説明

船舶用フラップ舵の連結装置

【課題】高負荷に対してより安全で且つ構造簡単な、船舶特に船用のフラップ舵用連結装置を提供する。
【解決手段】連結装置50は、高負荷に対して高い安全性を有し且つ構造簡単な、摺動ピストン52と第1の軸受56特に摺動軸受が配置された第1の軸受ハウジング51と、連結ピン54と任意に第2の軸受57特に摺動軸受が配置された第2の軸受ハウジング53とを含み、前記第1と第2の軸受ハウジング51,53及び/又は摺動ピストン52と連結ピン54及び/又は任意に前記第1及び第2の軸受56,57は、夫々実質上同一の直径512,513,533,534,522,542,561,571及び/又は実質上同一の幅及び高さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動ピストンと第1の軸受特に摺動軸受が設けられた第1の軸受ハウジングと、連結ピンと任意に第2の軸受特に摺動軸受が設けられた第2の軸受ハウジングとを備えた、船舶特に船用フラップ舵の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィン又はフラップを備えた舵は、「フラップ舵」として設計されてもいる。これらは、主として、適当な取付け手段例えばヒンジ等のような関節式連結装置によって舵板の端縁に取付けられた移動または回動可能な(舵)フラップを有する、所謂フルスペード舵又はヒール支持舵を含んでいる。フラップは、通常、フラップの偏向が、船体とフラップの間に配置された関節式連結装置によって予め限定され得るように、舵板に関節式に連結されている。そのような舵は、しばしば、舵をセットしたとき即ち舵を回転軸に枢着したとき、フラップが同様に偏向せしめられるように強制制御されるべく構成されている。この手段によって、改良された操縦性がフラップなしの舵に比べて得られるように、より大きな推進器ジェットの偏向とより大きな舵力が、フラップ舵で達成され得る。それ故、フラップは、舵の(主)舵板に回動可能に連結されるべきであり、且つ通常は組み込み状態で垂直軸又は舵板の端縁と平行な軸の周りに回動可能である。本発明による関節式連結装置は、フラップ舵のフラップの関節式の連結のために使用され、且つ基本的には総ての公知の形式の舵に使用されるが、好ましくは、フルスペード舵又は船尾に装着されるヒール支持舵に使用され得る。
【0003】
原則的には、本発明は、主として、本発明による関節式連結装置が商業的又は軍事的領域における船の舵用に適する総ての形式の舵に使用し得る。これらは、大洋航行船舶及び内陸航行船舶の両者を含む。本発明による関節式連結装置は、例えば、最高速度20ノット、好ましくは18ノット、特に好ましくは15ノットの、どちらかと言えば低速の商業用又は軍事用の船は勿論、小型及び中型の船の開発に特に有利に使用できる。
【0004】
強制制御用に構成された関節式連結装置又は調節装置、或いはフラップ舵のフラップの関節式連結装置は、通常、フラップ板即ちフラップと船体の両方に固定される。関節式連結装置によって、主舵板の回転は、主舵に対して主舵板の後端縁におけるフラップ舵板の付加的回転を伴い、その付加的回転は、同方向に通常は略同量で、舵によって生成される横向きの力を増大させる。
【0005】
特許文献1は、摺動ピストンが摺動軸受により装架されている第1軸受ハウジングを含む公知の関節式連結装置を開示している。その軸受ハウジングはフラップの上側に固着されている。据付けられた舵の摺動ピストン又は摺動回転ピストンは、しばしば略水平に揃えられている。これらのピストンは、水平ピストンとして知られてもいる。更に、公知の関節式連結装置は、連結ピン又は連結ボルトが第2の摺動軸受によって装架されている第2の軸受ハウジングを有している。第2の軸受ハウジングは船体にしっかり連結されている。しかし、原則的には、連結ピンは軸方向に強固に取り付けられて、第2の摺動軸受が省略されても良いようになっている。このような連結装置は、主舵をセットする時舵フラップの安全な強制関節式連結を保証する。同時に、摺動軸受に摺動ピストンを装着して第2の摺動軸受に任意に連結ピンを装着することにより、関節式連結装置に対して、軸受け面に比較的小さな負荷が掛かるという結果をもって、広範囲の自由度が創出される。摺動ピストンと連結ピンとの間の連結は、多様に設計され得る。