説明

船外機用エンジンのアノード防食ユニット

【課題】アノードメタルの交換時期を容易に認識することができる船外機用エンジンのアノード防食ユニットを提供する。
【解決手段】船外機用エンジンのアノード防食ユニット26は、ウォータジャケット45を構成するシリンダブロック23にアノードメタル54を取り付けたものである。アノード防食ユニット26は、シリンダブロックおよびアノードメタル間の電位差で流れる電流Iを検出するアノード電流検出部62と、アノード電流検出部で検出された電流が、予め設定されている基準電流を下回ったとき、アノードメタルの交換時期であると判断する交換時期判断部63と、交換時期判断部の判断結果を報知する報知部67とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に搭載された水冷エンジンの冷却水通路を構成する通路構成部にアノードメタルを取り付けた船外機用エンジンのアノード防食ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
船外機に搭載された水冷エンジンにおいては、ウォータジャケット(冷却水通路)に冷却水(海水など)を流すことにより、シリンダブロックの冷却部位を冷却している。このシリンダブロックは、例えばアルミニウム合金などの金属材料で構成されている。
ここで、ウォータジャケットは冷却水(海水など)に晒されるため腐食することが考えられる。
【0003】
そこで、ウォータジャケットの腐食を抑制する手段として、ウォータジャケット内にアノードメタルを収納した状態でシリンダブロックに設ける技術が知られている。
この技術によれば、シリンダブロックおよびアノードメタル間の電位差でシリンダブロックおよびアノードメタル間に電流(防食電流)を流し、シリンダブロックの代わりにアノードメタルを電食させることが可能である。
このように、シリンダブロックの代わりにアノードメタルを電食させることで、ウォータジャケットの腐食を抑えることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−162187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、アノードメタルが電食により消耗するとシリンダブロックおよびアノードメタル間に電流(防食電流)が流れ難くなり、シリンダブロックの腐食を抑えることが難しくなる。
このため、アノードメタルが所定量消耗した時点で、消耗したアノードメタルを新たなアノードメタルと交換する必要がある。
しかし、アノードメタルはウォータジャケット内に収納されているため、アノードメタルの消耗状態(すなわち、交換時期)を認識することが難しい。
【0006】
本発明は、アノードメタルの交換時期を容易に認識することができる船外機用エンジンのアノード防食ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、船外機に搭載された水冷エンジンの冷却水通路を構成する通路構成部に、前記通路構成部を保護するアノードメタルを取り付けた船外機用エンジンのアノード防食ユニットにおいて、前記通路構成部および前記アノードメタル間の電位差で前記アノードメタルに流れる電流を検出するアノード電流検出部と、前記アノード電流検出部で検出された電流が、予め設定されている基準電流を下回ったとき、前記アノードメタルの交換時期であると判断する交換時期判断部と、前記交換時期判断部の判断結果を報知する報知部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、通路構成部およびアノードメタル間の電位差で通路構成部およびアノードメタル間に電流(防食電流)を流すことで、通路構成部(冷却水通路)の代わりにアノードメタルを電食することができる。
アノードメタルが電食することで、アノードメタルの形状が小さくなり溶解量が減少する。このため、通路構成部およびアノードメタル間に電流(防食電流)が流れ難くなる。
【0009】
よって、通路構成部およびアノードメタル間に流れる電流を検出することで、アノードメタルの電食状態を判断することができる。
