説明

花立て容器の献花保持スタンドおよび花立て容器

【課題】献花量を容易に調整できる花立て容器の献花保持スタンドを提供する。また、少量の献花量であっても、切花全体の形・バランスを保持し、美観を保てる花立て容器を提供する。
【解決手段】有底筒状の容器本体110と、容器本体110に装着固定される献花保持スタンド120を備える。献花保持スタンド120は、容器本体110の口部111に装着される蓋プレート121と、蓋プレートの中央挿入穴121Aから挿入される挿し花1を垂直にガイドし茎部1Aを垂直に保持する保持筒部122と、蓋プレート121の装着姿勢で花立て容器1の内周面に付勢状態で密着する複数の固定金具123を具備する構成とする。蓋プレート121の中央挿入穴121Aは複数の内角部をもつ非円形の形状とされ、かつその周囲に周辺挿入穴121B、121Cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墓石前方に設置される花立て容器に装着される献花保持スタンドと、同献花保持スタンドを用いた花立て容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの墓地は、高台で見晴らしがよく、また、風通しのよい場所に造られている。かかる墓地に設置される墓石は前方に花立てを備え、花立てには左右2本セットで献花用の円筒形(陶器製やステンレス製)の花立て容器が設置されている。花立て容器は口径が比較的大きい(直径約75mmから90mmある)ことから、容器一杯に献花することが通例となっている。特に南九州ではお墓に献花を欠かさないところが多い。容器一杯に献花すると、挿した切花の全体の形やバランスを保持し、美観を保てるが、献花代が高く無駄が多い。一方、少量の献花では容器内の密度が不足し、全体の形やバランスを保持しにくい。特に、風の強い高台の墓地にあっては、花が強風で向きを変えたり容器内で回転して、全体の形やバランスが崩れ、美観を損ねる問題があった。
【0003】
また、夏場は容器内の水の吸収・蒸発により水の消耗が激しく水枯れを生じ、あるいは水温が上昇して中の水が腐敗し、早期に花を傷める問題がある。かかる水管理の問題に対しては、従来より、早期の水切れを防ぐ給水装置を設置するもの(特許文献1)や、水温の上昇を防ぐため容器を断熱構造とするもの(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−060315号公報
【特許文献2】特開2004−129974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の問題、すなわち、強風により挿し花全体の形やバランスが崩れ美観を損ねる問題に対しては、上記提案は何ら解決策を示しておらず、かかる解決策の提案が長年要望されていた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、献花量が少量であっても、挿し花全体の形・バランスを保持し得て、全体の美観を保てる花立て容器の献花保持スタンド、すなわち献花量を自由に調整できる花立て容器の献花保持スタンドを提供すること、また、強風下でも挿し花が簡単に向きを変えたり容器内で回転しない献花保持スタンドを提供することを目的とする。
【0007】
さらには挿し花の茎部が斜めにならず、垂直に挿入しやすい献花保持スタンドを提供すること、水管理労力の軽減と献花費用の節減を図れる花立て容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る花立て容器の献花保持スタンドは、花立て容器内に挿入される複数本の挿し花の姿勢を保持する献花保持スタンドであって、
有底筒状の花立て容器の口部に装着される蓋プレートと、
蓋プレートの下面に垂設され、蓋プレートの中央挿入穴から挿入される挿し花を垂直にガイドし茎部を垂直に保持する保持筒部と、
蓋プレートの下面から保持筒部の外周面下部にかけて取り付けられ、蓋プレートの、花立て容器の口部への装着姿勢で花立て容器の内周面に半径方向に付勢状態で密着する複数の固定金具を具備し、
蓋プレートの前記中央挿入穴は複数の内角部をもつ非円形の形状とされ、かつその周囲に保持筒部の外側に位置する周辺挿入穴が設けられていることを主要な特徴とする。
【0009】
献花量が少ない時は中央挿入穴に挿し花を挿入し中央挿入穴単独で用いることができる。献花量が多い時は中央挿入穴と周辺挿入穴を組み合わせて用いることができる。従来の花立て容器に比べ、献花量が少ない時も挿し花全体の形・バランスを保持できる。すなわち献花量を自由に調整できる。
【0010】