特許文献1に開示の関節式連結装置においては、連結は、摺動ピストンと連結ピンとの間の(角度位置における)モーメントを許容するカルダン継手式に、ヒンジボルトによってなされていて、舵に作用する曲げモーメントは補償されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0811522号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摺動ピストンの系と連結ピンの系には異なった大きさの異なった力が作用するので、特に先行技術から公知の上記二つの装置においては、材料の任意の選択は勿論その大きさ又は寸法については、別々に構成される。その結果、一方では、摺動ピストン又は連結ピンに対して計算され或いは想定された最大負荷が作用上達成されるか、或いはそれを越えた場合、関節式連結装置に損傷を与える結果となる。他方、関節式連結装置の設計や製作が結果として相対的に高価なものとなる。
【0008】
従って、本発明の目的は、高負荷に対してより安全で且つ構造簡単な、船舶特に船用のフラップ舵用連結装置を提供することにある。この目的は、請求項1の諸特徴を有する連結装置により達成される。
【0009】
これによれば、初めに特定された形式の連結装置は、第1と第2の軸受ハウジング及び/又は摺動ピストンと連結ピン及び/又は任意に第1と第2の軸受が、夫々実質上同一の直径及び/又は実質上同一の幅と高さを有するように、構成されている。関節式連結装置の二つの装置「摺動ピストン」と「連結ピン」の一構成要素対が夫々その寸法に関して同一であるように構成されているので、関節式連結装置全体が二つの装置、摺動ピストンと連結ピンの一方に効果のある最大負荷に従って設計され、その結果、全体の安全性の増大が達成される。夫々の場合における装置は、ピストン(摺動ピストン又は連結ピン)、軸受ハウジング及び任意に軸受を含む。通常、摺動ピストン装置には最高の負荷が掛かる。従って、その装置即ち連結ピン装置の少なくとも一構成要素は、自動設計されるか或いは摺動ピストン装置におけるように正確に寸法取りされて、従来公知の装置に比べて高い安全性が達成されるようになる。更に、両装置に同じ構成要素を使用することによって、関節式連結装置の保管又は製造を単純化することができ、その結果、製造コストもまた低減される。通常は両軸受ハウジング及び摺動ピストン又は連結ピン及び軸受もまた円筒状又は中空円筒体として形成され、構成要素の対は、通常同一の直径を有する。幅と高さは、異なった形態の構成要素又は異なった横断面面積を有する構成要素の場合においても同じであるように、専ら構成されるべきである。好ましくは二つの構成要素対及び特に好ましくは二つの装置の総ての三つの構成要素対、連結ピン及び摺動ピストンは、該寸法に関しては同一であるように形成されて、一方では安全性が最大であり、且つ他方では製造又は保管が単純化されるようにする。
【0010】
例えば、軸受又は軸受ハウジングのような中空円筒体の場合には、内径と外径が同じであるように形成され得る。好ましくは、一つの構成要素対好ましくは第1と第2の軸受ハウジングの内径と外径が同じであるように夫々形成されている。
【0011】
同一の径又は同一の幅と高さの構成要素対を提供することにより、構成要素対の製造のために、単一の基礎構成要素のみが提供されるか又は供給され、且つ各要求された装置に対してはその長さについてのみ適応される必要がある。
【0012】
通常、軸受ハウジングは中空円筒体として形成され、その内側には、円筒状の軸受ブッシュとして形成された摺動軸受が設けられる。任意的には、軸受ハウジングと摺動軸受は可能ならば一構成要素として設計され得る。この場合、この構成要素はその直径に関しては他の関節式連結装置の対応構成要素と同様に形成されるべきである。
【0013】
好適実施例では、第1及び第2の軸受ハウジング及び/又は摺動ピストン及び連結ピン及び/又は任意的に第1及び第2の軸受は、それぞれ同一材料からなる。同一寸法のこれら構成要素対、即ち、実質上同一の直径及び/又は実質上同一の幅と高さを有するこれらの構成要素対は又同一材料からなり、一つの構成要素対の二つの個々の構成要素は、同一の基礎材料又は同一の基礎構成要素又は加工品から加工されるか作られる。例えば、若し両者が共に一構成要素対を構成する摺動ピストンと連結ピンは、同一寸法を有し且つ同一材料から成るべく形成され、軸受は摺動ピストン又は連結ピンの寸法に必然的に調節されなければならないので、若し存在するならば、少なくとも第1と第2の軸受の寸法を同じにし、且つ同じ材料から形成するのが適当である。特に好ましくは、軸受ハウジングは又特別に同じで且つ同じ材料からなるように形成される。この場合、関節式連結装置の三つの構成要素対の各々(摺動ピストンと連結ピン;第1及び第2軸受ハウジング;第1及び第2軸受)は一つの基礎材料からなるので、関節式連結装置又は少なくとも関節式連結装置の基本的部分は、三つの基礎材料又は加工部片からなり得る。この手段により、保管及び製造の費用は著しく低減し、製造工程自体は加速される。
