説明

芳香族ホウ酸エステルの製造方法

【課題】一層高い収率で芳香族ホウ酸エステルを製造する方法の提供。
【解決手段】パラジウム触媒及び炭素数3〜12のエーテル溶媒の存在下、芳香族ハロゲン化物と、式(2)で示される化合物とを反応させて、芳香族ホウ酸エステルを製造する方法であって、パラジウム触媒、エーテル溶媒、芳香族ハロゲン化物及び式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量を5重量%以下の条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする製造方法。


(式中、kはそれぞれ独立に0又は1を表す。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表す。Rは互いに結合していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ホウ酸エステルの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)などの分子内に複数のホウ素原子と芳香族炭化水素基とを有する化合物(芳香族ホウ酸エステル)は、有機エレクトロニクス材料の単量体として重要な化合物である。
【0003】
芳香族ホウ酸エステルの製造方法としては、例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンのテトラヒドロフラン溶液に、n-ブチルリチウムを反応させた後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを反応させて、収率67.5%で芳香族ホウ酸エステルである2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)を得ることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-277377号公報((0072)段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下、一層高い収率で芳香族ホウ酸エステルを製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る芳香族ホウ酸エステルの製造方法は、パラジウム触媒及び炭素数3〜12のエーテル溶媒の存在下、下記式(1)で示される化合物と、下記式(2)で示される化合物とを反応させて、下記式(3)で示される芳香族ホウ酸エステルを製造する方法であって、該パラジウム触媒、該エーテル溶媒、下記式(1)で示される化合物及び下記式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量を5重量%以下の条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする。
【化1】

(式中、Rは、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基は炭素数6〜16である。Xは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、mは、2〜4の整数を表す。)
【化2】

(式中、kはそれぞれ独立に0又は1を表す。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表す。Rは互いに結合していてもよい。)
【化3】

(式中、R,R,kおよびmは上記と同一の意味を表す。)
【0007】
ここで、式(1)で示される化合物の芳香族炭化水素基Rとしては、下記式(a−1)〜(a−5)からなる群から選ばれる少なくとも1つの2価の基であるのが好ましい。
【化4】

(式中、Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数8〜20のアリールアルケニル基、炭素数8〜20のアリールアルキニル基、1価の複素環基、シアノ基、炭素数0〜40のアミノ基、炭素数3〜30のシリル基、炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族アシル基、炭素数2〜20のイミド残基、炭素数4〜20の酸イミド基、カルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリールオキシカルボニル基、ニトリル基、ニトロ基、または置換基を有していてもよいカルバモイル基を表し、nは、0〜4の整数を表す。ここで、Rは隣接する置換基と結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。−はRとの結合手を意味する。)
【0008】
また、前記パラジウム触媒としては、パラジウム化合物と3価のリン原子を有する有機リン化合物(以下、「有機リン化合物」と記すことがある)とを含有するパラジウム触媒であるのが好ましい。
【0009】
前記パラジウム化合物としては、パラジウムカルボン酸塩、ハロゲン化パラジウム、ハロゲン化パラジウム錯体、アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム類、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム及びパラジウム(0)−ジベンジリデンアセトン錯体からなる群から選ばれる少なくとも1つのパラジウム化合物であるのが好ましい。
【0010】
前記有機リン化合物としては、下記式(4)で示される有機リン化合物及び下記式(5)で示される有機リン化合物の少なくとも一方の有機リン化合物であるのが好ましい。
【化5】

(式中、Rはそれぞれ独立して、シクロヘキシル基、または、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基及び炭素数1〜7のジアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基である。Rはトリメチレン、テトラメチレン又はフェロセン−1,1’−ジイルを表す。)
【化6】