中央挿入穴は複数の内角部をもつ非円形形状であり、中央挿入穴に挿入した挿し花が内角部の存在で強風によって向きを変えたり容器内で回転することが阻止される。これにより、強風下でも、挿し花全体の形・バランスを保持し、美観を保てる。
【0011】
保持筒部の存在により蓋プレートの中央挿入穴から挿し花が斜めにならず、垂直に挿すことができる。保持筒部により挿し花の茎部を垂直姿勢に束ねて安定して保持できる。挿し花全体の形・バランスをしっかりと安定保持し、美観を保つことができる。
【0012】
本発明に係る花立て容器の献花保持スタンドは、中央挿入穴の縁部に内側に突出する突起部が設けられ、複数の内角部との間に挿し花の茎部を複数束ねて保持する茎保持部が設けられていることを第2の特徴とする。
【0013】
中央挿入穴に複数挿入された挿し花の茎部は、茎保持部により複数束ねられて保持される結果、それらの回転や移動が阻止され、これにより束ねられた挿し花が強風により向きを変えたり容器内で回転することが二重に阻止される。
【0014】
本発明に係る花立て容器の献花保持スタンドは、各固定金具が蓋プレートの遠心方向へ向けて連続して屈曲するくの字に曲成され、各固定金具が内方へ向けてくの字を開くように弾性変形可能であり、蓋プレートの、花立て容器の口部への装着姿勢で花立て容器の内周面に半径方向に付勢状態で2箇所以上密着されることを第3の特徴とする。くの字の角部は緩やかなRを付けることが望ましい。
【0015】
各固定金具を内方へ向けてくの字が開くように弾性変形させながら花立て容器の口部から内部に挿入し、しかる後、各固定金具を元の状態に復帰させると容器の内周面に固定金具が密着固定する。これにより、蓋プレートを花立て容器の口部に容易に装着できる。一方、花立て容器の清掃時など、蓋プレートを容器本体の口部から容易に取り外しできる。固定金具が花立て容器の内周面に付勢状態で2箇所以上密着するから、強風下でも献花保持スタンドが、挿し花と一緒に容易に回転しない。
【0016】
本発明に係る花立て容器の献花保持スタンドは、保持筒部の側周面に複数のスリットが設けられていることを第4の特徴とする。
【0017】
保持筒部の側周面に設けたスリットにより、特に夏季において、花立て容器内の水の対流効果が生じ、水温の上昇抑制や水の腐敗抑制、花の持ち時間の延長といった作用を発揮する。
【0018】
本発明に係る花立て容器は、花立て容器本体と、同花立て容器本体の口部に装着された前記献花保持スタンドを備えることを主要な特徴とする。
【0019】
本発明に係る花立て容器によると、花立て容器本体の口部に前記献花保持スタンドを装着することにより、少量の献花で花立て容器一杯に献花した場合と同様の形・バランスを保持でき、容器一杯に献花する場合と比較し、水の減少が少なく切花の花持ちがよく、したがって水管理が容易であり、献花費用を節減できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る花立て容器の献花保持スタンドによると、花立て容器への献花量を自由に調整できると共に、少量であっても、挿し花全体の形・バランスを保持できるという優れた効果を奏する。また、強風下でも中央挿入穴に挿した挿し花が簡単に向きを変えたり容器本体内で回転することがなく、挿し花全体の形・バランスを常に保持し、美観を保てるという優れた効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明に係る花立て容器によると、献花保持スタンドを用いることにより、少量の献花で花立て容器一杯に献花した場合と同様の形・バランスを保持できるから、水の減少を少なくして切花の花持ちをよくし、水管理を容易にして献花費用を節減できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、本発明に係る献花保持スタンドを花立て容器の口部に装着した状態を示す全体斜視図、
【図2】図1に示す献花保持スタンドの斜視図、
【図3】(A)は図2に示す献花保持スタンドの平面図、(B)はその正面図、
【図4】花立て容器の口部に献花保持スタンドを装着する様子を示す説明図、
【図5】花立て容器の口部に献花保持スタンドが装着された状態を示す断面図、
【図6】花立て容器に挿し花が献花された状態を示す断面図、
【図7】他の実施形態を示す献花保持スタンドの平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態につき、図1ないし図6を参照して説明する。図中、符号100は本発明に係る花立て容器を示している。同花立て容器100は、図1に示すように、容器本体110と献花保持スタンド120とから基本構成されている。