【0014】
摺動ピストンと連結ピンが実質上同一直径であれば、その直径寸法は作動中摺動ピストンに作用する負荷を参照して決定又は指定され更に好ましい。普通、作動中、摺動ピストンには、連結ピンに作用する負荷に比べてより大きな負荷が作用する。従って、摺動ピストンに作用する力に対して、摺動ピストンと連結ピンの最大負荷支持容量を設計するのが適当である。この手段によって、摺動ピストンに作用するより大きな力に対し、その大きさに関連して連結ピンが設計される限り、関節式連結装置の安全性は改善される。従って、軸受又は軸受ハウジングにおける分力は、摺動ピストン側の負荷をも参考にして測定されるべきである。
【0015】
特に摺動軸受として構成された第1及び第2の軸受は、軸受用ブッシュ即ち軸受ハウジングに挿入されるべき中空円筒体として構成されるのが好都合である。有利には又円筒であるべく構成され又は中空円筒体として構成された軸受ハウジングの内径は、好ましくは、おおよそ対応する軸受の外径に対応している。固定式によると、前述の直径は、また(例えば、収縮又は熱膨張(冷凍)中)互いに僅かに異なり得る。若し例えば軸受のより大きい外径のために適当な凹みが軸受ハウジングの内側表面に設けられていれば、軸受ハウジングの内径も又より小さくてよい。軸受用ブッシュは管のような普通の構成要素から容易且つ廉価に製作し得るので、軸受又は摺動軸受の設計のために軸受用ブッシュを使用するのは好都合である。
【0016】
特に、第1及び/又は第2軸受が固体の摩擦軸受として形成されるならば好ましい。装架用相手部品の一つが自己潤滑特性を有するので、かかる軸受は又「自己潤滑軸受」とも称される。これらの軸受は、軸受材料中にグリース潤滑剤が埋め込まれていて、その潤滑剤が作動中に微小な磨耗のため表面に達して、軸受の摩擦及び磨耗が減らされるので、付加的な潤滑又は潤滑剤なしで作用する。特に、プラスチック又はプラスチック合成物及び/又はセラミック建築材料は、これらの軸受を構成するのに使用される。かかる材料の例は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。一方、関節式連結装置の構成と保守は、かかる自己潤滑軸受を使用することにより更に単純化される。他方、この形式の材料からなる摺動軸受は、中空円筒体又は特殊な長さを有する管の形で、市場ではしばしば有用である。この点で、第1及び第2の両軸受は、各場合に要求される長さに対して適当な軸受用ブッシュを単純にカットすることにより、本発明の枠組み内で簡単に創作することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
更に、本発明の基礎をなす目的は、円筒状固体本体、特に丸い鋼鉄本体、中空本体、特に管、中空円筒状軸受体、特に管、及び任意に二つの円筒状固体本体を連結するための連結手段を含む、船舶特に船用フラップ舵のための連結装置を製造するための連結装置キットにより、達成される。中空円筒状軸受体は少なくとも一個の円筒状固体本体を装架するために構成される。「円筒状固体本体」なる用語は、固体の横断面即ち中空でない総ての円柱体をカバーする。摺動ピストン又は連結ピンは、二つの部片に分離又は切り離すことによって、円筒状固体本体から簡単に作り出すことが出来る。更に、第1及び第2軸受ハウジングは、二つの部片を中空体から切り離すことによって作り出すことができる。軸受体は、少なくとも一片の中空固体本体(摺動ピストン)を装架又は支持するために構成される。軸受体全体は装架のために使用され得るか又は一部片は分離され得るかの何れかである。若し連結ピンが(縦軸に沿って移動可能に)装架されれば、別の一部片は適当に分離される。固体本体,中空本体及び軸受本体は、本発明による連結装置が創作され得る基礎又は出発材料となる。原則的には、前記キットは完全な性質のものであるため、関節式連結装置の製作のために更に追加の要素又は材料が付加されることはない。しかし、関節式連結装置に更に付加的な構成要素を設けることは可能である。従って、例えば、キットは二つの固体本体片を連結するための適当な連結手段を任意に含み得る。
