説明

芳香族ホスホニウム塩及びマススペクトロメトリー分析における標識試薬としてのこれらの使用

本発明は、各物質がカチオン性トリアリールホスホニウム基で標識されたサンプル中の目的の複数の物質(「被分析物」)のそれぞれを、アッセイ、検出、定量、位置決定、又は分析するための方法及び試薬に関する。本発明はさらに、低分子量の被分析物を含有するサンプルの分析がマトリックス成分によって妨害されないMALDIマススペクトロメトリー技術を提供する。本発明はまた、MS分析の前に被分析物の標識において使用するための標識試薬を提供する。ここにおいて、標識された被分析物はMALDI技術の有用な検出閾値よりも大きな分子量を有する。いくつかの側面において、本発明は、サンプルの成分の定量的MS分析の方法を提供する。本発明の方法は、ピコモル量、フェトモル量、及びアトモル量で分子の分離/イオン化のための感受性の高い技術を含む。本発明の別の利点は、m/Z値の測定が、低分子干渉によって複雑化せず、マトリックスが正常に提供されることであり、従って、本発明は、低分子サンプル、及び低分子サンプル及び高分子サンプルの混合物のMALDI MS分析の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マススペクトロメトリー(「MS」)は例えば高エネルギーの電子を用いた衝撃によって目的の被分析物を含有するサンプルがイオン化される、分析技術である。得られたイオン及び親物質の荷電したフラグメントを電場及び磁場によって収束させ、荷電したフラグメントのスペクトルを得る。MSはサンプル分子の分子量及びこのフラグメント化特性を測定するために、日常的に使用される。MSは、典型的には、サンプルが低圧で電子線中を通る気相中で行われる。電子線は、典型的には電気的に中性のサンプル分子に衝突し、1つまたはそれ以上の電子が飛び出し、陽電荷を持つイオンが生じる。次いで、イオン化されたサンプルは磁場を通り、この磁場を通るイオン化されたサンプルの経路に依存して、イオンの電荷に対する分子の質量が測定される。
【0002】
マススペクトロメトリーは、イオンの電荷に対する分子の質量比を測定する。この質量は、通常は、原子質量単位(Daltonと呼ばれる)の用語で表される。荷電又はイオン化は、通常は複数の電荷の用語で表される。この2つの比率は、「m/Z」値(質量/電荷又は質量/イオン化比)として表される。このイオンは通常は1個の電荷を有するため、m/Z比は通常は「分子イオン」の質量、すなわちこの分子量(「MW」)である。サンプルの質量を測定する1つの方法は、荷電した分子、すなわちイオンを磁場中で促進することである。このサンプルイオンは、磁場の影響によって移動する。検出器は、磁場を通る経路の末端に配置することができ、分子のm/Zは磁場を通る経路及び磁場の強度の関数として計算することができる。サンプルの質量を測定するための別の技術は、飛行時間(「TOF」)マススペクトロメトリーである。TOF MSでは、サンプルイオンは、公知の電圧によって促進され、サンプルイオン又はこれらのフラグメントが公知の距離を移動する時間を測定する。
【0003】
マススペクトロメトリーは、通常は、電気的に中性のサンプルが低圧でイオン化される気相中で行われる。最も単純な質量分析計は、気体の電気的に中性のサンプルを、通常は約10−6torr以下の減圧中に導入する。次いで、イオン化されたサンプルは磁場を通り、イオン化されたサンプルが磁場を通る経路に依存して、イオンの電荷に対する分子の質量が測定される。容易に気体状態にならない分子、例えば、タンパク質、ペプチド、ポリマー、及び他の高分子化合物は、MSによって分析することはさらに困難である。しかし、脱離イオン化技術を含む、高分子量サンプルを揮発するためのいくつかの技術が存在する。
【背景技術】
【0004】
気体状態のサンプルで出発する代わりに、基本的なMSにおけるように、脱離MSは、基質に吸着したサンプルに適用されてもよい。サンプル分子が基質に付着する場合、サンプルはこの基質に吸着していると言われる。脱離は、基質に吸着した分子が基質から離れるときに起こる。1つの脱離MS技術は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI」)である。この技術において、サンプルは、適切な基質上に付着し、次いで、蒸発プロセスの一部分として、有機マトリックスからサンプルにプロトンが移動することによってイオン化される。サンプルのイオン化は、電子線イオン化またはプロトン移動イオン化によって達成されてもよい。例えば、M.Karasら,Int.J.Mass Spectrom.Ion Proc.78,53−68(1987);K.Tanakaら,Rapid Comm.Mass Spectrom.2,151−53(1988)を参照。
【0005】
典型的なMALDI実験において、サンプルは、パルスレーザー照射によって気化する固体の光吸収有機マトリックスに溶解され、気化したマトリックスとともにサンプルが移動する。この様式で、高分子量サンプルは、マススペクトロメトリー分析によって揮発されてもよい。現代のMALDI質量分析計、例えばLC−MALDIprep(商標)(Waters Corp.,Milford,Massachusetts,USA)は、高い感受性及び再現性を有して、1つの基質上のいくつかのサンプルの連続的な高スループット分析を可能にする。この技術は広範囲に使用され、強力な技術であるが、MALDIは、マトリックスがm/Z未満、すなわち、約500から700の電荷に対する質量の測定を阻害するため、一般的に低分子の試験には適していない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、各物質がカチオン性トリアリールホスホニウム基で標識されるサンプル中で、目的の複数の物質(「被分析物」)のそれぞれをアッセイ、検出、定量、位置決定、又は分析するための方法及び試薬に関する。本発明はさらに、低分子量の被分析物を含有するサンプルの分析がマトリックス成分によって妨害されないMALDIマススペクトロメトリー技術を提供する。
【0007】
本発明はさらに、MS分析の前に被分析物の標識において使用するための、標識された被分析物がMALDI技術の有用な検出閾値よりも大きな分子量を有する、標識試薬を提供する。本発明の標識試薬は、式[ArR]Xで表されてよく、ここで、各Arはアリール基であり(これら全ては同じであっても異なっていてよい。)、Pはリン原子であり、Rは「反応基」であり、X−は負に荷電した対イオンである。
【0008】
いくつかの側面において、本発明は、サンプルの成分の定量的MS分析の方法を提供する。本発明の方法は、ピコモル量、フェトモル量、及びアトモル量で分子の分離/イオン化のための感受性の高い技術を含む。本発明の別の利点は、m/Z値の測定が、低分子干渉によって複雑化せず、マトリックスが正常に提供されることであり、従って、本発明は、低分子サンプル、及び高分子サンプル及び低分子サンプルの混合物のMALDI MS分析の方法を提供する。
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、トリアリールホスホニウム標識試薬を有するサンプルにおいて、被分析物を標識又はタグ化することによって、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法に関する。
【0010】
1.標識試薬
本発明の標識試薬は、式[ArR]Xで表されてよく、ここで、各Arはアリール基であり(これら全ては同じであっても異なっていてよい。)、Pはリン原子であり、Rは「反応基」であり、X−は負に荷電した対イオンである。この反応基は、被分析物の露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって被分析物が標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する反応性官能基を有する。反応基Rは、−Z−Ψによって表されてよく、ここで、Zは結合基であり、Ψは反応性官能基であり、特に、被分析物の露出した官能基と反応する官能基である。従って、本発明の標識試薬は、式Iによって表されてよい:
【0011】
【化17】

