説明

色合いが付けられたレンズを製造し、処方する方法

【課題】色盲および失読症の矯正に適したレンズを製造する方法および該レンズを処方する方法を提供する。
【解決手段】矯正レンズは、光学的に透明なベース材料から形成することができ、着色染料に浸すことによって、このベース材料に、矯正用の所望の色の色合いを付ける。次いで、この色合いが付けられたレンズに、ニュートラルな色合いの染料によって色合いを付けて、このレンズが、通常の矯正レンズに見えるようにする。このようなレンズの処方は、平衡が動的に保たれる処方、すなわちハプロスコピックな処方に基づくことができ、この処方は、一組の16枚のフィルタの中から、利き眼に対する第1の視覚フィルタを選び出すステップ64と、残りの15枚のフィルタの中から、利き眼でない方の眼に対する第2の視覚フィルタを選び出すステップ66とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2007年7月13日に出願された同時係属の米国特許出願第11/827,893号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
色識別を矯正する目的に現在使用可能な技法は最終的に、患者の眼に合わせて個別に色合いが付けられたレンズを提供する。色合い(color tint)が異なる矯正レンズは、レンズを見ている人に、それが矯正目的であることを教え、外見を美容上受け容れがたいものにする。外見をより許容できるものにするため、米国特許第6,089,712号は、このタイプのレンズであって、個々の眼に対する所望の色矯正を有するようにレンズの中心部分に色合いが付けられ、レンズを外側から見ている人からはその色合い付けが見えないようにするためにレンズの外面が鏡面反射材料でコーティングされたレンズを開示している。米国特許第6,089,712号に記載されたこの技法は所望の色矯正を提供する。しかしながら、レンズに鏡面反射面が存在することは、一部の人にとっては美容上容認できないものであり、または非実用的であることが分かっている。この鏡面は、装着者に対してあまりに暗い像を眼鏡が生み出す可能性があるほどに高い割合の光を反射することがある。オフィスまたは光が不十分な空間などのある種の環境では、鏡面眼鏡を装着しても効果がないことがあり、おそらくは、鏡面眼鏡を装着することが不適切であることさえある。
【0003】
眼科学の分野では、可視スペクトル領域の入射光、例えば波長が約650nm(赤領域)から475nm(青領域)までの入射光、特に短波長(青)側の入射光を選択的にフィルタリングするレンズを提供することによって、レンズを通して受け取られる光が、その光を見た人がその光を神経学的に処理する方法に影響を与えるような態様で変更されることが分かっている。色盲に苦しむ患者のために、患者の視力の特性に合わせて個別に色合いが付けられたレンズが製造された。このような矯正レンズは、色を正しく知覚し、さらには失読症(dyslexia)の多くの症状に対処するために、患者が、自身の光学的識別力を鍛えることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,089,712号
【特許文献2】米国特許第3,586,423号
【特許文献3】米国特許第3,701,590号
【特許文献4】米国特許第4,998,817号
【特許文献5】米国特許第7,059,719号
【特許文献6】米国特許第7,147,326号
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
したがって、色盲患者または失読症患者がその障害を治療するための色矯正レンズであって、レンズを外側から見ている人には色合いが識別されず、また、極端に高価でない色矯正レンズが望まれている。本明細書に開示された方法によれば、ハプロスコープフィルタ(haploscopic filter)の組込みは、両方の眼に入るそれぞれの色の波長を、平衡が動的に保たれる形で再同調させ、選択的に変化させるのを助ける。異なる色の使用は、失読症患者または色盲患者が、自身の読む能力、筆記および理解を向上させることを可能にするために、脳の神経経路上の情報の速度を効果的に変化させる。本明細書に開示されたハプロスコープフィルタは、一方または両方の眼に入るそれぞれの色の波長を変化させることによって機能し、そうすることで色知覚および色識別が改善する。
【0006】
本発明は、レンズの処方技術および製造技術に関する。本発明の具体的な用途は、着色されたレンズ(以後、着色レンズ)を処方することを通して、色知覚に欠陥がある人または一般的に知られている色盲患者の色知覚を改善すること、および失読症の症状を軽減することに関する。本発明を、失読症または同様の障害のために読むことが困難な人について読むことを容易にする目的に使用することもできる。さらに、本明細書に開示された方法に従って製造されたレンズまたは処方されたレンズは、多発性硬化症を含むいくつかの神経病での用途、さらには全盲でない視覚障害者での用途を有することができる。その利益には、患者の生産性、機能、読み速度および読み能力、環境的および社会的適応性の向上、自尊心および総体的な幸福感の向上などが含まれる。
【0007】
