するため、バイパス路中にオリフィス板を設けてある。
一方、再熱蒸気は高圧蒸気タービンから環流する蒸気を再熱器パスに設置された再熱器で再熱して中圧・低圧蒸気タービンに供給するが、再熱蒸気温度は再熱器パスに設けられた再熱ダンパにより再熱器パスを流れる燃焼ガス量を調整することにより制御する。
【0005】
このように、従来の蒸気温度制御方法は、主蒸気温度は内部緩熱器供給蒸気流量調節弁で、また再熱蒸気温度は再熱ダンパで制御するもので、制御対象と操作端を1:1に結びつけたため役割分担が明確で分かりやすい。
しかし、再熱蒸気の温度を上昇させるため再熱ダンパの開度を大きくすれば、過熱器パスの燃焼ガス量が減少して主蒸気温度が低下し、逆に再熱蒸気の温度を低下させるため再熱ダンパの開度を小さくすれば、過熱器パスの燃焼ガス量が増加して主蒸気温度が上昇する。このように、主蒸気温度と再熱蒸気温度は相互に干渉する関係にあるため、制御が難しい。
【0006】
特許文献1には、排ガス再循環路を備えた火力発電所のボイラについて、再熱蒸気温度の設定値との偏差に基づいて排ガス再循環ダンパの開度を制御し、さらにその偏差の積分値に基づいて過熱器側ガス分配ダンパと再熱器側ガス分配ダンパの開度を制御する、再熱蒸気温度制御装置が開示されている。ここでは、主蒸気温度は過熱器スプレで注水することにより制御される。
【0007】
なお、特許文献2には、舶用ボイラにおいて、緩熱器バイパス管に設けたオリフィスを条件に応じて取り替える代わりに、ニードルバルブ機構を持つ可変流量調整装置にして手動調整を可能にした、過熱蒸気の温度制御装置が開示されている。ただし、本開示発明では、バイパス流量および緩熱器流量の調整を手動で行うことになり、不測の温度変動に対応する機能は持っていない。
【特許文献1】特開昭58−200907号公報
【特許文献2】特開平10−089612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、煙道が再熱器パスと過熱器パスに分割され、主蒸気は緩熱器に通す蒸気量およびスプレ量で温度制御して高圧蒸気タービンに供給し、再熱蒸気は再熱器パスの再燃ダンパの開度により温度制御して中・低圧蒸気タービンに供給する舶用ボイラについて、より効率が高く安定した運転ができる蒸気温度制御方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の舶用ボイラの蒸気温度制御方法は、煙道が再熱器パスと過熱器パスに分割され、主蒸気は緩熱器に通す蒸気量またはスプレ量あるいはその両方で温度制御して高圧蒸気タービンに供給し、再熱蒸気は再熱器パスの再燃ダンパの開度により温度制御して中・低圧蒸気タービンに供給する舶用ボイラに適用する蒸気温度制御方法であって、再熱蒸気温度が、主蒸気と再熱蒸気の定格温度の差に基づいて決まるバイアスを主蒸気温度の実測値に加えた温度を設定値として再熱蒸気温度を制御することを特徴とする。
【0010】
本蒸気温度制御方法に従えば、再熱蒸気温度が、常に主蒸気温度に対して最適な相関を持って制御されるので、燃料を変更した場合やバーナ数を変更した場合など、静特性が変化しても、安定した運転が可能である。
定格温度にしたがってボイラ諸元や熱交換器仕様を決めているので、たとえば、主蒸気温度測定値より両者の定格温度の差だけ低い値を再熱蒸気温度の設定値として温度制御すれば、タービンはもとよりボイラ各部の熱ストレスも許容範囲に収まり、安全な運転ができる。
【0011】
なお、再熱蒸気温度設定値を決めるバイアスは、最適値がボイラ負荷によって異なり、たとえば、主蒸気温度が565℃、500℃、450℃、400℃と異なる場合には最適バイアスはそれぞれ−20℃、−25℃、−30℃、−35℃と変化する。なお、陸上のボイラでは、再熱蒸気温度が主蒸気温度より高いケースも存在する。このような変化に対応するため、可変バイアス装置を備えることもできる。
【0012】
また、主蒸気温度制御は、ボイラ負荷が主蒸気の定格温度以下に対応する領域においては、定格温度を上限として、所定のプラスバイアスを主蒸気温度の実測値に加えた温度を設定値として行うことが好ましい。このようにして、可能な限り定格温度に近い高い蒸気温度を保ち減温(緩熱)手段を最小とした制御を行うことができる。
なお、ボイラ負荷が主蒸気の定格温度に対応する領域においては定格温度を設定値として主蒸気の温度制御をすることになる。
【0013】
定格温度以下の領域では、ボイラ負荷と主蒸気温度の関係は静特性にしたがって決定される。本発明では、主蒸気温度の実測値にバイアスを加えた値を設定値とすることにより、常にこの負荷−蒸気温度の相関線より上に主蒸気温度設定値を設定するので、主蒸気温度は常時、ボイラ負荷に対応した最高値を維持して、最高の熱効率を維持することになる。
【0014】
主蒸気温度の制御は、主蒸気の一部を緩熱器に通すことにより行うことができる。また、主蒸気温度が急上昇する場合に主蒸気に水をスプレして減温するスプレ減温器を備えて、そこにスプレ水を注入して制御することができる。
