船舶用転舵装置、及び船舶
【課題】船舶や転舵モータの諸状態が変化した場合であっても、転舵モータを高効率で回動させることができる。
【解決手段】船舶本体の外部に設けた航行方向を変化させる船外機3aと、船舶本体のステアリング装置7とを電気的に接続する。船外機3aには転舵モータ16a,16bを設け、船舶本体に設けたコントロールユニット12は、船外機3aの転舵に用いるモータ選択部21を有すると共に、ROM22に転舵モータ16a,16bのモータ特性データ231、転舵モータ16a,16bのモータ特性を変動させる要因に基づく補正データ232を記憶する。モータ選択部21は、船舶の転舵トルク検知部24の検知信号とROM22のモータ特性データ231、補正データ232とを照合し、転舵モータ16a,16bのうち少なくともいずれか一方のうち、駆動させるものを選択する。
【解決手段】船舶本体の外部に設けた航行方向を変化させる船外機3aと、船舶本体のステアリング装置7とを電気的に接続する。船外機3aには転舵モータ16a,16bを設け、船舶本体に設けたコントロールユニット12は、船外機3aの転舵に用いるモータ選択部21を有すると共に、ROM22に転舵モータ16a,16bのモータ特性データ231、転舵モータ16a,16bのモータ特性を変動させる要因に基づく補正データ232を記憶する。モータ選択部21は、船舶の転舵トルク検知部24の検知信号とROM22のモータ特性データ231、補正データ232とを照合し、転舵モータ16a,16bのうち少なくともいずれか一方のうち、駆動させるものを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵駆動手段と船舶推進機作動手段とを電気的に接続させた船舶用転舵装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の船舶用転舵装置においては、特許文献1に記載されたようなものがある。即ち、この特許文献1には、船舶本体の外部に、内燃機関と進行用のプロペラなどを備えた船外機が設けられ、船舶本体と船外機との接続部分には、船外機を水平方向に回動させるための転舵モータが設けられ、転舵モータと操船席に設けられた船舶推進機作動手段としてのステアリングとが信号の送受信が可能な信号ケーブル(電線)によって接続されている。ステアリングには回転角センサが設けられ、転舵モータは回転角センサの検知したステアリングの回転方向及び回転角に基づいて回転して船外機を転舵させる。
【特許文献1】特許第2959044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、船外機を転舵させるために必要な力は、船舶の速度等の走行状態、船外機の回転角や転舵速度等の転舵状態、船外機に設けられたプロペラの回転方向と船外機の転舵方向の関係や船舶の重量等の船舶自体の状態、船舶や船外機に加わる波や風等による外力の状態、等によって連続的に変化する。そのため、転舵モータが船外機を転舵させるために必要なトルク量は連続的に変化する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明においては転舵モータの発生するトルク量を調節できない。一方、一般にモータのモータ効率は図6の模式図に示す通りトルク量の増大に依存して低下する。そのため、船舶の走行状態や船外機の転舵状態等、諸状態の変化に伴ってトルク量が増大した場合には、転舵モータの効率が低下し、電力消費量がいたずらに増大するという問題がある。
【0005】
また、転舵モータのトルク発生量は、モータの温度等、モータ自体の状態の変化に基づいても変化する。しかしながら、上記文献1に記載の発明においては転舵モータ自体の状態の変化がこの転舵モータの回転制御に反映されないため、転舵モータの状態によっては、やはり転舵モータの効率が低下して電力消費量がいたずらに増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、船舶の走行状態や船外機の転舵状態等、船舶の諸状態や、温度等転舵モータ自体の諸状態が変化した場合であっても、転舵モータを高効率で回動させることができる船舶用転舵装置、及び当該船舶用転舵装置を搭載した船舶を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、船舶本体の外部に転舵軸部を設け該転舵軸部に回動可能に支持された船舶推進機と、前記船舶本体に設けられ操舵者に操舵される船舶推進機作動手段と、該船舶推進機作動手段への操舵に基づいて前記船舶推進機を転舵させる転舵駆動手段と、該転舵駆動手段と前記船舶推進機作動手段とを電気的に接続させる信号ケーブルとを備えた船舶用転舵装置であって、前記転舵駆動手段は、一の前記船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、前記転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、前記複数の転舵モータの中から前記船舶推進機の転舵に用いる前記転舵モータを選択するモータ選択手段とを備え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルク検知手段が検知した前記転舵トルクと前記モータ特性データとに基づいて、複数の前記転舵モータのうちの駆動させる前記転舵モータを選択することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の前記転舵モータを選択し、前記転舵トルクが前記所定量よりも小さい場合には前記複数の前記転舵モータよりも少ない数の前記転舵モータを選択することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記転舵トルク検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、前記船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、前記船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、前記モータ選択手段は前記操舵状態検知手段、前記回転センサ、及び前記角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記操舵状態検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知手段と、前記船舶推進機に加わる力を検知する負荷検知手段と、前記船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記転舵トルク検知手段は、前記船舶の喫水状態、重量、トリム角、前記船舶推進機の搭載数、前記船舶推進機の搭載位置、前記船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、前記船舶の推進速度、前記船舶推進機の推進力、前記船舶の航行状態、前記船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、前記プロペラの形状、前記トリムタブの形状、前記船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、前記モータ選択手段は前記走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、前記モータ選択手段は前記温度センサの検知結果を前記転舵モータの選択判断に用いることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、温度の低い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、前記モータ特性データにおける最大トルクが大きい前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い前記転舵モータから順に選択し、前記転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れか一つに記載の構成に加え、前記船舶には複数の前記船舶推進機が設けられると共に、それぞれの前記船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、それぞれの前記転舵モータの回動によって生じた力は前記連結部材によって連結された全ての前記船舶推進機に伝達され、該全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、船舶であって、請求項1乃至10の何れか一つに記載の船舶用転舵装置を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、一の船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、複数の転舵モータの中から船舶推進機の転舵に用いる転舵モータを選択するモータ選択手段とを備えたことにより、船舶推進機を転舵させるために必要なトルク量の変化に伴って、回動させる転舵モータの数を変化させることができる。また、モータ選択手段は、転舵トルク検知手段が検知した転舵トルクとモータ特性データとに基づいて、複数の転舵モータのうちの駆動させる転舵モータを選択することにより、良好なモータ効率で回転させられるトルク量となるように、船舶推進機の転舵に使用される転舵モータの個数を決定できる。これにより、船舶や船外機における諸状態の変化、あるいは転舵モータ自体の状態の変化に基づいて、船舶推進機の転舵に用いる転舵モータの個数を変化させ、転舵モータを高効率で回動させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、モータ選択手段は、転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の転舵モータを選択し、転舵トルクが所定量よりも小さい場合には複数の転舵モータよりも少ない数の転舵モータを選択することにより、転舵に必要なトルク量が小さい場合に回動させるモータ数を最低の個数とすることができる。これにより、転舵モータの回動に用いる電力消費量を抑制し、電力効率を高めて転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、転舵トルク検知手段は、船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、モータ選択手段は操舵状態検知手段、回転センサ、及び角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶推進機作動手段の操作に基づいて船舶推進手段の転舵状態を検知し、この検知信号を船舶推進手段の操舵に必要なトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶推進機の転舵状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、操舵状態検知手段は、船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度や、船舶推進機に加わる力や、船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知し、これら船舶推進機作動手段の操舵状態に直接又は間接に影響を及ぼす状態の検知結果を、船舶推進手段の操舵に必要なトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶推進機の転舵状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を高精度で反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、転舵トルク検知手段は、船舶の喫水状態、重量、トリム角、船舶推進機の搭載数、船舶推進機の搭載位置、船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、船舶の推進速度、船舶推進機の推進力、船舶の航行状態、船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、プロペラの形状、トリムタブの形状、船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、モータ選択手段は走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶の速度や加減速の度合いを変化させうる走行状態の検知結果をトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶の走行状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、モータ選択手段は温度センサの検知結果を転舵モータの選択判断に用いることにより、モータ特性を大きく変化させるモータの温度状態をトルク量の算出に用いることができる。これにより、転舵モータの使用に伴って温度状態が変化し転舵モータのモータ特性が変化しても、このモータ特性の変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、モータ選択手段は、複数の転舵モータの温度が相違する場合、温度の低い転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを、簡易な構成に基づいて選択できる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、モータ選択手段は、複数の転舵モータの温度が相違する場合、モータ特性データにおける最大トルクが大きい転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを、簡易な構成に基づいて選択できる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、モータ選択手段は、転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い転舵モータから順に選択し、転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、船舶推進機の転舵に必要なトルク量の高低とモータ温度とに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを簡易かつ確実に選択できる。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、船舶には複数の船舶推進機が設けられると共に、それぞれの船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、それぞれの転舵モータの回動によって生じた力は連結部材によって連結された全ての船舶推進機に伝達され、全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることにより、それぞれの転舵モータの回動によって生じた力を全ての船舶推進機に均等に付与することができる。これにより、全ての船舶推進機の転舵方向、転舵速度、転舵角を均等にすることができ、複数の船舶推進機を設けた船舶における転舵がアンバランスになる事態を防止して、転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0028】