(式中、Rはそれぞれ独立して、シクロヘキシル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいビフェニル基を表す。該置換基は、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシル基及びアミノ基から選択される少なくとも一種の置換基である。)
【0011】
前記パラジウム触媒としては、前記パラジウム化合物と前記有機リン化合物とを混合して得られるパラジウム触媒であってもよい。
【0012】
また、混合物の水分含量が多い場合でも収率の低下を抑制できるようにする観点からは、前記エーテル溶媒としては、炭素数3〜12のジアルコキシアルカンであるのが好ましい。
【0013】
前記式(2)で示される化合物としてはビス(ピナコラート)ジボランであるのが好ましい。
【0014】
前記混合物が酢酸カリウムをさらに含むようにするのが好ましい。
【0015】
また、前記工程における前記混合物中の水分量を0.01〜1重量%の範囲としても、芳香族ホウ酸エステルを高い収率で製造可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一層高い収率で芳香族ホウ酸エステルを製造する方法が提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る芳香族ホウ酸エステルの製造方法は、パラジウム触媒及び炭素数3〜12のエーテル溶媒の存在下、式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物とを反応させる、式(3)で示される芳香族ホウ酸エステルを製造する方法であって、該パラジウム化合物、該エーテル溶媒、式(1)で示される化合物及び式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量を5重量%以下の条件下で反応させる工程(以下、本工程と記すことがある)を含むことを特徴とする。
【0018】
本工程で使用する式(1)で示される化合物は、Rとして、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を含む化合物であり、該芳香族炭化水素基の炭素数は6〜16である。具体的なRとしては、例えば、フェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基、フルオレン基等の縮合系芳香族炭化水素基等が挙げられる。また、ビフェニル−1,1’−ジイル基のように、フェニレン基などの複数の芳香族炭化水素基が互いに、単結合、ヘテロ原子、スルホニル基又はカルボニル基で連結されたものであってもよい。
【0019】
芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基としてはパラジウム触媒の活性を阻害しないものが望ましく、例えば、フッ素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、シアノ基、アミノ基、シリル基、アシル基、イミン残基、酸イミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はニトロ基等が挙げられる。また、置換基に含まれる水素原子は、さらに、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基、又はシアノ基で置換されていてもよい。
【0020】
アルキル基としては、炭素数1〜20程度が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基等が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、炭素数1〜20程度が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基及びn−イコシルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
アリール基としては、炭素数6〜20程度が好ましく、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等の1価の基が挙げられる。
【0023】
アリールオキシ基は、前記のアリール基に酸素原子が結合した基であり、炭素数6〜20程度が好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントリルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
アリールアルケニル基としては、炭素数8〜20程度が好ましく、例えば、フェニルアルケニル基、ナフチルアルケニル基などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などが挙げられる。
【0025】
アリールアルキニル基としては、炭素数8〜20程度が好ましく、例えば、フェニルアルキニル基、ナフチルアルキニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基などが挙げられる。
【0026】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個が結合手となった基を意味する。1価の複素環基には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられる。
【0027】
アミノ基は−N(R’)で表される基である。ここで、R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基およびアリール基からなる群から選ばれる炭素数1〜20の炭化水素基である。アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基などが挙げられる。
【0028】
シリル基としては、炭素数3〜30程度が好ましく、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、トリデシルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0029】
アシル基としては、炭素数1〜20程度が好ましく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、ナフトイル基等の芳香族アシル基等が挙げられる。
【0030】
イミン残基は、化学構造式「H−N=C<」及び「−N=CH−」の少なくとも一方で表される部分構造を有するイミン化合物から、該部分構造中の水素原子が結合手となった基を意味する。ここで、イミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0031】
イミン残基の炭素数は、通常2〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜16程度である。イミン残基としては、例えば、化学構造式「−CR’’=N−R’’’」又は「−N=C(R’’’)2」(式中、R’’は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、R’’’は独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基を表し、ただし、R’’’が2個存在する場合、2個のR’’’は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基などが挙げられる。イミン残基の具体例としては、以下の構造式で示される基などが挙げられる。
【0032】
【化7】

【0033】
酸イミド基は、酸イミドに含まれる窒素原子が結合手となった残基を意味する。酸イミド基の炭素数は、例えば、4〜20等を挙げることができ、好ましくは4〜18程度、より好ましくは4〜16程度である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基などが挙げられる。
【0034】
【化8】

