説明

花粉体用噴霧器

【課題】溶液利用人工授粉に使用されて目詰まりし難く花粉体破損が少なく従来の乾燥花粉体人工授粉に比べ少量の花粉で良い結果が得られる花粉体噴霧器を提供することである。
【解決手段】この発明の花粉体噴霧器10は、花粉体を含む保存溶液12を収容した容器14と、手動レバー20により駆動されて容器14中の保存溶液を吸引管18を介して吸引し加圧して加圧保存溶液を容器外へ移動させる手動操作加圧構造体16と、吸引管の外端18bに接続されて加圧保存溶液をノズル孔28から噴霧するノズル構造体30と、を備え、ノズル孔直径が1.0mm〜1.4mmの範囲内に、加圧保存溶液圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、花粉体用噴霧器に関係している。
【背景技術】
【0002】
以下の文章において用語「花粉体」は、花粉学で扱う花粉,胞子、そして微生物又は大型生物の顕微鏡的断片を含む。
【0003】
「花粉体」を使用する分野においては、高価な「花粉体」を出来る限り有効に使用することが求められている。例えば、りんごや梨などの果樹園では、人工授粉が広く行なわれている。従来の人工授粉では、蜂などの昆虫を利用したり、或いは梵天を使用して多数の人員により行なわれている。しかしながら、昆虫を利用した人工授粉では、昆虫の管理が煩雑であり、また天候に左右され易いという問題がある。また多数の人員を使用した人工授粉では、開花時期に合わせて多数の人員を確保することが難しくて人件費も高く、またやはり天候に左右され易いという問題がある。梵天を使用した多数の人員により人工授粉を行なう代わりに、梵天を使用した多数の人員よりも遥かに少ない人員で花粉を粉体状のまま動力噴霧器で噴霧する方法もあるが、柱頭への花粉付着率を良くし良好な果実を高い確率で得るようにするには高価な花粉の使用量が飛躍的に増大するという問題がある。
【0004】
近年では、花粉を花粉保存溶液に混ぜた後にこの溶液ととともに花粉を噴霧器で個々の柱頭に対し噴霧することにより人工授粉を行なわせる技術が開発され種々の試験が行なわれている。そして現在の試験結果では、少し位の雨では受粉率が低下せず、花粉を粉体状のまま動力噴霧器で噴霧する方法に比べると、遥かに少ない花粉量で良好な果実をより効率良く得ることが出来ることが分かっています。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の噴霧器を使用して溶液を利用した人工授粉を行なうと、噴霧器に目詰まりが生じやすくて目詰まり除去のために人工授粉作業の効率が低下し、また噴霧ノズル中の高い圧力により溶液中に混ぜられている花粉が破損し易く、昆虫を利用した人工授粉や梵天を使用した多数の人員による人工授粉に比べると、良好な果実を得られる割合が少し低くなっています。また花粉の破損を無くすために噴霧圧力を低下させると、個々の柱頭当たりに使用される高価な花粉の噴霧量が多くなったり、噴霧ノズルからの液だれ、即ち高価な花粉の無駄、が生じてしまうという問題がある。
【0006】
この発明は上記事情の下でなされ、この発明の目的は、花粉体の破損が少なく、溶液を利用した人工授粉のために使用された場合でも目詰まりが生じにくく、従来の花粉を粉体状のまま人工授粉させる場合に比べてより少ない花粉量で良好な所望の結果を得ることが出来る、花粉体噴霧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したこの発明の目的を達成する為に、この発明に従った花粉体噴霧器は:花粉体を含む花粉体保存溶液を収容した収容空間及び収容空間を外部に連通させる開口を有する容器と;前記収容空間中に配置される内端及び前記開口を介し容器の外部に延出された外端を有する吸引管,手動レバー,そして手動レバーにより駆動されて前記吸引管の内端から前記花粉体保存溶液を吸引し加圧して前記吸引管の外端へと加圧された花粉体保存溶液を移動させる加圧ポンプを伴う、手動操作加圧構造体と;そして、前記吸引管の外端に接続され、前記吸引管の外端に到達した加圧された花粉体保存溶液を所望の範囲に噴霧するノズル孔を含むノズル構造体と、を備えている。
【0008】