本明細書に開示された方法に従って製造されたレンズは、可視スペクトルのどの部分を透過させるかを制限するが、それらのレンズは、従来の意味では着色されていない。それらのレンズは、着色レンズと同じように機能するが、レンズを外側から見ている人、すなわち装着者以外の人には、それらのレンズが物理的に着色されているようには見えない。これらのレンズには、レンズを外側から見ている人にはニュートラル(neutral)に見えるような色合いが付けられている。可視スペクトルの一部分の光を反射することにより、ある種の色の外見が生み出されるが、開示されたレンズの場合には、スペクトル全域にわたって等しく光を反射するレンズによって、ニュートラルの外見またはフォトグレー効果(photo−grey effect)が生み出される。したがって、このレンズの臨床的要素、すなわち色矯正は保持され、このレンズは着色レンズとして機能するが、レンズを外側から見ている人には、このレンズがニュートラルな外見を有するように見える。本明細書に開示された方法によれば、患者によって装着されるレンズはそれぞれの眼で異なり、異なる色矯正を使用していることがあるが、レンズを外側から見ている人には、それらのレンズが非常によく似たものに見え、または全く同じに見えるため、このことは、臨床的および美容的に望ましい効果である。
【0008】
このように、本開示の方法は、色矯正を隠し、通常のレンズの外見を提供する方式で患者の色盲を矯正する類のない方法を提供する。本発明の方法は、眼鏡レンズ、ソフトもしくはハードコンタクトレンズ、クリップで留めるタイプのレンズおよび双眼鏡を含むさまざまな眼科レンズ(光がそれを透過して人間の眼に入るレンズ)、またはレンズを使用する他の装置に適用することができる。その眼科レンズはさらに、処方矯正を有していてもよく、または矯正されていなくてもよい。例示的なレンズ処方および製造方法は、このような用途だけに限定されず、その他の用途を有することができ、レンズを通した光透過を選択的に調整する他の目的に適用されることもあることを理解すべきである。
【0009】
例示的な実施形態の一態様によれば、患者の色識別を矯正する目的に使用することができる眼科レンズを製造する方法が、比較的に間隙の多い分子構造を有する材料のレンズを形成するステップと、レンズ分子構造内に浸透する能力を有する眼科染料を用いて、このレンズに、所望の矯正色の色合いを付けるステップと、レンズ分子構造内に浸透する能力およびニュートラルな色合いの外見を有する染料を用いて、このレンズを染色するステップとを含む。
【0010】
他の態様では、眼科レンズを形成する方法が、眼科レンズの形状を有するボディ(body)内に光フィルタリング材料を浸透させるステップと、その後に、ボディ内にマスキング材料を浸透させるステップであり、ボディの第1の領域におけるマスキング材料の濃度と光フィルタリング材料の濃度の比が、第1の領域よりもボディの前面から遠いボディの第2の領域におけるマスキング材料の濃度と光フィルタリング材料の濃度の比よりも高くなり、それによって、マスキング材料が、光フィルタリング材料によってボディに与えられた色合いを覆い隠すように、ボディ内にマスキング材料を浸透させるステップとを含む。
【0011】
例示的な実施形態の他の態様では、眼科レンズを処方する方法が提供される。この方法は、第1の眼と第2の眼の中から利き眼を決定するステップと、患者の利き眼に、第1のレンズセットの各レンズを提示するステップと、第1のレンズセットの中から、利き眼に対する第1の最適レンズを選び出すステップと、患者の利き眼でない方の眼に、第2のレンズセットの各レンズを提示するステップであり、第2のレンズセットが、第1のレンズセットから第1の最適レンズを除いたものであるステップと、第2のレンズセットの中から、患者の利き眼でない方の眼に対する第2の最適レンズを選び出すステップと、第1の最適レンズおよび第2の最適レンズを用いて、患者が装着するための装置を製造するステップとを含む。
【0012】
例示的な実施形態の他の態様では、レンズを処理する方法が提供される。この方法は、光フィルタリング材料でレンズボディを飽和させるステップと、見ている人にはレンズ外面の色がニュートラルに見えるようになるマスキング材料を用いて、レンズ外面に色合いを付けるステップとを含む。添付図面を適宜に参照して以下の詳細な説明を読むことによって、当業者には、これらの諸態様および利点ならびにその他の態様および利点が明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の方法の流れ図である。
【図2】本開示の他の方法の流れ図である。
【図3】本開示のレンズの一部分の断面図である。
【図4】眼鏡で使用するように構成された例示的な一実施形態を示す図である。
【図5】コンタクトレンズとして構成された例示的な一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、レンズ、および該レンズを製造し、処方する方法に関する。このレンズを、色を適正に知覚することができない人間の障害、すなわち色盲を矯正し、または患者の失読症の多くの症状を軽減する目的に使用することができる。例示的なレンズは、レンズを透過する光をフィルタリングして、患者の視力に合わせて調整されたフィルタリングされた光を提供する。このレンズは、その中に光フィルタリング材料を分散させた光学的に透明なベース材料を含むことができる。この光フィルタリング材料は、1種類の色合い染料、または2種類以上の色合い染料の組合せとすることができる。
【0015】
この光フィルタリング材料は、それを外側から見ている人には見えない。光フィルタリング材料の顕現はマスキング材料によって覆い隠される。マスキング材料は、ニュートラルな色合いの染料、例えばわずかな青色、褐色または灰色の色合いを有する染料を含むことができる。このマスキング材料をベース材料内に分散させることができ、マスキング材料は、レンズの表面に向かってより高い濃度で存在することが好ましい。その結果、ニュートラルな色合いが優勢となり、それを外側から見ている人に対してフィルタリング材料を覆い隠す。
【0016】
使用する色合い染料または染料の組合せを厳密に決定するため、患者は、試着手順を実施する。この手順によって、患者は、両眼を開けた状態で、文書を見ながら、利き眼の前にレンズを1枚ずつ保持し、好ましいレンズを強制選択方式によって選び出す。次いで、選び出したレンズを利き眼の前に保持し、両眼を開けた状態で、残りのレンズを患者に提示し、患者に、この残りのレンズの中からこの第2の眼に対する好ましいレンズを選ばせる。