請求項11に記載の発明によれば、上記効果を有する船舶用転舵装置が搭載された船舶を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔発明の実施の形態1〕
【0030】
図1は、発明の実施の形態1としての船舶用転舵装置100Aを用いる船舶の平面概略図である。
【0031】
船舶1Aは各種小型船舶であって、船舶本体1と、船舶本体1の外部に設けられた船舶推進機としての船外機3aを備えている。船外機3aはプロペラ14(図3参照)によって船舶1Aに推進力を与えるとともに船舶1Aの進行方向を変える。船外機3aには、船舶本体1の姿勢を調整するトリムタブ17が設けられている。
【0032】
船外機3aの船外機本体3は、プロペラ14(図3)を回転駆動するエンジン18を内部に収納し、船舶本体1の後端部(図の右橋)を形成する船尾板2に、クランプブラケット4及びこのクランプブラケット4に装着されたスイベルブラケット5を介して取り付けられている。
【0033】
スイベルブラケット5は図1の紙面に対して垂直方向に延びるスイベル軸受6aを備え、船外機本体3にはスイベル軸受6aに回動自在に支承されるスイベル軸6が取り付けられている。
【0034】
船舶本体1の運転席前方には、船舶推進機作動手段としてのステアリング装置7が設けられている。ステアリング装置7のステアリングホイール9の中心部にはステアリング軸8の先端部が接合し、ステアリング軸8の末端部はステアリング制御部13に挿入されて回動可能に支えられている。ステアリング制御部13の内部において、ステアリング軸8の周囲にはステアリング軸8の回動速度及び回動方向を検知する回転センサ241と、ステアリング軸8の転舵角を検知する角度センサ242と、ステアリングホイール9の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵状態検知部244の一部と、ステアリングホイール9に手応えを付与する反トルクモータ11とが設けられている。ステアリング制御部13は信号ケーブル10aによってコントロールユニット12に接続され、コントロールユニット12は信号ケーブル10bによって船外機本体3に設けられた船外機側コントローラ15に接続されている。船外機側コントローラ15は信号ケーブル10c,10dによって転舵モータ16a,16bに接続されており、コントロールユニット12の指令に基づいて転舵モータ16a,16bを駆動させるパルス信号を出力する。
【0035】
図2は、本実施の形態の船舶1Aにおけるスイベル軸6周辺の拡大図である。
【0036】
同図に示す通り、スイベル軸6には、扇形の旋回歯車31の歯部32が船舶本体1の前方に向けた状態で固定されている。他方、転舵モータ16a,16bをスイベルブラケット5の後方に配置し、転舵モータ16a,16bの出力軸33a,33bに取り付けたウォーム34a,34bとこのウォーム34a,34bと噛合するウォームホイール35を備えている。2個の転舵モータ16a,16bは出力軸33a,33bを前方に向けて互いに平行に配置されている。ウォームホイール35の下面には小歯車36が一体に固定されており、この小歯車36には二段中間歯車37の上段歯車38を噛合させてウォームホイール35の回転をさらに減速して、その回転力を二段中間歯車37の下段歯車39を介して扇形の旋回歯車31に伝達するようにしている。
【0037】
図3は、本実施の形態の船舶用転舵装置100Aの機能ブロック図である。
【0038】
同図に示すとおり、船舶用転舵装置100Aは、ステアリングホイール9を備えるステアリング装置7、コントロールユニット12、転舵トルク検知手段としての転舵トルク検知部24、転舵角センサ25を備えている。また、ステアリング装置7、転舵モータ16a,16b、モータ選択部21、ROM(Read Only Memory 補助記憶装置)22、転舵トルク検知部24、転舵角センサ25は転舵駆動手段としての転舵駆動部20を形成している。
【0039】
転舵駆動部20において、モータ選択部21は、転舵モータ16a,16bのモータ特性と船外機3aを転舵させるために必要なトルク量とに基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択し、ステアリングホイール9の操舵に基づいて船外機3aを転舵させる。
【0040】
コントロールユニット12は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit 中央演算装置、図示せず)を備え、RAM(Random Access Memory 主記憶装置、図示せず)を作業領域として使用しながら、実装されたプログラムに基づいて船舶用転舵装置100A全体の動作を制御する。
【0041】
図3に示す通り、コントロールユニット12は、モータ選択部21、ROM22を備えている。
【0042】
モータ選択部21はCPU等のコントロールユニット12を構成する回路とROM22に記憶されたプログラムの演算結果とに基づいて実現される機能手段である。ROM22には、転舵駆動部20の動作制御を行うためのプログラムやデータが記憶されている。具体的には、転舵モータ16a,16bのモータ特性に関するデータとしてのモータ特性データ231、及び、転舵モータ16a,16bのトルク量に影響を与えうる、船舶1Aの転舵状態や走行状態や温度に関するデータとしての補正データ232がそれぞれテーブルとして記憶されている。
【0043】
図4に、モータ特性データ231及び補正データ232の模式図を示す。同図に示す通り、モータ特性データ231は、転舵モータ16a,16bのトルク量に対するモータ効率の値を数値化したテーブルである(同図の(a)参照)。また、補正データ232は、船外機3aの転舵速度、転舵方向、転舵角等の転舵状態に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第1補正テーブル232a(同図の(b),(c)参照)、船舶1Aの荷重、トリム角、航行速度等の走行状態に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第2補正テーブル232b(同図の(d)参照)、転舵モータ16a,16bの温度に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第3補正テーブル232c(同図の(e)参照)から成る。
【0044】
図3に戻り、モータ選択部21は、転舵トルク検知部24の検知結果等に基いて船外機3aの転舵に必要なトルク量の算出を行い、算出したトルク量やROM22に記憶されたモータ特性データ231等に基づいて、船外機3aを転舵させるために用いる転舵モータ16a,16bを選択する。
【0045】
転舵トルク検知部24は、船舶本体1及び船外機本体3に設けられた各種センサ及び各種検知手段であり、船外機3aを転舵させる際に必要な転舵トルクを検知する。ここで転舵トルク検知部24が検知するものは、モータ選択部21における転舵トルクの算出に必要な情報であって、転舵トルク自体であってもよいし、及び転舵トルクに影響を及ぼす情報であってもよい。なお、転舵トルク検知部24における検知機能のうち少なくとも一部は、コントロールユニット12のROM22に記憶されたプログラムをCPUにおいて演算することや、コントロールユニットに設けられたハードウェアロジック(図示せず)等を用いることで機能を実現するものであってもよい。
【0046】
具体的には、転舵トルク検知部24は、回転センサ241、角度センサ242、船舶1Aの航行に影響を及ぼす状態を検知する走行状態検知センサ243、操舵状態検知部244を備えている。走行状態検知センサ243は、船舶1Aの喫水状態を検知する喫水センサ243a、船舶1Aの重量を検知する重量センサ243b、船外機3aのトリム角を検知するトリム角センサ243c、船外機3aの搭載数及び/又は船尾板2に対する船外機3aの設置位置を検知する位置センサ243d、船外機3aに設けられたプロペラ14の回転方向及び回転数を検知するプロペラ回転センサ243e、船外機3aに設けられたトリムタブ17の傾斜状態を検知するトリムタブ角度センサ243f、船舶1Aの航行速度を検知する速度センサ243g、船外機3aに搭載されたエンジン18の推進力を検知するエンジントルクセンサ243h、船舶1Aの航行状態を検知する航行状態センサ243i、船外機3aに搭載されたエンジン18の出力状態を検知する出力センサ243j、転舵モータ16a,16bの温度を検知する温度センサ243k1,243k2、プロペラ14の形状を検知するプロペラ検知部243l、トリムタブの形状を検知するトリムタブ検知部243m、船舶1Aの加速度を検知する加速度センサ243nから成る。なお、走行状態検知センサ243は上述の各センサ並びに各検知部243a〜243nのうちの一部のみ、あるいは、各センサ並びに各検知部243a〜243n以外のセンサ並びに検知部を備えていてもよい。
【0047】
操舵状態検知部244はステアリング装置7の操作に従った操舵状態を検知する。操舵状態検知部244は、更に、ステアリングホイール9の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知部(操舵検知手段)2441と、水圧など船外機3a(舵)に加わる力を検知する負荷検知部(負荷検知手段)2442と、ステアリングホイール9の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知部(偏差検知手段)2443とを備えている。操舵検知部2441と偏差検知部2443とは、ステアリング軸8の周囲に設けられてステアリング装置7を構成する。
【0048】
転舵角センサ25は、船外機本体3に設けられた角度センサであり、船外機3aの現実の転舵角を検知する。
【0049】
次に、発明の実施の形態1における船舶用転舵装置100Aの転舵動作について説明する。
【0050】
図5は、発明の実施の形態1における船舶用転舵装置100Aにおける転舵の具体的手順を示すフローチャートである。以下、同図に基づいて転舵の具体的手順を説明する。
【0051】
まず、コントロールユニット12は、転舵に要するトルク量の算出と転舵に用いる転舵モータ16a,16bの選択とを行う。
【0052】
具体的には、まず、操舵者によってステアリングホイール9が操舵されると、ステアリング装置7に設けられた角度センサ242又は操舵状態検知部244(操舵検知部2441、負荷検知部2442、偏差検知部2443を含む)がステアリング軸8の操作角を検知する(ステップS1)、角度センサ242又は操舵状態検知部244の検知信号はコントロールユニット12に供給される。
【0053】
次に、モータ選択部21は、ステップS1において算出されたステアリング軸8の操作角に基づいて、船外機3aの転舵角を算出する(ステップS2)。
【0054】
次に、船外機3aに設けられた転舵角センサ25が船外機3aの現在の転舵状態を検知する(ステップS3)。転舵角センサ25の検知信号はコントロールユニット12に供給され、モータ選択部21はこの検知信号に基づいて船外機3aの転舵角を算出する。算出した転舵角は後述するトルク量の算出の際に数値精度を高めるための補正値として用いられる。
【0055】
次に、船舶本体1に設けられた走行状態検知センサ24が船舶1Aの航行状態を検知する(ステップS4)。走行状態検知センサ24の検知信号はコントロールユニット12に供給され、モータ選択部21はこの検知信号に基づいて船舶1Aの航行状態を算出する。
【0056】
次に、転舵モータ16a,16bに設けられた温度センサ243k1、243k2が転舵モータ16a,16bの温度を検知する(ステップS5)。温度センサ243k1、243k2の検知信号はコントロールユニット12に供給され、コントロールユニット12はこの検知信号に基づいて転舵モータ16a,16bの温度を算出する。
【0057】
モータ選択部21は、上記ステップS2〜ステップS5において算出された値に基づいて、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する。即ち、転舵に用いる転舵モータ16a,16bの数、及び、転舵モータ16a,16bのいずれを転舵に用いるか、を選択する(ステップS6)。
【0058】
具体的には、以下(原理1)乃至(原理4)に基づく選択が行われる。
【0059】
(原理1:モータ特性による転舵モータ16a,16bの選択)
モータ選択部21は、ステップS2において算出されたトルク量と、モータ特性データ231として記憶された転舵モータ16a、及び転舵モータ16bのモータ効率とに基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bの数、及び、転舵モータ16a,16bのいずれを転舵に用いるか、を選択するための基本となる値(以下単に「基本値」と称する。)を形成する。
【0060】
図6は、モータ選択部21における転舵モータ16a,16bを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【0061】
同図においては横軸が転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)1台あたりのトルク量、縦軸が転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の1台あたりのモータ効率を示す。
【0062】
同図に示す通り、転舵モータ16a,16bはトルクの大きさに基づいてモータ効率が変化する。
【0063】
仮に、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が小さく、モータ効率の高い領域であった場合(例えばトルク量が図6に示すT1であった場合)は、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させることで、転舵モータ16a,16bを高いモータ効率で駆動させることができる。
