説明

船舶乗降装置

【課題】取り扱いが容易で、安全性の高い船舶乗降装置を提供すること。
【解決手段】本体台車3の上に支持される支持体5に一端が支持される連絡橋7を備え、本体台車3は、底部にキャスタ13が取り付けられたフレーム9と、そのフレームの上部に取り付けられた2本のレール11を有し、2本のレールは、それぞれ板材の両端を同じ方向に折り曲げて形成される溝27が互いに向き合うように平行かつ水平に設置され、支持体5は、2本のレールに沿って移動する走行台車29と、走行台車に支持される回転体31を有し、走行台車は、その走行台車が有する複数の車軸35の両端がそれぞれレール11の溝27内に収容され、回転体31は、走行台車の上部に設けられる水平方向と直交する軸43の周りに回転自在に支持され、連絡橋7は、その基端側が回転体に設けられる水平軸周りに回転可能に支持され、先端側が船舶に掛止可能に形成されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶と陸地との間を架橋する船舶乗降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接岸した船舶と陸地との間には、人が通行するための連絡橋が渡される。一般に、連絡橋は、その一端が陸地に建てられた架台に支持されると共に、他端が船舶の所定位置に設置又は引っ掛けられ、巻上機から巻き出されたワイヤによって吊持される。
【0003】
この種の連絡橋としては、その一端が、陸地の架台に設けられた水平軸周りに回動可能に支持されると共に、他端の下部に車輪が設けられ、その車輪が船舶の上面に接地する構造のものが知られている(特許文献1参照。)。このような構造の連絡橋は、潮の干満などで船舶が上下に揺動すると、他端の車輪が船舶の上面を転動することにより、連絡橋全体が水平軸周りで上下に揺動するようになっている。
【0004】
一方、このような船舶の上下方向の揺動のほか、水平方向(前後左右)の動きに対しても、追従して動作する連絡橋の構造が知られている(特許文献2参照。)。この連絡橋は、その一端が、陸地の架台に設けられたターンテーブルに支持され、そのターンテーブルと一体となって水平方向に回動可能になると共に、ターンテーブルに連結された水平軸周りで上下に回動するようになっている。また、連絡橋は、ターンテーブルに支持される固定橋と、その固定橋の内側に摺動可能に収められる移動橋とから構成される。なお、連絡橋の他端は、船舶の甲板上に設置された固定台に掛止される。
【0005】
このように構成される連絡橋は、船舶が上下方向に揺動するときは、水平軸周りに回動して上下に揺動し、船舶が前進後退する方向に移動するときは、ターンテーブルと共に水平方向に旋回する。また、船舶が前進後退する方向と直交する方向、例えば、陸地から離れる方向に動くときは、移動橋が固定橋から離れる方向に摺動することで、連絡橋の全長が長くなる。このように、連絡橋は、係留中の船舶の上下方向の揺動や水平方向の動きに追従して動くため、連絡橋の傾斜などを抑えて人の落下を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3159118号公報
【特許文献2】特開2009−281065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2の連絡橋は、いずれもその一端が陸地の架台に支持されており、陸地に固定された構造となっている。このように陸地に固定された連絡橋は、比較的大きな船舶の乗り降りに利用されるのが通常である。
【0008】
これに対し、内航船等のように比較的小さな船舶の乗り降りでは、係留する船舶と陸地との距離が短いことや、積荷の量等が比較的少ないことから、設置型の連絡橋に代えて、船舶と陸地との間を架け渡す歩み板等のような簡易な板材が連絡通路として利用されている。
【0009】
ところが、このような連絡通路は、船舶の上下方向や水平方向の動きに対応できず、船舶が動いたときに不安定となるため、安全性が問題となる。そこで、比較的小さな船舶の乗り降りに利用することができ、取り扱いが容易で、しかも安全性の高い連絡橋が求められている。
【0010】