【0017】
例示的な実施形態の一態様では、それぞれの眼に対して、色合いの異なるレンズが提供される。しかしながら、それぞれのレンズは、レンズを外側から見ている人には色矯正の色合いが見えず、そのため、通常のレンズ、すなわち視力矯正レンズと実質的に見分けがつかないようなレンズである。
【0018】
図1を参照すると、適正な色矯正を有するレンズを処方する例示的な一方法は、読みの速度および正確さを評価する試験を被験者に課すことを含む。この評価は、当技術分野ではよく知られており、文書化もされているWilkinsのRate of Reading試験に基づくことができる。さらに、この評価の予備的部分として、ステップ60で、両眼患者(binocular patient)の利き眼を決定することが望ましい。両眼患者とは両眼を使用している人である。実際には、この決定は、自由選択方式を使用して実施することができる。この目的には、望遠鏡などの装置を使用することができる。望遠鏡は、ボール紙または厚紙でできた単純な約30cm(1フィート)の管、または他の同種の装置である。次いで、望遠鏡を通して片眼で遠くの物体を見るように患者に指示することができる。自由な選択を与えられた被験者は、利き眼に望遠鏡を当てることを選択する。望遠鏡を通して見るために被験者が選んだ方の眼を利き眼として記録する。次いで、ランダムに配列された字句(テキスト)を被験者に示し、被検者はステップ62でそれに焦点を合わせる。この字句は、紙に印刷し、壁に投影し、または他の方法で患者に示すことができる。次いで、両眼を開き、被験者に提示された、好ましくは被験者の正面に提示された字句に焦点を合わせた状態で、被験者の利き眼だけに、一連の16枚の着色レンズを対方式で示し、ステップ64で、被験者に、好ましいレンズを選び出すよう求める。このように、被験者は、一連の16枚のそれぞれのレンズを試し、利き眼に対して最適なレンズを選び出す。それぞれのレンズは、対方式で、すなわち一連のレンズの中の他のレンズと対で、被験者に提示されることが好ましい。レンズは、可視スペクトルを横切る等距離の点から選択される。すなわち、診断セットに対して使用されるレンズは、約390nmから750nmまでの可視スペクトルを横切って等間隔に配置されたおよそ16の点の光を透過させるが、可視スペクトルの短波長(青)端の方にわずかに偏っている。
【0019】
次いで、ステップ66で、この最適なレンズを利き眼の前に保持し、両眼を開けた状態で、被験者の利き眼でない方の眼の前に、一連のレンズのうちの残りの15枚の着色レンズをそれぞれ示す。残りの15枚のレンズも同様に、対方式で被験者に提示することができる。被験者は再び、一連のレンズの中の利き眼でない方の眼に対して最適なレンズを強制的に選び出す。最後に、ステップ68で、被験者は、読みの速度および正確さの評価を繰り返し、ステップ70で、その結果を最初の結果と比較する。このように、適正な色矯正を有するレンズを処方する例示的な一実施形態によれば、それぞれの眼に対する最適なレンズは、一連の16枚の着色レンズの中の異なるレンズである。
【0020】
このような評価に対しては、16枚のレンズからなる市販の診断セットを使用することができる。それぞれのレンズのスペクトル透過が、そのレンズの固有の特性を決定するが、容易に識別されるように、それらのレンズには、対応する番号または略号を標識として付けることができる。例えば、診断セットは以下のレンズを有することができる。
【0021】
【表1】

【0022】
レンズを製造する本発明に基づく例示的な一方法は、所望の色矯正を提供するために、十分な間隙がある分子構造、または間隔が十分に開いた分子構造を有する矯正レンズに色合いを付けることを含む。レンズに色合いを付けるため、すなわちレンズ内への色合い染料の吸収を可能にするために、染料を加熱することができる。染料を加熱する必要があるのか、またはないのか、および染料をどのくらいの時間加熱するのかは主に、使用する特定の染料に依存する。加熱を必要とする市販の染料には加熱および適当な温度に関する説明書が付属している。通常、染料は80℃以上に加熱される。色合い染料は、レンズ内でフィルタリング材料の働きをする。次いで、色合いが付けられたこのレンズに、通常のレンズ、またはサングラスのように薄く色合いが付けられたレンズの外見を与えるため、このレンズを、ニュートラルな色合いの染料(以後、ニュートラル色合い染料)で染色することができる。
【0023】
本発明に基づく例示的な一実施形態では、上記の工程に従って色合い染料を加熱する。レンズを加熱された染料と接触させると、加熱された染料はレンズを加熱する。例えば、レンズを染料に浸すことができる。浸す時間は主に、レンズの色、材料および厚さに依存する。厚さは通常、レンズの屈折力によって決まり、屈折力が高いレンズほど厚くなる。浸す時間は平均7から15分である。したがって、レンズは、色合い染料が浸透するのに適した温度、一般に約93℃ないし96℃(200°Fから205°F)まで加熱される。レンズを加熱すると、レンズを、色合い染料に対して浸透性にすることができる。次いで、ニュートラル色合い染料に対して同じ手順を繰り返す。一般に約2分間、レンズを冷やした後、ニュートラル色合い染料と接触させる。ニュートラル色合い染料も加熱することができる。ニュートラル色合い染料の加熱に続いて、色合い染料に関して上で説明した工程と同じ工程を実行する。ニュートラル色合い染料は、レンズを外側から見ている人に対してレンズの色矯正特性を覆い隠すマスキング材料として機能する。染料の浸透速度は主に、染料の濃度、染料の温度、およびレンズを染料にさらす時間の長さに依存する。
【0024】
フィルタリング材料およびマスキング材料を浸透させる他の方法も企図される。本発明の他の態様では、フィルタリング材料およびマスキング材料を、真空下で、または積層によって、レンズのベース材料内へ逐次的に浸透させる。
