説明

芝生用除草剤、およびこれを用いた芝生内の除草方法

【課題】芝生の成育を阻害せず、安全に、かつ雑草の除草力が優れたスルホニルウレア系芝生用除草剤を提供する。
【解決手段】一般式(I)で示されるベンゼンスルホニルウレア誘導体化合物、または一般式(II)で示されるチオフェンスルホニルウレア誘導体化合物を有効成分として含む芝生用除草剤である。また、スルホニルウレア化合物を利用してイネ科、カヤツリグサ科、広葉雑草を選択的に除草する方法である。
【化16】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生用除草剤およびこれを用いた芝生内の除草方法に関し、より詳細には、ベンゼンスルホニルウレア誘導体またはチオフェンスルホニルウレア誘導体を有効成分とした芝生用除草剤およびこれを用いた芝生内の除草方法に関する。
【背景技術】
【0002】
除草剤として多様なスルホニルウレア化合物が知られており、広く農耕地で使用されている。例えば、特許文献1には、下記一般式(X1)で示される化合物が開示されている。
【化1】

【0003】
式 [X1]において、LはOH、OC(O)R11〔R11はH、C1〜5アルキル、C2〜3アルケニルなどである。〕、OC(O)NHR12〔R12はH、C1〜6アルキル、C3〜4アルケニルなどである。〕、OC(O)OR13〔R13はH、C1〜6アルキル、C2〜3アルケニルなどである。〕であり、RはH、F、Cl、Br、NO、CF、C1−C3のアルキル、C1−C3のアルコキシ基などであり、RはH、C1−C4のアルキル基などであり、RはH、CHなどであり、RはH、CH、OCHなどであり、Aはピリミジンまたはトリアジン基である。
【0004】
特許文献2には、下記一般式[X2]で示される化合物が開示されている。
【化2】

【0005】
式 [X2]において、RはF、Cl、Br、NO、C1−C4のアルキル、C2−C4のアルケニル、C2−C4のハロアルケニル、C2−C4のアルキニン、C1−C4のハロアルキル、C1−C4のアルコキシ、C1−C2のアルキル基であって、OH、アルコキシ、アルキルチオ、フェニル、CHCNが置換されたものであり、Rは、CH(R16)CN[Rl6はアルキルである]などであり、Xはアルキル、アルコキシなどであり、Yはアルキル、アルコキシ、ハロゲンなどである。
【0006】
特許文献3には、下記一般式[X3]で示される化合物が開示されている。
【化3】

【0007】
式 [X3]において、QはRで置換されたC1−C4のアルキル基であり、RはOR〔RはH、C1−C4のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル基などである〕、S(O)〔nは0〜3の整数であり、RはC1〜4アルキル、C3〜4アルケニルなどである〕、CO〔nは0〜3の整数であり、RはC1〜4アルキル、C3〜4アルケニルなどである〕などであり、Lは、下記式で示される基〔R12はH、CHである〕である。
【0008】
【化4】

【0009】
特許文献4には、下記一般式(X4)で示される化合物が開示されている。
【化5】

【0010】
式 [X4]において、RとRはそれぞれ独立にH、ハロゲン、C1〜4アルキルなどであり、ZはN、CHであり、RはH、アルキル、Fであり、RはH、CHであり、XはO、Sであり、Rはハロアルキル、アルコキシアルキルである。
【0011】
また、特許文献5には、下記一般式[X5]のベンゼンスルホニルウレア化合物が開示されている。
【化6】

【0012】
式 [X5]において、Rはハロアルキルであり、X、Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれCH、OCH、Clなどであり、ZはCHまたはNである。
【0013】
特許文献6には、下記一般式 [X5]のチオフェンスルホニルウレア化合物が開示されている。
【化7】

