説明

花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛

【課題】
花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能の双方の性能を備え、変色を伴わず、風合いが良好で、しかも洗濯耐久性に優れ、スポーツウェアなどの各種衣服素材として好適に用いることができる繊維布帛を提供する。
【解決手段】
繊維表面に少なくとも内層と外層の二層からなる複合層を有する繊維布帛であって、内層がアニオン性親水性樹脂からなる被膜層であり、外層がカチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層であり、かつ、
(1)内層が銀系化合物を含有する、および/または、
(2)内層と外層との間に、銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる被膜層が中間層として配されてなる、
ことを特徴とする花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉アレルギーが大きな問題として取り上げられている。花粉症は一旦発症すると花粉の飛散する季節には毎年発症する場合が多く、日本においては5人に1人と多くの人が花粉症に悩んでいるといわれている。内服薬や目薬、点鼻薬などで症状を緩和することは可能であるが、花粉症はアレルギー疾患であるため、完治させることは難しいとされている。したがって、花粉または花粉アレルゲンに触れないようにすることが最も重要であり、花粉症患者は、外出時にはマスクや眼鏡、帽子などを使用して対策を講じているが、花粉は衣服に付着しやすく、そのまま屋内に持ち込まれて、屋内外を問わず花粉症に悩まされているのが現状である。そこで、花粉症に対応する衣服素材、具体的には、花粉が衣服に付着しにくく、また、付着しても落ちやすい性能を備えた衣服素材の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維布帛、好ましくは織物の表面摩擦係数や表面粗さを規定して布帛表面の平滑性を高めることにより、花粉付着防止能を付与した繊維構造物が記載されている。また、特許文献2には、布帛表面の平滑性を高めるとともに、隣接する経糸同士および緯糸同士の間隙を花粉の大きさ(30μm程度)よりも小さくすることにより、花粉が付着しにくく、また、繊維間や衣服内に入り込みにくくした織物が記載されている。しかしながら、これらの技術は、長繊維を用いた布帛や高密度織物に限定され、伸縮性が小さいため、スポーツウェアなどの用途には不向きであった。また、通気度が小さいため、衣服としての快適性という観点でも不十分であった。
【0004】
これに対し、特許文献3には、経方向と緯方向の編密度の積を規定することにより、花粉付着防止能を付与した編物が記載されている。しかしながら、その効果は、高密度織物と比較すると明らかに劣るものであった。経糸と緯糸の直線的な組み合わせからなる織物に対し、編物は、糸の屈曲によるループが連続して絡み合っているため、伸縮性、弾力性、嵩高性などには優れるものの、ゴミや埃、そして花粉などが捕捉されやすく、かつ、落ちにくいのである。なお、この傾向は、後述する他の方法により花粉付着防止能を付与する場合にも同様に認められる。
【0005】
花粉が付着する原因となり得る静電気の発生を抑えることにより、花粉を付着させないようにする試みも提案されている。例えば、前記特許文献2や前記特許文献3に記載の布帛でも、布帛組織の改良とともに、導電性繊維の使用や、帯電防止剤の処理により制電性が付与されている。また、特許文献4には、繊維表面に、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の末端または側鎖にアクリル基および/またはメタクリル基を有する単量体を重合せしめてなる被膜を形成し、さらに、該被膜中に無機微粒子を含有させることにより、制電性や花粉付着防止能を付与した繊維構造物が記載されている。ここで、無機微粒子は、被膜の粘着性を抑えて花粉の離脱性を良くするために用いられる。しかしながら、今一つ良好な効果は得られなかった。
【0006】
また、繊維表面に花粉よりも小さな微粒子を付着させ、繊維表面に微細な凹凸を形成することにより、繊維と花粉、厳密には微粒子と花粉との接触状態を点接触として、花粉を付着させないように、かつ、付着しても落ちやすいようにする試みも提案されている。例えば、特許文献5には、直径が数nm〜数100nmのコロイダルシリカ類の微粒子を繊維構造物の表面に均一に付着させることにより、繊維構造物に花粉付着防止能を付与する方法が記載されている。また、特許文献6には、粒子径が500nm以下、好ましくは100nm以下の微粒子を繊維表面に付着させることにより、繊維製品に花粉付着防止能を付与する方法が記載されている。しかしながら、これらの微粒子は、洗濯などにより脱落しやすく、また、耐久性を向上させるためにグリオキザール系樹脂などのバインダー樹脂を用いると、樹脂の粘着性により、一旦付着した花粉が落ちにくいという問題があった。さらに、無機系の微粒子を用いた場合には、風合いが硬くなるという問題があった。
【0007】