【0012】
反応性官能基(Ψ)の性質は、標識される被分析物の化学的特徴に依存する。一般的に、本発明の標識試薬は、被分析物の露出した官能基と反応する。本明細書中で使用される場合、「露出した」官能基は、本発明の標識試薬に共有結合するようになる化学反応に参加するために利用可能な官能基である。最も単純な用語において、被分析物が求核性の露出した官能基を有する場合、求電子性Ψ基を有する標識試薬を使用してよく、この逆もよい。
【0013】
一般に、用語「求核性試薬」は、例えば、1分子反応(「S1」として公知である)又は2分子反応(「S2」)のような脂肪族化学において通常生じるような、脱離基(通常は別の求核性試薬)と置き換わることによって化合物と反応する反応性電子対を有する化学基を意味すると当該技術分野で理解される。求核性試薬の例としては、電荷を有さない化合物、例えば、アミン、メルカプタン、及びアルコール、及び電荷を有する基、例えば、アルコキシド、チオレート、カルボアニオン、及び種々の有機アニオン及び無機アニオンが挙げられる。例示的なアニオン性求核性試薬としては、とりわけ、単純アニオン、例えば、アジド、シアニド、チオシアネート、アセテート、ホルメート、又はクロロホルメート、及びビスルファイトが挙げられる。適切な反応条件下では、有機金属試薬、例えば、有機銅、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノレート、及びアセチリドが好適な求核性試薬である。
【0014】
同様に、「求電子性試薬」は、例えば、典型的に求電子置換反応中に生じるような、電子対を、特に求核性試薬から受け取ることが可能な原子、分子、又はイオンを意味する。求電子置換反応において、求電子性試薬は、例えば、別の求電子性試薬、例えば、芳香族基質(例えばベンゼン)上のニトロニウムイオンによるプロトン置換によって、別の求電子試薬を排除して基質に結合する。求電子性試薬としては、環状化合物、例えば、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、環状サルフェート、カーボネート、ラクトン、及びラクタム;及びサルフェート、スルホネート(例えばトシレート)、クロリド、ブロミド、及びヨージドを含む非環状求電子性試薬が挙げられる。一般的に、求電子性試薬は、脱離基二結合した飽和炭素原子(例えば、メチレン基)であり得るが、求電子性試薬はさらに、求核性試薬との反応で付加物を形成する、不飽和基、例えば、アルデヒド、ケトン、エステル、又はこれらの共役した(α,β−不飽和)アナログであり得る。
【0015】
用語「脱離基」は、一般的に、求核性試薬(例えば、アミン、チオール、アルコール、又はシアニド)によって容易に交換され、置換される基を指す。このような脱離基は周知であり、カルボキシレート、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素)、アルコキシド、チオアルコキシドが挙げられる。種々の硫黄ベースの脱離基は、通常合成化学で使用され、アルカンスルホニルオキシ基(例えば、C−Cアルカン、例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、プロパンスルホニルオキシ、及びブタンスルホニルオキシ基)及びハロゲン化アナログ(例えば、ハロゲノ(C−Cアルカン)スルホニルオキシ基、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ(すなわち、トリフレート)、2,2,2−トリクロロエタンスルホニルオキシ、3,3,3−トリブロモプロパンスルホニルオキシ、及び4,4,4−トリフルオロブタンスルホニルオキシ基)、及びアリールスルホニルオキシ基(例えば、場合により1から3個のC−Cアルキル基によって置換されたC−C10アリール、例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、α−ナフチルスルホニルオキシ、β−ナフチルスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ(すなわち、トシレート)、4−tert−ブチルベンゼンスルホニルオキシ、メシチレンスルホニルオキシ、及び6−エチル−α−ナフチルスルホニルオキシ基)を含む。
【0016】
「活性化されたエステル」は、式−COLで表し得、ここで、Lは脱離基であり、この典型例としては、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル及びN−ヒドロキシスクシンイミジル基;電子吸引基(例えば、p−ニトロ、ペンタフルオロ、ペンタクロロ、p−シアノ、p−トリフルオロメチル)で置換されたアリールオキシ基;及びカルボジイミドで活性化され、酸無水物又は混合酸無水物を形成するカルボン酸、例えば、−OCORまたは−OCNRNHR、ここで、R及びRは独立して、C−Cアルキル、C−Cアルキル(例えば、シクロヘキシル)、C−Cペルフルオロアルキル、又はC−Cアルコキシ基である。活性化されたエステルは、系中で形成されるか、又は単離可能な試薬であり得る。
【0017】
用語「電子吸引基」は、当該技術分野で認識され、置換基が隣の原子から価電子(例えば、π電子)を吸引する、例えば、置換基が隣の原子よりもより電子的に陰性であるか、又は置換基が同じ位置で水素原子よりも置換基自身に対して電子をひきつける能力を記載する。Hammettのシグマ値(σ)は、基の電子供与能力及び電子吸引能力の受容された測定値であり、特に、シグマパラ値(σ)である。例えば、「Advanced Organic Chemistry」、J.March,第5編,John Wiley&Sons,Inc.,New York,pp.368−75(2001)を参照。Hammett定数値は、一般的に、電子供与基でマイナスであり(NHでσ=−0.66)、電子吸引基でプラスである(ニトロ基でσ=0.78)、σはパラ置換を示す。例となる電子吸引基としては、中でも、ニトロ、アシル(ケトン)、ホルミル(アルデヒド)、スルホニル、トリフルオロメチル、ハロゲノ(例えば、クロロ及びフルオロ)、及びシアノ基が挙げられる。逆に、「電子供与基」は、分子中の同じ位置に占められる場合、水素よりも電子を与える置換基を示す。例としては、中でも、アミノ(アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含む)、アリール、アルコキシ(アラルコキシを含む)、アリールオキシ、メルカプト及びアルキルチオ、及びヒドロキシル基が挙げられる。
【0018】
本明細書中で使用される場合、アルキル基としては、1つまたはそれ以上の炭素原子を有し、直鎖アルキル基を含有する飽和炭化水素(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、環状アルキル基(すなわち「シクロアルキル」又は「脂環式」又は「炭素環式環」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチル等)、及びアルキル置換されたアルキル基(例えば、アルキル置換されたシクロアルキル基及びシクロアルキル置換されたアルキル基)が挙げられる。用語「脂肪族基」は、直鎖又は分枝鎖によって特徴付けられる有機部分を含み、典型的には、1から22個の炭素原子を有する。複雑な構造において、この鎖は、分枝、架橋(bridge)、又は架橋(cross−link)されていてよい。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0019】
特定の実施態様では、直鎖又は分枝鎖アルキル基は、この骨格中に30以下の炭素原子、例えば、直鎖についてC−C30、又は分枝鎖についてC−C30を有していてよい。特定の実施態様では、直鎖又は分枝鎖アルキル基は、この骨格中に20以下の炭素原子、例えば、直鎖についてC−C20、又は分枝鎖についてC−C20、さらに好ましくは18以下の炭素原子を有していてよい。同様に、好ましいシクロアルキル基は、この環構造中に4から10個の炭素原子、さらに好ましくは、この環構造中に4から7個の炭素原子を有する。用語「低級アルキル」は、鎖中に1から6個の炭素を有するアルキル基、及び環構造中に3から6個の炭素を有するシクロアルキル基を指す。
【0020】
炭素数が他に特定されない限り、「低級脂肪族」、「低級アルキル」、「低級アルケニル」等におけるような「低級」は、本明細書中で使用される場合、この部分が少なくとも1個の炭素原子を有し、約8個未満の炭素原子を有することを意味する。特定の実施態様では、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基は、この骨格中に6個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖についてC−C、分枝鎖についてC−C)、さらに好ましくは4以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキル基は、この環構造中に3から8個の炭素原子、好ましくはこの環構造中に5又は6個の炭素を有する。「C−Cアルキル」におけるような用語「C−C」は、1から6個の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。
【0021】
さらに、他に特定されなければ、アルキルとの用語は、「置換されていないアルキル」及び「置換されたアルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1つまたはそれ以上の炭素上で1つまたはそれ以上の水素を交換する置換基を有するアルキル基を指す。このような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族(ヘテロ芳香族基を含む。)が挙げ得る。
【0022】
「アリールアルキル」基は、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、フェニルメチル(すなわち、ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−メチルフェニル(すなわち、p−トリル))である。用語「n−アルキル」は、直鎖(すなわち、分岐していない。)置換されていないアルキル基を意味する。「アルキレン」基は、対応するアルキル基の二価アナログである。用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、アルキルに類似であるが、少なくとも1つの二重結合又は三重結合の炭素−炭素結合をそれぞれ含有する不飽和脂肪族基を指す。好適なアルケニル及びアルキニル基としては、2から約12個の炭素原子、好ましくは2から約6個の炭素原子を有する基を含む。
【0023】
用語「芳香族基」又は「アリール基」は、1以上の環を含有する、不飽和及び芳香族の環状炭化水素、及び不飽和及び芳香族のヘテロ環を含む。アリール基はさらに、芳香族ではない脂環式環又はヘテロ環式環と融合又は架橋して多環式環(例えば、テトラリン)を形成し得る。「アリーレン」基は、アリール基の二価アナログである。
【0024】
用語「ヘテロ環式基」は、環中の1つまたはそれ以上の炭素原子が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、又は酸素である、炭素環式基に類似の閉環構造を含む。ヘテロ環式基は、飽和であっても不飽和であってもよい。さらに、ヘテロ環式基(例えば、ピロリル、ピリジル、イソキノリル、キノリル、プリニル、及びフリル)は、芳香族性を有していてもよく、この場合、これらのヘテロ環式基は、「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」基と称され得る。
【0025】
他に定められない限り、アリール及びヘテロ環式(ヘテロアリールを含む)基はさらに、1つまたはそれ以上の構成原子で置換されてもよい。ヘテロ芳香族及びヘテロ環式基の例は、1つの環あたり3から約8個の原子及び1つまたはそれ以上のN、O又はSヘテロ原子を含む1から3の別個の環又は縮合環を有し得る。概して、用語「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を含み、これらの好ましい例としては、窒素、酸素、硫黄、及びリンが挙げられる。ヘテロ環基は、飽和又は不飽和の芳香族であり得る。
【0026】
通常の炭化水素アリール基は、1個の環を有するフェニル基である。2環の炭化水素アリール基としては、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、ペンタレニル及びアズレニル基、並びにこれらの部分的に水素化されたアナログ(インダニル及びテトラヒドロナフチルなど)が挙げられる。例示的な3環の炭化水素アリール基としては、アセフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、及びアントラセニル基が挙げられる。
【0027】
アリール基はさらに、ヘテロ一環式アリール基、すなわち、1個の環のヘテロアリール基、例えば、チエニル、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、及びピリダジニル基;及びこれらの酸化されたアナログ、例えば、ピリドニル、オキサゾロニル、ピラゾロニル、イソキサゾロニル、及びチアゾロニル基を含む。対応する水素化された(すなわち、非芳香族の)ヘテロ一環式基としては、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル及びピペリジノ、ピペラジニル、及びモルホリノ及びモルホリニル基が挙げられる。
【0028】
アリール基はさらに、縮合した2環のヘテロアリール、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、クロメニル、イソクロメニル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノロニル、キノロニル、ナフチリジニル、及びプテリジニル基、及び部分的に水素化されたアナログ、例えば、クロマニル、イソクロマニル、インドリニル、イソインドリニル、及びテトラヒドロインドリル基を含む。アリール基はさらに、縮合した3環の基、例えば、フェノキサチイニル、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、及びジベンゾフラニル基を含む。
【0029】
用語「アミノ」は、本明細書中で使用される場合、式−NRの非置換又は置換の部分を指し、ここで、R及びRは、それぞれ独立して水素、アルキル、アリール、又はヘテロシクリルであるか、又はR及びRは、これらが結合する窒素原子とともに、環中に3から8個の原子を有する環状部分を形成する。従って、用語「アミノ」は、他に言及されない限り、環状アミノ部分、例えば、ピペリジニル又はピロリジニル基を含む。従って、用語「アルキルアミノ」は、本明細書中で使用される場合、アルキル基に結合したアミノ基を有するアルキル基を意味する。好適なアルキルアミノ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0030】
用語「アルキルチオ」は、アルキル基に結合したスルフヒドリル基を有するアルキル基を指す。好適なアルキルチオ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0031】
用語「アルキルカルボキシル」は、本明細書中で使用される場合、アルキル基に結合したカルボキシル基を有するアルキル基を意味する。
【0032】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で使用される場合、アルキル基に結合した酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基が挙げられ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0033】
用語「ニトロ」は−NOを意味し;用語「ハロゲン」又は「ハロゲノ」又は「ハロ」は、−F、−Cl、−Br又は−Iを示し;用語「チオール」、「チオ」、又は「メルカプト」はSHを意味し;用語「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」は−OHを意味する。
【0034】
他に特定されない限り、上述の基を含む本発明の化合物の化学部分は、置換されていても置換されていなくてもよい。いくつかの実施態様において、用語「置換」は、上記部分が、水素以外の部分に配置され(すなわち、ほとんどの場合、水素を交換して)、この分子が目的の機能を行うことができるような置換基を有することを意味する。置換基の例としては、直鎖又は分枝のアルキル(好ましくはC−C)、シクロアルキル(好ましくはC−C)、アルコキシ(好ましくはC−C)、チオアルキル(好ましくはC−C)、アルケニル(好ましくはC−C)、アルキニル(好ましくはC−C)、ヘテロ環、炭素環のアリール(例えばフェニル)、アリールオキシ(例えばフェノキシ)、アラルキル(例えばベンジル)、アリールオキシアルキル(例えばフェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニル及びアリールカルボニル又は他のこのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、及びヘテロアリール基、及び(CR’R”)0−3NR’R”(例えば、−NH)、(CR’R”)0−3CN(例えば、−CN)、−NO、ハロゲン(例えば、−F、−Cl、−Br、または−I)、(CR’R”)0−3C(ハロゲン)(例えば、−CF)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CONR’R”、(CR’R”)0−3(CNH)NR’R”、(CR’R”)0−3S(O)1−2NR’R”、(CR’R”)0−3CHO、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H、(CR’R”)0−3S(O)0−3R’(例えば、−SOH)、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H(例えば、−CHOCH及び−OCH)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0−3H(例えば、−SH及び−SCH)、(CR’R”)0−3OH(例えば、−OH)、(CR’R”)0−3COR’、(CR’R”)0−3(置換又は非置換フェニル)、(CR’R”)0−3(C−Cシクロアルキル)、(CR’R”)0−3COR’(例えば、−COH)、及び(CR’R”)0−3OR’基(ここで、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、又はアリール基である。);又は天然に生じる任意のアミノ酸の側鎖から選択される部分が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施態様では、「置換基」は、例えば、ハロゲノ、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C−Cアルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、C−Cアルキルカルボニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリル、アラルキル、及びアリール(ヘテロアリールを含む)基からなる群から選択されてよい。
【0036】
1つの実施態様では、本発明の標識試薬は、活性化されたエステル反応性官能基(Ψ)を有し、従って式IIによって表されてよく、ここで、Lは脱離基である。このような標識試薬は、求核性の露出した官能基(例えばアミン)を有する被分析物の標識に有用である。本発明の類似の実施態様において、活性化されたエステルは、式IIaにおけるように、メチレン基(すなわち、Z=CH)によってトリアリールホスホニウム基に接続される。
【0037】
【化18】