【0024】
容器本体110は、ステンレス製からなるもので、有底円筒形状をなし、内部に水を貯留する水貯留室110Aが設けられ、上端の口部111の周囲に鍔部112が設けられている。
【0025】
献花保持スタンド120は、同じくステンレス製からなるもので、容器本体110の口部111に装着される蓋プレート121と、蓋プレート121の中央挿入穴121Aの直下に中央挿入穴121Aを囲むように垂設された保持筒部122と、保持筒部122の周囲で蓋プレート121の下面に120°間隔で取り付けられる3本の固定金具123を備えている。各固定金具123は、取付ピン124により蓋プレート121に一体に取り付けられ、図1に示すように、蓋プレート121の装着姿勢で容器本体110の内周面に付勢状態で密着するようになっている。
【0026】
蓋プレート121の上面には、図2に示すように、挿し花1の茎部をそれぞれ一定数ずつ挿入可能な非円形の中央挿入穴121Aおよびその周囲の周辺挿入穴121B,121Cが設けられている。中央挿入穴121Aは複数の角(図示例では6つの内角と1つの外角)を持つ多角形形状(非円形形状)をなし、最も大きい開口面積を有する。左右の周辺挿入穴121B,121Bは周縁に沿って細長い円弧状の形状を、背後の周辺挿入穴121Cは同じく周縁に沿って細長い円弧状の形状をなしている。中央挿入穴121Aの背後側の周縁には内側に三角状に突出する突起部125が形成され、複数の内角部との間に挿し花の茎部を複数束ねて保持し、強風時の回転や移動を二重に阻止する茎保持部126が設けられている。複数の挿入穴121A〜121Cを設けたことで、献花量のボリュームに合わせて挿し量や挿し場所を調整可能である。
【0027】
保持筒部122は、中央挿入穴121Aに挿入された各挿し花1の茎部1Aを束ねて安定的に保持する役目をする。また、保持筒部122を設けたことにより、中央挿入穴121Aから挿し花1が斜めにならず、垂直の正しい姿勢で挿すことができるようになっている。
【0028】
固定金具123は、図3(B)に示すように、蓋プレート121の遠心方向へ向けて連続して突出するくの字に曲成され、図4に示すように、内方へ向けてくの字を開くように弾性変形可能とされている。くの字の角部は緩やかなRが付けられ、献花保持スタンド120の装着と取り外しを繰り返し行う場合でも塑性変形しにくく、繰り返し使用に耐えられる。また、連続するくの字に曲成されているので、弾性変形力が比較的弱く、握力や手の力の弱い女性や子供、お年寄りであっても、献花保持スタンド120を容易に容器本体110の口部111に着脱できる。
【0029】
3つの固定金具123の各曲成部がなす外径Dは、容器本体110の内径Dよりも若干大きな寸法に設定され、3つの固定金具123をそれぞれ内方へ向けてくの字を開くように弾性変形させると、その状態で、図4に示すように、容器本体110の口部111上端から挿入させることができ、しかる後、各固定金具123を元の状態に復帰させると容器本体110の内周面に密着固定するようになっている。なお、蓋プレート121の外径Dは容器本体110の内径Dよりも大きい寸法に設定されている。
【0030】
図5は、容器本体110の口部111に献花保持スタンド120を装着固定した状態を示している。図5に示すように、献花保持スタンド120の固定金具123が自身の付勢力により、容器本体110の内周面に密着固定されている。各固定金具123が上下2箇所、合計6箇所で周方向に容器本体110の内周面に密着付勢されているので、強風下でも、挿し花1とともに、献花保持スタンド120が容器本体110内で回転することがない。清掃時など、献花保持スタンド120を外したい場合は、蓋プレート121の中央挿入穴121Aに指等を入れて容易に引き上げて外すことができる。
【0031】
図6は、本実施形態の花立て容器100に対し、少量の挿し花1を蓋プレート121の中央挿入穴121Aに垂直に挿入し、挿し花1の各茎部1Aを直下の保持筒部122に保持させ、水Wを給水した状態を示している。図6に示すように、少量の献花量であっても、蓋プレート121の中央挿入穴121Aを用い、直下の保持筒部122で茎1Aを安定保持させることにより、挿し花全体の形・バランスを保持し、美観を保持できる。左右の挿入穴121Bには小さな挿し花を挿入し、背後の挿入穴121Cにはシバ木を挿入する等して、全体をより立体的に装飾することもできる。
【0032】