そこで、請求項1において、通路構成部およびアノードメタル間に流れる電流を検出して、アノードメタルの交換時期を判断するようにした。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記報知部は、警告を表示する表示部、報知音を発する報音部の少なくとも一方からなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、アノード電流検出部は、前記通路構成部および前記アノードメタル間を流れる電流を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、通路構成部およびアノードメタル間に流れる電流をアノード電流検出部で検出し、検出された電流が基準電流を下回ったとき交換時期判断部でアノードメタルの交換時期であると判断し、この判断結果を報知部で報知するようにした。
これにより、報知部による報知でアノードメタルの交換時期を容易に認識することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、報知部として、警告を表示する表示部、報知音を発する報音部の少なくとも一方を用いることにした。
報知部として表示部を用いることで、報知を視覚で感知することができ、アノードメタルの交換時期を容易に認識することができる。
さらに、報知部として報音部を用いることで、報知を聴覚で感知することができ、アノードメタルの交換時期を容易に認識することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、通路構成部およびアノードメタル間を流れる電流をアノード電流検出部で検出するようにした。
ここで、アノードメタルは取付部材(例えば、取付ボルト、ワッシャやナットなど)で通路構成部に取り付けられている。この取付部材を通路構成部の外部から着脱可能とする必要があり、取付部材の一部が通路構成部の外部に露出されている。
【0015】
露出された取付部材の一部材を通路構成部に接続し、露出された取付部材の他部材をアノードメタルに接続する。さらに、一部材および他部材にアノード電流検出部を導通可能(電気的)に接続する。
このように、取付部材の一部材および他部材を通路構成部から露出させ、これらの部材にアノード電流検出部を導通可能(電気的)に接続することでアノード電流検出部を容易に接続することができる。
これにより、アノード電流検出部を取り付ける取付構造の簡素化を図ることができる。
【0016】
さらに、一部材および他部材にアノード電流検出部を導通可能(電気的)に接続することで、通路構成部およびアノードメタル間を流れる電流をアノード電流検出部で検出できる。
すなわち、通路構成部およびアノードメタル間を流れる電流をアノード電流検出部で検出することで、アノード電流検出部を取り付ける取付構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る船外機の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】アノードメタルの交換時期を認識し、認識後にアノードメタルを交換する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0019】
実施例に係る船外機用エンジンのアノード防食ユニット(以下、アノード防食ユニットと略記する)26について説明する。
図1に示すように、船外機10は、マウントケース11と、エクステンションケース12と、ギヤケース13と、水冷エンジン14と、駆動軸15と、ギヤ機構16と、プロペラシャフト17と、プロペラ18と船外機取付機構19とを備えている。
【0020】
マウントケース11は、上面に水冷エンジン14を取り付ける、いわゆる、エンジン支持ケースである。
エクステンションケース12は、マウントケース11の下部に取り付けられている。
ギヤケース13は、エクステンションケース12の下部に取り付けられている。
【0021】
水冷エンジン14は、バーチカル型多気筒エンジン(例えば、V型6気筒エンジン)であり、上下方向に並列に並んだ各シリンダ21の軸線を横向き(略水平)とし、クランクシャフト22を縦向きとしたものである。
水冷エンジン14において、横向きのシリンダブロック(通路構成部)23とシリンダヘッド24との接合面、および、シリンダヘッド24とヘッドカバー25との接合面は略垂直面となる。
この水冷エンジン14は、図2に示すウォータジャケット(冷却水通路)45の腐食を防止することで、ウォータジャケット45を保護するアノード防食ユニット26(図2参照)を備えている。
【0022】
駆動軸15は、エクステンションケース12に収納されており、水冷エンジン14のクランクシャフト22から下方へ延び、水冷エンジン14の動力をギヤケース13内のギヤ機構16およびプロペラシャフト17を介してプロペラ18に伝達するものである。
【0023】
