説明

花粉アレルギー症状緩和用組成物

【課題】花粉アレルゲンの存在する物品表面や空間中に噴霧又は塗布することにより、花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供することができる、花粉アレルギー症状緩和用組成物を提供する。
【解決手段】(a)重量平均分子量1,000〜6,000,000の高分子化合物、(b)l−メントール、メントン、カルボンから選ばれる1種以上の化合物、(c)1,8−シネオール、及び水を含有し、空間ないし物品を処理することで、人体に及ぼす花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供する花粉アレルギー症状緩和用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間ないし物品を処理することで、人体に及ぼす花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供するための組成物に関するものであり、特には、スギ、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサ等の花粉症を引き起こすことが知られている花粉によるアレルギー症状を花粉が存在する空間や物品に対して処理することにより、効果的に抑制することを可能とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変遷と共にスギ、ヒノキ等の花粉によるアレルギー疾患が増加傾向にある。花粉は直径数10ミクロン程度の粒子であるが、屋外から室内に持ち込まれた花粉は畳、絨毯などの敷物類や毛布、布団といった寝具などに残留しており、これら室内に残留した花粉を何らかの原因で吸入することによって、鼻炎等のアレルギー症状が引き起こされる。よってこのような室内花粉の低減はアレルギー疾患を持つ人たちばかりでなく、一般の家庭においても高い関心が持たれている。
【0003】
特許文献1には皮膜形成性高分子化合物を含有したアレルゲン抑制剤の技術が開示されている。特許文献2にはポリビニルアルコールを用いたハウスダストの不活性化に関する技術が開示されている。特許文献3には第4級アンモニウム基を有する高分子化合物を含有する抗アレルゲン組成物の技術が開示されている。特許文献4にはスルホン酸変性ポリビニルアルコ−ル系共重合体を用いたアレルゲンを不活性化させ、花粉症用マスク、カーテン、カ−ペット等に有用な花粉症アレルゲン除去材の技術が開示されている。
【0004】
特許文献5には、ダストコンロールテストにより繊維に残留するダストの量が30%以上であり、且つ摩擦率解析法によるMIU値が3.0以下のアレルゲン無害化組成物が記載されており、具体的な化合物として高分子化合物が記載されている。本出願は、アレルゲンを高分子化合物を用いることで対象表面からの飛散を抑制させることを目的としている。更に特許文献6には、アレルゲン無害化金属イオンと溶媒を含有するスプレー可能なアレルゲン中和組成物が記載されており、無害化金属イオンとして2価金属イオンが挙げられており、更にアレルゲン変性剤としてポリフェノール、過酸化水素、安息香酸、クエン酸他の剤を含有することが記載されている。特許文献7には、アルミニウムイオンの少なくとも60%が硫酸、塩素、硝酸、硫酸カリウムから選ばれるアニオンの塩として供給されるアルミニウムイオンと溶媒を含有する非生物対象に使用するためのアレルゲン無害化組成物が開示されている。これら技術はいずれも、アレルゲンを除去することが目的ではなく、アレルゲンを改質させ無害化を目的とするものである。
【特許文献1】特開昭56−49080号公報
【特許文献2】特開2002−128680号公報
【特許文献3】特開2001−354573号公報
【特許文献4】特開平7−171387号公報
【特許文献5】国際公開第02/28179号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/28187号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/62354号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、固体表面や空間中に存在する花粉アレルゲンを簡単な操作で効率よく除去でき、しかも組成物が付着した表面の感触を変化させない花粉アレルギー症状緩和用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)重量平均分子量1,000〜6,000,000の高分子化合物、(b)l−メントール、メントン、カルボンから選ばれる1種以上の化合物、(c)1,8−シネオール、及び水を含有し、空間ないし物品を処理することで、人体に及ぼす花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供する花粉アレルギー症状緩和用組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空間ないし物品を処理することで、人体に及ぼす花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供する花粉アレルギー症状緩和用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は重量平均分子量1,000〜6,000,000の高分子化合物である。具体的に好ましい高分子化合物としては、下記(a−1)〜(a−5)の化合物から選ばれる化合物が好適である。
(a−1);セルロース誘導体及び/または化工澱粉
(a−2);アクリル酸もしくはメタクリル酸の単独重合体、共重合体、又はそれら重合体の塩
(a−3);分子中に陽イオン基及びビニル基又はアリル基を有する単量体を重合して得られる高分子化合物、又は該単量体と共重合可能な単量体との共重合体
(a−4);ポリエチレングリコールおよびその誘導体
(a−5);シリコーン誘導体
以下、各高分子化合物について詳細に説明する。
【0009】
本発明の高分子化合物の(a−1)はセルロース誘導体及び/又は化工澱粉である。セルロース誘導体としては、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロース(好ましくはメチルセルロース、エチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、第4級アンモニウム基を有するカチオン化セルロースから選ばれる1種以上およびそれらの誘導体が好ましい。
