説明

舶用推進装置

【課題】 高効率化を図る。
【解決手段】 船体1の船尾部2の中央部より、船内の主機関3にギアボックス10を介し接続した2本の駆動軸4の後端側を、又、船尾部2の左右幅方向の両端寄り個所より、船内のスラスト受け5に接続した2本のスラスト伝達用従動軸6の後端側を、各軸4,6が左右水平方向に配列されるように船体1後方へ突出させる。無端状の循環ベルト8の外周に周方向所要間隔で複数のプロペラブレード9を取り付けてなるプロペラトレイン7の循環ベルト8を、各軸4,6の後端部の外側に、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回して舶用推進装置を形成する。主機関3で駆動軸4を回転駆動させて、プロペラトレイン7の各プロペラブレード9を循環ベルト8と共に各軸4,6の外側で上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動させ、発生するスラストを、各軸4,6を介して船体1へ推力として伝達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の推力を得るための舶用推進装置に関するもので、特に、大きな流体通過面積を備えた舶用推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舶用の推進装置として一般的に採用されているスクリュープロペラでは、水を下流に加速することで、その反力をスクリュープロペラの動力軸を介し船体へ伝えて推力を得るようにしてある。
【0003】
このとき、広範囲の水をゆっくり加速すると、効率が上がることがよく知られている。
【0004】
そのため、従来、舶用の推進装置の高効率化を図る場合は、スクリュープロペラを大直径化し、これにより流体が大直径とされたスクリュープロペラを通過するときの流体通過面積ができるだけ大きくなるように設計することが行われている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐々木紀幸,「第8章 省エネプロパルサー」,次世代船開発のための推進工学シンポジウム−推進性能研究委員会・第4回シンポジウム− 推進工学シンポジウムテキスト,社団法人日本造船学会,平成3年4月1日,p.246−247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、スクリュープロペラの上端の位置は、水面から出ないように設定する必要があると共に、下端の位置は船底の位置に対応させて設定する必要がある。よって、高効率化を図るために大直径のスクリュープロペラを採用しようとしても、その上下方向寸法に一致する直径は、船体の運航喫水を考慮して設定する必要があるため、スクリュープロペラの大直径化にも制限がある。
【0007】
そのために、舶用推進装置における流体通過面積の拡大を図ろうとしても、上記スクリュープロペラの直径による制限を受けているというのが実状である。
【0008】
又、スクリュープロペラの直径を、船体の運航喫水から許容される範囲内で大直径化した場合は、船舶が軽荷状態のときには、スクリュープロペラの上端部が水面に露出されて推進効率が悪化することを回避するため、バラスト水を大量に積んでスクリュープロペラの上端が水面から出ないようにする必要があり、このため軽荷状態であるにもかかわらず船の重量が重く(排水量が大きく)なってしまい、機関の所要出力が増加してしまう可能性もある。
【0009】
そこで、本発明は、上下方向寸法が同等のスクリュープロペラに比して、より拡大された流体通過面積を得ることができて、高効率化を図ることが可能であり、一方、従来のスクリュープロペラと同様の流体通過面積を得る場合には、上下方向の寸法を大幅に削減することができて、軽荷状態であって大量のバラスト水を積む必要をなくすことが可能な舶用推進装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、船体の船尾部における左右両端寄り個所に、主機関により同方向に同期して回転駆動可能とした駆動軸の後端側を、船体後方へ突出させて設け、該駆動軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、該駆動軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成とする。
【0011】
又、請求項2に対応して、船体の船尾部に、主機関により回転駆動可能とした単数又は複数の駆動軸の後端側と、船体内のスラスト受けに前端部を回転自在に保持させた単数又は複数のスラスト伝達用従動軸の後端側を、船体後方へ左右水平方向に配列されるように突出させて設け、該各軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、上記各軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成とする。
【0012】
更に、上記構成において、船体の船尾部における中央部に、単数又は複数の駆動軸を配置し、且つ上記船体の船尾部の少なくとも左右両端寄り個所に、スラスト伝達用従動軸をそれぞれ配置するようにした構成とする。