水冷エンジン14は、下部のアンダーケース31および上部のエンジンカバー32で覆われている。エンジンカバー32は、上部に新気取入れ口32aを有している。外気は、新気取入れ口32aからエンジンカバー32のなかに取り入れられる。
マウントケース11とエクステンションケース12の上部は、アンダーカバー33で覆われている。
【0024】
エクステンションケース12およびギヤケース13には、ウォータポンプ35および冷却水供給管36が収納されている。ギヤケース13は取水口13aを有する。
ウォータポンプ35により取水口13aからギヤケース13内に取り入れられた冷却水(海水など)44(図2参照)は、冷却水供給管36を通って水冷エンジン14のウォータジャケット(冷却水通路)45(図2参照)へ供給されて、水冷エンジン14のシリンダブロック23やシリンダヘッド24等における冷却部位を冷却した後に外部へ排出される。
43は冷却水スクリーンである。
【0025】
船外機取付機構19は、船体Siに船外機10を固定するものであって、スイベル軸37を中心に平面視左右に船外機10を揺動し、また、チルト軸38を中心にスイベル軸37を含み船外機10を図時計方向に跳ね上げることが可能である。
【0026】
図2に示すように、水冷エンジン14のシリンダブロック23は、シリンダライナ41が埋め込まれたシリンダ部42を備え、シリンダライナ41のシリンダ穴41aの軸線43がV字状に配置され、シリンダ部42にシリンダライナ41を囲むようにウォータジャケット45が形成されている。
ウォータジャケット45に冷却水供給管36(図1参照)から供給された冷却水(海水など)が流れることにより、シリンダライナ41の周囲を冷却することができる。
【0027】
シリンダ部42に、ウォータジャケット45の腐食を防止することでウォータジャケット45を保護するアノード構造体27が複数個備えられている。
すなわち、図1で説明したように、水冷エンジン14は、バーチカル型多気筒エンジン(例えば、V型6気筒エンジン)である。すなわち、水冷エンジン14には複数個(具体的には6個)のシリンダライナ41が設けられている。
そして、複数個のシリンダライナ41を囲むウォータジャケット45(シリンダブロック23)にアノード構造体27がそれぞれ設けられている。
よって、シリンダブロック23に複数個のアノード構造体27が設けられている。
【0028】
しかし、複数個のアノード構造体27を説明すると説明が煩雑になり、アノード防食ユニット26の構成が理解し難くなる。
そこで、アノード防食ユニット26の理解を容易にするために、実施例においては、複数個のアノード構造体27のなかから1つを選択して例示する。
【0029】
図3に示すように、アノード防食ユニット26は、ウォータジャケット45の腐食を防止することでウォータジャケット45を保護するアノード構造体27と、アノード構造体27の交換時期を判断するアノード検出手段28とを備えている。
【0030】
アノード構造体27は、シリンダブロック23のメタル挿入孔47にねじ結合されたシーリングプラグ(取付部材)51と、シーリングプラグ51の貫通孔52に貫通可能な取付ボルト(取付部材)53と、取付ボルト53およびシーリングプラグ51に支持される筒状のアノードメタル54とを備えている。
【0031】
シーリングプラグ51は、不導体樹脂製の部材である。
アノードメタル54は、ウォータジャケット45が電食することを防止するために、ウォータジャケット45(シリンダブロック23)より腐食しやすい金属で形成された筒状の部材である。
例えば、シリンダブロック23の材質がアルミニウム合金である場合、アノードメタル54の材質として亜鉛や亜鉛合金が用いられる。
ここで、腐食しやすい金属とは、よりイオン化しやすく低い正極電位をもつ金属である。このアノードメタル54は、ウォータジャケット45に代わって腐食により溶解するため、犠牲電極(あるいは犠牲陽極)と呼ばれる。
【0032】
アノードメタル54が取付ボルト53に嵌合され、シーリングプラグ51の貫通孔52から突出したねじ部53aにワッシャ(取付部材)55が嵌合されるとともにナット(取付部材)56がねじ結合される。これにより、アノードメタル54が取付ボルト53およびシーリングプラグ51で支持されている。
【0033】
シリンダブロック23およびシーリングプラグ51間にシーリングワッシャ(取付部材)57を介在させ、かつ、取付ボルト53およびシーリングプラグ51間にOリング(取付部材)58を介在させることで、ウォータジャケット45を外部から密封している。