花粉症対応衣服素材に関する他の試みとして、花粉アレルゲンを不活化(低減化を含む)する性能を備えた衣服素材の開発が挙げられる。例えば、特許文献7には、銀系化合物を含有するハウスダスト処理剤が記載されており、これをカーペットや絨毯、カーテンなどに噴霧したり、不織布や織布などに含浸、塗布または吸着させたりすることにより、ハウスダストに含まれるダニ、花粉などに由来するアレルゲン全てを不活化することができる旨説明されている。また、特許文献8には、抗アレルゲン性金属成分、好ましくは銀および/または亜鉛を含有するアレルゲン不活性化剤が記載されており、前記特許文献7と同様の説明がなされている。しかしながら、これらは、一時的効果を狙ったものにすぎず、洗濯などにより金属が溶出または脱落し、効果が失われるという問題があった。
【0008】
これに対し、特許文献9には、アレルゲン低減化成分、好ましくは芳香族ヒドロキシ化合物を、グラフト化反応により繊維に化学的に結合させるか、または、バインダーを用いて繊維表面に固着させることにより、アレルゲン低減化能を持続的に付与した繊維が記載されている。しかしながら、芳香族ヒドロキシ化合物が有するフェノール系水酸基は酸化しやすく、これに伴いアレルゲン低減化能が失われたり、変色したりするという問題があった。
【0009】
このように、消費者が十分に満足し得る花粉症対応衣服素材は、未だ達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−227070号公報
【特許文献2】特開2003−213541号公報
【特許文献3】特開2008−138314号公報
【特許文献4】特開2005−281954号公報
【特許文献5】特開2004−3046号公報
【特許文献6】特開2004−238788号公報
【特許文献7】特開2006−183045号公報
【特許文献8】特開2006−241431号公報
【特許文献9】特開2003−96670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたもので、花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能の双方の性能を備え、変色を伴わず、風合いが良好で、しかも洗濯耐久性に優れ、スポーツウェアなどの各種衣服素材として好適に用いることができる繊維布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、繊維表面に少なくとも内層と外層の二層からなる複合層を有する繊維布帛であって、内層がアニオン性親水性樹脂からなる被膜層であり、外層がカチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層であり、かつ、
(1)内層が銀系化合物を含有する、および/または、
(2)内層と外層との間に、銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる被膜層が中間層として配されてなる、
ことを特徴とする花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛である。
【0013】
前記繊維布帛において、銀系化合物は、酸化銀、銀錯体および銀塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、カチオン性シリコーン系化合物微粒子は、カチオン変性オルガノシリケート微粒子であることが好ましい。
また、アニオン性親水性樹脂は、アニオン性親水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能の双方の性能を備え、変色を伴わず、風合いが良好で、しかも洗濯耐久性に優れ、スポーツウェアなどの各種衣服素材として好適に用いることができる繊維布帛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
本発明に用いられる繊維布帛の形態としては、例えば、織物、編物、不織布などを挙げることができる。花粉付着防止能の点では織物が優れているが、編物や不織布であっても、実用上、問題なく用いることができる。
また、繊維素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ビニロン等の合成繊維;アセテート、トリアセテート等の半合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;綿、羊毛、絹等の天然繊維などを挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも、繊維物性、特には寸法安定性に優れた素材である合成繊維が好ましい。繊維の寸法変化が、繊維加工剤の脱落性、つまりは花粉付着防止能や花粉アレルゲン不活化能の洗濯耐久性に影響を及ぼし得るからである。
繊維布帛は、必要に応じて、染料や顔料により着色されたものであってもよい。
【0017】
本発明は、かかる繊維布帛を構成する繊維1本1本(すなわち単繊維)の表面に、少なくとも内層と外層の二層からなる複合層を有するものである。このうち、内層はアニオン性親水性樹脂からなる被膜層であり、外層はカチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層である。なお、本明細書において内層とは、繊維と直に接して配される層をいい、外層とは、内層の外側に空気と接して配される層をいうものとする。