【0013】
同様に、上記構成において、船体の船尾部の左右両端寄り個所に駆動軸をそれぞれ配置し、上記各駆動軸の間となる船体の船尾部における中央部に、単数又は複数のスラスト伝達用従動軸を配置するようにした構成とする。
【0014】
上述の各構成において、各軸の後端部におけるプロペラトレイン配置個所の前後両側となる個所に、外周へ所要寸法張り出す鍔状としてプロペラトレインの循環ベルトの前端と後端を受けるための前部と後部のスラスト受け部材をそれぞれ設けるようにした構成とする。
【0015】
更に、上述の各構成において、左右方向に配置された各軸の間の位置に、プロペラトレインの各プロペラブレードの循環移動に干渉することなく、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状で配置してあるプロペラトレインの循環ベルトの前側端部と後側端部の周方向の一部又は全部の外周方向への変位をそれぞれ防止するための前側及び後側押さえ用ガイドを設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の舶用推進装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)船体の船尾部における左右両端寄り個所に、主機関により同方向に同期して回転駆動可能とした駆動軸の後端側を、船体後方へ突出させて設け、該駆動軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、該駆動軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成としてあるので、プロペラトレインの循環ベルトに取り付けてある複数のプロペラブレードを上記循環ベルトの外周に沿って上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動させるときに該各プロペラブレードに生じる前後方向のスラストを、上記プロペラトレインより駆動軸を介して船体へ伝達することで、該船体の前進又は後進のための推力を得ることができる。
(2)船体の船尾部に、主機関により回転駆動可能とした単数又は複数の駆動軸の後端側と、船体内のスラスト受けに前端部を回転自在に保持させた単数又は複数のスラスト伝達用従動軸の後端側を、船体後方へ左右水平方向に配列されるように突出させて設け、該各軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、上記各軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成とすることにより、プロペラトレインの循環ベルトに取り付けてある複数のプロペラブレードを上記循環ベルトの外周に沿って上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動させるときに該各プロペラブレードに生じる前後方向のスラストを、上記プロペラトレインより駆動軸と、スラスト伝達用従動軸及びスラスト受けを介して船体へ伝達することで、該船体の前進又は後進のための推力を得ることができる。
(3)したがって、上記(1)(2)のいずれの構成においても、上記プロペラトレインを用いることで、従来用いられている駆動軸と同軸で回転させるプロペラボスの外周にプロペラブレードが取り付けてあるスクリュープロペラに比してプロペラブレードの数を大幅に増加させることができると共に、プロペラブレードの移動範囲を大幅に拡大することができ、よって、上下方向寸法が同等の一軸スクリュープロペラに比して、より拡大された流体通過面積を得ることができることから、推進装置としての高効率化を図ることが可能になる。よって、本発明の舶用推進装置を採用することにより、船舶の大幅な燃費削減効果が期待できる。
(4)一方、従来のスクリュープロペラと同じ流体通過面積を得る場合には、プロペラブレードの上下方向の寸法を縮小して、プロペラトレインの上下方向の寸法を、上記従来のスクリュープロペラの上下方向寸法に比して大幅に削減することが可能になるため、軽荷状態のときに無駄なバラスト水を積む必要を軽減できる。よって、軽荷状態のときの船の排水量を軽くすることができて、燃費の大幅な削減効果が期待できる。
(5)船体の船尾部における中央部に、単数又は複数の駆動軸を配置し、且つ上記船体の船尾部の少なくとも左右両端寄り個所に、スラスト伝達用従動軸をそれぞれ配置するようにした構成、又は、船体の船尾部の左右両端寄り個所に駆動軸をそれぞれ配置し、上記各駆動軸の間となる船体の船尾部における中央部に、単数又は複数のスラスト伝達用従動軸を配置するようにした構成とすることにより、駆動軸とスラスト伝達用従動軸を船体の船尾部に左右対称に配置できて、船体の左右方向のバランスを容易に得るのに有利な構成とすることができる。
(6)各軸の後端部におけるプロペラトレイン配置個所の前後両側となる個所に、外周へ所要寸法張り出す鍔状としてプロペラトレインの循環ベルトの前端と後端を受けるための前部と後部のスラスト受け部材をそれぞれ設けるようにした構成とすることにより、循環移動させるプロペラトレインのプロペラブレードに生じる前後方向のスラストを、該プロペラトレインの循環ベルトより前部と後部のスラスト受け部材を介して各軸へ効率よく伝達することができる。