【0014】
式 [X6]において、Rは、1〜3個のハロゲンで置換されたC1〜C6アルキル基であり、YはCH、OCHであり、ZはCHまたはNである。
【0015】
農薬は、大きく農耕地用(作物用)と非農耕地用とに分けられる。農耕地用は、人間が食用として利用する稲、小麦、豆、トウモロコシなどの穀類、各種野菜、果物類を対象としたものであり、定期的な耕耘、作物の栽培や作物の輪作が行われる。一方、非農耕地用とは、森林、造景地、鉄道線路の周りなどを対象として使用するものであり、その大部分を自然状態に置くか、または農耕地とは全く異なる管理が行われている。従って、農耕地用と非農耕地用では、除草剤の種類や使用方法は大いに異なっている。庭園、ゴルフ場、造景地などの芝生地では、芝生そのものが低い草高であるために雑草の生育には有利で、農耕地とは異なって耕耘なしに永年維持されているため、多年生の雑草が多く発生する。
【0016】
スルホニルウレア系除草剤は、高い作物選択性を有しており、農耕地に主に使用されるが、一部非農耕地である芝生分野も使用される例がある。特に芝生を主に適用されるスルホニルウレア除草剤は、表1に例示するものがある。
【0017】
【表1】

【0018】
表1に例示したスルホニルウレア除草剤は、二つの類型に大別される。R1化合物とR2化合物は、イネ科雑草の1つであるスズメノカタビラ(Poa annua)をよく防除し、暖地型芝生であるノシバ(Zoysia japonica)、高麗芝(Zoysia matrella)、行儀芝(Cynodon dactylon)の成育には支障がなく安全である。しかし、寒地型芝生であるベントグラス(Agrostris palustris)、ケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis)などに対して成育上安全とはいえない。ゴルフ場では、ティー・グラウンドやグリーンにはベントグラスやケンタッキーブルーグラスを使用することが多く、このため、R1化合物やR2化合物はティー・グラウンドやグリーンには使用できず、ノシバ、高麗芝などの暖地型芝生で造成されたフェアウェイにのみに使用される。しかし、フェアウェイで使用された除草剤がゴルファーの履き物に付いてグリーンに移行して被害をもたらすこともあり、R1化合物とR2化合物の使用には大きな制約がある。
【0019】
一方、R3化合物とR4化合物は、R1化合物やR2化合物と異なり、暖地型芝生は言うまでもなく寒地型芝生にも安全である。しかし、芝生においてしばしば問題となる雑草であるスズメノカタビラ、メヒシバ(Digitaria sanguinalis)などの防除が充分でなく、従って広葉雑草やカヤツリグサ科雑草を対象とする除草に限っての使用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,332,611号明細書
【特許文献2】米国特許第4,786,314号明細書
【特許文献3】米国特許第4,838,926号明細書
【特許文献4】ヨーロッパ特許第125,205号明細書
【特許文献5】韓国特許第10−70675号明細書
【特許文献6】米国特許第5,461,024号明細書
【特許文献7】世界知的所有権機関国際事務局 国際公開第94/23063号パンフッレット
【特許文献8】世界知的所有権機関国際事務局 国際公開第92/16522号パンフッレット
【特許文献9】日本特開平60−208977号公報
【特許文献10】世界知的所有権機関国際事務局 国際公開第92/00952号パンフッレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは、従来のスルホニルウレア系芝生用除草剤が持っている問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、芝生の成育を阻害せず、安全に、かつ雑草の除草力が優れたスルホニルウレア系芝生用除草剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の芝生用除草剤は、下記一般式(I)で示されるベンゼンスルホニルウレア誘導体化合物を有効成分としている。式中、Rは1〜3個のハロゲンで置換された炭素数1〜6のハロアルキル基であり、X、YはそれぞれCH、OCH、またはClから選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、ZはCHまたはNである。
【化8】

【0023】
また、本発明の芝生用除草剤は、下記一般式(II)で示されるチオフェンスルホニルウレア誘導体化合物を有効成分としている。式中、Rは、1〜3個のハロゲンで置換されたC1〜C6アルキル基であり、YはCHまたはOCHであり、ZはCHまたはNである。
【0024】
【化9】

【0025】
また、本発明に係る除草方法は、上記一般式(I)または一般式(II)を利用してイネ科、カヤツリグサ科、広葉雑草に対して選択的除草する方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、芝生に対する安全性及び除草力が従来のスルホニルウレア芝生用除草剤に比べてはるかに優れているため、芝生への処理時に優れた雑草防除効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の芝生用除草剤の1つは、一般式(I)で示されるベンゼンスルポニル誘導体を有効成分としている。この好ましい具体例が、N−[(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)アミノカルボニル−2−(2−フルオロ−1−ヒドロキシ−n−プロピル)ベンゼンスルホンアミド(N−[(4,6−dimethylpyrimidin−2−yl)aminocarbonyl−2−(2−fluoro−1−hydroxy−n−propyl)benzenesulfonamide]〔式(A)〕である。
【0028】
【化10】