【0018】
好ましくは、軸受体の外径は中空体の内径と等しいか或いはそれよりも若干大きい。その結果、中空体は、軸受体に確実に嵌挿されるように形成されるか、または、例えば熱膨張により中空体に軸受体を固着するときは、若干大きくてもよい。更に、中空体の外径は軸受体の内径に好ましくは略対応するため、中空体は軸受体内へ正確に嵌挿され得る。特に、軸受体と固体本体との間に付加的な潤滑用薄膜を設ける必要がない自己潤滑軸受として構成される軸受体においては、前述の二つの直径が同じである構成が好都合である。最後に、中空体は軸受ハウジングを形成するために設けられるので、中空体の壁厚は軸受体の壁厚よりも厚くなるように選択されるのが適当である。
【0019】
更に、本発明の基礎を成す目的は、摺動ピストンと第1の軸受特に摺動軸受が配置されそして連結ピンと任意に第2の軸受特に摺動軸受が配置された第1の軸受ハウジングを含み、摺動ピストンと連結ピンを製造するために二つの部片が円筒状固体本体特に丸い鋼鉄体から分離され、第1と任意に第2の軸受を製造するために円筒状の中空軸受体から少なくとも一つの部片が分離され、第1と第2の軸受ハウジングを製造するために一つの中空体特に一つの管から二つの部片が分離され、複数又は一つの軸受体部片が夫々中空体部片の中に挿入されて固定され、複数の固体部片が夫々一つの軸受体部片または中空体部片の中に挿入されて、それにより何れの場合も固体部片の少なくとも一端領域がその中に固体部片が挿入されているその支持体部片又は中空体部片から突出するように配置され、且つ二つの固体本体部片が少なくとも一端部領域において相互に連結されている、船舶用特に船用フラップ舵の連結装置を製造する方法により達成される。
【0020】
本発明方法においては、何れにしても、例えば円筒状固体本体,軸受体及び中空体から、切断により少なくとも一つ又は二つの部片が分離される。前述の構成要素は、好ましくは、金属即ち鋼鉄製の部品からなる。前述の構成要素は、何れの場合も単に二つの部片が切り出されるか或いは残りの部分を放置することなしに分離されることが必要なような長さを有するような寸法であればよい。しかし、任意的には、それらはまた例えばもう一つの関節式連結装置を製作するために再度使用できる切断片が残るような長さを有することもできる。従って、例えば、二つの異なった円筒状固体本体又は類似物から二つの部片が分離できるが、それらは大きさ即ち直径及び材料に関して同一であり、且つ連結装置において一緒に組み立てられる。軸受体部片又は軸受体の複数の部片は、何れも一個の中空体内に挿入されて、そこに固定される。その結果、中空体部片はハウジングを形成し、そしてハウジング内に配置された軸受体は一つの軸受又は摺動軸受を形成する。二つの中空体部片又は摺動ピストン及び二つの突出している端部領域にある連結ピンの固定は、適当な方法で完成されなければならないので、摺動ピストン又は連結ピンとなる固体部片は、軸受体部片内に挿入されるか又は中空体部片内に挿入されて、固体本体部片の一端部領域が夫々軸受体部片又は中空体部片から隆起又は突出するように構成される。連結のために、適当な連結手段、例えば自在軸受ピンが使用され得る。
【0021】
更に、軸受体部片が受容され得る凹み部は、中空体部片に軸受体部片を固定するために、中空体部片の中側に形成され得る。これに代えるか又は追加的に、軸受体部片は熱膨張により中空体部片内に固定されるのが有利である。これらの実施形態により、軸受体部片と中空体部片との間の安定した固定が、付加的な連結又は固定手段を用いることなしに簡単な形で達成され得る。
【0022】
更に、本発明の基礎を形成する目的は、船舶特に船用フラップ舵の連結装置を製作するために、円筒状固体本体、特に丸い鋼鉄体,中空体特に管,及び円筒状中空軸受体特に管により、達成され得る。
【0023】
本発明による関節式連結装置は、図面に示された実施例により更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】連結装置を備えたフラップ舵の側面図を示す。
【図2】図1から切り取った連結装置の詳細図を示す。