【0038】
スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロチオフェノールエステル、及びスルホテトラフルオロフェノールは、式IIの好ましい実施態様である。しかし、式IIのエステル脱離基は、例えば、置換又は非置換のC−Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、又はヘキシル)、又は置換又は非置換のC−C14アリール又はヘテロ環式基、例えば、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジブロモエチル、2,2,2−トリクロロエチル、3−フルオロプロピル、4−クロロブチル、メトキシメチル、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル、エトキシメチル、N−プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、N−ブトキシメチル、tert−ブトキシメチル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−(イソプロポキシ)エチル、3−メトキシプロピル−4−メトキシブチル、フルオロメトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル)、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、3−フルオロプロポキシメチル、4−クロロブトキシエチル、ジブロモメトキシエチル、2−クロロエトキシプロピル、フルオロメトキシブチル、2−メトキシエトキシメチル、エトキシメトキシエチル、メトキシエトキシプロピル、メトキシエトキシブチル、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、α−ナフチルメチル、β−ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、9−アントリルメチル、4−メチルベンジル、2,4,6−トリメチルベンジル、3,4,5−トリメチルベンジル、4−メトキシベンジル、4−メトキシフェニルジフェニルメチル、2−ニトロベンジル、4−ニトロベンジル、4−クロロベンジル、4−ブロモベンジル、4−シアノベンジル、4−シアノベンジルジフェニルメチル、又はビス(2−ニトロフェニル)メチル基であってもよい。
【0039】
1つの側面では、本発明は、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法であって、この方法は、最初に被分析物を含むサンプルを得る工程(ここで、上記被分析物は露出した基を含む。);及び上記被分析物を式[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(この反応基は、上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;Xは負に荷電した対イオンである。)の標識試薬と反応させる工程を含む。
【0040】
別の実施態様では、本発明は、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法であって、この方法は、反応基を有するトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程;露出した基を含有し、上記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる被分析物を含有するサンプルを得る工程;及び上記標識試薬と上記被分析物とを反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物が形成させる工程を含む。このような方法によれば、標識試薬は、構造[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(この反応基は、上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;Xは負に荷電した対イオンである。)を有し得る。
【0041】
別の側面では、本発明は、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法であって、この方法は、最初に被分析物を含むサンプルを得る工程(ここで、前記被分析物は露出した基を含む。);及び上記被分析物と少なくとも2つの標識試薬(又は複数の試薬)とを反応させる工程(標識試薬のそれぞれは[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;各標識試薬のArP基の分子量は、他の標識試薬のArP基の分子量に対して固有である。)を有する。)を含む。
【0042】
また、本発明は、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法である。この方法は、それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程(ここで、上記標識試薬の反応基は全て同じであり、上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は互いに異なっている。);被分析物(上記被分析物は、露出した基を含有し、上記露出した基は上記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;及び上記標識試薬を上記被分析物と反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる、工程を含む。
【0043】
本発明の方法において、トリアリールホスホニウム基の分子量における上述の差がマススペクトロメトリーで識別可能であることが好ましい。同様に、トリアリールホスホニウムに結合した被分析物の分子量における差がマススペクトロメトリーで識別可能であることが好ましい。分子量は、これらのMSシグナルが有意に重ならないか、又は各分子イオンのピークエリアが互いに干渉しない場合、マススペクトロメトリーで識別可能である。
【0044】
別の代表例において、本発明は、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法であって、この方法は、被分析物を含むサンプルを得る工程(ここで、上記被分析物は露出した基を含む。);及び上記被分析物を式[ArR]X、[ArR]X、[Ar**R]X等(式中、各Ar基(すなわち、Ar、Ar、及びAr**等)はアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、各標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は固有であり;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及びXは負に荷電した対イオンである。)の少なくとも2つの標識試薬と反応させる工程を含む。
【0045】
本発明はさらに、サンプルを分析する方法であって、この方法は、被分析物を含むサンプルを得る工程(ここで、上記被分析物は露出した基を含む。);及び上記被分析物を式[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及びXは負に荷電した対イオンである。)と反応させることによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する工程;及び上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリーによって分析する工程を含む。
【0046】
なお別の実施態様において、本発明は、サンプルを分析する方法であって、この方法は、反応基を有するトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程;被分析物(上記被分析物は、露出した基を含有し、上記露出した基は上記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;上記標識試薬を上記被分析物と反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリーによって分析する工程を含む。このような方法において、本発明の標識試薬は、構造[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;Xは負に荷電した対イオンである。)を有し得る。
【0047】
従って、本発明は、サンプルを分析する方法を含み、この方法は、被分析物を含むサンプルを得る工程(ここで、上記被分析物は露出した基を含む。);及び上記被分析物を式[ArR]X及び[ArR]X(式中、各Ar及びArはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、ArPの分子量はArPの分子量とは異なっており;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及びXは負に荷電した対イオンである。)の少なくとも2つの標識試薬と反応させる工程;及び上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する工程を含む。
【0048】
なお別の側面において、本発明は、サンプルを分析する方法であって、この方法は、それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程(ここで、上記標識試薬の反応基は全て同じであり、上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は互いに異なっている。);被分析物(上記被分析物は露出した基を含有し、上記露出した基は上記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;及び上記標識試薬を上記被分析物と反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する工程を含む。このような方法によれば、各標識試薬は、構造[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;Xは負に荷電した対イオンである。)を有し得る。
【0049】
本発明の方法によれば、分析する工程は、典型的にはマススペクトロメトリー技術である。マススペクトロメトリー技術は、好ましくは、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化マススペクトロメトリー又はエレクトロスプレーマススペクトロメトリーである。さらに、マススペクトロメトリー技術は好ましくは定量的である。
【0050】
本発明の定量的方法の例として、それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程(ここで、上記標識試薬の反応基は全て同じであり、上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は互いに異なっている。);被分析物(上記被分析物は露出した基を含有し、上記露出した基は上記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;第1容器中で、上記の第1標識試薬を上記サンプルの第1部分と反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び第2容器中で、上記の第2標識試薬を上記サンプルの第2部分と反応させて上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程を含む。反応が終了した後、上記第1容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物と上記第2容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物とを併せて混合物を形成し;次いで、上記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する。
【0051】
このような定量的方法は、場合により、上記第1容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を上記第2容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物に対して定量的に比較する工程をさらに含んでよい。いくつかの場合において、定量的な比較は、トリアリールホスホニウムに結合した被分析物の相対量と相関関係にある。例えば、サンプルの第2部分に対する前記サンプルの前記第1部分の比率が予め決定され、明確であり、これにより定量化が可能である。この比率は、トリアリールホスホニウムに結合した被分析物のMSシグナルと相関関係にあってよい。また、上記第1標識試薬で標識された被分析物のシグナルと、上記第2標識試薬で標識された同じ被分析物のシグナルにおける違いが、上記混合物中のこれらの濃度の違いに対して直線的に関連し得る。
【0052】
本発明の標識試薬において、各Ar基は、置換又は非置換のアリール基からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、各Ar基は、置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選択される。他の実施態様において、各Ar基は、置換又は非置換の芳香族炭化水素からなる群から選択される。
【0053】
なおさらなる実施態様において、各Ar基は、置換又は非置換のフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、及び6−キノリル基からなる群から選択される。
【0054】
さらに、各Ar基は、置換又は非置換の5−及び6−員環単環基からなる群から選択される。別の側面において、各Ar基は、置換又は非置換のフェニル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びピリミジニル基からなる群から選択される。
【0055】
各Ar基はさらに、置換又は非置換の多環式アリール基からなる群から選択されてもよい。各Ar基はさらに、置換又は非置換のナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、インドリル、ベンゾフラニル、プリニル、デアザプリニル、及びインドリジニル基からなる群から選択されてもよい。1つの側面において、2つのAr基はともに1つの二価芳香族基を形成し、例えば、二価芳香族基は、置換又は非置換の1,1’−ビナフタ−2,2’−ジイル、フェニレン、及びキシリレン基からなる群から選択される。さらに、各Ar基は、非置換フェニル、非置換ナフチル、非置換インデニル、非置換アントラセニル、置換フェニル、置換ナフチル、置換インデニル、及び置換アントラセニル基からなる群から選択されてもよい。
【0056】
1つの実施態様では、ArP基は、置換又は非置換のトリフェニルホスフィン、ナフチルジフェニルホスフィン、ジナフチルフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、9−アントリルジフェニルホスフィン、9−アントリルジナフチルホスフィン、ジフェニルピレニルホスフィン、ジナフチルピレニルホスフィンからなる群から選択される。さらに特定的な実施態様では、ナフチルは1−ナフチル又は2−ナフチルである。
【0057】
上記アリール基は置換されていてよい。上記置換基は、例えば、アルキル又はアルコキシ基であってよい。上記置換基はさらに、ハロゲン;C−Cアルキル基;(C−Cアルコキシ)−置換C−Cアルキル基;C−Cアルコキシ基;C−Cアルキルチオ基;C−Cアルカノイル基;C−Cアルカノイルオキシ基;及びC−Cアルコキシカルボニル基からなる群から選択されてよい。いくつかの場合において、上記置換基は、C−Cアルキル基又はC−Cアルキルアルコキシ基である。
【0058】
上記アリール置換基はさらに、ハロゲン;C−Cアルキル基;(C−Cアルコキシ)−置換C−Cアルキル基;C−Cアルコキシ基;C−Cアルキルチオ基;C−Cアルカノイル基;C−Cアルカノイルオキシ基;及びC−Cアルコキシカルボニル基からなる群から選択し得る。
【0059】
上記ArP基は、置換トリフェニルホスフィン、例えば、トリ(p−メトキシフェニル)−ホスフィンであり得る。
【0060】
別の代表例において、本発明の標識試薬は、式I
【0061】
【化19】