【0018】
親水性樹脂は、その親水性に起因して、制電性、吸水性、防汚性などの性能を発揮する。かかる親水性樹脂を用いて繊維表面を直に被覆する内層を形成することにより、静電気の発生を抑え、花粉が付着するのを防止することができる。また、花粉が付着したとしても、洗濯時には洗浄剤の花粉への接近を容易にし、洗浄力を高め、もって花粉の除去性を良くすることができる。さらに、着用時には発汗などによる水分を素早く吸収することができる。
【0019】
本発明において、内層を形成する親水性樹脂は、アニオン性であることが求められる。これは、電気的相互作用により、カチオン性を有する外層との密着性を高めるためである。本発明に用いられるアニオン性親水性樹脂としては、例えば、親水性ポリエステル系樹脂、親水性ポリアミド系樹脂、親水性ポリウレタン系樹脂、親水性ポリアクリル系樹脂などの一部が、カルボキシル基、スルホン酸基などによりアニオン化されたものを挙げることができる。なかでも、耐久性の点からアニオン性親水性ポリエステル系樹脂が好ましい。親水性ポリエステル系樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのジオール成分と、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸成分からなり、そのアニオン化物を用いることにより、前述の効果を、安定的かつ持続的に得ることができる。
【0020】
アニオン性親水性樹脂の付着量は、繊維重量に対し0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。付着量が0.05重量%未満であると、十分な花粉付着防止能が得られない虞がある。付着量が10重量%を超えると、風合いが硬くなったり、染色堅牢度が悪くなったりする虞がある。付着量がこの範囲となるように、後述する処理液の濃度や、圧搾率などを調整する。
【0021】
アニオン性親水性樹脂からなる被膜層を、内層として、繊維表面に形成するには、繊維加工において一般的に行われている方法を用いればよく、例えば、(1)アニオン性親水性樹脂を含む処理液に繊維布帛を浸漬し、80〜150℃の浴中で吸尽処理する方法、(2)前記処理液に繊維布帛を浸漬することにより、または、前記処理液を繊維布帛にスプレーもしくは塗布することにより、前記処理液を繊維布帛に含浸させた後、必要に応じて圧搾して余剰液を除去し、次いで110〜180℃で熱処理して乾燥する方法、を挙げることができる。なかでも、アニオン性親水性樹脂を繊維表面に均一に導入することが可能で、洗濯耐久性を容易に得ることができるという理由により、(1)の方法が好ましい。
【0022】
なお、処理液は、必要に応じて紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、pH調整剤など、他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の1つの態様においては、この、繊維表面に形成されるアニオン性の内層が、銀系化合物を含有する。このとき内層を形成するアニオン性親水性樹脂は、いわばバインダー樹脂として機能する。
【0024】
以前より、銀が抗菌性や消臭性を有することは知られていたが、近年になって、アレルゲン不活化能をも有することが明らかとなってきた。イオン状態の銀にその性能が強く発現される。銀イオンが、アレルゲンとなるタンパク質を変性し、生物の受容体と合致しなくなることで、不活化されると考えられている。したがって、アレルゲンとの反応により銀が消費されることがなく、銀が繊維に付着している限り、その効果は持続する。本態様においては、アニオン性の内層に、銀を化合物として含有させ、さらにその周囲を、カチオン性の外層で被覆するため、洗濯耐久性に優れたアレルゲン不活化能、特には花粉アレルゲン不活化能を具備することができる。
【0025】
本態様に用いられる銀系化合物は、水溶性であっても非水溶性であってもよく、例えば、酸化銀;フィチン酸等との銀錯体;硝酸銀、硫酸銀、N−ステアリル−L−グルタミン酸銀等の銀塩などをあげることができる。銀系化合物は、担体に担持されていてもよく、こうすることにより、花粉アレルゲン不活化能をより向上させることができる。このような担体としては、例えば、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)、シリカゲル、粘土鉱物等のケイ酸塩;リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩類;酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の酸化物;溶解性ガラス、活性炭、金属担体、有機金属などを挙げることができる。銀系化合物(担持物を含む)は1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、持続性、安全性、非着色性などの点から、酸化銀を酸化チタンに担持したものが好ましい。
【0026】
銀系化合物(担持物を含む)の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。平均粒子径を小さくすることにより表面積が増大するため、花粉アレルゲン不活化能を高めることができる。また、アニオン性親水性樹脂の造膜性が損なわれることがない。