【0035】
アルコキシカルボニル基は、アルコキシ基にカルボニル基が結合した基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
アリールオキシカルボニル基は、前記のアリール基にカルボニル基が結合した基であり、例えば、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0037】
式(1)で示される化合物としては、例えば、2−ブロモ−5−クロロトルエン、1−ブロモ−4−クロロ−2−プロピルベンゼン、2,5−ジクロロベンジルアルコール、2,5−ジクロロ安息香酸エチル、2,5−ジクロロベンズアルデヒド、2,5−ジクロロベンゾフェノン、9,10−ジクロロ−2,6−ジメチルアントラセン、2,5−ジクロロベンゾニトリル、2,5−ジクロロアセトアセトアニリド、2’,5’−ジクロロ−4−ビフェノール、1,4−ジクロロナフタレン、2,7−ジクロロジベンゾ−p−ジオキシン、2,8−ジクロロジベンゾフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモ−4,6−ジフルオロベンゼン、1,3−ジブロモ−4,6−ジフルオロベンゼン、1,3−ジブロモ−5−トリメチルシリルベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモ−2−エチルベンゼン、1,4−ジブロモ−3−フルオロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジメチルベンゼン、2,5−ジヘキシル−1,4−ジブロモベンゼン、2,5−ジオクタデシル−1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジメトキシベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジヘキシルオキシベンゼン、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン、2,5−ジブロモ安息香酸メチル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,5−ジブロモビフェニル、2,5−ジブロモトルエン、2,5−ジブロモベンズアルデヒド、1,4−ジブロモ−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジブロモ−2−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,5−トリブロモベンゼン、2,3,5,6−テトラブロモ−p−キシレン、1,4−ジブロモナフタレン、2,7−ジブロモ−9−フルオレノン、9,10−ジブロモアントラセン、4,4’−ジブロモジフェニルエーテル、2,5−ジブロモ−4’−フェノキシベンゾフェノン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−(4−t−ブチル)ベンゼンアミン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−(1−メチルプロピル)ベンゼンアミン、ビス(4−ブロモフェニル)−4−ベンゼンアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス[4−(1,1−ジメチルエチル)−2,6−ジメチルフェニル]−1,4−ベンゼンジアミン、4,4’−ビス[(4−ブロモフェニル)フェニルアミノ]ビフェニル、1,4−ジヨード−2,5−ジメトキシベンゼン、1−クロロ−2,5−ジヨードベンゼン、2,5−ジヨードフェノール、1,4−ジヨード−2−ニトロベンゼン、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジドデシルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジオクチルフルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジドデシルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジヘキシルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジオクチルフルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジドデシルフルオレン等が挙げられる。
【0038】
式(1)で示される化合物における芳香族炭化水素基Rとしては、例えば、下記式(a−1)〜(a−5)で表される2価の基が、ジメトキシエタン(DME)等のジアルコキシアルカン溶媒に対する溶解度の点でより好ましい。
【0039】
【化9】

(式中、Rは置換基を意味し、置換基としては、前記芳香族炭化水素基の水素原子に置換されてもよい置換基として例示されたものと同様の基が挙げられる。nは0〜4の整数を表す。)
【0040】
また、互いに、ヘテロ原子、スルホニル基又はカルボニル基で連結された芳香族炭化水素基としては、例えば、式(b−1)〜(b−3)で表される2価の基等が挙げられる。
【0041】
【化10】

(式中、R及びnは、それぞれ独立して、前記と同じ意味を表す。)
【0042】
式(1)で示される化合物におけるX(以下、脱離基と記すことがある)としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。かかる脱離基は、m価の芳香族基のsp炭素原子に結合する。
【0043】
式(1)で示される化合物は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
【0044】
一方、本発明で使用する式(2)で表される化合物のkは0又は1を表し、式(2)で表される化合物における少なくとも1つのkは1であることが好ましく、少なくとも1方のホウ素原子と結合する酸素原子のkは1であることがより好ましく、kがいずれも1であることがとりわけ、より好ましい。
【0045】
本発明で使用する式(2)で表される化合物のRは、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Rは互いに結合していてもよい。その具体的な構成としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【0046】
【化11】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R21は炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【0047】
炭素数1〜6の無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の無置換アルキル基が挙げられる。かかるアルキル基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
【0048】
2価の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい2価脂肪族基や2価芳香族基が挙げられる。2価脂肪族基には鎖状及び環状のものが包含され、例えば、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,1,2,2−テトラメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基等)が挙げられる。また、2価芳香族基にはアリーレン基が包含され、例えば、炭素数6〜14、好ましくは6〜12のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基等)等が挙げられる。
【0049】
2価の炭化水素基R21をホウ素原子及び酸素原子とともに表すと、例えば、下記式(d−1)〜(d−5)で表されることができる。
【0050】
【化12】