【0010】
化工澱粉としては、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)澱粉、アルキル(炭素数1〜3)澱粉、カルボキシメチル化澱粉、第4級アンモニウム基を有するカチオン化澱粉、及びこれらを過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤又は酵素により低粘度化したもの等の化工澱粉が挙げられる。
【0011】
本発明では特にセルロース、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロースから選ばれるセルロース誘導体、及び澱粉、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)澱粉、アルキル(炭素数1〜3)澱粉、カルボキシメチル化澱粉から選ばれる澱粉誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又はすべてが下記一般式(1)で示される基で置換された高分子化合物が好ましい。
【0012】
−R1−(OR2)a−E−R3 (1)
[式中、R1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6、好ましくはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基、1−オキソエチレン基、1−オキソトリメチレン基、1−メチル−2−オキソエチレン基であり、特に2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基が好ましい。R2は炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくはエチレン基、プロピレン基であり、R3はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数4〜30、好ましくは5〜25、より好ましくは6〜20のアルキル基であるか、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基、好ましくは2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基である。Eはエーテル基又はオキシカルボニル基、好ましくはエーテル基であり、aは平均付加モル数であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜40、さらに好ましくは0〜30、特に好ましくは0〜20、最も好ましくは10〜20の数である。また、a個の(OR2)は同一でも異なっていてもよい]
【0013】
セルロ−ス誘導体及び澱粉誘導体のアルキル基又はヒドロキシアルキル基の置換度は構成単糖残基当たり好ましくは0.01〜3.5、より好ましくは0.1〜3、さらに好ましくは1〜3、特に1.5〜2.8が好ましい。また、一般式(1)の置換基の置換度は構成単糖残基当たり好ましくは0.0001〜1、より好ましくは0.0005〜0.5、さらに好ましくは0.001〜0.1、特に0.001〜0.05が好ましい。また、一般式(1)においてR3がスルホアルキル基の場合にはスルホアルキル基の置換度は構成単糖残基当たり好ましくは0〜1、より好ましくは0〜0.8、特に0〜0.5が好ましい。さらに、該高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1万〜200万、より好ましくは5万〜150万、特に好ましくは10万〜60万が好適である。
【0014】
また、該高分子化合物はWO00/73351号公報記載の方法でセルロース誘導体又は澱粉誘導体とR4−(OR2)a−E−R3[R4は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、又はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、又はカルボキシ基若しくは炭素数2〜6のカルボキシアルキル基若しくはそれらの誘導体を示し、R2、a、E、R3は前記と同一の意味である]で示される化合物と反応させ、所望により通常のスルホン化剤でスルホン化することで得られる。
【0015】
(a−2)は、アクリル酸もしくはメタクリル酸の単独重合体、共重合体、又はそれら重合体の塩である。共重合体の場合はアクリル酸とメタクリル酸との共重合体であってもよく、またアクリル酸もしくはメタクリル酸の少なくとも1種と、これら化合物と共重合可能な不飽和結合を有する化合物、とくにはビニル系単量体またはアリル系単量体との共重合体を挙げることができる。特にはアクリル酸もしくはメタクリル酸に由来する単量体構成単位が共重合体を形成している全単量体構成単位中、30モル%以上、好ましくは50モル%以上を占めるものが好適である。
【0016】
本発明の高分子化合物(a−2)においてアクリル酸もしくはメタクリル酸と共重合可能なビニル系単量体としては、アルキル基の炭素数が8〜40、好ましくは10〜36のアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステル、マレイン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリル酸、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、インデン、ブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。これらの中でもマレイン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリル酸等の水溶性単量体及びこれらの単量体の塩が好ましい。特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びそれらの塩とスチレンが好ましい。
【0017】
(a−2)の重量平均分子量は、1,000〜600万であり、更に好ましくは5,000〜100万、特に好ましくは1万〜50万である。
【0018】
高分子化合物(a−3)は、分子中に陽イオン基、及びビニル基又はアリル基を有する単量体を重合して得られる高分子化合物、又は該単量体と共重合可能な単量体との共重合体である。
【0019】