【0027】
銀系化合物の付着量は、銀元素濃度換算で繊維重量に対し0.0001〜1重量%であることが好ましく、0.001〜0.5重量%であることがより好ましい。付着量が0.0001重量%未満であると、十分な花粉アレルゲン不活化能が得られない虞がある。付着量が1重量%を超えると、コストが高くなったり、風合いが硬くなったりする虞がある。付着量がこの範囲となるように、前記のアニオン性親水性樹脂を含む処理液に添加すればよい。
【0028】
このように、銀系化合物は、少量でアレルゲン不活化能、特に花粉アレルゲン不活化能を発揮することができる。これに対し、他のアレルゲン不活化成分、例えば、タンニン類、ポリフェノール類などは、銀系化合物の2〜5倍量以上必要とされる。また、銀系化合物は安全性が高く、無色無臭であり、加工により変色をきたすことがなく、繊維加工剤として使い勝手がよい。
【0029】
本発明の別の態様においては、前記の、繊維表面に形成されるアニオン性の内層の外側に、後述するカチオン性の外層と挟み込まれるような状態で、すなわち中間層として、銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる被膜層を配する。このように銀系化合物を含有する層を別途設けることにより、バインダー樹脂が銀系化合物を強固に固着させ、洗濯耐久性を向上させる利点がある。なお、アニオン性の内層は、銀系化合物の含有を要さないが、銀系化合物を含有していても何ら差し支えない。以下、アニオン性の内層が銀系化合物を含有しないことを前提に説明する。
【0030】
本態様に用いられる銀系化合物の種類や、その付着量については、前記した態様(内層に銀系化合物を含有させる態様)の場合と同様である。
【0031】
本態様に用いられるバインダー樹脂は、ノニオン性またはアニオン性であることが求められる。これは、アニオン性を有する内層と、カチオン性を有する外層との電気的相互作用を阻害することなく、かつ、中間層自身と外層との電気的相互作用により、複合層全体の密着性を高めるためである。
【0032】
本態様に用いられるノニオン性バインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸エステルモノマーの重合体、オレフィンの重合体、イソシアネートとポリオールの重合体、アミノ基とアルデヒド基の重合体、シロキサン結合を有する重合体、アクリロニトリルの重合体、グリシジル基の重合体、単糖の重合体、アミノ酸の重合体、およびこれらの共重合体などを挙げることができる。これらは前もってポリマー化したものを用いてもよいし、モノマーあるいはプレポリマーを用いて繊維上で重合させポリマー化してもよい。また、反応性の高い官能基が保護されたものであってもよい。
【0033】
また、本態様に用いられるアニオン性バインダー樹脂としては、前記化合物の一部が、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基などによりアニオン化されたものを挙げることができる。
【0034】
これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができ、イオン性の異なるものを組み合わせることもできる。なかでも、風合いの柔らかさの点で、アクリル酸エステルモノマーの重合体、イソシアネートとポリオールの重合体、イソシアネートとポリオールの重合体であって両末端、片末端または側鎖にブロックイソシアネートを有するもの、およびこれらの共重合体が好ましく、さらにこれらがアニオン化されたものであると、付着力に優れより好ましい。
【0035】
ノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂の付着量は、繊維重量に対し0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。付着量が0.01重量%未満であると、目的量の銀系化合物を付与することができない虞がある。付着量が10重量%を超えると、風合いが硬くなったり、染色堅牢度が悪くなったりする虞がある。付着量がこの範囲となるように、後述する処理液の濃度や、圧搾率などを調整する。
【0036】
銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる被膜層を、中間層として、繊維表面に形成されたアニオン性の内層の外側に形成するには、繊維加工において一般的に行われている方法を用いればよく、例えば、(1)銀系化合物と、ノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂とを含む処理液に、内層が形成された繊維布帛を浸漬し、80〜150℃の浴中で吸尽処理する方法、(2)前記処理液に前記繊維布帛を浸漬することにより、または、前記処理液を前記繊維布帛にスプレーもしくは塗布することにより、前記処理液を前記繊維布帛に含浸させた後、必要に応じて圧搾して余剰液を除去し、次いで110〜180℃で熱処理して乾燥する方法、を挙げることができる。なかでも、操作が簡便で、かつ、付着量の調整が容易であるという理由により、(2)の方法、特に前記処理液に前記繊維布帛を浸漬後、圧搾し、乾燥する方法が好ましい。
【0037】