そしてノズル孔の直径が1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、前記加圧された花粉体保存溶液の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
前述した如く構成されたことを特徴とするこの発明に従った花粉体噴霧器は、花粉体の破損が少なく、溶液を利用した人工授粉のために使用されても目詰まりが生じにくく、従来の花粉を粉体状のまま人工授粉させる場合に比べてより少ない花粉量で良好な所望の結果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の第1実施形態に従った花粉体噴霧器の全体の概略的な縦断面図である。
【図2】図2は、図1の花粉体噴霧器のノズル構造体の概略的な縦断面図である。
【図3】図3は、図2のノズル構造体の断面線III−IIIに沿った概略的な横断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2実施形態に従った花粉体噴霧器の全体の概略的な縦断面図である。
【図5】図5は、この発明の第3実施形態に従った花粉体噴霧器の全体の概略的な縦断面図である。
【図6】図6は、図5の花粉体噴霧器のノズル構造体の概略的な縦断面図である。
【図7】図7は、この発明の第4実施形態に従った花粉体噴霧器を一部縦断面にして概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
最初に図1乃至図3を参照してこの発明の第1実施形態に従った花粉体噴霧器10について説明する。
【0012】
花粉体噴霧器10は、花粉体を含む花粉体保存溶液12を収容した収容空間14a及び収容空間14aを外部に連通させる開口14bを有する容器14を備えている。容器14は合成樹脂製である。
【0013】
この実施形態において花粉体は、例えばりんごや梨や桃や柿やキウイフルーツの如き果実の花粉であり、花粉体保存溶液12はこれらの花粉を少なくとも所定の時間損傷させることなく保存可能な成分を有しており、種々の花粉に応じて種々の成分を有した花粉体保存溶液12が知られている。
【0014】
容器14の開口14bには、手動操作加圧構造体16が着脱可能に取り付けられている。手動操作加圧構造体16は、収容空間14a中に配置される内端18a及び開口14bを介し容器14の外部に延出された外端18bを有する吸引管18,手動レバー20,そして手動レバー20により駆動されて吸引管18の内端18bから花粉体保存溶液12を吸引し加圧して吸引管18の外端18bへと加圧された花粉体保存溶液12を移動させる加圧ポンプ22を伴う。
【0015】
手動レバー20は、加圧ポンプ22の動作方向において図1中に図示されている展開位置と展開位置よりも容器14の開口14bに向かい移動した引き締め位置との間で移動可能であり、加圧ポンプ22中に組み込まれている付勢部材22a、この実施形態では圧縮コイルばね、により展開位置に付勢されている。
【0016】
加圧ポンプ22は、手動レバー20が引き締め位置から展開位置へと付勢部材22aの付勢力により移動されることにより吸引管18の内端18bから花粉体保存溶液12を吸引し、手動レバー20が操作者の手の指により展開位置から引き締め位置へと付勢部材22aの付勢力に抗して移動されることにより前述した如く吸引された花粉体保存溶液12を加圧する。
【0017】
吸引管18において加圧ポンプ22の直前には、加圧ポンプ22により吸引管18の内端18aから吸引され加圧された花粉体保存溶液12が吸引管18の内端18aへと戻ってしまうのを阻止する為の逆止弁24が配置されている。
【0018】
吸引管18の外端18bには、ノズル逆止弁26を介してノズル孔28を含むノズル構造体30が接続されている。ノズル逆止弁26はノズル構造体30との間に介在された付勢部材32、この実施形態では圧縮コイルばね、により吸引管18の外端18bを塞ぐ方向に付勢されていて、加圧ポンプ22により加圧され吸引管18の外端18bに到達した花粉体保存溶液12をノズル構造体30のノズル孔28に向かい通過させる。
【0019】
ノズル孔28は吸引管18の外端18bからの加圧された花粉体保存溶液12を所望の範囲に噴霧する。
【0020】