(7)左右方向に配置された各軸の間の位置に、プロペラトレインの各プロペラブレードの循環移動に干渉することなく、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状で配置してあるプロペラトレインの循環ベルトの前側端部と後側端部の周方向の一部又は全部の外周方向への変位をそれぞれ防止するための前側及び後側押さえ用ガイドを設けるようにした構成とすることにより、上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環させるようにしてあるプロペラトレインの循環ベルトが、自重や遠心力により外周方向へ変位して駆動軸、又は、駆動軸及びスラスト伝達用従動軸の外周より離反する虞を防止できると共に、上記プロペラトレインの各プロペラブレードに生じる前後方向のスラストの反力によって上記循環ベルトにねじれが生じる虞を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の舶用推進装置の実施の一形態を示す概略平面図である。
【図2】図1の装置を船体後方より見た図である。
【図3】図1のA−A方向矢視拡大図である。
【図4】図1のB−B方向矢視拡大図である。
【図5】図1のC−C方向矢視拡大図である。
【図6】図1の装置におけるプロペラトレインの一部分を拡大して示す斜視図である。
【図7】図1の舶用推進装置の効果を試算するために用いたプロペラトレインの概要を示す図である。
【図8】本発明の実施の他の形態として、プロペラトレインの応用例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図7は本発明の舶用推進装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0020】
すなわち、船体1の船尾部2に、前後方向に延びて前端側を船内の主機関3により回転駆動可能とし且つ後端側を船体1より後方へ所要寸法突出させた単数又は複数の駆動軸4と、上記駆動軸4と平行に前後方向に延びて前端部を船内に設けたスラスト受け5に回転自在に保持させ且つ後端側を船体1より後方へ所要寸法突出させた単数又は複数のスラスト伝達用従動軸6を、船幅(舷側)方向となる左右水平方向に配列して設ける。
【0021】
更に、無端状の循環ベルト8と、該循環ベルト8の外周面に周方向所要間隔で取り付けた複数のプロペラブレード9からなるプロペラトレイン7の上記循環ベルト8を、上下に扁平で左右方向に延びた長円形状となるように、上記左右水平方向に配列された駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6の後端部の外側に掛け回してなる構成とし、これにより、上記主機関3による上記駆動軸4の回転駆動に伴って該駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6の後端部の外側で上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を循環駆動させ、この循環ベルト8の循環駆動により、該循環ベルト8の外周面に取り付けてある各プロペラブレード9を、上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って循環移動させることができるようにする。
【0022】
詳述すると、上記船体1の船尾部2の船内の船幅方向(左右方向)の中央部に、主機関3と、該主機関3の出力側に取り付けたギアボックス10を設置し、該ギアボックス10の左右両端部位置に設けてある図示しない2つの出力部に、船体1の船尾部2に左右方向に所要間隔を隔てて配置した前後方向に延びる2本の駆動軸4の前端部をそれぞれ接続する。これにより、上記主機関3により上記ギアボックス10を介して上記各駆動軸4を同方向に同期して回転駆動できるようにすると共に、後述するように上記プロペラトレイン7より上記各駆動軸4に対して入力される前後方向のスラストを、該各駆動軸4の前端部が取り付けてある上記ギアボックス10で受けることにより、船体1へ前後方向の推力として伝えることができるようにしてある。
【0023】
上記各駆動軸4の後端側は、プロペラトレイン7の循環ベルト8を沿わせるようにするため、該各駆動軸4の後端部には、図3に示すように、外周へ所要寸法張り出す鍔状とした前部と後部の一対のスラスト受け部材11,12を、前後方向に上記プロペラトレイン7の循環ベルト8の前後方向の幅寸法に対応した間隔で取り付け、更に、上記各駆動軸4の後端部における上記各スラスト受け部材11,12の間にて該各スラスト受け部材11,12の近くとなる2個所に、それぞれ駆動ギア(スプロケット)13が取り付けてある。
【0024】
なお、上記各駆動軸4に取り付けた前部と後部の各スラスト受け部材11,12は、互いに対向する前後方向の面部に、スラストベアリング14を備えた構成としてあるものとする。
【0025】