【0025】
フィルタリング材料(色合い染料)は、レンズを透過する可視光の透過スペクトルを変更する適当な任意の材料とすることができる。一般に、可視スペクトルの範囲は約400から700nmである。フィルタリング材料は、少なくとも400nmから700nmの間のスペクトル領域の光の透過を、例えば選択されたある可視スペクトル波長範囲内の光の主要部分を選択的に吸収することによって変更する材料とすることができる(例えば、フィルタリング材料は、選択された波長範囲内の光の内、少なくとも50%の光の透過を妨げる)。フィルタリング材料を含むレンズは、選択された範囲の外側の波長の光を実質的に全て透過させることができる(例えば選択された範囲の外側の光の少なくとも80%を透過させる)。フィルタリング材料は、光吸収のピークが650〜475nmの範囲にある色合い染料を有することがあり、それにより、色盲ではない人がレンズを外側から見たときに、レンズを透過した光が、赤、青または緑の色合いを有することがある。
【0026】
しかしながら、色盲の人に関して言えば、変更された光は、その色盲患者が、ある色をより容易に見ることを可能にする。例えば、赤色透過フィルタリング材料を含むレンズの場合には、透過した光が、約600nmに透過カットオフを有することができ、約600〜650nmの波長の多くが透過し、約450〜600nmの波長の多くが除去される。フィルタリング材料は、レンズを外側から見ている人にははっきりと知覚されるであろう着色された色合いをレンズに与えることがある(マスキング材料がない場合)。この例示的な実施形態では、フィルタリング材料が、浸透材、すなわち製造中にレンズボディの分子構造内に浸透することができる材料として調製される。浸透材として作用するように、フィルタリング材料として選択された染料の分子を、溶媒などの液体担体材料中に細かく分散させることができ、このような染料分子は、レンズボディの分子構造内に浸透する十分に小さいサイズの分子とすることができる。溶媒と染料の混合物を加熱すると、レンズ内へのフィルタリング材料の浸透が容易になる。
【0027】
マスキング材料は、実質的に透過性の、すなわち可視スペクトル範囲全体にわたって入射光のうちのかなりの割合、約60パーセント以上を十分に透過させる半透明のニュートラル色合い染料とすることができる。具体的には、ニュートラル色合い材料は、可視範囲全体にわたって光を概ね均一に吸収する材料である(例えば450から650nmの間の波長の光の少なくとも約80%を透過させる)。
【0028】
この例示的な実施形態では、マスキング材料が、浸透材、すなわち製造中にレンズボディの分子構造内に浸透することができる材料として調製される。例示的な一実施形態によって、マスキング材料を適用する前にレンズを加熱し、それによってレンズを、マスキング材料の粒子に対してより浸透性にすることも企図される。同様に、マスキング材料を加熱することもできる。
【0029】
例示的な一実施形態によれば、マスキング材料がレンズの外面付近に集められることが好ましい。レンズの外面付近にマスキング材料を集めることによって、レンズを外側から見ている人に対して、フィルタリング材料の色合いの影響が覆い隠され、レンズの外見が通常のレンズのそれになる。したがって、このレンズは、可視スペクトルのある部分の透過を制限するが、従来のように着色されてはいない。このレンズは、通常の着色レンズと同じように機能するが、ニュートラルに見えるように処理されているため、レンズを外側から見ている人には着色されているように見えない。可視スペクトルの一部分の光を反射することによって、外側から見るとある色が見え、スペクトルを横切って光を等しく反射するレンズによって、ニュートラルな外見またはフォトグレー効果が生み出される。このことによって、それぞれのレンズの基礎をなす色矯正特性が異なり、その特性が、異なる色に着色されたフィルタリング材料を使用することによって達成されるときであっても、ニュートラルに見え、さらに互いに実質的に同じに見える2枚のレンズを被験者に提供することができる。
【0030】
正常な視力を有する人が外側から見たときに、マスキング材料として選択されたニュートラル色合い染料が、選択された特定のニュートラル色合い染料に応じて、わずかな青、灰色または褐色の色合いを有することがある。マスキング材料は、フィルタリング材料によって導入される一切の色合いを覆い隠すのに十分な濃度でレンズ内に存在する。このようにすると、一方のレンズが、可視スペクトルの第1の領域、例えば赤領域の光の多くを透過させるフィルタリング材料を含み、もう一方のレンズが、第2の領域、例えば緑領域の光の多くを透過させるフィルタリング材料を含む、患者によって装着された一対のレンズは、レンズを外側から見ている人に対して、実質的に同じニュートラルな色合いの外見を有することができる。
【0031】
色盲を矯正する例示的な色合い染料はよく知られており、例えば米国特許第3,586,423号、第3,701,590号、第4,998,817号、第6,089,712号および第7,059,719号に開示されている。例示的な色合い染料には、アゾ染料、触媒(反応)染料および硫化染料、ならびにコンタクトレンズで使用することがFDAによって許可された染料が含まれる。例示的なニュートラル色合い染料には、サングラスの形成で使用される染料、およびコンタクトレンズで使用することがFDAによって許可された染料が含まれる。
【0032】
さらに、例示的な一実施形態によれば、マスキング材料および/またはフィルタリング材料として、水ベースの染料を使用することができる。水ベースの染料の場合には、染料分子が、染料が混合された水の中に留まることなく、レンズベース材料内に優先的に入ることを可能にするため、マスキング材料およびフィルタリング材料に対して選択される染料を疎水性とすることができる。レンズ内への浸透を容易にするため、このような染料を加熱することができる。また、フィルタリング材料およびマスキング材料として使用するのに適した触媒染料は、Brain Power International(英Worcestershire)から入手することができる。