ノズル逆止弁26は吸引管18の外端18bをノズル構造体30のノズル孔28に向かい通過した後の花粉体保存溶液12が吸引管18の外端18bに向かい逆流することを阻止している。
【0021】
この実施形態の手動操作加圧構造体16では、吸引管18において加圧ポンプ22の直前の逆止弁24の弁体,加圧ポンプ22の付勢部材22a,そしてノズル逆止弁26の付勢部材32が花粉体保存溶液12を変質させることのない金属製であり、これら以外の手動操作加圧構造体16の構成要素は合成樹脂製である。
【0022】
ノズル構造体30は、吸引管18の外端18bに到達した加圧された花粉体保存溶液12をノズル孔28まで旋回した状態で導く溶液旋回構造を含んでいる。
【0023】
ノズル構造体30は、図2及び図3中に図示されている如く、有底筒状のノズル基部34と、ノズル基部34の外周面及び底壁の外端に被せられる内周面及び内底面を有しているノズルキャップ36と、を備えている。この実施形態において、ノズル基部34及びノズルキャップ36の夫々は合成樹脂製である。しかしながら、ノズル構造体30は、花粉体保存溶液12を変質させないのであれば金属製であることも出来る。
【0024】
詳細にはノズル基部34は、手動操作加圧構造体16において吸引管18の外端18bに隣接して形成されているノズル逆止弁収容凹所16a中に、吸引管18の外端18bとは反対に底壁を向けた状態で格納されていて、吸引管18の外端18bからの加圧された花粉体保存溶液12が流入される有底流入孔34aと、有底流入孔34aから有底流入孔34aの半径方向の外方に向かい延出しノズル基部34の外周面に開口した複数の半径方向案内孔34bと、を含んでいる。ノズル基部34の底壁及び外周面において複数の半径方向案内孔34bが開口している部位は、ノズル逆止弁収容凹所16aから外方に露出している。複数の半径方向案内孔34bは、ノズル基部34の円周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0025】
ノズル逆止弁収容凹所16a中に格納されているノズル基部34の有底流入孔34aには、付勢部材32と組み合わされたノズル逆止弁26が収納されている。ノズル逆止弁26は吸引管18の外端18bに隣接して配置され、付勢部材32はノズル逆止弁26とノズル基部34の底壁との間に介在されてノズル逆止弁26を吸引管18の外端18b上に付勢している。
【0026】
ノズル基部34の有底流入孔34aの底壁の外端には、第1有底円形凹所34cと、第1有底円形凹所34cと同心的に形成され第1有底円形凹所34cよりも小さな直径と大きな深さとを有した第2有底円形凹所34dと、第2有底円形凹所34dの内周面からノズル基部34の外周面まで第2有底円形凹所34dの内周面の接線方向に第1有底円形凹所34cの底面を横切って延出した複数の接線溝34eと、が形成されている。複数の接線溝34eは、ノズル基部34の円周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0027】
ノズルキャップ36は、手動操作加圧構造体16の外表面においてノズル逆止弁収容凹所16aを取り囲んでいる部位に、例えばO−リングの如き密封部材38を伴い例えば螺合により着脱可能に固定されている。そして、ノズルキャップ36においてノズル基部34の外周面に被せられている内周面においてノズル基部34の外周面における複数の半径方向案内孔34bの開口と複数の接線溝34eの開口との間に対応した部位に花粉体保存溶液流通隙間Gを提供している。
【0028】
ノズルキャップ36においてノズル基部34の低壁の外端に被せられている内底面は、上記低壁の外端において第1有底円形凹所34cを取り囲んでいる取り囲み部分34fに当接されていて、前記内底面において第2有底円形凹所34dに面した部位にノズル孔28が形成されている。この実施形態においてノズル孔28は、前記内底面における開口の直径が第2有底円形凹所34dの直径に略等しく、前記内底面からノズルキャップ36の外端に接近するにつれて直径が小さくなるテーパ状にされていて、前記外端近傍では直径が変化しない。
【0029】
