説明

船舶におけるスロット構造

【課題】船舶のブロック搭載時の溶接において、現場の養生作業が容易となり、溶接によるスパッタが飛散しても各ブロックの内へスパッタが進入せず、ブロック内塗装にダメージを与えず、ブロック内の塗り直しを行う必要のない船舶におけるスロットを提供する。
【解決手段】船舶におけるスロット構造において、T型またはL型からなる貫通材3のウエブ幅3aとほぼ同じ深さの穴構造とし、その開口部は、内部に当該貫通材のフェースプレート3b又はフランジ3bの最大幅が挿入配置できる程度の開口幅とし、さらに、開口部へ挿入された貫通材の片側または両側をカラープレート7a,7b,7cで完全に塞ぐ水密構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶におけるスロット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の状態を良好に維持するとともに船舶の保守を容易にするため、船舶の塗装が非常に重要な役割を果たすようになってきている。この船舶の塗装に関して国際海事機関(International Maritime Organization)は新塗装基準である「すべてのタイプの船舶の専用海水バラストタンク及びばら積み貨物船の二重船側部に対する塗装性能基準」(Performance Standard for Protective Coatings for dedicated seawater ballast tanks on all new ships and double-side skin spaces of bulk carriers)(一般的にこの新塗装基準を「PSPC」と呼び、以下「PSPC」と呼称する。)が採択された。該PSPCを適用する船舶では、塗装済みブロック搭載後に行うブロックとブロックの接合(溶接)時に、塗装済みブロックの溶接部の周辺塗装部の保護を目的として、溶接部の周辺塗装部を養生する必要があり、それは、船舶のスロット構造にも適用されることとなる。
【0003】
この種の船舶のスロット構造に関しては、例えば、特開平7−246978号公報に開示のものが知られている。特開平7−246978号公報に開示のものは、発明名称「両あきスロット構造」に係り、「荷重条件の緩やかな上部構造や機関室構造に適し、構造的にシンプルで組立容易な、しかも、スキンプレート側から作用する荷重の伝達を担う貫通材の支持構造として合理的な、品質上も優れたスロット構造を提供すること」を目的として(同公報明細書段落番号0011参照)、「貫通材のフェースプレート又はフランジの下面近傍位置にこれに平行なスロット孔縁を開設し、このスロット孔縁に接する四半円弧部を該フェースプレート又はフランジの両端部に形成し、該四半円弧部の外側端を真っ直ぐスキンプレート位置まで延設して全体として矩形状のスロットを形成すると共に、該フェースプレート又はフランジの下面と前記桁材との溶接を該フェースプレート又はフランジの両側エッジ位置から所定距離離した一定範囲に止め、該貫通材のウエブとフェースプレート又はフランジとの間には補強材を設けずに該フェースプレート又はフランジの両側エッジ部分をフリーエッジとなした」ことによって(同公報特許請求の範囲請求項1参照)、「・・荷重条件の緩やかな貫通材の支持構造として合理的なスロット構造を得ることができ、・・・貫通材のフェースプレート又はフランジのエッジを傷つけることなく、組み立てができ、品質上も優れたスロット構造を得ることができ、・・更に、・・・作業性が改善されて省力化を図れ、工作工数の大幅な減少が見込まれ、・・・エッジ部分が溶接影響による損傷から確実に免れ得るため貫通材の強度面の品質を確保することができ、・・・溶接工数を削減することができる。」等の効果を奏するもののようである(同公報明細書段落番号0031ないし0034参照)。
【0004】
図7(a)(b)は、上記特開平7−246978号公報において、図7(a)「各ブロックに設けられるエア抜きおよびドレン抜き用の穴から構成されるスロット105を貫通する貫通材103がT型ロンジ又はビームの場合」、図7(b)「貫通材103がL型ロンジ又はビームの場合」として示される「従来のT型貫通材およびL型貫通材(アングル材)のスロット構造図」を示す図であり、図7(a)(b)において、符号101は、スキンプレート、102は、桁材、103は、貫通材、103aは、ウエブ、103bは、フェースプレート又はフランジ、105は、スロット、106は、固着(溶接)部、Cは、スキンプレート101と貫通材103が取り合うコーナー部を示す。
【0005】
