説明

芝生保護用マットとこれを用いた保護構造

【課題】上から加わる荷重を分散して芝生を傷めることがなく、芝生の生育に適した状態が得られる芝生保護用マットを提供する。
【解決手段】芝生2上に敷設して該芝生2を保護する芝生保護用マット11において、空隙部13を有し合成樹脂製の線材12からなる立体網状構造体をなし、厚さ方向において線材12は芝生側が疎部分14で反芝生側が密部分15である。マット11により覆われた芝生2は、疎部分14に入り込み、押し潰されることなく保護され、空隙部13の中で、蒸れることなく、葉が立った状態で生育する。また、密部分15の下に疎部分14があるため、上面の密部分15に加わる荷重が分散され、疎部分14に荷重が部分的に集中することがなく、部分的に芝生2を傷めることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生保護用マットとこれを用いた保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芝生を保護するものとして、芝生等の草植物が植え付けられた植生地面を保護する路盤(例えば特許文献1)があり、これは軟質又は合成樹脂路盤であって、複数の貫通孔を有する。
【0003】
また、運動場の一部分を一時的に覆うための、前記運動場あるいはその他の場所で再使用可能な装置であって、一人以上の人間を前記運動場の一部分の上方に支持することのできる表面にして、前記装置によって覆われた植物に空気を送るための複数の孔を有し、装置を運動場に位置付けするための位置付け手段にして、表面と運動場との間に自由空間を創出する形状を有し、下方に伸延する部材と、該下方に伸延する部材から横断方向に伸延し、該下方に伸延する部材に加わる負荷を分散させ得る脚部とを含む位置付け手段と、を含み、前記装置が、該装置により覆われる部分の植物が成長できるようにしたカバー(例えば特許文献2)があり、このカバーでは、プラスチック材料から形成され、運動場を覆って一時的に使用した後における、既存の床張り形式の覆い装置によっては得られない、芝生部分の充分な保護を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−12242号公報
【特許文献2】特表平5−504897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2を用いることにより、芝生等を保護することができるが、特許文献1では貫通孔の下部が地面に接し、特許文献2では脚部が地面に接するから、これらの部分と植生面との間に挟まれると、芝生が部分的に損傷を受け易い。
【0006】
また、特許文献1では、貫通孔から芝生の先端が突出するため、路盤の上を通行するなどして芝生を踏むと、芝生を傷める問題がある。
【0007】
また、上記特許文献1及び2のものでは、通気用の孔を備えるものの、太陽光線などを受けてそれ自体の温度が上がると、脚部に熱が伝導し、芝生に大きな悪影響を与える虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、上から加わる荷重を分散して芝生を傷めることがなく、芝生の生育に適した状態が得られる芝生保護用マットとこれを用いた芝生保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、芝生上に敷設して該芝生を保護する芝生保護用マットにおいて、前記芝生保護用マットは空隙部を有し合成樹脂製の線材を立体的な網状にした立体網状構造体であって、厚さが25〜35mm、前記線材同士の絡んだ箇所が熱溶着による溶着部で固着され、厚さ方向において密度を変えることにより芝生側が疎部分で反芝生側が密部分であり、前記密部分より前記疎部分が厚く、この疎部分の厚さが17〜33mmで、前記密部分の厚さが2〜8mmであり、前記疎部分の空隙率が90〜98%、前記密部分の空隙率が79〜88%であり、密度が1200〜1900g/m3であり、前記線材が白色である。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の芝生保護用マットを用い、疎部分を芝生側にして前記マットを敷設し、このマットの上にカバーを敷設したものである。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記カバーが通気部を有するものである。
【0012】
また、請求項4の発明は、前記カバーは、透孔を有する平板部の下面に、交差方向にリブ部を突設すると共に複数の脚部を設け、これら脚部の下面は、前記リブ部の下縁より下方に位置するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、マットにより覆われた芝生は、疎部分に入り込み、押し潰されることなく保護され、空隙部の中で、蒸れることなく、葉が立った状態で生育する。また、密部分の下に疎部分があるため、上面の密部分に加わる荷重が分散され、疎部分に荷重が部分的に集中することがなく、部分的に芝生を傷めることがない。
