説明

芝生植生基盤材及びその製造方法並びに芝生植生基盤

【課題】 地盤としての適度な強度を確保でき、かつ、踏圧による土壌固結が起きにくく透水性に優れ、また保水性・保肥性にも優れ、芝生の退化・枯死が起きにくい芝生植生基盤とする。
【解決手段】 礫分、砂分及び粘土・シルト分を含む土から粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分を減少させ、該土に保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とを混合し、もって、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下となるように調整して芝生植生基盤材とし、この芝生植生基盤材2を敷き均し、転圧して、厚さ15cm以上の芝生植生基盤1を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生植生基盤材及びその製造方法並びに芝生植生基盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芝生による緑化には、地温の上昇を抑え(ヒートアイランド防止、地球温暖化防止)、雨水の表面流出時間を遅らせ、砂塵が舞い上がるのを防ぐ等の効果があるため、更なる普及が期待されている。従来の芝生による緑化について、自動車による大きい踏圧を受ける駐車場と、人による小さい踏圧を受けるグラウンド等の一般広場とに分けて説明する。
【0003】
(1)駐車場の芝生による緑化には、図2に示すように、樹脂製の芝生保護材50を使用したものが一般的であった(特許文献1)。この芝生保護材50は、平面視で格子点位置に配置した柱状の受圧体51を板状の連設部52で連設してなるものである。その施工は、図1(b)に示すように、掘削現地53上に砕石54を厚さ15cm程度に敷設し、砕石54上にサンドクッション55を厚さ2cm程度に敷設し、サンドクッション55上に前記芝生保護材50を並べて置き、受圧体51及び連設部52の間の空間に受圧体51より少し低いところまで客土56を入れて敷き均し、客土56上に芝生57を張るとともに、芝生57に設けた穴から受圧体51の上面が露出するようにし、芝生57の上から客土56の転圧を行う。施工後、自動車による大きい踏圧は受圧体51の上面で受けるため、芝生57を保護できるというものである。
【0004】
しかし、この芝生保護材50を用いた芝生による緑化には、次の問題があった。
(a)芝生は、生育するための限界土壌厚が30cm、生存するための限界土壌厚が15cmとされている。前記芝生保護材50の製品厚さ(受圧体51高さ)は概ね7cm程度であり、従って芝生が生育するための土壌となる客土56は製品厚さつまり7cmしか確保されていなかった。このため、芝生が生育せず、経年の使用により芝生が退化・枯死することが非常に多い。
(b)また、前記芝生保護材50の受圧体51の相互間隔は概ね8cmと小さいため、客土56を均一に敷き込みにくく、また、均一に転圧をかけにくい構造である。このため、事後に不等沈下してり、雨水が停滞したりしやすく、これも、芝生が退化・枯死する原因となっていた。
【0005】
(2)一般広場の芝生による緑化においては、人による踏圧が小さく、前記芝生保護材50を使うまでもないので、芝生の下地となる客土は15cmあるいは30cmといった十分な土壌厚を確保することができる。しかし、通常の客土では、人の踏圧によっても土壌固結が起こり、芝生の根が伸長できない土壌硬度となりやすい。このため、エアレーション等の維持管理が不可欠であるが、多くの芝生広場は適正な管理がされておらず、芝生は退化することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−295201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、地盤としての適度な強度を確保でき、かつ、踏圧による土壌固結が起きにくく透水性に優れ、また保水性・保肥性にも優れ、芝生の退化・枯死が起きにくい芝生植生基盤材及び芝生植生基盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、次のような検討を経て、本発明に至った。
駐車場として利用できる芝生地を作るためには、次の条件を満たすことが好ましい。
1.地盤としてのCBR(JIS A 1211、貫入量2.5mm及び5.0mmにおけるCBRの大きい方の値)比が20%以上確保されること
2.芝生が生育可能な保水性・保肥性・透水性を持ち、根の伸長が可能な空隙を有する土壌であること(土壌固結しにくいこと)
【0009】
基本的に、一般的な土は、礫分(粒度2mm超〜75mm以下のもの)から砂分(粒度0.075mm超〜2mm以下のもの)及び粘土・シルト分(粒度0.075mm以下のもの)までを満遍なく含んでおり、盛土材として広く使用され、締め固めが十分に行え、CBRの確保が容易である。しかし、踏圧による土壌固化が起きやすく、芝生の根が伸長しにくい。逆に、粒度の揃っている砂あるいは単粒度砕石は、踏圧による土壌固化が起きにくく、芝生の根は伸長しやすいが、保水性・保肥性に劣り、締め固めができないため、自動車が通行すると、動いてしまう。
【0010】
本発明者は、土壌の粒度分布に注目し、粒度分布中の中間部分を削除することにより、地盤としてのCBRを確保でき、かつ、踏圧による土壌固化が起きにくく透水性に優れた土壌が得られることを見出し、さらに、前記削除した中間部分に代えて無機物と有機物とを混合することにより、保水性・保肥性に優れた植生土壌が得られることを見出して、本発明に至った。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(1)礫分、砂分及び粘土・シルト分を含み、保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とが混合され、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下に調整されてなる芝生植生基盤材。
【0012】
(2)礫分、砂分及び粘土・シルト分を含む土から粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分を減少させ、該土に保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とを混合し、もって、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下となるように調整することを特徴とする芝生植生基盤材の製造方法。
【0013】
(3)前記芝生植生基盤材を敷き均し、転圧して、厚さ15cm以上とした芝生植生基盤。
【0014】
ここで、前述したとおり、礫分は粒度2mm超〜75mm以下のものであり、砂分は粒度0.075mm超〜2mm以下のものであり、粘土・シルト分は粒度0.075mm以下のものである。
【0015】