さらに、過熱器の間に減温器を配置し、通常の場合に緩熱器に通す蒸気量で制御し、主蒸気設定値に所定のバイアスを加えた温度を超えるときにスプレ減温器を用いて主蒸気の減温を行うようにすることもできる。
なお、緩熱器に通す蒸気流量を確実に制御するため、緩熱器に蒸気を供給する蒸気流量調節弁と緩熱器を迂回するバイパス流路に設けたバイパス流量調節弁が互いに逆方向に作動するように構成することができる。
【0015】
再熱モードと非再熱モードの切り替え時や、クラッシュアスターン時など、急激に主蒸気温度が上昇した場合に、緩熱器を使った温度制御では応答性が不足して十分に対処できないことがある。そこで、応答性のよいスプレを使って対処することが好ましい。なお、主蒸気温度を急激に変動させる要因を検知したときに、これを先行信号ととらえて予めスプレを使って相殺する方法を使うこともできる。
【0016】
なお、舶用ボイラを2基備えた船舶では、2基のボイラについて均衡を維持する必要がある。このため、再熱蒸気温度の設定値は2基の舶用ボイラのうち低い方の主蒸気温度を基準として生成され、2基の舶用ボイラに共通に提供されるようにすることが好ましい。また、主蒸気温度についても同様に、設定値は2基の舶用ボイラのうち低い方の主蒸気温度を基準として生成され、2基の舶用ボイラに共通に提供されることが好ましい。
本方式によれば、2基の蒸気温度において大きな温度差を生じることなく、減温量が最小になるので、全体としての効率が向上する。
【0017】
また、本発明の舶用ボイラの蒸気温度制御装置は、上記課題を解決するため、2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御装置の温度設定値を提供する第1の共通回路であって、2基のボイラにおける主蒸気温度の低い方を選択して出力する比較器と主蒸気と再熱蒸気の定格温度の差を設定することができる関数発生器と、比較器の出力と関数発生器の出力を加算する加算器を備えて、加算器の出力を温度設定値として2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御器の設定器に提供する共通回路を備えることを特徴とする。
【0018】
第1共通回路は、さらに 加算器から得られる温度設定値に対して上限値を限る上限リミッタと、前回指令した温度設定値に対して変化率を制限する変化率制限器とを備えて、算出された設定値に上限値と変化率を限る補正をかけて2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御装置の温度設定値として提供するようにしてもよい。
【0019】
さらに、2基のボイラにおける主蒸気温度の低い方を選択して出力する第2の比較器と、所定のプラスバイアスを設定することができる第2の関数発生器と、第2比較器の出力と第2関数発生器の出力を加算する第2の加算器を備えて、第2加算器の出力を温度設定値として2基の舶用ボイラの主蒸気温度制御器の設定器に提供する第2の共通回路を備えてもよい。
また、ボイラの燃焼吸気量の変化から排ガス量の変動を算定する微分回路と、過熱ダンパ開度制御信号から微分回路出力信号を差し引いて出力する減算器を備え、微分回路の主蒸気温度変動予測値を用いて過熱ダンパ開度制御信号を調整して、過熱ダンパの開度調整をするようにしてもよい。
【0020】
さらに、再熱ダンパの開度測定値を入力して過熱器パス側の燃焼ガス流量配分比率を算定する演算装置と、演算装置出力信号と燃焼空気流量測定値の乗算値を算出する乗算器と、微分器と加算器から構成され乗算器出力から主蒸気温度の変動を予測する変動推定器を備え、主蒸気温度の変動予測値を用いて主蒸気流量調節弁の開度制御信号を調整して、微分回路により燃焼空気量の変化から排ガス量の変動を計算し、減算器により蒸気流量調節弁の制御信号を開度調整信号で調整して、蒸気流量調節弁の開度調整をするようにしてもよい。
なお、バイアス温度を発生する関数発生器と、主蒸気温度設定値とバイアス温度を加算する加算器を備え、主蒸気温度設定値に対して所定温度だけ高いオーバーライド値をSHスプレ温度設定値としてボイラ出口における主蒸気温度制御器の比較器に入力するようにすることができる。
【0021】
制御器の比較器においてマイナス偏差を発生させることにより、通常時はSHスプレ調節弁が全閉になるようにし、かつ、主蒸気温度が蒸気温度設定値を超えているときおよび主蒸気温度がSHスプレ設定温度を超えたときには、SHスプレ調節弁を開いて水を供給して蒸気温度を急冷する作用が発生する。
アスターン時など、ボイラ負荷が減少して主蒸気温度設定値を降下させたときは、SHスプレ温度設定値も降下する主蒸気温度設定値にスライドしてこれに所定温度だけ加えた温度にSHスプレ温度設定値を設定することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の1実施例に係る舶用ボイラの蒸気温度制御方法について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施例における舶用ボイラ周辺の蒸気流れ図、図2は本実施例の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御方法のブロック図、図3は再熱蒸気温度制御の設定温度を説明する線図、図4は本実施例の舶用ボイラの主蒸気温度制御方法のブロック図、図5は主蒸気温度制御の設定温度を説明する線図、図6は主蒸気のスプレ制御方法のブロック図、図7はスプレ制御温度制御の設定温度を説明する線図、図8は非再熱モードから再熱モードに切り換える手順を表すフローチャート、図9は再熱モードから非再熱モードに切り換える手順を表すフローチャートである。