【0014】
また、請求項1の構成によれば、疎部分を厚く取ることにより、芝生の育生空間を確保することができ、且つ、密部分が少ないため、ロール状に巻く等の扱いが容易となる。
【0015】
また、請求項1の構成によれば、疎部分の空隙率が90%未満であると、芝生の育生空間が十分に確保できず、90%以上とすることにより、その空隙部において葉先が立った状態で保護される。また、98%を超えると、疎部分の強度が低下し、上からの荷重の分散効果が十分に得られなくなる。
【0016】
また、前記密部分の厚さが2mm未満であると、所定の強度が得られ難く、8mmを超えると、通気性を損ねると共に、光を通し難くなるので、上記の範囲とすることが好ましい。また、密部分の空隙率が79%未満になると、通気性が低下し、光を通し難くなる。
【0017】
また、マットが白色であるため、マット自体の熱吸収を抑えることができ、生育条件における温度ストレスを下げることができる。また、マットの密度が1200〜1900g/m3であるから、マット自体の熱伝導率を下げ、空隙部の割合を上げることによっても、生育条件における温度ストレスを下げることができる。
【0018】
また、請求項2の構成によれば、カバーで保護し、かつそのカバーが受けた荷重をマットにより分散して芝生への荷重の部分的な集中を防止できる。
【0019】
また、請求項2の構成によれば、カバーで保護し、かつそのカバーが受けた荷重をマットの網構造により分散して芝生への荷重の部分的な集中を防止できる。
【0020】
また、請求項3の構成によれば、カバーとマットを通して芝生への通気性を確保することができる。
【0021】
また、請求項4の構成によれば、カバーの上から潅水することにより、脚付きカバー自体の温度と内部の空間の温度とを下げる効果が得られると共に、透孔からの植生面への水分の補給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1を示す保護構造の断面図である。
【図2】同上、マットと植生面の断面図である。
【図3】同上、ロール状に巻いたマットの側面図である。
【図4】同上、試験方法を説明する側面図である。
【図5】同上、表2の結果の圧縮ひずみと圧縮荷重の関係を示すグラフ図である。
【図6】同上、表3の結果の圧縮ひずみと圧縮荷重の関係を示すグラフ図である。
【図7】同上、表4の結果の圧縮ひずみと圧縮荷重の関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例2を示す保護構造の断面図である。
【図9】同上、カバーの一例を示す斜視図である。
【図10】同上、他のカバーの一例を示す斜視図である。
【図11】同上、他のカバーの一例を示す断面図である。
【図12】同上、試験方法を説明する側面図である。
【図13】同上、しがらネットを示し、図13(A)は平面図、図13(B)は断面図である。
【図14】同上、温度測定結果を示すグラフ図である。
【図15】本発明の実施例3を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な芝生保護用マットを採用することにより、従来にない芝生保護用マットとこれを用いた保護構造が得られ、その芝生保護用マットとこれを用いた保護構造について記述する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図7は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、サッカー場や公園などの植生面1には、芝生2が植生し、保護構造により前記芝生2を保護する。
【0025】
前記保護構造は、略平板状のマット11を備え、このマット11は、前記植生面1上に敷設される。前記マット11は、合成樹脂製の線材12を立体的な網状にした立体網状構造物であり、内部に空隙部13を厚さ方向及び平面方向に連続して有し、芝生側となる厚さ方向の下面側が疎部分14で、反芝生側となる厚さ方向の上面が密部分15である。
【0026】
前記線材12は、熱可塑性樹脂を原料とし、例えばポリプロピレン,ポリエステル又はポリエチレンなどからなり、直径が0.1〜5mm(0.1mm以上、5mm以下:以下同様)程度である。尚、線材12が断面円形であるが、断面円形以外でも、例えば断面角形などの場合、その直径は、断面を円形に換算した場合の寸法を言う。そして、保護構造に用いるに際して、線材12の直径が0.1mm未満であると、強度が十分でなく、上からの荷重により潰れる易くなるため、芝生2を保護することができず、一方、5mmを超えると強度は十分となるが柔軟性が低下するとともに、空隙率(単位体積当たりの空隙の占める割合)が小さくなり、好ましい範囲は、0.1〜2.0mmである。
【0027】
