説明

芳香族アルデヒド類の製造方法

【課題】 従来の方法では、芳香族アルデヒド類を製造するに際し、長時間高温で反応させる必要があり、また一酸化炭素と水素は80〜90気圧程度導入する等、かなり厳しい反応条件で行う必要があり、触媒活性が低いため経済性が極めて低いという問題があった。
【解決手段】 触媒及び塩基の存在下、ハロゲン化芳香族化合物、一酸化炭素及び水素より芳香族アルデヒドを製造する方法において、ハロゲン化芳香族化合物として下記構造式(1)
【化1】


で示される臭素化芳香族化合物及び/又はヨウ素化芳香族化合物(例えば、ブロモベンゼン)を用い、触媒としてパラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は芳香族アルデヒド類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、米国特許3960932号明細書には、臭素化又はヨウ素化された、芳香族化合物、ビニル系化合物又は複素環化合物と一酸化炭素及び水素とを、50〜175℃の温度、1〜200気圧で、パラジウム−ホスフィン錯体触媒を用いて反応させる方法が開示されている。
【0003】米国特許3960932号明細書においてホスフィンとはPR3又はP(OR)3で表される化合物であり、リンに結合した置換基Rとしてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基等多種例示されているが、実施例において具体的に使用されているホスフィンはほとんどがトリフェニルホスフィンであり、僅かにトリp−トリルホスフィン、トリフェノキシホスフィンが見られる程度である。
【0004】また、その他の臭素化芳香族化合物又はヨウ素化芳香族化合物を原料にした芳香族アルデヒド合成に関する研究例としては、例えば、J.Am.Chem.Soc.105、7175(1983)、J.Org.Chem.49、4009(1984)、J.Am.Chem.Soc.108、452(1986)、J.Org.Chem.53、624(1988)等があるが、これらの文献においても配位子としてはトリフェニルホスフィンを用いている。
【0005】さらに、その他のホスフィン配位子の研究例としては、例えば、Bull.Chem.Soc.Jpn.67、2329(1994)があり、それによれば、高活性を示すホスフィン配位子としてトリp−クロロフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリp−トリルホスフィンが挙げられており、置換基の1つをアルキル基に変えたジフェニルイソプロピルホスフィンは低活性であると記載されている。
【0006】また、特公平5−32377号公報にはハロフェノール類のヒドロカルボニル化に、脂肪族ホスフィンを使用することが記載されており、具体的には、その実施例において、トリエチルホスフィンやトリシクロヘキシルホスフィンが開示されている。
【0007】しかしながら、トリエチルホスフィンやトリシクロヘキシルホスフィンは、本発明の芳香族アルデヒド類の製造方法に使用した場合には、トリフェニルホスフィンよりも低い活性しか示さず、本系には適用できないという問題があった。
【0008】このようにホスフィン配位子としてはトリフェニルホスフィンを代表としたフェニル基が最も高活性を示し、アルキル基は低活性であると従来考えられてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の方法では、芳香族アルデヒド類を製造するに際し、長時間高温で反応させる必要があり、また一酸化炭素と水素は80〜90気圧程度導入する等、かなり厳しい反応条件で行う必要があり、触媒活性が低いために経済性が極めて低くなるという問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは芳香族アルデヒド類の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、原料として特定のハロゲン化芳香族化合物を用い、触媒としてパラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物を用いることにより、従来よりも穏和な反応条件で効率よく芳香族アルデヒド類の製造が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち本発明は、触媒及び塩基の存在下、ハロゲン化芳香族化合物、一酸化炭素及び水素より芳香族アルデヒドを製造する方法において、ハロゲン化芳香族化合物として下記構造式(1)
【0012】
【化2】