【0051】
式(2)で示される化合物としては、例えば、ビス(ピナコラート)ジボロン、ビス(エタンジオラート)ジボロン、ビス(n−プロパンジオラート)ジボロンおよびビス(ネオペンチルジオラート)ジボロンなどが挙げられる。これらの中でも、本工程で得られる芳香族ホウ酸エステルを重合する際の反応性等の観点から、ビス(ピナコラート)ジボロンが特に好ましい。
【0052】
式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物との反応は、パラジウム触媒の存在下で行われる。本発明で使用するパラジウム触媒としては、パラジウム化合物と3価のリン原子を有する有機リン化合物とを含有するパラジウム触媒が好ましい。
【0053】
パラジウム化合物としては、例えば、パラジウム(0)化合物またはパラジウム(II)化合物等が挙げられる。
【0054】
パラジウム(0)化合物としては、ジベンジリデンアセトン(「dba」と記すことがある)が0価パラジウムに配位した錯体、いわゆる、パラジウム−dba(0)錯体ならびにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等が挙げられる。パラジウム−dba(0)錯体の具体例としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba))等が挙げられる。
【0055】
パラジウム(II)化合物としては、パラジウムカルボン酸塩、ハロゲン化パラジウム、ハロゲン化パラジウム錯体、アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム類等が挙げられる。パラジウムカルボン酸塩としては、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート等が挙げられる。ハロゲン化パラジウムとしては、塩化パラジウム、臭化パラジウム等が挙げられる。ハロゲン化パラジウム錯体としてはジクロロ(N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム錯体、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、アリルパラジウム(II)クロライドダイマー、ビス2−メチルアリルパラジウム(II)クロライドダイマー、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)等が挙げられる。アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム類としては、アリル(シクロシクロペンタジエニル)パラジウム、1−フェニルアリル(シクロシクロペンタジエニル)パラジウムが挙げられる。
【0056】
パラジウム化合物は、無水物であってもよいし、水和物であってもよい。また、パラジウム化合物は、炭素、シリカ、アルミナ等の担体に担持されていてもよい。また2種類以上のパラジウム化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
3価のリン原子を有する有機リン化合物としては、式(4)で示される有機リン化合物及び式(5)で示される有機リン化合物等を挙げることができる。
【0058】
式(4)で示される有機リン化合物の式中、Rは独立して、シクロヘキシル基または置換基を有していてもよいフェニル基である。前記フェニル基の水素原子に置換し得る置換基としては、例えば、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基又は炭素数1〜7のジアルキルアミノ基が挙げられる。フェニル基の水素原子には、同一もしくは異なる1又は複数の置換基が置換されていてもよい。Rはトリメチレン基、テトラメチレン基またはフェロセン−1,1’−ジイル基を表す。
【0059】
炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
【0060】
炭素数1〜7のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0061】
炭素数1〜7のジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
が挙げられる。
【0062】
式(4)で示される有機リン化合物としては、例えば、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(「dppp」と記すことがある)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(「dppb」と記すことがある)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(「dppf」と記すことがある)、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン(「dcypp」と記すことがある)、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン(「dcypb」と記すことがある)、1,1’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセン(「dcypf」と記すことがある)が挙げられる。
これらの中でもdppfがより好ましい。
【0063】
式(5)で示される有機リン化合物の式中、Rはそれぞれ独立して、シクロヘキシル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいビフェニル基である。前記フェニル基もしくはビフェニル基の水素原子に置換し得る置換基としては、例えば、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7アルコキシル基又はアミノ基等が挙げられる。前記フェニル基もしくはビフェニル基の水素原子には、同一もしくは異なる1又は複数の置換基が置換されていてもよい。
【0064】
式(5)で示される有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン(「PPh」と記すことがある)、トリ(o−トリル)ホスフィン(「(o−Tol)P」と記すことがある)、トリ(m−トリル)ホスフィン(「(m−Tol)P」と記すことがある)、トリ(p−トリル)ホスフィン(「(p−Tol)P」と記すことがある)、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(「PCy」と記すことがある)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−ジクロロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメルアミノ)ビフェニル、2−ジクロロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジイソプロポキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジクロロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−ジクロロヘキシルホスフィノ−2’−メチル−1,1’−ビフェニル等が挙げられる。
【0065】
前記有機リン化合物の2種類以上を組み合わせて用いてもよい。有機リン化合物の使用量は、パラジウム原子1モルに対して、例えば、0.05〜4モルの範囲等が挙げられ、好ましくは0.5〜3モルの範囲等である。
【0066】
本発明で使用するパラジウム触媒は、後述するエーテル溶媒、式(1)で示される化合物及び下記式(2)で示される化合物を含む混合物中に、パラジウム化合物と有機リン化合物とを混合させるか、又はパラジウム化合物と有機リン化合物と溶媒との混合物を得てから該溶媒を除去し、得られた固体を後述するエーテル溶媒、式(1)で示される化合物及び下記式(2)で示される化合物を含む混合物中に混合させる。さらには、パラジウム化合物と有機リン化合物とから配位化合物を得、該配位化合物をを後述するエーテル溶媒、式(1)で示される化合物及び下記式(2)で示される化合物を含む混合物中に混合させてもよい。
【0067】
本工程におけるパラジウム触媒の使用量は、式(1)で示される化合物100モルに対して、例えば、パラジウム原子が0.01〜100モルの範囲を挙げることができ、好ましくは0.1〜10モルの範囲が挙げられるである。
