説明

船外機

【課題】コストの低減を図ることができる転舵角検出機構を備えている船外機を提供する。
【解決手段】湾曲部材31は接触子35に接している。船外機本体を転舵すると、マウントフレーム25は、矢印(2)のように、想像線で示すマウントフレーム25の位置に移動する。すると、接触子35は、スイベル軸の中心55からの曲率半径が連続的に変化する湾曲部材31に押されて、矢印(3)のように、想像線で示す接触子35の位置に移動する。結果、角度センサ24で転舵角を検出することができる。
【効果】転舵角検出機構は、転舵最大角度の半分を超えない小さな角度の角度センサと、湾曲部材とからなるので、転舵角検出機構のコストを低減することができ、船外機全体のコストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵角を検出することができる船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船外機の転舵角を検出する手段として、回動角センサを利用した技術が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
この特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図8に示すように、船外機100は、艇体101にスターンブラケット102を介して取付けられている。船外機本体103は、スターンブラケット102にスイベル軸104を介して回転自在に設けられており、操舵手がティラハンドル105を図手前又は図奥に動かすことで、スイベル軸104の軸線106を中心にして船外機本体103が転舵される。
そして、スイベル軸104上に設けられている回動角センサ107で、船外機本体103の転舵角が検出される。
【0003】
ところで、一般に船外機本体103は、左転舵時、右転舵時それぞれ50°以上転舵される場合がある。回動角センサ107には、左右の転舵角を合計した100°以上の回転角度を検出する能力が必要とされる。
しかし、100°以上の回転角度を検出できる回動角センサ107は高価であるため、船外機100も全体としてコストが高くなる。すなわち、安価な転舵角検出機構を備えている船外機が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−230949公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コストの低減を図ることができる転舵角検出機構を備えている船外機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、艇体に連結するスターンブラケットに、スイベル軸を介して船外機本体を取付け、前記スターンブラケットを基準として前記スイベル軸を中心に前記船外機本体が所定の転舵最大角度まで揺動可能とされた船外機において、接触子の動作最大角度が、前記転舵最大角度の半分を超えない角度センサを、前記スターンブラケットに設け、前記接触子を押す湾曲部材を、船外機本体に設けてなり、前記湾曲部材は、前記スイベル軸の中心からの曲率半径が、連続的に変化していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、船外機に船外機本体を揺動させる操舵部が備えられ、この操舵部は、角度センサで検出した検出情報から転舵角を演算する演算部と、演算された転舵角を表示する表示部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、接触子の動作最大角度が、転舵最大角度の半分を超えない角度センサを、スターンブラケットに設け、接触子を押す湾曲部材を、船外機本体に設けてなり、湾曲部材は、スイベル軸の中心からの曲率半径が、連続的に変化している。一般的に、接触子の動作最大角度が小さな角度センサは安価である。転舵角検出機構は、転舵最大角度の半分を超えない小さな角度の角度センサと、湾曲部材とからなるので、転舵角検出機構のコストを低減することができ、船外機全体のコストの低減を図ることができる。。
加えて、接触子の動作最大角度が、転舵最大角度の半分を超えない角度センサには、実績のあるトリムアングルセンサを使用できるので、転舵角検出機構の信頼性を高めることができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、操舵部は、角度センサで検出した検出情報から転舵角を演算する演算部と、演算された転舵角を表示する表示部とを備えている。操舵手は、走行中に船外機の転舵角を確認することができるので、操舵性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】船外機の全体を示す側面図である。
【図2】転舵角検出機構の分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】湾曲部材の平面図である。
【図6】湾曲部材の正面図である。
【図7】転舵角検出機構の作用を説明する図である。
【図8】従来の技術に係る船外機の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、船外機10は、図左側の矢印Frで示した方向を前方とし、図右側の矢印Rrで示した方向を後方とし、上部に船外機用エンジン11を備えている。なお、この船外機用エンジン11は、シリンダ、ピストンが横向きで、クランクシャフト、カムシャフトが縦向きの縦型エンジンである。
【0013】
船外機10は、船外機用エンジン11の上部を覆う上側エンジンカバー12と、このエンジンカバー12の下方に設けられている下側エンジンカバー13と、このエンジンカバー13の下方に設けられているエクステンションケース14と、このエクステンションケース14の下方に設けられているギヤケース15とから外観が構成される。
【0014】
船外機10は、艇体に連結するスターンブラケット16に、スイベル軸17を介して船外機本体19を取付け、スターンブラケット16を基準としてスイベル軸17の軸線18を中心に船外機本体19が所定の転舵最大角度まで揺動可能とされている。
船外機10の転舵角検出機構20(詳細後述)は、下側エンジンカバー13の前方に設けられている。
【0015】
ギヤケース15の後方には、船外機用エンジン11の動力で回転して推進力を得るプロペラ21が回転自在に設けられている。一対のドグクラッチで切り換えることで、プロペラ21の正回転、逆回転を切り換え、前進又は後進の推進力を得る。
上側エンジンカバー12は、下側エンジンカバー13前方の内側にフックを引っ掛けて後方の止め具28により取付けられている。
【0016】
次に転舵角検出機構20の構成要素を分解斜視図に基づいて説明する。