陽イオン基及びビニル基を有する単量体の好ましい例として、下記一般式(2)の化合物を挙げることができる。
【0020】
【化1】

【0021】
〔式中、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1〜3のアルキル基である。Xは炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR11−、−CONHR11−、−OCOR11−、−R11−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR11、R12は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R8は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR56C=C(R7)−X−である。R9は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基であり、R10はヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基もしくは硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はベンジル基であり、R10がアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はベンジル基の場合は、Y-は陰イオンを示す。また、R10がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、Y-は存在せず、R10中のこれらの基は陰イオンとなる。Y-の陰イオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオンを挙げることができる。〕
【0022】
これらの中でもアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数3〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数3〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩が好ましく、特にジアリルジメチルアンモニウム塩が良好である。
【0023】
本発明の(a−3)は上記単量体に該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。この場合、ブロック、交互、周期、統計(ランダムを含む)、グラフト型の何れであってもよい。この共重合可能な他の単量体としては、下記群(i)〜(v)から選ばれる単量体が好ましく、(i)〜(iii)又は(v)の単量体がより好ましく、特に防汚効果の点から(i)、(ii)又は(v)の単量体が最も好ましい。
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩、スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩、リン酸モノ−ω−メタクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜12)から選ばれる陰イオン基含有化合物
(ii)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれるアミド基含有化合物(iii)アクリル酸(又はメタクリル酸)アルキル(炭素数1〜5)、アクリル酸(又はメタクリル酸)2−ヒドロキシエチル、アクリル酸(又はメタクリル酸)−N,N−ジメチルアミノアルキル(炭素数1〜5)、酢酸ビニルから選ばれるエステル基含有化合物
(iv)エチレン、プロピレン、N−ブチレン、イソブチレン、N−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、N−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アリルアミン、N,N−ジアリルアミン、N,N−ジアリル−N−アルキル(炭素数1〜5)アミン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンから選ばれる化合物
(v)二酸化硫黄
【0024】
本発明の(a−3)は、上記陽イオン基及びビニル基を有する化合物に由来する構成単位が好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。また、重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500万、より好ましくは5,000〜200万、特に好ましくは10万〜100万である。
【0025】
高分子化合物(a−4)はポリエチレングリコールおよびその誘導体であり、高分子化合物の末端が −OH、−ORa1(Ra1は炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。)となっているものである。
【0026】
高分子化合物(a−5)はシリコーン誘導体であり、下記一般式(3)で示されるものである。
【0027】
【化2】

【0028】
〔式中、m、nはそれぞれ1〜5000の整数を示し、Ra2〜Ra5のうち一つ以上は下記(4)、(5)、(6)、(7)で示されるいずれかの基を表し、残りは水素、シラノール基、炭素数1〜100の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基のうちいずれであっても良い。
−Ra6−NH2 (4)
−Ra7−NH−Ra8−NH2 (5)
−Ra9−NH−(シクロヘキサン環) (6)
−Ra10−O−(Ra11O)p−(Ra12O)q−Ra13 (7)
(式中、Ra6〜Ra13は、同一または異なっていても良く、炭素数2〜4のアルキレン基を示す。pは1〜200の整数を、qは0〜100の整数を示す。)〕
【0029】
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物には特に(a−1)、(a−3)、(a−4)及び(a−5)の高分子化合物が好適であり、最も好ましくは(a−1)及び(a−5)の高分子化合物である。
【0030】
高分子化合物は水溶性であることが好ましい。ここで本発明でいう水溶性とは、撹拌や加熱等の操作によって100gのイオン交換水に0.5g溶解させた場合に、20℃における外観が均一になる物質と定義する。