【図3】図2のB-B線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、舵板10と、舵板10に関節連結式に装着された強制制御フラップ11とを含む本発明による舵100の側面図を示す。図1に示された形式の舵は、上部舵領域と下部舵領域の両方に装着された所謂「ヒール支持式舵」である。舵100の下側には、(ここでは示されていない)船の後部に装着される軸栓30が備えられている。他方、舵の上部領域には舵の回転軸15に沿って延びた舵柱40が設けられていて、舵100は舵柱の周りを回転可能である。舵柱40は舵板10に強固に連結されている。更に、舵を支持するための舵柱40は、被覆材41の領域においてジャーナル軸受42により(ここでは示されていない)船体に装着されている。舵板10は、嵌め込み状態で(ここでは示されていない)船のプロペラに対面したリーディングエッジ11と、フラップ20に対面した後部舵板の後縁12とを有している。フラップ舵100は、フラップ20を舵板の後縁12の領域において舵板10に関節式に取付けた二つの関節連結部21a, 21b を含んでいる。フラップ20は、該関節連結部21a, 21bにより、舵板10に旋回可能に配置されている。更に、フラップ20はフラップ後縁24を有している。フラップ20の縦軸は、舵板10の縦軸及び舵の回転軸15に略平行に配置されている。更に、フラップ20は、舵板10の上部領域において舵板10よりも僅かに突出しており、下部領域において舵板10と同一平面で終わっている。
【0026】
更に、フラップ舵100は、舵板10にフラップ20を連動させるための連結装置50を有している。連結装置50は、水平に配置されていてフラップ20の上側で該フラップに連結された第1軸受ハウジング51に配置された摺動ピストン/水平ピストン52と、垂直に配置されていて(ここでは示されていない)船体に連結された第2軸受ハウジング53と、該第2軸受ハウジング53内に配置された連結ピン/垂直ピストン54とにより構成されている。船体に第2軸受ハウジング53を固定するため、水平に揃えられた板として構成され且つ溶接により第2軸受ハウジング53に強固に連結された保持用フレーム60が設けられている。両軸受ハウジング51,53は中空円筒体(管)によって形成され、一方、二つのピストン52,54は、図1に示された片寄せられていない状態において、軸受ハウジング51,53から端部領域521,541をそれぞれ突出させた円筒状固体本体からなっている。実質上互いに直交状態にある二つの端部領域521,541は、ヒンジボルト55により互いに連結されている。このヒンジボルト55は、フラップ20に作用する曲げモーメント等により生じる90°位置からの偏りが補償され得るということを保証する。
【0027】
図1に示された細部Aは、図2に拡大視で示されており、断面図で図1からの関節式連結装置50を示している。細部Aにおいて、ピストンの端部領域521,541が軸受ハウジング51,53から突出しており、後部領域の内周面に限り、両軸受ハウジング51,53が凹み又は窪み511,531を有しているのを見ることができる。これらの凹み(511,531)の各々には軸受ブッシュにより構成された摺動軸受が挿入されており、第1の軸受には数字符号56が付与され、また、第2の軸受には数字符号57が付与されている。軸受ブッシュ56及び57は、例えば熱膨張によって、第1及び第2の軸受ハウジング51,53の凹み511,531内に固定され得る。ヒンジボルト55と向き合っている両軸受ブッシュ56,57の端部は、各軸受ハウジング51,53に隣接している。軸受ブッシュ56,57は、例えば、自己潤滑性のプラスチック材料で作られている。しかし、例えば青銅の如き金属製の実施例も可能であり、その場合には、普通、ピストン52,54と軸受ブッシュ56,57との間に、潤滑用薄膜を介在させるべきである。
【0028】
摺動ピストン52は、第1の軸受ハウジング51の縦軸514に沿って摺動可能である。連結ピン54も同様に第2の軸受ハウジング53の縦軸535に沿って摺動可能であり、また、該軸の周りに回転可能でもある。舵100の回転中即ち舵を設定するとき、連結ピン54は、船体に連結された固定の第2の軸受ハウジング53の縦軸535の周りに回転する。更に、ヒンジボルト55によって連結ピン54に固定された摺動ピストン52は、第1の軸受ハウジング51の内部で摺動し、それによって、フラップ20が舵板10に対して偏向せしめられる。しかしながら、基本的には、連結ピン54は縦方向531に固定されるのが可能でもあり、縦軸535の周りに回転可能にのみ配置される。第2の軸受ハウジング53は、その上部領域にカバー板532を有し、第1の軸受ハウジング51は両端が開放されている。
【0029】
