説明

船積用自走斜路装置

【課題】この発明は、路盤を自走車上へ傾動自在に固定すると共に、岸壁の任意の位置へ路盤を設置し、路盤上へ走行したトラックが、その端部から船舶内へ積荷を投下できるようにすることを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、自走車の上部に船積用の路盤を載置して、前記自走車の前部と、前記路盤の前部との間に、前記路盤の昇降装置を設けると共に、前記自走車の中間部を回動自在に連結し、前記路盤の前部に、該路盤を地上に支持する為に少なくとも二本の支脚を長短調節可能に連結し、前記路盤の後端部に該路盤と路面との落差を塞ぐ補助盤を回動自在に連結したことを特徴とする船積用自走斜路装置により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、陸上から海上の船体内へ積荷を移す場合、特に土砂のような積荷の場合に陸上のトラックから、船体内へ土砂を移す際に、岸壁付近におけるトラックの船体側への移動路として使用することを目的とした船積用自走斜路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来船積用の路盤は、工場その他に保管され、使用時にトレーラーを利用して現場に運んでいた。このような場合には、トレーラーに積み込む際、トレーラーから卸す際の2回に亘り大型クレーンが必要であるから、必要の都度大型クレーンとトレーラーを借り上げなければならなかった。
【0003】
前記の外に、ダムなどの構築物の施工において、ブロック相互の境に生じた段差を乗り越えて車輌の走行を可能とする斜路を設置することがあった。また港湾に配置する移動式架設橋も提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第342133号
【特許文献2】特開2000−336952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の方式においては、路盤を必要とする場合にその都度トレーラーを借り入れて、路盤を積んで現場に運び、かつ前記路盤を積む場合と、現場で路盤を卸して設置する場合などに大型クレーンを必要とし、何れも設置の都度借り入れなければならない問題点があった。
【0006】
また岸壁に路盤を常設しておけば、不必要時に邪魔になるおそれがあり、特に公共埠頭においては、不使用時には必ず撤去しなければならなかった。また、船舶の種類によって、設置場所の変更を要したり、或いは不使用時にも不使用のまま広い場所を占有させなければならないなど幾多の問題点があった。
【0007】
従来、ダムなどの構築物施工において、ブロックごとのコンクリートの打設により、ブロック相互の境に生じた段差を乗り越えて車輌の走行を可能にする斜路の発明が知られているが(特許文献2)、この斜路は自走するものではないし、ダムの構築終了と共に不必要になるものである。。
【0008】
また架設橋の下部内側へ走行架台を挿入し、前記走行架台によって架設橋を運搬する装置の発明も提案されている(特許文献1)。前記装置は元来架設橋とその走行架台よりなり、一体的ではなく、かつ原則的に水平路面であって、斜め路面(或いは傾動不用)を必要としない場合に用いられるというもので、架設工事終了後は不必要となり、再度の使用はないものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、路盤と自走車とを一体化した船積用自走斜路装置とすることによって、前記従来の問題点を解決したのであり、かつ、船積用路盤としての要請を満足させたものである。
【0010】
即ち路盤を例えばトラック台上に傾動自在に設置した場合と同様に路盤を必要時に必要場所へ直行させ、最良の位置と角度に設置することができる。従ってトレーラーの借用が不用になるのみならず、大型クレーンも不必要になり、必然的に前記トレーラー等を動かす人員も不用になる。その上路盤の移動は基本的にトラックの運転と同一であるから、必要時に必要場所へ移動し、設置することができる。また岸壁の着船位置を変更しても直ぐ対応できるなど条件に即応できる。更に路盤と自走車とを一体化したので、路盤設置時に、その場所、傾斜、設置状況などを現地に対応して調節することができる。