【0031】
なお(a−1)〜(a−5)の高分子化合物の重量平均分子量はアセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準物質として求めることができる。
【0032】
<(b)成分>
本発明の(b)成分はl−メントール、メントン、カルボンから選ばれる1種以上の化合物であり、その由来としては化学合成品でもよいし、天然精油からの単離品でもよい。該天然精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ブラックペパーミント油、レモンミント油、グレープフルーツミント油、コーンミント(フィールドミント)油、ジンジャーミント油、オレンジミント油、オーデコロンミント(ベルガモットミント)油、クールミント油、ペニーロイヤルミント油、コルシカミント油、カーリーミント油、イングリッシュミント油、アップルミント油、パイナップルミント油、ディル油、キャラウェー油などが挙げられ、これら天然精油から選ばれる1種以上であることが好ましい。天然精油のうち特に好ましいものは、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、コーンミント油から選ばれる1種以上である。
【0033】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は1,8−シネオールであり、その由来としては化学合成品でもよいし、天然精油からの単離品でもよい。該天然精油としては、ユーカリ油、ローズマリー油、ローレル油、ティートリー油、カヤプテ油、カンファー油、カルダモン油、セージ油などが挙げられ、天然精油のうち特に好ましいものは、ユーカリ油、ローズマリー油、ローレル油、ティートリー油から選ばれる1種以上である。
【0034】
本発明の組成物は水性組成物であり、残部は水である。水としては硬度を考慮すると組成物の安定性の面からイオン交換水を用いることが好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明では前記(a)成分〜(c)成分に加えて(d)成分として、(b)成分や(c)成分以外の香料成分を含有してもよく、特に鼻炎症状緩和効果、心身リラックス効果などの作用効果を有するものが好ましい。ただし、花粉アレルギー症状緩和効果の点から、(d)/[(b)+(c)+(d)]の質量比が0/100〜50/50、更に0/100〜40/60であることが好ましい。
【0036】
(d)成分としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編 産業化学シリーズ 昭和58年9月16日発行)や「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社、1996年3月6日発行)や「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載のもの、及び天然精油を用いることができる。
【0037】
本発明では花粉アレルギー症状緩和効果の持続性の点で、(d)成分としてジャスモノイド、鎖状セスキテルペンアルコール及び鎖状ジテルペンアルコールから選ばれる1種以上の化合物を使用することが好ましく、特に1013.25hPaにおける沸点が230℃以上、さらに230℃〜400℃の化合物が花粉アレルギー症状緩和効果の持続性の点から良好である。ジャスモノイドとしてはジャスモン、ジヒドロジャスモン、ジャスモン酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜5)エステル、ジヒドロジャスモン酸アルキル(アルキル基の炭素数1〜5)エステルが好ましい。また、鎖状セスキテルペンアルコールとしてはファルネソール及びネロリドールが好適である。また、鎖状ジテルペンアルコールとしてはフィトール、イソフィトール、ゲラニルゲラニオール、ゲラニルリナロールが良好である。本発明で最も好ましい(d)成分としては、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、ジャスモン酸メチル、ジャスモン酸エチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸エチル、ファルネソール、ネロリドール、フィトールである。
【0038】
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物には、(a)成分による固体生成を妨げない限り、その他成分を配合してもよい。その他の成分としては、界面活性剤、ハイドロトロープ剤、粘度調整剤、抗菌・抗カビ剤、pH調整剤等を挙げることができる。pHを調整する上で、アルカリ金属水酸化物や、硫酸、酢酸などを含有してもよい。
【0039】
界面活性剤〔以下、(e)成分という〕としては、特に組成物に透明な外観を付与する目的、及び/又は貯蔵安定性の点から非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び陽イオン界面活性剤が好適である。具体的な界面活性剤としては、特開2003−334504号公報に記載の界面活性剤を用いることができる。
【0040】
本発明の組成物は、揮発性を高める目的で炭素数1〜3の低級アルコールを配合することが好ましい。低級アルコールとしてはエタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールから選ばれる一種以上が好ましい
【0041】
<花粉アレルギー症状緩和用組成物>
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物において、(a)成分は花粉の舞い上がりを抑制したり、花粉を沈降除去しやすくしたり、花粉アレルゲンの表面からの除去を容易にしたり、花粉アレルゲンの紙パックや集じんフィルターなどへの捕集性を向上させたり、表面への花粉付着を抑制するという作用を有する成分であり、組成物中に0.001質量%以上、更に0.005質量%以上、特に0.01質量%以上含有されることが好ましい。また、適正な粘度を付与し、組成物の噴霧性能を維持するため、花粉アレルギー症状緩和組成物中の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
【0042】