従って、この実施形態のノズル構造体30においては、手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bからノズル逆止弁26を介してノズル基部34の有底流入孔34aに流入した加圧された花粉体保存溶液12は、有底流入孔34aからノズル基部34の複数の半径方向案内孔34bを介してノズルキャップ36の内周面の花粉体保存溶液流通隙間G中に流入し、次に花粉体保存溶液流通隙間Gからノズル基部34の底壁の外端の複数の接線溝34eを介して第2有底円形凹所34d中にその内周面の接線方向から流入されることにより旋回させられる。そして、旋回された花粉体保存溶液12は、ノズルキャップ36の前記内底面において第2有底円形凹所34dに面した部位のノズル孔28から所定の範囲に噴霧される。
【0030】
この実施形態では、ノズル孔28において前述した如く直径が変化しない部位の直径Dが1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている。直径Dの範囲を1.2mm〜1.4mmの範囲内とし、加圧された花粉体保存溶液12の圧力を0.15Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定することも出来る。詳細には、直径Dが1.0mm,1.2mm,そして1.4mmの場合には、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa,0.15Mpa,そして0.1MPaとなるよう設定されている。これらの直径D及び加圧された花粉体保存溶液12の圧力は、花粉体保存溶液12に含まれる花粉体の種類や花粉体保存溶液12の成分による例えば発芽率に関係する花粉体の損傷の程度や液垂れを生じない噴霧の具合により上述した範囲内で選択される。
【0031】
このような花粉体保存溶液12の圧力であると花粉体保存溶液12に含まれている花粉体の損傷が少なく、またこのようなノズル孔28の直径であると花粉体を含む花粉体保存溶液12をノズル孔28からの液垂れを生じさせることなく目標とする花粉体受容体、果樹の場合には目的とする花の柱頭、に向かい噴霧することが可能である。
【0032】
しかも、この実施形態では、第2有底円形凹所34dよりも浅く直径の大きな第1有底円形凹所34cは、旋回された花粉体保存溶液12中の花粉体の撹拌を促進させ、またノズル孔28の直前における花粉体保存溶液12の圧力を緩和させている。この結果として、花粉体の破損をさらに少なくでき、また溶液を利用した人工授粉のために使用されても目詰まりをさらに生じにくくしている。さらに、花粉体保存溶液1が旋回された状態でノズル孔28から噴霧されることで所定の噴霧範囲中により均等により噴霧することが出来る。即ち、従来の花粉を粉体状のまま人工授粉させる場合に比べてさらに少ない花粉量で良好な所望の結果を得ることを可能にしている。
【0033】
そして、この実施形態において、ノズル基部34の前記底壁の外端の第1有底円形凹所34c,第2有底円形凹所34d,そして複数の接線溝34eは前述した溶液旋回構造を提供している。
【0034】
[第2実施形態]
次に図4を参照してこの発明の第2実施形態に従った花粉体噴霧器40について説明する。第2実施形態に従った花粉体噴霧器40において図1乃至図3を参照しながら前述したこの発明の第1実施形態に従った花粉体噴霧器10の構成部材と同じ構成部材には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
第2実施形態に従った花粉体噴霧器40が第1実施形態に従った花粉体噴霧器10と異なっているのは、手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bとノズル構造体30のノズル基部34´の有底流入孔34aとの間に介在された延出管42を更に備えていることである。この実施形態において延出管42は合成樹脂製であるが、花粉体保存溶液12を変質させない限り金属製とすることも出来る。
【0036】
詳細には、手動操作加圧構造体16において吸引管18の外端18bに隣接して形成されているノズル逆止弁収容凹所16aには、付勢部材32と組み合わされたノズル逆止弁26を収容した有底筒状の逆止弁収容体44が吸引管18の外端18bとは反対に底壁を向けた状態で格納されている。ノズル逆止弁26は吸引管18の外端18bに隣接して配置され、付勢部材32はノズル逆止弁26と逆止弁収容体44の底壁との間に介在されてノズル逆止弁26を吸引管18の外端18b上に付勢している。逆止弁収容体44の底壁には、花粉体保存溶液流出口が形成されている。
