説明

船外機

【課題】船外機の利用による業務やレジャーの範囲を拡大するために、圧力水を吐出可能な水ポンプや、圧縮空気を吐出可能なエアコンプレッサーを設けた場合でも、船外機の構成が複雑になることを抑制すると共に、船体内のスペースが狭められないようにする。
【解決手段】船外機5は、下部が水2の表面下に没入可能とされるケース8と、このケース8の下部に支持されるプロペラ9を駆動するエンジン10と、このエンジン10をその外方から開閉可能に覆うカウリング12とを備える。エンジン10により駆動可能とされ、船外機5の外部に向かって圧力水2Bを吐出可能とする水ポンプ33と、エンジン10により駆動可能とされ、船外機5の外部に向かって圧縮空気58を吐出可能とするエアコンプレッサー57とのうち、少なくともいずれか一方の機器33,57を設ける。この機器33,57をエンジン10とカウリング12との間の空間32に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体を推進させるよう駆動力を出力すると共に、この駆動力の出力以外の目的のために、圧力水や圧縮空気を外部に向かって吐出可能とする多目的な船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型船艇における船外機には、従来、下記の特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、船外機は、縦方向に延びて船体に支持され、その下部が水の表面下に没入可能とされるケースと、このケースの下部に支持されるプロペラと、上記ケースの上部に支持され、上記プロペラを駆動するようこのプロペラを連結させるエンジンと、このエンジンをその外方から開閉可能に覆うカウリングとを備えている。
【0003】
また、漁労機械用の動力源として、上記エンジンにより駆動可能とされる油圧発生装置が設けられている。この油圧発生装置は、船体内に設けられて、油を貯留するオイルタンクと、上記ケースの内部に組み付けられて上記エンジンにより駆動可能とされ、上記オイルタンク内のオイルを吸入する一方、船外機の外部に向かって圧力油を吐出するオイルポンプとを備えている。
【0004】
そして、上記エンジンの駆動によりプロペラを駆動させれば、船艇が推進させられて所望の水域に移動可能とされる。一方、上記エンジンの駆動により上記油圧発生装置を駆動させれば、この装置のオイルポンプから吐出される圧力油により漁労機械が作動させられて、所望の漁労が軽快かつ容易にできることとされる。
【0005】
また、他の従来の技術として、上記船外機の利用による業務やレジャーの範囲の拡大のために、例えば、上記船外機とは別に水ポンプと、この水ポンプを駆動させる他のエンジンとが設けられる場合がある。そして、この場合には、上記水ポンプから吐出される圧力水により、例えば、釣りなどで捕獲した魚や、乗船者の汚れが洗浄可能とされる
【特許文献1】特公平6−39280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1の従来の技術によれば、オイルポンプはケース内部に組み付けられるようになっている。しかし、上記ケースの内部にオイルポンプを組み付けようとすると、このケースは、既存のケースの形状、構造を大きく変更することが要求されて、船外機の構成が複雑になるおそれを生じる。
【0007】
また、上記特許文献1のように、オイルタンクを船体内に設けると、この船体内のスペースが狭められて、船体上での作業性や居住性が阻害されるおそれを生じる。
【0008】
また、前記他の従来の技術のように、水ポンプと、これを駆動させる他のエンジンとを設けると、前記従来の技術の場合と同様に、船外機の構成機器点数が多くなって、その構成が複雑になるおそれを生じる。また、船体内のスペースが狭められて、船体上での作業性や居住性が阻害されがちとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、船外機の利用による業務やレジャーの範囲を拡大するために、圧力水を吐出可能な水ポンプや、圧縮空気を吐出可能なエアコンプレッサーを設けた場合でも、船外機の構成が複雑になることを抑制すると共に、船体内のスペースが狭められないようにして、船体上での作業性や居住性が良好に保たれるようにすることである。
【0010】
請求項1の発明は、縦方向に延びて船体3に支持され、その下部が水2の表面下に没入可能とされるケース8と、このケース8の下部に支持されるプロペラ9と、上記ケース8の上部に支持され、上記プロペラ9を駆動するようこのプロペラ9を連結させるエンジン10と、このエンジン10をその外方から開閉可能に覆うカウリング12とを備えた船外機において、