【0064】
しかし、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が大きい場合(例えばトルク量が図6に示すT21であった場合)は、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させた場合、モータ効率が低くなってしまい、転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の効率が低下して電力消費量がいたずらに増大することになってしまう。
【0065】
一方、トルク量が大きい場合に2台の転舵モータ16a,16bを同時に駆動させると、1台あたりのトルク量は半分(例えば図6におけるT22)になり、モータ効率は高くなる。これにより、転舵モータ16a,16bの効率が上がり、電力消費量を小さくすることができる。
【0066】
また、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が極めて小さい場合に2台の転舵モータ16a,16bを同時に駆動させると、それぞれの転舵モータ16a,16bのトルク量が半分(例えばトルク量が図6に示すT31)になり、モータ効率は低くなる。この場合、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させれば、トルク量は倍になり(例えば図6におけるT32)、モータ効率は高くなる。これにより、転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の効率が上がり、電力消費量を小さくすることができる。
【0067】
モータ選択部21は、以上の原理に基づいて、基本値を形成する。具体的には、モータ選択部21においては、回転センサ241が検知した検知信号とROM22に記憶されたモータ特性データ231とを照合しながら、以下(1-1)乃至(1-2)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる基本値が形成される。
(1-1)転舵トルク検知部24が検知したトルク量が大きい場合、2台の転舵モータ16a,16bを駆動させる。
(1-2)転舵トルク検知部24が検知したトルク量が小さい場合、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)を駆動させる。
【0068】
上記(1-1)及び(1-2)の指針に基づいて、転舵トルクが所定の値(例えば、図6に示す、モータ効率が最高値(50%)の半分の値(25%)ととなるトルク量Tα)以上である場合には複数の転舵モータ16a,16bを選択し、転舵トルクがこの所定の値未満の場合には転舵モータ16a,16bのうちの一つを選択することにより、転舵に必要なトルク量が小さい場合に回動させるモータ数を最低の個数とすることができる。
【0069】
(原理2:船舶1Aの転舵状態に基づくモータ特性の補正)
次に、モータ選択部21は、ステップS3において算出されたステアリング軸8の回動速度、回動方向、転舵角に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下「第1補正値」と称する。)を形成する。
【0070】
図7は、モータ選択部21における第1補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が船外機3aの転舵角、縦軸方向が船外機3aの転舵荷重を示している。同図に示す通り、船外機3aを転舵させるときの転舵速度にほぼ比例して転舵トルクは大きくなる。また、船外機3aの転舵角を大きくしてゆくときのトルク量よりも、転舵角を小さくしてゆくときのトルク量の方が、転舵トルクは大きくなる。また、転舵速度の大きさにほぼ比例して、転舵トルクは大きくなる。
【0071】
また、図示しないが、プロペラ14の回転で生ずるカウンタートルクの影響により、プロペラ14の回転方向と転舵方向とが一致すると船外機3aの転舵に要するトルク量が小さくなり、回転方向と転舵方向とが相反すると船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0072】
発明の実施の形態1においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第1補正データ232aに基づいて第1補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、回転センサ241、角度センサ242の検知信号を第1補正データ232aと照合させて第1補正値を形成する。
【0073】
第1補正値は、具体的には、以下(2-1)乃至(2-3)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(2-1)転舵角が大きい程、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増やす。
(2-2)転舵速度が大きい程、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増やす。
(2-3)プロペラ14の回転方向と転舵方向に基づいて、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増減させる。
【0074】
上記(2-1)乃至(2-3)の指針に基づいて、モータ選択部21は回転センサ、及び角度センサのうち少なくとも一方の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、ステアリング装置7の操作に基づいて船外機3aの転舵状態を検知し、この検知信号を船外機3aの操舵に必要なトルク量の算出に用い、船外機3aの転舵状態を反映したトルク量の算出を行うことができる。
【0075】
(原理3:船舶1Aの走行状態に基づくモータ特性の補正)
モータ選択部21は、ステップS4において算出された船舶1Aの航行状態に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下「第2補正値」と称する。)を形成する。
【0076】
図8A乃至図8Cは、モータ選択部21における第2補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が船外機3aの転舵角、縦軸方向が船外機3aの転舵荷重を示している。これらの図に示す通り、船外機3aの転舵角の大きさにほぼ比例して船外機3aを転舵させる転舵トルクが大きくなるが、同じ転舵角であっても、船舶1Aの走行状態に基づいて必要な転舵トルクの大きさが変化する。
【0077】
例えば、図8Aに示す通り、船舶1Aの加減速度が大きいほど転舵荷重は大きくなり、船外機3aの転舵に要するトルク量は大きくなる。特に、急加速、急減速の瞬間には船外機3aの転舵に要するトルク量は瞬時かつ急激に増大する。
【0078】
同様に、船舶1Aの速度が大きいほど船外機3aの転舵荷重は大きくなり、船外機3aのエンジン回転数が高く推力が大きいほど船外機3aの転舵荷重が大きくなり、それぞれ転舵に要するトルク量は大きくなる。また、船外機3aに設けられたプロペラ14の翼の大きさが大きいほど船外機3aの転舵荷重は大きくなり、転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0079】
また、例えば図8Bに示す通り、搭乗員数、積載貨物、搭載燃料の増大に伴う荷重が大きいほど転舵荷重が大きくなり、また、搭載される船外機3aの重量が大きいほど転舵荷重が大きくなり、それぞれ船外機3aの転舵に要するトルク量は大きくなる。同様に、トリム角度が小さい(IN側)ほど転舵荷重が大きくなり、船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。また、本実施の形態では直接関係しないが、船舶1Aに搭載される船外機3aの基数が増える(実施の形態2参照)と、船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0080】
また、本実施の形態では直接関係しないが、船舶1Aに複数の船外機が搭載されている場合(実施の形態2参照)、船舶1Aが旋回する際に旋回内側の船外機は船舶1Aのロールによって水没量が増すため、図8Cに示す通り、旋回外側の船外機よりも転舵荷重が大きくなり、転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0081】
本実施の形態においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第2補正データ232bに基づいて第2補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、走行状態検知センサ243の検知信号をROM22の第2補正データ232bと照合させて第2補正値を求める。
【0082】
第2補正値は、具体的には、以下(3-1)乃至(3-4)のうち少なくとも何れか一つの方針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(3-1)船舶1Aの船速が大きく、必要な転舵トルクが大きい場合ほど、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増やす。
(3-2)トリム角が小さく、必要な転舵トルクが大きい場合ほど、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増やす。
(3-3)極低速状態では、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を減少させる。
(3-4)急加速時、急減速時には、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増加させる。
【0083】
上記(3-1)乃至(3-4)の指針に基づいて、走行状態検知センサ243の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶1Aの速度や加減速の度合いを変化させうる走行状態の検知結果をトルク量の算出に用い、走行状態の変化を反映したトルク量の算出を行うことができる。
【0084】
(原理4:温度に基づくモータ特性の補正)
次に、モータ選択部21は、ステップS5において算出された転舵モータ16a,16bの温度に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下単に「第3補正値」と称する。)を形成する。
【0085】
図9は、モータ選択部21における第3補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が転舵モータ16a,16bのトルク量、縦軸方向が転舵モータ16a,16bのモータ効率を示している。同図に示す通り、転舵モータ16a,16bは温度が変化するとモータ特性が変化する。具体的には、転舵モータ16a,16bの温度の上昇に伴って出力される最大トルク量が小さくなり、また、モータ効率が最良となるトルク量の値が小さくなる。
【0086】
本実施の形態においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第3補正データ232cに基づいて第3補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、温度センサ243k1,243k2の検知信号をROM22の第3補正データ232cと照合させて第3補正値を形成する。
【0087】
第3補正値は、具体的には、以下(4-1)乃至(4-4)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(4-1)温度センサ243k1,243k2の検知した温度に基づいて、転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを優先して転舵に使用する。
(4-2)温度センサ243k1,243k2の検知した温度とモータ特性データ231のデータとを対照し、最大トルクが大きいものを優先して転舵に使用する。
(4-3)基本値のトルク量が大きい(即ち高トルク領域である)場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを優先して転舵に使用し、基本値のトルク量が小さい(即ち低トルク領域である)場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の高いものを優先して転舵に使用する。
(4-4)基本値のトルク量を出力させる際、発熱量が最小となる転舵モータ16a,16bの個数を選択する。転舵モータ16a,16bの発熱量は、例えば発熱の基本式(Q=I2R,ただしQ=発熱量(Cal),I=電流(A),R=抵抗(Ω))に基づき、転舵モータ16a,16bに供給される電流量を用いて算出する。
【0088】
上記(4-1)乃至(4-4)の指針に基づいて、温度センサ243k1,243k2の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、モータ特性を大きく変化させる転舵モータ16a,16bの温度をトルク量の算出に用い、転舵モータ16a,16bの温度を反映させたトルク量の算出を行うことができる。
【0089】
上記(4-1)の指針に基づいて、温度の低いものから順に転舵モータ16a,16bを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。
【0090】
上記(4-2)の指針に基づいて、モータ特性データ231における最大トルクが大きい順に転舵モータ16a,16bを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。
【0091】
上記(4-3)の指針に基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bは、転舵トルクが低トルク領域である場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを選択し、転舵トルクが高トルク領域である場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の高いものを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、船外機3aの転舵に必要なトルク量の高低とモータの温度とに基づいてつけることができる。