【0037】
延出管42の基端部は、手動操作加圧構造体16の外表面において吸引管18の外端18bを取り囲んでいる部位に例えばO−リングの如き密封部材46を介して例えば螺合により着脱可能に取り付けられている。延出管42の内孔の基端部は、逆止弁収容体44をノズル逆止弁収容凹所16a中に保持している。
【0038】
延出管42の延出端部は、ノズル構造体30の有底筒状のノズル基部34´を提供しており、延出管42の内孔の延出端部がノズル基部34´の有底流入孔34a及び複数の半径方向案内孔34bを提供している。延出管42の内孔の延出端部の底壁、即ちノズル基部34´の底壁、の外端には、図3中に図示されているのと同様な、ノズル基部34´の前記底壁の外端の第1有底円形凹所34c,第2有底円形凹所34d,そして複数の接線溝34eを含む前述した溶液旋回構造が形成されている。
【0039】
ノズルキャップ36は、延出管42の延出端部、即ちノズル基部34´、の外周面、に、例えばO−リングの如き密封部材38を伴い例えば螺合により着脱可能に固定されている。そして、ノズルキャップ36においてノズル基部34´の外周面に被せられている内周面においてノズル基部34´の外周面における複数の半径方向案内孔34bの開口と複数の接線溝34e(図3参照)の開口との間に対応した部位に花粉体保存溶液流通隙間Gを提供している。
【0040】
従って、この実施形態のノズル構造体30においても、手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bからノズル逆止弁26及び延出管42の内孔を介してノズル基部34´の有底流入孔34aに流入した加圧された花粉体保存溶液12は、図1乃至図3を参照しながら前述した第1実施形態のノズル構造体30の場合と同様に、前述した溶液旋回構造により旋回された後にノズルキャップ36のノズル孔28から所定の範囲に噴霧される。
【0041】
この実施形態でも、ノズル孔28において前述した如く直径が変化しない部位の直径Dが1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている。直径Dの範囲を1.2mm〜1.4mmの範囲内とし、加圧された花粉体保存溶液12の圧力を0.15Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定することも出来る。詳細には、直径Dが1.0mm,1.2mm,そして1.4mmの場合には、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa,0.15Mpa,そして0.1MPaとなるよう設定されている。これらの直径D及び加圧された花粉体保存溶液12の圧力は、花粉体保存溶液12に含まれる花粉体の種類や花粉体保存溶液12の成分による例えば発芽率に関係する花粉体の損傷の程度や液垂れを生じない噴霧の具合により上述した範囲内で選択される。
【0042】
従って、この実施形態に従った花粉体噴霧器40は、図1乃至図3を参照しながら前述した第1実施形態の花粉体噴霧器10と同じ技術的な利点を得ることが出来る。
【0043】
[第3実施形態]
次に図5及び図6を参照してこの発明の第3実施形態に従った花粉体噴霧器50について説明する。第3実施形態に従った花粉体噴霧器50において図1乃至図3を参照しながら前述したこの発明の第1実施形態に従った花粉体噴霧器10の構成部材と同じ構成部材及び図4を参照しながら前述したこの発明の第2実施形態に従った花粉体噴霧器40の構成部材と同じ構成部材には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
第3実施形態に従った花粉体噴霧器50が第1実施形態に従った花粉体噴霧器10と異なっているのは、手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bとノズル構造体30のノズル基部34の有底流入孔34aとの間に介在された延出管52を更に備えていることである。この実施形態において延出管52は合成樹脂製であるが、花粉体保存溶液12を変質させない限り金属製とすることも出来る。