ここで、シリンダブロック23、取付ボルト53、アノードメタル54、ワッシャ55、ナット56およびシーリングワッシャ57は導体である。
【0034】
アノード検出手段28は、水冷エンジン14の駆動状態を検出する駆動検出部61と、アノードメタル54に流れる電流(防食電流)I(図4参照)を検出するアノード電流検出部62と、アノード電流検出部62で検出された電流Iに基づいてアノードメタル54の交換時期を判断する交換時期判断部63と、交換時期判断部63の判断結果を報知する報知部67とを備えている。
【0035】
駆動検出部61は、一例として、水冷エンジン14のエンジン回転計59からの信号に基づいて、水冷エンジン14の駆動状態、停止状態を検出し、検出信号を交換時期判断部63(具体的には、判断部65)に伝えるものである。
【0036】
アノード電流検出部62は、シーリングワッシャ57およびワッシャ55に導通可能(電気的)に接続され、シリンダブロック23およびアノードメタル54間に流れる電流I(図4参照)を検出するものである。
この電流Iは、シリンダブロック23とアノードメタル54との電位差により流れる電流である。
【0037】
ここで、アノードメタル54は取付部材(シーリングプラグ51、取付ボルト53、シーリングワッシャ57やワッシャ55など)でシリンダブロック23に取り付けられている。
シーリングプラグ51は不導体樹脂製の部材である。
シーリングワッシャ(一部材)57やワッシャ(他部材)55は、シリンダブロック23の外部に露出された導体金属製の部材である。
【0038】
このように、シーリングワッシャ57やワッシャ55をシリンダブロック23の外部に露出させることで、アノード電流検出部62をシーリングワッシャ57およびワッシャ55に容易に接続できる。
これにより、アノード電流検出部62を取り付ける取付構造の簡素化を図ることができる。
【0039】
加えて、アノード電流検出部62をシーリングワッシャ57およびワッシャ55に導通可能(電気的)に接続することで、シリンダブロック23およびアノードメタル54間の電位差でシリンダブロック23およびアノードメタル54間に電流I(図4参照)が流れる。
よって、シリンダブロック23およびアノードメタル54間を流れる電流(防食電流)Iをアノード電流検出部62で検出することができる。
【0040】
交換時期判断部63は、増幅部64と、判断部65と、出力部66とを備えている。
増幅部64は、アノード電流検出部62で検出された検出電流Iを増幅して判断部65に伝えるものである。
【0041】
判断部65は、駆動検出部61からの検出信号に基づいて、水冷エンジン14が駆動状態にあるか、停止状態にあるかを判断するものである。
さらに、判断部65は、予め設定された基準電流が記憶され、この基準電流を検出電流Iと比較して検出電流Iが基準電流を下回っているか否かを判断するものである。
【0042】
加えて、判断部65は、検出電流Iが基準電流を下回っていると判断し、かつ、水冷エンジン14が駆動状態にあると判断した場合、アノードメタル54の交換時期であると判断して交換信号を出力部66に伝えるものである。
出力部66は、判断部65から伝えられた交換信号に基づいて、報知部67に報知信号を伝えるものである。
【0043】
報知部67は、警告灯(表示部)71および警告ブザー(報音部)72を備えている。
報知部67によれば、出力部66から伝えられた報知信号に基づいて警告灯71が点灯(点滅)表示し、警告ブザー72が警告音を発生する。
【0044】
つぎに、アノード防食ユニット26のアノードメタル54を交換する例を図4に基づいて説明する。
まず、アノード検出手段28でアノードメタル54の交換時期を認識する例について説明する。
シリンダブロック23とアノードメタル54との電位差により、シリンダブロック23およびアノードメタル54間に電流(防食電流)Iが矢印の如く流れる。
【0045】
具体的には、シリンダブロック23とアノードメタル54との電位差により、アノードメタル54からウォータジャケット45内の冷却水(海水など)44を経てシリンダブロック23に電流(防食電流)Iが矢印の如く流れる。
シリンダブロック23に流れた電流Iは、シリンダブロック23およびシーリングワッシャ57を経てハーネス74に矢印の如く流れる。
【0046】
ハーネス74に流れた電流Iはアノード電流検出部62に矢印の如く流れ、アノード電流検出部62で電流Iが検出される。
アノード電流検出部62に流れた電流Iはハーネス75およびワッシャ55を経て取付ボルト53に矢印の如く流れる。