上記エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5の外部に向かって圧力水2Bを吐出可能とする水ポンプ33と、上記エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5の外部に向かって圧縮空気58を吐出可能とするエアコンプレッサー57とのうち、少なくともいずれか一方の機器33,57を設け、この機器33,57を上記エンジン10とカウリング12との間の空間32に配置したものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記エンジン10により駆動可能とされ、上記水2を吸入して、この水2により上記エンジン10を冷却させる冷却水ポンプ27を設け、この冷却水ポンプ27とは別体に上記水ポンプ33を設けたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1、もしくは2の発明に加えて、上記エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5以外の機器に向けて電力を出力可能とする発電機44を設けたものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のうちいずれか1つの発明に加えて、上記水ポンプ33から吐出される圧力水2Bと、上記エアコンプレッサー57から吐出される圧縮空気58とのうち、少なくともいずれか一方を上記船外機5の外部に取り出し可能とする取出部37,61を、この船外機5の前面部に設けたものである。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、縦方向に延びて船体に支持され、その下部が水の表面下に没入可能とされるケースと、このケースの下部に支持されるプロペラと、上記ケースの上部に支持され、上記プロペラを駆動するようこのプロペラを連結させるエンジンと、このエンジンをその外方から開閉可能に覆うカウリングとを備えた船外機において、
上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧力水を吐出可能とする水ポンプと、上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧縮空気を吐出可能とするエアコンプレッサーとのうち、少なくともいずれか一方の機器を設け、この機器を上記エンジンとカウリングとの間の空間に配置している。
【0017】
このため、上記水ポンプやエアコンプレッサーは従来の技術のようにケースの内部に組み付けられるものではない。よって、既存のケースの形状や構造を大きく変更することは不要である。しかも、上記水ポンプやエアコンプレッサーは、船外機に搭載されたエンジンにより駆動可能とされる。よって、上記水ポンプやエアコンプレッサーの駆動のために別途のエンジンなど駆動手段を設けることに比べ、船外機の構成機器点数の増加が防止される。
【0018】
この結果、船外機の利用による業務やレジャーの範囲を拡大するために、圧力水を吐出可能な水ポンプや、圧縮空気を吐出可能なエアコンプレッサーを設けた場合でも、船外機の構成が複雑になることは抑制される。
【0019】
また、上記したように、水ポンプやエアコンプレッサーは、上記エンジンとカウリングとの間の空間に配置されている。
【0020】
このため、上記したように水ポンプやエアコンプレッサーを設けた場合でも、船体内のスペースが狭められることは防止されて、船体上での作業性や居住性が良好に保たれる。
【0021】
請求項2の発明は、上記エンジンにより駆動可能とされ、上記水を吸入して、この水により上記エンジンを冷却させる冷却水ポンプを設け、この冷却水ポンプとは別体に上記水ポンプを設けている。
【0022】
このため、上記冷却水ポンプに影響されずに水ポンプを駆動させることができる。よって、この水ポンプから吐出される圧力水の利用の自由度が向上する。
【0023】
請求項3の発明は、上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機以外の機器に向けて電力を出力可能とする発電機を設けている。
【0024】
このため、上記発電機から出力される電力を利用することにより、船外機の利用による業務やレジャーの範囲をより拡大できる。
【0025】
請求項4の発明は、上記水ポンプから吐出される圧力水と、上記エアコンプレッサーから吐出される圧縮空気とのうち、少なくともいずれか一方を上記船外機の外部に取り出し可能とする取出部を、この船外機の前面部に設けている。
【0026】
ここで、通常、上記船外機は船体の後端部に支持される。このため、上記のように、船外機の前面部に取出部を設けると、船体上の乗船者による上記取出部からの圧力水や圧縮空気の取り出し作業が容易にできて便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の船外機に関し、船外機の利用による業務やレジャーの範囲を拡大するために、圧力水を吐出可能な水ポンプや、圧縮空気を吐出可能なエアコンプレッサーを設けた場合でも、船外機の構成が複雑になることを抑制すると共に、船体内のスペースが狭められないようにして、船体上での作業性や居住性が良好に保たれるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0028】