そして、蓋プレート121の中央挿入穴121Aが多角形の非円形形状をしており、さらに、内側に三角状に突出する突起部125により、中央挿入穴121Aに挿入し茎保持部126内に保持した挿し花が高台の風(特に強風時)によって向きを変えたり容器本体110内での回転が阻止され、少量の献花量であっても、図6に示すように、挿し花全体の形・バランスを保持し、美観を保つことができる。
【0033】
中央挿入穴121Aに少量の挿し花を挿入した場合でも、全体の形・バランスを保持できるので、花立て容器一杯に献花する場合と比較して、水の減少量が少なく切花の花持ちがよく、したがって水管理が容易であり、献花費用を節減できる。
【0034】
図7は本発明の他の実施形態を示すもので、同図において、符号120’は献花保持スタンドを示している。献花保持スタンド120’の蓋プレート121の中央挿入穴121Aには、図3(A)に示す突起部125が省略されている。
【0035】
本実施形態の献花保持スタンド120’においても、中央挿入穴121Aに少量の挿し花を挿入して、全体の形・バランスを保持できる効果がある。
【0036】
なお、各実施形態では容器本体110の材質をステンレス製としたが、これに限らない。陶器製や塩化プラスチック製等でもよい。また、固定金具123は蓋プレート121の遠心方向へ向けて突出するくの字に曲成したが、湾曲して突出する形状に曲成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る献花保持スタンドは、献花量が少量であっても、挿し花全体の形・バランスを保持し得て、全体の美観を保てる花立て容器の献花スタンドとして、また、風があっても挿し花が簡単に向きを変えたり回転することのない献花保持スタンドとして広く利用できる。また人の墓石だけではなく、ペットの墓石用にも利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 挿し花
1A 茎部
100 花立て容器
110 容器本体
110A 水貯留室
111 口部
112 鍔部
120,120’ 献花保持スタンド
121 蓋プレート
121A 中央挿入穴
121B,121C 周辺挿入穴
122 保持筒部
123 固定金具
124 取付ピン
124A 内周面
125 突起部
126 茎保持部
容器本体の内径
蓋プレートの外径
固定金具の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花立て容器内に挿入される複数本の挿し花の姿勢を保持する献花保持スタンドであって、
有底筒状の花立て容器の口部に装着される蓋プレートと、
蓋プレートの下面に垂設され蓋プレートの中央挿入穴から挿入される挿し花を垂直にガイドし挿し花の茎部を垂直に保持する保持筒部と、
蓋プレートの下面から保持筒部の外周面下部にかけて取り付けられ、蓋プレートの、花立て容器の口部への装着姿勢で花立て容器の内周面に半径方向に付勢状態で密着する複数の固定金具を具備し、
蓋プレートの前記中央挿入穴は複数の内角部をもつ非円形の形状とされ、かつその周囲に保持筒部の外側に位置する周辺挿入穴が設けられていることを特徴とする花立て容器の献花保持スタンド。
【請求項2】
中央挿入穴の縁部に内側に突出する突起部が設けられ、複数の内角部との間に挿し花の茎部を複数束ねて保持する茎保持部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の花立て容器の献花保持スタンド。
【請求項3】
各固定金具が蓋プレートの遠心方向へ向けて連続して屈曲するくの字に曲成され、各固定金具が内方へ向けてくの字を開くように弾性変形可能とされ、蓋プレートの、花立て容器の口部への装着姿勢で花立て容器の内周面に半径方向に付勢状態で2箇所以上密着されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の花立て容器の献花保持スタンド。
【請求項4】
保持筒部の側周面に複数のスリットが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の花立て容器の献花保持スタンド。
【請求項5】
花立て容器本体と、同花立て容器本体の口部に装着された請求項1記載の献花保持スタンドを備えることを特徴とする花立て容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79540(P2013−79540A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220628(P2011−220628)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(508130672)