取付ボルト53に流れた電流Iはアノードメタル54に矢印の如く流れ、アノードメタル54から冷却水(海水など)44を経てシリンダブロック23に矢印の如く流れる。
【0047】
このように、アノードメタル54から冷却水(海水など)44を経てシリンダブロック23に電流(防食電流)Iが流れることで、ウォータジャケット45の腐食を抑えることができる。
すなわち、アノードメタル54が腐食により溶解することで、ウォータジャケット45の腐食を抑えることができる。
これにより、ウォータジャケット45の腐食を防止してウォータジャケット45を保護することができる。
【0048】
この状態で、水冷エンジン14(図1参照)が駆動状態にあるか、停止状態にあるかを検出し、検出信号を判断部65に伝える。
つぎに、シリンダブロック23とアノードメタル54との電位差によりシリンダブロック23およびアノードメタル54間に流れる電流(防食電流)Iをアノード電流検出部62で検出する。
【0049】
ここで、シリンダブロック23およびアノードメタル54間に電流Iが流れることで、ウォータジャケット45の代わりにアノードメタル54が電食する。
アノードメタル54が腐食により溶解することで、アノードメタル54の形状が小さくなり溶解量が減少する。
アノードメタル54の溶解量が減少することで、シリンダブロック23およびアノードメタル54間に電流Iが流れ難くなる。
よって、電流Iを検出することで、アノードメタル54の溶解の状態を判断することができる。
【0050】
そこで、シリンダブロック23およびアノードメタル54間に流れる電流Iをアノード電流検出部62で検出することにした。
アノード電流検出部62で検出された検出電流Iを、交換時期判断部63の増幅部64で増幅して判断部65に伝える。
判断部65において、検出電流Iを予め設定された基準電流と比較して検出電流Iが基準電流を下回っているか否かを判断する。
【0051】
検出電流Iが基準電流を下回っている場合、図1に示す水冷エンジン14が駆動状態にあるか、停止状態にあるかを判断する。
水冷エンジン14が駆動状態にあると判断した場合、アノードメタル54の交換時期であると判断して交換信号を出力部66に伝える。
【0052】
出力部66に伝えられた交換信号に基づいて報知部67に報知信号を伝える。
出力部66から報知信号が伝えられることにより、報知部67の警告灯71が点灯(点滅)し、警告ブザー72が警告音を発生する。
警告灯71の点灯(点滅)や、警告ブザー72の警告音で、操作者はアノードメタル54の交換時期を容易に認識することができる。
【0053】
ここで、報知部67として警告灯71や警告ブザー72を用いることで、報知を視覚で感知するとともに聴覚で感知することができ、アノードメタル54の交換時期を一層容易に認識することができる。
【0054】
ところで、実施例においては、アノード防食ユニット26の理解を容易にするために、複数個のアノード構造体27のなかから1つを選択して例示した。しかし、現実には、複数個のシリンダライナ41に対応させて複数個のアノード構造体27(第1〜第6のアノード構造体27)を備えている。
【0055】
さらに、複数個のアノード構造体27に対応させて、複数個の報知部67(第1〜第6の報知部67)を備えている。
よって、第1〜第6の報知部67のうち、例えば、第n(n=1〜6)の報知部67が報知した際に、第nのアノード構造体27のアノードメタル54の交換時期であることを容易に認識できる。
【0056】
ついで、アノードメタル54を交換する例について説明する。
まず、メタル挿入孔47にねじ結合されているシーリングプラグ51を緩めてメタル挿入孔47から外す。すなわち、シーリングプラグ51やアノードメタル54をメタル挿入孔47から取り出す。
つぎに、ナット56を緩めて、取付ボルト53のねじ部53aからナット56やワッシャ55を外す。
【0057】
ついで、取付ボルト53を貫通孔52から抜き出し、取付ボルト53に嵌合されているアノードメタル54を新たなアノードメタル54と交換する。
つぎに、取付ボルト53をナット56でシーリングプラグ51に取り付けることで、アノードメタル54を取付ボルト53およびシーリングプラグ51で支持する。
アノードメタル54を支持した後、シーリングプラグ51をメタル挿入孔47にねじ結合することでアノードメタル54の交換作業が完了する。
【0058】