【0023】
本実施例は、図1に示す舶用ボイラに本発明の蒸気温度制御方法を適用した例である。
本実施例において適用の対象とする舶用ボイラ1は、バーナ12が下向きに設置された燃焼室11に再熱器パス(RHパス)14と過熱器パス(SHパス)15に分かれた煙道13が設置された再熱ボイラである。
燃焼室11には、上部に蒸気ドラム16,下部に水ドラム17が設けられ、壁に設けられた図示しない蒸発管で結合されている。また、蒸発ドラム16あるいは水ドラム17に緩熱器18が組み込まれている。
【0024】
煙道13の再熱器パス14には節炭器21と第1再熱器22と第2再熱器23と第3過熱器24が配置され、下流に再熱ダンパ25とRHプロテクションダンパ26、さらに再熱ダンパ25とRHプロテクションダンパ26の間に接続された空気配管27にシールエアダンパ28が設けられている。また過熱器パス15には、節炭器31と第1過熱器32と第2過熱器33と第4過熱器34が配置され、下流にSHダンパ35が設けられている。
【0025】
蒸気ドラム16で発生する蒸気は、過熱器パス15の第1,第2過熱器32,33で過熱された後、必要に応じてスプレ減温器36で温度を低減させて、再熱器パス14の第3過熱器24で加温し、一部を緩熱器18に通し残りをバイパス流路37に通し、合流させて温度調整し、さらに第4過熱器34に通して目標の温度・圧力にした蒸気を高圧蒸気タービン2に供給してタービンを駆動する。
【0026】
高圧蒸気タービン2で働いた後の蒸気は、再熱器パス14の第1,第2再熱器22,23に導いて再加熱した後に、中低圧蒸気タービン3に供給してタービン駆動し、図外の復水器で復水して、給水ポンプ、給水加熱器を経て再びボイラに供給し、主蒸気にして利用する。
高圧蒸気タービン2と中低圧蒸気タービン3は1軸を共有し、回転軸は推進器ギヤボックスに結合されてスクリューを駆動する。
【0027】
本ボイラは、負荷が所定の値以上であるときには、再熱器パス14に燃焼ガスを通して再熱器22,23を使用する再熱モード(RHモード)で運転するが、船速が低下してボイラ負荷が小さくなったときには、再熱器パス14を使わない非再熱モード(NRHモード)で運転する。
【0028】
再熱モードでは、SHダンパ35とRHプロテクションダンパ26は全開、シールエアダンパ28は全閉、再熱ダンパ25は操作信号により調整された開度を有する。
また、非再熱モードでは、SHダンパ35は全開、再熱ダンパ25とRHプロテクションダンパ26は全閉、シールエアダンパ28は全開として再熱器パス14の上流端部でエアシールを行って再熱器パス14を閉止し、燃焼ガスの流通を遮断する。
【0029】
本実施例における蒸気温度制御システムは、再熱蒸気温度制御システムと、主蒸気温度制御システムと、SHスプレ制御システムと、モード切り換えシステムから構成される。
【0030】
(再熱蒸気温度制御システム)
再熱蒸気温度制御システムは、基本的には、中低圧蒸気タービン3に供給する再熱蒸気の温度を温度検出器51で検出し、高圧蒸気タービン2に供給する主蒸気の温度を温度検出器61で検出して、温度調節器52により再熱ダンパ駆動器53を駆動し再熱ダンパ25の開度を調整して、主蒸気温度から導出される再熱蒸気温度設定値との偏差が無くなるように制御するものである。
【0031】
再熱ダンパ25は、再熱器パス14と過熱器パス15を流れる燃焼ガス配分を調整するもので、再熱蒸気温度と主蒸気温度は再熱ダンパ25の動作に関して相反する関係にある。すなわち、再熱ダンパ25の開度を大きくして再熱蒸気温度を上昇させようとすると、過熱器パス15を通過する燃焼ガス量が減少するため主蒸気温度は下降する。また、逆に、再熱ダンパ25を操作して再熱蒸気温度を下降させようとすると、主蒸気温度は上昇することになる。
【0032】
本実施例では、主蒸気の定格温度は565℃であり、再熱蒸気の定格温度はこれより20℃低い545℃である。なお、本ボイラの静特性上、最大負荷の所定割合以下のボイラ負荷帯においては、主蒸気温度は定格温度565℃を維持できず、緩熱器18に通じる蒸気流量調節弁63は全閉状態になって、主蒸気温度は静特性に従う温度を示すことになる。この場合でも、再熱蒸気温度は、主蒸気温度より約20℃低い状態であることが望まれる。
そこで、再熱蒸気温度は、常に主蒸気温度に対して約20℃低くなるように制御する、主蒸気・再熱蒸気温度差一定制御を基本とする。
【0033】
なお、1隻の船舶に舶用ボイラが2基設けられた場合は、2缶の再熱蒸気温度や主蒸気温度に大きな温度差が生ずることは好ましくない。
