説明

色材とその製造方法、並びにその色材を用いたインク、電気泳動粒子、電気泳動型表示装置及びカラーフィルタ

【課題】鮮やかな発色と分散性、耐候性等に優れた色材とその用途を提供する。
【解決手段】本発明の色材は、メソ細孔を有する多孔体と、前記メソ細孔の壁面に形成されたアニオン交換サイトと、該アニオン交換サイトに結合したアニオン性色素から構成される。その場合に、前記メソ細孔を有する多孔体が、X線回折分析において1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有し、かつ、上記多孔体の細孔壁がシリコン酸化物と一つ以上の炭素原子を有する有機基より構成されており、さらに前記有機基がシリコン原子と2箇所以上で結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材に関するものである。本発明は、詳しくは記録や表示に広く使用される色材粒子、色材薄膜、及びその製造方法、さらにその応用に関するものである。本発明は、より詳しくは、表面を修飾した多孔質シリカ−有機物複合体の微粒子及び薄膜に、均一かつ多量にアニオン色素を担持させて作製した色材粒子及び色材薄膜とそれらの製法、さらに該色材粒子を含む組成物及びインク、該色材粒子より構成されるカラー電気泳動粒子とそれを利用した電気泳動型表示装置、該色材薄膜より構成されるカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等のデジタル情報機器の発達に伴い、その出力装置である印刷装置や表示装置の重要度も増しており、更なる高性能高機能化が求められている。具体的には、両者共に更に鮮やかな色再現能力が求められると共に、印刷装置には耐候性の高い印刷物を印字する事が、表示装置には低消費電力かつ薄型にする事が求められており、これらの要求に合わせた印刷装置、表示装置等の研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
印字装置に関しては、上記ニーズへ対応するためにインク突出ノズルの小型化高密度化といったハードの改良、プリンタドライバのアルゴリズムの改良といったソフトの改良と共に、インクの改良が続けられている。例えば、特許文献1には無色のインクを吹き付け、その上に色の付いたインクを吹き付けて、普通紙の上で両者を反応させて耐水性を向上させる方法が提案されている。また、特許文献2には、帯電した粒子表面に水性インクを付着させることで、にじみや混色(ブリーディング)を抑える方法が提案されている。
【0004】
また、表示装置に関しては、低消費電力、眼への負担軽減などの観点から反射型表示装置が期待されている。その1つとして、Harold D. Lees等により発明された電気泳動表示装置(特許文献3)が知られている。従来の電気泳動表示装置の構成及びその動作原理を図3に示す。この装置は、帯電した電気泳動粒子31と着色色素が溶解された電気泳動用分散媒32とこの分散媒を挟んで対峙する一組の電極33、34からなっている。各素子間には、上下基板の間隔を一定に保つため及び電気泳動粒子の素子間の偏りを防止するためのスペーサー兼隔壁35が形成されている。駆動は、電極33、34を介して電気泳動用分散媒32に電圧を印加することにより、電気泳動粒子31を粒子自身の持つ電荷と反対極性の電極に引き寄せて行う。表示はこの電気泳動粒子31の色と、電気泳動粒子の色相と異なる着色色素が溶解された電気泳動用分散媒32の色によって行われる。図3には二つの表示状態を示した。
【0005】
電気泳動粒子に関する提案はいくつか存在する。たとえば、特許文献4に、電気泳動粒子として、金属酸化物コロイド粒子を用いる方法が開示されている。さらに、電気泳動粒子の沈降分離を防ぎ、長時間にわたる良好な分散を維持するために、多孔質材料を用いて電気泳動粒子の比重を小さくするという提案がなされており、特許文献5には、多孔質有機材料に無機酸化物をコーティングした電気泳動粒子が、さらに、特許文献6には、表面に顔料成分を有し内部に空隙を有する微粒子が開示されている。
【0006】
電気泳動粒子以外の着色粒子に関しては、特許文献7に、メソポーラスシリカに染料を保持させた着色用組成物に関する記載がある。
【0007】
色材は、粒子状のものに限らず、膜状のものも幅広く使用されている。例示すると、液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタ等がある。
【特許文献1】特開平8−039795号公報
【特許文献2】特開2001−199151号公報
【特許文献3】米国特許第3612758号公報
【特許文献4】特開平2−141730号公報
【特許文献5】特開平2−24633号公報
【特許文献6】特開2000−227612号公報
【特許文献7】特開2000−202280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印字装置に関しては、インクだけに限ってもいくつかの問題がある。すなわち、カラーインクの大部分には染料が用いられているが、にじみ、混色、耐候性などを考慮すると微細色素粒子である顔料系が有利である。しかし、発色の鮮やかさでは染料に劣るため、染料の高い発色性を維持したまま微粒子のような固形形状にしたカラー粒子インクが望まれている。
【0009】
また、電気泳動型表示装置の電気泳動粒子に関する問題点もいくつかある。例えば、多孔質有機材料に無機酸化物をコーティングした粒子の場合には、表面の顔料層が厚くなると比重が大きくなり分散性が損なわれ、逆に顔料層が薄いと十分な着色が得られないという、相反する問題が生じる。また、多孔質顔料着色粒子の場合には、材質が限定されてしまうために色調に限定が加わること、色調を変えるには顔料の材質を変える必要があるため、粒子の帯電量が色によって大きく変わってしまうこと等の問題点がある。顔料粒子を使用した場合、発色の鮮やかさが問題になるのはインク応用の場合と共通の問題である。また、多孔質の顔料粒子は、機械的強度が小さく、多孔質粒子を形成している顔料微粒子が分離し、結果的に比重の大きな非多孔質の微粒子を形成し、表示特性に悪影響を及ぼすという問題点があった。このため、比重が小さく、均質性、着色性に優れた粒子が望まれている。
【0010】
また、カラーフィルタに関しては、発色をより鮮やかにするために、ガラスなど無機素材の表面により大量の染料を結合させ、かつ安定に保持する方法の開発が望まれている。
【0011】
このような背景において、メソポーラス材料のような多孔質物質に染料を担持させた粒子や膜が、インク粒子、電気泳動粒子及びカラーフィルタに適していると期待されるが、従来のメソポーラスシリカへ染料を担持する技術に関しては、シリカの表面に何も処理を施さない場合には、粒子表面に十分な正電荷が生じないため、工業的にインク用染料として最も広く用いられているアニオン性色素を良好に吸着できないという大きな欠点を有していた。
【0012】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、インク、電気泳動粒子、カラーフィルタとして使用した場合鮮やかな発色と分散性、耐候性等に優れた特性を示す色材を提供することにある。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、色材として使用するに十分な着色を示す着色シリカ−有機物複合材料多孔質粒子及び膜を提供することであり、またこれらの着色シリカ−有機物複合材料多孔質粒子及び膜の製造方法を提供することである。
【0014】
また本発明の課題は、上記のような着色シリカ−有機物複合材料多孔質粒子からなり、鮮やかな発色性とにじみや混色が少なく耐候性に優れた色材粒子を含んで構成されたインクを提供することである。
【0015】