円柱状の固体本体として形成された摺動ピストン52は、連結ピン54の直径542に対応した直径522を有する。第1の軸受ブッシュ56は、第2の軸受ブッシュ57の外径571に対応した外径561を有する。二つの軸受ブッシュ56,57の内径は又互いに対応していて、二つのピストン52,54の直径522,542に略対応している。最後に、中空円筒体として構成された第1の軸受ハウジング51の外径は、また、中空円筒体として構成された第2の軸受ハウジング53の外径533に対応している。第1及び第2の軸受ハウジング51,53の内径513,534は、また、互いに対応している。その結果、摺動ピストン52と連結ピン54の両者は、一つの加工部品例えば丸い一つの鋼鉄から製作し得る。二つの軸受ハウジング51,53及び二つの軸受56,57は、一個の加工部品即ち一本の管から夫々作られ得るために、二つの軸受ハウジング51,53又は二つの軸受56,57の壁厚は、また、同じに形成される。凹み511,531の深さは、また、二つの軸受ハウジング51,53において同じに形成される。凹み511,531の長さだけは、ハウジングの縦軸514,535に沿う長さの関係で互いに異なっている。同様に、二つの軸受ブッシュ56,57と二つの管状軸受ハウジング51,53は、夫々の場合において長さに応じてのみ切断される共通の加工部品から製作され得る。この方法により、関節連結装置50の製作費は著しく低減され、同時に、外部加重に対する安全性は増大せしめられる。
【0030】
図3は、連結ピン54を通って図2のB-B線に沿う断面図を示している。ここでは、縦軸535に沿って連結ピン54の自由端領域541は、縦軸535に沿って連結ピン54から略中央に突出している金属板として構成されている。他方、摺動ピストン52の自由端領域521は繋鉄形に形成されて金属板541を包持している。繋鉄521と金属板541とを連結するために、両要素にヒンジボルト55が挿通されて、カルダン継ぎ手のように連結が行われるようになっている。
【符号の説明】
【0031】
100 舵
10 舵板
11 リーディングエッジ
12 舵板の後縁
15 舵の回転軸
20 フラップ
21a, 21b 関節連結部
24 フラップ後縁
30 軸栓
40 舵柱
41 被覆材
42 ジャーナル軸受
50 関節式連結装置
51 第1軸受ハウジング
511 凹み
512 第1軸受ハウジングの外径
513 第1軸受ハウジングの内径
514 第1軸受ハウジングの縦軸
52 水平ピストン/摺動ピストン
521 摺動ピストンの端部領域
522 摺動ピストンの直径
53 第2軸受ハウジング
531 凹み
532 カバー板
533 第2軸受ハウジングの外径
534 第2軸受ハウジングの内径
535 第2軸受ハウジングの縦軸
54 垂直ピストン/連結ピン
541 連結ピンの端部領域
542 連結ピンの直径
55 ヒンジボルト
56 第1軸受
561 第1軸受の直径
57 第2軸受の直径
571 第2軸受の直径
60 保持用フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動ピストン(52)と第1の軸受(56)特に摺動軸受が配置された第1の軸受ハウジング(51)と、連結ピン(54)と任意に第2の軸受(57)特に摺動軸受が配置された第2の軸受ハウジング(53)とを含む、船舶特に船用のフラップ舵(100)のための連結装置(50)において、前記第1及び第2の軸受ハウジング(51,53)及び/又は前記摺動ピストン(52)及び連結ピン(54)及び/又は任意に前記第1及び第2の軸受(56,57)が、夫々、実質上同一の直径(512,513,533,534,522,542,561,571)及び/又は実質上同一の幅と高さを有していることを特徴とする連結装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の軸受ハウジング(51,53)、及び/又は摺動ピストン(52)と連結ピン(54)、及び/又は任意に前記第1及び第2の軸受(56,57)が、夫々、実質上同一の材料からなっていることを特徴とする請求項1に記載の連結装置。
【請求項3】