図7(a)(b)に示されるように、この種のスロット105はT型貫通材103やL型の貫通材(アングル)103等に対して大きめに開口しているため複雑な形状を呈しており、この複雑な形状のスロット105に合わせて養生作業を行うことは、現場における作業時間と手間が非常に掛かるという問題があった。また、実際、現場で該スロット105の形状に合わせて完全にブロックの溶接周辺部が養生されることができずに、溶接のスパッタの飛散によるブロック内塗装にダメージを与え、塗装の塗り直しを行う必要が有るため後戻り作業が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−246978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記の問題点に鑑み、PSPC適用の船舶において、ウォーターバラストタンクのブロック溶接部(接合部)周辺でのL型の不等辺山形鋼(アングル)やT型のT SECTION等の貫通材の桁材貫通スロットとして穴が開いていた箇所にカラープレートを設けて該穴を完全に塞ぐ又は部分的に防ぐ構造とすることにより、この種の船舶のブロック搭載時の溶接において、現場の養生作業が不要となり、溶接によるスパッタが飛散しても各ブロックの内へスパッタが進入せず、ブロック内塗装にダメージを与えず、ブロック内の塗り直しを行う必要のない船舶におけるスロットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、船舶におけるスロット構造において、船舶桁材にT型(T SECTION)またはL型(不等辺山形鋼(アングル))からなる貫通材の配置位置に、当該貫通材のウエブ形状に対応して、当該貫通材と前記桁材との間を当該貫通材のウエブおよびフェースプレート又はフランジが差し込み可能で、かつ、当該貫通材の差し込み後にパテ材で埋め込み可能な間隙幅を有するスリット状のスロットが形成され、該貫通材配置位置には、スキンプレートと前記貫通材との間の接合溶接部の盛り上がりを考慮したコーナー部と、前記貫通材のウエブおよびフェースプレート又はフランジの内角部には、前記貫通材を前記スリット状スロットに差し込みを容易にする傾斜空隙マージン部とが形成されたことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1記載の船舶におけるスロット構造において、前記スリット状スロットに貫通材を挿入した後に前記パテ材で埋め込み可能な間隙を溶接にて水密に形成したことを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1記載の船舶のスロット構造において、前記接合溶接部の盛り上がりを考慮したコーナー部が皿状ラウンドまたは四半円弧であり、前記スリット状スロット下端には、前記貫通材の挿入マージンを考慮した大きな空隙部をからなる下端空隙マージン部を形成したことを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶におけるスロット構造において、前記スリット状スロットの前記コーナー部、皿状ラウンド、四半円弧と前記下端空隙マージン部の間の空隙を接合溶接部で溶接し、該コーナー部、皿状ラウンド、四半円弧及び前記下端空隙マージン部がドレンホール又は空気孔の役割を果たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
(1)船舶のブロック搭載時の溶接において、貫通スロット形状を養生作業が容易な形状に変更することにより、ブロック搭載時に先行塗装した塗膜を保護して、塗装欠陥を減らす効果がある。
(2)また、溶接によるスパッタが飛散しても各ブロックの内へスパッタが進入せず、ブロック内塗装にスパッタの焼き着けによる塗装ダメージを与えない船舶におけるスロット構造を提供することが可能となる。
(3)その結果、現場のブロック組み立て作業の効率アップを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る船舶におけるスロット構造を実施するための形態の一実施例を説明するために、船舶建造の各建造ブロック概略縦断面図(A SECTION)、
【図2】同横断面図(B SECTION)、
【図3】図3は、本発明に係る船舶におけるスロット構造を実施するための形態の一実施例である船舶におけるスロット構造の実施例1に係るスロット構造を示す概略図であり、そのうち、図3(a)は、T型(T SECTION)の貫通材3を配置する場合を、図3(b)は、L型(アングル)の貫通材3を配置する場合の、それぞれの場合における本実施例1に係る船舶におけるスロット構造を示す概略図、
【図4】図4(a)(b)は、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造の概略図であり、図4(a)は、T型(T SECTION)の貫通材3を配置した場合を、図4(b)は、L型(アングル)の貫通材3を配置した場合の、それぞれの場合における本実施例2に係る船舶におけるスロット構造を示す概略図、