(b)成分は、本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物中、0.002〜2質量%、更に0.002〜0.1質量%含有されるのが好ましい。
【0043】
(c)成分は、本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物中、0.002〜2質量%、更に0.002〜0.1質量%含有されるのが好ましい。
【0044】
(b)成分および(c)成分は、花粉アレルギー症状を緩和する効果を有しており、(a)成分と併用して用いることでその効果の持続性が向上する。花粉アレルギー症状の緩和効果の点から、(b)成分と(c)成分の質量比は(b)/(c)で25/75〜75/25、更には30/70〜70/30であることが好ましく、また、(b)成分と(c)成分の合計量は本発明の組成物中に0.005質量%以上、更に0.01質量%以上であることが好ましい。また、噴霧時の匂いの嗜好性の観点からは、(b)成分と(c)成分の合計量は、花粉アレルギー症状緩和組成物中に好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。また、(b)成分や(c)成分以外の香料成分である(d)成分との関連において、花粉アレルギー症状の緩和効果の点から、(d)/[(b)+(c)+(d)]の質量比が0/100〜50/50、より好ましくは0/100〜40/60である。
【0045】
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物において、特に(a)成分、(b)成分及び(c)成分は、花粉アレルギー症状緩和用組成物中に、合計で、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、最も好ましくは0.005〜3質量%となるように含有されることが望ましい。
【0046】
(d)成分は、香調を調整したり、心身リラックス効果を与えたりするなどの目的で本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物に含有されてもよく、組成物中に0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、10質量%以下である。また、噴霧時の匂いの嗜好性の観点からは、組成物中に好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0047】
(e)成分の界面活性剤は、組成物の外観及び貯蔵安定性などの点から配合することが可能であるが、噴霧対象物のべたつきや噴霧時の泡沫発生などを抑制する観点から、好ましくは組成物中に5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に含有しないことがこの観点からは好適である。
【0048】
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及びその他の成分を、水やアルコールとともに溶解させた溶液の形態が好ましい。アレルゲンの除去性を付与するために、国際公開第02/100995号パンフレット記載の固体源物質を含有してもよく、これは後述するpH調整剤として配合されるものであってもよい。なお、pHの設定には注意を要する。特に、pHを強酸性や強アルカリ性に設定した場合には金属やガラスなどの表面に噴霧した後の乾燥過程で表面が腐食される場合がある。従って、本発明では花粉アレルギー症状緩和用組成物の25℃におけるpHを4〜11、好ましくは5〜9に調整することが好適である。pH調整剤のうち、具体的な酸剤としては、塩酸、硫酸などの無機酸や、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸が挙げられる。また、具体的なアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア及びその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。酸剤とアルカリ剤を単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、から選ばれる酸と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンから選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。
【0049】
本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物は、対象物への処理のし易さ及び花粉アレルゲン除去効果を向上させる目的から、20℃における粘度を15mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下に調整することが好適である。このような粘度に調整することで対象物を均一に処理することができ、さらに乾燥や(a)成分の析出を促進させることができる。本発明でいう粘度は以下のようにして測定する。まず、TOKIMEC.INC製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備する。試料をトールビーカーに充填し、20℃の恒温槽内にて20℃に調製する。恒温に調製された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60r/mに設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を本発明の粘度とする。
【0050】
<花粉アレルギー症状の緩和方法>
本発明は、前記の組成物を花粉アレルゲンが付着した物品や花粉アレルゲンが浮遊する空間に噴霧して、存在する花粉アレルゲンを該物品ないし該空間から除去低減するだけでなく、被処理花粉を万一吸い込んだとしても花粉アレルギー症状を引き起こしにくくなるという、全く新しい考え方の花粉アレルギー症状の緩和方法を提供する。花粉アレルギー症状緩和用組成物を噴霧してから清掃もしくは清拭するまでの時間は、十分に効果を発揮するために、10秒以上空けることが好ましい。
【0051】
花粉アレルギー症状緩和用組成物を噴霧する場合、噴霧器としては、トリガー式噴霧器を用いることが好ましい。
【0052】
トリガー式噴霧器を用いる場合、該噴霧器は1回のストロークで0.1g〜2.0g、好ましくは0.2〜1.5g、さらに好ましくは0.3g〜1.0g噴出するものが良好である。本発明で使用するトリガー式スプレー容器として特に好ましいものは、実開平4−37554号公報に開示されているような蓄圧式トリガーが、噴霧の均一性の点で特に良好である。