【0033】
本発明の例示的な一実施形態によれば、レンズに対して使用することができる例示的なベース材料には、例えばCR39(登録商標)組成物として広く知られているジエチレングリコールビス(アリルカーボナート)、ポリカーボナート、Perspex、これらの組合せまたは他のレンズ形成材料などの光学的に透明なポリマー材料が含まれる。いくつかの実施形態では、ベース材料が、拡散によるフィルタリング材料および/またはマスキング材料の浸透を許し、浸透した材料をベース材料内に保持する材料である。ベース材料は、フィルタリング材料および/またはマスキング材料と化学結合を形成し、または他の方法でその3次元構造内に染料分子を保持することができる。一般に、ガラスは、液体染料溶液からのフィルタリング材料およびマスキング材料の浸透を許さない。
【0034】
コンタクトレンズの場合、ポリマー材料は、水を吸収し、その水を平衡状態で保持することができる橋かけポリマー系であるヒドロゲル共重合体など、適当な任意のレンズ形成ポリマーを含むことができる。ヒドロゲル共重合体は一般に、少なくとも1種類の親水性単量体と橋かけ剤とを重合させることによって形成される。代表的な親水性単量体には、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸;2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートなどの(メタ)アクリル酸置換アルコール;N−ビニルピロリドンなどのビニルラクタム;およびメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのメタクリル(アクリル)アミドなどがある。一般的な橋かけ剤には、ポリビニル単量体、一般に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキサン−1,6−ジオールのジまたはトリメタクリラート(アクリラート)、ジビニルベンゼンなどのジまたはトリビニル単量体などがある。ヒドロゲル形成単量体混合物の具体的な例は、主に2−ヒドロキシエチルメタクリラートからなり、少量のジエチレングリコールジメタクリラートを橋かけ単量体として含むポリマコン(polymacon)である。シリコーンヒドロゲル共重合体を形成するために、この単量体混合物は、任意選択で、シリコーン含有単量体を含むことができる。シリコーン含有単量体の例には、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリラート、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシラン、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバマート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルボナートなどの単一の活性不飽和基を含む単量体、およびエチレンによって「末端がキャップされた(end−capped)」多官能性シロキサン含有単量体、特に2つの活性不飽和基を有する二官能性単量体などが含まれる。例えば米国特許第7,147,326号を参照されたい。当技術分野では、他の多くのレンズ形成単量体およびその特定の共重合体がよく知られており、それらも本発明によって企図される。
【0035】
例示的な一実施形態では、フィルタリング材料および/またはマスキング材料として使用する染料を、水、有機溶媒などの適当な溶媒に溶解したその染料の溶液から、レンズのベース材料内へ浸透させることができる。他の実施形態では、レンズ材料の重合中に、フィルタリング材料をレンズ材料内へ混入することができる。
【0036】
図2を参照すると、矯正レンズを製造する方法の一例が示されている。ステップ10で、レンズ製造分野で知られている任意の技法によって、眼科用品質の透明なベース材料から、患者の特定の眼に対する矯正レンズボディを形成する。このレンズは、眼鏡レンズとして形成し、あるいはソフトまたはハードコンタクトレンズとして形成することができる。いくつかの実施形態では、このレンズを機械加工し、または他の方法で成形して、近視または遠視に対する処方矯正などの屈折矯正を提供する。いくつかの実施形態では、一切の処方矯正なしにレンズが形成される。
【0037】
この方法は次いでステップ12へ進み、染料または染料溶液を、色合い染料が浸透するのに適した温度、例えば約95℃(205°F)〜118℃(295°F)のある温度まで加熱する。次いで、ステップ14で、色合い染料を用いて、レンズベースに、所望の矯正色の色合いを付ける。温度を高くすることによって、染料の浸透速度および/またはベース材料が吸収することができる染料の量を増大させることができる。この温度は一般に、反り、融解または他の変形によってレンズが損傷する可能性がある温度よりも低くなるように、かつ染料を含む溶媒の沸点よりも低くなるように選択される。このレンズを、染料がベース材料に浸透するのに十分な時間、例えば約15〜30分間、加熱された色合い染料に浸し、または他の方法で加熱された色合い染料と接触させる。
【0038】
選択される染料は、特定の装着者およびその人の特定の色盲に依存する。すなわち、選択される染料は、どの色が排除されているのかに依存する。色合い染料には、容易に入手可能なものもあり、2つ以上の色合い染料の混合物であって、研究室技師による混合を必要とするものもある。色の質および色の一貫性を保証するために、分光光度計を使用してもよい。レンズボディ内に色合い染料を浸透させた後、色合いが付けられたレンズボディを色合い染料から取り出す。取り出したレンズは、レンズがレンズボディ内の色合い染料を硬化させ、または他の方法で色合い染料をレンズボディ内に固定するのに十分な時間放置して、冷やすことができる。