本発明は、取り扱いが容易で汎用性が高く、安全性の高い船舶乗降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の船舶乗降装置は、船舶と陸地との間を架橋するものであり、上記課題を解決するため、本体台車と、この本体台車の上に支持される支持体と、この支持体に一端が支持される連絡橋とを備えて構成される。ここで、本体台車は、底部に車輪が取り付けられたフレームと、このフレームの上部に取り付けられた2本のレールとを有し、2本のレールは、それぞれ板材の両端を同じ方向に折り曲げて形成される溝が互いに向き合うように平行かつ水平に設置される。支持体は、2本のレールに沿って移動する走行台車と、この走行台車に支持される回転体とを有し、走行台車は、この走行台車が有する互いに平行な複数の車軸の両端又は車軸の両端側に設けられる車輪が、それぞれレールの溝内に収容され、回転体は、走行台車の上部に設けられる水平方向と直交する軸周りに回転自在に支持される。連絡橋は、その基端側が回転体に設けられる水平軸周りに回転可能に支持されるとともに、先端側が船舶に掛止可能に形成される。
【0012】
このように、本体台車の上で支持体を支持すると共に、その支持体に連絡橋を動かす全ての機能を持たせることにより、装置全体の重心を安定させることができる。これにより、連絡橋を支持する状態で陸地を移動できるようになるため、船舶の係留する位置等に応じて連絡橋の設置位置を調整することが可能になる。したがって、陸地に固定される連絡橋と比べ、取り扱い性に優れ、汎用性を持たせることができる。
【0013】
また、連絡橋は、船舶が上下方向に揺動する場合、その一端が回転体に設けられた水平軸周りに回動し、船舶が前進後退する方向に移動する場合、走行台車の上部に設けられた水平方向と直交する軸周りに回転体が回動し、船舶が前進後退する方向と直交する方向に移動する場合、回転体を支持する走行台車が船舶の方向に向かって配置されるレールの溝に沿って移動する。したがって、上下方向及び水平方向のいずれの方向に船舶が動いた場合でも、その船舶の動きに連絡橋を追従させて動かすことができるため、連絡橋の破損や通行人の転倒等を防ぐことができ、高い安全性を維持することができる。
【0014】
この場合において、連絡橋は、長手方向に対をなして平行に延在する枠体と、この枠体の間に支持されて、連絡橋の回動に関わらず水平状態が保持される複数のステップとを備え、ステップが長手方向で階段状に設けられてなるものとする。
【0015】
これによれば、連絡橋が上下に回動する場合でも、連絡橋の通路を構成するステップは水平に保たれるため、通行人の転倒等を防ぎ、スムーズに通行させることができる。
【0016】
また、連絡橋は、その先端側の底面に船舶と掛止される掛止部材が設けられ、この掛止部材は、連絡橋の長手方向と直交する方向に2枚の平板状の突起部が間隔を開けて対向配置されてなり、2枚の突起部は、互いに対向する対向面とその対向面の内側の底面とが直角以下の角度で形成されてなるものとする。
【0017】
これによれば、例えば、船舶の甲板等に立設する枠材に対し、2枚の突起部の間に枠材が位置するように、連絡橋の先端部分を枠材の上から被せるだけの簡単な作業で、連絡橋の先端側を枠材に掛止することができる。また、2枚の突起部は、互いに対向する対向面とその間の底面とがそれぞれ直角以下の角度に形成されるため、例えば、連絡橋が枠材に対して上方又は下方から斜めに渡されるときは、いずれか一方の突起部と底面との間に枠材が掛止されるため、突起部から枠材が脱落するのを抑制することができる。
【0018】
また、連絡橋は、本体台車に立設される支柱の上部を介して掛け回されたワイヤに吊り下げられて支持され、本体台車には、ワイヤを巻き上げ、巻き下げる巻上機が設けられてなるものとする。
【0019】
このように、連絡橋をワイヤで吊り下げることにより、陸地と船舶との間に連絡橋を架橋するとき、又は、連絡橋を吊り上げて走行台車を移動させるときは、巻上機を操作するだけで連絡橋を起伏させることができるため、操作が簡単になる。
【0020】
また、本体台車には、陸地に設けられる凸状の縁部に引っ掛けるL字状の金具が設けられ、この金具は、その基端側が本体台車の水平軸周りに回転自在に支持されてなるものとする。
【0021】