上記船体1の船尾部2の船内の左右両端部位置には、スラスト受け5をそれぞれ設置し、該各スラスト受け5に、船体1の左右両端寄りにそれぞれ配置した2本のスラスト伝達用従動軸6の前端部を回転自在に個別に保持させる。この際、上記各スラスト伝達用従動軸6の前端部には、外周へ張り出す図示しない鍔状の部分を設けておく一方、上記各スラスト受け5には、上記各スラスト伝達用従動軸6の前端部に設けた図示しない鍔状の部分の前後両側を、図示しないスラストベアリングを介して受けることができるようにしてなる構成として、後述するように上記プロペラトレイン7より該各スラスト伝達用従動軸6に対して入力される前後方向のスラストを、各スラスト伝達用従動軸6の前端部を回転自在に保持した各スラスト受け5で受けることにより、船体1へ前後方向の推力として伝えることができるようにしてある。
【0026】
上記各スラスト伝達用従動軸6の後端側は、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を沿わせるようにするために、船体1の後方へ、上記各駆動軸4の後端部と左右水平方向に並ぶ位置まで突出させた該各スラスト伝達用従動軸6の後端部に、図4に示す如く、上記各駆動軸4の後端部に設けた前後一対のスラスト受け部材11,12と同様にして、スラストベアリング14を備えた前後一対のスラスト受け部材11,12がそれぞれ取り付けてある。
【0027】
上記プロペラトレイン7の循環ベルト8は、図3、図4及び図6に示す如く、該循環ベルト8の前後幅寸法に対応した寸法で前後方向に延びる細長い矩形板状の多数のベルト片15を、左右の端縁部同士が近接するように並べると共に、隣接するベルト片15の前後方向中間部の左右の端縁部同士を、屈伸可能なヒンジ式の継ぎ具16で裏面側から順次連結して、無端状の環状構造が形成してある。
【0028】
更に、上記循環ベルト8の各ベルト片15には、図3及び図6に示すように、該各ベルト片15における上記継ぎ具16の取り付け個所と干渉しない長手方向両端寄りの2個所に、上記各駆動軸4にそれぞれ設けてある2つの駆動ギア13の歯13aを裏面側から挿入して嵌合させるためのギア嵌合孔17が、上記駆動ギア13における歯13aのピッチに応じた間隔で左右方向に並べて設けてあり、これにより、上記各ベルト片15に設けたギア嵌合孔17が、循環ベルト8の周方向の全周に亘り上記各駆動ギア13の歯13aのピッチに対応した間隔で配列されるようにしてある。図6では、たとえば、各ベルト片15に、上記各駆動ギア13の歯13aに対応する2個ずつのギア嵌合孔17を設けた状態が示してある。
【0029】
更に又、上記循環ベルト8の各ベルト片15の前端部と後端部には、該各ベルト片15の表面側へ直角に所要寸法突出する前側と後側の各スラスト伝達部18と19がそれぞれ設けてある。これにより、後述するように上記各駆動軸4及び各スラスト伝達用従動軸6に設けた前後一対のスラスト受け部材11に接触させるための上記各ベルト片15における前後両端面の面積を、上記前側と後側の各スラスト伝達部18と19により拡大させることができるようにしてある。
【0030】
上記構成としてある循環ベルト8には、該循環ベルト8の外周面における周方向所要間隔個所に対応する周方向所要間隔で配置された複数のベルト片15の表面に、個別のプロペラブレード9の基端部をそれぞれ取り付けて、プロペラトレイン7を構成するようにしてある。なお、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を上記船体1に左右水平方向に配列して設けてある各駆動軸4及び各スラスト伝達用従動軸6の後端部の外側に上下に扁平で左右方向に延びた長円形状として配置した状態で循環させるときに、該循環ベルト8における上記長円形状の左右両端部となる屈曲部分、すなわち、循環ベルト8が上記各軸4,6のうちの左右両端部に配置された軸である各スラスト伝達用従動軸6の後端部の外周に沿って屈曲して180度向きを変える部分での屈曲性を得る必要上、上記循環ベルト8を構成している各ベルト片15の左右方向の幅寸法が、上記プロペラブレード9の基端部の左右方向の幅寸法よりも小さく設定されている場合には、図6に斜線を付して示す如きプロペラブレード9の基端部における左右幅方向の中間部のみを、対応するベルト片15の表面に固定するようにすればよい。
【0031】
上記構成としてあるプロペラトレイン7は、上記循環ベルト8を、上記各駆動軸4と各スラスト伝達用従動軸6の後端部に前後一対で設けてあるスラスト受け部材11,12の間の部分の外側に、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように配置すると共に、上記各駆動軸4に設けてある駆動ギア13の歯13aが、上記循環ベルト8における該各駆動軸4の上下両側に配置されている各ベルト片15のギア嵌合孔17に嵌合するように配置させる。これにより、主機関3によりギアボックス10を介して各駆動軸4を回転駆動して、該各駆動軸4に取り付けてある各駆動ギア13を回転駆動させると、該駆動ギア13の歯13aにギア嵌合孔17が嵌合する上記プロペラトレイン7の循環ベルト8が、上記各駆動ギア13の回転する方向へ送られることで、該プロペラトレイン7の循環ベルト8を、上記各駆動軸4と各スラスト伝達用従動軸6の後端部の外側で上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環させることができて、該循環ベルト8の外周に取り付けてある上記各プロペラブレード9を、上記循環ベルト8の長円軌道で循環移動させることができるようにしてある。