【0011】
即ちこの発明によれば、自走車の上部に船積用の路盤を載置して、前記自走車の前部と、前記路盤の前部との間に、前記路盤の昇降装置を設けると共に、前記自走車の中間部を回動自在に連結し、前記路盤の前部に、該路盤を地上に支持する為に少なくとも二本の支脚を長短調節可能に連結し、前記路盤の後端部に該路盤と路面との落差を塞ぐ補助盤を回動自在に連結したことを特徴とする船積用自走斜路装置であり、路盤の表面に滑り止めの凹凸部を設けると共に、前記路盤の先端部に、船体内部に達する遮蔽板を吊下可能に連結したものである。
【0012】
また、昇降装置は、自走車の前部台と、路盤の前部下面との間に設置した油圧ジャッキ又はねじジャッキとしたものであり、自走車は、車輪上に架設した台車に、運転台、操縦機器及び、駆動装置を設置したものであり、二本の支脚は、船壁と平行になるように路盤の先端縁に対し、斜の位置に設置したものである。
【0013】
前記における路盤の材質と、外形は従来使用されたものをそのまま採用することができるが、路盤と自走車(例えばトラック状部分)との取り付けは総て独特で、操作容易である。必ず設置しなくてはならないのは、路盤の傾動調節の為に、上下扛重装置(ジャッキ)及び回動自在の取り付けである。また前記路路盤と道路との接続部の上面形状は常に円滑になされなければならないので、補助盤は必要とされる。この補助盤は自走時に邪魔にならないように回動して、路盤端部へ重ねておく必要がある。また土砂などを船体内へ投入する際に飛散したように路盤の先端部から下方遮蔽板を吊下する必要がある。
【0014】
前記発明における傾動可能とは、路盤の中間部をその長手方向と直角な軸10(図1(a))を中心にして水平に対する角度の変更(12度〜15度位)できることをいう(路盤の傾度調節)。具体的には、路盤の前方を支持具(ジャッキ)により上昇又は下降させる。前記のようにして角度を決定したならば、支脚を地面に当接して路盤を確実に支持する。前記路盤上には、トラックが走行するので、路盤は確実に固定されなければならない。
【0015】
前記発明における昇降装置は、油圧ジャッキ、ねじジャッキその他扛重装置を採用することができる。
【0016】
前記発明の路盤の長手方向の中心線は、岸壁(船腹)に対して傾斜(平面図)させることが多い。その理由は、岸壁に沿った道路の幅が狭い為に、大型トラックなどの路盤への進入が困難になる為である。従ってトラックが方向変換するに十分な広場があれば、路盤を岸壁に直角に架設する。
【0017】
前記において、路盤端(補助盤端A)と、道路縁Bとの間隔L(図2)が、トラックの回動(90度方向変換)するのに必要な幅以上の間隔であれば、路盤の先端縁Cと船壁とは直角にするのが好ましい。然し乍ら岸壁に沿った道路幅は、十分の大きさがない場合が多いので、前記路盤の架設角度(岸壁に対する角度)を90度〜45度の間で調整をして、搬入トラックの進入を容易にしている(図4)。前記により、トラックの搬入時間が大幅に改善され、荷役時間の短縮となり、経済効果も大きい。
【0018】
然し乍ら岸壁に沿った道路は狭い場合が多く、トレーラー(大型トラック)が直角に曲がれる程広い道路は殆どない。
【0019】
この発明は、路盤が自走方式であり、かつ傾動可能であると共に、路盤上をトラックが走行し、積荷を卸す際の重量及び振動に耐えるようにしてある。即ち走行機能(台車)と、支持機能(支脚)を分離した点を特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、路盤の設置又は撤去が容易となると共に、トレーラー及び大型クレーンなどを使用することなく、路盤の設置又は撤去をすることができる効果がある。また埠頭の荷積みに際し、岸壁の狭い場所にもマッチするように隙間を有効利用し得ると共に、船舶の接岸による荷積みの最良の場所(又は荷を卸す位置)へ、路盤を容易に移動して設置できるので、船積みの最良位置を常時選定できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)この発明の実施例の正面図、(b)同じくギヤージャッキの一部断面拡大図、(c)同じく油圧ジャッキの一部拡大図、(d)同じく脚杆と脚盤の関係を示す拡大図。