【0045】
この実施形態の延出管52が、図4を参照しながら前述した第2実施形態の花粉体噴霧器40の延出管42と異なっているのは、延出管52においてノズル構造体30の側の部位(延出端部位)が、延出管52のノズル構造体30の側の部位(延出端部位)以外の部位(中間部位及び基端部位)に対し所定の角度で傾斜されていることである。
【0046】
この実施形態の延出管52はさらに、手動操作加圧構造体16に基端部位が着脱可能に接続されていて延出管52の外周面を提供する外周面を有する管状の鞘部52aと、鞘部52aの内孔に着脱可能に装着され手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bから延出し外端18bからの加圧された花粉体保存溶液12を鞘部52aの延出端まで案内する管状の芯部52bと、を含んでいる。
【0047】
鞘部52aと芯部52bとの組み合わせは、延出管52の強度の保持と軽量化とを両立させる。芯部52bはその長手方向に沿い複数に分割、この実施形態では2分割、出来るよう構成することが出来、芯部52bの中心孔の横断面を任意の寸法及び形状にすることを容易にする。
【0048】
詳細には、延出管52の鞘部52aの基端部は、手動操作加圧構造体16の外表面において吸引管18の外端18bを取り囲んでいる部位に例えばO−リングの如き密封部材46を介して例えば螺合により着脱可能に取り付けられている。延出管52の芯部52bの基端は、逆止弁収容体44をノズル逆止弁収容凹所16a中に保持している。
【0049】
延出管52の鞘部52aの延出端部には、図6中に示されている如く、ノズル構造体30の有底筒状のノズル基部34´´を収容するノズル基部収容凹所52cが形成されていて、ノズル基部収容凹所52cにはノズル基部34´´が延出管52の鞘部52aの延出端部とは反対に底壁を向けた状態で格納されていて、ノズル基部34´´の底壁及び外周面において複数の半径方向案内孔34bが開口している部位は、ノズル基部収容凹所52cから外方に露出している。ノズル基部34´´の有底流入孔34aの底壁の外端には、図3中に図示されているのと同様な、第1有底円形凹所34c,第2有底円形凹所34d,そして複数の接線溝34eを含む前述した溶液旋回構造が形成されている。
【0050】
ノズルキャップ36は、延出管52の鞘部52aの延出端部の外周面においてノズル基部収容凹所52cを取り囲んでいる部位に、例えばO−リングの如き密封部材38を伴い例えば螺合により着脱可能に固定されている。そして、ノズルキャップ36においてノズル基部34´´の外周面に被せられている内周面においてノズル基部34´´の外周面における複数の半径方向案内孔34bの開口と複数の接線溝34e(図3参照)の開口との間に対応した部位に花粉体保存溶液流通隙間Gを提供している。
【0051】
従って、この実施形態のノズル構造体30においても、手動操作加圧構造体16の吸引管18の外端18bからノズル逆止弁26及び延出管52の芯部52bの内孔を介してノズル基部34´´の有底流入孔34aに流入した加圧された花粉体保存溶液12は、図1乃至図3を参照しながら前述した第1実施形態のノズル構造体30の場合と同様に、前述した溶液旋回構造により旋回された後にノズルキャップ36のノズル孔28から所定の範囲に噴霧される。
【0052】
この実施形態でも、ノズル孔28において前述した如く直径が変化しない部位の直径Dが1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている。直径Dの範囲を1.2mm〜1.4mmの範囲内とし、加圧された花粉体保存溶液12の圧力を0.15Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定することも出来る。詳細には、直径Dが1.0mm,1.2mm,そして1.4mmの場合には、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa,0.15Mpa,そして0.1MPaとなるよう設定されている。これらの直径D及び加圧された花粉体保存溶液12の圧力は、花粉体保存溶液12に含まれる花粉体の種類や花粉体保存溶液12の成分による例えば発芽率に関係する花粉体の損傷の程度や液垂れを生じない噴霧の具合により上述した範囲内で選択される。