これによれば、L字状に形成された金具を水平軸周りに回動させ、本体台車と金具との間に縁石が介在するように金具を縁石に引っ掛けることにより、本体台車を陸地に固定することができる。なお、金具は、水平軸周りで回動させることにより、縁石から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、取り扱いが容易で汎用性が高く、しかも安全性の高い船舶乗降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る船舶乗降装置の構成を説明する側面図である。
【図2】本発明に係る船舶乗降装置の構成を説明する上面図である。
【図3】本発明に係る船舶乗降装置の構成を説明する背面図である。
【図4】本発明に係る船舶乗降装置の構成を説明する組立図である。
【図5】図4の走行台車がレールに支持される状態をレールの延在方向から見たときの断面図である。
【図6】干潮時に連絡橋を船舶に掛け渡したときの図である。
【図7】満潮時に連絡橋を船舶に掛け渡したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る船舶乗降装置の一実施形態について、図1乃至図5を参照して具体的に説明する。
【0025】
本実施形態の船舶乗降装置1は、本体台車3と、本体台車3の上に支持される支持体5と、支持体5に片持ちで支持される連絡橋7とを備えて構成される。
【0026】
図4に示すように、本体台車3は、2本のフレーム9と、両フレーム9の上部にそれぞれ取り付けられる2本のレール11と、両フレーム9の両端の底面にそれぞれ取り付けられるキャスタ13とを備えて構成される。フレーム9には、溝型鋼などの一般的な鋼材が使用される。各フレーム9は互いに平行に配置され、これらの上面には、その長手方向と直交するように2本のレール11が取り付けられている。フレーム9とレール11は、互いに溶接などで固定された状態となっている。
【0027】
各フレーム9の底面には、フォークリフトのフォークが挿入される断面矩形の所定長さに形成されたフォークポケット15が2個ずつ設けられている。2本のフレーム9の互いに対向する面には、カバー板19(図2)を支持する受け部材17が設けられている。受け部材17は、断面がL字型をした山形鋼からなる。
【0028】
レール11の上面には、所定の大きさ(広さ)のカバー板97(図2)が設けられ、連絡橋7を渡る通行人の足場となっている。また、本体台車3の上面片側端(2本のレール11に挟まれた領域の外側)には、水平方向と直交する方向に延在する支柱21が接続されている。支柱21の高さ方向の2箇所には、周囲のカバー板19から上方に延在するパイプ状の補助部材23が折り曲げられた状態で接続されている。補助部材23は、支柱を補強すると共に、手摺りとなっている。支柱21には、ワイヤが巻き回された巻上機25が取り付けられている。なお、巻上機25は、ワイヤの巻き上げ及び巻き戻しが可能であれば、電動式又は手動式のいずれでもよい。
【0029】
フレーム9の上面に固定されるレール11は、矩形の板材の両側を同じ方向に折り曲げて形成され、その折り曲げた内側には、レール11の長手方向に沿って溝27が形成されている。2本のレール11は、溝27を互いに平行に向き合わせて水平に配置されている。
【0030】
支持体5は、レール11に沿って走行する走行台車29と、走行台車29の上に回転自在に支持される回転体31とを備えて構成される。走行台車29は、支持枠33と、この支持枠33に軸支された2本の車軸35とを備えている。支持枠33は、矩形の板材の両側を同じ方向に折り曲げて形成される。2本の車軸35は、支持枠33の折り曲げた両側の面にそれぞれ形成される貫通孔37に挿通されて、互いに平行に配置される(図5)。貫通孔37からそれぞれ突出する車軸35の両端側には、貫通孔37の孔径よりも大きな外径を有するフランジ付き車輪39が取り付けられている。フランジ付き車輪39は、フランジとなる部分と車輪となる部分が樹脂等で一体的に形成され、軸方向の断面が台形状をなしている。
【0031】
支持枠33は、貫通孔37が形成される2枚の対向する面の内側に平坦な支持面41が設けられ、支持面41には、その面から垂直に突出する円柱状の軸43が設けられている。軸43は、周知の構成によって、支持面41と固定されているが、支持面41と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