【0029】
また、本発明は、一般式(II)で示されるチオフェンスルホニルウレア誘導体とすることもできる。この好ましい具体例が、3−(2−フルオロメチル−1,3−ジオキサラン−2−イル)−N−[(4−メトキシ−6−メチルトリアジン−2−イル)アミノカルボニル]4−チオフェンスルホンアミド(3−(2−fluoromethyl−1,3−dioxalan−2−yl)−N−[(4−methoxy−6−methyltriazin−2−yl)aminocarbonyl]4−thiophene sulfonamide)〔式(B)〕ある。
【0030】
【化11】

【0031】
本発明の芝生用除草剤は、本発明の一般式(I)のベンゼンスルポニル誘導体、または一般式(II)のチオフェンスルホニルウレア誘導体を有効成分とするが、一般式(I)のベンゼンスルポニル誘導体と一般式(II)のチオフェンスルホニルウレア誘導体を混合して用いても何ら差し支えない。
【0032】
芝生用除草剤は、対象とする芝生成育領域に撒布する。このとき、上記有効成分を単独で用いて撒布してもよいが、実用上担体などとともに配合されて組成物として製剤化した芝生用除草剤とするのが便利である。組成物として製剤化する場合には、有効成分とともに、その他固体担体、液体担体または界面活性剤などを配合するのがよい。
【0033】
芝生用除草剤としたときの有効成分濃度は、特に限定するものではないが、通常最終製品に対して1〜80重量%(w/w)含むことが好ましく、特に5〜40重量%(w/w)とするのが好ましい。
【0034】
本発明は、有効成分である一般式(I)のベンゼンスルポニル誘導体あるいは一般式(II)のチオフェンスルホニルウレア誘導体の効果に支障を及ぼさない限り、これと同時に固体担体、液体担体、界面活性剤、さらに増量剤、増粘剤、着色剤、拡展剤、展着剤、凍結防止剤、固結防止剤などのその他添加剤を配合して使用することができ、本発明はこれらを同時に配合して使用することに何ら制限を加えるものではない。
【0035】
ここで、芝生用除草剤に配合される固体担体を例示すれば、無機粉末(カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、滑石、珪藻土、雲母、石こう、炭酸カルシウム、燐灰石、シリコンヒドロキシド、酸化アルミニウムなど)、植物性粉末(豆粉、小麦粉、大鋸屑、タバコ粉、澱粉、結晶性セルロース、密蝋など)、高分子物質粉末(石油樹脂、塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂など)などがある。
【0036】
液体担体を例示すれば、水、アルコール類(メタノール、エチルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルナフタレンなど)、ハロゲン化化合物(クロロホルム、四塩化炭素、クロルベンゼンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテートなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテルアルコール類(エチルグリコール、エチルエーテルなど)などがある。
【0037】
界面活性剤を例示すれば、陽イオン性界面活性剤(ブロモセチルトリメチルアンモニウム塩など)、陰イオン性界面活性剤(アルキルアリールスルホン酸、アルキルオキシスルホン酸、アリールスルホン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土金属塩、アンモニウム塩)、非イオン性界面活性剤(脂肪族アルコール、キャスター・オイル、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールまたはホルムアルデヒドの縮合物)がある。
【0038】
本発明の芝生用除草剤は、一般式(I)のベンゼンスルポニル誘導体、一般式(II)のチオフェンスルホニルウレア誘導体の他に、従来公知の他の有効除草成分と組合わせて使用することも可能である。組合わせて使用可能な有効除草成分を例示すれば、ペンディメタリン(pendimethalin)、ベンフルラリン(benfluralin)、エタルフルラリン(ethalfluralin)、オリザリン(oryzalin)、プロジアミン(prodiamine)、ジチオピル(dithiopyr)、トリアジフラム(triaziflam)、プロピザミド(propyzamide)、オキサジクロメホン(oxaziclomefone)、ナプロパミド(napropamide)、カフェンストロール(carfenstrole)、オキサジアルギル(oxadiargyl)、ベンフレセート(benfuresate)、エトフメセート(ethofumesate)、メコプロップ(mecoprop)、MCPP、アシュラム(asulam)、エンドタール(endothal)、メタミホップ(metamifop)、フルアジホップブチル(fluazifop−butyl)、フェノキサプロップエチル(fenoxaprop−ethyl)、フェノキサプロップ・P・エチル(fenoxaprop−P−ethyl)、ビスピリバックナトリウム塩(bispyribac−sodium)、ピリベンゾキシム(pyribenzoxim)が挙げられる。