【0068】
本工程のパラジウム触媒としては、パラジウム化合物と3価のリン原子を有する有機リン化合物とを含有する配位化合物が好ましく、具体的には、例えば、ジクロロパラジウムビス(トリフェニルホスフィン)(「PdCl(PPh」と記すことがある)、ジクロロパラジウムビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(「PdCl(PCy」と記すことがある)、ジクロロパラジウムdppf(「PdCldppf」と記すことがある)、ジブロモパラジウムビス(トリフェニルホスフィン)、ジブロモパラジウムビス(トリシクロヘキシルホスフィン)、ジブロモパラジウムdppf、ジ(μ―アセタト)ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム等が挙げられる。
これら配位化合物は市販されておりこれら市販品をパラジウム触媒として使用すればよい。
【0069】
本工程で使用される溶媒は、炭素数3〜12のエーテル溶媒である。このようなエーテル溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン(「DME」と記すことがある)、1,2−ジエトキシエタン、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン等のジアルコキシアルカン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテルが挙げられ、これらの中でもジアルコキシアルカンが好ましく、より好ましくはDMEである。エーテル溶媒の使用量としては、式(1)で示される化合物1重量部に対して、例えば、0.5〜700重量部の範囲等が挙げられ、好ましくは1〜500重量部の範囲等が挙げられる。原料の溶解度、反応混合物の粘度や性状を調整するために、エーテル溶媒は、反応に影響しない程度に水および他の有機溶媒を含有していてもよい。
【0070】
エーテル溶媒としてジアルコキシアルカンを用いる場合、使用するパラジウム触媒としては、式(4)で示される有機リン化合物を含むパラジウム触媒、又は式(5)で示される有機リン化合物を含むパラジウム触媒が好ましい。
【0071】
本工程の混合物は、好ましくは、酢酸カリウムをさらに含有する。酢酸カリウムの使用量としては、式(1)で示される化合物中の脱離基1モルに対して、例えば、1〜10モルの範囲等が挙げられ、本工程における混合物の粘度の観点から好ましくは1〜5モルの範囲等が挙げられる。酢酸カリウムは無水物であってもよいし、未乾燥品を用いてもよいが、酢酸カリウムは潮解性があるため、反応系内の水分調整の観点から無水物の使用が好ましい。
【0072】
本発明に係る製造方法は、該パラジウム触媒、該エーテル溶媒、式(1)で示される化合物及び式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量を5重量%以下に調整することにより、後述の実施例から明らかなように、芳香族ホウ酸エステルの製造収率を従来に比べて一層向上させることが可能である。
上記水分量に該混合物を調製する方法としては、本工程に用いられる反応容器を充分に乾燥するとともに、該エーテル溶媒を予め、アルカリ金属若しくはモレキュラーシーブスなどで脱水する方法、又は、該エーテル溶媒を予め、精留により脱水する方法等を挙げることができる。
【0073】
また、エーテル溶媒を用い、かつ、該混合物中の水分量の上限を5重量%以下、好ましくは、2重量%以下、より好ましくは1重量%以下に調製することにより、一層向上した製造収率で芳香族ホウ酸エステルを製造することが可能である。
また、本工程の該混合物中の水分量が50ppm以下の無水条件でも本工程は実施可能であるが、工業的に簡便に反応させることができる0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上に該混合物中の水分量の下限を設定しても、従来よりも優れた収率で芳香族ホウ酸エステルが製造可能である。
【0074】
さらに、DMEなどジアルコキシアルカンを用いることにより、0.01〜5重量%、好ましくは、0.1〜1重量%の水分を含有していても、一層向上した製造収率で芳香族ホウ酸エステルを製造することが可能である。
【0075】
本工程における混合物の調製方法としては、パラジウム触媒と、予め水分量が調整されたエーテル溶媒と、式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物と、必要により酢酸カリウムとを任意の順序で混合すればよい。パラジウム触媒、式(1)で示される化合物及び式(2)で示される化合物は、水分量が検出されない程度に低いものが好ましい。
【0076】
本工程における反応温度は、通常0〜200℃の範囲、好ましくは20〜180℃の範囲である。反応圧力は制限されないが、通常は常圧(大気圧)である。反応時間は制限されず、式(1)で示される化合物が消失した時点を反応の終点とすることができる。本工程の反応時間は、液体クロマトグラフィやガスクロマトグラフィなどの分析手段で、混合物中の式(1)で示される化合物又は式(2)で示される化合物が低減されないか、得られる式(3)で表される化合物が増加しなくなるまで行われ、具体的には、1分〜72時間の範囲である。
本工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0077】
反応終了後、例えば、希塩酸、希硫酸、塩化アンモニウム水溶液等の酸性水溶液を用いて、得られた反応混合物を酸性化した後、必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加えて、抽出し、得られた有機層を水洗した後、濃縮することにより、式(3)で示される芳香族ホウ酸エステルを取り出すことができる。取り出した芳香族ホウ酸エステルは、蒸留、再結晶、各種クロマトグラフィー等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0078】
水に不溶の有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチル等のエステル溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル溶媒、メチルtert−ブチルケトン等のケトン溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2以上を混合して使用することができる。また、その使用量に制限はない。
【0079】
式(3)で示される芳香族ホウ酸エステルとしては、例えば、1,3−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)、1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)、2,6−トルエンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)、2,5−ジヘキシル−1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)、4,4’−ビフェニルジボロン酸ビス(ピナコールエステル)、2,2’−(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,
2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジドデシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(9,9−ジフェニルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(3,5−ジメトキシ−
9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、2,2’−(2−メチル−5−オクチル−1,4−フェニレン)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)、又は9,10−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アントラセン等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、実施例で用いる酢酸カリウム及び溶媒については、カールフィッシャー水分計によって水分を測定したのち使用した。また、実施例及び比較例で用いている含水溶媒は、脱水溶媒(水分<50ppm又は10ppm)にイオン交換水を加えて所望の含水率としたものである。脱水溶媒は市販の脱水グレード品を用いた。水分が10ppm未満の酢酸カリウムは、市販品を減圧下80℃で8時間加熱乾燥し、グローブボックス内で保管しているものを使用した。