回転体31は、略直方体の箱型に形成される。回転体31の走行台車29と対向する底面45には、走行台車29から突出する軸43が挿入される軸孔47が設けられている。図4では、回転体31の内部の構造を省略しているが、軸孔47の内部には、軸43が軸孔47に挿入されるときの挿入深さと軸43の外径等に基づいて設定される円柱状の空間が形成されている。
【0033】
回転体31には、対向する2つの側面(図4の手前側と奥側の面)及びこれらの側面と連なる前方側面(図4の右側の側面)に沿って、2枚の板状の突起部49が、底面45と対向する上面51から突出して設けられている。2枚の突起部49は、互いに平行に延在すると共に、同軸となる位置にそれぞれ上軸孔53が設けられている。また、回転体31の対向する2つの側面(図4の手前側と奥側の面)には、同軸となる位置にそれぞれ下軸孔55が設けられている。
【0034】
一方、走行台車29の支持面41には、軸43を取り囲むように所定の厚みを有するリング状の潤滑部材57が設けられている。潤滑部材57は、摩擦抵抗が小さな合成樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂)などで、外形が円形又は矩形をなして形成され、その上面は、支持面41よりも上に位置する段付きの構造となっている。なお、潤滑部材57は、支持面41の上に重ねて配置されていてもよいし、支持面41の一部に埋設されていてもよい。また、潤滑部材57は、リング状である必要はなく、例えば支持面41の上全面に設けられた矩形でもよい。
【0035】
次に、本体台車3と走行台車29及び回転体31を組み付ける手順について説明する。
【0036】
まず、走行台車29は、支持枠33の貫通孔37に車軸35が通される。貫通孔37から出た車軸35の両側にはそれぞれフランジ付き車輪39が、フランジ側を内側にして取り付けられる。
【0037】
このように組み立てられた走行台車29は、一方の車軸35の両側のフランジ付き車輪39がそれぞれレール11の溝27内に挿入され(図5)、続いて、他方の車軸35の両側のフランジ付き車輪39がレール11の溝27に挿入されることにより、レール11に沿って走行可能となる。なお、レール11の両端は、周知の方法で溝27部分を封止することにより、走行台車29がレール11の溝27から脱輪するのを防ぐことができる。
【0038】
次に、レール11に取り付けられた走行台車29の上に、回転体31を取り付ける。具体的には、回転体31を保持しながら、回転体31の軸孔47と走行台車29の軸43を位置合わせした状態で、回転体31を下方に移動させる。こうすることで、回転体31は、底面45が潤滑部材57と当接すると共に、軸孔47の奥まで軸43が挿入されるため、結果として、潤滑部材57の上で、軸43の周りに回動可能に支持された状態となる。
【0039】
こうして走行台車29に支持される回転体31には、連絡橋7が支持される。連絡橋7の構成については、周知の構成(例えば、特許文献1)が採用されるため、簡単に説明し、特徴部を中心に説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の連絡橋7は、メインフレーム61と、サブフレーム63と、複数のステップ65とを備えて構成される。メインフレーム61は、左右一対で設けられ、その基端部分は、回転体31の突起部49の上軸孔53に挿通されて水平方向に延在する上支軸67の軸周りに回動可能に取り付けられている。メインフレーム61は、その長手方向の一部が所定の角度で下方へ屈曲して形成される。一対のメインフレーム61の間には、複数のステップ65からなる階段状の連絡通路が形成される。
【0041】
ステップ65は、足場となる平面状のステップ本体69と、ステップ本体69の左右の下面から垂下する支持脚71とから形成され、ステップ本体69は一対のメインフレーム61の間に入り込み、両支持脚71はその上部がメイン支軸73にてメインフレーム61に回動可能に軸支されている。
【0042】