前記摺動ピストン(52)及び連結ピン(54)が、実質上同一直径(522,542)を有し、該直径の寸法が、作動中前記摺動ピストン(52)に作用する負荷を参考にして決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の連結装置。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2の軸受(56,57)が、軸受ブッシュとして構成されていることを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の連結装置。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2の軸受(56,57)が、固体の摩擦軸受として構成されていることを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の連結装置。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2の軸受(56,57)が、非金属材料特にプラスチック又はセラミックからなっていることを特徴とする前記請求項の何れか1項に記載の連結装置。
【請求項7】
フラップ舵が、前記請求項の何れか1項に記載の連結装置(50)を含んでいることを特徴とする船舶特に船用のフラップ舵(100)。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の連結装置を含むことを特徴とする船舶特に船。
【請求項9】
少なくとも一片の固体円柱体を装架するための円柱状の固体本体特に丸い鋼鉄体、中空体特に管、中空円筒状軸受体特に管、及び任意には二片の円柱状固体本体を連結するための連結手段(55)を含むことを特徴とする、船舶特に船用フラップ舵(100)のための連結装置(50)を製作するための連結装置キット。
【請求項10】
前記軸受体の外径が前記中空体の内径と同じか又は若干大きく、及び/又は前記中空体の外径が実質上前記軸受体の内径と一致するか、及び/又は前記中空体の壁厚が前記軸受体の壁厚よりも厚いことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記軸受体を構成する材料が固体潤滑剤を含んでいることを特徴とする請求項9又は10に記載のキット。
【請求項12】
摺動ピストン(52)と第1の軸受(56)特に摺動軸受が配置された第1の軸受ハウジング(51)と、連結ピン(54)と任意に第2の軸受(57)特に摺動軸受が配置された第2の軸受ハウジング(53)とを含む、船舶特に船用のフラップ舵(100)のための連動装置(50)を製造するための方法において、
前記摺動ピストン(52)と連結ピン(54)を製造するために、二つの部片が、一つの円柱状固体本体特に一本の丸い鋼鉄体から分離され、
第1及び任意に第2の軸受(56;57)を製造するために、一本の中空円筒状軸受体特に管から少なくとも一部片が分離され、
第1及び第2の軸受ハウジング(51,52)を製造するために、一つの中空体特に一本の管から二つの部片が分離され、
前記一つの軸受体部片又は複数の軸受体部片が一つの中空体部片の中へ夫々挿入されて固定され、
前記固体本体部片が一つの軸受体部片又は中空体部片の中へ夫々挿入されて、いずれの場合もその挿入状態で一つの固体本体部片の少なくとも一端領域が前記軸受体部片又は中空体部片から突出するように配置され、そして、前記二つの固体本体部片が少なくとも一つの端部領域で互いに連結される、ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記中空体部片の内周面に、軸受体部片を受け入れるための凹み(511,531)が夫々形成されていることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記軸受体部片は、熱膨張により前記中空体部片内に固定されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
船舶、特に船用のフラップ舵(100)のための連結装置(50)を製造するため、少なくとも1片の円柱状固体本体を支持するための、円柱状固体本体特に丸い鋼鉄本体、中空体特に管、及び中空円筒状軸受体特に管の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−37430(P2011−37430A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−167756(P2010−167756)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(510087885)ベッケル、マリネ、システムズ、ゲーエムベーハー、ウント、コムパニ、カーゲー (5)