【0081】
実施例1
窒素置換したガラス製反応容器に、パラジウム触媒としてPdCl(PCy(4.4mg、0.006mmol)、式(1)で示される化合物として2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(109mg、0.2mmol)、式(2)で示される化合物としてビス(ピナコラート)ジボロン(127mg、0.5mmol)、エーテル溶媒として脱水1,2−ジメトキシエタン2ml(水分<10ppm)及びリン酸カリウム(59mg、0.6mmol、水分<10ppm)を加えて混合物を得、該混合物を窒素雰囲気下、90℃で7時間加熱撹拌した。その後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル60mlを加えて不溶物を濾別した。濾液に酢酸エチルを加えて、メスフラスコを用いて正確に100mlに調整した。該溶液を、液体クロマトグラフィー絶対検量線法(標品:アルドリッチ社製 2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン))により分析したところ、目的物である2,2’−(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン)の収率は94%であった。
【0082】
実施例2〜6
実施例1の脱水1,2−ジメトキシエタンの含水量を0.15重量%、0.17重量%、0.2重量%、1重量%及び5重量%とした以外は実施例1と同様にして、目的とする芳香族ホウ酸エステルを得た。そして、その収率を測定した。各収率を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例7〜10
実施例1のPdCl(PCyに代えて、PdCl(PPh(4.2mg、0.006mmol)を用い、溶媒として含水量が脱水(10ppm未満)、0.17重量%、0.2重量%及び0.5重量の1,2−ジメトキシエタンをそれぞれ2ml用いた以外は実施例1と同様にして、目的とする芳香族ホウ酸エステルを得た。そして、その収率を測定した。各収率を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例11〜14
実施例1のPdCl(PCyの配合量を11.1mg(0.015mmol)とし、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの代わりに、ジブロモベンゼン(116.9mg,0.5mmol)を用い、リン酸カリウムの配合量を147mg(1.5mmol)とし、溶媒の含水量を脱水(10ppm未満)、0.5重量%、1重量%及び5重量%とし、その使用量をそれぞれ5mlとした以外は、実施例1と同様にして、目的とする1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)を得た。そして、その収率を測定した。各収率を表3に示す。なお、分析標品はアルドリッチ社製品を用いた。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例15
実施例1のPdCl(PCyの代わりに、Pd(OAc)(2.0mg、0.006mmol)とトリシクロヘキシルホスフィン(5.0mg、0.012mmol)とを配合し、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの代わりに、2,5−ジブロモ−p−キシレン(79.2mg、0.3mol)を用い、ビス(ピナコラート)ジボロンの配合量を190mg(0.75mmol)とし、酢酸カリウムの配合量を88mg(0.9mmol)とし、含水量1重量%の1,2−ジメトキシエタンを3ml用いた以外は、実施例1と同様にして、目的物とする1,4−p−キシレンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)を得た。その収率は82%であった。なお、標品は、2,5−ジブロモ−p−キシレンが2gスケールで同条件の反応を実施し、酢酸エチル−石油エーテルから再結晶を行って単離した目的物を用いた。
目的物のスペクトルデータは以下のとおりである。
H−NMR(δ:ppm,CDCl) 7.53(s,2H),2.47(s,6H),1.33(s,24H)
【0089】
実施例16
実施例15のPd(OAc)とトリシクロヘキシルホスフィンの代わりに、PdCl(PPh(6.3mg、0.006mmol)を用い、2,5−ジブロモ−p−キシレンの代わりに、2,5−ジブロモ安息香酸メチル(88.2mg、0.3mol)を用い、1,2−ジメトキシエタンの含水量を0.2重量%とした以外は、実施例15と同様にして、目的物とする2−カルボキシメチル−1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)を得た。その収率は96%であった。
【0090】
実施例17
実施例15のPd(OAc)の代わりに、Pd(dba)(2.7mg、0.003mmol)を用いた以外は、実施例15と同様にして目的物を得た。その収率は94%であった。
【0091】
実施例18
冷却装置を取り付けたガラス製反応容器を窒素置換し、Pd(OAc)(43mg、0.19mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(108mg、0.38mmol)、4,4’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル(2.0g、6.4mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(4.1g、16.0mmol)、脱水1,2−ジメトキシエタン70ml(水分<50ppm)、酢酸カリウム(1.9g、19.2mmol、水分2.3%)を加え混合物を得た。該混合物中の水分量は、酢酸カリウムに由来する水分のみとすると0.06重量%であった。該混合物を窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した後、得られた反応物を室温まで冷却した。該反応物から不溶物を濾別し、濾液を濃縮して残渣に酢酸エチルを100ml加えた。得られた酢酸エチル層をイオン交換水20lmで3回洗浄した後、酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧下濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル20mlを加え、60℃に加熱して再結晶を行った。得られた結晶を濾取、乾燥し、目的とする4,4’−ビフェニルジボロン酸ビス(ピナコールエステル)を2.27g得た。収率は87%であった。
目的物のスペクトルデータは以下のとおりである。
H−NMR(δ:ppm,CDCl) 7.88(d,2H),7.63(d,2H),1.40(s,24H)
【0092】
実施例19〜22
実施例1のPdCl(PCyに代えて、PdCldppf(4.8mg、0.006mmol)を用い、1,2−ジメトキシエタンの含水量を、脱水、0.15重量%、0.17重量%、0.2重量%及び5重量%とした以外は実施例1と同様にして、目的とする芳香族ホウ酸エステルを得た。そして、その収率を測定した。各収率を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
実施例23〜27
実施例1の1,2−ジメトキシエタンに代えてジオキサンを用い、その含水量を、脱水、0.15重量%、0.2重量%、1重量%及び5重量とした以外は、実施例1と同様にして、目的とする芳香族ホウ酸エステルを得た。そして、その収率を測定した。各収率を表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
実施例28、29
実施例1のPdCl(PCyに代えて、PdCl(PPh(4.2mg、0.006mmol)を用い、1,2−ジメトキシエタンに代えてジオキサンを用い、その含水量を、脱水及び0.17重量%とした以外は、実施例1と同様にして、目的とする芳香族ホウ酸エステルを得た。そして、その収率を測定した。各収率を表6に示す。
【0097】
【表6】