【図2】同じく平面図。
【図3】(a)同じく路盤を岸壁へ設置した状態の正面図、(b)同じく補助路盤取付付近の拡大正面図。
【図4】同じく平面図。
【図5】同じく路盤の他の実施例の平面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明は、自走車(例えばトラック様車体)の上部に船積用の路盤を載置して傾動可能に固定し、前記路盤の前部下面にジャッキなどの昇降装置を設置し、前記路盤の後方下部を、前記自走車へ回転自在に取り付ける。前記構造により、路盤の前部を昇降させることにより、路盤の傾斜度を調節することができる。また路盤の前記下面には支脚を伸縮可能に設置して、路盤の前部を最良の高さに支持することができるようにする。また路盤の後端部には補助盤を回動自在に取り付けて、路面と路盤との落差を皆無にして、トラックの移行を容易にしてある。
【0023】
更に路盤の先端部の前端縁へ遮蔽板を吊下したので、積荷が砂利であってもその投入時に路盤の下面側へ飛散するのを未然に防止することができる。
【0024】
前記により、路盤の設置に際し、トレーラー及び大型クレーンの必要がなくなると共に、路盤の設置角度(水平面に対する確度及び岸壁に対する角度)を任意に選定することができる。
【0025】
また公共埠頭においては、着船荷役の都度路盤をセットし、かつ撤去しなければならないが、この発明によって、前記セット及び撤去が極めて簡単容易となった。船舶の荷役は時間が限定されているが、その要望に応え得るものである。
【実施例1】
【0026】
この発明の実施例を図1,2について説明すると、自走車5は、台車1の前後に車輪2,3を架設し、かつ車輪2,3の駆動系を設置したので、運転席4においてトラックの運転と同様に運転することができるようにしてある。前記台車1の上部へ、路盤6を載置し、路盤6の後部6bの下端と、前記台車1とを取付具16により回動可能に取り付け、前記路盤6の前部6aの下面と、台車1の前部1aとの間にジャッキ7を介装する。前記ジャッキ7は、前記路盤6の前部6aを昇降する為の器具で、台車1に取り付ける螺杆8と、路盤6に固定したナット9と螺合させてある。従って駆動軸22を回転してベーベルギヤー17を回転し、ベーベルギヤー17と噛み合うベーベルギヤー18を回転すれば、螺杆8が回転するので、螺杆8に螺合したナット9が矢示19のように昇降する。前記ナット9が昇降することにより、前記路盤6の前部を昇降させると、路盤6は軸10を中心にして回転し、前記路盤の傾斜を調節することができる。また路盤6の後端部には、補助盤11の前端部がヒンジ17により取り付けてあるので、これを矢示32のように回転して、路盤の後部と、路面21との段差を埋め、トラック40の移動を円滑にすることができる。図中33は補助盤11の止金である(図3)。前記路盤6の傾斜は、12度〜15度に調節するが、13度以上になると、座木45を介装して、補助路盤11と路盤6との傾斜の連続性を保つようにしてある(図3(b))。
【0027】
前記路盤6の前部下面には、長短調節できる脚杆12の上部が固定してある。前記脚杆12の下部には、ねじ部12aが設けてあり、このねじ部12aに、脚盤13が螺合してある(図1(c))。そこで脚盤13を回転すれば、脚盤13は脚杆12のねじ部12aによって矢示20のように昇降する。前記路盤6を設置する際には、前記脚盤13を回転して下降させ、脚盤13の下面が地面21に当接した時に、脚盤13を貫通するボルト22によって、前記脚杆12と脚盤13とを固定する(この構造に限定されるものではない)。
【0028】
前記路盤6を撤去する場合には、ボルト22を外して脚盤13を回転し、脚盤13を脚杆12に沿って上昇させ、脚盤13の下面が地面から十分離れた際にボルト22で固定すれば、路盤6の移動に支障を来すおそれはない。
【0029】