【0053】
従って、この実施形態に従った花粉体噴霧器50は、図1乃至図3を参照しながら前述した第1実施形態の花粉体噴霧器10と同じ技術的な利点を得ることが出来る。
【0054】
[第4実施形態]
次に図7を参照してこの発明の第4実施形態に従った花粉体噴霧器60について説明する。第4実施形態に従った花粉体噴霧器60において図1乃至図3を参照しながら前述したこの発明の第1実施形態に従った花粉体噴霧器10の構成部材と同じ構成部材及び図6を参照しながら前述したこの発明の第3実施形態に従った花粉体噴霧器50の構成部材と同じ構成部材には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
この実施形態の花粉体噴霧器60が第3実施形態の花粉体噴霧器50と異なっているのは、手動操作加圧構造体16が収容空間14´aに花粉体保存溶液12を収容している容器14´の開口14´bに着脱可能に取り付けられておらず、容器14´の開口14´bを介して吸引菅18´が長く延出している。そして、この吸引菅18´の外端に手動操作加圧構造体16が接続されている。容器14´には花粉体噴霧器60の使用者の肩に掛けられるショルダーストラップ14´cが取り付けられており、吸引菅18´は柔軟であり、従って手動操作加圧構造体16を手によって保持した前記使用者が吸引菅18´の長さの範囲内で手動操作加圧構造体16を任意に移動させることが出来る。
【0056】
この実施形態でも、ノズル孔28(図5参照)において前述した如く直径が変化しない部位の直径Dが1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている。直径Dの範囲を1.2mm〜1.4mmの範囲内とし、加圧された花粉体保存溶液12の圧力を0.15Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定することも出来る。詳細には、直径Dが1.0mm,1.2mm,そして1.4mmの場合には、加圧された花粉体保存溶液12の圧力が0.2Mpa,0.15Mpa,そして0.1MPaとなるよう設定されている。これらの直径D及び加圧された花粉体保存溶液12の圧力は、花粉体保存溶液12に含まれる花粉体の種類や花粉体保存溶液12の成分による例えば発芽率に関係する花粉体の損傷の程度や液垂れを生じない噴霧の具合により上述した範囲内で選択される。
【0057】
従って、この実施形態に従った花粉体噴霧器60も、図1乃至図3を参照しながら前述した第1実施形態の花粉体噴霧器10と同じ技術的な利点を得ることが出来る。
【0058】
なお、この実施形態においては手動操作加圧構造体16とノズル構造体30との間に、ノズル構造体30の側の部位(延出端部位)がノズル構造体30の側の部位(延出端部位)以外の部位(中間部位及び基端部位)に対し所定の角度で傾斜している延出管52が介在されているが、この延出菅52及びノズル構造体30の組み合わせに代わり、図4中に図示されている如き延出端部位がノズル構造体30のノズル基部34´を提供している延出菅42とノズル構造体30との組み合わせを使用することが出来るし、図1乃至図3中に示されている如き延出管が介在されてない手動操作加圧構造体16とノズル構造体30との組み合わせを使用することも出来る。
【符号の説明】
【0059】
10…花粉体噴霧器、12…花粉体保存溶液、14…容器、14a…収容空間、14b…開口、16…手動操作加圧構造体、16a…ノズル逆止弁収容凹所、18…吸引管、18a…内端、18b…外端、20…手動レバー、22…加圧ポンプ、22a…付勢部材、24…逆止弁、26…ノズル逆止弁、28…ノズル孔、30…ノズル構造体、32…付勢部材、34…ノズル基部、34a…有底流入孔、34b…半径方向案内孔、34c…第1有底円形凹所、34d…第2有底円形凹所、34e…接線溝、34f…取り囲み部分、36…ノズルキャップ、38…密封部材、G…花粉体保存溶液流通隙間、D…(ノズル孔の)直径、