【図5】図5(a)〜(d)は、本実施例3に係る船舶におけるスリット状スロット構造の概略およびその工作過程の概略を示す図、
【図6】図6は、本実施例4に係る船舶スロット構造の概略を示す図、
【図7】図7(a)(b)は、上記特開平7−246978号公報において、図7(a)「各ブロックに設けられるエア抜きおよびドレン抜き用の穴から構成されるスロット105を貫通する貫通材103がT型ロンジ又はビームの場合」、図7(b)「貫通材103がL型ロンジ又はビームの場合」として示される「従来のT型貫通材およびL型貫通材(アングル材)のスロット構造図」を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る船舶におけるスロット構造を実施するための形態の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1、図2は、本発明に係る船舶におけるスロット構造を実施するための形態の一実施例を説明するために、船舶建造の各建造ブロック概略図であり、図1は、縦断面図(A SECTION)、図2は、横断面図(B SECTION)である。また、図1、図2において、符号1は、スキンプレート、2は、桁材、3は、貫通材、5は、スロット、10a、10a’、10b、10b’、10c、10c’は、船側スキンプレートブロック、11a、11a’、11b、11b’、11c、11c’は、ビルジホッパーブロック、12は、ブロック溶接部(接合部)、13a、13a’は、上甲板ブロック、14a、14a’は、船底スキンプレートブロック、「FORE」は、船舶前方向、「AFT」は、船舶後方向を示す。
【0013】
また,図3は、本発明に係る船舶におけるスロット構造を実施するための形態の一実施例である船舶におけるスロット構造の実施例1に係るスロット構造を示す概略図であり、そのうち、図3(a)は、T型(T SECTION)の貫通材3を配置する場合を、図3(b)は、L型(アングル)の貫通材3を配置する場合の、それぞれの場合における本実施例1に係る船舶におけるスロット構造を示す概略図である。図3(a)(b)において、符号1は、スキンプレート、2は、桁材、3は、貫通材、3aは、貫通材3のウエブ、3bは、貫通材3のフェースプレート又はフランジ、5は、スロット、7a、7bは、カラープレートである。
【0014】
図3に示されるように、本実施例1に係る船舶におけるスロット構造は、上述するように、PSPC適用の船舶において、ウォーターバラストタンクのブロック溶接部(接合部)周辺でのL型の不等辺山形鋼(アングル)やT型のT SECTION等の貫通材3の桁材貫通スロット5として穴が開いていた箇所にカラープレート7a、7b、7cを設けて該穴を完全に塞ぐ構造とする。その際に、ドレン・空気穴が必要であれば、別途、丸穴であれば容易に養生ができるため、ドレン・空気穴6を開ける。
【0015】
すなわち、図3に示されるように、PSPC適用の船舶において、ウォーターバラストタンクのブロック溶接部(接合部)(接合部)周辺に貫通するスロット5の深さをL型(不等辺山形鋼(アングル))の貫通材3またはT型(T SECTION)の貫通材3などの面材の深さと略同じ深さとし、さらに、当該スロット5の開口を完全に塞ぐカラープレート7a、7b、7cを設け、スロット構造を水密構造としたものである。
【0016】
すなわち、本実施例1に係る船舶におけるスロット構造は、ウォーターバラストタンクのブロック溶接部(接合部)周辺に貫通するスロット5を、T型(T SECTION)またはL型(不等辺山形鋼(アングル))からなる貫通材3の幅(高さ)とほぼ同じ深さの穴構造とし、また、当該スロット5の開口部は、内部に当該貫通材3の最大幅が挿入配置できる程度の開口とし、さらに、当該スロット5の開口部を片側または両側からカラープレート7で完全に塞ぐスロット構造としたものである。
【0017】
具体的には、T型(T SECTION)の貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bを中に配置するスロット構造の場合には、図3(a)に示すように、桁材2の適宜の箇所にT型(T SECTION)の貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bがそのまま挿入できる程度の開口幅を有し、かつ、T型貫通材3のウエブ3aの深さ(高さ)とほぼ同じ深さの切り込み穴を開け、これをスロット5とする。
【0018】