前記マット11の厚さTは、50mm以下、芝生2の高さにもよるが、25〜35mmが好ましく、芝生2の高さはマット11の厚さT以下で、15〜20mmとすることが好ましく、マット11を敷く前に前記疎部分14の厚さT以下に芝生2の高さを揃えることが好ましい。
【0028】
また、一例として、25〜35mmのマット11において、前記密部分15の厚さT2は2〜8mmで、前記疎部分14の厚さT1は17〜33mmである。尚、厚さT2は厚さ1の2分の1以上とする。また、密部分15の空隙率(単位体積当りに占める空隙の割合)は、疎部分14の空隙率は、90〜98%である。また、密部分15の空隙率は疎部分14の空隙率より小さく、79〜88%である。そして、疎部分14の空隙率が90%未満であると、芝生2の育生空間が十分に確保できず、また、98%を超えると、疎部分14の強度が低下し、上からの荷重の分散効果が十分に得られなくなり、特に好ましくは、94〜98%である。また、前記密部分15の厚さが2mm未満であると、所定の強度が得られ難く、8mmを超えると、通気性を損ねると共に、光を通し難くなるので、上記の範囲とすることが好ましい。また、密部分15の空隙率が79%未満になると、通気性が低下し、光を通し難くなる。
【0029】
尚、前記マット11の密度は1200〜1900g/m3程度であり、好ましくは、1400〜1600g/m3である。
【0030】
さらに、前記マット11には白色系のものを用い、この例では、白色の線材12を用いた。
【0031】
前記マット11の製造方法においては、熱可塑性樹脂を溶融させる押出機を用い、この押出機は、多数の線材12を押し出すダイ(図示せず)を備え、このダイから押し出した複数本の線材12を、ランダムに絡ませて絡んだ箇所で熱融着による溶着部121で固着させて設けて形成される。また、厚さ方向において密度を変えるには、溶融した熱可塑性合成樹脂を多数のノズルより下方に押し出して一部水没した一対のベルトコンベアの間に自然降下させ、上記の降下速度より遅く引き取る一方、押し出された溶融樹脂の束より一対のベルトコンベアの間隔が狭く、かつ、ベルトコンベアによって水没される前に上記溶融樹脂の束の片面がベルトコンベアに接触するようにする方法などがあり、片面の表面部分は、ベルトコンベア上に落下し、溶融した熱可塑性合成樹脂の束の内側へ移動し密な状態となるため、水中にそのまま落下した中央部分より空隙率が小さくなる。当然のことながら、空隙率が低くなった表面部分である密部分15は、空隙率が高い疎部分14より溶着部121の数が多くなり、引張り強度が著しく強くなる。
【0032】
そして、前記植生面1に、疎部分14側を下にしてマット11を敷設することにより、芝生2を保護する。尚、マット11は、図3に示すように、ロール状に巻いたロール体21を用意し、該ロール体21を展開して天地返しを行い敷設する。また、必要に応じて、マット11の適宜箇所に固定用のピン22を挿し込み、該ピン22を植生面1に差し込んで固定する。
【0033】
このようにマット11により覆われた芝生2は、疎部分14に入り込み、押し潰されることなく保護され、空隙部13の中で、蒸れることなく、葉が立った状態で生育できる。
【0034】
また、マット11が白色系であるため、マット11自体の熱吸収を抑えることができ、生育条件における温度ストレスを下げることができる。また、マット11の密度が1200〜1900g/m3、好ましくは1400〜1600g/m3であるから、マット11自体の熱伝導率を下げ、空隙部13の割合を上げることによっても、生育条件における温度ストレスを下げることができる。
【0035】
また、密部分15を設けることにより、マット11に引張りや圧縮に対する十分な復元力が得られ、敷設作業や撤去作業を容易に行うことができ、また、均一な敷設状態が得られる。さらに、運搬や保管などにおける作業効率も良くなる。
【0036】
さらに、マット11の上面は密部分15により構成され、滑り難く、上に乗って作業を安全に行うことができる。また、上面の密部分15の下部には、へちまのような構造(乾燥後の状態)の疎部分14があり、上面に加わる点圧力を分散させ、疎部分14に点圧力が部分的に集中することを防止し、疎部分14の芝生2を保護できる。
【0037】
また、密部分15及び疎部分14を形成する網状の線材12が弾性復元力を有するから、マット11にピン22を挿しても、挿した部分が広がらず、がたつきなくマット11を固定でき、一方、ピン22を抜く作業も容易となる。また、ピン22を挿した部分が広がって残らないから、繰返しの使用にも適したものとなる。
【0038】
このように本実施例では、芝生2上に敷設して該芝生2を保護する芝生保護用マット11において、空隙部13を有し合成樹脂製の線材12からなる立体網状構造体であって、厚さ方向において線材12は芝生側が疎部分14で反芝生側が密部分15であるから、マット11により覆われた芝生2は、疎部分14に入り込み、押し潰されることなく保護され、空隙部13の中で、蒸れることなく、葉が立った状態で生育する。また、密部分15の下に疎部分14があるため、上面の密部分15に加わる荷重が分散され、疎部分14に荷重が部分的に集中することがなく、部分的に芝生2を傷めることがない。