【0098】
実施例30〜33
実施例1のPdCl(PCyの配合量を11.1mg(0.015mmol)とし、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの代わりに、ジブロモベンゼン(116.9mg,0.5mmol)を用い、リン酸カリウムの配合量を147mg(1.5mmol)とし、1,2−ジメトキシエタンに代えてジオキサンを用い、その含水量を、脱水、0.5重量%、1重量%及び5重量%とし、その使用量をそれぞれ5mlとした以外は、実施例1と同様にして、目的とする1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコールエステル)を得た。そして、その収率を測定した。各収率を表7に示す。
【0099】
【表7】

【0100】
実施例34
実施例15の1,2−ジメトキシエタンの代わりにジオキサンを用いた以外は、実施例15と同様にして目的物を得た。その収率は74%であった。
【0101】
実施例35
実施例16の1,2−ジメトキシエタンの代わりにジオキサンを用いた以外は、実施例16と同様にして目的物を得た。その収率は89%であった。
【0102】
実施例36
実施例18の1,2−ジメトキシエタンの代わりにジオキサンを用いた以外は、実施例18と同様にして目的物を得た。その収率は75%であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の製造方法によれば、一層高い収率で芳香族ホウ酸エステルを製造する方法が提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム触媒及び炭素数3〜12のエーテル溶媒の存在下、下記式(1)で示される化合物と、下記式(2)で示される化合物とを反応させて、下記式(3)で示される芳香族ホウ酸エステルを製造する方法であって、該パラジウム触媒、該エーテル溶媒、下記式(1)で示される化合物及び下記式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量を5重量%以下の条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
【化1】

