説明

芋入りおからの製造方法および芋入りおから食品

【課題】おから自体をそのまま使用することを無くし、機械的手段により多量のおからの粒子を濾過操作によって極力微細化し、所謂精製おからとし、これを各種の芋類と組み合わせて、美味しい食感の優れた芋入りおから製品を得ることを特徴とする芋入りおからの製造方法および芋入りおから食品の提供。
【解決手段】豆腐の原料となる豆乳を分離して得られるおからを円筒状または円錐状の外周に濾過孔を設けた濾過筒内に配設したスクリュウなどの回転移送濾過機構に供給して、おから成分に含まれる豆皮、胚軸などの長繊維の固形成分と、果肉などの短繊維の固形分とを前記回転移送濾過機構によりおから成分を移送させ乍ら、回転移送濾過機構の回動作用と濾過筒の内周との間で、攪拌,切截,圧潰させて揉み解して濾過孔より微細状態の精製おからとして製出し、生のまたは熱処理した芋類を組み合わせ、好みの調理を施して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量に得られる豆乳の残渣であるおからと、馬鈴薯,甘薯などの芋類を組み合わせ得られる芋入りおからの製造方法および芋入りおから食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に豆腐の製造工程で得られるおからは、日本人の食材として、今尚一部では好まれて食されている。
【0003】
しかし、圧倒的に生産される豆腐の量に比し、副産物のおからは日本では年間80万トンの大量と謂われ、多くは肥料や飼料として用いられているが、大部分は産業廃棄物として処分されている。
【0004】
また、食生活の環境の変化もあり、おから自体の入手も困難となり、多くの栄養価を含むおからを、一般家庭で食するという古来からの食材として食卓に乗らなくなってきた。
【0005】
これに対し、おからに、馬鈴薯澱粉やさつまいも,山芋などを加えたり、他の食材を混合させた原料を種々調理し、例えば菓子,せんべい,チップス,コロッケなど揚げ物を含めて数多くのおから食品の製造法が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0006】
また、シリンダーバレルに回転自在に配設したスクリュウにより、食品原料を回転駆動して移送し乍ら粗粉砕して蓄積し、先端に設けられたスクリーンを通過させて、裏ごしを行う方法や装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−163913号公報
【特許文献2】特開2007−209290号公報
【特許文献3】特開2007−14206号公報
【特許文献4】特開2002−112884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の公知例によれば、確かに芋類がおからに他の栄養食品として加えられているが、おから自体はそのままか、芋類をつなぎ食材として用いているなど、おからの組織をそのままにして置くだけで濾過精製していないので、食感が劣ることは避け得ず、新鮮味の食品としては不十分である。
【0008】
また特許文献4は、裏ごしとしての方法、装置は示されているが、回転圧縮が主で切截と圧潰などの一種の手揉み作用は殆んど不可能で繊維質が長くて硬度の高いおからの精製には不十分であり、やはり多量の廃棄物の生成は無視できない。
【0009】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、おから自体をそのまま使用することを無くし、機械的手段により多量のおからの粒子を濾過操作によって極力微細化し、所謂、精製おから、換言すれば、さらしおからを用いてこれを各種の芋類と組み合わせて、美味しい食感の優れた芋入りおから製品を得ることを特徴とする芋入りおからの製造方法および芋入りおから食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0011】
(1)豆腐の原料となる豆乳を分離して得られるおからを、円筒状または円錐状の外周に濾過孔を設けた濾過筒内に配設したスクリュウなどの回転移送濾過機構に供給して、おから成分に含まれる豆皮、胚軸などの長繊維の固形成分と、果肉などの短繊維の固形分とを、前記回転移送濾過機構によりおから成分を移送させ乍ら、回転移送濾過機構の回動作用と濾過筒の内周との間で、攪拌,切截,圧潰させて揉み解して、濾過孔より微細状態の精製おからとして製出し、生のまたは熱処理した芋類を組み合わせ、好みの調理を施して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【0012】
(2)豆腐の原料となる豆乳を分離して得られるおからを、円筒状または円錐状の外周に濾過孔を設けた濾過筒内に配設したスクリュウなどの回転移送濾過機構に供給して、おから成分に含まれる豆皮、胚軸などの長繊維の固形成分と、果肉などの短繊維の固形分とを、前記回転移送濾過機構によりおから成分を移送させ乍ら、回転移送濾過機構の回動作用と濾過筒の内周との間で、攪拌,切截,圧潰させて揉み解して、濾過孔より微細状態の精製おからとして得ると共に、さらにこの精製おからの濾過された固形分を前記濾過孔より小さい濾過孔を設けた回転移送濾過機構を備える濾過筒内に引続き二以上反覆濾過させて、順次と精製される精製おからを製出し、生のまたは熱処理した芋類を組み合わせ、好みの調理を施して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【0013】