40…花粉体噴霧器、42…延出管、44…逆止弁収容体、46…密封部材、34´…ノズル基部、
50…花粉体噴霧器、52…延出管、52a…鞘部、52b…芯部、52c…ノズル基部収容凹所、34´…ノズル基部、
60…花粉体噴霧器、14´…容器、14´a…収容空間、14´b…開口、14´c…ショルダーストラップ、18´…吸引菅、18´a…内端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉体を含む花粉体保存溶液を収容した収容空間及び収容空間を外部に連通させる開口を有する容器と;
前記収容空間中に配置される内端及び前記開口を介し容器の外部に延出された外端を有する吸引管,手動レバー,そして手動レバーにより駆動されて前記花粉体保存溶液を前記吸引管の内端から吸引し加圧して前記吸引管の外端へと加圧された花粉体保存溶液を移動させる加圧ポンプを伴う、手動操作加圧構造体と;そして、
前記吸引管の外端に接続され、前記吸引管の外端に到達した加圧された花粉体保存溶液を所望の範囲に噴霧するノズル孔を含むノズル構造体と、を備えており、
ノズル孔の直径が1.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されているとともに、前記加圧された花粉体保存溶液の圧力が0.2Mpa〜0.1MPaの範囲内に設定されている、
ことを特徴とする花粉体噴霧器。
【請求項2】
前記ノズル構造体は、前記吸引管の外端に到達した加圧された花粉体保存溶液を前記ノズル孔まで旋回した状態で導く溶液旋回構造を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の花粉体噴霧器。
【請求項3】
前記ノズル構造体の溶液旋回構造は:
外周面と、前記吸引管の外端からの加圧された花粉体保存溶液が流入される有底流入孔と、有底流入孔から有底流入孔の半径方向の外方に向かい延出し前記外周面に開口した複数の半径方向案内孔と、有底流入孔の底壁の外端に形成された第1有底円形凹所と、有底流入孔の底壁の外端に第1有底円形凹所と同心的に形成され第1有底円形凹所よりも小さな直径と大きな深さとを有した第2有底円形凹所と、有底流入孔の底壁の外端に形成され第2有底円形凹所の内周面から前記外周面まで第2有底円形凹所の内周面の接線方向に第1有底円形凹所の底面を横切って延出した複数の接線溝と、を含むノズル基部と;そして、
ノズル基部の前記外周面及び前記外端に被せられる内周面及び内底面を有しており、前記内周面が前記外周面における前記複数の半径方向案内孔の開口と前記複数の接線溝の開口との間に対応した部位に加花粉体保存溶液流通隙間を提供しているとともに前記内底面に前記ノズル孔が形成されている、ノズルキャップと;
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の花粉体噴霧器。
【請求項4】
前記手動操作加圧構造体の前記吸引管の外端と前記ノズル構造体の前記ノズル基部の前記有底流入孔との間に介在され前記吸引管の外端から前記ノズル基部の前記有底流入孔まで前記加圧された花粉体保存溶液を案内する延出管を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の花粉体噴霧器。
【請求項5】
前記延出管は、前記手動操作加圧構造体に着脱可能に接続され前記延出管の外周面を提供する外周面を有する管状の鞘部と、前記鞘部の内孔に着脱可能に装着され前記手動操作加圧構造体の吸引管の外端から延出し前記外端からの加圧された花粉体保存溶液を前記鞘部の延出端まで案内する管状の芯部と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項4に記載の花粉体噴霧器。
【請求項6】
前記延出管において前記ノズル構造体の側の部位は、前記延出管の前記ノズル構造体の側の部位以外の部位に対し所定の角度で傾斜されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の花粉体噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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