【0039】
また、このように本実施例では、密部分15より疎部分14が厚いから、疎部分14を厚く取ることにより、芝生2の育生空間を確保することができ、且つ、密部分15が少ないため、ロール状に巻く等の扱いが容易となる。
【0040】
また、このように本実施例では、疎部分14の空隙率が90%以上であるから、疎部分14の空隙率が90%未満であると、芝生2の育生空間が十分に確保できず、90%以上とすることにより、その空隙部13において葉先が立った状態で保護される。
【0041】
また、実施例上の効果として、密部分15は、カールした線材12が上下方向に重り合い、溶着部121で多数の線材12,12同士が溶着されているから、強度が得られ、厚さ方向の通気性を確保できると共に、光を通すこともできる。
【0042】
次に、前記マット11の圧縮試験について説明する。前記マット11としては、全体の厚さが30mm、前記密部分15の厚さは4mmで、前記疎部分14の厚さは26mmのものを用いた。試験品Aは密度が1200g/m3のマット11であり、試験品Bは密度が1500g/m3のマット11であり、試験品Cは密度が1900g/m3のマット11である。
【0043】
ここで、代表例として、試験品Bのデータを下記の表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
上記試験品A,B,Cの圧縮試験を行った。図4に示すように、平らな載置面31に、平面が250mm×250mmの試験品を、疎部分14を下にして載置し、試験品の上面中央に直径100mmの載荷盤32を載置し、昇降杆33を降下して載荷盤32により試験品に段階的に荷重を加え、そのときの圧縮率を求めた。尚、各試験品を3個ずつ用意し、それぞれ圧縮試験をおこなった。
【0046】
尚、加えた荷重:単位面積当りの荷重は、85.7N:1.2kN/m3、107.1N:1.5kN/m3、142.9N:2.0kN/m3、178.6N:2.5kN/m3である。
【0047】
試験品Aの試験結果を下記の表2に示し、表2に対応するグラフを図5に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
試験品Bの試験結果を下記の表3に示し、表3に対応するグラフを図6に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
試験品Cの試験結果を下記の表2に示し、表4に対応するグラフを図7に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
上記の圧縮試験の結果から、試験品A,B,Cは、例えば、サッカー場などでコンサートを開催する際などにおいて、十分な強度を有することが分かった。
【実施例2】
【0054】
図8〜図14は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例の保護構造は、前記マット11の上に保護カバーを設けるものである。この保護カバーとしては、図9に示すように、木製や合成樹脂製の平板部41に複数の透孔42を穿設した板状カバー43や、図10〜図11に示すように、前記透光42を有する合成樹脂製の平板部44の下面に、交差方向にリブ部45,45Aを突設し、さらに、下面に複数の脚部46を設けた脚付きカバー47などが例示され、硬質な平板部41,44を有する。尚、脚部46の下面は、前記リブ部45,45Aの下縁より下方に位置し、前記平板部44の下面と脚部46の下面との間により、その平板部44の下方には空間48が形成されるから、脚付きカバー47を植生面1に直接敷設することも可能であり、前記空間48内の芝生2が良好に保護される。しかし、全面積に対して割合は少ないが、脚部46により芝生2が潰され、単独で使用した場合、脚部46対応部分の芝生2を傷めることは避けられない。
【0055】
本実施例では、前記マット11の上に前記脚付きカバー47を重ねて保護構造を構成した。そして、この保護構造について試験を行った。
【0056】
図12に示すように、予備試験では、ヤシマット,藁,しがらネット(樹脂製の網状ネット),芝保護マット,こもなどの保護材51を芝生2の上に敷き、その上に前記脚付きカバー47を配置し、この脚付きカバー47の上にH型鋼などの錘52を載せ、その上から通気孔(図示せず)を備えたポリエチレンシート53で覆い、温度測定を行うと共に、48時間後と96時間後の芝の状態を観察した。また、「なし」は、脚付きカバー47を直接芝生2の上に敷設した例である。尚、予備試験は5月下旬に新潟市で行った。
【0057】
その結果を以下の表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