【0039】
撒布量は、使用時期、気象条件、対象場所、対象雑草、発生傾向、環境条件、使用する製剤の剤型等によって変わるので一律に定義できるものではないが、通常、芝生用除草剤中の有効成分として1ヘクタール当り1〜1000g(g.ai/ha)、好ましくは5〜500g.ai/haである。
【0040】
本発明の芝生用除草剤は、ノシバなどの暖地型芝生、ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラスのような各種の寒地型芝生で発芽前または発芽後処理によってメヒシバ、スズメノカタビラのような各種のイネ科雑草、ハマスゲ(Cyperus rotundus)、アイダクグ(Kyllinga brevifolia)、チャガヤツリ(Cyperus amuricus)などのカヤツリグサ科雑草、クローバー、ヒメムカシヨモギ、チドメグサ、ヤハズソウ、スミレ、ニシキソウなどの多様な広葉雑草が選択的に除草されることを確認した。
【0041】
そこで本発明に係る除草方法は、一般式(I)のベンゼンスルポニル誘導体あるいは一般式(II)のチオフェンスルホニルウレア誘導体を有効成分とした芝生用除草剤を用いてイネ科、カヤツリグサ科、広葉雑草に対して選択的除草する方法である。
【0042】
ここでイネ科雑草は、メヒシバ、スズメノカタビラなどであり、カヤツリグサ科雑草は、例えば、ハマスゲ、アイダクグ、チャガヤツリなどであり、広葉雑草は、シロツメクサ、タンポポ、イヌノフグリ、スベリヒユ、クローバー、ヒメムカシヨモギ、チドメグサ、ヤハズソウ、スミレ、ニシキソウなどであるが、これらに制限されるものではない。
【実施例1】
【0043】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
1.芝生用除草剤組成物の調製
(1) 組成物1(実施例)
[配合]
* 有効成分:N−[(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)アミノカルボニル−2−(2−フルオロ−1−ヒドロキシ−n−プロピル)ベンゼンスルホンアミド];10%(w/w)
* 界面活性剤:エトキシ化ノニルフェノール、硫酸アンモニウム塩を含むモノエーテル(9051−57−4)、リグノスルホン酸ナトリウム塩(8061−51−6)、二酸化ケイ素(7631−86−9)の混合物;10%(w/w)
* 固体担体:二酸化ケイ素(7631−86−9);5%(w/w)
* 増量剤:パイロフィライト(葉蝋石、Pyrophyllite);75%(w/w)
[製剤化]
有効成分化合物をハンマーミルで微粉砕し、界面活性剤、固体担体及び増量剤を混合した後、さらにハンマーミルで粉砕混合し、粒径100ミクロン以下にした。これに適量の上水(水量は、組成物の撒布量を2,000L/haとし、有効成分が所定量撒布されるように決めた)を加えて水和剤とした後、US50号の篩(sieve)にかけた後容器に保管した。
【0045】
(2) 組成物2(実施例)
[配合]
* 有効成分:3−(2−フルオロメチル−1,3−ジオキサラン−2−イル)−N−[(4−メトキシ−6−メチルトリアジン−2−イル)アミノカルボニル]4−チオフェンスルホンアミド;10%(w/w)
−界面活性剤:エトキシ化ノニルフェノール、硫酸アンモニウム塩を含むモノエーテル(9051−57−4)、リグノスルホン酸、ナトリウム塩(8061−51−6)、二酸化ケイ素(7631−86−9)の混合物;10%(w/w)
−補助剤:二酸化ケイ素(7631−86−9);5%(w/w)
−増量剤:パイロフィライト(Pyrophyllite SP);75%(w/w)
[製剤化]
組成物1と同様にして組成物を調製した。
【0046】
(3) 組成物3(比較例)
対照物質として市販のスルホニルウレア芝生用除草剤であるピラゾスルフロンエチル水和剤〔東部精密化学株式会社(韓国)の市販製品〕を用いた。
【0047】
(4) 組成物4(比較例)
対照物質として市販のフラザスルフロン水和剤〔東部ハイテク株式会社(韓国)の市販製品〕を用いた。
【実施例2】
【0048】
2.芝生に対する薬害状況評価