蒸気温度に差が生じないようにするため、2缶の負荷はできるだけ均等になるように運用するが、主蒸気温度については低い方に合わせた設定値を使用するが、再熱蒸気温度については、2缶のうち低い方の主蒸気温度を基準にして2缶に共通の再熱蒸気温度設定値を生成して、大きな偏差が生じないようにする。
このため、第1ボイラと第2ボイラそれぞれの再熱蒸気温度制御器52に同じ設定値を与えるための共通回路を備えて、ボイラ運用の均衡を図ることが好ましい。
【0034】
また、負荷変動等により燃料と共に燃焼空気流量が変化した場合は、再熱蒸気温度は影響を受けて一時的に変動する。したがって、空気流量を測定していて、空気流量の変化があったときに、再熱器パス14を流れる排ガス流量の変化を抑える方向に再熱ダンパ25を動作させれば、再熱蒸気温度の変化を抑制して安定的に推移することになる。
【0035】
図2は再熱蒸気温度制御システムの詳細を説明するブロック図である。
1隻の船舶に舶用ボイラが2基設けられた場合は、第1ボイラと第2ボイラそれぞれの再熱蒸気温度制御器に同じ設定値を与える共通回路110を備えて、ボイラ負荷の均衡を図る。
【0036】
共通回路110は、第1ボイラの出口における主蒸気温度と第2ボイラの出口主蒸気温度を入力してより低い方の温度を選択する比較器111、再熱モード時の再熱蒸気温度設定偏差を発生する第1関数発生器112、非再熱モード時に再熱蒸気温度を十分低温とするためたとえば−200℃など大きな設定偏差を発生する第2関数発生器113、比較器111の出力と第1関数発生器112の出力の和を取る第1加算器114、比較器111の出力と第2関数発生器113の出力の和を取る第2加算器115、再熱モード時には第1加算器114の出力を選択し非再熱モード時には第2加算器115の出力を選択して出力する選択器116、選択器116の出力が装置の適正範囲を超えないように上下限値で制約するリミッタ117、さらに、選択器116の出力が装置で認められる最大変化率を超えないように制約する変化率制限器118で構成される。
共通回路110の出力は再熱蒸気温度制御器52の設定器121に入力される。船舶に舶用ボイラが2基設けられた場合は、それぞれの再熱蒸気温度制御器に同じ設定値を与える。
【0037】
再熱蒸気温度制御器52は、入力部に比較器122を備え、温度検出器51から温度信号を入力して設定器121の出力信号との偏差信号を制御器123に渡す。制御器123は、偏差について比例積分操作(PI)を施して適当な操作出力信号を生成する。
燃焼空気量の測定値を入力して空気量の変動を検出して再熱蒸気温度の変化を先行して予測する微分回路124と減算器125を備え、制御器123の操作出力から空気量変動の影響量を差し引いた値を入力切換器126と自動手動切換器127を介して再熱ダンパコントロールドライブ53に供給し、再熱ダンパ25を駆動する。
【0038】
再熱ダンパ25の開度が大きくなれば、再熱器パス14を流れる燃焼ガス量が増大して再熱蒸気の受ける熱量が増加するので、再熱蒸気温度が上昇する。また、再熱ダンパ25の開度が小さくなれば、再熱蒸気温度は下降する。したがって、再熱蒸気温度制御システムにおける再熱ダンパ25の開度調整によって、再熱蒸気温度を主蒸気温度測定値に対して一定の相関を維持するように制御することができる。
【0039】
なお、入力切換器126には、制御器52からの信号の他に、再熱ダンパ25を強制的に全閉とする全閉指令信号、ボイラトリップ時や火炉パージ実施時などに未燃ガスの滞留を防止するため再熱ダンパ25を全開とする全開指令信号、再熱モード切替時に適切な初期熱量を与えるような割合の開度指令信号が入力され、選択して出力することができる。
【0040】
図3は再熱蒸気温度制御システムにおける設定値と蒸気温度の関係を示す図面である。
共通回路110により、2缶の主蒸気温度測定値の低い方を選択し、これから20℃減じた値を遷移時における再熱蒸気温度の設定値とする。
最大負荷に対して所定割合以下の定格出力より低い領域においては、主蒸気温度は図中に実線で示すようにボイラの静特性に従って負荷が減少するにつれて温度も低下する。また、定格運転が可能な最大負荷に対して所定割合以上の負荷帯においては、主蒸気温度はその定格値565℃に安定し、再熱蒸気温度設定値は主蒸気定格温度に対して所定のバイアスだけ低い再熱蒸気定格温度545℃に安定させる。なお、再熱蒸気温度設定値は、リミッタ117によりRH定格値の545℃を大きく超えない545℃+αに制限される。
【0041】
なお、共通回路110は、第1と第2のボイラの内、低い方の主蒸気温度、すなわち負荷が小さい方のボイラの主蒸気温度を基準として、再熱モードでは基準の主蒸気温度よりたとえば20℃低い目標値を生成して、再熱蒸気温度制御器52の設定値として供給する。採用するバイアス温度は主蒸気の定格温度と再熱蒸気の定格温度の差と同じ値であれば、タービンはもとよりボイラや熱交換器における熱ストレスなどの変化が小さくなるので好ましい。
また、非再熱モード時には、再熱器パス14を閉止するので、たとえば200℃低温に設定することにより、過渡時には変化率制御器118を経て再熱蒸気温度設定値を徐々に減少させ、再熱ダンパ25を全閉にする。
【0042】