【0013】(式中、Xは臭素又はヨウ素を表し、n1は1又は2を表す。n1が2の場合にはXは互いに同一でも異なっていてもよい。YはCH又はNを表す。Rはフッ素、塩素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボニル基、エステル基、ニトリル基又はホルミル基を表し、n2は1〜3の範囲の整数を表す。n2が2以上の場合にはRは互いに同一でも異なっていてもよい。またRは隣接炭素原子に結合し、それらの炭素原子とともに炭化水素環又は複素環を形成していてもよい。)で示される臭素化芳香族化合物及び/又はヨウ素化芳香族化合物を用い、触媒としてパラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物を用いることを特徴とする芳香族アルデヒドの製造方法である。
【0014】本発明者らが上記課題を解決するため、ホスフィンについて検討したところ、置換基によって活性が大きく異なることを見出し、従来検討されてきたトリフェニルホスフィンに代表されるフェニル基置換のホスフィンよりも低活性な配位子と考えられてきたアルキル基置換のホスフィンに属するトリtert−ブチルホスフィンを使用した場合に、従来のトリフェニルホスフィン配位子に代表されるフェニル基置換のホスフィンを凌駕するほどの高活性を示すことを見出した。
【0015】しかしながら、特公平5−32377号に開示されているようなハロフェノール類には有効な脂肪族ホスフィンであっても、第1級アルキル基置換のトリn−ブチルホスフィンや第2級アルキル基置換のトリイソプロピルホスフィン、シクロアルキル基置換のシクロヘキシルホスフィン等は、従来のトリフェニルホスフィンよりも低活性であり、トリtert−ブチルホスフィンを使用した場合にこのような高活性を示すことは全く予想し得ないことであった。
【0016】以下本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】本発明において、触媒としてはパラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物を用いる。
【0018】パラジウム金属化合物としては、公知の金属化合物が使用でき、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類、塩化パラジウム、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロテトラアンミンパラジウム、ジクロロ(シクロオクター1、5ージエン)パラジウム、パラジウムトリフルオロアセテート、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド錯体等の2価のパラジウム化合物類、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体等の0価のパラジウム化合物類が挙げられる。これらのうち、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムが好適なものとして例示される。
【0019】パラジウム金属化合物の使用量は、原料である臭素化芳香族化合物及び/又はヨウ素化芳香族化合物に対して原子比で0.00001〜0.1であるが、好適には0.00005〜0.05である。
【0020】トリtert−ブチルホスフィンの使用量は、パラジウム原子に対してモル比で2〜10000であり、好適には2〜100である。
【0021】パラジウム金属化合物とトリtert−ブチルホスフィンはいかなる形態をとっていてもよいが、それらが金属錯体を形成していることが好ましい。
【0022】本発明において使用される原料は臭素化芳香族化合物及び/又はヨウ素化芳香族化合物であり、下記構造式(1)で示される。
【0023】
【化3】


【0024】(式中、Xは臭素又はヨウ素を表し、n1は1又は2を表す。n1が2の場合にはXは互いに同一でも異なっていてもよい。YはCH又はNを表す。Rはフッ素、塩素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボニル基、エステル基、ニトリル基又はホルミル基を表し、n2は1〜3の範囲の整数を表す。n2が2以上の場合にはRは互いに同一でも異なっていてもよい。またRは隣接炭素原子に結合し、それらの炭素原子とともに炭化水素環又は複素環を形成していてもよい。)
Rがフッ素及び/又は塩素の例としては、具体的には、フルオロブロモベンゼン、ジフルオロブロモベンゼン、クロロブロモベンゼン、ジクロロブロモベンゼン、フルオロクロロブロモベンエン、フルオロヨードベンゼン、ジフルオロヨードベンゼン、クロロヨードベンゼン、ジクロロヨードベンゼン、フルオロクロロヨードベンエン等が挙げられる。
【0025】Rがアルキル基の例としては、具体的には、ブロモトルエン、ブロモキシレン、トリメチルブロモベンゼン、エチルブロモベンゼン、メチルエチルブロモベンゼン、tert−ブチルブロモベンゼン、2ーエチルヘキシルブロモベンゼン、トリフルオロメチルブロモベンゼン、トリクロロメチルブロモベンゼン、ジフルオロクロロメチルブロモベンゼン等が挙げられる。
【0026】Rがシクロアルキル基の例としては、具体的には、シクロペンチルブロモベンゼン、シクロヘキシルブロモベンゼン、シクロオクチルブロモベンゼン、シクロペンチルヨードベンゼン、シクロヘキシルヨードベンゼン、シクロオクチルヨードベンゼン等が挙げられる。