温度測定からは、しがらネット,芝保護マット,こもを用いた場合、芝生の温度を低く保つ傾向が見られた。
【0060】
96時間後の芝生の状態からしがらネットと芝保護マットが有効であると思われたため、これらの試験を続け、144時間後の結果を観測し、下記の表6の結果となった。
【0061】
【表6】

【0062】
上記の予備試験の結果から、網状ネットであるしがらネットが有効であることが確認されたため、前記マット11の相当品により試験を行った。この相当品は黒色系であった。尚、以下の試験は、6月初旬に新潟市で行った。48時間後の結果は、保護材51にしがらネットを用いた方が芝生2の表面及び内部温度が低く、芝生2には有効と思われた。
【0063】
しかし、マット11の相当品では、芝生2の葉先が立った状態となるのに対して、しがらネットでは、芝生2が倒れる部分がでるため、マット11の相当品を改良し、白色系とし、また、各種寸法のしがらネットを用いて試験を行った。その結果を下記の表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
尚、しがらネットの規格で、例えば「7*7*3.4」は、図13に示すように、網目の開口部分における一辺a=7mm,他辺b=7mm,厚さt=3.4mmのしがらネット61である。尚、しがらネット61は、図13(A)において平面方向に連続し、図13(B)において左右方向に連続し、所定幅を有し、長さ方向に前記マット11と同様にロール状にして巻くことができる。同図に示すように、芝生保護用マットであるしがらネット61は、合成樹脂製の線材62,63からなる網状構造体であり、複数の一側方向の線材62とこれらと交差方向の複数の他側方向の線材63とを交差部64により交差させ、これら線材63,64の間に、空隙部たる桝目65を形成してなる。尚、桝目65は一辺a×他辺bの方形をなす。また、前記線材63,64は、厚さ方向より幅方向が広い帯状をなし、前記交差部64の厚さtは他の部分より厚く形成され、該交差部64の外面は凸状の曲面により構成されている。尚、前記しがらネット61の桝目65は六角形でもよく、形状などは限定されるものではない。また、上記試験では黒又は緑のしがらネット61を用いたが、マット11と同様にしがらネット61も、白,白色系とすることが好ましい。
【0066】
また、8時〜16時までの芝生2の表面温度を測定した結果を図14に示す。
【0067】
以上の結果から、マット11が一番芝生に良いことが分かった。また、保護材51としてしがらネット61を用いたように、このしがらネット61でも必要な効果が得られ、芝保護用として適していることが分かる。特に、この例では桝目64の面積が100mm2以下で、特に良好な結果が得られた。
【0068】
さらに、マット11で、密度の違うものを3種類用いた試験では、下記の表8の結果となった。尚、この試験は、6月中旬に新潟市で行った。尚、試験時期及び試験場所は一例であり、保護構造を用いる季節及び場所はどこでも構わない。
【0069】
【表8】

【0070】
上記試験から、他の保護材51に比べて、いずれのマット11でも芝生2の葉先が立ち、他と比べて一番良好な結果となり、さらに、マット11の中でも、密度1500g/m3のものが脚部46の跡も芝生2につかず、一番黄化が少ない結果となった。
【0071】
また、このように本実施例では、請求項1記載の芝生保護用マットを用い、疎部分14を芝生側にしてマット11を敷設し、このマット11の上にカバーたる脚付きカバー47を敷設したから、カバー47で保護し、かつそのカバー47が受けた荷重をマット11により分散して芝生2への荷重の部分的な集中を防止できる。
【0072】
また、このように本実施例では、空隙部たる桝目65を有し合成樹脂製の線材62,63からなる網状構造体の芝生保護用マットたるしがらネット61を、芝生2上に敷設し、このしがらネット61の上にカバーたる脚付きカバー47を敷設したから、カバー47で保護し、かつそのカバー47が受けた荷重をマット11により分散して芝生2への荷重の部分的な集中を防止できる。しがらネット61は、マット11に比べて構造簡易であるから、安価なものとなり、費用対効果に優れたものとなる。
【0073】
また、このように本実施例では、カバー47の板状材たる平板部44が通気部を有するから、カバー47とマット11を通して芝生2への通気性を確保することができる。
【0074】
また、実施例上の効果として、しがらネット61は他の部分より厚い交差部64を有し、交差部64の外面が凸状の曲面であるから、主として交差部64が接地し、芝生に部分的に荷重が加わることを抑制できる。また、しがらネット61の上に敷設するカバーは各種のものを用いることができるが、特に、空間48を備えたカバーが好ましく、空間48を有するカバー47を用いると共に、芝生2の高さ寸法より厚さ寸法が小さいしがらネット61を用いた場合、前記桝目65を挿通した芝生2が前記空間48内で立った状態で保たれ、良好に育生することができる。尚、空間48を形成するには、上面たる平板部44の下に空間48を構成すると共にしがらネット61の上に接地する部材、例えば脚部46やリブ部45,45A等を備えていればよい。