本実施例によれば、主蒸気温度の実測値を基準にして再熱蒸気温度設定値を決めるので、液体燃料、ガス、混焼の種々の燃料モード毎に静特性が異なり、またボイラ伝熱面に汚れが生じた場合などにも静特性が変化するが、このような静特性のずれが生じても、関数演算器などの設定変更作業なしにSH、RHの收熱量配分を最適に保ちながら、また蒸気温度が低下する中低負荷帯でも可能な限り高い蒸気温度を保つように動作し、さらに2缶のボイラの合計減温量が最小となるように動作して、ボイラ効率が最大になる運転ができる利点がある。
【0043】
(主蒸気温度制御システム)
主蒸気温度制御システムは、基本的には、主として内部緩熱器を流れる蒸気流量を調節することにより温度制御を行い、温度調節器62で緩熱器18で冷やされる蒸気量を調節する蒸気流量調節弁63の開度を調整して、温度検出器61で検出した主蒸気温度が所定の目標温度に合致するように制御するものである。
【0044】
なお、従来は、バイパス路37に固定オリフィスを設けることにより蒸気流量調節弁63の入口と出口の間に差圧を生じさせ、これを緩熱器を流れる蒸気の推進力としてきた。しかし、RHボイラではより大きな流量範囲について制御可能であることが求められるので、従来方法では不十分であった。
そこで、本実施例では、固定オリフィスに代えてバイパス流量調節弁64を設けることにより、蒸気流量調節弁63の入口と出口の間に十分な差圧を確保した。
温度調節器62は、バイパス路37に設けたバイパス流量調節弁64を蒸気流量調節弁63と反対方向に同時に駆動することにより、蒸気流量調節弁63を有効に作動させている。
【0045】
ただし、再熱蒸気温度が再熱ダンパ25により制御されるときに、過熱器パス15を流れる燃焼ガス量が変動するため、蒸気流量調節弁63は主蒸気温度偏差のみならず、最終的には再熱蒸気温度制御により生じる変動をも吸収しなければならない。
【0046】
図4は主蒸気温度制御システムの詳細を説明するブロック図である。
舶用ボイラが2基設けられた場合に備えて、第1ボイラと第2ボイラそれぞれの主蒸気温度制御器に同じ設定値を与える共通回路130を設ける。
共通回路130は、第1ボイラの主蒸気温度と第2ボイラの主蒸気温度を入力して低い方の温度を選択する比較器131、たとえば10℃など適度なバイアスを発生する第1関数発生器132、比較器131から出力される主蒸気温度測定値と第1関数発生器132から出力されるバイアス温度を加える第1加算器133、ここでは565℃である定格主蒸気温度を発生する第2関数発生器134、550℃を発生する第3関数発生器135、第2関数発生器134と第3関数発生器135のうちひとつを出力する選択器136、加算器133の出力を選択器136の出力で上限制約するリミッタ137、設定温度の変化速度を制約して過激な蒸気温度変化を防止する変化率制限器138で構成される。
【0047】
共通回路130の出力は主蒸気温度制御器62の設定器141に入力される。舶用ボイラが2基設けられる場合は、第2のボイラの主蒸気温度制御器の設定器にも同じ出力が供給される。
主蒸気温度制御器62は、入力部に比較器142を備え、温度検出器61から主蒸気温度信号を入力して設定器141の出力信号との偏差信号を制御器143に渡す。制御器143は、偏差について比例積分操作(PI)を施して適当な操作出力信号を生成する。
【0048】
また、操作出力信号には、燃焼ガス変動に起因する主蒸気温度変動を予測して抑制するため、先行操作を加味している。過熱器パスにおける燃焼ガス流量の代替変数として、燃焼室11の燃焼空気流量を使うのでは十分でなく、燃焼空気流量の測定値に過熱器パスの燃焼ガス流量配分を乗じた値を先行操作量関数として使用する。
【0049】
このため、再熱ダンパ25の開度を入力して燃焼ガス流量の過熱器パス15側配分比率推定値を算定する演算装置144、演算装置の出力と燃焼空気流量の測定値を乗じる乗算器145、乗算器145の出力を入力して主蒸気温度の変動を先行して予測する微分回路146と第2加算器147を備え、制御器143の操作出力と第2加算器147から出力される主蒸気温度変動予測値を加えて補正する第3加算器148、補正した操作信号を入力切換器149と自動手動切換器150を介して蒸気流量調節弁63に供給する。なお、自動手動切換器150の出力は、信号変換器151で逆相変換されてバイパス流量調節弁64に供給され、緩熱器18に流す蒸気量を広範に調節できるようにバイパス路37に発生する差圧を調整する。
【0050】
なお、入力切換器149には、第3加算器148からの信号の他に、蒸気流量調節弁63を強制的に全閉とする全閉指令信号が入力され、選択して出力することができる。
また、蒸気流量調節弁63とバイパス流量調節弁6は、制御器から切り離して手動調整する場合にも逆相動作をさせる必要があるので、信号変換器151は機械的に逆相変換させる機構を有するものであることが好ましい。
【0051】
図5は主蒸気温度制御システムにおける設定値と蒸気温度の関係を示す図面である。
低負荷時には、共通回路130により、2缶の主蒸気温度測定値の低い方を選択し、これを基準としてたとえば10℃プラスのバイアスを持たせた値を遷移時における主蒸気温度の設定値とする。なお、高負荷状態において、主蒸気温度を定格温度に保持するためには、緩熱器に蒸気の一部を通すなどして減温する必要がある。