【0032】
更に、上記各プロペラブレード9が水中に配置された状態で上記した長円軌道で循環移動することにより該各プロペラブレード9に前後方向のスラストが発生する場合、各プロペラブレード9に発生する前向きのスラストは、上記循環ベルト8の各ベルト片15のうち、各駆動軸4や各スラスト伝達用従動軸6の外周に順次配置されるベルト片15の前側スラスト伝達部18が、上記各駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6に設けてある前部スラスト受け部材11に対しスラストベアリング14を介して順次押し付けられた状態で接触させられることで、該各駆動軸4及び各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた後、上記各駆動軸4へ伝えられた前向きのスラストは、上記ギアボックス10を介して、又、上記各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた前向きのスラストは、対応する各スラスト受け5を介して、それぞれ船体1へ伝達されるようにしてある。
【0033】
一方、上記各プロペラブレード9に発生する後向きのスラストは、上記循環ベルト8の各ベルト片15のうち、各駆動軸4や各スラスト伝達用従動軸6の外周に順次配置されるベルト片15の後側スラスト伝達部19が、上記各駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6に設けてある後部スラスト受け部材12に対しスラストベアリング14を介して順次押し付けられた状態で接触させられることで、該各駆動軸4及び各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた後、上記各駆動軸4へ伝えられた後向きのスラストは、上記ギアボックス10を介して、又、上記各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた後向きのスラストは、対応する各スラスト受け5を介して、それぞれ船体1へ伝達されるようにしてある。
【0034】
更に、図1、図2及び図5に示すように、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8における各駆動軸4同士の間に位置する部分、及び、各駆動軸4とその船幅方向の外側に隣接する各スラスト伝達用従動軸6との間に位置する部分をガイドさせるために、上記各駆動軸4同士の間と、各駆動軸4と隣接する各スラスト伝達用従動軸6との間における循環ベルト8の上半部に配置されて上向きとなっている各ベルト片15の前側スラスト伝達部18の上側に沿う位置と、上記長円形状の循環ベルト8の下半部に配置されて下向きとなっている各ベルト片15の前側スラスト伝達部18の下側に沿う位置には、該各ベルト片15の前側スラスト伝達部18の上下方向外向きの変位を拘束して対応する部分の循環ベルト8の上下方向外向きの変位を防止するための前側押さえ用ガイド20a,20bをそれぞれ配置すると共に、上記長円形状の循環ベルト8の上半部に位置して上向きとなっている各ベルト片15の後側スラスト伝達部19の上側に沿う位置と、上記長円形状の循環ベルト8の下半部に位置して下向きとなっているベルト片15の後側スラスト伝達部19の下側に沿う位置には、該各ベルト片15の後側スラスト伝達部19の上下方向外向きの変位を拘束して対応する部分の循環ベルト8の上下方向外向きの変位を防止するための後側押さえ用ガイド21a,21bをそれぞれ配置する。
【0035】
上記各前側押さえ用ガイド20a,20bは、船体1の船尾部2の外板より水平方向後向きに延びる支持部材22a,22bの後端部に取り付けて支持させると共に、上記各後側押さえ用ガイド21a,21bは、船体1の船尾部2の外板より上記長円形状としてあるプロペラトレイン7の循環ベルト8の内側を通して該循環ベルト8の後端部よりもやや後方となる位置まで水平方向後向きに突出させて設けた支持部材23の後端部の上下両側にそれぞれ取り付けて支持させるようにしてある。これにより、上記長円形状としてあるプロペラトレイン7の循環ベルト8の上半部の上方への変位と、下半部の下方への変位を、上記各押さえ用ガイド20a,20b,21a,21bでそれぞれ防止することで、上記上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環させるようにしてあるプロペラトレイン7の循環ベルト8が、自重や遠心力により外周方向へ変位して各駆動軸4やスラスト伝達用従動軸6の外周より離反する虞を防止できるようにしてあると共に、上記プロペラトレイン7の各プロペラブレード9が水中で動く際に、該各プロペラブレード9に生じる前後方向のスラストの反力が上記循環ベルト8に作用しても、該循環ベルト8にねじれが生じる虞を防止できるようにしてある。
【0036】