即ち、船外機は、縦方向に延びて船体に支持され、その下部が水の表面下に没入可能とされるケースと、このケースの下部に支持されるプロペラと、上記ケースの上部に支持され、上記プロペラを駆動するようこのプロペラを連結させるエンジンと、このエンジンをその外方から開閉可能に覆うカウリングとを備えている。
【0029】
上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧力水を吐出可能とする水ポンプと、上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧縮空気を吐出可能とするエアコンプレッサーとのうち、少なくともいずれか一方の機器が設けられている。この機器は上記エンジンとカウリングとの間の空間に配置されている。
【実施例1】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1,2に従って説明する。
【0031】
図1,2において、符号1は小型の船艇である。また、図中矢印Frは、この船艇1の推進方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての船艇1の幅方向をいうものとする。
【0032】
上記船艇1は、海や湖の水2の表面に浮かべられる船体3と、この船体3の後部にブラケット4により支持される船外機5とを備えている。
【0033】
上記船外機5は、縦方向に延びてその上部が上記ブラケット4により船体3に支持され、下部が水2の表面下に没入可能とされるケース8と、このケース8の下端部に支持されるプロペラ9と、上記ケース8の上部に支持される4サイクル多気筒エンジン10と、ケース8の内部に設けられ、上記エンジン10の駆動力を上記プロペラ9に伝達させるようこのプロペラ9を上記エンジン10に連結させる動力伝達装置11と、上記エンジン10をその外方から開閉可能に覆うカウリング12とを備えている。
【0034】
上記エンジン10は、上記ケース8の上面に支持されるクランクケース15と、縦方向に延びる軸心16回りに回転可能となるよう上記クランクケース15に支持されるクランク軸17と、上記クランクケース15から後方に向かって突出する気筒18と、上記クランク軸17の上端部に支持されるフライホイール19と、このフライホイール19を構成部品とする発電機であるフライホイールマグネト20とを備えている。
【0035】
上記カウリング12は、このカウリング12の下端部を構成して上記ケース8の上端部に支持され、上記エンジン10の下部をその外側方から覆うボトムカウリング23と、上記エンジン10の上部を全体的にその外方から開閉可能に覆うカウリング本体24とを備えている。このカウリング本体24の下縁部は、上記ボトムカウリング23の上縁部に不図示の係止具により係脱可能に係止されている。
【0036】
上記水2を冷却水2Aとして用いることにより、上記エンジン10を冷却する水冷却装置26が設けられている。この水冷却装置26は、上記ケース8の内部に設けられ、上記動力伝達装置11を介しエンジン10に連動連結される冷却水ポンプ27を備えている。上記ケース8には、水2の表面下を上記冷却水ポンプ27の吸入側に連通させる冷却水導入通路28と、上記冷却水ポンプ27の吐出側を上記エンジン10の冷却水ジャケットに連通させる冷却水供給通路29とが形成されている。
【0037】
上記エンジン10の駆動により、上記動力伝達装置11を介しプロペラ9を駆動させると、船艇1が推進可能とされる。また、上記エンジン10が駆動すれば、これに上記フライホイールマグネト20が連動する。これにより、このフライホイールマグネト20から生じる電力の「一部」が、船外機5の構成機器である不図示のバッテリに充電される。そして、このバッテリからの電力により、エンジン10の点火装置などの構成機器が作動させられ、このエンジン10の駆動が続けられる。
【0038】
また、上記エンジン10が駆動すれば、これに上記動力伝達装置11を介し冷却水ポンプ27が連動する。すると、この冷却水ポンプ27が上記冷却水導入通路28を通して水2を吸入する一方、この水2を冷却水2Aとして吐出し、この冷却水2Aは上記冷却水供給通路29を通してエンジン10の冷却水ジャケットに供給され、このエンジン10が冷却される。
【0039】
上記エンジン10と、カウリング12のカウリング本体24との間の空間32に配置されて、上記エンジン10の右側の外側面に支持される水ポンプ33が設けられている。この水ポンプ33のローター34は、上記エンジン10のクランク軸17の上端部側に連動装置35により連動連結されている。この連動装置35はベルト巻掛装置である。また、上記クランク軸17から連動装置35への動力伝達を断接続可能とする電磁式の第1クラッチ(不図示)が設けられている。