【0052】
これにより、燃料モードの切換、バーナ本数の変化、火炉汚れ等により静特性に変化があっても、蒸気温度が定格温度に届かない最大負荷の所定割合以下の中・低負荷領域においては、可能な限り主蒸気温度を高く保持して効率を維持するようになっている。また、蒸気流量調節弁は、低負荷領域において、動的に蒸気温度が急増する場合を除き、静的には全閉状態を保つ。
【0053】
(SHスプレ制御システム)
SHスプレ制御システムは、主蒸気温度が急激に上昇して緩熱器によっては熱量の吸収が十分でないときなどに、緊急的に利用されるものである。温度検出器61で検出した主蒸気温度が異常に上昇したときに、温度調節器71によりスプレ調節弁72を開いてスプレ減温器36で蒸気中に水をスプレして温度を急速に低減させて対処する。SHスプレ制御システムは、緩熱器による減温と比較すると応答性が優れている。
【0054】
緩熱器を流れる蒸気流量を調節弁で調節することにより蒸気温度を制御する主蒸気温度制御は本来緩慢である一方、再熱蒸気温度制御における再熱ダンパ操作によって変動する再熱ガス流量はそのまま主蒸気温度制御に対する外乱となって現れるので、主蒸気温度は大きな影響を受けることになる。さらに、クラッシュアスターン時には、非再熱モードに切り換えるので、再熱ダンパが全閉して燃焼ガス全量が過熱器パスに流入して急激な主蒸気温度上昇が発生する。このような急激な温度上昇が発生したときに備えて、SHスプレ制御システムが準備されている。
【0055】
図6は、SHスプレ制御システムの詳細を説明するブロック図である。
SHスプレ制御システムは緊急の場合に利用するものであるので、舶用ボイラが2基設けられた場合にも、第1ボイラと第2ボイラそれぞれ独立に設けられる。
SHスプレ制御システムは、常時はスプレ弁を閉止しておくために設定値に与える適度な温度差を生成する関数発生器161、ボイラ出口主蒸気温度設定値と関数発生器161の発生する温度差を入力して加える第1加算器162、第1加算器162から出力される設定値信号が所定の変化率を超えないように調整する変化率制限器163、変化率制限器163の出力を入力して制御器の設定値を生成する設定器164、温度検出器61で測定したボイラ出口主蒸気温度と設定値を入力して両者の偏差を算出する比較器165、偏差について比例積分操作(PI)を施して適当な操作信号を生成するSHスプレコントローラ166、再熱モードから非再熱モードに変換したことを表す信号を入力してSHスプレ調節弁72を駆動する信号を発生する乗算器167、SHスプレコントローラ166の操作信号と乗算器167からの駆動信号を加算する第2加算器168、第2加算器168から出力される操作信号と全閉指令信号のいずれかを出力する入力切換器169、自動手動切換器170、自動手動切換器170の出力により駆動されるSHスプレ調節弁72で構成される。
【0056】
図7はSHスプレ制御システムにおける設定値と蒸気温度の関係を示す図面である。
SHスプレ温度設定値は、主蒸気温度設定値に対してΔt℃高めのオーバーライド設定値とし、比較器165においてわずかなマイナス偏差を発生させることにより、通常時はSHスプレ調節弁72が全閉になるようにしている。
主蒸気温度が蒸気温度設定値を超えているときや急激に上昇してSHスプレ設定温度を超えたときなどには、SHスプレ調節弁72を開いて水を供給することにより、蒸気温度を急冷することができる。
【0057】
アスターン時など、ボイラ負荷が減少して主蒸気温度設定値を降下させたときは、SHスプレ温度設定値も降下する主蒸気温度設定値にスライドしてこれにΔt℃加えた温度にSHスプレ温度設定値を設定する。
蒸気温度が実際に上昇する前に先行的にSHスプレを吹いて過度の温度上昇を防止する。
【0058】
なお、ボイラ起動時など、主蒸気温度が十分上昇していない場合は、入力切換器169を介しSHスプレ調節弁72を強制閉止として温度上昇の障害にならないようにする。
また、再熱モードから非再熱モードへの緊急切換があると、過熱器パス側の收熱が急激に増加するため、一時的に主蒸気温度が過度に上昇することがある。このような蒸気温度の急上昇に備えて、先行的にSHスプレを吹いて過度の温度上昇を抑制することができる。
【0059】
(モード切替システム)
モード切替システムは、再熱器パス14のダンパ25,26,28と過熱器パス15のダンパ35を所定のシーケンスに従って操作することにより、定格運行など高出力が必要で再熱器パス14を生かして高負荷運転する再熱モードと、港内運行時など中低出力運転すれば足りるときに再熱器パスを閉止して運転する非再熱モードとの間で切り替えるものである。
【0060】
図8は、非再熱モードから再熱モードに切り替える手順を示すフロー図である。
非再熱モードから再熱モードに切り替える指令を受けると、シールエアダンパ28を閉止する指令を発生する(S1)。続いて、RHプロテクションダンパ26を解放する指令を発生して(S2)、再熱器パス14を開通させて、再熱ダンパ25の自動制御(CASモード)を開始する(S3)。