市販の暖地型芝生であるノシバ、寒地型芝生または西洋芝であるベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラスのマットをそれぞれ購買して、マットを横10cm、縦20cmに切断した後、砂壌土と配合土(富農園芸用土3号)とを1:1(重量比)の割合で混合した土壌を充填した表面積300cmの四角形プラスチックポットに移植した。移植後、毎週1回草高0.5〜1.0cmで刈取りし、1ヶ月間昼間25〜30℃、夜間15〜25℃に維持した温室で生育させた。芝生用除草剤組成物のそれぞれを、日本のゴルフ場における通常の使用量である2,000L/haで撒布した。このとき、各組成物に加える水量を調節して、この撒布量で、有効成分撒布量がそれぞれ400、200、100、50、25、12、6、3g.ai/haとなるようにした。撒布は、ティージェットノズル〔スプレーシステム社(Spraying Systems Co.,USA)製、「Teejet 8002」(型番)〕を装着したトラックスプレヤー〔アールアンドスプレー社(R&D Sprayer,USA)製、「Track sprayer」〕を使用した。組成物それぞれを撒布してから2週間後及び4週間後に、芝生の薬害状況を0〜10スケール(0:薬害なし、10:完全枯死)で評価した。各試験は3回反復実施し、それぞれを平均して評価結果の数値とした。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2の評価結果から、本発明の芝生用除草剤組成物である組成物1は、100g.ai/ha以下では評価した全ての芝生種に対して安全性に優れ、400、200g.ai/haでも薬害は僅かであった。この芝生に対する薬害安全性では、組成物1は、比較に用いた市販品である組成物3とほぼ同程度であった。
【0051】
本発明の芝生用除草剤組成物である組成物2は、暖地型芝生であるノシバに対しては、100g.ai/ha以下で薬害がなく安全性が高かったが、寒地型芝生に対しては、25g.ai/haと芝生を完全に枯死させる甚だしい薬害が発生し、寒地型芝生に対しては安全性が不充分であった。この傾向は、市販品である組成物4と類似して、組成物4は、ノシバに対しては、50g.ai/ha以下で安全性があったが、寒地型芝生についてはどの種類の芝生に対しても3g.ai/haでも完全に枯死させ、選択性が全く認められなかった。すなわち、組成物2は、組成物4と比較して、ノシバに対しては相対的に安全であり、寒地型芝生に対しては、10g.ai/ha以下では安全性が十分高いとはいえないが、組成物4よりは良好であり、全般的評価として芝生安全性が組成物2は、組成物4より良好であった。
【実施例3】
【0052】
3.各種雑草に対する効力評価
表面積300cmの四角のプラスチックポットに砂壌土と配合土(富農園芸用土3号)を1:1(重量比)の割合で混合した土壌を充填して、イネ科雑草であるスズメノカタビラ及びメヒシバ、広葉雑草であるシロツメクサ、ヤハズソウ、ヒメムカシヨモギ、イヌノフグリ及びスベリヒユ、カヤツリグサ科雑草であるチャガヤツリなどの8種の雑草種子を各50ないし100粒ずつ種蒔した。これらの雑草は、芝生において発生する代表的な雑草である。種蒔したポットを、昼間25〜30℃、夜間15〜25℃に維持される温室に置いて定期的に潅水し、種蒔してから14日目に雑草が約3葉期に至ったとき、前記と同じ方法で別個の2ポットに雑草を再び種蒔して芝生用除草剤組成物である組成物をそれぞれ撒布した。2週間生育させたポットへの撒布は、発芽後(post−emergence)処理、種蒔した直後のポットへの撒布は、発芽前(pre−emergence)処理の条件として評価した。撒布方法などは実施例2の評価と同じにした。それぞれの組成物を撒布してから2週間後に各雑草に対する効果を0〜100スケール(0:効果なし、100:枯死)で評価した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
芝生に発生する各種の雑草に対する効力評価の結果、組成物1は、50〜100g.ai/haでメヒシバ、スズメノカタビラなどのイネ科雑草を含め、イヌノフグリを除いた草種に対して発芽前処理または発芽後処理で80〜100%の防除力を表した。前記芝生に対する薬害状況評価において、組成物1は400g.ai/haの高い薬量でも芝生に対する薬害が僅かであり、100g.ai/haでは薬害が全く認められなかった。従って、組成物1は、50〜100g.ai/haで処理すれば、暖地型芝生と寒地型芝生のいずれに対しても安全で、大部分の雑草を防除することができる。
【0055】
前記芝生に対する薬害状況評価において、組成物1の芝生に対する安全性は組成物3と類似していた。雑草に対する効力面では、組成物3は広葉及びカヤツリグサ科雑草に対する防除力は組成物1と類似していたが、イネ科雑草であるメヒシバ及びスズメノカタビラに対しては最高の薬量である100g.ai/haでも20〜50%に過ぎず、防除効果を期待することができなかった。従って、組成物3は、イネ科雑草に有効な他の除草剤を別途に使用せねばならないのに対し、組成物1は、各種の芝生に対する安全性は組成物3と同等でありながら、組成物3が防除できないイネ科雑草まで防除するという面で著しい差別性を有しているといえる。実際の芝生において広葉雑草の防除は他の除草剤や頻繁な刈取りにより簡単に行うことができ、芝生とその形状及び生育習性に類似しているイネ科雑草がはるかに重要である。
【0056】