なお、処理液は、必要に応じて触媒、重合開始剤、紫外線遮蔽剤、赤外線吸収剤、制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、pH調整剤など、他の成分を含んでいてもよい。
【0038】
本発明による花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛は、以上説明した、繊維表面に形成された銀系化合物を含有するアニオン性の内層の外側に、または、繊維表面に形成された銀系化合物を含有しないアニオン性の内層と銀系化合物を含有するノニオン性またはアニオン性の中間層の外側に、外層として、カチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層を配したものである。
【0039】
カチオン性シリコーン系化合物とは、SiO結合を有し、かつ、1〜3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基を導入した有機基を有する化合物である。カチオン性シリコーン系化合物は有機基を有するため、適度な弾性があり、繊維表面を被覆する複合層の外層に配しても、繊維布帛の風合いを損なうことがない。
【0040】
なお、カチオン性シリコーン系化合物が、エラストマーのように粘弾性を有するものであると、花粉の付着により被膜が圧着変形し、さらには、花粉が被膜内部に潜り込む状態となって、離脱性が悪くなるため、好ましくない。また、水などに溶解した花粉アレルゲンに対しても、粘弾性が花粉アレルゲンの離脱を阻害するため、好ましくない。
【0041】
本発明に用いられるカチオン性シリコーン系化合物は、微粒子状であることが求められる。これは、繊維表面に微細な凹凸を形成することにより、花粉付着防止能を付与するためである。微粒子の形成性、形状および硬さの点から、カチオン性シリコーン系化合物微粒子は、カチオン変性オルガノシリケート微粒子であることが好ましい。
【0042】
カチオン変性オルガノシリケート微粒子は、通常、1〜3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基と、シリカ表面のシラノール基に対して反応性を有する官能基との双方を有する有機化合物により、シリカ微粒子を表面処理することによって製造される。前記有機化合物としては、例えば、アミノエトキシシランやアミノアルキルジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0043】
カチオン性シリコーン系化合物微粒子の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.005μm〜1μmであることがより好ましい。平均粒子径がこの範囲にある微粒子を用いることにより、糸条同士の間隙や繊維同士の間隙はもちろん、繊維表面に存在し得る微細な窪み(花粉がひっかかりやすい)にまで微粒子が入り込み、繊維表面を均一に斑なく被覆する被膜層が形成される。こうして、繊維表面には微粒子による微細な凹凸が形成されるため、花粉付着防止能を具備することができる。平均粒子径が1μmを超えると、十分な花粉付着防止能が得られなかったり、洗濯耐久性が低下したり、風合いが硬くなったりする虞がある。
【0044】
カチオン性シリコーン系化合物微粒子の付着量は、繊維重量に対し0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。付着量が0.01重量%未満であると、十分な花粉付着防止能が得られない虞がある。付着量が10重量%を超えても、性能の向上が見られないばかりか、風合いが硬くなる虞がある。付着量がこの範囲となるように、後述する処理液の濃度や、圧搾率などを調整する。
【0045】
カチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層を、外層として、繊維表面に形成された銀系化合物を含有するアニオン性の内層の外側に、または、繊維表面に形成された銀系化合物を含有しないアニオン性の内層と銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性の中間層の外側に形成するには、繊維加工において一般的に行われている方法を用いればよく、例えば、(1)カチオン性シリコーン系化合物微粒子を含む処理液に、内層または内層と中間層が形成された繊維布帛を浸漬し、20〜50℃の浴中で吸尽処理する方法、(2)前記処理液に前記繊維布帛を浸漬することにより、または、前記処理液を前記繊維布帛にスプレーもしくは塗布することにより、前記処理液を前記繊維布帛に含浸させた後、必要に応じて圧搾して余剰液を除去し、次いで110〜180℃で熱処理して乾燥する方法、を挙げることができる。なかでも、操作が簡便であるという理由により、(2)の方法、特に前記処理液に前記繊維布帛を浸漬後、圧搾し、乾燥する方法が好ましい。
【0046】
なお、処理液は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。特に、平均粒子径が1μm以下の水不溶性微粒子を併用すると、花粉付着防止能を向上させることができ好ましい。このような水不溶性微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0047】