【0092】
モータ選択部21は、以上示した通り、(原理1)に基づいて形成された基本値を(原理2)乃至(原理4)の第1乃至第3補正値に基づいて補正して、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する。補正は、基本値に第1乃至第3補正値を加算又は乗算することで行われる。更に、モータ選択部21はステップS3にて算出された転舵角の値も補正値に用いて転舵モータ16a,16bを選択する。
【0093】
そして、モータ選択部21はステップS6にて選択された転舵モータ16a,16bを駆動させて船外機3aを転舵させる(ステップS7)。
【0094】
モータ選択部21からの指令信号に基づいて船外機側コントローラ15からパルス信号が出力されると駆動モータ16a,16bの出力軸33a,33bが回転する。出力軸33a,33bの回転によってウォームホイール35が回転し、ウォームホイール35の回転は小歯車36を介して二段中間歯車37の上段歯車38に伝達され、下段歯車39と噛合している旋回歯車31を回転させる。旋回歯車31の回転によってスイベル軸6が回転し、スイベル軸6が回転するとスイベル軸6を中心として船外機本体3が水平面内を回転する。
【0095】
以上、発明の実施の形態1においては、船舶用転舵装置100Aの転舵駆動部20は、スイベル軸6に複数設けられステアリング装置7の転舵命令に基づいて回転し船外機3aを転舵させる転舵モータ16a,16bと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知部24と、転舵モータ16a,16bごとのモータ特性データ231が記憶されたROM22と、複数の転舵モータ16a,16bの中から船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択するモータ選択部21とを備えたことにより、船外機3aを転舵させるために必要なトルク量の変化に伴って、回動させる転舵モータ16a,16bの数を変化させることができる。
【0096】
また、発明の実施の形態1においては、モータ選択部21は、転舵トルク検知部24が検知した転舵トルクとモータ特性データ231とに基づいて、2つの転舵モータ16a,16bのうちの駆動させる一又は複数の転舵モータ16a,16bを選択することにより、良好なモータ効率で回転させられるトルク量となるように、船外機3aの転舵に使用される転舵モータ16a,16bの個数を決定できる。これにより、船舶1Aや船外機3aにおける諸状態の変化、あるいは転舵モータ16a,16b自体の状態の変化に基づいて、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bの個数を変化させることができる。
【0097】
〔発明の実施の形態2〕
図10は、発明の実施の形態2における船舶用転舵装置100Bを用いる船舶の平面概略図である。
【0098】
本実施の形態の船舶1Bは、2基の船外機3b,3cを備えている他は、実施の形態1における船舶1Aと同じである。同図に示す通り、船外機3bには2機の転舵モータ16c,16dが、船外機3cにも2機の転舵モータ16e,16fが、それぞれ設けられている。
【0099】
図11は、本実施の形態の船舶1Bにおける船外機3c側のスイベル軸6周辺の拡大図である。
【0100】
同図に示す通り、本実施の形態のウォームホイール35には連結部材としてのシャフト40の一端部が回動可能に軸支されている。シャフト40の他端部は他方の船外機3bのウォームホイール(図示せず)に同様に軸支されている。
【0101】
それ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0102】
実施の形態2においては、船舶1Bに設けられた複数の船外機3b,3cがシャフト40によって連結されているため、一方の船外機3c側の転舵モータ16c,16d、及び、他方の船外機3b側の転舵モータ16e,16fの回動によって生じた力は、シャフト40によって双方の船外機3b,3cに伝達される。これにより、各転舵モータ16c,16d、16e,16fの回動によって生じた力は、双方の船外機3b,3cに伝達され、双方の船外機3b,3cは同一方向に転舵される。
【0103】
転舵モータ16e,16f,16g,16hの回動によって生じた力は双方の船外機3b,3cに均等に付与される。これにより、双方の船外機3b,3cの転舵方向、転舵速度、転舵角を均等にすることができ、複数の船外機3b,3cを設けた船舶1Bにおける転舵がアンバランスになる事態を防止できる。即ち、例えば一方の船外機3cのプロペラ14の回転方向を右回り、他方の船外機3bのプロペラ14の回転方向を左回りとした場合、双方のプロペラ14,14のカウンタートルク(上記(原理2)参照)は反対の関係になる。このため、例えば船外機3b,3cを右方向に転舵した場合、一方の船外機3cのカウンタートルクが小さくなる反面、他方の船外機3bのカウンタートルクが大きくなるような力のアンバランスが常に生ずることになる。しかし、本実施の形態においては、各転舵モータ16c,16d,16e,16fの回動によって生じた力はシャフト40によって双方の船外機3b,3cに均等に伝達される。これにより、各転舵モータ16c,16d,16e,16fの制御が簡単になり、また、転舵がアンバランスになる事態を防止できる。
【0104】
更に、本実施の形態において実施の形態1の(1-1),(1-2)を適用する際、4つの転舵モータ16c,16d,16e,16fの中から1個乃至4個を選択して駆動させることになる。例えば、図12の模式図に示す通り、船外機3b,3cを転舵させるために必要なトルク量をT10とした場合、1個の転舵モータ16cを駆動させた場合には転舵トルクがT10となる。同様に、2個の転舵モータ16c,16dを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/2、3個の転舵モータ16c,16d,16eを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/3、4個の転舵モータ16c,16d,16e,16fを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/4となる。本実施の形態では、これらの中から最もモータ効率のよい駆動のさせ方(図12においてはT10/3のとき。即ち3個の転舵モータ16c,16d,16eを駆動させたとき。)を選択することによって、より高いモータ効率で転舵モータ16c,16d,16e,16fを駆動させることができる。
【0105】
上記各実施の形態においては、モータ選択部21はテーブルとして形成されたモータ特性データ231を用いて転舵に用いる転舵モータ16a〜16fを選択したが、これに限定されず、モータ効率を求める演算によって転舵に用いる転舵モータ16a〜16fの選択を行うことができる。例えば、以下の式によってモータ効率を求め、モータ効率が最も高くなるような転舵モータ、及び、転舵モータの組み合わせを選択することもできる。
【0106】
モータ出力(W)=トルク(mN−m)×回転数(r/min)×定数
【0107】
モータ効率(%)={モータ出力(W)/(入力電圧(V)×消費電流(A))}×定数
【0108】
上記各実施の形態においては、1基又は2基の船外機を搭載した船舶1A,1Bに船舶用転舵装置100A,100Bを用いたが、これに限定されず、3基以上の船外機を搭載した船舶にも本発明の船舶用転舵装置を適用できる。
【0109】
上記各実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施の形態1における船舶用転舵装置を用いる船舶の平面概略図である。
【図2】同上船舶用転舵装置を用いる船舶におけるスイベル軸周辺の拡大図である。
【図3】同上船舶用転舵装置の機能ブロック図である。
【図4】同上船舶用転舵装置におけるモータ特性データ及び船体情報データの模式図である。
【図5】同上船舶用転舵装置における転舵の具体的手順を示すフローチャートである。
【図6】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、転舵モータを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【図7】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第1補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8A】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8B】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8C】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図9】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第3補正値形成の原理を示す模式図である。
【図10】実施の形態2における船舶用転舵装置を用いる船舶の平面概略図である。
【図11】同上船舶用転舵装置を用いる船舶におけるスイベル軸周辺の拡大図である。
【図12】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、転舵モータを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B・・・船舶
1・・・船舶本体
3a,3b,3c・・・船外機
7・・・ステアリング装置(船舶推進機作動手段)
10a,10b,10c,10d・・・信号ケーブル
16a,16b,16c,16d,16e,16f・・・転舵モータ
17・・・トリムタブ
20・・・転舵駆動部(転舵駆動手段)
21・・・モータ選択部(モータ選択手段)
24・・・転舵トルク検知部(転舵トルク検知手段)
100A,100B・・・船舶用転舵装置
231・・・モータ特性データ
241・・・回転センサ
242・・・角度センサ
243・・・走行状態検知センサ
243k1,243k2・・・温度センサ
244・・・操舵状態検知部(操舵状態検知手段)
2441・・・操舵検知部(操舵検知手段)
2442・・・負荷検知部(負荷検知手段)
2443・・・偏差検知部(偏差検知手段)
40・・・シャフト(連結部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵駆動手段と船舶推進機作動手段とを電気的に接続させた船舶用転舵装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の船舶用転舵装置においては、特許文献1に記載されたようなものがある。即ち、この特許文献1には、船舶本体の外部に、内燃機関と進行用のプロペラなどを備えた船外機が設けられ、船舶本体と船外機との接続部分には、船外機を水平方向に回動させるための転舵モータが設けられ、転舵モータと操船席に設けられた船舶推進機作動手段としてのステアリングとが信号の送受信が可能な信号ケーブル(電線)によって接続されている。ステアリングには回転角センサが設けられ、転舵モータは回転角センサの検知したステアリングの回転方向及び回転角に基づいて回転して船外機を転舵させる。
【特許文献1】特許第2959044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、船外機を転舵させるために必要な力は、船舶の速度等の走行状態、船外機の回転角や転舵速度等の転舵状態、船外機に設けられたプロペラの回転方向と船外機の転舵方向の関係や船舶の重量等の船舶自体の状態、船舶や船外機に加わる波や風等による外力の状態、等によって連続的に変化する。そのため、転舵モータが船外機を転舵させるために必要なトルク量は連続的に変化する。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明においては転舵モータの発生するトルク量を調節できない。一方、一般にモータのモータ効率は図6の模式図に示す通りトルク量の増大に依存して低下する。そのため、船舶の走行状態や船外機の転舵状態等、諸状態の変化に伴ってトルク量が増大した場合には、転舵モータの効率が低下し、電力消費量がいたずらに増大するという問題がある。
【0005】
また、転舵モータのトルク発生量は、モータの温度等、モータ自体の状態の変化に基づいても変化する。