【0027】Rがアルコキシ基の例としては、具体的には、ブロモアニソール、ジメトキシブロモベンゼン、トリメトキシブロモベンゼン、エトキシブロモベンゼン、メトキシエトキシブロモベンゼン、プロポキシブロモベンゼン、エトキシペントキシブロモベンゼン、ジフルオロメトキシブロモベンゼン、トリフルオロメトキシブロモベンゼン、メチルメルカプトブロモベンゼン、フェノキシブロモベンゼン、ベンゾキシブロモベンゼン、フェノキシフルオロブロモベンゼン、ヨードアニソール、ジメトキシヨードベンゼン、トリメトキシヨードベンゼン、エトキシヨードベンゼン、メトキシエトキシヨードベンゼン、プロポキシヨードベンゼン、エトキシペントキシヨードベンゼン、ジフルオロメトキシヨードベンゼン、トリフルオロメトキシヨードベンゼン、メチルメルカプトヨードベンゼン、フェノキシヨードベンゼン、ベンゾキシヨードベンゼン、フェノキシフルオロヨードベンゼン等が挙げられる。
【0028】Rがアリール基の例としては、具体的には、ブロモビフェニル、トルイルブロモベンゼン、キシリルブロモベンゼン、メトキシフェニルブロモベンゼン、ヨードビフェニル、トルイルヨードベンゼン、キシリルヨードベンゼン、メトキシフェニルヨードベンゼン等が挙げられる。
【0029】Rがカルボニル基の例としては、具体的には、アセトブロモベンゼン、プロポキソブロモベンゼン、ブチロキソブロモベンゼン、アセトヨードベンゼン、プロポキソヨードベンゼン、ブチロキソヨードベンゼン等があげられる。
【0030】Rがエステル基の例としては、具体的には、ブロモフェニルアセテート、ブロモフェニルプロピオネート、ブロモフェニルブチレート、ブロモ安息香酸メチル、ブロモ安息香酸エチル、ブロモ安息香酸ブチル、ブロモフタル酸ジメチル、ヨードフェニルアセテート、ヨードフェニルプロピオネート、ヨードフェニルブチレート、ヨード安息香酸メチル、ヨード安息香酸エチル、ヨード安息香酸ブチル、ヨードフタル酸ジメチル等が挙げられる。
【0031】Rがニトリル基の例としては、具体的には、シアノブロモベンゼン、シアノヨードベンゼン等が挙げられる。
【0032】Rがホルミル基の例としては、具体的には、ホルミルブロモベンゼン、ホルミルヨードベンゼン等が挙げられる。
【0033】Rが炭化水素環又は複素環を形成した例としては、具体的には、ブロモナフタレン、メチルブロモナフタレン、メチレンジオキシブロモベンゼン、エチレンジオキシブロモベンゼン、ヨードナフタレン、メチルヨードナフタレン、メチレンジオキシヨードベンゼン、エチレンジオキシヨードベンゼン等が挙げられる。
【0034】Yが窒素の例としては、具体的には、ブロモピリジン、ブロモピコリン、ヨードピリジン、ヨードピコリン等が挙げられる。
【0035】本発明において塩基としては第3級アミンが使用される。使用される第3級アミンは公知のものが使用でき、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(2)
NR123 (2)
(式中、R1、R2、R3は各々独立して1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基又はアリル基を表す。)で示される第3級アミンが挙げられる。R1、R2、R3としては、好適には1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、具体的にはトリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、テトラメチルエチレンジアミン等が例示できる。
【0036】また、複素環式の第3級アミン、例えば、ピリジン、ピコリン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン等も使用することができる。
【0037】塩基の量は反応により放出される酸を中和するため用いられるので、中和が可能な量であればよく、好適には上記構造式(1)中のX(臭素又はヨウ素)の化学量論量の1〜10倍である。
【0038】本発明において、必要であれば反応条件下において不活性な溶媒を使用してもよい。使用される溶媒としては飽和脂肪族又は脂環式炭化水素又は芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類を例示できる。具体的にはヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジブチルフタレート、テトラヒドラフラン、ジオキサンを例示できる。
【0039】本発明の方法は液相で実施する。適当な場合には触媒は金属錯体として固定化して使用してもよい。固定化する方法は公知の方法を用いることができる。本反応条件下において不活性な無機担体、有機高分子体、イオン交換樹脂等を支持体として使用し、配位子交換等の公知の方法で結合させ、固定化する方法が知られている。
【0040】本発明の方法を実施する際の反応温度は50〜170℃の範囲内で行うことができ、好適には100〜150℃である。