なお、図4における符号24は、上記各スラスト伝達用従動軸6の後端部の外周面における上記循環ベルト8の各継ぎ具16と干渉しない位置に設けたリング状のスペーサであり、該スペーサ24の外周面を、プロペラトレイン7の循環ベルト8を構成している各ベルト片15の裏面側に接触させるようにすることにより、上記循環ベルト8の各ベルト片15同士を連結している各継ぎ具16が、各スラスト伝達用従動軸6の後端部の外周面に直接接触しないようにしてある。
【0037】
以上の構成としてある本発明の舶用推進装置を使用する場合は、主機関3によりギアボックス10を介して各駆動軸4を回転駆動すると、該各駆動軸4の後端部に設けてある各駆動ギア13により、プロペラトレイン7の循環ベルト8が、上記各駆動軸4と、各スラスト伝達用従動軸6の外側で、上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って循環駆動されて、該循環ベルト8の長円軌道の外側に沿う上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って、上記プロペラトレイン7の各プロペラブレード9が、循環移動させられるようになる。
【0038】
したがって、上記主機関3によるギアボックス10を介した各駆動軸4の一方向への回転駆動により、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を、水中で上記長円軌道に沿って循環移動する各プロペラブレード9が前向きのスラストを生じる方向へ回転駆動させると、上記各プロペラブレード9で生じた前向きのスラストが、循環ベルト8の各ベルト片15の前側スラスト伝達部18より、各前部スラスト受け部材11を介して各駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6へ伝えられ、更に、上記各駆動軸4へ伝えられた前向きのスラストは、上記ギアボックス10を介して、又、上記各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた前向きのスラストは、対応する各スラスト受け5を介して、それぞれ船体1へ伝達され、この前向きのスラストが上記船体1に前進用の推力として作用することで船舶の前進航行が行われる。
【0039】
一方、上記主機関3によるギアボックス10を介した各駆動軸4の上記船舶の前進航行時とは反対方向への回転駆動により、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を、水中で上記長円軌道に沿って循環移動する各プロペラブレード9が後向きのスラストを生じる方向へ回転駆動させると、上記各プロペラブレード9で生じた後向きのスラストが、循環ベルト8の各ベルト片15の後側スラスト伝達部19より、各後部スラスト受け部材12を介して各駆動軸4及びスラスト伝達用従動軸6へ伝えられ、更に、上記各駆動軸4へ伝えられた後向きのスラストは、上記ギアボックス10を介して、又、上記各スラスト伝達用従動軸6へ伝えられた後向きのスラストは、対応する各スラスト受け5を介して、それぞれ船体1へ伝達され、この後向きのスラストが上記船体1に後進用の推力として作用することで船舶の後進航行が行われる。
【0040】
このように、本発明の舶用推進装置によれば、上記プロペラトレイン7の循環ベルト8を上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って循環駆動することに伴って、該循環ベルト8に取り付けてある複数のプロペラブレード9を、循環ベルト8の外周に沿って上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動させて船体1の前進又は後進のための推力を得ることができる。
【0041】
更に、上記プロペラトレイン7では、上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って循環する循環ベルト8の外周にプロペラブレード9を取り付けるようにしてあるため、駆動軸と同軸で回転させるプロペラボスの外周にプロペラブレードの基端部を取り付けてなる形式のスクリュープロペラに比して、プロペラブレード9の枚数を大幅に増加させることができると共に、プロペラブレード9の移動範囲を大幅に拡大することができ、よって、上下方向寸法が同等の一軸スクリュープロペラに比して、より拡大された流体通過面積を得ることができることから、推進装置としての高効率化を図ることが可能になる。
【0042】
たとえば、幅が60mのタンカー(VLCC)では、通常、10m程度の直径のスクリュープロペラが採用されており、その場合、該スクリュープロペラにおける流体通過面積は約80mとなる。
【0043】
これに対し、本発明者が、本発明の舶用推進装置におけるプロペラトレイン7について、図7に概要を示すように、4mのブレード長を有するプロペラブレード9を外周に取り付けた循環ベルト8を、上記プロペラブレード9が高さ10m、幅60の範囲で移動するように、左右幅方向に50mの間隔を隔てて配置された直径2mの軸の間に掛け回した上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道に沿って循環駆動させる場合(なお、上記循環ベルト8厚み寸法は無視してある)について試算したところ、そのときの流体通過面積は約600mとなり、上下寸法が10m程度とほぼ同様の上記スクリュープロペラの約7倍となることが判明した。