しかしながら、上記文献1に記載の発明においては転舵モータ自体の状態の変化がこの転舵モータの回転制御に反映されないため、転舵モータの状態によっては、やはり転舵モータの効率が低下して電力消費量がいたずらに増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、船舶の走行状態や船外機の転舵状態等、船舶の諸状態や、温度等転舵モータ自体の諸状態が変化した場合であっても、転舵モータを高効率で回動させることができる船舶用転舵装置、及び当該船舶用転舵装置を搭載した船舶を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、船舶本体の外部に転舵軸部を設け該転舵軸部に回動可能に支持された船舶推進機と、前記船舶本体に設けられ操舵者に操舵される船舶推進機作動手段と、該船舶推進機作動手段への操舵に基づいて前記船舶推進機を転舵させる転舵駆動手段と、該転舵駆動手段と前記船舶推進機作動手段とを電気的に接続させる信号ケーブルとを備えた船舶用転舵装置であって、前記転舵駆動手段は、一の前記船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、前記転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、前記複数の転舵モータの中から前記船舶推進機の転舵に用いる前記転舵モータを選択するモータ選択手段とを備え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルク検知手段が検知した前記転舵トルクと前記モータ特性データとに基づいて、複数の前記転舵モータのうちの駆動させる前記転舵モータを選択することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の前記転舵モータを選択し、前記転舵トルクが前記所定量よりも小さい場合には前記複数の前記転舵モータよりも少ない数の前記転舵モータを選択することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記転舵トルク検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、前記船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、前記船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、前記モータ選択手段は前記操舵状態検知手段、前記回転センサ、及び前記角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記操舵状態検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知手段と、前記船舶推進機に加わる力を検知する負荷検知手段と、前記船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記転舵トルク検知手段は、前記船舶の喫水状態、重量、トリム角、前記船舶推進機の搭載数、前記船舶推進機の搭載位置、前記船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、前記船舶の推進速度、前記船舶推進機の推進力、前記船舶の航行状態、前記船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、前記プロペラの形状、前記トリムタブの形状、前記船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、前記モータ選択手段は前記走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、前記モータ選択手段は前記温度センサの検知結果を前記転舵モータの選択判断に用いることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、温度の低い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、前記モータ特性データにおける最大トルクが大きい前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い前記転舵モータから順に選択し、前記転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れか一つに記載の構成に加え、前記船舶には複数の前記船舶推進機が設けられると共に、それぞれの前記船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、それぞれの前記転舵モータの回動によって生じた力は前記連結部材によって連結された全ての前記船舶推進機に伝達され、該全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、船舶であって、請求項1乃至10の何れか一つに記載の船舶用転舵装置を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、一の船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、複数の転舵モータの中から船舶推進機の転舵に用いる転舵モータを選択するモータ選択手段とを備えたことにより、船舶推進機を転舵させるために必要なトルク量の変化に伴って、回動させる転舵モータの数を変化させることができる。また、モータ選択手段は、転舵トルク検知手段が検知した転舵トルクとモータ特性データとに基づいて、複数の転舵モータのうちの駆動させる転舵モータを選択することにより、良好なモータ効率で回転させられるトルク量となるように、船舶推進機の転舵に使用される転舵モータの個数を決定できる。これにより、船舶や船外機における諸状態の変化、あるいは転舵モータ自体の状態の変化に基づいて、船舶推進機の転舵に用いる転舵モータの個数を変化させ、転舵モータを高効率で回動させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、モータ選択手段は、転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の転舵モータを選択し、転舵トルクが所定量よりも小さい場合には複数の転舵モータよりも少ない数の転舵モータを選択することにより、転舵に必要なトルク量が小さい場合に回動させるモータ数を最低の個数とすることができる。これにより、転舵モータの回動に用いる電力消費量を抑制し、電力効率を高めて転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、転舵トルク検知手段は、船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、モータ選択手段は操舵状態検知手段、回転センサ、及び角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶推進機作動手段の操作に基づいて船舶推進手段の転舵状態を検知し、この検知信号を船舶推進手段の操舵に必要なトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶推進機の転舵状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、操舵状態検知手段は、船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度や、船舶推進機に加わる力や、船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知し、これら船舶推進機作動手段の操舵状態に直接又は間接に影響を及ぼす状態の検知結果を、船舶推進手段の操舵に必要なトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶推進機の転舵状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を高精度で反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、転舵トルク検知手段は、船舶の喫水状態、重量、トリム角、船舶推進機の搭載数、船舶推進機の搭載位置、船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、船舶の推進速度、船舶推進機の推進力、船舶の航行状態、船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、プロペラの形状、トリムタブの形状、船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、モータ選択手段は走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶の速度や加減速の度合いを変化させうる走行状態の検知結果をトルク量の算出に用いることができる。これにより、船舶の走行状態の変動によって転舵トルクが変化しても、この転舵トルクの変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、モータ選択手段は温度センサの検知結果を転舵モータの選択判断に用いることにより、モータ特性を大きく変化させるモータの温度状態をトルク量の算出に用いることができる。これにより、転舵モータの使用に伴って温度状態が変化し転舵モータのモータ特性が変化しても、このモータ特性の変化を反映させつつ転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、モータ選択手段は、複数の転舵モータの温度が相違する場合、温度の低い転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを、簡易な構成に基づいて選択できる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、モータ選択手段は、複数の転舵モータの温度が相違する場合、モータ特性データにおける最大トルクが大きい転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを、簡易な構成に基づいて選択できる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、モータ選択手段は、転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い転舵モータから順に選択し、転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い転舵モータから順に選択することにより、複数の転舵モータの中から転舵に用いる転舵モータを選択する際の優先順位を、船舶推進機の転舵に必要なトルク量の高低とモータ温度とに基づいてつけることができる。これにより、高効率で回動する転舵モータを簡易かつ確実に選択できる。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、船舶には複数の船舶推進機が設けられると共に、それぞれの船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、それぞれの転舵モータの回動によって生じた力は連結部材によって連結された全ての船舶推進機に伝達され、全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることにより、それぞれの転舵モータの回動によって生じた力を全ての船舶推進機に均等に付与することができる。これにより、全ての船舶推進機の転舵方向、転舵速度、転舵角を均等にすることができ、複数の船舶推進機を設けた船舶における転舵がアンバランスになる事態を防止して、転舵モータを一層高効率で回動させることができる。
【0028】
請求項11に記載の発明によれば、上記効果を有する船舶用転舵装置が搭載された船舶を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔発明の実施の形態1〕
【0030】
図1は、発明の実施の形態1としての船舶用転舵装置100Aを用いる船舶の平面概略図である。
【0031】
船舶1Aは各種小型船舶であって、船舶本体1と、船舶本体1の外部に設けられた船舶推進機としての船外機3aを備えている。船外機3aはプロペラ14(図3参照)によって船舶1Aに推進力を与えるとともに船舶1Aの進行方向を変える。船外機3aには、船舶本体1の姿勢を調整するトリムタブ17が設けられている。
【0032】
船外機3aの船外機本体3は、プロペラ14(図3)を回転駆動するエンジン18を内部に収納し、船舶本体1の後端部(図の右橋)を形成する船尾板2に、クランプブラケット4及びこのクランプブラケット4に装着されたスイベルブラケット5を介して取り付けられている。
【0033】
スイベルブラケット5は図1の紙面に対して垂直方向に延びるスイベル軸受6aを備え、船外機本体3にはスイベル軸受6aに回動自在に支承されるスイベル軸6が取り付けられている。
【0034】
船舶本体1の運転席前方には、船舶推進機作動手段としてのステアリング装置7が設けられている。ステアリング装置7のステアリングホイール9の中心部にはステアリング軸8の先端部が接合し、ステアリング軸8の末端部はステアリング制御部13に挿入されて回動可能に支えられている。ステアリング制御部13の内部において、ステアリング軸8の周囲にはステアリング軸8の回動速度及び回動方向を検知する回転センサ241と、ステアリング軸8の転舵角を検知する角度センサ242と、ステアリングホイール9の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵状態検知部244の一部と、ステアリングホイール9に手応えを付与する反トルクモータ11とが設けられている。ステアリング制御部13は信号ケーブル10aによってコントロールユニット12に接続され、コントロールユニット12は信号ケーブル10bによって船外機本体3に設けられた船外機側コントローラ15に接続されている。船外機側コントローラ15は信号ケーブル10c,10dによって転舵モータ16a,16bに接続されており、コントロールユニット12の指令に基づいて転舵モータ16a,16bを駆動させるパルス信号を出力する。
【0035】
図2は、本実施の形態の船舶1Aにおけるスイベル軸6周辺の拡大図である。
【0036】
同図に示す通り、スイベル軸6には、扇形の旋回歯車31の歯部32が船舶本体1の前方に向けた状態で固定されている。他方、転舵モータ16a,16bをスイベルブラケット5の後方に配置し、転舵モータ16a,16bの出力軸33a,33bに取り付けたウォーム34a,34bとこのウォーム34a,34bと噛合するウォームホイール35を備えている。2個の転舵モータ16a,16bは出力軸33a,33bを前方に向けて互いに平行に配置されている。ウォームホイール35の下面には小歯車36が一体に固定されており、この小歯車36には二段中間歯車37の上段歯車38を噛合させてウォームホイール35の回転をさらに減速して、その回転力を二段中間歯車37の下段歯車39を介して扇形の旋回歯車31に伝達するようにしている。
【0037】
図3は、本実施の形態の船舶用転舵装置100Aの機能ブロック図である。
【0038】
同図に示すとおり、船舶用転舵装置100Aは、ステアリングホイール9を備えるステアリング装置7、コントロールユニット12、転舵トルク検知手段としての転舵トルク検知部24、転舵角センサ25を備えている。また、ステアリング装置7、転舵モータ16a,16b、モータ選択部21、ROM(Read Only Memory 補助記憶装置)22、転舵トルク検知部24、転舵角センサ25は転舵駆動手段としての転舵駆動部20を形成している。
【0039】
転舵駆動部20において、モータ選択部21は、転舵モータ16a,16bのモータ特性と船外機3aを転舵させるために必要なトルク量とに基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択し、ステアリングホイール9の操舵に基づいて船外機3aを転舵させる。
【0040】
コントロールユニット12は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit 中央演算装置、図示せず)を備え、RAM(Random Access Memory 主記憶装置、図示せず)を作業領域として使用しながら、実装されたプログラムに基づいて船舶用転舵装置100A全体の動作を制御する。
【0041】
図3に示す通り、コントロールユニット12は、モータ選択部21、ROM22を備えている。