また本発明の課題は、上記のような着色シリカ−有機物複合材料多孔質粒子から構成され、微視的に均質で、比重が小さく分散性に優れた電気泳動粒子及び前記電気泳動粒子を用いた電気泳動型表示装置を提供することである。
【0016】
また本発明の課題は、上記のような着色シリカ−有機物複合材料多孔質膜から構成され、鮮やかな発色性と耐候性に優れた膜より構成されたカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような技術的背景により、本発明者らは、上記課題に対して種々の検討を加えた結果、均一な径のメソ細孔を有する、シリカ−有機物複合材料から形成される多孔質物質の表面に、アニオン交換サイトを形成し、該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させることによって、工業的に優れた色材となることを見出し、本発明に至った。
【0018】
すなわち本発明は、メソ細孔を有する多孔体と、前記メソ細孔の壁面に形成されたアニオン交換サイトと、該アニオン交換サイトに結合したアニオン性色素から構成される色材であって、前記メソ細孔を有する多孔体が、X線回折分析において1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有し、かつ、上記多孔体の細孔壁がシリコン酸化物と一つ以上の炭素原子を有する有機基より構成されており、さらに前記有機基がシリコン原子と2箇所以上で結合していることを特徴とする。
【0019】
前記メソ細孔を有する多孔体において、特に前記メソ細孔の径の分布が窒素ガス吸着測定により求められたものであり、前記分布が単一の極大値を有し、且つ60%以上の前記メソ細孔の孔径が10nmの幅を持つ範囲に含まれることが好ましい。
【0020】
また、前記アニオン交換サイトを形成する原子団が上記多孔体の壁面に対して共有結合で結合していることが好ましい。
【0021】
前記アニオン交換サイトを形成する原子団は、上記多孔体の無機酸化物部に対して共有結合で結合していることが特に好ましい。
【0022】
本発明の色材の好ましい形態は、粒子状の形態である。
【0023】
本発明の組成物の好ましい形態は、前記粒子状の形態の色材から構成される組成物である。
【0024】
本発明のインクの好ましい形態は、前記粒子状の形態を有する色材から構成されるインクである。
【0025】
本発明の電気泳動粒子の好ましい形態は、前記粒子状の形態を有する色材から構成される電気泳動粒子である。
【0026】
本発明は、さらに、上記電気泳動粒子と、該電気泳動粒子を分散するための分散媒と、該電気泳動粒子を移動させるための一対の電極を有する電気泳動型表示装置である。
【0027】
本発明の色材の好ましいもう一つの形態は、薄膜状の形態である。
【0028】
本発明は、前記薄膜状の形態を有する色材から構成されるカラーフィルタである。
【0029】
本発明のもう一つの側面は、両親媒性物質の共存下において、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質を加水分解、縮合させてシリカ−有機物複合材料を含む多孔質物質の前駆体を作製する工程と、
該前駆体から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法である。
【0030】
本発明は、また、両親媒性物質の共存下において、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質を加水分解、縮合させてシリカ−有機物複合材料を含む多孔質シリカの前駆体粒子を作製する工程と、
該前駆体粒子から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料粒子を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料粒子の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法である。
【0031】
本発明は、また、基板上に、規則的に配列した両親媒性物質の分子集合体と、それを取り囲む、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ−有機物複合材料から構成される薄膜を形成する工程と、
該シリカ−有機物複合材料の薄膜から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料薄膜を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料薄膜の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、シリカ−有機物複合材料から構成されるメソ細孔を有する多孔質の表面にアニオン交換サイトを形成し、そのサイトにアニオン性色素を結合させることによって、インク、電気泳動粒子、カラーフィルタとして使用した場合鮮やかな発色と分散性、耐候性等に優れた特性を示す色材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の粒子状、及び薄膜状の色材を模式的に表した図である。11は色材粒子、12は基板17上に形成された色材薄膜である。
【0035】
図1において、粒子表面、及び細孔に垂直な膜の断面の拡大図を模式的に示したものがBで、Bの一部をさらに拡大した模式図がCである。Dは、細孔壁とその近傍の状態を模式的に示したもので、多孔質シリカ−有機物複合材料の細孔壁16上に、アニオン交換サイトが形成されている。アニオン交換サイトは、アニオン交換能を有する原子団として細孔壁面上に結合している形態が一般的であり、好ましく適用されるが、本発明において、アニオン交換能を表面に付与する手段は、目的が達成できる限りにおいて、この手段に限定されるものではない。本発明の色材には、このアニオン交換サイトに、アニオン性の色素が図示したように結合している。
【0036】
最初に、多孔質シリカ−有機物複合材料の製法について説明する。但し、本発明に使用される多孔質シリカ−有機物複合材料の製法は、以下に記述する方法に限定されるわけではなく、目的の多孔質材料が得られる範囲において、どのような手法を用いてもかまわない。
【0037】
本発明に好適に用いられる多孔質シリカ−有機物複合材料は、界面活性剤の集合体をテンプレートにして作製される、いわゆるメソポーラス材料の一種である。メソ細孔とは、IUPACの分類に基づくもので、細孔径が2nmから50nmのものをいう。これよりも径の小さいミクロポーラス物質の場合には、細孔に担持できる色素がサイズの小さいものに限定され、一方、これよりも径の大きいマクロポーラス物質の場合には、細孔内で色素分子が会合を起こし、色調が低下することがある。ただし、均一細孔のメソポーラス材料を作製できるのであれば、界面活性剤分子集合体をテンプレートに使用する以外の方法であっても本発明の色材に適用することが可能である。
【0038】
次にメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の作製方法について説明する。
【0039】
メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子は、界面活性剤と、有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質とを含む水溶液から作製することができる。その製法は、Journal of the American Chemical Society誌第121巻第9611〜9614ページに記載されているようなアルカリ性水溶液中から作製する方法、Chemical Communications誌 2002年 第2410〜2411ページに記載されているような酸性水溶液中から作製する方法等、種々の方法によって作製することが可能である。