【0040】
上記水2の表面下を上記水ポンプ33の吸入側に連通させる水導入チューブ36と、上記船外機5の前面部に設けられ、上記水ポンプ33から吐出される圧力水2Bを上記船外機5の外部に取り出し可能とする取出部37と、上記水ポンプ33の吐出側を上記取出部37に連通させる圧力水案内チューブ38とが設けられている。上記圧力水2Bの取出部37は、上記船外機5の前面部である上記ボトムカウリング23の前面部のうち、右側部に設定されている。また、上記カウリング12の外部に配置され、一端部が上記取出部37にカップリング39により着脱可能に連結され、他端部にガン形状の常閉式開閉弁40が取り付けられる圧力水供給チューブ41が設けられている。
【0041】
上記第1クラッチの接続状態で、かつ、エンジン10が駆動すれば、上記連動装置35を介し水ポンプ33が駆動する。すると、この水ポンプ33は上記水導入チューブ36を通して水2を吸入する一方、この水2を圧力水2Bとして吐出し、上記圧力水案内チューブ38と圧力水供給チューブ41とに順次供給する。そこで、上記開閉弁40を操作して、これを開ければ、この開閉弁40から船外機5の外部に向けて圧力水2Bが噴射可能とされる。
【0042】
上記噴射される圧力水2Bは、例えば、次のように利用される。即ち、漁場や漁港において、魚や作業者自身の汚れの洗浄や、出荷後における船内の清掃がなされる。また、養殖網に付着した藻やゴミを除去するような網洗浄がなされる。また、生け簀において水を循環させることが行われる。
【0043】
上記空間32に配置されて、上記エンジン10の左側の後部外側面に支持される発電機44が設けられている。この場合、上記水ポンプ33と発電機44とは、上記エンジン10を基準として、水平方向(左右方向)で互いに逆方向に配置されている。上記発電機44のローター45は、上記エンジン10のクランク軸17の上端部側に他の連動装置46により連動連結されている。この他の連動装置46はベルト巻掛装置である。また、上記クランク軸17から上記連動装置46への動力伝達を断接可能とする電磁式の第2クラッチ(不図示)が設けられている。
【0044】
上記船外機5の前面部に設けられ、上記発電機44により発電された電力を上記船外機5の外部に取り出し可能とする取出部48と、上記発電機44の出力部を上記取出部48に電気的に接続させる電線49とが設けられている。上記取出部48は、上記船外機5の前面部である上記ボトムカウリング23の前面部のうち、左側部に設定されている。上記取出部48は、防水キャップ50により上記カウリング12の外部側から開閉可能に閉じられている。
【0045】
上記船体3側に配置されるバッテリ52と、上記カウリング12の外部に配置され、一端部が上記キャップ50が外された取出部48にコンセント53により着脱可能に接続され、他端部が上記バッテリ52に取り付けられる電線54が設けられている。上記バッテリ52には、前記フライホイールマグネト20の出力部も電気的に接続されている。
【0046】
上記第2クラッチの接続状態で、かつ、エンジン10が駆動すれば、上記フライホイールマグネト20に加え上記発電機44も駆動する。これにより、上記フライホイールマグネト20から生じる電力の「他部」と、発電機44から生じる電力の全部とが、上記船外機5以外の機器である上記バッテリ52に向けて出力され、このバッテリ52に充電される。この場合、上記第2クラッチの断接動作により、上記発電機44を必要に応じて駆動させるようにしてもよく、このようにすれば、上記エンジン10が過負荷になることが防止される。
【0047】
上記発電機44から出力される電力は上記バッテリ52を介し、例えば、次のように利用される。即ち、日没後などに、ライトが照射させられる。また、漁労用のウインチが回転駆動可能にされる。また、空調機による冷暖房が可能とされる。また、電力に基づく熱によりバーベキューをしたり、魚を焼いたり、弁当を温めたりすることにより所望の食事が可能とされる。
【0048】
上記空間32に配置されて、上記発電機44の前方近傍、かつ、上記エンジン10の左側の外側面に支持されるエアコンプレッサー57が設けられている。このエアコンプレッサー57は不図示のスイッチ回路を介し、上記バッテリ52からの電力により駆動可能とされている。また、上記空間32に配置されて、上記エンジン10の右側の外側面に支持され、上記エアコンプレッサー57から吐出される圧縮空気58を一旦貯留する空気タンク59が設けられている。
【0049】
上記船外機5の前面部に設けられ、上記圧縮空気58を上記船外機5の外部に取り出し可能とする取出部61と、上記空気タンク59を上記取出部61に連通させる圧縮空気案内チューブ62とが設けられている。上記圧縮空気58の取出部61は、上記船外機5の前面部である上記ボトムカウリング23の前面部のうち、中央部に設定されている。