次に図1(c)について説明すれば、ピストンロッド23の上端部で路盤6の前部6aの下部6cを支持し、ロッド23の下端に連結したピストン24を油圧シリンダー25に嵌挿する。前記において、給油パイプ26から矢示27のように給油すれば、ピストン24を油圧で矢示28のように押し上げるので路盤6の前部6cも同方向へ上昇し、路盤6の傾斜が急になる。前記に反し、給油パイプ26から矢示29のように油を排出すれば、ピストンロッド23が矢示30のように下降するので、路盤6の傾斜は緩やかになる(例えば12度〜15度調節できる)。
【0030】
前記のように、ピストン24と油圧シリンダー25を使用する場合には、給油パイプ26による加圧油の給排によりピストンロッド23を昇降し、路盤6の前部6aを高く、又は低く調節することができる。
【実施例2】
【0031】
この発明の実施例(土砂積み)を図3,4について説明すれば、路盤6を岸壁31へ設置するには自走車5を運転して、路盤6を岸壁31に設置すべく運び、前記路盤6の前部を岸壁31の上方へ重ねた状態として、ジャッキを用いて路盤6の傾斜を調節する。具体的には、路盤6の前部を上昇させて、路盤6の後端部を地面21に当接(近接)させると共に、止金33(図1)を外し、補助盤11を矢示32の方向へ回転させて、路盤6と地面21との隙間を塞ぐ。一方脚盤13を回転して、その下面が地面につくまで移動させてから、ボルト22を螺合して、脚盤13を地面21に接地固定する。前記路盤6の前端縁には遮蔽板34を吊下し、その下縁は、船体35の内部まで達するようにしてある。前記遮蔽板34によって、土砂などが船中から路盤6の下面側へ飛散するのを防止することができる。
【0032】
前記図3の実施例において、土砂を積んだトラック40を路盤6の前端部まで後進させ、トラック40の荷台39を矢示38のように回動させると、土砂37は自重により矢示36のように落下し、船体35内へ収容される。図中41は水面、42は路盤の上面へ設けた滑り止め(例えば丸棒を小間隔で溶接固定してある)である。
【0033】
また路盤6の前部一側へ平面三角状の補助片44を連設すれば(図5)、岸壁31と路盤6とが斜行していても、トラック40を船体35と直角に向けて止め、土砂の安定投入を達成することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 台車
2,3 車輪
4 運転席
5 自走車
6 路盤
7 ジャッキ
8 螺杆
9 ナット
10 ヒンジ
11 補助盤
12 脚杆
13 脚盤
21 地面
22 ボート
23 ピストンロッド
24 ピストン
25 油圧シリンダー
26 給油パイプ
31 岸壁
34 遮蔽板
35 船体
40 トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車の上部に船積用の路盤を載置して、前記自走車の前部と、前記路盤の前部との間に、前記路盤の昇降装置を設けると共に、前記自走車の中間部を回動自在に連結し、前記路盤の前部に、該路盤を地上に支持する為に少なくとも二本の支脚を長短調節可能に連結し、前記路盤の後端部に該路盤と路面との落差を塞ぐ補助盤を回動自在に連結したことを特徴とする船積用自走斜路装置。
【請求項2】
路盤の表面に滑り止めの凹凸部を設けると共に、前記路盤の先端部に、船体内部に達する遮蔽板を吊下可能に連結したことを特徴とする請求項1記載の船積用自走斜路装置。
【請求項3】
昇降装置は、自走車の前部台と、路盤の前部下面との間に設置した油圧ジャッキ又はねじジャッキとしたことを特徴とする請求項1記載の船積用自走斜路装置。
【請求項4】
自走車は、車輪上に架設した台車に、運転台、操縦機器及び、駆動装置を設置したことを特徴とする請求項1記載の船積用自走斜路装置。
【請求項5】
二本の支脚は、船壁と平行になるように路盤の先端縁に対し、斜の位置に設置したことを特徴とする請求項1記載の船積用自走斜路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−163834(P2010−163834A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8502(P2009−8502)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(599119488)株式会社 東興開発 (1)
【Fターム(参考)】