【0040】
使用される、有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質は、以下の一般式であらわされる構造を有するものである。ここで、Rは、アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基等が用いられる。また、Rは、1個以上の炭素を含む有機基であり、フェニレン基、ビニル基、エチル基等が代表的なものである。勿論、R、Rがこれらに限定されるわけではない。
【0041】
【化1】


界面活性剤も一般的なものを使用することができる。例示すると、四級アルキルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドブロックとポリプロピレンオキシドブロックから構成されるブロックコポリマー界面活性剤等が好ましく使用可能である。しかし、使用可能な界面活性剤はこれらに限定されるわけではなく、目的の多孔質材料が得られるものであれば使用することが可能である。また、細孔径を調節するために、メシチレンの様な添加物を入れても良い。
【0042】
本発明のメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子は、溶液中で作製した直後のものは、細孔内に界面活性剤の集合体を含んでいる。本発明では、後述する細孔壁面でのアニオン交換サイトの形成のために、界面活性剤を除去する必要がある。界面活性剤の除去方法に関しては、種々の方法が報告されている。例示すると、焼成、溶剤での抽出、オゾンでの酸化、光分解、超臨界流体を用いた除去、マイクロ波を用いた分解等が挙げられる。本発明においては、細孔構造を保持し、且つ、アニオン交換サイトの形成と、それに続くアニオン性色素の担持が可能であれば、除去方法はどの方法を用いてもかまわない。
【0043】
メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の形状は、図1に示した球状のものが最も好ましいが、球状のほか、ジャイロイド状、円盤状、六角形粒子等、種々のものが適用可能である。
【0044】
個々の粒子のサイズにも特に制限はないが、インク用に用いられる粒子としては1μm以下のものが好ましく、500nm以下のものがより好ましい。例えばインクジェット用のインクに応用する場合には、粒径が大きい場合、インクの流路やインクジェットのノズル内での目詰まりが起こることがある。また電気泳動型表示装置に用いられる粒子としては、50nmから100μmの範囲のものが好ましく、200nmから10μmのものがより好ましい。あまり粒径が大きくなると静電的な力で動かすことが困難になり、表示特性を低下させることがある。作製する粒子の粒径は、シリカ源となる、有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有する物質の、加水分解速度や濃度等の作製条件を変えることで制御可能である。本発明者らの検討により、例えば、反応温度を高め、加水分解触媒の濃度を高めると、形成される粒径は小さくなるということが明らかになっている。
【0045】
メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子中の均一径細孔の構造として、任意のものを用いることができる。例示すると、二次元ヘキサゴナル構造、キュービック構造、三次元ヘキサゴナル構造等である。本発明において、細孔の構造規則性は必須ではなく、例えば、均一径の細孔が、ワームホール状にランダムな配置で形成されているようなものであっても良い。すなわち、X線回折分析において1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有するようなものであれば、どのような構造のものでも使用可能である。
【0046】
次に、メソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜の作製方法について説明する。薄膜形態の場合であっても、原料となる界面活性剤、及び有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源は、上記粒子状形態のものと同じである。メソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜の作製方法は、次の2つの方法に大別される。
【0047】
一方は溶媒蒸発法と呼ばれるゾル−ゲル法に類似した方法、もう一方は基板上での不均一核発生−成長によりシリカメソ構造体を基板上に析出するというものである。本発明には、このうちのどちらの製法で作製したメソポーラスシリカ−有機物複合体薄膜も、好適に使用することができる。
【0048】
先ず、前者の溶媒蒸発法について説明する。溶媒蒸発法では、界面活性剤、有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源、及び加水分解触媒としてはたらく酸を含む前駆体溶液を、基板上にスピンコート、もしくはディップコート等の手法で塗布し、これを乾燥させることによってシリカ−有機物複合材料メソ構造体薄膜を得ることができる。膜厚はコーティングの条件を制御することにより、随意に制御可能である。基板としては、一連の作製プロセスに耐えられる材質であれば、いかなるものでも使用可能である。例示すると、ガラス、プラスチック、セラミクス等が好ましく用いられる。カラーフィルタを作製する場合には、基板は透明なものを用いる。この方法は、作製法が簡便であるという利点を有している。
【0049】
次に、不均一核発生−成長に基づく方法について説明する。この方法では、界面活性剤、有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源、及び加水分解触媒としてはたらく酸を含む反応溶液中に、基板を保持することによって基板上にシリカ−有機物複合材料メソ構造体薄膜が形成される。膜厚は、反応時間、及び反応溶液の濃度等を制御することにより制御可能である。この方法では、基板によっては、透明な連続薄膜を得ることができないことがあり、最適な基板を選択する必要がある。例示すると表面に高分子化合物をコーティングしたガラス基板等が用いられる。この方法は、形成される膜の構造規則性が高い傾向にあるという利点を有している。
【0050】
このようにして作製したシリカ−有機物複合材料メソ構造体薄膜から、粒子の場合において述べたような方法で、細孔中に存在している界面活性剤を除去することによって中空の細孔を有するメソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜が得られる。
【0051】
薄膜形態のメソポーラスシリカ−有機物複合材料に関しても、膜中の均一径細孔の構造は、任意のものを用いることができる。例示すると、二次元ヘキサゴナル構造、キュービック構造、三次元ヘキサゴナル構造等である。本発明において、細孔の構造規則性は必須ではなく、例えば、均一径の細孔が、ワームホール状にランダムな配置で形成されているようなものであっても良い。すなわち、X線回折分析において1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有するようなものであれば、どのような構造のものでも使用可能である。
【0052】
本発明に用いるメソポーラスシリカ−有機物複合材料中の細孔径分布の評価には、一般に窒素等のガスの等温吸着線を測定する方法が用いられる。得られた等温吸着線から、Berret−Joyner−Halenda(BJH)等の解析法等によって計算される。本発明に用いられるメソポーラスシリカ−有機物複合材料のメソ細孔は、窒素ガス吸着測定からBJH法により求められた細孔径の分布が単一の極大値を有し、かつ60%以上、好ましくは80%以上の細孔が、幅10ナノメートル以下の孔径分布の幅に含まれるものである。10ナノメートルの幅を持つ範囲とは、例えば2〜12ナノメートルというような、最小値と最大値の差が10ナノメートルである幅の範囲である。これ以上の細孔径分布を有するメソポーラスシリカ−有機物複合材料を用いた場合には、色素吸着量にムラが生じたり、粒子の色調が低下したり、粒子の場合は個々の粒子によって比重が変化したりするといった問題が生じ、例えば電気泳動粒子に応用した場合には表示素子の表示特性を低下させることがある。