【0039】
ステップ16で、このレンズに、冷却のための時間を与えることができる。この時間は通常約2分である。次いで、色合いが付けられたレンズにマスキング材料を適用する。これに関しては、この色合いが付けられたレンズに、ニュートラル色合い染料を用いて色合いを付ける。ステップ20で、ニュートラル色合い染料もしくはその溶液にレンズを浸し、または他の方法でニュートラル色合い染料もしくはその溶液をレンズと接触させる前に、ステップ18で、ニュートラル色合い染料(もしくはその溶液)を加熱することができる。
【0040】
一実施形態では、フィルタリング材料および/またはマスキング材料の浸透を周囲圧力で実施する。他の実施形態では、この浸透工程を、真空下でまたは積層によって実施する。
【0041】
ステップ20のニュートラル色合い染料での染色に続いて、ステップ22で、眼鏡レンズを製造した場合にはレンズを眼鏡に取り付け、またはコンタクトレンズを形成した場合には使用者がレンズを装着する。
【0042】
眼鏡としてまたはコンタクトレンズとして2枚のレンズが装着される場合には、それぞれのレンズに対して、異なる矯正色を提供する異なるフィルタリング材料を使用することができる。他の実施形態では、両方のレンズが同じフィルタリング材料を含む。両方のレンズに同じマスキング材料を使用することができる。
【0043】
フィルタリング材料がレンズのベース材料内に浸透するときには、フィルタリング材料が、レンズの表面から、ベース材料内の少なくとも第1の深さまで浸透することが観察されており、したがって、図2の発明は、フィルタリング材料がレンズのベース材料内に浸透するときに、フィルタリング材料が、レンズの表面から、ベース材料内の少なくとも第1の深さまで浸透することを企図し、記述する。しかしながら、フィルタリング材料が、それよりも長い時間、染料と接触した状態に置かれた場合には、フィルタリング材料がレンズボディ全体に浸透する可能性もある。その後に、フィルタリング材料で既に処理されたレンズ内にマスキング材料を浸透させると、マスキング材料の多くはレンズの表面付近に留まる。これは、既にレンズ内にあるフィルタリング材料粒子が、レンズ深部へのマスキング材料の浸透を妨げるためである。
【0044】
したがって、処理されたレンズ内のマスキング材料の濃度勾配とフィルタリング材料の濃度勾配は異なる。例えば、レンズの表面付近のマスキング材料の濃度とフィルタリング材料の濃度の比が、レンズの表面からより離れた領域のマスキング材料の濃度とフィルタリング材料の濃度の比よりも大きいことがある。マスキング材料の濃度は、ベース材料1ccあたりのニュートラル色合い染料の総モルとして表現することができる。フィルタリング材料の濃度は、ベース材料1ccあたりの色合い染料の総モルとして表現することができる。
【0045】
図3を参照すると、全体が30で示された眼鏡レンズ、コンタクトレンズなどのレンズの一部分は、ベース材料から形成された眼科ベース32を含み、その内部には色合い染料分子34が分散している(記号「−」によって示されている)。ベース材料内にはニュートラル色合い染料分子36(記号「+」によって示されている)が分散している。ニュートラル色合い染料分子の多くは、互いに反対側にあるレンズの外面42、44に隣接して位置する表面領域38、40の内の一方または両方の表面領域に集められる。表面42は、患者の眼の近くに配置されるレンズ30の後面であり、表面44は、患者の眼から遠くに配置され、したがって、レンズを外側から見ている人に近いレンズの前面である。前述のとおり、色合い染料は、可視スペクトルの所望の部分または所望の色度帯(chromaticity band)だけに対して透過性である眼科染料とすることができ、ニュートラル色合い染料は、可視スペクトルを横切って均一な透過性を有する眼科染料とすることができる。マスキング材料およびフィルタリング材料を浸透させるベース32は、積層したりまたはコーティングしたりすることなく、例えば成形によって、単一片として一体に形成され、任意選択で、その後に、旋盤による整形または他の整形にかけられる。
【0046】
色合い染料分子34は、レンズベース材料32全体に分散させることができ、または表面領域38、40によってそれぞれレンズ表面から離隔された領域46、48内にその多くを分布させることができる。したがって、領域38および40の方が、対応するそれぞれの隣接領域46、48よりもそれぞれ、後面および前面に近い。領域38および40は、対応するそれぞれの表面42、44に対して概ね平行に延びる。図3は、これらの領域38、40を、マスキング分子36だけを含む領域として示しているが、この領域は、フィルタリング分子34の一部も含むことがあることを理解すべきである。しかしながら、一般に、少なくとも表面付近においては、フィルタリング分子34の数があまりに少ないため、ニュートラルな色合いのレンズの外見に影響を与えることはない。
【0047】
この図示の実施形態では、レンズの表面44に近い領域40のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比が、レンズの表面44から遠い隣接領域48のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比よりも大きい。同様に、レンズの表面42に近い領域38のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比は、レンズの表面42から遠い隣接領域46のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比よりも大きい。ただし、必ずそうでなければならないというわけではない。一実施形態では、第2の領域48の着色染料34の濃度が第1の領域40の着色染料34の濃度よりも高い(さらに、領域46の着色染料34の濃度を領域38の着色染料34の濃度よりも高くすることができる)。第1の領域40のニュートラル色合い染料36の濃度は、対応する第2の領域48のニュートラル色合い染料36の濃度よりも高い(さらに、任意選択で、領域38のニュートラル色合い染料36の濃度を領域46のニュートラル色合い染料36の濃度よりも高くすることができる)。異なる染料間の所望の濃度変動は、それらの染料を別個の色合い浴内で別々に加熱し、染料にレンズを浸す時間(またはレンズと染料とを接触させる他の方法の持続時間)を所望の効果に到達するように操作することによって達成される。