無機物としては、焼成鋳物砂、炭化スラッジ、破砕瓦等を例示でき、これらから選ばれる少なくとも1種を混合することが好ましい。焼成鋳物砂は、廃棄鋳物砂を焼成したものであり、主に保水性を高める。炭化スラッジは、スラッジ(下水や工場廃液の処理に伴って出る汚泥)を高温で炭化させたものであり、主に保水性を高める。破砕瓦は、廃棄瓦を粒状に破砕したものであり、主に保水性と耐圧性を高める。
【0016】
有機物としては、堆肥(バーク堆肥等)、薬草、腐葉土等を例示でき、これらから選ばれる少なくとも1種を混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の芝生植生基盤材及び芝生植生基盤によれば、地盤としての適度な強度を確保でき、かつ、踏圧による土壌固結が起きにくく透水性に優れ、また保水性・保肥性にも優れ、芝生の退化・枯死が起きにくいという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は実施例の芝生植生基盤を示す断面図、(b)は従来の芝生保護材を使用した保護工の断面図である。
【図2】(a)は従来の芝生保護材の平面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
礫分、砂分及び粘土・シルト分を含む土から粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分を減少させ、該土に保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とを混合し、もって、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下となるように調整して芝生植生基盤材とし、この芝生植生基盤材を敷き均し、転圧して、厚さ15cm以上の芝生植生基盤を施工する。
【実施例1】
【0020】
岐阜県関市産出の真砂土(通称サバ土)は礫分、砂分及び粘土・シルト分を満遍なく含む土であり、この土をふるいにかけ、この土から粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分を概ね40重量%削除した。この削除処理後のサバ土に対して、次の配合比で無機物及び有機物を混合して、芝生植生基盤材を得た。
【0021】
サバ土 78重量%
焼成鋳物砂(無機物:ビオトープサンド) 5重量%
炭化スラッジ(無機物:カーボサンド) 5重量%
破砕瓦(無機物:ルティアゲート) 8重量%
バーク堆肥(有機物) 4重量%
【0022】
ビオトープサンドは、有限会社ACRECOの商品名であり、廃棄鋳物砂を焼成したものである。カーボサンドは、株式会社クリエイトの商品名(登録商標)であり、故紙スラッジを高温で炭化させたものである。ルティアゲートは、春是産業株式会社の商品名(登録商標)であり、廃棄瓦を細粒状に破砕したものである。
【0023】
得られた芝生植生基盤材の粒度分布を調べたところ、粒度2mm超〜75mm以下の成分が74.9重量%、粒度0.075mm超〜2mm以下の成分が13.1重量%、粒度0.075mm以下の成分が12.0重量%であり、特に粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分は11.0重量%であった。
【0024】
得られた芝生植生基盤材を用いて、図1(a)に示すように、芝生植生基盤1を施工した。
すなわち、駐車場予定の掘削現地3上に砕石4を厚さ15cm程度に敷設し、砕石4上に上記で得られた芝生植生基盤材2を厚さ15cm以上に敷き均し、その芝生植生基盤材2を3トン・ローラー車で転圧して厚さ15cmの芝生植生基盤1とし、芝生植生基盤1上に芝生7(具体的にはティフトン芝とコウライ芝)を張った。
【0025】
なお、上記転圧後の芝生植生基盤1の諸性質を現場測定又はサンプル測定したところ、次のとおりであった。透水係数は、JIS A 1218「土の透水試験(変水位)」(供試体作成、飽和方法については、JSF T 711呼び名Aにより突固め回数25回で作成)に従って測定した。CBRは、段落0008で説明した方法に従って測定した。
透水係数 6.32×10-4cm/秒
CBR 29.7%
pH 6.5〜7.5
【0026】
こうして芝生7により緑化した駐車場を、実際に駐車場として使用しながら経時観察したところ、芝生7の根は順調に伸長し、施工後1年経っても、芝生植生基盤1の不等沈下や土壌固化はほとんど起きず、芝生の退化・枯死は見られなかった。これは、上記のとおり粒度分布を調整した芝生植生基盤1が、地盤としての適度な強度を確保しており、かつ、踏圧による土壌固結が起きにくく透水性に優れ、また無機物及び有機物の混合により保水性・保肥性にも優れるためであると考えられる。また、従来のような樹脂製の芝生保護材50を必要とせず、芝生植生基盤1の厚さを十分にとることができるからでもある。
【0027】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)実施例において、焼成鋳物砂、炭化スラッジ及び破砕瓦のうち、いずれか1種だけ、あるいは、焼成鋳物砂と炭化スラッジの2種、焼成鋳物砂と破砕瓦の2種、炭化スラッジと破砕瓦の2種を混合して実施することもできる。
(2)上記の芝生植生基盤1は、駐車場以外の所、例えば駐車場よりも踏圧が小さい一般的な芝生広場においても実施でき、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1 芝生植生基盤
2 芝生植生基盤材
3 掘削現地
4 砕石
7 芝生

【特許請求の範囲】
【請求項1】
礫分、砂分及び粘土・シルト分を含み、保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とが混合され、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下に調整されてなる芝生植生基盤材。
【請求項2】
礫分、砂分及び粘土・シルト分を含む土から粒度0.1mm超〜1.5mm以下の成分を減少させ、該土に保水性又は保肥性を高めるための無機物と有機物とを混合し、もって、全体の粒度構成を、2mm超〜75mm以下の成分が70重量%以上、0.075mm以下の成分が10%重量以上、0.1mm超〜1.5mm以下の成分が15%以下となるように調整することを特徴とする芝生植生基盤材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の芝生植生基盤材を敷き均し、転圧して、厚さ15cm以上とした芝生植生基盤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−188759(P2011−188759A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55550(P2010−55550)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(510069788)昭和造園土木株式会社 (2)
【Fターム(参考)】