【0050】
上記カウリング12の外部に配置され、一端部が上記取出部61にカップリング63により着脱可能に連結され、他端部に常閉式の開閉弁64が取り付けられう圧縮空気供給チューブ65が設けられている。
【0051】
上記バッテリ52の電力により、上記エアコンプレッサー57を駆動させる。すると、このエアコンプレッサー57が大気側の空気を吸入する一方、この空気を圧縮空気58として吐出し、上記空気タンク59、圧縮空気案内チューブ62、および圧縮空気供給チューブ65に順次供給する。そこで、上記開閉弁64を操作して、これを開ければ、この開閉弁64から圧縮空気58が船外機5の外部に向けて噴射可能とされる。
【0052】
上記噴射される圧縮空気58は、例えば、次のように利用される。即ち、船体や作業者に付着した水や汚れを吹き飛ばして、清掃作業がなされる。また、鮮魚の生け簀、ダイビング用のボンベ、もしくはプレジャー用などのゴムボートに上記圧縮空気58が供給される。
【0053】
上記の場合、各取出部37,48,59は左右方向に並設されている。また、上記圧力水2Bの取出部37と、電力の取出部48とは、上記圧縮空気58の取出部61を挟んで、左右に離れるよう配置されている。これにより、上記圧力水2Bの取出部37から洩出した圧力水2Bが上記電力の取出部48に容易に降りかかる、ということが防止される。
【0054】
上記構成によれば、エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5の外部に向かって圧力水2Bを吐出可能とする水ポンプ33と、上記エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5の外部に向かって圧縮空気58を吐出可能とするエアコンプレッサー57とのうち、少なくともいずれか一方の機器33,57を設け、この機器33,57を上記エンジン10とカウリング12との間の空間32に配置している。
【0055】
このため、上記水ポンプ33やエアコンプレッサー57は従来の技術のようにケース8の内部に組み付けられるものではない。よって、既存のケース8の形状や構造を大きく変更することは不要である。しかも、上記水ポンプ33やエアコンプレッサー57は、船外機5に搭載されたエンジン10により駆動可能とされる。よって、上記水ポンプ33やエアコンプレッサー57の駆動のために別途のエンジンなど駆動手段を設けることに比べ、船外機5の構成機器点数の増加が防止される。
【0056】
この結果、船外機5の利用による業務やレジャーの範囲を拡大するために、圧力水2Bを吐出可能な水ポンプ33や、圧縮空気58を吐出可能なエアコンプレッサー57を設けた場合でも、船外機5の構成が複雑になることは抑制される。
【0057】
また、上記したように、水ポンプ33やエアコンプレッサー57は、上記エンジン10とカウリング12との間の空間32に配置されている。
【0058】
このため、上記したように水ポンプ33やエアコンプレッサー57を設けた場合でも、船体内のスペースが狭められることは防止されて、船体3上での作業性や居住性が良好に保たれる。
【0059】
また、前記したように、エンジン10により駆動可能とされ、上記水2を吸入して、この水2により上記エンジン10を冷却させる冷却水ポンプ27を設け、この冷却水ポンプ27とは別体に上記水ポンプ33を設けている。
【0060】
このため、上記冷却水ポンプ27に影響されずに水ポンプ33を駆動させることができる。よって、この水ポンプ33から吐出される圧力水2Bの利用の自由度が向上する。
【0061】
また、前記したように、エンジン10により駆動可能とされ、上記船外機5以外の機器に向けて電力を出力可能とする発電機44を設けている。
【0062】
このため、上記発電機44から出力される電力を利用することにより、船外機5の利用による業務やレジャーの範囲をより拡大できる。
【0063】
また、前記したように、水ポンプ33から吐出される圧力水2Bと、上記エアコンプレッサー57から吐出される圧縮空気58とのうち、少なくともいずれか一方を上記船外機5の外部に取り出し可能とする取出部37,61を、この船外機5の前面部に設けている。
【0064】
ここで、通常、上記船外機5は船体3の後端部に支持される。このため、上記のように、船外機5の前面部に取出部37,61を設けると、船体3上の乗船者による上記取出部37,61からの圧力水2Bや圧縮空気58の取り出し作業が容易にできて便利である。
【0065】
なお、以上は図示の例によるが、次のように構成してもよい。即ち、上記フライホイールマグネト20の容量を大きくし、このフライホイールマグネト20から生じる電力の「他部」により、船外機5以外の機器であるライトなどに向けて十分に電力を出力できる場合には、上記発電機44はなくてもよい。また、この発電機44から生じる電力により、上記エンジン10の点火装置などや、船外機5以外の機器に向けて十分に電力を出力できる場合には、上記フライホイールマグネト20はなくてもよい。