(式中、Rは、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基は炭素数6〜16である。Xは、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、mは、2〜4の整数を表す。)
【化2】

(式中、kはそれぞれ独立に0又は1を表す。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表す。Rは互いに結合していてもよい。)
【化3】

(式中、R,R,kおよびmは上記と同一の意味を表す。)
【請求項2】
式(1)で示される化合物の芳香族炭化水素基Rが、下記式(a−1)〜(a−5)からなる群から選ばれる少なくとも1つの2価の基であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【化4】

(式中、Rはそれぞれ独立して、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数8〜20のアリールアルケニル基、炭素数8〜20のアリールアルキニル基、1価の複素環基、シアノ基、炭素数0〜40のアミノ基、炭素数3〜30のシリル基、炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族アシル基、炭素数2〜20のイミド残基、炭素数4〜20の酸イミド基、カルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリールオキシカルボニル基、ニトリル基、ニトロ基、または置換基を有していてもよいカルバモイル基を表し、nは、0〜4の整数を表す。ここで、Rは隣接する置換基と結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。−はRとの結合手を意味する。)
【請求項3】
前記パラジウム触媒が、パラジウム化合物と3価のリン原子を有する有機リン化合物とを含有するパラジウム触媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記パラジウム化合物が、パラジウムカルボン酸塩、ハロゲン化パラジウム、ハロゲン化パラジウム錯体、アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム類、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム及びパラジウム(0)−ジベンジリデンアセトン錯体からなる群から選ばれる少なくとも1つのパラジウム化合物であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記有機リン化合物が、下記式(4)で示される有機リン化合物及び下記式(5)で示される有機リン化合物の少なくとも一方の有機リン化合物であることを特徴とする請求項3又は4記載の製造方法。
【化5】

(式中、Rはそれぞれ独立して、シクロヘキシル基、または、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基及び炭素数1〜7のジアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の置換基である。Rはトリメチレン、テトラメチレン又はフェロセン−1,1’−ジイルを表す。)
【化6】

(式中、Rはそれぞれ独立して、シクロヘキシル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいビフェニル基を表す。該置換基は、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシル基及びアミノ基から選択される少なくとも一種の置換基である。)
【請求項6】
前記パラジウム触媒が、前記パラジウム化合物と前記有機リン化合物とを混合して得られるパラジウム触媒であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
前記エーテル溶媒が、炭素数3〜12のジアルコキシアルカンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造方法。
【請求項8】
前記式(2)で示される化合物がビス(ピナコラート)ジボランであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合物が酢酸カリウムをさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程における該パラジウム触媒、該エーテル溶媒、前記式(1)で示される化合物及び前記式(2)で示される化合物を含む混合物中の水分量が0.01〜1重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−190244(P2011−190244A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27678(P2011−27678)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】