【0042】
モータ選択部21はCPU等のコントロールユニット12を構成する回路とROM22に記憶されたプログラムの演算結果とに基づいて実現される機能手段である。ROM22には、転舵駆動部20の動作制御を行うためのプログラムやデータが記憶されている。具体的には、転舵モータ16a,16bのモータ特性に関するデータとしてのモータ特性データ231、及び、転舵モータ16a,16bのトルク量に影響を与えうる、船舶1Aの転舵状態や走行状態や温度に関するデータとしての補正データ232がそれぞれテーブルとして記憶されている。
【0043】
図4に、モータ特性データ231及び補正データ232の模式図を示す。同図に示す通り、モータ特性データ231は、転舵モータ16a,16bのトルク量に対するモータ効率の値を数値化したテーブルである(同図の(a)参照)。また、補正データ232は、船外機3aの転舵速度、転舵方向、転舵角等の転舵状態に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第1補正テーブル232a(同図の(b),(c)参照)、船舶1Aの荷重、トリム角、航行速度等の走行状態に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第2補正テーブル232b(同図の(d)参照)、転舵モータ16a,16bの温度に基づくモータ効率の補正値をテーブル化した第3補正テーブル232c(同図の(e)参照)から成る。
【0044】
図3に戻り、モータ選択部21は、転舵トルク検知部24の検知結果等に基いて船外機3aの転舵に必要なトルク量の算出を行い、算出したトルク量やROM22に記憶されたモータ特性データ231等に基づいて、船外機3aを転舵させるために用いる転舵モータ16a,16bを選択する。
【0045】
転舵トルク検知部24は、船舶本体1及び船外機本体3に設けられた各種センサ及び各種検知手段であり、船外機3aを転舵させる際に必要な転舵トルクを検知する。ここで転舵トルク検知部24が検知するものは、モータ選択部21における転舵トルクの算出に必要な情報であって、転舵トルク自体であってもよいし、及び転舵トルクに影響を及ぼす情報であってもよい。なお、転舵トルク検知部24における検知機能のうち少なくとも一部は、コントロールユニット12のROM22に記憶されたプログラムをCPUにおいて演算することや、コントロールユニットに設けられたハードウェアロジック(図示せず)等を用いることで機能を実現するものであってもよい。
【0046】
具体的には、転舵トルク検知部24は、回転センサ241、角度センサ242、船舶1Aの航行に影響を及ぼす状態を検知する走行状態検知センサ243、操舵状態検知部244を備えている。走行状態検知センサ243は、船舶1Aの喫水状態を検知する喫水センサ243a、船舶1Aの重量を検知する重量センサ243b、船外機3aのトリム角を検知するトリム角センサ243c、船外機3aの搭載数及び/又は船尾板2に対する船外機3aの設置位置を検知する位置センサ243d、船外機3aに設けられたプロペラ14の回転方向及び回転数を検知するプロペラ回転センサ243e、船外機3aに設けられたトリムタブ17の傾斜状態を検知するトリムタブ角度センサ243f、船舶1Aの航行速度を検知する速度センサ243g、船外機3aに搭載されたエンジン18の推進力を検知するエンジントルクセンサ243h、船舶1Aの航行状態を検知する航行状態センサ243i、船外機3aに搭載されたエンジン18の出力状態を検知する出力センサ243j、転舵モータ16a,16bの温度を検知する温度センサ243k1,243k2、プロペラ14の形状を検知するプロペラ検知部243l、トリムタブの形状を検知するトリムタブ検知部243m、船舶1Aの加速度を検知する加速度センサ243nから成る。なお、走行状態検知センサ243は上述の各センサ並びに各検知部243a〜243nのうちの一部のみ、あるいは、各センサ並びに各検知部243a〜243n以外のセンサ並びに検知部を備えていてもよい。
【0047】
操舵状態検知部244はステアリング装置7の操作に従った操舵状態を検知する。操舵状態検知部244は、更に、ステアリングホイール9の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知部(操舵検知手段)2441と、水圧など船外機3a(舵)に加わる力を検知する負荷検知部(負荷検知手段)2442と、ステアリングホイール9の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知部(偏差検知手段)2443とを備えている。操舵検知部2441と偏差検知部2443とは、ステアリング軸8の周囲に設けられてステアリング装置7を構成する。
【0048】
転舵角センサ25は、船外機本体3に設けられた角度センサであり、船外機3aの現実の転舵角を検知する。
【0049】
次に、発明の実施の形態1における船舶用転舵装置100Aの転舵動作について説明する。
【0050】
図5は、発明の実施の形態1における船舶用転舵装置100Aにおける転舵の具体的手順を示すフローチャートである。以下、同図に基づいて転舵の具体的手順を説明する。
【0051】
まず、コントロールユニット12は、転舵に要するトルク量の算出と転舵に用いる転舵モータ16a,16bの選択とを行う。
【0052】
具体的には、まず、操舵者によってステアリングホイール9が操舵されると、ステアリング装置7に設けられた角度センサ242又は操舵状態検知部244(操舵検知部2441、負荷検知部2442、偏差検知部2443を含む)がステアリング軸8の操作角を検知する(ステップS1)、角度センサ242又は操舵状態検知部244の検知信号はコントロールユニット12に供給される。
【0053】
次に、モータ選択部21は、ステップS1において算出されたステアリング軸8の操作角に基づいて、船外機3aの転舵角を算出する(ステップS2)。
【0054】
次に、船外機3aに設けられた転舵角センサ25が船外機3aの現在の転舵状態を検知する(ステップS3)。転舵角センサ25の検知信号はコントロールユニット12に供給され、モータ選択部21はこの検知信号に基づいて船外機3aの転舵角を算出する。算出した転舵角は後述するトルク量の算出の際に数値精度を高めるための補正値として用いられる。
【0055】
次に、船舶本体1に設けられた走行状態検知センサ24が船舶1Aの航行状態を検知する(ステップS4)。走行状態検知センサ24の検知信号はコントロールユニット12に供給され、モータ選択部21はこの検知信号に基づいて船舶1Aの航行状態を算出する。
【0056】
次に、転舵モータ16a,16bに設けられた温度センサ243k1、243k2が転舵モータ16a,16bの温度を検知する(ステップS5)。温度センサ243k1、243k2の検知信号はコントロールユニット12に供給され、コントロールユニット12はこの検知信号に基づいて転舵モータ16a,16bの温度を算出する。
【0057】
モータ選択部21は、上記ステップS2〜ステップS5において算出された値に基づいて、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する。即ち、転舵に用いる転舵モータ16a,16bの数、及び、転舵モータ16a,16bのいずれを転舵に用いるか、を選択する(ステップS6)。
【0058】
具体的には、以下(原理1)乃至(原理4)に基づく選択が行われる。
【0059】
(原理1:モータ特性による転舵モータ16a,16bの選択)
モータ選択部21は、ステップS2において算出されたトルク量と、モータ特性データ231として記憶された転舵モータ16a、及び転舵モータ16bのモータ効率とに基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bの数、及び、転舵モータ16a,16bのいずれを転舵に用いるか、を選択するための基本となる値(以下単に「基本値」と称する。)を形成する。
【0060】
図6は、モータ選択部21における転舵モータ16a,16bを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【0061】
同図においては横軸が転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)1台あたりのトルク量、縦軸が転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の1台あたりのモータ効率を示す。
【0062】
同図に示す通り、転舵モータ16a,16bはトルクの大きさに基づいてモータ効率が変化する。
【0063】
仮に、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が小さく、モータ効率の高い領域であった場合(例えばトルク量が図6に示すT1であった場合)は、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させることで、転舵モータ16a,16bを高いモータ効率で駆動させることができる。
【0064】
しかし、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が大きい場合(例えばトルク量が図6に示すT21であった場合)は、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させた場合、モータ効率が低くなってしまい、転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の効率が低下して電力消費量がいたずらに増大することになってしまう。
【0065】
一方、トルク量が大きい場合に2台の転舵モータ16a,16bを同時に駆動させると、1台あたりのトルク量は半分(例えば図6におけるT22)になり、モータ効率は高くなる。これにより、転舵モータ16a,16bの効率が上がり、電力消費量を小さくすることができる。
【0066】
また、特定時に転舵トルク検知部24が検知したトルク量が極めて小さい場合に2台の転舵モータ16a,16bを同時に駆動させると、それぞれの転舵モータ16a,16bのトルク量が半分(例えばトルク量が図6に示すT31)になり、モータ効率は低くなる。この場合、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)のみを駆動させれば、トルク量は倍になり(例えば図6におけるT32)、モータ効率は高くなる。これにより、転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)の効率が上がり、電力消費量を小さくすることができる。
【0067】
モータ選択部21は、以上の原理に基づいて、基本値を形成する。具体的には、モータ選択部21においては、回転センサ241が検知した検知信号とROM22に記憶されたモータ特性データ231とを照合しながら、以下(1-1)乃至(1-2)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる基本値が形成される。
(1-1)転舵トルク検知部24が検知したトルク量が大きい場合、2台の転舵モータ16a,16bを駆動させる。
(1-2)転舵トルク検知部24が検知したトルク量が小さい場合、1台の転舵モータ16a(又は転舵モータ16b)を駆動させる。
【0068】
上記(1-1)及び(1-2)の指針に基づいて、転舵トルクが所定の値(例えば、図6に示す、モータ効率が最高値(50%)の半分の値(25%)ととなるトルク量Tα)以上である場合には複数の転舵モータ16a,16bを選択し、転舵トルクがこの所定の値未満の場合には転舵モータ16a,16bのうちの一つを選択することにより、転舵に必要なトルク量が小さい場合に回動させるモータ数を最低の個数とすることができる。
【0069】
(原理2:船舶1Aの転舵状態に基づくモータ特性の補正)
次に、モータ選択部21は、ステップS3において算出されたステアリング軸8の回動速度、回動方向、転舵角に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下「第1補正値」と称する。)を形成する。
【0070】
図7は、モータ選択部21における第1補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が船外機3aの転舵角、縦軸方向が船外機3aの転舵荷重を示している。同図に示す通り、船外機3aを転舵させるときの転舵速度にほぼ比例して転舵トルクは大きくなる。また、船外機3aの転舵角を大きくしてゆくときのトルク量よりも、転舵角を小さくしてゆくときのトルク量の方が、転舵トルクは大きくなる。また、転舵速度の大きさにほぼ比例して、転舵トルクは大きくなる。
【0071】
また、図示しないが、プロペラ14の回転で生ずるカウンタートルクの影響により、プロペラ14の回転方向と転舵方向とが一致すると船外機3aの転舵に要するトルク量が小さくなり、回転方向と転舵方向とが相反すると船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0072】
発明の実施の形態1においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第1補正データ232aに基づいて第1補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、回転センサ241、角度センサ242の検知信号を第1補正データ232aと照合させて第1補正値を形成する。
【0073】
第1補正値は、具体的には、以下(2-1)乃至(2-3)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(2-1)転舵角が大きい程、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増やす。
(2-2)転舵速度が大きい程、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増やす。
(2-3)プロペラ14の回転方向と転舵方向に基づいて、駆動する転舵モータ16a,16bの数を増減させる。
【0074】
上記(2-1)乃至(2-3)の指針に基づいて、モータ選択部21は回転センサ、及び角度センサのうち少なくとも一方の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、ステアリング装置7の操作に基づいて船外機3aの転舵状態を検知し、この検知信号を船外機3aの操舵に必要なトルク量の算出に用い、船外機3aの転舵状態を反映したトルク量の算出を行うことができる。
【0075】