【0061】
次いで、非再熱モードにおける降温状態設定値から再熱モードにおける通常の再熱蒸気温度設定値に設定値を変更し、かつ昇温条件の設定を行う(S4)。さらに、再熱ダンパ25の初期開度指令を発生する(S5)。その後、再熱蒸気温度が所定の初期温度に達するまで待機する(S6)。
【0062】
再熱蒸気温度が所定の温度に達したら、再熱ダンパ25を使って再熱蒸気温度の自動制御を開始する(S7)。再熱蒸気温度設定値は、主蒸気温度測定値に対して約−20℃低く設定されていて、主蒸気温度が主蒸気温度測定値+αの設定にしたがって昇温するのに伴って昇温するので、待機している(S8)。すると、やがて再熱蒸気設定温度が目標の値に到達し、再熱蒸気温度も目標値に達することになって(S9)、非再熱モードから再熱モードへの切替が完了する。
【0063】
図9は、再熱モードから非再熱モードに切り替える手順を示すフロー図である。
再熱モードから非再熱モードへの切替指令を受けると、再熱ダンパ25の制御モードがCASモードでないときは、CASモードに切り替え(S11)、共通回路110で作成されるCAS設定値を通常設定値から降温目標設定値に切り替え、さらに変化率制限器118により降温レートを規定する(S12)。再熱蒸気温度設定値が降下するにつれて再熱ダンパ25は開度を狭めていくので、再熱蒸気温度が十分低下するまで待機する(S13)。
【0064】
再熱ダンパ25が全閉に近くなったところでシーケンサからの指令により全閉指令をホールドし全閉状態を保持する(S14)。次いで、RHプロテクションダンパ26を全閉する指令を発生して(S15)、さらにシールエアダンパ28を開ける指令を発生する(S16)。
再熱器パス14の煙道がRHプロテクションダンパ26で閉止され、さらに再熱ダンパ25との間がシール空気でシールされると、再熱モードから非再熱モードへの切替が完了する。
なお、上記共通回路、制御回路、シーケンス回路などは、電子計算機により構成されてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の1実施例における舶用ボイラ周辺の蒸気流れ図である。
【図2】本実施例の再熱蒸気温度制御方法のブロック図である。
【図3】本実施例の再熱蒸気温度制御の設定温度を説明する線図である。
【図4】本実施例の主蒸気温度制御方法のブロック図である。
【図5】本実施例の加熱蒸気温度制御の設定温度を説明する線図である。
【図6】本実施例における主蒸気のスプレ制御方法のブロック図である。
【図7】本実施例のスプレ制御温度制御の設定温度を説明する線図である。
【図8】本実施例の非再熱モードから再熱モードに切り換える手順を表すフローチャートである。
【図9】本実施例の再熱モードから非再熱モードに切り換える手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 舶用ボイラ
2 高圧蒸気タービン
3 中低圧蒸気タービン
11 燃焼室
12 バーナ
13 煙道
14 再熱器パス(RHパス)
15 過熱器パス(SHパス)
16 蒸気ドラム
17 水ドラム
18 緩熱器
21 節炭器
22 第1再熱器
23 第2再熱器
24 第3過熱器
25 再熱ダンパ
26 RHプロテクションダンパ
27 空気配管
28 シールエアダンパ
31 節炭器
32 第1過熱器
33 第2過熱器
34 第4過熱器
35 SHダンパ
36 スプレ減温器
37 バイパス流路
51 温度検出器
52 温度調節器
53 再熱ダンパ駆動器
61 温度検出器
62 温度調節器
63 蒸気流量調節弁
64 バイパス流量調節弁
71 温度調節器
72 スプレ調節弁
110 共通回路
111 比較器
112 第1関数発生器
113 第2関数発生器
114 第1加算器
115 第2加算器
116 選択器
117 リミッタ
118 変化率制限器
121 設定器
122 比較器
123 制御器
124 微分回路
125 減算器
126 入力切換器
127 自動手動切換器
130 共通回路
131 比較器
132 第1関数発生器
133 第1加算器
134 第2関数発生器
135 第3関数発生器
136 選択器
137 リミッタ
138 変化率制限器
141 設定器
142 比較器
143 制御器
144 演算装置
145 乗算器
146 微分回路
147 第2加算器
148 第3加算器
149 入力切換器
150 自動手動切換器
151 信号変換器
161 関数発生器
162 第1加算器
163 変化率制限器
164 設定器
165 比較器
166 SHスプレコントローラ
167 乗算器
168 第2加算器
169 入力切換器
170 自動手動切換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道が再熱器パスと過熱器パスに分割され、主蒸気は緩熱器に通す蒸気量またはスプレ量あるいはその両方で温度制御して高圧蒸気タービンに供給し、再熱蒸気は再熱器パスの再熱ダンパの開度により温度制御して中・低圧蒸気タービンに供給する舶用ボイラにおける蒸気温度制御方法であって、