【0041】使用する一酸化炭素と水素の圧力は全圧で1〜50気圧の範囲で行うことができ、好適には1〜40気圧である。一酸化炭素と水素の容積比は広い範囲で設定することができ、一般的には一酸化炭素/水素の容積比で0.1〜10であり、好適には0.1〜2である。
【0042】本発明の方法は公知の操作方法が利用でき、例えば連続式、バッチ式で実施することができる。
【0043】本発明の方法をさらに明瞭にするため、反応操作を以下に具体的に述べるが、この操作方法に限定するものではない。
【0044】臭素化芳香族化合物、塩基、錯体触媒、及び適当な場合には溶媒をオートクレーブ中に導入する。これらはあらかじめ混合してから導入してもよく、別々に導入してもよい。次にオートクレーブ中に一酸化炭素と水素を所定量導入する。一酸化炭素と水素は反応条件下の温度において設定圧となるように一括導入しておいてもよく、設定温度まで加熱した後に設定圧まで導入してもよい。設定温度まで加熱した後に設定圧まで導入する場合、設定温度まで液相を保つ程度の圧力をあらかじめ導入しておくことが好ましい。
【0045】反応期間中、反応の進行とともに一酸化炭素及び水素が消費されるが、一酸化炭素及び水素を反応開始時において反応に十分な量及び圧力で導入した場合、オートクレーブを密閉して消費量を補充せず反応させることができる。又は反応に必要な量の如何に関わらず、外部のガス容器と接続して消費分を補充することによって反応圧力を一定に保つことも可能である。また、反応の全期間を通じて又は一定期間のみ一酸化炭素及び水素を流通させて設定圧を保持しながら反応させることも可能である。
【0046】反応の終了後、オートクレーブを冷却、反応物質から分離して芳香族アルデヒドを得る。一般的な分離方法として、以下の方法を例示できる。冷却した反応物質を濾過して臭素(ヨウ素化芳香族化合物を使用した場合にはヨウ素)のアンモニウム塩を分離した後、濾液を蒸留して目的の芳香族アルデヒドを得る。芳香族アルデヒドを分離した後、残液中の触媒は新しい操作で再使用するため、再循環に供することも可能である。
【0047】
【発明の効果】本発明の方法に従えば芳香族アルデヒド類を経済的に製造することが可能になり工業的に極めて有用である。
【0048】
【実施例】本発明を次の例で具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0049】実施例1窒素雰囲気下、酢酸パラジウム0.068g(0.3mmol)とトリtert−ブチルホスフィン0.24g(1.2mmol)をトルエン10mlに溶解した。ブロモベンゼン1.56g(10mmol)、トリエチルアミン1.52g(15mmol)及びトルエン20mlを採取し、先に調製した触媒溶液を添加した。この様にして調製した原料溶液を200mlのステンレス製オートクレーブに注入した。オートクレーブ内に一酸化炭素を6気圧導入し、置換した。この操作を3回繰り返した。一酸化炭素を10気圧導入した後、水素を10気圧導入した。系内を密閉し、250rpmで攪拌しながら110℃まで加熱した。110℃において全圧23.6気圧を示した。5hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析によりブロモベンゼンは100%転化し、ベンズアルデヒド収率93%を得た。
【0050】実施例2ブロモベンゼンを4−フルオロブロモベンゼンに変え、反応温度を120℃にした以外は実施例1と同様に反応を行った。120℃において全圧23.9気圧を示した。8hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により4−フルオロブロモベンゼンは100%転化し、4−フルオロベンズアルデヒド収率88%を得た。
【0051】実施例3ブロモベンゼンを4−ブロモトルエンに変え、反応温度を130℃にした以外は実施例1と同様に反応を行った。130℃において全圧24.2気圧を示した。8hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により4−ブロモトルエンは100%転化し、4−トルアルデヒド収率90%を得た。
【0052】実施例4ブロモベンゼンを4−ブロモアニソールに変え、反応温度を130℃にした以外は実施例1と同様に反応を行った。120℃において全圧24.2気圧を示した。7hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により4−ブロモアニソールは100%転化し、4−アニスアルデヒド収率85%を得た。
【0053】実施例5ブロモベンゼンを2−ブロモトルエンに変え、反応温度を130℃にした以外は実施例1と同様に反応を行った。130℃において全圧24.2気圧を示した。6hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により2−ブロモトルエンは100%転化し、2−トルアルデヒド収率89%を得た。