しかる後、当該スロット5にT型の貫通材3のウエブ3aを前記スキンプレート1に接合配置し、そこに、スロット5が切り込まれた桁材2を配置し、前記T型貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bが前記スロット5の底に位置するように配置する。このようにして、スキンプレート1、T型貫通材3およびスロット5が開けられた桁材2が配置されると、当該スロット5に対して、前記貫通材3を挟んで左右から前記カラープレート7a、7bで前記スロット5を完全に覆うように溶接してスロット5が水密に形成されるようにスロット5を塞いで、図3(a)に示されるようなスロット構造とする。
【0019】
また、L型(アングル)の貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bを中に配置するスロット構造の場合には、図3(b)に示すように、まず、当該L型の貫通材3のウエブ3a長さとほぼ同じ長さで、かつ、前記貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bが底部に接する程度の幅を有する切り込み穴を前記桁材2に適宜の位置に形成し、それをスロット5とする。しかる後、前記L型貫通材3のウエブ3aおよびフェースプレート又はフランジ3bを前記スロット5の切り込み形状に接して配置し、そこに、前記スロット5が形成された桁材2を配置し、前記L型貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bが前記スロット5の底に位置するように配置する。
【0020】
このようにして、スキンプレート1、L型貫通材3およびスロット5が開けられた桁材2が配置されると、当該スロット5に対して、前記貫通材3のスロット5が形成されている側に前記カラープレート7cで前記スロット5を完全に覆うように溶接してスロット5が水密に形成されるようにスロット5を塞いで、図3(b)に示されるようなスロット構造とする。
【0021】
なお、本実施例1に係る船舶におけるスロット構造では、前記スロット5の開口部の全面を前記カラープレート7a、7b、7cにより覆って水密構造としたが、ドレン・空気穴が必要であれば、図3に穴6として示した穴を開ける。空気穴は必要最小限の数・大きさとし、空気穴6の形状であれば容易に養生できる。
【0022】
このようなスロット構造とすることにより、船舶のブロック工法において、各ブロックを船台に搭載して溶接する際に、桁材2に開口するスロット5は塞がれ、養生作業が容易な形状の穴6とすることができ、パテ等で完全に養生ができ、これにより、特に、ブロック搭載に先行して当該部分を塗装する場合の塗膜を保護することができる。また、カラープレート7により各ブロックが密閉されるので、各ブロックを溶接する際にも、溶接によるスパッタが各ブロックの内側にスパッタが進入することがなく、ブロック内の塗装上にスパッタの焼き着けによる塗装ダメージを与えないことがなくなる。したがって、ブロック組み立て作業において、塗装の不完全により塗装を修正したり、再塗装をする必要がなくなり、作業効率が向上する。
【実施例2】
【0023】
次に、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造について図面に基づき説明する。
図4(a)(b)は、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造の概略図であり、図4(a)は、T型(T SECTION)の貫通材3を配置した場合を、図4(b)は、L型(アングル)の貫通材3を配置した場合の、それぞれの場合における本実施例2に係る船舶におけるスロット構造を示す概略図である。図4において、符号6は、前記ドレン・空気穴であり、その余の符号は、図3に示した実施例1に係る船舶におけるスロット構造で説明したものと同じ部材を示し、また、前記桁材2の適宜の箇所へのスロット5用の切り込み穴の形成等は前記実施例1に係るスロット構造と同じであるので、その詳しい説明は省略する。
【0024】
図4(a)(b)から明らかなように、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造は、基本的には、前述する実施例1に係る船舶におけるスロット構造と同じであるが、相違するところは、実施例1に係る船舶におけるスロット構造のように、前記カラープレート7でスロット5の開口部を全て覆って水密に密閉するのではなく、スキンプレート1の近傍に当該スキンプレート1との間に所定幅の間隙を設けて、その余の開口部分を前記カラープレート7a、7b、7cによりスロット5を覆い、この間隙をドレン抜き用の穴またはエア抜き用の穴であるドレン・空気穴6として兼用するようにしたものである。
【0025】