(原理3:船舶1Aの走行状態に基づくモータ特性の補正)
モータ選択部21は、ステップS4において算出された船舶1Aの航行状態に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下「第2補正値」と称する。)を形成する。
【0076】
図8A乃至図8Cは、モータ選択部21における第2補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が船外機3aの転舵角、縦軸方向が船外機3aの転舵荷重を示している。これらの図に示す通り、船外機3aの転舵角の大きさにほぼ比例して船外機3aを転舵させる転舵トルクが大きくなるが、同じ転舵角であっても、船舶1Aの走行状態に基づいて必要な転舵トルクの大きさが変化する。
【0077】
例えば、図8Aに示す通り、船舶1Aの加減速度が大きいほど転舵荷重は大きくなり、船外機3aの転舵に要するトルク量は大きくなる。特に、急加速、急減速の瞬間には船外機3aの転舵に要するトルク量は瞬時かつ急激に増大する。
【0078】
同様に、船舶1Aの速度が大きいほど船外機3aの転舵荷重は大きくなり、船外機3aのエンジン回転数が高く推力が大きいほど船外機3aの転舵荷重が大きくなり、それぞれ転舵に要するトルク量は大きくなる。また、船外機3aに設けられたプロペラ14の翼の大きさが大きいほど船外機3aの転舵荷重は大きくなり、転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0079】
また、例えば図8Bに示す通り、搭乗員数、積載貨物、搭載燃料の増大に伴う荷重が大きいほど転舵荷重が大きくなり、また、搭載される船外機3aの重量が大きいほど転舵荷重が大きくなり、それぞれ船外機3aの転舵に要するトルク量は大きくなる。同様に、トリム角度が小さい(IN側)ほど転舵荷重が大きくなり、船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。また、本実施の形態では直接関係しないが、船舶1Aに搭載される船外機3aの基数が増える(実施の形態2参照)と、船外機3aの転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0080】
また、本実施の形態では直接関係しないが、船舶1Aに複数の船外機が搭載されている場合(実施の形態2参照)、船舶1Aが旋回する際に旋回内側の船外機は船舶1Aのロールによって水没量が増すため、図8Cに示す通り、旋回外側の船外機よりも転舵荷重が大きくなり、転舵に要するトルク量が大きくなる。
【0081】
本実施の形態においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第2補正データ232bに基づいて第2補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、走行状態検知センサ243の検知信号をROM22の第2補正データ232bと照合させて第2補正値を求める。
【0082】
第2補正値は、具体的には、以下(3-1)乃至(3-4)のうち少なくとも何れか一つの方針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(3-1)船舶1Aの船速が大きく、必要な転舵トルクが大きい場合ほど、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増やす。
(3-2)トリム角が小さく、必要な転舵トルクが大きい場合ほど、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増やす。
(3-3)極低速状態では、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を減少させる。
(3-4)急加速時、急減速時には、駆動させる転舵モータ16a,16bの個数を増加させる。
【0083】
上記(3-1)乃至(3-4)の指針に基づいて、走行状態検知センサ243の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、船舶1Aの速度や加減速の度合いを変化させうる走行状態の検知結果をトルク量の算出に用い、走行状態の変化を反映したトルク量の算出を行うことができる。
【0084】
(原理4:温度に基づくモータ特性の補正)
次に、モータ選択部21は、ステップS5において算出された転舵モータ16a,16bの温度に基づいて、ステップS2において形成された基本値を補正するための値(以下単に「第3補正値」と称する。)を形成する。
【0085】
図9は、モータ選択部21における第3補正値形成の原理を示す模式図である。同図においては、横軸方向が転舵モータ16a,16bのトルク量、縦軸方向が転舵モータ16a,16bのモータ効率を示している。同図に示す通り、転舵モータ16a,16bは温度が変化するとモータ特性が変化する。具体的には、転舵モータ16a,16bの温度の上昇に伴って出力される最大トルク量が小さくなり、また、モータ効率が最良となるトルク量の値が小さくなる。
【0086】
本実施の形態においては、モータ選択部21は、ROM22に記憶された第3補正データ232cに基づいて第3補正値を求める。具体的には、モータ選択部21は、温度センサ243k1,243k2の検知信号をROM22の第3補正データ232cと照合させて第3補正値を形成する。
【0087】
第3補正値は、具体的には、以下(4-1)乃至(4-4)のうち少なくとも何れか一つの指針で転舵モータ16a,16bを駆動させる方向に基本値を補正する。
(4-1)温度センサ243k1,243k2の検知した温度に基づいて、転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを優先して転舵に使用する。
(4-2)温度センサ243k1,243k2の検知した温度とモータ特性データ231のデータとを対照し、最大トルクが大きいものを優先して転舵に使用する。
(4-3)基本値のトルク量が大きい(即ち高トルク領域である)場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを優先して転舵に使用し、基本値のトルク量が小さい(即ち低トルク領域である)場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の高いものを優先して転舵に使用する。
(4-4)基本値のトルク量を出力させる際、発熱量が最小となる転舵モータ16a,16bの個数を選択する。転舵モータ16a,16bの発熱量は、例えば発熱の基本式(Q=I2R,ただしQ=発熱量(Cal),I=電流(A),R=抵抗(Ω))に基づき、転舵モータ16a,16bに供給される電流量を用いて算出する。
【0088】
上記(4-1)乃至(4-4)の指針に基づいて、温度センサ243k1,243k2の検知結果をトルク量の算出に用いることにより、モータ特性を大きく変化させる転舵モータ16a,16bの温度をトルク量の算出に用い、転舵モータ16a,16bの温度を反映させたトルク量の算出を行うことができる。
【0089】
上記(4-1)の指針に基づいて、温度の低いものから順に転舵モータ16a,16bを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。
【0090】
上記(4-2)の指針に基づいて、モータ特性データ231における最大トルクが大きい順に転舵モータ16a,16bを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、発生するトルク量の大きさに基づいてつけることができる。
【0091】
上記(4-3)の指針に基づいて、転舵に用いる転舵モータ16a,16bは、転舵トルクが低トルク領域である場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の低いものを選択し、転舵トルクが高トルク領域である場合には転舵モータ16a,16bのうち温度の高いものを選択することにより、複数の転舵モータ16a,16bの中から転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する際の優先順位を、船外機3aの転舵に必要なトルク量の高低とモータの温度とに基づいてつけることができる。
【0092】
モータ選択部21は、以上示した通り、(原理1)に基づいて形成された基本値を(原理2)乃至(原理4)の第1乃至第3補正値に基づいて補正して、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択する。補正は、基本値に第1乃至第3補正値を加算又は乗算することで行われる。更に、モータ選択部21はステップS3にて算出された転舵角の値も補正値に用いて転舵モータ16a,16bを選択する。
【0093】
そして、モータ選択部21はステップS6にて選択された転舵モータ16a,16bを駆動させて船外機3aを転舵させる(ステップS7)。
【0094】
モータ選択部21からの指令信号に基づいて船外機側コントローラ15からパルス信号が出力されると駆動モータ16a,16bの出力軸33a,33bが回転する。出力軸33a,33bの回転によってウォームホイール35が回転し、ウォームホイール35の回転は小歯車36を介して二段中間歯車37の上段歯車38に伝達され、下段歯車39と噛合している旋回歯車31を回転させる。旋回歯車31の回転によってスイベル軸6が回転し、スイベル軸6が回転するとスイベル軸6を中心として船外機本体3が水平面内を回転する。
【0095】
以上、発明の実施の形態1においては、船舶用転舵装置100Aの転舵駆動部20は、スイベル軸6に複数設けられステアリング装置7の転舵命令に基づいて回転し船外機3aを転舵させる転舵モータ16a,16bと、転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知部24と、転舵モータ16a,16bごとのモータ特性データ231が記憶されたROM22と、複数の転舵モータ16a,16bの中から船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bを選択するモータ選択部21とを備えたことにより、船外機3aを転舵させるために必要なトルク量の変化に伴って、回動させる転舵モータ16a,16bの数を変化させることができる。
【0096】
また、発明の実施の形態1においては、モータ選択部21は、転舵トルク検知部24が検知した転舵トルクとモータ特性データ231とに基づいて、2つの転舵モータ16a,16bのうちの駆動させる一又は複数の転舵モータ16a,16bを選択することにより、良好なモータ効率で回転させられるトルク量となるように、船外機3aの転舵に使用される転舵モータ16a,16bの個数を決定できる。これにより、船舶1Aや船外機3aにおける諸状態の変化、あるいは転舵モータ16a,16b自体の状態の変化に基づいて、船外機3aの転舵に用いる転舵モータ16a,16bの個数を変化させることができる。
【0097】
〔発明の実施の形態2〕
図10は、発明の実施の形態2における船舶用転舵装置100Bを用いる船舶の平面概略図である。
【0098】
本実施の形態の船舶1Bは、2基の船外機3b,3cを備えている他は、実施の形態1における船舶1Aと同じである。同図に示す通り、船外機3bには2機の転舵モータ16c,16dが、船外機3cにも2機の転舵モータ16e,16fが、それぞれ設けられている。
【0099】
図11は、本実施の形態の船舶1Bにおける船外機3c側のスイベル軸6周辺の拡大図である。
【0100】
同図に示す通り、本実施の形態のウォームホイール35には連結部材としてのシャフト40の一端部が回動可能に軸支されている。シャフト40の他端部は他方の船外機3bのウォームホイール(図示せず)に同様に軸支されている。
【0101】
それ以外の構成は実施の形態1と同じである。
【0102】
実施の形態2においては、船舶1Bに設けられた複数の船外機3b,3cがシャフト40によって連結されているため、一方の船外機3c側の転舵モータ16c,16d、及び、他方の船外機3b側の転舵モータ16e,16fの回動によって生じた力は、シャフト40によって双方の船外機3b,3cに伝達される。これにより、各転舵モータ16c,16d、16e,16fの回動によって生じた力は、双方の船外機3b,3cに伝達され、双方の船外機3b,3cは同一方向に転舵される。
【0103】
転舵モータ16e,16f,16g,16hの回動によって生じた力は双方の船外機3b,3cに均等に付与される。これにより、双方の船外機3b,3cの転舵方向、転舵速度、転舵角を均等にすることができ、複数の船外機3b,3cを設けた船舶1Bにおける転舵がアンバランスになる事態を防止できる。即ち、例えば一方の船外機3cのプロペラ14の回転方向を右回り、他方の船外機3bのプロペラ14の回転方向を左回りとした場合、双方のプロペラ14,14のカウンタートルク(上記(原理2)参照)は反対の関係になる。このため、例えば船外機3b,3cを右方向に転舵した場合、一方の船外機3cのカウンタートルクが小さくなる反面、他方の船外機3bのカウンタートルクが大きくなるような力のアンバランスが常に生ずることになる。しかし、本実施の形態においては、各転舵モータ16c,16d,16e,16fの回動によって生じた力はシャフト40によって双方の船外機3b,3cに均等に伝達される。これにより、各転舵モータ16c,16d,16e,16fの制御が簡単になり、また、転舵がアンバランスになる事態を防止できる。
【0104】
更に、本実施の形態において実施の形態1の(1-1),(1-2)を適用する際、4つの転舵モータ16c,16d,16e,16fの中から1個乃至4個を選択して駆動させることになる。例えば、図12の模式図に示す通り、船外機3b,3cを転舵させるために必要なトルク量をT10とした場合、1個の転舵モータ16cを駆動させた場合には転舵トルクがT10となる。同様に、2個の転舵モータ16c,16dを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/2、3個の転舵モータ16c,16d,16eを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/3、4個の転舵モータ16c,16d,16e,16fを駆動させたときの個々のモータの転舵トルクはT10/4となる。本実施の形態では、これらの中から最もモータ効率のよい駆動のさせ方(図12においてはT10/3のとき。即ち3個の転舵モータ16c,16d,16eを駆動させたとき。)を選択することによって、より高いモータ効率で転舵モータ16c,16d,16e,16fを駆動させることができる。