【0044】
更に、運動量理論から求められる理想効率を計算したところ、上記した流体通過面積の差により、本発明の舶用推進装置によれば、上記直径10m程度のスクリュープロペラに比して、約30%効率が改善できるとの結果が得られた。
【0045】
したがって、本発明の舶用推進装置を船舶に採用することにより、大幅な燃費削減効果が期待できる。
【0046】
一方、従来のスクリュープロペラと同じ流体通過面積を得る場合には、プロペラブレード9の上下方向の寸法を小さくして、プロペラトレイン7の上下方向の寸法を、上記従来のスクリュープロペラの上下方向寸法に比して大幅に削減することが可能になることから、軽荷状態のときに無駄なバラスト水を積む必要を軽減でき、よって、軽荷状態のときの船の排水量を軽くすることができて、燃費の大幅な削減効果が期待できる。
【0047】
更には、従来のスクリュープロペラにてプロペラブレードの翼数に起因して生じていた振動を防止する効果も期待できる。
【0048】
上記実施の形態では、プロペラトレイン7の循環ベルト8における各ベルト片15の左右方向の幅寸法が、プロペラブレード9の左右方向の幅寸法よりも狭い場合には、図6にハッチングを付して示したように、プロペラブレード9の基端部における左右幅方向の中間部のみを、対応するベルト片15の表面に固定するものとして説明したが、図8に示すように、上記プロペラブレード9が取り付けられたベルト片15の左右両側に隣接する各ベルト片15の表面における上記プロペラブレード9の基端部に覆われる位置に、所要寸法突出する係合突部25、たとえば、上記プロペラブレード9が取り付けられたベルト片15との間に設けてある各継ぎ具16の屈曲部分を中心として円弧状に延びる係合突部25をそれぞれ設ける一方、上記プロペラブレード9の基端面における該プロペラブレード9が取り付けられたベルト片15の左右両側に隣接する各ベルト片15の表面に設けられた上記各係合突部25に対応する個所に、該各係合突部25を挿入して係合させるための円弧状の係合穴26を設けてなる構成としてもよい。
【0049】
なお、上記係合突部25と係合穴26は、その円弧形状の中心角が、プロペラトレイン7の循環ベルト8が船体1の左右両端部に配置されている軸である各スラスト伝達用従動軸6(図1、図3参照)の後端部の外周に沿って配置されるときに該循環ベルト8の隣接する各ベルト片15同士が両者間の継ぎ具16を介して屈曲して配置されるときの屈曲角度よりも大きな角度となるようにしてあるものとする。
【0050】
又、上記各係合突部25と対応する係合穴26は、前後方向の隙間ができるだけ小さくなるようにして、上記プロペラブレード9に前後方向のスラストが生じると、この前後方向のスラストを、プロペラブレード9に設けてある係合穴26の前後の内面より、該係合穴26に挿入されている係合突部25に伝えることができるようにしてあるものとする。
【0051】
以上の構成とすれば、プロペラトレイン7が循環駆動されることに伴って各プロペラブレード9が水中で移動するときに該各プロペラブレード9で前後方向のスラストが発生すると、この前後方向のスラストを、該各プロペラブレード9の基端部の左右幅方向の中央部が取り付けられたベルト片15に加えて、その左右両側に隣接する各ベルト片15にも、各プロペラブレード9の係合穴26に挿入された係合突部25を介して常に伝えることができるようになる。よって、プロペラブレード9で発生させる前後方向のスラストを、プロペラトレイン7の循環ベルト8を構成しているより多くのベルト片15に分散して伝えることができるようになることから、上記各プロペラブレード9の基端部の左右幅方向の中央部の対応するベルト片15への取付部分や、該ベルト片15自体に要求される強度を軽減させることが可能になり、上記循環ベルト8の各ベルト片15同士の継ぎ具16を介した連結部分に要求される強度や、循環ベルト8の構造の簡略化が可能になるという効果が期待できる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、船体1の左右幅寸法や、船体1内の主機関3の配置に応じて、駆動軸4を船体1の左右幅方向の中央部に1本配置する構成としたり、2本の駆動軸4と2本のスラスト伝達用従動軸6の内外の配置を入れ替えた構成としたり、船体1の左右幅方向の両端寄りに2本の駆動軸4を配置し、船体1の幅方向中央部に単数又は複数のスラスト伝達用従動軸6を配置する構成としてもよい。
【0053】
又、船体の幅寸法が広い場合には、駆動軸4やスラスト伝達用従動軸6の本数を適宜増やしてもよく、又、船体1の幅寸法があまり広くなくて、船体1の幅方向両端寄りに設けた2本の駆動軸4の間隔があまり広くない場合には、スラスト伝達用従動軸6を省略した構成としてもよい。
【0054】
前側押さえ用ガイド20a,20bは、後側押さえ用ガイド21a,21bを船体1に支持させるために船体1より上記プロペラトレイン7の循環ベルト8の内側を通して後方へ延びるように設けた支持部材23に一緒に支持させるようにしてもよい。