【0053】
このようにして作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料シリカに、色素を担持して色材とする。工業的に有用な色素はアニオン性のものが多い。これは、カチオン性の色素は遺伝子等生体物質との親和性が高いことが一つの理由である。しかし、アニオン性の色素をシリカベースの多孔質材料に直接吸着させる場合には以下のような理由により十分な吸着量を確保することができない。
【0054】
すなわち、シリカの等電点は約2であり、これよりも高いpH領域ではシリカ表面は負に帯電し、従ってアニオンを吸着することができない。また、pHを1程度にしても、表面の正電荷密度が比較的小さく、十分な吸着量が確保できない。そして、電荷密度を増大するためにさらにpHを低下させると色素が変質してしまう等の問題が生じることがある。
【0055】
この問題を解決するために、本発明の着色シリカにおいては、細孔壁面の少なくとも一部に、カチオン部位、すなわちアニオン交換サイトとして機能する部位を有するシランカップリング剤を結合させるのである。アニオン交換を示すカチオン部位を有するシランカップリング剤は、アニオン性の色素を容易にそして強固に結合させることが可能となる。
【0056】
前記カチオン部位を持つシランカップリング剤としては、アンモニウム基を含むもの、すなわち正に帯電した窒素を有するものが好適に用いられる。細孔内のこの正電荷に対してアニオン性色素が結合する。本発明者らは、例えば、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(以下、TPTCAという。)のようなアンモニウム塩酸塩を用いた場合には、塩化物イオンもしくは水酸化物イオンが色素アニオンと交換される、と考察している。使用可能なシランカップリング剤としては、上記TPTCAの他、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリル)プロピルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩酸塩が好ましく用いられる。さらに3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等も適用可能である。本発明者らは、これらの場合には、水との反応によって窒素が4級化し、水酸基が色素アニオンと交換される、と考察している。
【0057】
シランカップリング剤での表面修飾は、例えば、シランカップリング剤のエタノール溶液にメソポーラスシリカ粒子、及びメソポーラスシリカ薄膜を浸漬することにより容易に達成できる。必要に応じて、外表面の過剰なカップリング剤を洗浄して除去することもある。
【0058】
シランカップリング剤との反応は、多孔質体の細孔壁を形成しているシリカ−有機物複合材料の表面シラノール基との間の反応であり、従って、シランカップリング剤は、細孔壁のシリカ部分に共有結合によって固定化されることになる。
【0059】
このようにして作製した、細孔壁面にアニオン交換能を有したメソポーラスシリカ粒子、及び薄膜に対して、アニオン性色素を結合させる。色素は、特に限定されるものではなく、粒径がメソ細孔よりも小さい陰イオンであれば、基本的にどのようなものでも使用することが可能である。例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料などの染料の吸着が可能である。特に本発明は、アゾ染料やフタロシアニン染料には極めて有効である。例えば、アニオン性色素の具体例としては、フタロシアニン染料であるダイレクトブルー、アゾ染料であるアシッドイエロー、アシッドレッド等の染料が挙げられる。
【0060】
色素の結合方法は、多孔質シリカが粒子の場合、色素の水溶液に上記表面処理を施した多孔質シリカ粒子を分散させた後に、分離、洗浄する方法が簡便で、一般的であるが、この方法以外でも、構造を破壊することなく細孔内に色素を導入できる方法であれば用いることができる。また粒子を分散させる際、色素の水溶液を必要に応じて超音波照射等を行う。
【0061】
また、多孔質シリカが膜の場合、色素の水溶液に、上記表面処理を施した多孔質シリカ膜を浸漬して静置するだけでよい。また、メソポーラスシリカ−有機物複合材料膜上に印刷やインクジェット等の方法で所望の形状に色素をパターニングすることも可能である。
【0062】
細孔内に導入されるアニオン性色素の量は、細孔壁面のシランカップリング剤の密度で決定され、さらにシランカップリング剤の密度は壁面のシラノール基の密度で決定される。本発明で用いられるメソポーラスシリカ−有機物複合材料においては、その構造から、シリコン原子の四分の一がシラノール基で終端されており、OH基が細孔内に存在している。従って、細孔壁がシリカのみから形成されるメソポーラスシリカを用いる場合に比較して多量の色素を細孔内に担持し、色密度の大きい色材を作製することが可能である。
【0063】
上記のように、メソポーラスシリカ−有機物複合材料を用いることによって、高い色素吸着量を達成することができる。色素の吸着量は、多孔質シリカの重量に対して、5〜30質量%程度の範囲が好ましいが、この範囲に限定されるわけではない。
【0064】
しかし、本発明者らは、この材料中の表面シラノール基の密度は、細孔内において色素が会合体を形成するほどには高くなく、従って、細孔内において色素は、図1に模式的に示すように、分子は単独に近い状態で吸着している、と考えている。色素を細孔内に保持することで、このように色素分子の凝集を防げるために、鮮やかな濃い発色を得ることが可能であり、これが本発明の色材の最も大きな特長の一つである。
【0065】
本発明に用いられるメソポーラスシリカ−有機物複合材料の細孔径は、ほとんどの色素分子のサイズに比較して十分に大きいため、使用するシランカップリング剤、吸着させる溶液中の色素濃度、色素1分子あたりの電荷量等の条件が同じであれば、色素吸着量はほぼ同程度になる。それゆえ色素結合後の粒子の表面電荷密度は、色素によらずほぼ一定となるため、本発明の色材粒子を電気泳動粒子として用いた場合には、粒子の駆動特性は、色素の種類が変化しても大きく変動することはなく、異なる色調の表示をほぼ同一の駆動条件で行うことが可能となる。
【0066】
本発明の色材粒子を電気泳動粒子に応用する場合には、サイズに加えて、粒子の比重の制御が問題になる。電気泳動粒子の比重は0.6から2.0であればよく、好ましくは0.6から1.5、より好ましくは0.7から1.2である。比重の測定法は公知の方法を用いることができるが、比重が既知の溶液中に分散させ、沈降の度合いから判断する簡便な方法でも良い。均一粒子を得るために、作製した粒子に対して分級操作を行うこともある。粒子の比重は、細孔構造、細孔壁厚、色素吸着量等を制御することで最適な値に制御される。
【0067】
電気泳動粒子に応用する場合には、粒子の凝集を防ぐ、比重を調節する等の目的で、個々の粒子に対して、さらに図1には不図示の表面コーティングを施すこともある。コーティングの方法の一例としては、スプレーコーティング法、in−situ重合法、スパッタ法、めっき法等が挙げられる。
【0068】
本発明の色材粒子をインクとして使用する場合にも、比重の調整、及びそれに関連した分散状態の制御が必要な場合が多い。これらも、上記電気泳動粒子の場合と同様な方法で、最適な値に制御される。