かくして、本発明による花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛を得ることができる。
【0048】
本発明による繊維布帛は、繊維表面に内層と外層、さらにその間に配されることのある中間層からなる複合層を有する。外層がカチオン性シリコーン系微粒子からなることにより、繊維表面に微細な凹凸を形成し、繊維と花粉との接触状態を点接触として、花粉付着防止能を発揮することができる。また、内層がアニオン性親水性樹脂からなることにより、静電気の発生を抑え、花粉付着防止能を高めるとともに、洗濯時には洗浄力を高め、花粉の除去性を良くすることができる。そして、前記内層、またはノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる中間層に銀系化合物を含有させることにより、変色を伴うことなく、花粉アレルゲン不活化能を具備することができる。このように、本発明による繊維布帛は、花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能の双方の性能を備えるため、織物はもちろん、これまで困難とされていた編物においても、花粉症対応衣服素材として十分に機能することができる。
【0049】
本発明による繊維布帛は、繊維表面に形成されたアニオン性の内層とカチオン性の外層、さらにその間に配されることのあるノニオン性またはアニオン性の中間層が、電気的相互作用により強固に結合する構造を有するため、洗濯耐久性に優れている。しかも、外層に配されたカチオン性シリコーン系化合物微粒子の弾性により、風合いの良好な繊維布帛となる。
したがって、本発明による繊維布帛は、スポーツウェアなどの各種衣服素材として、好適に用いることができる。
【0050】
以上、内層または中間層のいずれかに銀系化合物を含有させる態様について説明したが、内層および中間層の双方に銀系化合物を含有させた場合にも、目的とする効果が得られることは容易に理解できよう。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、性能の評価は以下の方法に従った。
【0052】
(1)花粉付着防止能
30cm×30cm×30cmの発泡スチロール製箱型容器の内壁の一面に、10cm×10cmにカットした試験布を取り付けた。次いで、容器に1.4gの擬似花粉(ヒカゲノカズラ胞子)を入れ、均一に拡散するように30秒間振とうした。次いで、試験布を取り付けてある一面を上にして置き、高さ20cmの位置から100gの錘を落として衝撃を与えた。衝撃の前後の試験布の状態を、マイクロスコープにより200倍に拡大して撮影し、付着している花粉の個数をカウントし、以下の式により花粉リリース率を算出した。
花粉リリース率(%)=[(衝撃前の花粉数−衝撃後の花粉数)/衝撃前の花粉数]×100
【0053】
(2)花粉アレルゲン不活化能
<検液の調製>
試験管に、20ng/mlのスギ花粉アレルゲン溶液(商品名「スギ花粉抗原SBP」、生化学工業株式会社製)を10ml入れ、5cm×5cmにカットした試験布を浸漬した。室温で一晩静置後、試験布を取り出して得られる抽出液を検液とした。また、ブランクとして、20ng/mlのスギ花粉アレルゲン溶液を用いた。
【0054】
<検量線用標準溶液の調製>
スギ花粉アレルゲン(商品名「精製Cryj1」、生化学工業株式会社製)を0.1重量%ウシ血清アルブミン(BSA)含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、20ng/ml、10ng/ml、2ng/ml、0.5ng/ml、0.25ng/ml、0ng/mlの検量線用標準溶液を調製した。
【0055】
<測定手順>
固相用抗体(商品名「anti−Cryj1」、生化学工業株式会社製)をPBSで10μg/mlとなるように希釈したものを、マイクロプレートの各穴に100μlずつ加え、室温で2.5時間静置した。次いで、固相用抗体溶液を除去し、0.1重量%BSA含有PBSを250μlずつ加え、4℃で一晩静置した。
【0056】
次いで、0.1重量%BSA含有PBSを除去し、前記の検量線用標準溶液または検液を100μlずつ加え、室温で1.5時間静置した。次いで、検量線用標準溶液または検液を除去し、0.05重量%Tween20含有PBSを250μlずつ加えて洗浄した。洗浄操作は3回繰り返した。
【0057】
次いで、スギ花粉アレルゲンモノクローナル抗体(商品名「Peroxidase conjugated anti−Cryj1 mAb053(西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗Cryj1モノクローナル抗体053)」、生化学工業株式会社製)を0.1重量%BSA含有PBSで1000倍に希釈したものを100μlずつ加え、室温で2時間静置した。次いで、スギ花粉アレルゲンモノクローナル抗体溶液を除去し、0.05重量%Tween20含有PBS250μlで3回洗浄した。
【0058】
次いで、基質溶液(0.1mol/lクエン酸・リン酸緩衝液100ml、オルト−フェニレンジアミン50mg、30重量%過酸化水素水100μlで調製)を100μlずつ加え、室温で3分間発色させた後、マイクロプレートリーダー用分光光度計で490〜650nmの吸光度を測定した。
【0059】