一方、メインフレーム61の内側で、支持脚71の外側には、左右一対のサブフレーム63がメインフレーム61と平行に延在して設けられている。このサブフレーム63は、ステップ65を常に水平状態に保持するために設けられるものであり、その基端部分は、回転体31の下軸孔55に挿通されて水平方向に延在する下支軸75の軸周りに回動可能に取り付けられている。また、サブフレーム63は、メインフレーム61と同様、長手方向の一部が所定の角度で下方へ屈曲して形成される。
【0043】
ステップ65の両支持脚71は、その下部がサブ支軸77にてサブフレーム63に回動可能に軸支されている。これにより、各フレーム61、63の回転中心となる上支軸67、下支軸75と、ステップ65側が軸支されるメイン支軸73、サブ支軸77との間で平行四辺形が形成され、各フレーム61、63が上下に回動しても、ステップ本体69の水平状態が維持されるようになっている。
【0044】
図1に示すように、サブフレーム63には、長手方向に間隔を開けて複数のポール79が立てられている。各ポール79の頂部と中間部には、それぞれワイヤ81が挿通される中継部83a,83bが設けられ、各中継部83a,83bを挿通されたワイヤ81は、サブフレーム63の先端部及び基端部にそれぞれ設けられた中継部85a,85bを介して張り巡らされている。一方、巻上機25から巻き出されたワイヤ82は、支柱21の頂部に設けられた中継部87(例えば、プーリ)を介して、連絡橋7のサブフレーム63等に掛け回されている。このため、巻上機25を巻き上げ及び巻き戻しすることによって、連絡橋7を起伏させることができる。
【0045】
このようにして構成される連絡橋7は、その基端部分が回転体31に支持される一方、先端部分が船舶の甲板上に設置された枠材等に掛止される。ここで、連絡橋7の先端部分の底面には、枠材等に掛止される掛止部材89が設けられている。この掛止部材89は、2枚の平板状の突起部89a,89bからなり、これらは連絡橋7の長手方向と直交する方向に間隔を開けて互いに対向して配置されている。
【0046】
本実施形態では、連絡橋7の基端側の突起部89aが、サブフレーム63の底面から略垂直に突出されているが、先端側の突起部89bは、突起部89aに向かってやや内向き、つまり2つの突起部89a,89bの対向面とその対向面の内側の底面とが鋭角になるように突出されている。また、突起部89aと突起部89bとが対向する面には、船舶の固定台等に傷が付くのを防ぐため、樹脂や弾性材等で形成された板状の部材が貼り付けられている。
【0047】
このようにして構成される船舶乗降装置1は、岸壁や桟橋等の陸上において、連絡橋7を支持する状態で、転倒せずに移動することが求められる。このため、本実施形態の船舶乗降装置1は、本体台車3の上に支持体5を支持する構造、つまり、本体台車3の上に走行台車29と回転体31を順に積み上げ、走行台車29に重心を集めることにより、重心を安定させている。また、本体台車3、走行台車29及び回転体31等をSS材等の比較的比重の大きい材料で形成する一方、連絡橋7をアルミ材等の比較的比重の小さい材料で形成し、さらに、2本のフレーム9の下面2箇所のフォークポケット15の間にフラットバー等からなるカウンターウェイトを取り付けることにより、重心をより安定させている。したがって、最も不安定な状態である連絡橋7を水平方向に倒した場合でも、転倒を防ぐことができる。
【0048】
また、船舶乗降装置1を陸上で移動させるときには、巻上機25にてワイヤ82を巻き上げて、連絡橋7を所定角度まで吊り上げる(例えば、真上に延在するように吊り上げる)ことにより、狭い領域であっても、効率良く陸上を移動させることができるとともに、移動時の安定性を高めることができる。このように、本実施形態によれば、船舶の係留位置等に応じて連絡橋7の設置位置を自在に動かすことができるため、取り扱い性に優れ、汎用性の高い連絡通路を提供することができる。また、2本のフレーム9の下にはフォークポケット15が設けられているため、それぞれのフォークポケット15にフォークリフトのフォークを差し込んだ状態で、船舶乗降装置1を所望の位置まで運搬することもできる。
【0049】
一方、陸上と船舶との間に連絡橋7を架橋する際は、例えば、船舶が前進後退する方向とレール11の延在する方向とが直交するように本体台車3を配置する。ここで、本体台車3には、図1に示すように、L字状の金具91の一端が水平軸の周りで回動可能に支持されている。このため、図6に示すように、金具91を岸壁に沿って立設する縁石93等に掛止し、本体台車3と金具91との間に縁石を介在させることにより、本体台車3を縁石等に確実に固定することができる。