〔式中、
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(上記反応基は、上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及び
a、b、及びcは独立して0から5の整数であり;
、Y、及びYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、但し、上記Y基はいずれも上記R基と反応しなく;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する。より特定的には、上記標識試薬は、下式
【0062】
【化20】

の構造を有してよい。いずれかの場合において、Y、Y、及びYは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、及びヘプチルオキシからなる群から選択されてよい。
【0063】
同様に、標識試薬は、下式
【0064】
【化21】

の構造を有してよく、又は標識試薬は、下式
【0065】
【化22】

〔式中、
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(上記反応基は、上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;
nは0から5の整数であり;
Yは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、上記Y基はいずれも上記R基と反応しなく;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有してもよい。
【0066】
いくつかの場合において、Y、Y、Y、及びYは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、及びヘプチルオキシからなる群から選択される。
【0067】
本発明の標識試薬はさらに、下式
【0068】
【化23】

〔式中、Y、n及びXは上のいずれかの実施態様において定義されたとおりである。〕
の構造を有してもよい。
【0069】
1つの実施態様による本発明の標識試薬において、トリアリールホスホニウム標識試薬はそれぞれ同じ化学構造を有し、各トリアリールホスホニウム標識試薬は、他のトリアリールホスホニウム標識試薬と比較して同位体が豊富である。トリアリールホスホニウム標識試薬は、12C、12C、H、又はHの同位体が豊富である。例えば、上に記載される構造において、Y、Y、及びYは、O12、O12、O13、及びO13からなる群から選択されてもよい。
【0070】
対イオンXは、ハライド、トリフレート、サルフェート、ニトレート、ヒドロキシド、カーボネート、ビカーボネート、アセテート、ホスフェート、オギザレート、シアニド、アルキルカルボキシレート、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、アルコキシド、チオアルコキシド、アルカンスルホニルオキシ、ハロゲン化アルカンスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、ビサルフェート、オギザレート、バレレート、オレエート、パルミテート、ステアレート、ラウレート、ボレート、ベンゾエート、ラクテート、シトレート、マレエート、フマレート、スクシネート、タートレート、ナフチルレートメシレート、グルコヘプトネート、又はラクトビオネートであってよい。いくつかの場合において、対イオンXはアニオン性Y基であり、標識試薬は両性イオン性である。
【0071】
本発明はさらに、本明細書中に記載されるような標識試薬を含む組成物であってよい。さらに、本発明は、本明細書中に記載される新規な任意の化学化合物に関する。
【0072】
例えば、本発明は、それぞれが式[ArR]X(式中、各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及びXは負に荷電した対イオンである。〕の少なくとも2つの異なる標識試薬を含む組成物であり得る。
【0073】
同様に、本発明は、少なくとも2つの異なる標識試薬を含み、それぞれが、下式
【0074】
【化24】

〔式中、Pはリン原子であり;Rは、反応基(上記反応基は上記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって上記被分析物が上記標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;a、b、及びcは独立して0から5の整数であり;Y、Y、及びYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ;スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、但し、上記Y基はいずれも上記R基と反応しなく;及びXは負に荷電した対イオンである。〕
の異なる分子量を有する、組成物を含む。
【0075】
本発明の標識試薬は、標識される被分析物に対して求電子性又は求核性であってよい。標識試薬の電気的特性は、これらのアリール基の選択、及びこれらに結合する置換基の選択によって少なくとも部分的に制御されてよい。標識試薬の溶解性及び反応性は、アリール基又はこれらの置換基を選択する場合にさらに考慮して設計される。
【0076】
2.反応性官能基(Ψ)及び結合基(Z)
本発明の標識試薬は、多種類の基質を標識するが、但し、標識される基質は、少なくとも1つの反応性官能基(Ψ)との適切な反応性を有する官能基を含有する。本発明の、標識試薬において、R基は、結合基(Z)を介してトリアリールホスホニウムのリン原子と結合する少なくとも1つの反応性官能基(Ψ)を含有する。
【0077】
反応性官能基は、被分析物の露出した官能基の反応性を補完するように選択される。典型的には、反応基Ψは、適切な反応性を保持している反応基の最も単純なバージョンである。官能基の種類は、典型的には、接合される有機被分析物又は無機被分析物上に存在し、例としては、限定されないが、アミン、チオール、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、イミダゾール、ヒドラゾール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、二置換アミン、カルボン酸、又はこれらの基の組み合わせが挙げられる。アミン、チオール、及びアルコールは、特に生体分子中で、他の官能基よりも反応性が高く、利用しやすいため、コンジュゲート形成のための露出した基として好ましい。
【0078】
遊離アミン基(すなわち、−NH)は、Ψが、カルボン酸、カルボン酸の誘導体、又はカルボン酸の活性化されたエステル、好ましくは、スクシンイミジル又はスルホスクシンイミジルエステルである標識試薬と簡便に反応する。アミン反応性の標識試薬は、特に、遊離アミン基を保有するタンパク質及びポリペプチドの標識において有用である。アミン反応性標識試薬はさらに、遊離アミン基で置換された物質、例えば、アミノ−デキストラン、又はアミン含有ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、及び核酸を標識するために使用し得る。
【0079】
遊離のチオール基を有する被分析物を標識するために使用される標識試薬は、好ましくは、Ψが、ハロアルキル、ハロアセトアミド、ハロメチルベンズアミド、マレイミド基、又はスルホネートエステルであり、ここで、スルホン酸は、アルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルスルホン酸、又はアリールスルホン酸である。いくつかの実施態様において、Ψ基は、ヨードアセトアミド、マレイミド、又はハロメチルベンズアミドであり得る。好ましいアルコール反応性及びフェノール反応性標識試薬は、Ψ基がイソシアネート又はアシルニトリルである、本発明の標識試薬である。
【0080】
典型的には、Ψ基は、アミン、チオール、又はアルコールと共有結合を形成する反応性官能基である。1つの実施態様では、反応基Ψは、カルボン酸、カルボン酸の活性化されたエステル、アシルアジド、アシルハライド、対称又は非対称酸無水物、アクリルアミド、アルコール、チオール、アルデヒド、アミン、アジド、イミドエステル、スルホネートエステル、ハロアセトアミド、アルキルハライド、スルホニルハライド、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、又はマレイミド基である。別の実施態様では、Ψは、カルボン酸、スクシンイミジルエステル、アミン、ハロアセトアミド、アルキルハライド、スルホニルハライド、イソチオシアネート、又はマレイミド基である。
【0081】
典型的には、Ψがカルボン酸の活性化されたエステルである場合、Ψはスクシンイミジルエステルである。なお別の実施態様において、Ψは、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、アシルアジド、アシルニトリル、アルデヒド、アルキルハライド、アミン、酸無水物、アニリン、アリールハライド、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、スルホニルハライド、又はチオール基である反応性官能基である。
【0082】
特定の実施態様において、反応基Ψは、得られる標識された物質をトリアリールホスホニウム自身から分離するためのスペーサーとして役立つ、複数の介在する原子(本明細書中で「結合基」と称される)を介して、トリアリールホスホニウムに結合している。この結合基は、式Iにおいて「Z」によって表される。この結合基は、典型的には、安定な化学結合(典型的には炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、炭素−酸素結合、及び炭素−硫黄結合を含む。)を用いて、反応性官能基Ψにトリアリールホスホニウムが結合するように選択される。結合基Zは、炭素−炭素の単結合、二重結合、酸重結合又は芳香族の結合に加えて、エーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素、又はウレタン官能部分であり得る。好ましいZ部分は、C、N、O、及びSからなる群から選択される1から20個の非水素原子を有する。結合Zの最も長い直鎖セグメントは、好ましくは、1から6個の非水素原子を含有する。結合基は、任意の目的とする標識反応に対して不活性であるべきである。
【0083】
結合基Zは、1個のメチレン基(すなわち、CH)であり得る。別の実施態様において、結合基は、ポリメチレン、−(CR’R”−であり、ここで、nは1から10、又は1から6、又は1から4、又は1から2であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、又はアリール基である。
【0084】
1つの好ましい実施態様において、トリアリールホスホニウム基のリン原子は、メチレン基に結合し、この場合、結合基は、式−(CH)(CR’R”−によって表わし得、ここで、nは0から9、又は0から5、又は0から3、又は0であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、又はアリール基である。従って、本発明の標識試薬は、式III及びIIIa(ここで、R’及びR”は水素である。)によって表わし得る。
【0085】
【化25】

【0086】
典型的には、この反応基は、標識される物質上にすでにある官能基と適切な反応性を有するように選択される。標識試薬の反応性官能基及び被分析物の露出した官能基は、典型的には、容易に反応して共有結合を生成する求電子性試薬及び求核性試薬である。典型的には(そうでなければならないのでないが)、標識試薬上の反応性官能基は求電子性試薬であり、標識される基質上の露出した官能基は求核性試薬である。一般に、アミン、チオール、及びアルコールは、生体分子の修飾のために反応性が高く、利用しやすいので、コンジュゲート形成のための好ましい求核性の露出した官能基である。しかし、多種類の他の官能基(カルボン酸、アルデヒド及びケトンを含む。)が当業者によって十分に理解されている条件下で反応する。官能基及び結合の選択された例が以下の表1に示され、ここで、求電子性基及び求核性基の反応により、共有結合が生じる。
【0087】
【表1】


【0088】
被分析物にトリアリールホスホニウム基が結合する特定の共有結合は、典型的には、被分析物自身に天然に存在する官能基、又は当該技術分野で一般的に公知の方法に従う被分析物の誘導体化の結果として存在する官能基に依存する。本発明の好ましい側面では、反応性官能基(Ψ)は、イソチオシアネート、イソチオシアネート、アシルアジド、アシルニトリル、スクシンイミジル及びチオスクシンイミジルエステル、活性化されたカルボン酸、スルホニルクロリド、酸クロリド、アルデヒド、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、マレイミド、アルキル化試薬、ジスルフィド、ホウ酸、ヒドラジン、及びアミンからなる群から選択される。
【0089】
イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、及びアシルニトリル。イソシアネート(−N=C=O)は、長期保存中に劣化する場合がある。しかし、いくつかのアシルアジドは、80℃に加熱するとイソシアネートに容易に変換される(以下に示すCurtius転移による)。イソシアネートは、アミンと反応して尿素を形成する。
【0090】
【化26】

【0091】
アルコールは、水溶液中よりも無水有機溶媒中で、かなり容易に修飾される。アシルアジド及びアシルニトライトは、脂肪族アミンと直接反応して、対応するスクシンイミジルエステルが反応するのと同じ生成物になる。しかし、有機溶媒中で反応させる場合、これらの試薬はさらに、アルコール及びフェノールの誘導体を形成する場合がある。本発明のイソシアネート標識試薬及びアシルアジド標識試薬は、以下の式IV及びVのものを含む。
【0092】
【化27】