【0069】
着色シリカ微粒子をインクの構成物として使用する場合、前述したように鮮やかな発色が得られるという効果の他、個々の着色シリカ粒子が紙の繊維中に強く束縛されるため、染料を単独で使用した場合に比べて紙の繊維中を色材が拡散しにくく、にじみ、文字太りおよび混色が起こりにくいという利点がある。また、色素は主にメソポーラスシリカの細孔内部に結合しているため、染料が光や化学物質等の外界の影響を受けにくく、染料単独の場合に比べて耐候性を向上させることができるという顕著な効果がある。
【0070】
薄膜状の本発明の色材をカラーフィルタに使用する場合には、インク、電気泳動粒子の場合と同様に、鮮やかな発色が得られるということが大きな利点となる。また、比表面積が大きい多孔質体の細孔壁面に色素を吸着するので、色素担持量をふやせること、また色素が細孔内に保持されているので、耐候性に優れているという利点を有する。カラーフィルタに応用する場合には、所望の光学的特性をふまえて、メソポーラスシリカ膜の膜厚、担持させる色素量、及び色素の担持面積等を予め最適化しておく。カラーフィルタ表面に膜が傷つくことを防ぎ、反射率を低下させる等の目的で、膜表面に図1には不図示の表面コーティングを施すこともある。コーティングの方法は粒子に適用可能な手法が同様に適用可能である。
【0071】
図2には、粒子状形態の本発明の色材を電気泳動粒子として用いた電気泳動装置の一例を模式的に示す。電気泳動装置は公知のものであれば良く、特に限定しない。少なくとも本発明の電気泳動粒子21と、該電気泳動粒子が分散された分散媒22と、電極23または24が形成された基板26を有していればよい。電界の印加により粒子は上下の電極のいずれかの方向に移動し、粒子、及び分散媒の色調に応じた表示を行うことができる。
【0072】
また、多色化に対応した表示装置を作製したい場合、異なる色の色素を用いて作製した粒子を使用する。この場合、使用する色素の種類によって粒子の比重が変わる場合には、分散媒の比重を調整することで対応可能である。
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の形態は実施例の記載事項に限定されるものではない。
【実施例1】
【0074】
本実施例は、平均直径約100nmのメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を作製し、細孔壁面をTPTCAで修飾した後、青色のアニオン性色素を吸着させて青色の色材粒子を作製し、それをインクジェットプリンタ用インクに応用した例である。
【0075】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の作製]
カチオン性界面活性剤であるn−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド1gを300mlの純水に溶解した後、5gの水酸化ナトリウムを溶解させ、さらにエタノールを400ml加えて界面活性剤のアルカリ性エタノール−水混合溶液を作製した。
【0076】
この界面活性剤溶液を70℃に加温して、1,2−bis(trimethoxysilyl)ethane(BTME)を1.5g添加し、約2時間70℃で撹拌した後に、内側がフッ素樹脂製の耐圧容器に移し、蓋をして、90℃で約一昼夜静置、沈殿を得た。
【0077】
この沈殿を純水で洗浄、乾燥後、得られた粉末を、X線回折分析を用いて分析した結果、この粉末は二次元ヘキサゴナル構造を有するシリカ−有機物複合材料メソ構造体であることが確認され、その(100)面の面間隔は4.0nmであることが確認された。
【0078】
この粉末を150mlのエタノールに再分散させ、3.6gの36%HClを添加した。この分散溶液を60℃に加熱し、6時間攪拌し、界面活性剤の除去を行った。この操作の後、粉末はエタノールでよく洗浄し、空気中で乾燥させた。
【0079】
界面活性剤を除去した試料のX線回折分析を行った結果、除去前の試料において観測されたのと同じ位置に回折ピークが観測され、界面活性剤を除去しても構造が保持されていることが確認された。
【0080】
また、この粉末試料に対して窒素ガス吸着の実験を行った結果、等温吸着線から求められた比表面積は740m/gという大きな値を示した。またBJH法により細孔径分布を計算した結果、細孔径分布は2.8nmに鋭い極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は2nmから5nmの範囲に入っていることが判った。これより、作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料は実質的に均一な細孔径を有していることが確かめられた。また、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にてこの粒子を観察したところ、ほぼ均一な大きさの球状粒子であることがわかった。更にFE−SEMの画像から粒子20個の粒径を測ったところ、最小で80nm最大で120nm、平均で100nmとほぼ均一な粒径であった。また、界面活性剤の除去は赤外吸光分析によって確認された。
【0081】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の細孔壁面修飾]
このメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を、50質量%TPTCAメタノール溶液中に分散し、室温で10時間静置した後、分離し、さらに純水で十分に洗浄を行った。洗浄を終えた粒子を分離し、常温で乾燥した。この粒子に対して赤外吸光分析を行った結果、アンモニウム基及びメチレン基由来と思われるピークが観測され、シリカ−有機物複合材料の表面にTPTCAが結合していることが確認された。一方、Si−OH基に起因する吸収帯は、TPTCAによる処理後には強度が減少しており、TPTCAは、シラノール基の部分に結合していることが明らかとなった。
【0082】
また、処理後の粉末のX線回折分析を行ったところ、処理前の試料と同じ位置に回折ピークが観測され、細孔構造が保持されていることが確認された。さらに、処理後の粉末に対して窒素ガス吸着の実験を行った結果、等温吸着線から比表面積は714m/gと求められ、またBJH法によって求められた細孔径分布から、TPTCAによる処理を行う前に比較して小さい径の細孔の割合がわずかに増大していることがわかった。
【0083】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子青色インクの作製]
次に、このメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子にアニオン性色素を吸着させた。アニオン性フタロシアニン染料であるダイレクトブルー199の0.5質量%水溶液5mlに、上記処理を施したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子100mgを10秒間超音波によって振動を与えながら分散させた後、1時間静置し、細孔内に色素を導入した。次に、このようにして色素を導入した粒子を洗浄し、表面に過剰に付着した色素を除去した。洗浄は、色素を担持させた粒子をエタノールに分散させて遠心分離し、上澄み洗液を除去するというプロセスを3回繰り返して行った。この操作により表面に過剰に吸着した色素はほぼ完全に除去できた。
【0084】
洗浄した粒子を常温で乾燥させ、鮮やかな青色のメソポーラスシリカ−有機物複合材料色材粒子を得た。
【0085】