【0105】
上記各実施の形態においては、モータ選択部21はテーブルとして形成されたモータ特性データ231を用いて転舵に用いる転舵モータ16a〜16fを選択したが、これに限定されず、モータ効率を求める演算によって転舵に用いる転舵モータ16a〜16fの選択を行うことができる。例えば、以下の式によってモータ効率を求め、モータ効率が最も高くなるような転舵モータ、及び、転舵モータの組み合わせを選択することもできる。
【0106】
モータ出力(W)=トルク(mN−m)×回転数(r/min)×定数
【0107】
モータ効率(%)={モータ出力(W)/(入力電圧(V)×消費電流(A))}×定数
【0108】
上記各実施の形態においては、1基又は2基の船外機を搭載した船舶1A,1Bに船舶用転舵装置100A,100Bを用いたが、これに限定されず、3基以上の船外機を搭載した船舶にも本発明の船舶用転舵装置を適用できる。
【0109】
上記各実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施の形態1における船舶用転舵装置を用いる船舶の平面概略図である。
【図2】同上船舶用転舵装置を用いる船舶におけるスイベル軸周辺の拡大図である。
【図3】同上船舶用転舵装置の機能ブロック図である。
【図4】同上船舶用転舵装置におけるモータ特性データ及び船体情報データの模式図である。
【図5】同上船舶用転舵装置における転舵の具体的手順を示すフローチャートである。
【図6】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、転舵モータを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【図7】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第1補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8A】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8B】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図8C】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第2補正値形成の原理を示す模式図である。
【図9】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、第3補正値形成の原理を示す模式図である。
【図10】実施の形態2における船舶用転舵装置を用いる船舶の平面概略図である。
【図11】同上船舶用転舵装置を用いる船舶におけるスイベル軸周辺の拡大図である。
【図12】同上船舶用転舵装置のモータ選択部における、転舵モータを選択するための基本値作成の原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B・・・船舶
1・・・船舶本体
3a,3b,3c・・・船外機
7・・・ステアリング装置(船舶推進機作動手段)
10a,10b,10c,10d・・・信号ケーブル
16a,16b,16c,16d,16e,16f・・・転舵モータ
17・・・トリムタブ
20・・・転舵駆動部(転舵駆動手段)
21・・・モータ選択部(モータ選択手段)
24・・・転舵トルク検知部(転舵トルク検知手段)
100A,100B・・・船舶用転舵装置
231・・・モータ特性データ
241・・・回転センサ
242・・・角度センサ
243・・・走行状態検知センサ
243k1,243k2・・・温度センサ
244・・・操舵状態検知部(操舵状態検知手段)
2441・・・操舵検知部(操舵検知手段)
2442・・・負荷検知部(負荷検知手段)
2443・・・偏差検知部(偏差検知手段)
40・・・シャフト(連結部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶本体の外部に転舵軸部を設け該転舵軸部に回動可能に支持された船舶推進機と、前記船舶本体に設けられ操舵者に操舵される船舶推進機作動手段と、該船舶推進機作動手段への操舵に基づいて前記船舶推進機を転舵させる転舵駆動手段と、該転舵駆動手段と前記船舶推進機作動手段とを電気的に接続させる信号ケーブルとを備えた船舶用転舵装置であって、
前記転舵駆動手段は、
一の前記船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、
転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、
前記転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、
前記複数の転舵モータの中から前記船舶推進機の転舵に用いる前記転舵モータを選択するモータ選択手段とを備え、
前記モータ選択手段は、前記転舵トルク検知手段が検知した前記転舵トルクと前記モータ特性データとに基づいて、複数の前記転舵モータのうちの駆動させる前記転舵モータを選択することを特徴とする船舶用転舵装置。
【請求項2】
前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の前記転舵モータを選択し、前記転舵トルクが前記所定量よりも小さい場合には前記複数の前記転舵モータよりも少ない数の前記転舵モータを選択することを特徴とする請求項1に記載の船舶用転舵装置。
【請求項3】
前記転舵トルク検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、前記船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、前記船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、前記モータ選択手段は前記操舵状態検知手段、前記回転センサ、及び前記角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶用転舵装置。
【請求項4】
前記操舵状態検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知手段と、前記船舶推進機に加わる力を検知する負荷検知手段と、前記船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知手段とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の船舶用転舵装置。
【請求項5】
前記転舵トルク検知手段は、前記船舶の喫水状態、重量、トリム角、前記船舶推進機の搭載数、前記船舶本体における前記船舶推進機の設置位置、前記船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、前記船舶の推進速度、前記船舶推進機の推進力、前記船舶の航行状態、前記船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、前記プロペラの形状、前記トリムタブの形状、前記船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、前記モータ選択手段は前記走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項6】
前記転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、前記モータ選択手段は前記温度センサの検知結果を前記転舵モータの選択判断に用いることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項7】
前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、温度の低い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項6に記載の船舶用転舵装置。
【請求項8】
前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、前記モータ特性データにおける最大トルクが大きい前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項6又は7に記載の船舶用転舵装置。
【請求項9】
前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い前記転舵モータから順に選択し、前記転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項8に記載の船舶用転舵装置。
【請求項10】
前記船舶には複数の前記船舶推進機が設けられると共に、それぞれの前記船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、
それぞれの前記転舵モータの回動によって生じた力は前記連結部材によって連結された全ての前記船舶推進機に伝達され、該全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一つに記載の船舶用転舵装置を搭載したことを特徴とする船舶。
【請求項1】
船舶本体の外部に転舵軸部を設け該転舵軸部に回動可能に支持された船舶推進機と、前記船舶本体に設けられ操舵者に操舵される船舶推進機作動手段と、該船舶推進機作動手段への操舵に基づいて前記船舶推進機を転舵させる転舵駆動手段と、該転舵駆動手段と前記船舶推進機作動手段とを電気的に接続させる信号ケーブルとを備えた船舶用転舵装置であって、
前記転舵駆動手段は、
一の前記船舶推進機を転舵させる複数の転舵モータと、
転舵時の転舵トルクを検知する転舵トルク検知手段と、
前記転舵モータごとのモータ特性データが記憶された記憶手段と、
前記複数の転舵モータの中から前記船舶推進機の転舵に用いる前記転舵モータを選択するモータ選択手段とを備え、
前記モータ選択手段は、前記転舵トルク検知手段が検知した前記転舵トルクと前記モータ特性データとに基づいて、複数の前記転舵モータのうちの駆動させる前記転舵モータを選択することを特徴とする船舶用転舵装置。
【請求項2】
前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが所定量よりも大きい場合には複数の前記転舵モータを選択し、前記転舵トルクが前記所定量よりも小さい場合には前記複数の前記転舵モータよりも少ない数の前記転舵モータを選択することを特徴とする請求項1に記載の船舶用転舵装置。
【請求項3】
前記転舵トルク検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操作に従った操舵状態を検知する操舵状態検知手段と、前記船舶推進機作動手段の回動速度及び回動方向を検知する回転センサと、前記船舶推進機作動手段の転舵角を検知する角度センサとのうち少なくとも何れか一つを含み、前記モータ選択手段は前記操舵状態検知手段、前記回転センサ、及び前記角度センサのうち少なくとも何れか一つの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶用転舵装置。
【請求項4】
前記操舵状態検知手段は、前記船舶推進機作動手段の操舵方向、操作角度、操作速度を検知する操舵検知手段と、前記船舶推進機に加わる力を検知する負荷検知手段と、前記船舶推進機作動手段の操作に応じた目標転舵角と舵の転舵角との偏差を検知する偏差検知手段とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の船舶用転舵装置。
【請求項5】
前記転舵トルク検知手段は、前記船舶の喫水状態、重量、トリム角、前記船舶推進機の搭載数、前記船舶本体における前記船舶推進機の設置位置、前記船舶推進機に設けられた推進用のプロペラの回転方向及び回転数、トリムタブの傾斜状態、前記船舶の推進速度、前記船舶推進機の推進力、前記船舶の航行状態、前記船舶推進機に搭載された内燃機関の出力状態、前記プロペラの形状、前記トリムタブの形状、前記船舶の加速度のうち少なくともいずれか一つを検知する走行状態検知センサを含み、前記モータ選択手段は前記走行状態検知センサの検知結果をトルク量の算出に用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項6】
前記転舵モータの温度を検知する温度センサを含み、前記モータ選択手段は前記温度センサの検知結果を前記転舵モータの選択判断に用いることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項7】
前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、温度の低い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項6に記載の船舶用転舵装置。
【請求項8】
前記モータ選択手段は、複数の前記転舵モータの前記温度が相違する場合、前記モータ特性データにおける最大トルクが大きい前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項6又は7に記載の船舶用転舵装置。
【請求項9】
前記モータ選択手段は、前記転舵トルクが低トルク領域である場合には温度の低い前記転舵モータから順に選択し、前記転舵トルクが高トルク領域である場合には温度の高い前記転舵モータから順に選択することを特徴とする請求項8に記載の船舶用転舵装置。
【請求項10】
前記船舶には複数の前記船舶推進機が設けられると共に、それぞれの前記船舶推進機を連結する連結部材が設けられ、
それぞれの前記転舵モータの回動によって生じた力は前記連結部材によって連結された全ての前記船舶推進機に伝達され、該全ての船舶推進機は同一方向に転舵されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一つに記載の船舶用転舵装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一つに記載の船舶用転舵装置を搭載したことを特徴とする船舶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−94369(P2008−94369A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315303(P2006−315303)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
[ Back to top ]