なお、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造においても、実施例1に係る船舶におけるスロット構造と同様に、前記ドレン・空気穴6は、養生の面積が最小となるものであることが望ましく、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造では、図4(a)(b)に示されるように、前記スキンプレート1の近傍に所定幅の間隙を設けて前記カラープレート7a、7b、7cによりスロット5の開口部を間隙を開けて覆う形状としたものである。このようなスキンプレート1との間に間隙からなるドレン・空気穴6を設けることにより、本実施例2に係る船舶におけるスロット構造は、前述の実施例1同様に養生が容易となる効果を有する。
【実施例3】
【0026】
次ぎに、本実施例3に係る船舶におけるスロット構造について図面に基づき説明する。
図5(a)〜(d)は、本実施例3に係る船舶におけるスリット状スロット構造の概略およびその工作過程の概略を示す図であり、本実施例3に係るスロット構造は、前記貫通材3を前記桁材2に最小クリアで差し込んだスロット構造としたものである。
【0027】
図5(a)〜(d)において、符号1は、上記実施例1および2に示したと同様のスキンプレート、2は、同桁材、3は、同L型(アングル)貫通材であり、符号15は、本実施例3に係る船舶におけるスロット構造のスリット状スロット、15a、15bは、同スロット15のコーナー部、15cは、傾斜空隙マージン部、16は、前記スキンプレート1と前記貫通材3との接合溶接部、13は、前記スロット15を密閉する密閉溶接部である。
【0028】
本実施例3に係る船舶におけるスロット構造の工作は、図5(a)に示されるように、まず、L型貫通材3が差し込まれる形状に対応したスリット状スロット15が前記桁材2の所定位置に切り欠き工作される。この工作においては、L型挿通材3の厚さおよび長さ,さらには、前記貫通材3のフェースプレート又はフランジ3b等を考慮して、当該貫通材3と前記桁材2との間を最小クリアで差し込み可能な大きさ・幅・長さのスリット状スロット15とする。
【0029】
具体的には、前記貫通材3と前記桁材2との間は、挿通配置された状態で、3ミリメートル〜10ミリメートル程の隙間が形成されるように工作される。また、前記スキンプレート1と前記貫通材3との間の接合の接合溶接部16の盛り上がり考慮して、前記スロット15の角に対して、コーナー部15a、15bが設けられる。
【0030】
次に、上記図5(a)の工作と共に、別途の作業で、図5(b)に示されるように、前記スキンプレート1と前記貫通材3とが接合溶接される。
この状態で、図5(c)に示されるように、前記貫通材3に前記桁材2のスロット15が挿入配置される。そこで、これらの配置が完了したら、図5(d)に示されるように、前記スリット状スロット15の上を完全に密閉するように、前記スキンプレート1と前記貫通材3の間を間隙を溶接よって埋め込み、前記密閉溶接部13を形成する。
このようにすることにより、本実施例3に係る船舶におけるスロット構造は水密構造となる。
【0031】
なお、上記実施例3においては、L型(アングル)の貫通材3を配置する場合で説明したが、これは、L型のスロット構造だけではなく、T型の貫通材3を差し込み配置する場合においても同様であり、その場合には、L型のスリット状スロット15ではなく、T型のスリット状スロット15であっても良いものである。
【実施例4】
【0032】
次に、本実施例4に係る船舶におけるスロット構造について図面に基づき説明する。
図6は、本実施例4に係る船舶スロット構造の概略を示す図であり、図6において、符号15d、15eは、皿状ラウンドまたは四半円弧、15fは、挿入空隙マージン部であり、その余の符号は上述した実施例1ないし3で表示した符号と同じ部材を示す。
図6に示されるように、本実施例4に係る船舶におけるスロット構造も、上記実施例3に係る船舶におけるスロット構造と同様に前記貫通材3を前記桁材2に最小クリアで差し込んだスロット構造としたものである。
【0033】
しかしながら、本実施例4に係る船舶のスロット構造は、上記の実施例3に係る船舶のスロット構造と異なり、図6に示されるように、前記スキンプレート1と前記L型貫通材3の間のドレン・空気孔6を考慮して皿状形状の皿状ラウンドまたは四半円弧15d、15eとし、また、前記貫通材3の挿入マージンを考慮して、下端を大きな空隙部をからなる下端空隙マージン部15fを有するスリット状のスロット構造としたものである。
【0034】