検量線用標準溶液の吸光度から得られる検量線を用いて、検液中のスギ花粉アレルゲン濃度を定量し、以下の式によりスギ花粉アレルゲン不活化率を算出した。
スギ花粉アレルゲン不活化率(%)=[(ブランクのスギ花粉アレルゲン濃度−試験布のスギ花粉アレルゲン濃度)/ブランクのスギ花粉アレルゲン濃度]×100
【0060】
(3)洗濯耐久性
JIS L−0217 103法に従い、繰り返し洗濯を20回行った。その後、よく乾燥させた試験布を用いて、前記の(1)および(2)の評価を行った。
【0061】
(4)風合い
官能評価により、下記の基準に従って判定した。
○:良い
△:やや硬い
×:硬い
【0062】
(5)変色性
官能評価により、下記の基準に従って判定した。
○:変色なし
△:やや変色あり
×:変色あり
【0063】
また、試験用繊維布帛として、以下のものを用いた。
(7)試験用繊維布帛
110dtex/36フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸と、84dtex/36フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸を、交編率(重量比)50:50で用いて、天竺組織の丸編地を編成した。得られた編地の重量は150g/mであった。この編地を、常法により精練、プレセットしたものを、試験用繊維布帛とした。
【0064】
[実施例1]
内層の形成
アニオン性親水性ポリエステル系樹脂の乳濁液(商品名「SR−1000」、固形分:10重量%、高松油脂株式会社製)を繊維重量に対し2重量%の濃度で含み、かつ、酢酸にてpHを4.5に調整した処理液に、浴比が1:20となるように試験用繊維布帛を浸漬し、130℃の浴中で30分間吸尽処理を行った。水洗後、120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に内層を形成した。
【0065】
中間層の形成
次いで、酸化チタンに担持させた酸化銀のアニオン性水分散液(商品名「ATOMY−BALL(S)」、平均粒子径:5nm、固形分:1.5重量%、日揮触媒化成株式会社製)を5重量%、アニオン性アクリルシリコーンの乳濁液(商品名「ファイコート30G」、固形分:30重量%、大和化学株式会社製)を1重量%含む処理液に浸漬後、圧搾機にて圧搾率が繊維重量に対して100重量%となるように圧搾し、次いで120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に形成された内層の外側に中間層を形成した。このとき、銀元素の付着量は繊維重量に対して0.07重量%であった。なお、銀元素の付着量は、繊維を硝酸、硫酸、過塩素酸の混合液(濃度は分解状態に応じて調整する)で湿式分解した後、原子吸光光度法によって測定された値により求めた。
【0066】
外層の形成
次いで、カチオン変性オルガノシリケート微粒子の水分散液(商品名「BAYGARD AS」、平均粒子径:0.03μm、固形分:10重量%、ランクセス株式会社製)を5重量%含む処理液に浸漬後、圧搾機にて圧搾率が繊維重量に対して100重量%となるように圧搾し、次いで120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に形成された内層と中間層の外側に外層を形成した。このとき、カチオン変性オルガノシリケート微粒子の付着量は繊維重量に対して0.5重量%であった。なお、カチオン性オルガノシリケート微粒子の付着量は、処理液中に占める含有率、および処理液の圧搾率により求めた。
かくして、実施例1の繊維布帛を得た。
【0067】
[実施例2]
内層の形成
アニオン性親水性ポリエステル系樹脂の乳濁液(商品名「SR−1000」、固形分:10重量%、高松油脂株式会社製)を繊維重量に対し2重量%、ゼオライトに担持させた酸化銀のアニオン性水分散液(商品名「バイオデンDYNE」、平均粒子径:500nm、固形分:20重量%、大和化学株式会社製)を繊維重量に対し5重量%の濃度で含み、かつ、酢酸にてpHを4.5に調整した処理液に、浴比が1:20となるように試験用繊維布帛を浸漬し、130℃の浴中で30分間吸尽処理を行った。水洗後、120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に内層を形成した。このとき、銀元素の付着量は繊維重量に対して0.05重量%であった。
【0068】
外層の形成
次いで、実施例1と同様に処理して、繊維布帛の表面に形成された内層の外側に外層を形成した。
かくして、実施例2の繊維布帛を得た。
【0069】
[比較例1]
内層の形成
実施例1と同様に処理して、繊維布帛の表面に内層を形成した。
【0070】
中間層の形成
次いで、フェノール樹脂の粉体(商品名「マルカリンカーM」、丸善石油工業株式会社製)を5重量%、アニオン性アクリルシリコーンの乳濁液(商品名「ファイコート30G」、固形分:30重量%、大和化学株式会社製)を1重量%含む処理液に浸漬後、圧搾機にて圧搾率が繊維重量に対して100重量%となるように圧搾し、次いで120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に形成された内層の外側に中間層を形成した。このとき、フェノール樹脂の付着量は繊維重量に対して5重量%であった。なお、フェノール樹脂の付着量は、処理液中に占める含有率、および処理液の圧搾率により求めた。