【0050】
このようにして縁石93等に固定された船舶乗降装置1は、巻上機25にてワイヤ82を巻き戻すことにより、連絡橋7を吊り下げ、その連絡橋7の先端側に設けられる掛止部材89を船舶の所定位置に掛止する。
【0051】
ここで、船舶の動きに伴う連絡橋7の動作について説明する。まず、連絡橋7が架橋された状態で、船舶が前進後退する方向に移動するときは、その船舶の動きに追従して、走行台車29に設けられる軸43の周りで、回転体31が回動する。また、船舶がその前進後退する方向と直交する方向に移動するときは、その船舶の動きに追従して、回転体31を支持する走行台車29がレール11の溝27に沿って移動する。回転体31の回動する動作と、走行台車29がレール11に沿って移動する動作は、互いに独立しているため、例えば、船舶が進行方向に対して斜めに移動するときには、走行する走行台車29の上で、回転体31が回動する。
【0052】
一方、船舶が上下方向に揺動するときは、その船舶の動きに追従して、連絡橋7の基端部分が、回転体31の上支軸67及び下支軸75の軸周りで上下方向に回動する。連絡橋7の基端部分の回動は、走行台車29及び回転体31の動きと独立しているため、走行台車29や回転体31の動作の有無と関係なく、連絡橋7が回動する。
【0053】
このように、本実施形態の船舶乗降装置1は、船舶が水平方向及び上下方向のどの方向に動いたとしても、その船舶の動きに連絡橋7を追従させて動かすことができるため、通行人の高い安全性を維持することができる。
【0054】
次に、連絡橋7の先端部分に設けられた掛止部材89の作用について、船舶の上下方向の動きと対応付けて説明する。図6、7は、連絡橋7の掛止部材89が、船舶の甲板上に設けられた枠材95に掛止される様子を示す。なお、図において船舶は省略している。
【0055】
図6に示すように、干潮等で船舶の枠材95が岸壁よりも低い位置にあるときには、連絡橋7の連絡通路は、基端部分から屈曲部までが略水平に延在し、その先が海面側に向かって傾斜している。連絡橋7の先端部分は、突起部89aの内側の面に枠材95が当接している。
【0056】
一方、図7に示すように、満潮等で船舶の枠材95が岸壁よりも高い位置にあるときには、図6の状態から連絡橋7が船舶によって持ち上げられ、連絡橋7の連絡通路は、上方に向かって傾斜している。連絡橋7の先端部分は、突起部89bの内側の面に枠材95が当接している。
【0057】
このように、本実施形態では、連絡橋7の先端部分に2枚の突起部89a,89bを設けているため、船舶の枠材95に対して、連絡橋7の先端側を上から被せるだけで、簡単に掛止することができる。また、図6、7のように、枠材95に対して上方又は下方から斜めに連絡橋7が渡される場合、枠材95の高さに応じて、2枚の突起部89a,89bのいずれか一方が枠材95に当接して掛止される。特に、本実施形態では、内向きに延在する突起部89bと底面との角度が狭くなっているため、図7のように、枠材95に対して斜め下方から連絡橋7が渡される場合は、その狭い領域で枠材95が掛止され、掛止部材89から枠材95が脱落するのを抑制することができる。このため、掛止部材89による枠材95の掛止効果を高めるためには、突起部89a,89bの両方が互いに内向きに延在していることが好ましい。
【0058】
本実施形態の船舶乗降装置1によれば、船舶の上下方向や水平方向の動きに追従させて連絡橋7を動かすことができるため、通行人の安全性を高めることができる。また、走行台車29及び回転体31はいずれも本体台車3の上に支持される状態で所定の動きをするため、重心を安定させることができ、その結果、連絡橋7を支持しながら、陸上を移動させることができる。よって、本実施形態によれば、例えば、係留位置が変動しやすく、比較的小さな船舶等においては、船舶の係留位置等に応じて連絡橋7の設置位置を自在に調整することができるため、取り扱い性に優れ、好適に利用することができる。
【0059】