【0093】
イソシアネートは、イソチオシアネートよりも、アルコール(及びアミン)との反応性がかなり高い。典型的なプロトコルにおいて、アシルアジド及びアルコールは、有機溶媒中でともに加熱され、イソシアネートはすぐにアルコールと反応して、以下に示すように、安定なウレタンを形成する。
【0094】
【化28】

【0095】
アシルニトリルは、有機溶媒中のアルコールと反応して、カルボン酸エステルを与える。本発明のアシルニトリル標識試薬は、以下の式VI及びVIa(ここで、Zはメチレン基である。)のものを含む。
【0096】
【化29】

【0097】
イソシアネートに対する代替物は、イソチオシアネート(−N=C=S)であり、これは、水及び他の溶媒中で中程度に反応性であるが、より安定である。イソチオシアネートは、以下に示されるように、アミンと反応してチオウレアを形成する。
【0098】
【化30】

【0099】
チオウレア生成物は、適度に安定であるが、一般に、スクシンイミジルエステル及びスルホニルハライドの生成物と同程度には安定でない。
【0100】
スクシンイミジル及びチオスクシンイミジルエステル、活性化されたカルボン酸。スクシンイミジル(「NHS」)エステルは、得られたアミド結合がペプチド結合と同等に安定であるため、アミン修飾のための好ましい反応基である。本発明のNHSエステル標識試薬は、式VIIの構造を有する。
【0101】
【化31】

【0102】
Ψがカルボン酸のスクシンイミジルエステルである場合、反応性標識試薬は、特に、標識されたタンパク質又はオリゴヌクレオチドを調製するために有用である。この試薬は、乾燥していれば長期間安定であり、以下に示されるように、芳香族アミン、アルコール及びフェノールよりも、脂肪族アミンと選択的に反応する。
【0103】
【化32】

【0104】
スクシンイミジルエステルはさらに、チオールと反応してチオエステルを生成するが、このようなチオアシル基は、付近のアミンに移動する(例えば、タンパク質中のCys→Lys)。スクシンイミジルエステルの加水分解は、標識反応と競争するが、この副反応はpH<9に維持することによって制限し得る。以下に示される式VIII及びVIIIaのスルホスクシンイミジル(「NHSS」)エステル、式IXのペンタフルオロチオフェノールエステル、及び式X及びXaのスルホテトラフルオロフェノール(「SIP」)エステルは、異なる溶解性を有するNHSエステルの代わりとなるものである。
【0105】
【化33】

【0106】
これらのスルホネート化試薬は、NHSエステルよりも高い水溶性を有し、有機溶媒の存在しない媒体中で使用されてよい。スルホスクシンイミジルエステル及びSTPエステルは、カルボン酸標識試薬、カルボジイミド、及びN−ヒドロキシスルホスクシンイミド又は4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールからそれぞれインサイチューで調製し得る。
【0107】
カルボン酸はさらに、酸クロリド及び酸無水物を調製するために有用であり得、スクシンイミジルエステルとは異なり、芳香族アミン及びアルコールを標識するためにさらに有用である。ヒドラジン誘導体はさらに、アミンとよく似た反応性を有し、ある場合には、水溶性のカルボジイミド活性化されたカルボン酸基に結合させることができる。
【0108】
【化34】

【0109】
式XI、XIa、XII、及びXIIaの標識試薬のアミン及びカルボキシレート反応性官能基は、ペプチド合成における通常の種々のアミド結合形成方法において使用してもよい。このような方法は、典型的には、カルボジイミド、活性化された酸無水物及びエステル、及びアシルハライド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド、DPPA、PPA、BOP試薬、N−ヒドロキシスクシンイミド、オキサリルクロリド、HBTU、TBTU、HATU、HBPyU、HBPipU、PyBroP、TDBTU、TOTU、BroP、PyCloP、PyCIU、PipCIU、クロロ−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)−フォルムアミジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジニウムテトラフルオロボレート、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−エチルオキシカルボニル−2−エチルオキシ−1,2−ジヒドロキノン、及びプロパンホスホン酸、酸無水物を含む、カップリング試薬を使用する。例えば、P.Lloyd−Williamsら,Tetrahedron 49,11065−133(1993);M.A.Gallopら,J.Med.Chem.37,1233−51(1994);R.Schwyzer and P.Sieber,Helv.Chim.Acta 49,134(1966);R.B.Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85,2149(1963);B.Gutte及びR.B.Merrifield,ibid.91,501(1969);及び米国特許第4,507,230号;第5,258,454号;及び第6,204,361号を参照。
【0110】
典型的には、アミン又はアニリンは、その遊離アミノ基を介して、好適なカルボジイミドカップリング薬剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)を用いて、場合により触媒、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(「HOBt」)、及びジメチルアミノピリジン(「DMAP」)の存在下で、適切なカルボン基質に結合する。他の方法としては、活性化エステル及び酸無水物の形成後、場合により塩基の存在下で、遊離アミンとの反応によるものが挙げられる。例えば、保護されたBoc−アミノ酸又はCbz−アミジノ安息香酸は、塩基(例えば、N−メチルモルホリン、DMAP、又はトリアルキルアミン)の存在下で、イソブチルクロロホルメートを用いて無水溶媒中で処理され、「活性化された酸無水物」を形成し、これは、次いで、アミンと反応する。
【0111】
スルホニルクロリド及び酸クロリド。式XIII及びXIIIaのスルホニルクロリド及び式XIV及びXIVaの酸クロリドは、水中で、特に脂肪族アミンとの反応に必要とされるさらに高いpHで高反応性であり、不安定であり、これらは、pH8.3の水溶液で室温で2から3分で加水分解される。従って、このような試薬は、好ましくは、低温で使用される。得られたスルホンアミドは、通常は非常に安定である。スルホニルクロリドは、フェノール(チロシンを含む)、脂肪族アルコール(多糖類を含む)、チオール(例えばシステイン)、及びイミダゾール(例えばヒスチジン)と反応するが、生成物は一般的に不安定であり、特に、脂肪族アルコールとの生成物は、求核置換を受けやすい。これらの反応性のために、非求核性溶媒が好ましい。
【0112】
【化35】

【0113】
アルデヒド。式XV及びXVaのアルデヒド標識試薬は、アミンと反応してSchiff塩基(たとえば、式XVI)を形成し、これは、水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元アミノ化によってさらに安定化されてもよい。
【0114】
【化36】

【0115】
ヨードアセトアミド及びブロモアセトアミド。ヨードアセトアミド標識試薬(式XVII、ここでXはヨウ素原子である)は、全てのチオール(ペプチド及びタンパク質中に見出されるものを含む)と容易に反応し、チオエーテルを形成する。これらは、対応するブロモアセトアミド(式XVII、ここでXは臭素原子である)よりもいくらか反応性が高い。ヨードアセトアミド及びブロモアセトアミドはさらに、ヒスチジン又はチロシンと反応し得るが、一般的に、遊離のチオールのみが存在する場合、これらはカルボキシレート又はアルコールをアルキル化する場合がある。
【0116】
【化37】

【0117】
ヨードアセトアミドはアミンの遊離塩基と反応し得るが、ほとんどの脂肪族アミン(タンパク質のN末端を除く)はプロトン化され、pH8未満では比較的反応性が低く、このため、標識反応の選択性は、反応pHを制御することによって影響を受ける場合がある。ヨードアセトアミドは、固有に光に、特に溶液中で不安定であり;及びこれらの試薬との標識反応は、光を減らした条件下で行なうべきである。システイン、グルタチオン、又はメルカプトコハク酸を反応混合物に添加して、チオール反応性標識試薬の反応を止め、非常に水溶性の付加物を得て、これは容易に除去された。本発明のいくつかのヨードアセトアミド及びブロモアセトアミド標識試薬と被分析物分子のアミン及びチオールとの標識反応を以下に示す。
【0118】
【化38】

【0119】
マレイミド。Ψがマレイミドである場合、反応性標識試薬(式XVIII及びXVIIIaにおけるような)は、チオール含有基質にコンジュゲート形成するのに特に有用である。チオール基は、二重結合に付加することによって、マレイミドと反応して、式XIXに示されるようなチオエーテルを形成する。マレイミドは、メチオニン、ヒスチジン、又はチロシンよりもシステインのチオールに対して選択的である。マレイミドとアミンとの反応は、通常、マレイミドとチオールとの反応よりも高いpHを必要とする。マレイミドの加水分解は、特にpH8より高いpHでは、チオール修飾と顕著に競争する。さらに、マレイミド付加物は、求核性反応(隣接アミンとの)によって加水分解又は開環し得る。
【0120】
【化39】

【0121】
アルキル化試薬及びジスルフィド。アルキルハライド及びアリール化薬剤及びジスルフィド(典型的には対称のもの)は、チオール−ジスルフィド交換反応を受け、新しい非対称ジスルフィドを形成し、この反応は自由に不可逆であり、チオール特異的である。これらのチオール反応性標識試薬からの共有結合付加物は、概して、ヨードアセトアミド又はマレイミドからの付加物よりも加水分解に耐性がある。
【0122】
ホウ酸。ホウ酸標識試薬(式XX及びXXaにおけるような)は、隣接ジオール及び特定のアミノアルコールと反応して、それぞれ式XXI及びXXIIに示されるような環状錯体を形成する。
【0123】
【化40】

【0124】
ヒドラジン及びアミン。ヒドラジン及びアミンは、アルデヒド及びケトンと容易に反応するが、これらの官能基は生体サンプル中ではアミンとして一般的ではない(遊離の還元糖を含有する多糖類を除く)。にもかかわらず、アルデヒド及びケトンを分子内に導入するためのいくつかの方法が公知であり、例えば、過ヨウ素酸塩で媒介される隣接ジオールの酸化、またはアルケンの四酸化オスミウム酸化、及び過ヨウ素酸塩によるアルデヒドに対する酸化が公知である。過ヨウ素酸塩はさらに、特定のアミノアルコール及びチオールを酸化するが、隣接するジオールの酸化よりは速度が低い。従って、形成されるアルデヒド及びケトンは、式XIII、XIIIa、XIV、及びXIVaのアミン又はヒドラジン標識試薬で標識されてもよい。
【0125】
【化41】

【0126】
グルタルアルデヒドは、固定化された組織サンプルの調製において一般的に使用され、残りのアルデヒド基(式XXV)は、ヒドラジン及びアミンと結合させて式XXVIの生成物を得てもよい。
【0127】
【化42】