色素を担持した後の粒子をX線回折分析で評価したところ、色素導入前、及び界面活性剤の除去後の試料と同じ位置に回折ピークが観測され、色素担持後も細孔構造が保持されていることが確認された。また、色素担持後の粉末試料に関して窒素ガス吸着の測定を行った結果、比表面積618m/gと、色素担持前よりも小さい値が得られた。吸着等温線からBJH法によって求められた細孔径分布は、極大値は色素担持前のものと比較してほとんど変化がないものの、色素担持前に比較して、小さい径の細孔の割合が増大していた。これは、明らかに細孔内部への色素の担持を示している。
【0086】
次に、以上の工程によって作製した青色色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子100mgを表1のような組成の透明インクベース2mlに入れ、容器ごと10秒間超音波を照射して粒子を分散させ、青色インクとした。
【0087】
【表1】

この青色インク中のメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子が沈殿することはなかった。
【0088】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子黄色インクの作製]
アニオン性アゾ染料であるアシッドイエロー23の0.75質量%水溶液5mlに上記工程にて作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子100mgを分散させ、青色インクと同様の方法で、鮮やかな黄色のメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を得た。
【0089】
色素を担持した後の粒子をX線回折分析で評価したところ、色素導入前、及び界面活性剤の除去後の試料と同じ位置に回折ピークが観測され、この色素担持後も細孔構造が保持されていることが確認された。また、色素担持後の粉末試料に関して窒素ガス吸着の測定を行った結果、比表面積631m/gと、色素担持前よりも小さい値が得られた。吸着等温線からBJH法によって求められた細孔径分布は、極大値は色素担持前のものと比較してほとんど変化がないものの、色素担持前に比較して、小さい径の細孔の割合が増大していた。これは、明らかに細孔内部への色素の担持を示している。
【0090】
次に、以上の工程によって作製した色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子100mgを表2のような組成の透明インクベース2mlに入れ、容器ごと10秒間超音波を照射して粒子を分散させ、黄色インクとした。
【0091】
【表2】

この黄色インク中のメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子が沈殿することはなかった。
【0092】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子インクのインクジェットプリンタによる印字]
次に、以上の工程によって作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子ベースの青色インク及び黄色インクをシアン及びイエローインクカートリッジに充填し、パソコンに接続した市販のインクジェットプリンタ(キヤノン社製、商品名:BJ−S630)にセットした。
【0093】
一回ヘッドクリーニングを行った後、市販のコピー用紙に印字した。印字された画像は、あらかじめパソコン上で作製された、青色インク単独の文字、黄色インク単独の文字、青色インクと黄色インクの市松模様の3つの部分から構成される。
【0094】
印字された画像は、ノズルのつまり等によって画像が乱れることなく、インクが無くなるまで良好に印字を行うことができた。
【0095】
[印刷物の評価]
まず、青色と黄色が単独で印字された部分を目視にて観察したが、共ににじみや文字太りは見られなかった。また、青色と黄色の境界にはインクのにじみによる混色(ブリーディング)は見られなかった。更に、印字直後の紙に水滴を垂らしたが、特にインクのにじみは観察されず良好な画像を維持した。
【0096】
次に、BJ−S630用の染料シアンインク(キヤノン社製、商品名:BCI−3eC)及び染料イエローインク(キヤノン社製、商品名:BCI−3eY)を用いて、上記と同じ画像を同じコピー用紙に印字したものを用意し、キセノンランプを100時間照射して耐候性を調べた。その結果、メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子ベースのインクを用いた画像の耐候性は青色黄色共に、市販の染料インクより良好であることが解った。
【0097】
以上の結果より、細孔壁面をTPTCAで修飾したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子にアニオン性色素を担持して作製した色材粒子を用いたインクジェットプリンタ用のインクを使用することにより、良好な印字が達成でき、かつ印刷物はにじみや混色が無く、耐水性、耐候性に優れていることが確認できた。
(比較例1)
実施例1と同じ手順と条件で、メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を作製した。X線回折分析及び窒素ガス吸着測定により、このメソポーラスシリカ−有機物複合材料は二次元ヘキサゴナル構造の細孔構造を有し、737m/gの比表面積を有することが確認された。
【0098】
このメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子100mgを2組用意し、シランカップリング剤で処理を行わずに、それぞれをダイレクトブルー199の0.5質量%水溶液2ml、及びアシッドイエロー23の0.75質量%水溶液2mlに10秒間超音波を照射しながら分散させた後、1時間静置して色素の吸着を試みた。
【0099】
次に、これらの分散溶液を実施例1と同様に、遠心分離によって上澄み水を除去し、エタノールに再分散させて表面に過剰に付着した色素の除去を行った。本比較例1で得た、洗浄後のメソポーラスシリカ粒子には、ダイレクトブルー199、アシッドイエロー23共にほとんど着色が認められず、色素が細孔内にほとんど担持されていないことが判明した。
【実施例2】
【0100】
本実施例は、非イオン性界面活性剤を用いて作製したメソポーラスシリカ−有機物複グ材料粒子の表面をTPTCAで処理した後、青色色素を吸着させて、青色の電気泳動粒子を作製した例である。
【0101】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の作製]
非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン10ラウリルエーテル、SIGMA CHEMICAL社製)31.3gを800mlの純水に溶解し、35%濃塩酸132mlを添加し、界面活性剤の酸性溶液とした。この界面活性剤溶液に2℃で1,4−bis(triethoxysilyl)benzeneを1.26g添加し、1時間攪拌した後に、フッ素樹脂製の耐圧容器に移し、80℃で1週間反応させ、沈殿を得た。
【0102】
この沈殿を純水で洗浄した後に風乾し、得られた粉末をX線回折分析によって分析した結果、この粉末は、キュービック構造のシリカ−有機物複合材料メソ構造体であることが確認され、面間隔4.9nmに対応する位置に(210)面に帰属される回折ピークが確認された。
【0103】
この粉末を150mlのエタノールに再分散させ、3.6gの36%HClを添加した。この分散溶液を60℃に加熱し、6時間攪拌し、界面活性剤の除去を行った。この操作の後、粉末はエタノールでよく洗浄し、空気中で乾燥させた。
【0104】
界面活性剤を除去した試料のX線回折分析を行った結果、除去前の試料において観測されたのと同じ位置に回折ピークが観測され、界面活性剤を除去しても構造が保持されていることが確認された。
【0105】