【0048】
レンズ内の染料粒子の分布は、染料にレンズを浸す時間、染料粒子のサイズ、またはレンズマトリックスのサイズによって制御される。レンズを加熱するとレンズは膨張し、染料の吸収が容易になる。染料の逐次適用も、染料の分布の制御を助ける。この好ましい実施形態では、マスキング材料を適用する前に色合い染料を適用する。したがって、レンズ内の色合い染料粒子の飽和は、マスキング材料の過剰吸収を防ぐ。通常、レンズを色合い染料に浸す時間は、レンズをマスキング材料に浸す時間よりも長い。したがって、例示的な実施形態では、レンズボディの色合い染料濃度は、表面の色合い染料濃度よりも高い。同様に、表面のマスキング材料濃度は、レンズボディのマスキング材料濃度よりも高い。
【0049】
図4を参照すると、フレーム64に取り付けられて、全体が66で示された眼鏡を形成した、色合いが異なる本開示に基づく一対のレンズ60、62の例示的な一実施形態が示されている。
【0050】
他の実施形態では、レンズベース32が、図3に示したような一体の単一層としてではなく、層を積層することによって形成される。例えば、レンズは、ニュートラル色合い染料を含む第1のベース層と、第1のベース層よりも装着者の近くに配置される第2のベース層とを含むことができる。例えば、第1のベース層を形成し、第1のベース層に第2のベース層を積層するか、もしくは第1のベース層を第2のベース層でコーティングすることにより、または第2のベース層を形成し、第2のベース層に第1のベース層を積層するか、もしくは第2のベース層を第1のベース層でコーティングすることにより、第1のベース層を第2のベース層とは別個のステップで形成することができる。例えば、矯正レンズの基礎をなす色合いを隠すために、色識別を矯正するレンズに、ニュートラルな色の外見を有するコーティングなどの別個のコーティングまたは積層を適用する。
【0051】
図5を参照すると、コンタクトレンズなどの例示的なレンズが、全体を70として示されており、このレンズは、装着者の眼から遠い側に置かれる湾曲した前外面72と、装着者の眼に近い側に配置される湾曲した後外面74と、第1の面と第2の面の中間にあるボディ76とを備える。レンズボディは、前面に最も近い第1の領域または層78と、第1の領域によって前面から離隔された第2の領域または層80とを含む。平均して、レンズの前面72に近い領域78のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比は、レンズの前面から遠い領域80のマスキング材料36の濃度とフィルタリング材料34の濃度の比よりも大きい。さらに、第2の領域80の着色染料の濃度を、第1の領域78の着色染料の濃度よりも高くすることができる。第1の領域78のニュートラル色合い染料の濃度を、第2の領域80の着色染料の濃度よりも高くすることができる。
【0052】
このように、本開示は、患者の色盲を矯正し、または失読症の症状を軽減する目的に使用することができるレンズを製造する類のない低コストの技法を記述し、このレンズは、コンタクトレンズとして、または眼鏡に取り付けられて装着されたときに、ニュートラルな色合いが付けられたレンズの外見を与え、その他の点では、その色矯正と通常の矯正レンズとを見分けることはできない。
【0053】
以上に、さまざまな例示的な実施形態を説明した。しかしながら、特許請求の範囲から逸脱することなくそれらの例に変更および改変を加えることができることを当業者は理解するであろう。
【符号の説明】
【0054】
30 レンズ
32 眼科ベース
34 色合い染料分子、フィルタリング分子
36 ニュートラル色合い染料分子、マスキング分子
38 表面領域
40 表面領域
42 外面
44 外面
46 レンズ表面から離隔された領域
48 レンズ表面から離隔された領域
60 レンズ
62 レンズ
64 フレーム
66 眼鏡
70 レンズ
72 前外面
74 後外面
76 ボディ
78 第1の領域または層
80 第2の領域または層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを製造する方法であって、
(a)比較的に間隙の多い分子構造を有する材料のレンズを形成するステップと、
(b)前記レンズ分子構造内に浸透する能力を有する眼科染料を用いて、前記レンズに、所望の矯正色の色合いを付けるステップと、
(c)前記レンズ分子構造内に浸透する能力を有する染料を用いて前記レンズを染色するステップであり、前記染料の外見がニュートラルであるステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、色合いを付ける前記ステップがさらに、前記染料と前記レンズの内の一方を加熱するステップと、前記レンズを前記染料に浸すステップとを含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記レンズに色合いを付ける前記ステップが最初に実行され、染色する前記ステップがその後に実行される方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、染色する前記ステップが、色合いを付ける部位から離れた部位を染色するステップを含む方法。