【0128】
ヒドラジン誘導体、例えば、ヒドラジド、セミカルバジド、及びカルボヒドラジドは、アルデヒド及びケトンの安定なコンジュゲートを形成するための反応性標識試薬である。ヒドラジンは、ケトン及びアルデヒドと反応して、安定なヒドラゾンとなる。これらのヒドラゾンは、水素化ホウ素ナトリウムで還元して、さらに結合安定性を増し得る。一級脂肪族及び芳香族アミンは、アルデヒド及びケトンと可逆的に反応してSchiff塩基を形成する。この反応が可逆性であるため、ヒドラゾン誘導体は、通常、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムによって還元される。水溶性化合物のカルボン酸はさらに、カルボジイミド、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを含む水溶液中でヒドラジン及びアミンに結合し得る。
【0129】
4.標識試薬の合成
本発明の標識試薬及び化合物は、提供される特定の手順において記載されるように、本明細書中に記載されるスキーム及びプロトコルに従って容易に調製し得る。しかし、本発明の化合物を形成するための他の合成経路を使用してもよく、以下は単に例として提供されており、本発明を限定するものではないことを当業者は認識する。例えば、R.Larockによる「Comprehensive Organic Transformations」、VCH Publishers(1989)を参照。当該技術分野で標準的な種々の保護及び脱保護ストラテジーが使用されることがさらに認識される(例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Greene及びWutsを参照)。任意の特定の保護基(例えば、アミン及びカルボキシル保護基)が、続く反応条件に関して、保護される部分の安定性に依存することを関連技術の当業者は認識し、適切な選択が理解される。
【0130】
標識試薬は、脱離基Lが求核置換してアルキル化トリアリールホスホニウム化合物を得ることを示す以下のスキームに示されるように、トリアリールホスフィンのアルキル化によって簡便に合成し得る。
【0131】
【化43】

【0132】
反応性官能基Ψそれ自体は、ホスフィンの直接アルキル化に干渉し、従って、これらの合成前駆体(Ψ)が好ましいことを当業者は理解する。例えば、前駆体は、反応性官能基が保護基でマスクされている反応性官能基であってもよい。アルキル化の後に、保護基は、種々の当該技術分野で認識される技術のいずれかに従って除去される。
【0133】
句「保護基」は、本明細書中で使用される場合、所望でない化学変換から潜在的に反応性の官能基を保護する、一時的な置換基を意味する。このような保護基の例としては、それぞれ、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、及びアルデヒド及びケトンのアセタール及びケタールが挙げられる。T.W. Greene及びP.G.M.Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」第3編;John Wiley & Sons,Inc.,New York(1999)を参照。
【0134】
トリアリールホスフィンは、合成してもよいし、又は市販の供給源から獲得してもよい。トリアリールホスフィンは、遷移金属の周知のリガンドであり、広く市販されている。トリアリールホスフィンは、いくつかの方法によって一般に合成される。ハロホスフィンとアリールグリニャール試薬又は有機リチウム試薬との反応、ジアリールホスフィンの金属化、続くアリールハライド又はアリールスルホネートエステルとの反応、ハロホスフィンと活性化芳香族環とのFriedel−Crafts反応、及びアリールハライド又はアリールトリフラートとジアリールホスフィンとのクロスカップリング。金属化アレンとハロホスフィンとの反応及びFriedel−Crafts反応は、非反応性のアリール置換基を有する化合物を調製するのに適切である。トリアリールホスフィンを得るためのアリールハライド又はトリフラートとジアリールホスフィンとのクロスカップリングも公知である。トリアリールホスフィンはさらに、パラジウム触媒によるアリールハライド及び(トリメチルシリル)ジフェニルホスフィン又は(トリメチルスタニル)ジフェニル−ホスフィンのクロスカップリングによって調製してもよい。別のクロスカップリング反応は、ニッケル触媒を使用して、1,1’−ビ−2−ナフトールジスルホネートエステルとジフェニルホスフィンとをクロスカップリングして、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルを得る。例えば、米国特許第4,947000号;第4,036,889号;及び第5,902,904号を参照。
【0135】
市販の(Sigma−Aldrich,Milwaukee,Wisconsin,USA)トリアリールホスフィンとしては、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルホスフィン、(4−ブロモフェニル)ジフェニルホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジフェニル(2−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、2−(ジフェニルホスフィノ)ベンズアルデヒドジフェニル−2−ピリジルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリ−2−フリルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)−ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロ−フェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、4−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、4,4’−(フェニル−ホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)、3,3’,3”−ホスフィニジントリス(ベンゼンスルホン酸)、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、及びトリ−p−トリルホスフィンを含み、並びに(1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)ベンゼン)、及び(2,2’−ビス(ジフェニルスフィノ)−1,1’−ビナフチル(S−及びR−立体異性体)も含む。
【0136】
本発明の標識試薬の合成は、溶媒中で行われる。好適な溶媒は、常温常圧で液体であるか、又は反応中に使用される温度条件及び圧力条件下で液体状態を維持するものである。有用な溶媒は、特に制限はないが、但し、反応自体を妨害しないものであり(すなわち、これらは好ましくは不活性溶媒である)、反応物の特定の量を溶解するものである。状況に依存して、溶媒は、蒸留されるか又は脱気されてもよい。非求核性溶媒は、溶媒アルキル化がホスフィンアルキル化と競合しないため、好ましい。この溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテル、シクロヘキサン、又はメチルシクロヘキサン)及びハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、又はジクロロベンゼン);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロナフタレン、エチルベンゼン、又はキシレン);エーテル(例えば、ジグリム、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン又はメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、又はジエチレングリコールジメチルエーテル);ニトリル(例えば、アセトニトリル);ケトン(例えば、アセトン);エステル(例えば、酢酸メチル又は酢酸エチル);及びこれらの混合物である。
【0137】
一般に、反応の終了後、標識試薬は、標準的な技術に従って反応混合物から単離される。例えば、溶媒は、生成物が固体である場合、場合により減圧下で、エバポレーション又はろ過によって除去される。反応の終了後、水を残渣に添加して、水層を酸性又は塩基性にし、沈殿した化合物をろ過するが、水に感受性の化合物を取り扱う場合には注意深く行うべきである。同様に、水を疎水性溶媒とともに反応混合物に添加して、標的化合物を抽出する。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム又は硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させて標的化合物を得てもよい。このようにして得られた標的化合物は、必要な場合、例えば、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィーによって、又は酸又は塩基を添加することによって塩に変換することによって精製してもよい。
【0138】
いくつかの好ましい標識試薬の合成は、同位体標識されたトリス(トリメトキシフェニル)ホスフィンのアルキル化を示す以下のスキームにおいて示される。
【0139】
【化44】