【0066】
また、上記連動装置35,46は、チェーン巻掛式、歯車組、もしくは回転体同士の摩擦面接触式あってもよい。また、上記水導入チューブ36と共に、もしくは、これに代えて、水2の表面下を水ポンプ33の吸入側に連通させる水導入通路を上記ケース8に形成してもよい。
【0067】
以下の図3,4は、実施例2を示している。この実施例は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら各実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0068】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図3,4に従って説明する。
【0069】
図3,4において、上記エアコンプレッサー57のローター69は、上記エンジン10のクランク軸17の上端部側に更に他の連動装置70により連動連結されている。この連動装置70はベルト巻掛装置である。また、上記クランク軸17から上記連動装置70への動力伝達を断接可能とする電磁式の第3クラッチ(不図示)が設けられている。また、上記空気タンク59は、上記発電機44とエアコンプレッサー57との下方近傍で、上記エンジン10の左側の外側面に支持されている。
【0070】
上記第3クラッチの接続状態で、かつ、エンジン10が駆動すれば、これにより、上記連動装置70を介しエアコンプレッサー57が駆動して、圧縮空気58を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1を示し、船艇の後部の簡略斜視図である。
【図2】実施例1を示し、船外機の左側面図である。
【図3】実施例2を示し、船外機の上部左側面図である。
【図4】実施例2を示し、船外機の上部右側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 船艇
2 水
2A
2B
3 船体
5 船外機
8 ケース
9 プロペラ
10 エンジン
12 カウリング
15 クランクケース
17 クランク軸
19 フライホイール
20 フライホイールマグネト
23 ボトムカウリング
24 カウリング本体
26 水冷却装置
27 冷却水ポンプ
32 空間
33 水ポンプ
35 連動装置
37 取出部
44 発電機
46 連動装置
48 取出部
52 バッテリ
57 エアコンプレッサー
58 圧縮空気
59 空気タンク
61 取出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に延びて船体に支持され、その下部が水の表面下に没入可能とされるケースと、このケースの下部に支持されるプロペラと、上記ケースの上部に支持され、上記プロペラを駆動するようこのプロペラを連結させるエンジンと、このエンジンをその外方から開閉可能に覆うカウリングとを備えた船外機において、
上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧力水を吐出可能とする水ポンプと、上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機の外部に向かって圧縮空気を吐出可能とするエアコンプレッサーとのうち、少なくともいずれか一方の機器を設け、この機器を上記エンジンとカウリングとの間の空間に配置したことを特徴とする船外機。
【請求項2】
上記エンジンにより駆動可能とされ、上記水を吸入して、この水により上記エンジンを冷却させる冷却水ポンプを設け、この冷却水ポンプとは別体に上記水ポンプを設けたことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
上記エンジンにより駆動可能とされ、上記船外機以外の機器に向けて電力を出力可能とする発電機を設けたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の船外機。
【請求項4】
上記水ポンプから吐出される圧力水と、上記エアコンプレッサーから吐出される圧縮空気とのうち、少なくともいずれか一方を上記船外機の外部に取り出し可能とする取出部を、この船外機の前面部に設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の船外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−44411(P2008−44411A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219030(P2006−219030)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)