【0071】
外層の形成
次いで、実施例1と同様に処理して、繊維布帛の表面に形成された内層と中間層の外側に外層を形成した。
かくして、比較例1の繊維布帛を得た。
【0072】
[比較例2]
内層の形成
実施例1と同様に処理して、繊維布帛の表面に内層を形成した。
【0073】
中間層の形成
次いで、実施例1と同様に処理して、繊維表面に形成された内層の外側に中間層を形成した。
【0074】
外層の形成
次いで、コロイダルシリカ微粒子のアニオン性水分散液(商品名「ニコソルト209」、平均粒子径:0.015μm、固形分:21重量%、日華化学株式会社製)を5重量%含む処理液に浸漬後、圧搾機にて圧搾率が繊維重量に対して100重量%となるように圧搾し、次いで120℃で2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に形成された内層と中間層の外側に外層を形成した。このとき、シリカ微粒子の付着量は繊維重量に対して1.1重量%であった。なお、シリカ微粒子の付着量は、処理液中に占める含有率、および処理液の圧搾率により求めた。
かくして、比較例2の繊維布帛を得た。
【0075】
[比較例3]
内層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の繊維布帛を得た。すなわち、比較例3においては、実施例1において中間層に相当する層が、繊維布帛の表面に直に形成されている。
【0076】
[比較例4]
外層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、比較例4の繊維布帛を得た。すなわち、比較例4においては、実施例1において中間層に相当する層が、空気と接するように形成されている。
【0077】
[比較例5]
中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、比較例5の繊維布帛を得た。
【0078】
[比較例6]
実施例1において内層に相当する層のみ繊維布帛の表面に形成して、比較例6の繊維布帛を得た。
【0079】
実施例および比較例で得られた繊維布帛、ならび未処理の試験用繊維布帛について、評価した結果を表1に示した。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、実施例1および2の繊維布帛は、十分な花粉付着防止能および花粉アレルゲン不活化能を有し、洗濯耐久性にも優れていた。また、風合いが良好で、変色も認められなかった。
【0082】
これに対し、中間層において、花粉アレルゲン不活化成分としてフェノール樹脂を付与した比較例1の繊維布帛は、初期段階では花粉アレルゲン不活化能を有するものの、洗濯耐久性に欠けていた。また、変色が認められた。
外層において、シリカ微粒子を付着させた比較例2の繊維布帛は、初期段階では十分な花粉付着防止能を有するものの、洗濯耐久性に欠けていた。また、風合いが硬くなった。
アニオン性親水性ポリエステル系樹脂かるなる被膜層を形成しなかった比較例3の繊維布帛は、初期段階で花粉付着防止能が劣っていた。
カチオン変性オルガノシリケート微粒子からなる被膜層を形成しなかった比較例4の繊維布帛は、初期段階で花粉付着防止能が著しく劣っていた。
酸化銀を含有する被膜層を形成しなかった比較例5の繊維布帛は、花粉アレルゲン不活化能を有さなかった。
アニオン性親水性ポリエステル系樹脂かるなる被膜層のみを形成した比較例6の繊維布帛は、初期段階で花粉付着防止能が著しく劣り、アレルゲン不活化能は有さなかった。
未処理の繊維布帛は、花粉付着防止能、花粉アレルゲン不活化能ともに有さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維表面に少なくとも内層と外層の二層からなる複合層を有する繊維布帛であって、内層がアニオン性親水性樹脂からなる被膜層であり、外層がカチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる被膜層であり、かつ、
(1)内層が銀系化合物を含有する、および/または、
(2)内層と外層との間に、銀系化合物を含有するノニオン性および/またはアニオン性バインダー樹脂からなる被膜層が中間層として配されてなる、
ことを特徴とする花粉付着防止能と花粉アレルゲン不活化能を有する繊維布帛。
【請求項2】
銀系化合物が、酸化銀、銀錯体および銀塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維布帛。
【請求項3】
カチオン性シリコーン系化合物微粒子が、カチオン変性オルガノシリケート微粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の繊維布帛。
【請求項4】
アニオン性親水性樹脂が、アニオン性親水性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維布帛。

【公開番号】特開2011−12353(P2011−12353A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155022(P2009−155022)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】