【0140】
一般に、本発明の化合物は、例えば、以下に記載されるような一般的な反応スキームにおいて示される方法によって調製し得、又は容易に入手可能な出発物質、試薬及び従来の合成手順を用いてこれらを修飾することによって調製し得る。これらの反応において、それ自身が公知の改変体を利用することも可能であるが、ここでは述べない。機能的等価体及び構造的等価体は、本明細書中で記載され、同じ一般的な特性(例えば、トリアリールホスホニウム標識試薬として機能する)を有し、1つまたはそれ以上の置換基の単純な改変は、本化合物の本質的な性質又は有用性に悪影響を与えずになされる。
【0141】
本明細書中の化学構造は、当該技術分野で公知の従来の標準にしたがって記載される。従って、原子、例えば炭素原子が不満足な価数を有するように記載されている場合、水素原子が明示的に記載されていなくても、この価数は水素原子によって満足されるとみなされる。これに加えて、本発明の化合物は、受容可能な溶媒、例えば、水、THF、エタノール等とともに可溶化しない形態及び可溶化した形態で存在してもよい。一般に、可溶化した形態は、本発明の目的のために、可溶化していない形態と等価であるとみなされる。
【0142】
本発明の化合物は、適切な溶媒とともに、又は溶媒を含まない(例えば、凍結乾燥された)形態で溶液中に供給し得る。本発明の別の側面では、本発明の方法を実行するために必要な標識試薬及びバッファは、キットとしてひとまとめにし得る。このキットは、本明細書中に記載される方法に従って被分析物を標識するために一般に使用してよく、本発明の方法において使用するための使用説明書を含み得る。さらなるキット成分として、酸、塩基、緩衝薬剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、防腐剤、又は金属キレート化剤を含み得る。さらなるキット成分は、純粋な組成物として、又は1つまたはそれ以上のさらなるキット成分を組み込んだ水溶液又は有機溶液として存在する。任意の又は全てのキット成分は、場合によりさらにバッファを含む。
【0143】
5.マススペクトロメトリー法
本発明において使用するための好ましい質量分析計フォーマットは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)である。しかし、他の実施態様において、他のフォーマット、例えば、エレクトロスプレー(「ES」)MSを使用してもよい。MALDIマススペクトロメトリーにおいて、種々の質量分析器、例えば、一重又は三重の四重極モード(MS/MS)における磁気センサー/磁気偏向装置、フーリエ変換、及び飛行時間型(TOF)構成を使用することができる。脱離/イオン化プロセスのために、多くのマトリックス/レーザーの組み合わせを使用し得る。イオントラップ及び反射構造も使用し得る。
【0144】
飛行時間型(TOF)質量分析計は、生成したイオンが検出器まで移動するのにかかる時間を測定することによって、これらの[質量]対[電荷]比に従って分離する。TOF質量分析計は、仮想的に限定されない[質量]対[電荷]比範囲を有する、比較的単純で、安価な装置であるため、有利である。TOF質量分析計は、各イオン化事象から生成した全てのイオンを記録することができるため、スキャニング装置よりも潜在的に高い感度を有する。TOF質量分析計は、従来の磁場質量分析計では感度が低すぎる、大きな有機分子の[質量]対[電荷]比を測定するのに特に有用である。米国特許第5,045,694号及び第5,160,840号を参照。
【0145】
TOF質量分析計は、サンプル物質のイオンを生成するためのイオン化源を含む。イオン化源は、イオンビームを収束させ、適切に方向付けるための1つまたはそれ以上の電極又は静電レンズを含有する。所与の電気ポテンシャルによって収束したイオンの飛行時間は、[質量]対[電荷]比に比例する。従って、イオンの飛行時間は、この[質量]対[電荷]比の関数であり、[質量]対[電荷]比の二乗にほぼ比例する。単に1個の電荷を有するイオンの存在を推定し、イオンの最も軽いグループが検出器に最初に到着し、続けて、さらに思い質量グループのグループが到着する。
【0146】
MALDIは、無傷のままに保持しつつ、100,000Daを超える大きな生体分子の脱離及びイオン化を可能にするため、特に生物学的適用において有利に適用される。本発明はさらに、MALDI実験においてマトリックス成分によってさもなければ不明瞭になる、標識された低分子の同時分析も可能にする。
【0147】
エレクトロスプレーイオン化(「ESF」)は、上に記載される方法に加えて、イオン化の別の方法である。エレクトロスプレーイオン化において、シリンジ針は、質量分析計の入り口のオリフィスに密接して配置されたオリフィスを有する。目的の分子を含有する希釈溶液は、シリンジ針を介して押し出される。シリンジ針オリフィスと質量分析計に導くオリフィスとの間の強力な電子ポテンシャル、典型的には3kVから6kVは、溶液のスプレーを形成する。エレクトロスプレーは、常圧で行われ、溶液の高度に荷電した液滴を提供する。目的の分子のイオンは、荷電された液滴から直接形成される。エレクトロスプレーイオン化は、常圧で溶液から直接生じ、このプロセスにおいて形成されたイオンは強く溶媒和される傾向がある。有用な質量測定を行うために、イオンに結合した任意の溶媒分子が効果的に除去されることが必要である。脱溶媒和は、イオンが質量分析計の真空内に入る前に、加熱ガスの強い向流によって達成し得る。エレクトロスプレーイオン化は、熱的に不安定又は不揮発性の生化学物質から高分子量のフラグメント化しないイオンを生成することができる。Doleら,J.Chem.Phys.49,2240(1968)を参照。イオン化されたサンプルを含有する溶液が、ほぼ常圧で、質量分析計の減圧システム内に生じるプレート中の小さなオリフィスに対して、キャピラリー管から不活性ガスを含有する領域にスプレーされる。スプレーするキャピラリーと不活性ガスを含有するチャンバの壁(小さなオリフィスとプレートを含む)との間に、高い電気ポテンシャルが適用される。また、米国特許第4,542,293号及び第4,531,056号を参照。
【0148】
飛行時間検出器は、分離してイオン化された被分析物を測定するための好ましい検出器であり;さらに好ましくは、飛行時間質量分析器は、同じ質量のイオン間の運動エネルギーの差を較正するためのイオン反射器の後に置かれる。飛行時間質量分析器の別の任意の増強は、被分析物の分離及びイオン化と質量分析器による初期促進電圧の適用との間が短く、制御され、遅延する場合に理解される。本発明の別の任意の実施態様は、分離し、イオン化し、反射した被分析物のポストソースディケイ測定を行うためのイオン反射器を有していない。磁気イオンシクロトロン共鳴装置及び四重極質量分析器を含む他の質量分析計は、本発明の範囲内にある。
【0149】
本発明のトリアリールホスホニウム基は、被分析物が標識された場合に固定された陽電荷を与え、特定のマススペクトロメトリー方法の使用にかかわらず、これによりマススペクトロメトリーによる分析の感度が増す。本発明の1つの適用において、異なる検出感度を有することが知られているか、疑われる分子は、これらのMS応答を正規化するために、本発明の標識試薬を用いてすべて誘導体化される。
【0150】
6.被分析物及びサンプル調製
本発明は、種々の被分析物をアッセイ、検出、定量、位置決定、又は分析するための方法に関する。「被分析物」は、本明細書中で使用される場合、検出され、サンプル中に存在し得る物質である。被分析物は、タンパク質又はペプチド;酵素;免疫グロブリン(モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方を含む);ハプテン又はバクテリア、ウイルス、寄生虫、又は真菌の抗原;アミノ酸;ホルモン;レセプター;核酸;ホルモン;化学物質;生体起源又は人類起源のポリマー;病原体;毒素;糖類又は多糖類;ステロイド;ビタミン;治療薬物又は乱用薬物;細菌又はウイルス;又は上述の任意の組み合わせ又はフラグメント;及びこれらの代謝物及びこれらに対する抗体であり得る。
【0151】
本発明は、低分子である被分析物に有利に適用される。「低分子」は、それ自身が遺伝子転写物又翻訳物ではない化合物(例えば、タンパク質、RNA、又はDNA)を指し、好ましくは低分子量、例えば約1000未満を有する化合物を指す。
【0152】
検出可能な被分析物としては、例えば、食物、産業薬剤、又は化学製品の製造によって作成されるものが挙げられる。このような被分析物の例としては、食品添加物(例えば、増量剤、ビタミン、着色剤又は香味剤)、農薬(例えば、殺虫剤、防虫剤、除草剤、及び化学肥料)、界面活性剤(例えば、ナトリウムドデシルサルフェート)、接着剤(例えば、イソシアネートグルー)、樹脂(例えば、木材樹脂及びエポキシ樹脂)、有機汚染物質、及びプロセス薬品(例えば、水システムにおいて使用される化学物質)、例えば、フロックポリマー、殺虫剤、腐食防止剤、及びシーラント防止剤が挙げられる。これに加えて、被分析物は、生成物又はプロセスのマーキング又はトレーシングに使用される物質であり得る。
【0153】
「治療薬物」被分析物は、典型的には、適法とされ、医学的に認証され、治療目的又は診断目的のために投与される薬剤又は医薬である。治療薬物は、カウンター越し又は処方箋により入手してもよい。治療薬物の例としては、アドレナリン作用性薬剤、抗寄生虫薬剤、抗座瘡薬剤、抗アドレナリン作用性薬剤、抗アレルギー性薬剤、抗アメーバー薬剤、抗アンドロゲン薬剤、抗貧血薬剤、抗狭心症薬剤、抗不安薬剤、抗関節炎薬剤、抗喘息薬剤、抗アテローム硬化症薬剤、抗バクテリア薬剤、抗胆石剤、抗胆石源剤、抗コリン作用薬剤、凝固防止剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、下痢止め剤、抗利尿剤、解毒剤、吐き気止め剤、抗てんかん剤、抗エストロゲン剤、抗線維素溶解薬、抗真菌剤、抗緑内障薬剤、抗血友病剤、抗出血剤、抗ヒスタミン剤、抗高脂質血症剤、抗高リポタンパク質症剤、抗高血圧剤、抗感染剤、抗炎症剤、抗マラリア剤、抗菌剤、抗偏頭痛剤、抗有糸分裂剤、抗カビ剤、制吐剤、抗腫瘍剤、抗好中球減少症剤、抗肥満剤、駆虫剤、抗パーキンソン病剤、抗ぜん動剤、抗ニューモシステイス剤、抗増殖剤、抗原生動物剤、止痒剤、抗精神病剤、抗リウマチ剤、抗住血吸虫剤、抗脂漏剤、抗分泌剤、鎮痙剤、抗血栓剤、鎮咳剤、抗潰瘍剤、抗尿結石剤、及び抗ウイルス薬剤が挙げられる。
【0154】
治療薬物のさらなる例としては、副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;アルコール抑止剤;アルドステロンアンタゴニスト;アミノ酸;アンモニア解毒剤;同化促進ステロイド;覚醒剤;鎮痛剤;アンドロゲン;麻酔薬;食欲抑制薬;食欲抑制剤;良性前立腺肥大治療薬剤;血中グルコース調整剤;骨吸収インヒビター;気管支拡張剤;炭酸脱水酵素インヒビター;心臓減圧剤;心臓保護剤;強心剤;心臓血管薬剤;コリン作動性アゴニスト及びアンタゴニスト;コリンエステラーゼ不活性化剤又は阻害剤;コクシジウム抑制薬;認識アジュバント及びエンハンサー;抑制剤;診断助剤及びコントラスト薬剤;利尿剤;ドーパミン性薬剤;外部奇生生物撲滅剤;催吐剤;酵素インヒビター;及びエストロゲンが挙げられる。
【0155】
治療薬物のさらなる例としては、線維素溶解薬剤;蛍光薬剤;遊離酸素基捕捉剤;GABAアゴニスト;グルタメートアンタゴニスト;胃腸移動性作動体;グルココルチコイド;毛髪増殖刺激剤;止血薬剤;ヒスタミンH2レセプターアンタゴニスト;ホルモン;低コレステリン血症薬剤;低血糖症薬剤;低脂血症剤;低血圧薬剤:造影薬剤;免疫化薬剤;免疫調整剤;免疫制御剤;免疫刺激剤;免疫抑制剤;インポテンス治療補助剤;角質溶解薬剤;LNRHアゴニスト;モノアミンオキシダーゼインヒビタームコリチック薬剤;粘膜保護薬剤;鼻の鬱血除去剤;神経筋ブロッキング薬剤;神経保護薬剤;NMDAアンタゴニスト;AMPAアンタゴニスト、競争的及び非競争的NMDAアンタゴニスト;オピオイドアンタゴニスト;カリウムチャネルオープナー;非ホルモン性ステロール誘導体;プラスミノーゲン活性剤;血小板活性因子アンタゴニスト;血小板凝集インヒビター;発作後の処置及び頭部外傷後の処置;プロスタグランジン;前立腺増殖インヒビター;向精神剤;肺表面薬剤;放射性薬剤;弛緩剤;殺疥癬虫薬;硬化剤;鎮静剤;鎮静−催眠剤;選択的アデノシンアンタゴニスト;セロトニンアンタゴニスト;セロトニンインヒビター;選択的セロトニン取り込みインヒビター;セロトニンレセプターアンタゴニスト;ナトリウム及びカルシウムチャネルブロッカー;ステロイド;興奮薬;甲状腺ホルモン及びインヒビター;甲状腺模倣物;精神安定薬;血管収縮薬;血管拡張薬;創傷治癒薬剤;及び起算地のキシダーゼインヒビターが挙げられる。
【0156】
「乱用薬物」又は「ストリートドラッグ(street drug)」は、不法で違法な薬物を含む。乱用薬物は、主に娯楽目的で使用されるか、又は依存症を満足させるために使用され、資格のあるヘルスケア提供者の監督なく、しばしば自己投与されるか、又は投与される。乱用薬物はさらに、依存症又は乱用について高い潜在性を有する治療薬物、例えば、ステロイド、鎮静剤、抗うつ剤、及び他の向精神薬を含む。乱用薬物は、処方によって入手可能な場合もあるが、乱用又は依存症になりやすい。