【0053】
噴霧特性としては、特に地面に垂直に置いた対象物に15cm離れた場所からスプレーしたときの液のかかる面積が100〜800cm2、更に150〜600cm2になるトリガー式噴霧器が好ましい。また、本発明では(c)成分を対象物1m2当たり1〜100mg、好ましくは2〜50mgになるように均一に対象物にスプレーし、乾燥させることで高いアレルゲン除去効果を得ることができる。
【0054】
スプレー後は自然乾燥させた後、タオル等の布帛や掃除機などの清掃道具により対象物を除去することで、アレルゲンを効率的に除去することが可能となる。
【実施例】
【0055】
下記に示す組成の水性組成物を調製した。これらは、本発明の花粉アレルギー症状緩和用組成物として使用できるものである。
<水性組成物の組成>
化合物1 0.1質量%
1−メントール 0.005質量%
メントン 0.005質量%
カルボン 0.005質量%
1,8−シネオール 0.008質量%
エタノール 15.0質量%
硫酸カリウム 0.7質量%
イオン交換水 残部
合計 100質量%
25℃におけるpH 7.0
pH調整剤として硫酸及び水酸化ナトリウムを用いた。
また、化合物1は後述する合成例1により製造されたものである。
【0056】
<調査方法>
上記水性組成物を、トリガー式スプレーヤー(上記で記載した性質を有するもの)付き容器に充填した調査品を準備した。調査品は、スギ花粉症を自認している人又はスギ花粉症を自認している家族がいる人、48人に配布され、6週間使用するよう依頼した。使用方法としては、ふとん・毛布・まくら等の寝具や洗濯物、カーペットや畳等の床面、部屋・トイレなどの空間に対して、少なくとも週1回以上スプレーするよう指示した。スプレー量は、表面に対しては表面がしっとりと濡れる程度、空間に対しては25m3(天井までの高さが2.5mの6畳間に相当)の空間に対して、1回の使用当たり10回程度のスプレーを目安に噴霧するように指示した。
【0057】
<調査結果>
使用期間終了後、調査品の組成物の使用量を対象者ごとに測定したところ、1日当たり平均約20g使用されていた。得られた回答によると、対象者48人中、31人が該組成物をふとんに使用し、ふとんを取り込んだり、ふとんに就寝した際に、本人又は家族のくしゃみが低減もしくはなくなったと回答した人が29人であった。また対象者48人中、21人が洗濯物に使用し、洗濯物を取り込んだりたたんだりする際に、本人または家族の目鼻の掻痒(そうよう)感が低減もしくはなくなったと回答した人が19人だった。以上より、該組成物によって、アレルギー症状が緩和されることを確認した。
【0058】
<合成例1>
重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度が2.5のヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250G、ハーキュレス社製)200g、イソプロピルアルコール900g、イオン交換水160gを混合し、窒素雰囲気下室温で1時間攪拌した。この溶液に次式
【0059】
【化3】

【0060】
で表されるポリオキシアルキレン化合物30.34g及び48%水酸化ナトリウム水溶液12.24gを加えて混合し、更に窒素雰囲気下室温にて30分間撹拌した。その後、溶液を昇温し、80℃で9時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物をイソプロピルアルコール1200gで2回洗浄し、減圧下60℃で1昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(化合物1)72gを得た。ポリオキシアルキレン基の置換度は0.014であった。
【0061】
表1に本発明の花粉アレルギー症状緩和組成物を記載する。表1中の化合物1は前記と同じものである。なお、表1中の化合物2は以下の合成例により製造されるものである。またpH調整剤として硫酸及び水酸化ナトリウムを使用した。
【0062】
<合成例2>
(1)馬鈴薯澱粉(片山化学社製)80g、50%イソプロピルアルコール640g及び48%水酸化ナトリウム水溶液5.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液に次式
【0063】
【化4】

【0064】
で表される化合物19.0gを加え、80℃で8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を50%イソプロピルアルコール500gで2回、次いでアセトン500gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化された澱粉誘導体69.4gを得た。得られた澱粉誘導体のポリオキシアルキレン量を含む置換度は0.005であった。
【0065】
(2)(1)で得た澱粉誘導体35.5g、70%イソプロピルアルコール350g及び48%水酸化ナトリウム水溶液2.4gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。反応液にモノクロロ酢酸ナトリウム25.1g及び48%水酸化ナトリウム18.0gを加え、50℃で5時間カルボキシメチル化を行った。反応生成物を70%イソプロピルアルコール400gで2回、次いでイソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化及びカルボキシメチル化された澱粉誘導体(化合物2)33.8gを得た。得られた澱粉誘導体のカルボキシメチル化度は0.48であった。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量1,000〜6,000,000の高分子化合物、(b)l−メントール、メントン、カルボンから選ばれる1種以上の化合物、(c)1,8−シネオール、及び水を含有し、空間ないし物品を処理することで、人体に及ぼす花粉アレルギー症状を緩和する環境を提供する花粉アレルギー症状緩和用組成物。

【公開番号】特開2007−161679(P2007−161679A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362673(P2005−362673)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】