【実施例3】
【0075】
図15は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例は、マット11を敷く前の芝生2の処理に係る。尚、上述した厚さ30mmのマット11を例に説明する。
【0076】
まず、保護構造を使用する略2〜3週間前に、芝生2の高さを23〜30mm程度に刈ってマット11の厚さ以下にする(最初の刈り込み)。また、芝生2には土壌改良材を散布する。そして、1〜2週間前に、芝生2の高さを21〜28mm程度に刈る(中間の刈り込み)。尚、最初の刈り込みと中間の刈り込みとの間は最低でも1日の間隔を置く。使用の直前(24時間以内)に、芝生2の高さを15〜20mm程度に刈る(直前の刈り込み)。この直前の刈り込みにより、芝生2の高さを前記疎部分14の厚さより低くしておく。そして、マット11を敷く前に十分潅水を行い、この後、芝生2の上にマット11を敷設し、このマット11の上に必要に応じて脚付きカバー47などを敷設する。
【0077】
また、脚付きカバー47を敷設した後、脚付きカバー47の上から潅水することにより、脚付きカバー47自体の温度と内部の空間48の温度とを下げる効果が得られると共に、透孔42からの植生面1への水分の補給を行うことができる。
【0078】
このように本実施例では、使用前に複数回の芝生2の刈り込みを行って徐々に芝生2の高さを下げた後、使用する直前に再度芝生2を刈ることにより、芝生2にストレスを与えず、保護構造中も良好に育生し、保護構造撤去後の状態も良好となり、マット11やしがらネット61を敷設する前に芝生2に適したコンデションを作ることができる。
【0079】
尚、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、立体網状構造体をへちま状と称したが、これに限定されることなく、線材がランダムに絡みあった構造などの各種の形状のものを用いることができる。また、疎部分と密部分の密度は、使用条件などにより適宜選定可能である。また、実施例では、脚付きのカバーを示したが、脚部のないリブ部を備えたカバーでも、リブ部による荷重の集中を防止できる。さらに、しがらネットの形状も適宜選定可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 植生面
2 芝生
11 マット
12 線材
13 空隙部
14 疎部分
15 密部分
42 透孔
43 板状カバー(保護カバー)
44 平板部
45,45A リブ部
46 脚部
47 脚付きカバー(保護カバー)
61 しがらネット(マット)
62,63 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝生上に敷設して該芝生を保護する芝生保護用マットにおいて、前記芝生保護用マットは空隙部を有し合成樹脂製の線材を立体的な網状にした立体網状構造体であって、厚さが25〜35mm、前記線材同士の絡んだ箇所が熱溶着による溶着部で固着され、厚さ方向において密度を変えることにより芝生側が疎部分で反芝生側が密部分であり、前記密部分より前記疎部分が厚く、この疎部分の厚さが17〜33mmで、前記密部分の厚さが2〜8mmであり、前記疎部分の空隙率が90〜98%、前記密部分の空隙率が79〜88%であり、密度が1200〜1900g/m3であり、前記線材が白色であることを特徴とする芝生保護用マット。
【請求項2】
請求項1記載の芝生保護用マットを用い、疎部分を芝生側にして前記マットを敷設し、このマットの上にカバーを敷設したことを特徴とする芝生保護構造。
【請求項3】
前記カバーが通気部を有することを特徴とする請求項2記載の芝生保護構造。
【請求項4】
前記カバーは、透孔を有する平板部の下面に、交差方向にリブ部を突設すると共に複数の脚部を設け、これら脚部の下面は、前記リブ部の下縁より下方に位置することを特徴とする請求項3記載の芝生保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−29696(P2012−29696A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227350(P2011−227350)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2006−346682(P2006−346682)の分割
【原出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(506426421)財団法人 新潟県都市緑花センター (2)
【出願人】(597063277)グリーン産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】