なお、本発明に係る船外機用エンジンのアノード防食ユニット26は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、アノード防食ユニット26をシリンダブロック23に設けた例について説明したが、これに限らないで、アノード防食ユニット26をシリンダヘッド(通路構成部)24(図1、図2参照)に設けても同様の効果を得ることができる。
図2に示すように、水冷エンジン14のシリンダヘッド24にアノード構造体27を備え、アノード構造体27の交換時期を判断するアノード検出手段28を備えることも可能である。
【0059】
また、前記実施例では、報知部67として警告灯71および警告ブザー72の両方の部材を設けた例について説明したが、これに限らないで、いずれか一方を用いることも可能である。
報知部67として警告灯71を用いることで、報知を視覚で感知することができ、アノードメタル54の交換時期を容易に認識することができる。
一方、報知部67として警告ブザー72を用いることで、報知を聴覚で感知することができ、アノードメタル54の交換時期を容易に認識することができる。
【0060】
さらに、前記実施例では、水冷エンジン14としてV型6気筒エンジンを例示したが、これに限らないで、他のエンジンに本発明を適用することも可能である。
【0061】
また、前記実施例では、水冷エンジン14の駆動状態、停止状態をエンジン回転計59の信号に基づいて検出する例について説明したが、水冷エンジン14の駆動状態、停止状態を検出する方法はこれに限定するものではない。
例えば、水冷エンジン14の駆動状態、停止状態を冷却水(海水など)44の水温などに基づいて検出することも可能である。
また、船外機10に水冷エンジン14の回転数を制御する制御部を備えている場合には、制御部の情報から水冷エンジン14の駆動状態、停止状態を検出することが可能である。
【0062】
さらに、前記実施例で示した船外機10、水冷エンジン14、シリンダブロック23、シリンダヘッド24、アノード防食ユニット26、アノード構造体27、アノード検出手段28、ウォータジャケット45、アノードメタル54、アノード電流検出部62、交換時期判断部63、報知部67、警告灯71および警告ブザー72などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、水冷エンジンの冷却水通路を構成する通路構成部にアノードメタルを取り付けて通路構成部を保護するアノード防食ユニットを備えた船外機の水冷エンジンに好適である。
【符号の説明】
【0064】
10…船外機、14…水冷エンジン、23…シリンダブロック(通路構成部)、24…シリンダヘッド(通路構成部)、26…アノード防食ユニット(船外機用エンジンのアノード防食ユニット)、27…アノード構造体、28…アノード検出手段、45…ウォータジャケット(冷却水通路)、54…アノードメタル、62…アノード電流検出部、63…交換時期判断部、67…報知部、71…警告灯(表示部)、72…警告ブザー(報音部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機に搭載された水冷エンジンの冷却水通路を構成する通路構成部に、前記通路構成部を保護するアノードメタルを取り付けた船外機用エンジンのアノード防食ユニットにおいて、
前記通路構成部および前記アノードメタル間の電位差で前記アノードメタルに流れる電流を検出するアノード電流検出部と、
前記アノード電流検出部で検出された電流が、予め設定されている基準電流を下回ったとき、前記アノードメタルの交換時期であると判断する交換時期判断部と、
前記交換時期判断部の判断結果を報知する報知部と、
を備えたことを特徴とする船外機用エンジンのアノード防食ユニット。
【請求項2】
前記報知部は、
警告を表示する表示部、報知音を発する報音部の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1記載の船外機用エンジンのアノード防食ユニット。
【請求項3】
アノード電流検出部は、
前記通路構成部および前記アノードメタル間を流れる電流を検出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の船外機用エンジンのアノード防食ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105273(P2011−105273A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265485(P2009−265485)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)