(3)前記(1)または(2)記載の精製おからと芋類に対し、さらに他の食材の1以上を配合して調理して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【0014】
(4)前記(1)または(2)或い(3)のいずれか記載の製造方法で得られた芋入りおからをチップ状などに成形加工して成ることを特徴とする芋入りおから食品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、おから自体は、移送回転手段によって、おからの固形分を主として長繊維の豆皮や胚軸を排除し、短繊維の豆皮や残留する大豆成分を回転,移送,攪拌,すり潰しなどを含むほぐし作用を働かせて濾過作用による微細な固形分と粗大固形分とに分離し、かつ必要に応じて1回または濾過粒度の細かい移送回転手段によって、さらに微細にするため高品位のペースト状の精製おから(うらごしおから)が得られる。
【0016】
即ち、濾過工程における濾過孔の大きさを変えて濾過作用を2回以上行えばさらに精製おからの粒度は微細化でき、芋類との組み合わせによる各種食品の品質の向上を図ることができる。
【0017】
そして、生または熱処理を施した各種芋類、たとえば甘薯,馬鈴薯、さらには里芋,長芋などの単一または混合により、各種類の食感と味覚の食品を提供できる。特に他の生卵,牛乳,生クリーム,バター、或は必要に応じて香辛料、香菜など、さらに各種植物油などの配合、他の野菜や肉類を組み合わせて揚げ物やチップなど新しい食品として広く提供でき、きわめて健康的で栄養価の高い画期的な食品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0019】
まず、おからの精製工程について説明する。
【0020】
大豆を原料とし、丸大豆または丸大豆に脱皮大豆を加えて選別し、或は脱皮大豆のみを選別し、夾雑物を除去した後水洗する。そして水に所要時間浸漬し、この浸漬した大豆原料に加水し乍ら磨砕し、細かく濾した大豆汁(ご)を煮沸し、加熱後、豆乳とおからに分離する。
【0021】
この場合、磨砕処理には磨砕機械を、また豆乳とおからの分離には、濾過機械など豆腐メーカーの大小規模に応じて家庭的手作業ないしは機械化量産作業を行っても良い。
【0022】
例えば、本出願人が所有する特許第3574783号に示される軸流型絞り装置などが移送回転手段として有効である。
【0023】
図1にその構成の概要を回転移送濾過装置Aとして示す。
【0024】
1は、多数の濾過孔2を外周に設けた主内筒で、中心軸上に軸3とその外周に固定または遊離したスパイラル状の回転羽根(スクリュウ)4を配し、装置5外に設置した駆動モータMと接続してある。
【0025】
6は原料おからaの投入ホッパーであり、このホッパー6に投入された原料おからaをモータMの回転駆動により軸3または回転羽根4を回転させ、原料おからaを装置5の基端から先端に向けて移送させる。
【0026】
この移送処理により原料おからは、混練と磨耗そして加圧などの処理が主内筒1との内周との間で効率よく行われ、主内筒1の濾過孔2より必要の粒度の濾過処理物が液体と共に製出され、所謂、精製おからaが得られる。
【0027】
そして濾過されなかった固形物は残渣物Xとして吐出口7より得られる。
【0028】
即ち、上記した回転移送濾過装置Aの回転移送処理、即ち、スクリュウ4特にスクレーパー4aの作用により、回転,移送,攪拌,すり潰しなどを含むほぐし作用を働かせて、濾過作用により微細な固形分と粗大固形分とに分離し、微細な固形分を精製おからaとして得るようにしたので、ペースト状の高品質のおから(うらごし状のおから)として得られると共に、さらに微細化する場合には微細処理機構Bとして、グライディング加工ないしはカッティング加工を施すことにより、より高品位の微細おからが得られる。
【0029】
さらに、回転移送濾過装置Aを2回以上濾過孔の面積を漸次小として反覆移送処理させて、より微細にして高品位の精製おからを得ることもできる。
【0030】
即ち、この第1段によって得られる精製おからa自体もかなり緻密で微細な粒子として得られるが、さらに緻密で微細なおからを得るために、第2段および第3段を継続して回転移送濾過装置Aによる濾過を行わせることができる。この場合、第2段,第3段と繰返し濾過作用を行わせる際、主内筒1の濾過孔2の大きさは「小」とし、より緻密精細なおからを第3段のおからa,第4段のおからaとして得られる。
【0031】
なお、第2段,第3段は、第1段と、回転移送濾過装置Aについて、主内筒1の濾過孔2の大きさは互いに異にするがそれ以外の構成は同一である。
【0032】
具体的には、各段の主内筒1の濾過孔2は、図2に示すように断面三角状のワイヤCをコイル状に捲回して、隣り合うワイヤC間に螺旋状のスリットSを設けて、このスリットSの幅員Pを異ならせてスリット孔を漸次減少させている。
【0033】
第1段,第2段および第3段についての一例を示せば、表1に示す通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、スクリュウ4の直径15cm、その回転数は1分当り40回転、スクリュウ4の捲回数5、主内筒1の全長0.6mのものを用いた。
【0036】
上記表1から分かるように、原料のおからaから第1段によって得られる精製おからaは、80%が精製おからとして得られ、さらに第2段および第3段により、より微細なおからとして得ることができる。
【0037】