組成物2は、組成物1に比べてイネ科雑草であるメヒシバ及びスズメノカタビラに対する効果がむしろ高い。すなわち、50〜100g.ai/haの使用でメヒシバ及びスズメノカタビラを90%以上防除することができた。シロツメクサ、イヌノフグリ、チャガヤツリに対しては組成物1に比べてやや劣勢であり、その他は対等であった。
【0057】
芝生に対する薬害状況評価において、組成物2は、組成物4と同じく暖地型芝生に対して安全性が十分であった。雑草に対する効力面では、組成物2は、組成物4に比べてメヒシバ、スズメノカタビラに対しては同等であり、タンポポに対しては優れ、チャガヤツリ、シロツメクサに対しては劣っていた。組成物4は、スズメノカタビラの防除用として主に使用されている。スズメノカタビラは、寒地型芝生に類似しており、薬剤で防除し難い問題のある雑草であり、組成物4は芝生に薬害があることを認めつつも使用されている除草剤である。組成物1は、スズメノカタビラに対する除草力が組成物4に似ており、暖地型芝生に対して十分な安全性を持っているため、暖地型芝生におけるスズメノカタビラ防除専用として使用することができる。
【0058】
芝生分野のうちゴルフ場は世界的に大きい市場を形成しているが、韓国と日本は、フェアウェイは主に暖地型芝生で造成されており、組成物4の除草剤でスズメノカタビラを防除することがしばしばある。しかし、グリーンやティー・グラウンドには、ベントグラスやケンタッキーブルーグラスなどの寒地型芝生が使用されていることが多く、フェアウェイで使用された組成物4がゴルファーや作業者の履き物や器具に付いてグリーンやティー・グラウンドに深刻な薬害を引き起こすことがよくある。従って、組成物4は、グリーンから100m以内では使用しないように制限を設けている。フェアウェイで使用された組成物4がグリーンに移動する量は極く僅かであるが、それにも拘わらず被害が発生するのは、表2に示すように、3g.ai/haの極少量で寒地型芝生を枯死させる性質があることからもわかる。
【0059】
組成物2は、寒地型芝生に対して使用できる程の安全性はないが、10g.ai/ha以下の少ない薬量では組成物4に比べて安全性が著しく高く、スズメノカタビラなどの雑草を防除する目的として暖地型芝生に使用したとき、ゴルファーや作業者によって移動してグリーンやティー・グラウンドで薬害を引き起こす危険性は著しく少くなる。従って、組成物2は、組成物4と同じように暖地型芝生に限って使用することになるが、隣接する寒地型芝生で被害を引き起こす危険性も著しく少くなるので、組成物2は、組成物4よりは使用の制約が少なくなるといえる。
【実施例4】
【0060】
4.実地での評価
(1)組成物1を用いての実地評価
夏季の代表的なイネ科雑草であるメヒシバと、難防除の多年生カヤツリグサ科であるアイダクグとが優占した芝生で実質的な効果を評価した。評価は、韓国大田広域市儒城区道龍洞大徳研究団地に位置したゴルフ場で、2008年5月から7月までに行った。この評価を行った時、メヒシバは約4葉期、アイダクグは生育期であった。薬剤処理を行ってから20日後の結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
組成物1は、ノシバはもとより、ケンタッキーブルーグラスに対しても200g.ai/haでも薬害が認められず、50g.ai/haでメヒシバを80%、アイダクグを100%防除した。組成物3は、メヒシバに対しては効果がほとんどなく、アイダクグに対しても効果は不充分であった。従って、ゴルフ場に組成物1を50〜100g.ai/ha使用すれば、組成物3に比べて遥かに優れた防除効果が得られるということが立証された。
【0063】
(2)組成物2を用いての実地評価
難防除多年生雑草であるスミレが優占した優先的に茂る芝生で実質的な効果を評価した。評価は、韓国大田広域市儒城区魚隱洞52番地に位置した韓国生命工学研究院内の自然にスミレが優占した芝生で2007年5月から6月までに行った。薬剤処理を行ってから14日後に芝生を1回刈取りした。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
組成物2及び組成物4をそれぞれ50g.ai/haの同じ薬量で比較したとき、両方ともノシバに対して薬害がなかった。スミレは、除草剤では防除され難い雑草であるが、処理してから14日後まではスミレがやや抑制される程度以上の大きな効果はなかったが、14日後に行った刈取りした後では、組成物2ではスミレが再生さずほとんど完璧に防除された。一方、組成物4では、刈取りした後にスミレが再生して30日後には防除効果が低くなった。従って、組成物2を50g.ai/ha使用すれば、組成物4に比べて遥かに優れた防除効果が得られるということが立証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)〔式中、Rはハロアルキルであり、X、Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれCH、OCH、またはClであり、ZはCHまたはNである。〕
で示されるベンゼンスルホニルウレア誘導体化合物を有効成分として含む芝生用除草剤。
【化12】