図2に示されるように、転舵角検出機構20は、スターンブラケット(図1、符号16)に臨むように設けられているスイベルケース22と、このスイベルケース22の上部23に設けられている角度センサ24と、スイベルケース22に設けられスイベル軸17を一体的に含んで形成されているマウントフレーム25と、このマウントフレーム25の先端部26にボルト27を介して設けられている湾曲部材31とからなる。
【0017】
角度センサ24は、センサ本体部32と、このセンサ本体部32に揺動軸33を中心にして揺動自在に設けられている揺動部材34と、この揺動部材34の先端に設けられている接触子35とからなる。接触子35は、湾曲部材31の湾曲面36に接触している。
角度センサ24は、動作角度が転舵角の半分程度であり、例えばトリムアングルセンサが使用できる。トリムアングルセンサは、ジェット推進艇の艇尾に設けられている噴射ノズルの傾斜角を計測する角度センサであって、動作角度は大きくない。
【0018】
次に本発明に係る要部を平面方向からの断面図に基づいて詳しく説明する。
図3に示されるように、艇体に連結するスターンブラケット16にチルティングシャフト37を設け、このチルティングシャフト37にスイベルケース22が揺動自在に設けられている。スイベルケース22には、軸受41が設けられており、この軸受41にスイベル軸17が揺動自在に支持されている。スイベル軸17を一体的に含んでいるマウントフレーム25は、矢印(1)のように、スイベル軸17を中心にして揺動する。
【0019】
接触子35は、湾曲面36に接触する方向に付勢されている。マウントフレーム25と共に湾曲部材31が揺動すると、接触子35が湾曲面36上を摺動する。結果、湾曲部材31は、常に接触子35を押す状態となる。
【0020】
船外機10に船外機本体(図1、符号19)を揺動させる操舵部42が備えられている。この操舵部42は、角度センサ24で検出した検出情報から転舵角を演算する演算部43と、演算された転舵角を表示する表示部44とを備えている。
なお、図面では操舵部42を概念的に示す。操舵部42とは、ステアリングハンドルが備えられている部分のことをいう。
【0021】
次に本発明に係る要部を側面方向からの断面図に基づいて説明する。
図4に示されるように、スターンブラケット16の上に接触するようにスイベルケース22が設けられ、このスイベルケース22の上部23に角度センサ24が設けられ、この角度センサ24に臨むように湾曲部材31が設けられている。
湾曲部材31はセンサ本体部32に接触することなく軸線18を中心にして揺動するが、接触子35は湾曲面36との接触を維持できる。
【0022】
次に湾曲部材31の形状について詳しく説明する。
図5に示されるように、湾曲部材31の取付面45と取付面46との中間位置を通る線を基準線47とする。この基準線47と湾曲面36との交わる点を交点48とし、図左側の湾曲面36上の点を点51とし、図右側の湾曲面36上の点52とする。点48、51、52を通り、湾曲面36に対する法線をそれぞれ引くと、1点で交わりこの点を仮想中心53とする。仮想中心53から交点48までの距離をR0とし、仮想中心53から点51までの距離をR1とし、仮想中心53から点52までの距離をR2とすると、R2<R0<R1となる。なお、仮想中心53は、基準線47からの距離がLであり、仮想中心53から半径R0の円弧を円弧54とする。
【0023】
スイベル軸(図3、符号17)の中心55は基準線47上にあり、湾曲部材31はスイベル軸17の中心55からの曲率半径が、連続的に変化している。
【0024】
図6に示されるように、湾曲部材31は、座面56、57を備えている。これにより、湾曲部材31をマウントフレーム(図2、符号25)の先端部26に確実に取付けることができる。
【0025】
以上の述べた転舵角検出機構の作用を次に述べる。
図7に示されるように、湾曲部材31は接触子35に接している。船外機本体(図1、符号19)を転舵すると、マウントフレーム25は、矢印(2)のように、想像線で示すマウントフレーム25の位置に移動する。すると、接触子35は、スイベル軸の中心55からの曲率半径が連続的に変化する湾曲部材31に押されて、矢印(3)のように、想像線で示す接触子35の位置に移動する。結果、角度センサ24で転舵角を検出することができる。
【0026】
以上のように、マウントフレーム25が大きく動き、転舵角が大きくなっても接触子35の動作角度は小さい。結果、接触子の動作最大角度が、転舵最大角度の半分を超えない角度センサ24で対応することができる。なお、スイベル軸の中心55は、軸線(図4、符号18)上にある。
【0027】
尚、本発明に係る船外機は、実施の形態ではステアリングハンドルの操作により転舵する船外機に適用したが、ティラハンドルの操作により転舵する船外機にも適用可能であり、転舵する船外機であれば他の船外機に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る船外機は、転舵角の検出を要する船外機に好適である。
【符号の説明】
【0029】
10…船外機、16…スターンブラケット、17…スイベル軸、18…軸線、19…船外機本体、20…転舵角検出機構、24…角度センサ、25…マウントフレーム、31…湾曲部材、33…揺動軸、35…接触子、42…操舵部、43…演算部、44…表示部、55…スイベル軸の中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
艇体に連結するスターンブラケットに、スイベル軸を介して船外機本体を取付け、前記スターンブラケットを基準として前記スイベル軸を中心に前記船外機本体が所定の転舵最大角度まで揺動可能とされた船外機において、
接触子の動作最大角度が、前記転舵最大角度の半分を超えない角度センサを、前記スターンブラケットに設け、
前記接触子を押す湾曲部材を、船外機本体に設けてなり、
前記湾曲部材は、前記スイベル軸の中心からの曲率半径が、連続的に変化していることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記船外機に前記船外機本体を揺動させる操舵部が備えられ、この操舵部は、前記角度センサで検出した検出情報から転舵角を演算する演算部と、演算された転舵角を表示する表示部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の船外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254214(P2010−254214A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109048(P2009−109048)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)