また、この粉末試料に対して窒素ガス吸着の実験を行った結果、等温吸着線から求められた比表面積は722m/gという大きな値を示した。またBJH法により細孔径分布を計算した結果、細孔径分布は2.9nmに鋭い極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は2nmから5nmの範囲に入っていることが判った。これより、作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料は実質的に均一な細孔径を有していることが確かめられた。また、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にてこの粒子を観察したところ、ほぼ均一な大きさの球状粒子であることがわかった。更にFE−SEMの画像から粒子20個の粒径を測ったところ、平均で2.2μmとほぼ均一な粒径であった。また、界面活性剤の除去は赤外吸光分析によって確認された。
【0106】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の細孔壁面修飾]
このメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を、50質量%TPTCAメタノール溶液中に分散し、室温で10時間静置した後、分離し、さらに純水で十分に洗浄を行った。洗浄を終えた粒子を分離し、常温で乾燥した。この粒子に対して赤外吸光分析を行った結果、アンモニウム基及びメチレン基由来と思われるピークが観測され、シリカ−有機物複合材料の表面にTPTCAが結合していることが確認された。一方、Si−OH基に起因する吸収帯は、TPTCAによる処理後には強度が減少しており、TPTCAは、シラノール基の部分に結合していることが明らかとなった。
【0107】
また、処理後の粉末のX線回折分析を行ったところ、処理前の試料と同じ位置に回折ピークが観測され、細孔構造が保持されていることが確認された。さらに、処理後の粉末に対して窒素ガス吸着の実験を行った結果、等温吸着線から比表面積は703m/gと求められ、またBJH法によって求められた細孔径分布から、TPTCAによる処理を行う前に比較して小さい径の細孔の割合がわずかに増大していることがわかった。
【0108】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料電気泳動粒子の作製]
TPTCAで表面を修飾した、上記のメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子に、実施例1と同様の手順でアニオン性フタロシアニン染料であるダイレクトブルー199を担持させた。染料を担持させた粒子は、エタノールで洗浄した後常温で乾燥させ、鮮やかな青色のメソポーラスシリカ−有機物複合材料色材粒子を得た。
【0109】
色素を担持した後の粒子をX線回折分析で評価したところ、色素導入前、及び界面活性剤の除去後の試料と同じ位置に回折ピークが観測され、色素担持後も細孔構造が保持されていることが確認された。また、色素担持後の粉末試料に関して窒素ガス吸着の測定を行った結果、比表面積620m/gと、色素担持前よりも小さい値が得られた。吸着等温線からBJH法によって求められた細孔径分布は、極大値は色素担持前のものと比較してほとんど変化がないものの、色素担持前に比較して、小さい径の細孔の割合が増大していた。これは、明らかに細孔内部への色素の担持を示している。
【0110】
以上のような工程で作製された色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子を電気泳動粒子として用いた。
【0111】
以上の工程によって作製した色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の電気泳動特性を評価するために、図2に示すような電気泳動装置を用いて評価を行った。絶縁性液体(分散媒)22にはイソパラフィン(商品名:アイソパー,エクソン社製)を使用した。イソパラフィンには、荷電制御剤としてコハク酸イミド(商品名:OLOA1200、シェブロン社製)を含有させた。本実施例で作製した、色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子は、上記絶縁性液体に対して良好な分散を示し、溶液を放置しても粒子が沈殿することはなく、良好な微粒子分散組成物を得ることができた。本実施例で作製した電気泳動粒子は、上下の電極への電界印加により、電極間を速やかに移動し、良好な表示特性を示した。また、駆動に伴って粒子が凝集するようなことはなく、良好な駆動特性が長時間持続することが確認された。
【実施例3】
【0112】
本実施例は、石英ガラス上に作製した平均膜厚約1.4μmのメソポーラスシリカ−有機物複合材料膜の細孔内壁をTPTCAで修飾した後、色素を吸着させてカラーフィルタを作製した例である。
【0113】
[基板の準備]
25mm×20mm、厚さ1.0mmの石英ガラス基板を、アセトン、イソプロピルアルコール及び純水で洗浄し、オゾンアッシャーで表面をクリーニングした。
【0114】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料膜の作製]
1.0gの臭化セチルトリメチルアンモニウムを25gのエタノールに溶解し、1.1gの純水を添加した後に2gの1,4−bis(trimethoxysilyl)benzeneを添加し、均一になるまで常温で攪拌した。この溶液に2MのHCl水溶液を25μl添加し、さらに12時間攪拌を行った後に、上記石英硝子基板上にディップコートした。コート下基板は、25℃−50%RHの雰囲気中で24時間乾燥させた。
【0115】
この薄膜をX線回折分析によって分析した結果、この薄膜は二次元ヘキサゴナル構造を有するシリカ−有機物複合材料メソ構造体薄膜であることが確認され、その(100)面の面間隔は3.7nmであることが確認された。また、膜厚を触針式膜厚測定器で測定したところ、ほぼ全面1.4μmの均一な膜厚であった。
【0116】
この薄膜から、実施例1、2と同じプロセスによって、界面活性剤を除去し、エタノールでよく洗浄した後に風乾させた。
【0117】
界面活性剤を除去した薄膜のX線回折分析を行った結果、除去前の薄膜において観測されたのと同じ位置に回折ピークが観測され、界面活性剤を除去しても構造が保持されていることが確認された。界面活性剤の除去は赤外吸光分析によって確認された。
【0118】
また、これと同じ薄膜試料を厚さ0.3mmのノンドープシリコンウェハー上に作製し、この薄膜試料に対して窒素ガス吸着の実験を行った。その結果、等温吸着線から求められた比表面積は680m/gという大きな値を示した。またBJH法により細孔径分布を計算した結果、細孔径分布は2.6nmに鋭い極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は2nmから5nmの範囲に入っていることが判った。これより、作製したメソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜は実質的に均一な細孔径を有していることが確かめられた。
【0119】
[メソポーラスシリカ−有機物複合材料粒子の細孔壁面修飾]
このメソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜を、50質量%TPTCAメタノール溶液中に分散し、室温で10時間静置した後、分離し、さらに純水で十分に洗浄を行った。洗浄を終えた膜は、常温で乾燥した。この膜に対して赤外吸光分析を行った結果、アンモニウム基及びメチレン基由来と思われるピークが観測され、シリカ−有機物複合材料の表面にTPTCAが結合していることが確認された。一方、Si−OH基に起因する吸収帯は、TPTCAによる処理後には強度が減少しており、TPTCAは、シラノール基の部分に結合していることが明らかとなった。なお、赤外吸収スペクトルの測定は、ガス吸着によって表面積測定を行ったのと同様、ノンドープのシリコンウエハー上に作製した膜について行った。