【請求項5】
両眼患者に対してレンズを処方する方法であって、
第1の眼と第2の眼の中から利き眼を決定するステップと、
前記患者の前記利き眼に、第1のレンズセットの各レンズを提示するステップと、
前記第1のレンズセットの中から、前記利き眼に対する第1の最適レンズを選び出すステップと、
前記患者の利き眼でない方の眼に、第2のレンズセットの各レンズを提示するステップであり、前記第2のレンズセットが、前記第1のレンズセットから前記第1の最適レンズを除いたものであるステップと、
前記第2のレンズセットの中から、前記患者の利き眼でない方の眼に対する第2の最適レンズを選び出すステップと、
前記第1の最適レンズおよび前記第2の最適レンズを用いて、前記患者が装着するための装置を製造するステップと
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記第1のレンズセットが、重複しないように着色された16枚のレンズを含む方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記利き眼に対する前記第1の最適レンズを選び出す前記ステップが、16枚の全てのレンズを提示するステップと、16枚のレンズの中から前記第1の最適レンズを選び出すステップとを含む方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記第2のレンズセットの中から、前記患者の利き眼でない方の眼に対する前記第2の最適レンズを選び出すステップが、残りの15枚の全てのレンズを提示するステップと、前記残りの15枚のレンズの中から前記第2の最適レンズを選び出すステップとを含む方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、前記第1の最適レンズが前記第2の最適なレンズとは異なる方法。
【請求項10】
眼科レンズを形成する方法であって、
前記レンズの形状を有するボディ内に光フィルタリング材料を浸透させるステップと、
その後に、前記ボディ内にマスキング材料を浸透させるステップであり、前記ボディの第1の領域における前記マスキング材料の濃度と前記光フィルタリング材料の濃度の比が、前記第1の領域よりも前記ボディの前面から遠い前記ボディの第2の領域における前記マスキング材料の濃度と前記光フィルタリング材料の濃度の比よりも高くなるようにし、それによって、前記マスキング材料が、前記光フィルタリング材料によって前記ボディに与えられた色合いを覆い隠すように、前記ボディ内に前記マスキング材料を浸透させるステップと
を含む方法。
【請求項11】
眼科レンズを形成する方法であって、
(a)眼科材料の第1の層を形成するステップと、
(b)眼科染料を用いて、前記第1の層に、所望の矯正色の色合いを付けるステップと、
(c)ニュートラルな色の外見を有する第2の層を形成し、前記第1の層と前記第2の層を積層し、それによってレンズを形成するステップと
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、積層する前記ステップが、ニュートラルな色合いの染料を用いて、前記第2の層に色合いを付けるステップを含む方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記第1の層を形成する前記ステップが、間隙の多い分子構造を有する材料の前記第1の層を形成するステップを含む方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、色合いを付ける前記ステップが、前記染料と前記第1の層の内の一方を加熱するステップと、前記層を前記染料に浸すステップとを含む方法。
【請求項15】
レンズを処理する方法であって、
光フィルタリング材料でレンズボディを飽和させるステップと、
見ている人にはレンズ外面の色がニュートラルに見えるようになるマスキング材料を用いて、前記レンズ外面に色合いを付けるステップと
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、光フィルタリング材料で前記レンズボディを飽和させる前記ステップが、前記光フィルタリング材料と前記レンズの内の一方を加熱するステップを含む方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記マスキング材料が前記レンズ外面に集められる方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記光フィルタリング材料が前記レンズボディ全体に分布する方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記レンズ外面における前記マスキング材料の濃度が、前記レンズボディ全体の前記マスキング材料の濃度よりも実質的に高い方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、見ている人にはレンズ外面の色がニュートラルに見えるようになるマスキング材料を用いて、前記レンズ外面に色合いを付ける前記ステップが、前記マスキング材料と前記レンズの内の一方を加熱するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215808(P2012−215808A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−197270(P2011−197270)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511220913)クロマジェン・ヴィジョン・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】