【0055】
上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環駆動されるプロペラトレイン7の循環ベルト8と一緒に循環移動する各プロペラブレード9と干渉しない位置で、循環ベルト8の外周方向への変位を防止できるようにしてあれば、前側押さえ用ガイド20a,20bと、後側押さえ用ガイド21a,21bは、左右幅方向に一連に繋がる構造としてもよい、又、上記循環ベルト8の上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道の外周に沿って環状に連続した構造の前側押さえ用ガイドと後側押さえ用ガイドとしてもよい。
【0056】
前側押さえ用ガイド20a,20b及び後側押さえ用ガイド21a,21bにおける上記循環ベルト8が接する部分に、ローラ等の摩擦を低減させるための手段を設けるようにしてもよい。
【0057】
循環ベルト8は、屈伸可能な継ぎ具16を介して連結してある各ベルト片15に設けたギア嵌合孔17を、駆動軸4に取り付けた駆動ギア13の歯13aに直接嵌合させる形式として示したが、上記駆動軸4の駆動ギア13と、スラスト伝達用従動軸6に取り付けた図示しないギア(スプロケット)の外側に無端状にチェーンを掛け回し、該チェーンの個々のリンク、又は、周方向所要間隔で配列されたリンクの外周側に、上記したと同様のベルト片15を取り付けた構造としてもよい。
【0058】
循環ベルト8における各ベルト片15に設ける前後のスラスト伝達部18,19のサイズは、各プロペラブレード9で発生させて船体1へ伝達すべき前後方向のスラストの大小に応じて適宜変更してもよい。
【0059】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 船体
2 船尾部
3 主機関
4 駆動軸
7 プロペラトレイン
8 循環ベルト
9 プロペラブレード
11 前部スラスト受け部材
12 後部スラスト受け部材
20a,20b 前側押さえ用ガイド
21a,21b 後側押さえ用ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の船尾部における左右両端寄り個所に、主機関により同方向に同期して回転駆動可能とした駆動軸の後端側を、船体後方へ突出させて設け、該駆動軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、該駆動軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成を有することを特徴とする舶用推進装置。
【請求項2】
船体の船尾部に、主機関により回転駆動可能とした単数又は複数の駆動軸の後端側と、船体内のスラスト受けに前端部を回転自在に保持させた単数又は複数のスラスト伝達用従動軸の後端側を、船体後方へ左右水平方向に配列されるように突出させて設け、該各軸の後端部に、無端状の循環ベルトと該循環ベルトの外周面の周方向に取り付けた複数のプロペラブレードとからなるプロペラトレインを、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状となるように掛け回してなり、上記主機関による駆動軸の駆動により、上記各軸の後端部で上記プロペラトレインの循環ベルトを上記長円形状の軌道で循環駆動して、該プロペラトレインの各プロペラブレードを、上記循環ベルトの外周となる上下に扁平で左右方向に延びる長円軌道で循環移動できるようにした構成を有することを特徴とする舶用推進装置。
【請求項3】
船体の船尾部における中央部に、単数又は複数の駆動軸を配置し、且つ上記船体の船尾部の少なくとも左右両端寄り個所に、スラスト伝達用従動軸をそれぞれ配置するようにした請求項2記載の舶用推進装置。
【請求項4】
船体の船尾部の左右両端寄り個所に駆動軸をそれぞれ配置し、上記各駆動軸の間となる船体の船尾部における中央部に、単数又は複数のスラスト伝達用従動軸を配置するようにした請求項2記載の舶用推進装置。
【請求項5】
各軸の後端部におけるプロペラトレイン配置個所の前後両側となる個所に、外周へ所要寸法張り出す鍔状としてプロペラトレインの循環ベルトの前端と後端を受けるための前部と後部のスラスト受け部材をそれぞれ設けるようにした請求項1、2、3又は4記載の舶用推進装置。
【請求項6】
左右方向に配置された各軸の間の位置に、プロペラトレインの各プロペラブレードの循環移動に干渉することなく、上下に扁平で左右方向に延びる長円形状で配置してあるプロペラトレインの循環ベルトの前側端部と後側端部の周方向の一部又は全部の外周方向への変位をそれぞれ防止するための前側及び後側押さえ用ガイドを設けるようにした請求項1、2、3、4又は5記載の舶用推進措置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−131614(P2011−131614A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290123(P2009−290123)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)