すなわち、前記スキンプレート1と前記L型貫通材3の間の接合は、実施例3の接合部のようにシャープな傾斜形状とするまでもなく、ドレンホールまたは空気穴の目的で皿状ラウンドまたは四半円弧15d、15eを設け、L型(アングル)の貫通材3の挿入の容易性を考慮して、当該貫通材3のフェースプレート又はフランジ3bが前記桁材2に接する形状ではなく、挿入の余裕を有する下端空隙マージン部15fを有するスリット状のスロット構造とした。
【0035】
なお、本実施例4に係る船舶スロット構造における前記下端空隙マージン部15fの高さ開口は、略35ミリメートル程度に最小化し、前記スキンプレート1と前記貫通材3との溶接完了後、スロット15の開いた桁材2に、貫通材3を差し込み、接合溶接部11の接合溶接を行う。前記スキンプレート1と前記貫通材3との間隙は、前記皿状ラウンド15d、15eとスキンプレート1および貫通材3との間、および、当該下端空隙マージン部15fは、最小寸法としたことで、全ての間隙をパテ等で容易に埋められる構造とした。
【0036】
このような皿状形状の皿状ラウンドまたは四半円弧15d、15eを設け、貫通材3の挿入マージンを考慮して、下端を大きな空隙部をからなる下端空隙マージン部15fを有するスリット状のスロット構造としたことにより、本実施例4に係る船舶におけるスロット構造は、ドレンホールや空気穴の役割を果たすという効果を有する。
【0037】
図6に示されるように、本実施例4に係る船舶スロット構造は、そのスロット構造の中間域を前記貫通材3が前記桁材2に最小クリアで差し込まれるスリット状スロット形状として、この僅かなスリット状の開口は、開口が小さいために、溶接で埋め込みされ、ドレンや空気穴を目的とする15d、15e、15fの穴が最小寸法なので、養生することが容易である。
なお、本実施例4においても、L型の貫通材3を挿入配置する場合で説明したが、これは挿入配置される貫通材3は、T型の貫通材3であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、船舶スロット構造に利用される。
【符号の説明】
【0039】
1 スキンプレート
2 桁材
3 貫通材
3a ウエブ
3b フランジまたは面材(フェースプレート)
5 スロット
6 ドレン・空気穴
7、7a、7b、7c カラープレート
11 接合溶接部
13 密閉溶接部
15 スリット状スロット
15a、15b コーナー部
15c 傾斜空隙マージン部
15d 皿状ラウンドまたは四半円弧
15f 下端空隙マージン部
16 接合溶接部
101 スキンプレート
103 貫通材
105 スロット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶桁材にT型(T SECTION)またはL型(不等辺山形鋼(アングル))からなる貫通材の配置位置に、当該貫通材のウエブ形状に対応して、当該貫通材と前記桁材との間を当該貫通材のウエブおよびフェースプレート又はフランジが差し込み可能で、かつ、当該貫通材の差し込み後にパテ材で埋め込み可能な間隙幅を有するスリット状のスロットが形成され、該貫通材配置位置には、スキンプレートと前記貫通材との間の接合溶接部の盛り上がりを考慮したコーナー部と、前記貫通材のウエブおよびフェースプレート又はフランジとの内角部には、前記貫通材を前記スリット状スロットに差し込みを容易にする傾斜空隙マージン部とが形成されたことを特徴とする船舶におけるスロット構造。
【請求項2】
前記スリット状スロットに貫通材を挿入した後に前記パテ材で埋め込み可能な間隙を溶接にて水密に形成したことを特徴とする請求項1記載の船舶におけるスロット構造。
【請求項3】
前記接合溶接部の盛り上がりを考慮したコーナー部が皿状ラウンドまたは四半円弧であり、前記スリット状スロット下端には、前記貫通材の挿入マージンを考慮した大きな空隙部をからなる下端空隙マージン部を形成したことを特徴とする請求項1記載の船舶のスロット構造。
【請求項4】
前記スリット状スロットの前記コーナー部、皿状ラウンド、四半円弧と前記下端空隙マージン部の間の空隙を接合溶接部で溶接し、該コーナー部、皿状ラウンド、四半円弧及び前記下端空隙マージン部がドレンホール又は空気孔の役割を果たすことを特徴とする請求項1に記載の船舶におけるスロット構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−131507(P2012−131507A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51482(P2012−51482)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2010−35547(P2010−35547)の分割
【原出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)