このように順次と回転移送濾過装置Aの濾過孔2の大きさを次第に小さくすることにより、なお一層微細な精製おからが得られ、その結果、廃棄されるおから屑は殆んど栄養価も低く、消化不良の食品となり、不要の残渣物として得られる。
【0038】
つぎに、図3において、カッティングないしグライディングによる機械的な微細処理構成を示す。
【0039】
即ち、小形のテーパースクリュウ8と相対向して、主軸のストレートスクリュウ部9と一体化されたテーパースクリュウ10が設けられ、ホッパー11より第2段の精製おからaが混練,圧潰,破砕などのカッティングないしグライディングによる機械的な粉砕作用を受けて吐出口12より微細な精製おからa2−1が得られる。
【0040】
なお、回転移送濾過装置Aにおける主内筒1の濾過孔2については、本実施例では断面三角形状のワイヤCをコイル状に捲回して隣り合うワイヤC間に形成されるコイル状のスリットSを用いているが、単に円筒体に多数の小孔(パンチング孔)やスリット孔などを形成して濾過孔として用いても良い。
【0041】
他方、芋類の加工処理は、甘薯,馬鈴薯,里芋,長芋などのあらゆる芋類を生のまま、さらに蒸かしたり茹でたり或は焼き芋などの加熱処理したものを原料として、精製おからと適宜配合割合を変えて、例えば精製おからを包み用食材として中味に芋類を包み込み、煮たり、蒸したりさらには食料油でフライに揚げたり、所謂、コロッケ状,オムレツ状,或はハンバーグ状やドーナッツ状など各種食品やケーキ菓子などの形状に成形提供できる。
【0042】
そして、精製おからに対して芋類は重量比1:1ないし1:2など好みの配合比で任意に設定できる。
【0043】
上述した芋類を配合した精製おからに対し、必要な添加物,果実,野菜,魚貝類,肉類,牛乳など乳製品,薬草,ハーブ,その他米飯や麦飯等を適当な量を事前に配合して新たな食品や菓子類を作ることができる。
【0044】
特に、焼成したり揚げ物についてはこれを細かくチップ状に形成し、所謂、芋入りおからチップとして全く新しい食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る精製おからを製出するための回転移送濾過装置の概要説明図
【図2】本発明に係る精製おから成分の微細化する機械的な処理工程の部分拡大説明図
【図3】カッティングないしグライディング処理を行う装置の一例を示す縦断面側面図
【符号の説明】
【0046】
1 主内筒
2 濾過孔
3 軸
4 回転羽根(スクリュウ)
4a スクレーパー
5 装置
6 ホッパー
7 吐出口
8 テーパースクリュウ
9 ストレートスクリュウ部
10 テーパースクリュウ
11 ホッパー
12 吐出口
おから
精製おから
2−1 精製おから
第3段おから
第4段おから
A 回転移送濾過装置
B 微細処理機構
C ワイヤ
M 駆動モータ
S スリット
X 残渣物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐の原料となる豆乳を分離して得られるおからを、円筒状または円錐状の外周に濾過孔を設けた濾過筒内に配設したスクリュウなどの回転移送濾過機構に供給して、おから成分に含まれる豆皮、胚軸などの長繊維の固形成分と、果肉などの短繊維の固形分とを、前記回転移送濾過機構によりおから成分を移送させ乍ら、回転移送濾過機構の回動作用と濾過筒の内周との間で、攪拌,切截,圧潰させて揉み解して、濾過孔より微細状態の精製おからとして製出し、生のまたは熱処理した芋類を組み合わせ、好みの調理を施して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【請求項2】
豆腐の原料となる豆乳を分離して得られるおからを、円筒状または円錐状の外周に濾過孔を設けた濾過筒内に配設したスクリュウなどの回転移送濾過機構に供給して、おから成分に含まれる豆皮、胚軸などの長繊維の固形成分と、果肉などの短繊維の固形分とを、前記回転移送濾過機構によりおから成分を移送させ乍ら、回転移送濾過機構の回動作用と濾過筒の内周との間で、攪拌,切截,圧潰させて揉み解して、濾過孔より微細状態の精製おからとして得ると共に、さらにこの精製おからの濾過された固形分を前記濾過孔より小さい濾過孔を設けた回転移送濾過機構を備える濾過筒内に引続き二以上反覆濾過させて、順次と精製される精製おからを製出し、生のまたは熱処理した芋類を組み合わせ、好みの調理を施して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の精製おからと芋類に対し、さらに他の食材の1以上を配合して調理して成ることを特徴とする芋入りおからの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2或いは3のいずれか記載の製造方法で得られた芋入りおからをチップ状などに成形加工して成ることを特徴とする芋入りおから食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−171958(P2009−171958A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322449(P2008−322449)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【特許番号】特許第4261618号(P4261618)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(391021330)株式会社荒井鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】