【請求項2】
下記一般式(II)〔式中、Rは1〜3個のハロゲンで置換されたC1〜C6アルキル基であり、YはCHまたはOCHであり、ZはCHまたはNである。〕で示されるチオフェンスルホニルウレア誘導体化合物を有効成分として含む芝生用除草剤。
【化13】

【請求項3】
前記一般式(I)の化合物は、下記構造式(A)で示されるN−[(4,6−ジメチルピリミジン−2−イル)アミノカルボニル−2−(2−フルオロ−1−ヒドロキシ−n−プロピル)ベンゼンスルホンアミド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の芝生用除草剤。
【化14】

【請求項4】
前記一般式(II)の化合物は、下記構造式(B)で示される3−(2−フルオロメチル−1,3−ジオキサラン−2−イル)−N−[(4−メトキシ−6−メチルトリアジン−2−イル)アミノカルボニル]4−チオフェンスルホンアミド化合物であることを特徴とする請求項2に記載の芝生用除草剤。
【化15】

【請求項5】
請求項3に記載の構造式(A)の化合物を、ノシバを含む暖地型芝生またはベントグラス、ケンタッキーブルーグラスを含む寒地型芝生の発芽前または発芽後に撒布することによるイネ科、カヤツリグサ科、広葉雑草の1以上を選択的に除草する方法。
【請求項6】
請求項4に記載の構造式(B)の化合物を、ノシバを含む暖地型芝生またはベントグラス、ケンタッキーブルーグラスを含む寒地型芝生の発芽前または発芽後に撒布することによるイネ科、カヤツリグサ科、広葉雑草の1以上を選択的に除草する方法。

【公開番号】特開2010−37346(P2010−37346A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182509(P2009−182509)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(509221238)牧牛研究所株式会社 (1)
【Fターム(参考)】