また、本実施形態では、図2に示すように、2本のフレーム9に設けられた受け部材17の間にカバー板19を渡すことで通行人の第1の足場が形成されるが、2本のレール11の上面部分(支持枠33が通過する部分を除く)をそれぞれカバー板97で包囲することにより、より高い位置の第2の足場が形成される。さらに、回転体31の上面51を第3の足場とすることにより、第1から第3の足場が階段状に形成される。このため、岸壁から船舶に渡る利用者は、この階段を上ることで連絡橋7の連絡通路へスムーズに渡ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0061】
例えば、連絡橋7は、水平状態が保持される複数のステップ65を階段状に配列する例を説明したが、例えば、連絡通路の全長が比較的短い連絡橋であれば、平坦な面で連絡通路を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 船舶乗降装置1
3 本体台車
5 支持体
7 連絡橋
9 フレーム
11 レール
13 キャスタ
25 巻上機
27 溝
29 走行台車
31 回転体
35 車軸
39 フランジ付き車輪
43 軸
89 掛止部材
89a,89b 突起部
91 金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶と陸地との間を架橋する船舶乗降装置であって、
本体台車と、該本体台車の上に支持される支持体と、該支持体に一端が支持される連絡橋とを備え、
前記本体台車は、底部に車輪が取り付けられたフレームと、該フレームの上部に取り付けられた2本のレールとを有し、該2本のレールは、それぞれ板材の両端を同じ方向に折り曲げて形成される溝が互いに向き合うように平行かつ水平に設置されてなり、
前記支持体は、前記2本のレールに沿って移動する走行台車と、該走行台車に支持される回転体とを有し、前記走行台車は、該走行台車が有する互いに平行な複数の車軸の両端又は該車軸の両端側に設けられる車輪が、それぞれ前記レールの溝内に収容されてなり、前記回転体は、前記走行台車の上部に設けられる水平方向と直交する軸周りに回転自在に支持されてなり、
前記連絡橋は、その基端側が前記回転体に設けられる水平軸周りに回転可能に支持されるとともに、先端側が前記船舶に掛止可能に形成されてなる船舶乗降装置。
【請求項2】
前記連絡橋は、長手方向に対をなして平行に延在する枠体と、該枠体の間に支持されて、前記連絡橋の回動に関わらず水平状態が保持される複数のステップとを備え、該ステップが長手方向に階段状に設けられてなる請求項1に記載の船舶乗降装置。
【請求項3】
前記連絡橋は、その先端側の底面に前記船舶と掛止される掛止部材が設けられ、該掛止部材は、前記連絡橋の長手方向と直交する方向に2枚の平板状の突起部が間隔を開けて対向配置されてなり、前記2枚の突起部は、互いに対向する対向面とその対向面の内側の前記底面とが直角以下の角度に形成されてなる請求項1又は2に記載の船舶乗降装置。
【請求項4】
前記連絡橋は、前記本体台車に立設される支柱の上部を介して掛け回されたワイヤに吊り下げられて支持され、前記本体台車には、前記ワイヤを巻き上げ、巻き下げる巻上機が設けられてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の船舶乗降装置。
【請求項5】
前記本体台車には、前記陸地に設けられる凸状の縁部に引っ掛けるL字状の金具が設けられ、該金具は、その基端側が前記本体台車の水平軸周りに回転自在に支持されてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の船舶乗降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211445(P2012−211445A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77019(P2011−77019)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月1日 山九株式会社発行の「LINK SANKYU GROUP COMMUNICATION NEWS 2010年11・12月号 No.286」に発表
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【Fターム(参考)】