【0054】実施例6ブロモベンゼンを4−ブロモベンズアルデヒドに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。110℃において全圧23.6気圧を示した。4hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により4−ブロモベンズアルデヒドは100%転化し、テレフタルアルデヒド収率87%を得た。
【0055】実施例7ブロモベンゼンを4−トリフルオロメチルブロモベンゼンに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。110℃において全圧23.6気圧を示した。4hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により4−トリフルオロメチルブロモベンゼンは100%転化し、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド収率85%を得た。
【0056】実施例8ブロモベンゼンを3−ブロモピリジンに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。110℃において全圧23.6気圧を示した。5hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析により3−ブロモピリジンは100%転化し、3−ホルミルピリジン収率80%を得た。
【0057】実施例9酢酸パラジウムをトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムに変えた以外は実施例1と同様に反応を行った。110℃において全圧23.6気圧を示した。5hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析によりブロモベンゼンは100%転化し、ベンズアルデヒド収率95%を得た。
【0058】実施例10窒素雰囲気下、酢酸パラジウム0.068g(0.3mmol)とトリtert−ブチルホスフィン0.24g(1.2mmol)をトルエン10mlに溶解した。ブロモベンゼン1.56g(10mmol)、トリエチルアミン1.52g(15mmol)及びトルエン20mlを採取し、先に調製した触媒溶液を添加した。この様にして調製した原料溶液を200mlのステンレス製オートクレーブに注入した。オートクレーブ内に一酸化炭素を6気圧導入し、置換した。この操作を3回繰り返した。一酸化炭素を10気圧導入した後、水素を20気圧導入した。系内を密閉し、250rpmで攪拌しながら110℃まで加熱した。110℃において全圧35.4気圧を示した。5hr反応させた後、氷水で5℃まで急冷し、反応液を収集した。GC分析によりブロモベンゼンは100%転化し、ベンズアルデヒド収率90%を得た。
【0059】比較例1〜比較例6錯体触媒を表2に示す配位子を使用して調製した以外は実施例10と同様の条件で反応を行った。その時の転化率とアルデヒド収率を表1にあわせて示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 触媒及び塩基の存在下、ハロゲン化芳香族化合物、一酸化炭素及び水素より芳香族アルデヒドを製造する方法において、ハロゲン化芳香族化合物として下記構造式(1)
【化1】


(式中、Xは臭素又はヨウ素を表し、n1は1又は2を表す。n1が2の場合にはXは互いに同一でも異なっていてもよい。YはCH又はNを表す。Rはフッ素、塩素、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボニル基、エステル基、ニトリル基又はホルミル基を表し、n2は1〜3の範囲の整数を表す。n2が2以上の場合にはRは互いに同一でも異なっていてもよい。またRは隣接炭素原子に結合し、それらの炭素原子とともに炭化水素環又は複素環を形成していてもよい。)で示される臭素化芳香族化合物及び/又はヨウ素化芳香族化合物を用い、触媒としてパラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物を用いることを特徴とする芳香族アルデヒドの製造方法。
【請求項2】 パラジウム金属化合物及びトリtert−ブチルホスフィンからなる化合物が、パラジウム−トリtert−ブチルホスフィン錯体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族アルデヒドの製造方法。
【請求項3】 ハロゲン化芳香族化合物が、臭素化芳香族化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芳香族アルデヒドの製造方法。

【公開番号】特開平10−330307
【公開日】平成10年(1998)12月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−136633
【出願日】平成9年(1997)5月27日
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)