主蒸気と再熱蒸気の定格温度の差に基づいて決まるバイアスを主蒸気温度の実測値に加えた温度を設定値として再熱蒸気温度を制御することを特徴とする
舶用ボイラの蒸気温度制御方法。
【請求項2】
ボイラ負荷が主蒸気の定格温度に対応する領域においては定格温度を設定値として主蒸気の温度制御をすると共に、
ボイラ負荷が主蒸気の定格温度以下に対応する領域においては定格温度を上限として所定のバイアスを主蒸気温度の実測値に加えた温度を設定値として主蒸気の温度制御をすることを特徴とする
請求項1記載の舶用ボイラ蒸気温度制御方法。
【請求項3】
前記再熱器パスに設けた第3過熱器の出口から前記緩熱器を通って前記過熱器パスに設けた第4過熱器の入口に繋がる流路に設置した蒸気流量調節弁と、前記第3過熱器出口と前記第4過熱器入口を直接に繋いで前記緩熱器をバイパスするバイパス流路に設置したバイパス流量調節弁において、前記蒸気流量調節弁と前記バイパス流量調節弁を逆方向に作動させることにより主蒸気温度を制御する
請求項1または2記載の舶用ボイラ蒸気温度制御方法。
【請求項4】
舶用ボイラが2基設けられていて、前記再熱蒸気温度の設定値は該2基の舶用ボイラのうち低い方の主蒸気温度を基準として生成され、該2基の舶用ボイラに共通に提供されることを特徴とする
請求項1記載の舶用ボイラ蒸気温度制御方法。
【請求項5】
舶用ボイラが2基設けられていて、前記主蒸気温度の設定値は該2基の舶用ボイラのうち低い方の主蒸気温度を基準として生成され、該2基の舶用ボイラに共通に提供されることを特徴とする
請求項2から4のいずれかに記載の舶用ボイラ蒸気温度制御方法。
【請求項6】
煙道が再熱器パスと過熱器パスに分割され、主蒸気は緩熱器に通す蒸気量またはスプレ量あるいはその両方で温度制御して高圧蒸気タービンに供給し、再熱蒸気は再熱器パスの再熱ダンパの開度により温度制御して中・低圧蒸気タービンに供給する舶用ボイラを2基備えた船舶に使用する舶用ボイラ蒸気温度制御装置であって、
2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御装置の温度設定値を提供する共通回路であって、
前記2基のボイラにおける主蒸気温度の低い方を選択して出力する比較器と主蒸気と再熱蒸気の定格温度の差を設定することができる関数発生器と該比較器の出力と該関数発生器の出力を加算する加算器を備えて、
該加算器の出力を温度設定値として前記2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御器の設定器に提供する第1の共通回路を備えることを特徴とする
舶用ボイラの蒸気温度制御装置。
【請求項7】
前記第1共通回路は、さらに
前記加算器から得られる温度設定値に対して上限値を限る上限リミッタと、前回指令した前記温度設定値に対して変化率を制限する変化率制限器とを備えて、
前記算出された設定値に上限値と変化率を限る補正をかけて前記2基の舶用ボイラの再熱蒸気温度制御装置の温度設定値として提供することを特徴とする
請求項6記載の舶用ボイラの蒸気温度制御装置。
【請求項8】
前記2基の舶用ボイラの主蒸気温度制御装置の温度設定値を提供する共通回路であって、
前記2基のボイラにおける主蒸気温度の低い方を選択して出力する第2の比較器と、所定のプラスバイアスを設定することができる第2の関数発生器と、該第2比較器の出力と該第2関数発生器の出力を加算する第2の加算器を備えて、
該第2加算器の出力を温度設定値として前記2基の舶用ボイラの主蒸気温度制御器の設定器に提供する第2の共通回路を備えることを特徴とする
請求項6または7記載の舶用ボイラの蒸気温度制御装置。
【請求項9】
再熱ダンパの開度測定値を入力して過熱器パス側の燃焼ガス流量配分比率を算定する演算装置と、該演算装置の出力信号と燃焼空気流量測定値の乗算値を算出する乗算器と、微分器と加算器から構成され該乗算器の出力から主蒸気温度の変動を予測する変動推定器を備え、前記主蒸気温度の変動予測値を用いて主蒸気流量調節弁の開度制御信号を調整して、前記微分回路により燃焼空気量の変化から排ガス量の変動を計算し、前記減算器により主蒸気流量調節弁の制御信号を開度調整信号で調整して、主蒸気流量調節弁の開度調整をすることを特徴とする
請求項6から8のいずれかに記載の舶用ボイラの蒸気温度制御装置。
【請求項10】
バイアス温度を発生する関数発生器と、主蒸気温度設定値と該バイアス温度を加算する加算器を備え、該主蒸気温度設定値に対して所定温度高めのオーバーライド値をSHスプレ温度設定値としてボイラ出口における主蒸気温度制御器の比較器に入力することを特徴とする
請求項6から9のいずれかに記載の舶用ボイラの蒸気温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−103344(P2009−103344A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273862(P2007−273862)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)