【0120】
また、TPTCA処理後の薄膜のX線回折分析を行ったところ、処理前の薄膜と同じ位置に回折ピークが観測され、細孔構造が保持されていることが確認された。さらに、シリコンウエハー上に形成し、TPTCA処理を行った後の薄膜に対して、窒素ガス吸着の実験を行った結果、等温吸着線から比表面積は655m/gと求められ、またBJH法によって求められた細孔径分布から、TPTCAによる処理を行う前に比較して小さい径の細孔の割合がわずかに増大していることがわかった。
【0121】
[紫色カラーフィルタの作製]
次に、このメソポーラスシリカ−有機物複合材料膜にアニオン性色素を担持させた。アニオン性アゾ染料であるアシッドレッド52の1.0質量%水溶液10mlに、上記処理を施したメソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜を浸漬し、1時間静置することで、色素を担持させた。次に、この色素を担持させた膜を洗浄し、表面に過剰に付着した色素を除去した。洗浄は、色素を担持させた基板をエタノールに浸漬する工程を2度繰り返して行った。これにより、濃厚な紫(マゼンタ)色のメソポーラスシリカ−有機物複合材料薄膜が基板上に形成された。
【0122】
色素担持後の薄膜に関してX線回折分析を行った結果、色素導入前と同じ位置に回折ピークが観測されたことより、色素担持により構造が保持されていることが明らかとなった。
【0123】
[カラーフィルタの評価]
以上の工程によって作製した色素を担持したメソポーラスシリカ−有機物複合材料膜の吸光度を分光光度計にて測定した結果、吸収極大における吸光度約1.1を示し、非常に強い着色が得られていることが確認された。また、キセノンランプを100時間照射して耐候性を調べた結果、実施例1において粒子状の色材で得られたのと同様の優れた耐候性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の色材は鮮やかな発色と分散性、耐候性等に優れたものであり、その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の色材の実施態様例を示す模式図である。
【図2】本発明の電気泳動表示装置の構成を示す模式図である。
【図3】従来の電気泳動表示装置の構成及びその動作原理を示す模式図である。
【符号の説明】
【0126】
11 色材粒子
12 色材薄膜
13 アニオン交換サイト
14 メソ細孔
15 アニオン性色素
16 細孔壁
17 基板
21 電気泳動粒子
22 電気泳動用分散媒
23、24 電極
25 隔壁
26 基板
31 電気泳動粒子
32 電気泳動用分散媒
33、34 電極
35 隔壁
36 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ細孔を有する多孔体と、前記メソ細孔の壁面に形成されたアニオン交換サイトと、該アニオン交換サイトに結合したアニオン性色素から構成される色材であって、前記メソ細孔を有する多孔体が、X線回折分析において1ナノメートル以上の構造周期に対応する角度領域に少なくとも1つの回折ピークを有し、かつ、上記多孔体の細孔壁がシリコン酸化物と一つ以上の炭素原子を有する有機基より構成されており、さらに前記有機基がシリコン原子と2箇所以上で結合していることを特徴とする色材。
【請求項2】
前記メソ細孔を有する多孔体において、前記メソ細孔の径の分布が窒素ガス吸着測定により求められたものであり、前記分布が単一の極大値を有し、且つ60%以上の前記メソ細孔の孔径が10nmの幅を持つ範囲に含まれることを特徴とする請求項1に記載の色材。
【請求項3】
前記アニオン交換サイトを形成する原子団が上記多孔体の壁面に対して共有結合で結合していることを特徴とする請求項1または2に記載の色材。
【請求項4】
前記アニオン交換サイトを形成する原子団が、上記多孔体の無機酸化物部に対して共有結合で結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の色材。
【請求項5】
前記色材が粒子状の形態を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の色材。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の色材を含む組成物であって、その色材が粒子状の形態を有することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の色材を含むインクであって、その色材が粒子状の形態を有することを特徴とするインク。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の色材を含む電気泳動粒子であって、その色材が粒子状の形態を有することを特徴とする電気泳動粒子。
【請求項9】
電気泳動粒子と、該電気泳動粒子を分散するための分散媒と、該電気泳動粒子を移動させるための一対の電極を有する電気泳動型表示装置であって、該電気泳動粒子が、請求項8に記載されたものであることを特徴とする電気泳動型表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載の色材であって、薄膜状の形態を有することを特徴とする色材。
【請求項11】
請求項10に記載の色材を含むことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項12】
両親媒性物質の共存下において、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質を加水分解、縮合させてシリカ−有機物複合材料を含む多孔質物質の前駆体を作製する工程と、
該前駆体から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法。
【請求項13】
両親媒性物質の共存下において、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ源物質を加水分解、縮合させてシリカ−有機物複合材料を含む多孔質シリカの前駆体粒子を作製する工程と、
該前駆体粒子から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料粒子を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料粒子の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法。
【請求項14】
基板上に、規則的に配列した両親媒性物質の分子集合体と、それを取り囲む、炭素を一つ以上含む有機基の二箇所以上に結合したシリコン原子を有するシリカ−有機物複合材料から構成される薄膜を形成する工程と、
該シリカ−有機物複合材料の薄膜から両親媒性物質を除去して多孔質シリカ−有機物複合材料薄膜を得る工程と、
該多孔質シリカ−有機物複合材料薄膜の細孔壁面の少なくとも一部に、アニオン交換サイトを有する原子団を共有結合によって結合させる工程と、
該アニオン交換サイトにアニオン性色素を結合させる工程と
を含むことを特徴とする色材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−83345(P2006−83345A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271805(P2004−271805)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】