【0157】
乱用薬物の例としては、利尿剤(例えば、アセタゾールアミド、アミロンデ、ベンドロフルメキアジド、ブメタニド、カンレノ、クロロメロドリン、クロロタリドン、ジクロフェンアミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、メルサリル、スピロノラクトン、及びトリアムテレン)、鎮痛剤(例えば、アルファプロジン、アニレリジン、スプレノルフィン、コデイン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジピパノン、エトヘプタジン、エチルモルフィネ、レボルファノール、メタドン、モルフィネ、ナルブフィン、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、及びトリメペリジン)、及びβ−ブロッカー(例えば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、プロパノロール、及びソタロール)が挙げられる。
【0158】
乱用薬物の例としてはさらに、刺激剤(例えば、アムフェプラモン、アムフェタミン、アムフェタミニル、アミフェナゾール、ベンズフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、カフェイン、カチン、コロイフェンターミン、クロベンゾレックス、クロルプレナリン、コカイン、コチニン、クロプロパイニド、クロテタミド、ジメタムフェタミン、エフェドリン、エタフェドリン、エタミバン、エチルアムフェタミン、フェンカムファミン、フェネチリン、フェンプロポレックス、フィルレノレックス、メフェノレックス、メタムフェタミン、メトキシフェナミン、メチルエフェドリン、メチレンジオキシメタムフェタミン、メチルフェニデート、モラゾン、ニコチンニケタミド、ペモリン、ペントラゾール、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンターミン、フェニルプロパノールアミン、ピプラドロール、プロリンタン、プロピルヘキセドリン、ピロバレロン、スチリキニン、及びテオフィリン)が挙げられる。
【0159】
乱用薬物のさらなる例としては、幻覚剤(例えば、リセルグ酸ジエチルアミド、メスカリン、フェンシクリジン、ケタミン、ジメトキシメチルアムフェタミン、テトラヒドロカンナビノール、マリジュアナ、メチレンジオキシメタムフェタミン)、鎮静剤、催眠剤(例えば、クロラル水和物、グルテチミド、メプロバメート、及びメタクワロン)、及び同化促進ステロイド(例えば、ボラステロン、ボルデノン、クロステボール、デヒドロメチルテストステロン、フルオキシメステロン、メステロロン、メタンジエノン、メタアンドロステノロン、メテノロン、メチルテストステロン、ナンドロロン、ノルエタンドロロン、オキサンドロロン、オキシメステロン、オキシメトロン、スタノゾロール、及びテストステロン)が挙げられる。
【0160】
乱用薬物のさらなる例としては、アヘン剤(例えば、ヘロイン、モルフィネ、メタンドロン、メペリジン、プロポキシフェン、及びアセチルモルフィネ)、バルビタール(例えば、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール、ブタビルビタール、及びブタバルチアール)、ベンゾジアゼピン(例えば、ジアゼパム、クロラゼペート、クロロジアゼポキシド、オキサゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、アルプラゾラム、及びトリアゾラム)、抗精神病−抗うつ薬(例えば、クロロプロマジンク、トラゾドン、ハロペリドール、アモキサピン、炭酸リチウム、ドキセピン、イミプラミン、及びアミトリプチリン)、及び鎮痛剤(例えば、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフルニサール、及びフェニルブタゾン)が挙げられる。
【0161】
薬剤である被分析物の引用として、体内での薬物の迅速な代謝に起因して、しばしば検出される一次物質である元々の薬物の種々の代謝物及び誘導体をさらに含むことが意図される。例えば、親油性の精神活性化合物であるマリファナの11−ノル−Δ−9−テトラヒドロカンナビノールは、身体組織中に蓄積するが、この主な代謝物、11−ノル−A−9−テトラヒドロカンナビノールカルボン酸は、検出可能なレベルのグルクロン酸コンジュゲートとして尿中に排出される。
【0162】
同様に、コカインは、体内で迅速に代謝され、ベンゾイルエクゴニン、エクゴニンメチルエステル、及び他の少量の代謝物になる。ベンゾイルエクゴニンは、エクゴニンメチルエステルよりも長い期間、尿中に検出されるので、コカイン使用の検定のための好ましい被分析物である。モルフィネは、コデインの主な代謝物である。ヘロインは、6−アセチルモルフィネに代謝され、これはさらにモルフィネ及びモルフィネ−3−グルコロニドに代謝され、これら全ては、本発明による好適な被分析物である。三環式の抗うつ薬であるドキセピン、イミプラミン、又はアミトリプチリンは、被分析物ノルドキセピン、デシプラミン、及びノルトリプチリンに代謝される。
【0163】
本発明による被分析物はさらに、環境上の毒素、産業汚染物質、産業化学物質、又は他の汚染物質(例えば、アミン、窒素ヘテロ環等)であり得る。被分析物はさらに、化学戦争の薬剤(例えば、有機リン及び有機ヒ素化合物)であり得る。本発明のなお別の適用は、埋め立て地域、産業起源、商業起源、及び軍事起源の危険な廃棄物を監視することである。
【0164】
特定の被分析物を含有することが疑われる任意の液体をサンプルとして使用することができる。本発明はさらに、固体相サンプル内に当初含有されていた被分析物を検出するために使用し得る。これらの被分析物は、分析前に、単に抽出し、溶液中に懸濁又は溶解される。固体サンプルは、生体組織(例えば、生検を行うプロセス中で得られるもの)、土、又は群葉を含んでもよい。
【0165】
本発明の別の側面において、サンプルは、液体源から直接的に得られる水性サンプル又は水混和性の溶液であるか、又は、固体又は半固体の水性懸濁液であるか、又は被分析物を含有することが知られているか又は疑われている固体又は半固体物質からの水性洗浄物である。サンプルは、産業起源からの物を含む、泥、水、又は空気のような環境的な供給源、例えば、荒れた小川、水源、供給ライン、又は生産用地から得られ得る。産業供給源はさらに、発酵培地、例えば、生物学的リアクター又は食物発酵プロセスの発酵培地を含む。又、産業供給源は、化学リアクター及びバイオリアクターを含む。雨水、又は海岸、河川、湖、池、又は小川由来の水もまたサンプルであってもよい。
【0166】
生物学的起源のサンプルは、生理学的流体、例えば、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、腹水液、汗、リンパ液、又は他の体液であってもよい。又、サンプルは、血液細胞、培養細胞、筋肉組織、神経細胞等の細胞溶解液である流体;細胞のすぐ外側の領域における細胞外流体;ベシクル中の液体;又は植物及び動物の血管組織中の流体を含んでもよい。
【0167】
サンプルは、標識及び分析の前に、必要な場合加工されてもよい。例えば、サンプルは、被分析物のさらに有効な標識を可能にするために、粒子状物質を除去するために遠心分離又はろ過してもよく、又は緩衝化してもよい。分析科学及び法医学の通常の方法に従って、サンプルは、可能な干渉成分を除去するために、最適な抽出のためのサンプルのpH及びイオン強度を調整するために、又は単純にサンプルを希釈するために、前処理を受けてもよい。このような前処理方法は、当該技術分野で周知である。例えば、サンプルは、例えば、ろ過又は遠心分離によって使用前に分け得る。血液生成物サンプル及び尿は、典型的にはバッファ溶液で希釈され、タンパク質又は粒子を除去するためにろ過し得る。血液サンプルのために、音波処理を使用して細胞をフラグメント化し得る。タンパク質は、例えば、有機溶媒、過塩素酸又はトリクロロ酢酸、又は金属イオンを添加することによって生物学的サンプルから沈殿してもよい。しかし、このような沈殿は、共沈殿を介して被分析物をロスする場合がある。サンプルは、さらなる化学的改変に付されてもよい。例えば、アヘン剤を含有するサンプルは、しばしば酸水溶液で加水分解される。
【0168】
典型的には、標識試薬のストック溶液は、公知の量の純粋な試薬を秤量し、溶媒中に試薬を溶解することによって調製される。溶媒は、標識試薬を溶解し、反応しないものが選択されるべきである。溶媒のいくつかの例としては、緩衝化水溶液、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン)、及びこれらの混合物が挙げられる。バッファが使用される場合、標識試薬と反応しないように選択されるべきである。好適なバッファとしては、当業者に公知の任意のもの、例えば、トリス(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)が挙げられる。他のバッファとしては、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、クエン酸バッファ、又は炭酸水素塩バッファが挙げられ、これらのバッファは、HBS、HEPES、PBS、EGTA、及びクエン酸バッファからなる群から選択されるメンバーである。光感受性の標識試薬のために、ストック溶液は、常に光から保護されるべきである。標識溶液は、所望の標識濃度までストック溶液のアリコートを水性バッファで希釈することによって調製される。一般に、標識溶液中の標識試薬の量及び濃度は、顕著なバックグラウンド反応を起こさずに、被分析物を標識するのに十分なものである。使用される標識試薬の実際の量は、実験条件及び所望の結果に依存する。実験条件の最適化は、当業者によって容易に把握できる、所与の適用において使用される最適のパラメーターを決定するために望ましいであろう。
【0169】
標識反応条件は、温度、pH、及び媒体中の組成変化によって影響を受ける場合があるが、当該分野で周知の方法を用いて容易に決定される。一般に、サンプル(所望な場合、前処理後のサンプル)は、標識反応を起こさせるのに必要な時間、反応媒体中で標識試薬とともにインキュベートされる。最も好ましい条件下で、この時間は1時間未満であり、数秒から10分までであることもある。
【0170】
本方法の感度により、本明細書中に記載されるアッセイを用いて少ない容積の反応混合物で行うことを可能にする。このことは、一般的に高スループットスクリーニングとして公知の方法で特に有用である。1つの実施態様では、反応混合物は、マイクロプレートのウェル中に存在する。別の実施態様では、反応混合物は、マイクロ流体チップ上に存在する。本発明の1つの側面では、反応混合物は、200μL以下の体積を有する。
【0171】
アミノ基の反応性。アミン反応性の標識試薬として、アミンとの反応でカルボキサミド、スルホンアミド、ウレア、又はチオウレアを形成するアシル化試薬が挙げられる。アシル化反応の特異性及び速度論は、アシル化試薬及びアミンの両方の反応性及び濃度に依存する。遊離アミン、例えば、トリス及びグリシンを含有するバッファは、あらゆるアミン反応性標識試薬を用いるときは避けるべきである。タンパク質サンプル調製物からの残りの硫酸アンモニウム又はウレアは、標識試薬を導入する前に除去されるべきである。求核性チオールは、標識試薬と競合し得るので、濃度を制限するべきである。
【0172】
アミンの反応性は、主にその塩基性によって説明される。ほとんどのタンパク質はリシン残基を有し、ほとんどのタンパク質は、N−末端に遊離アミンを有する。リシンのアミン基などの脂肪族アミンは、中程度に塩基性であり、ほとんどのアシル化試薬と反応性であるが、pH8未満での脂肪族アミンの遊離形態の塩基の濃度は非常に低い。従って、アミンとイソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、及び他のアシル化剤との反応はpH依存性である。8.5から9.5のpHは、リシン残基の修飾に通常好ましい。一方、中性に近いpHは、N−末端アミノ基の修飾に好ましい(pKa〜7)が、約pH8.5をかなり超えると、水の存在下ではアシル化試薬の分解が起こる。スクシンイミジルエステルによるタンパク質修飾は、典型的にはpH8.5で行うことができ、一方、イソチオシアネートは、最適条件のためには通常pH>9を必要とする。
【0173】
芳香族アミンは、典型的に非常に弱い塩基であり、pH7でプロトン化しなく、芳香族アミンの改変は、さらに反応性の標識試薬、例えばイソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルクロリド又は酸ハライド、又はpH≧4を必要としよう。アシル化試薬は、水性媒体中において、グルタミン及びアスパラギン残基の側鎖アミド、アルギニンのグアニジニウム基、ヒスチジンのイミダゾリウム基、及び非塩基性アミン、例えば、アデノシン又はグアノシン(例えば、核酸中の)とほとんど反応しない。
【0174】
チオール基の反応性。チオール(又はメルカプタン又はスルフヒドリル)は、天然状態中に、又はジチオスレイトール又はメルカプトエタノールを用いたシステインジスルフィドの還元において、システインを含むタンパク質中によく見られる。このようなジスルフィド還元試薬は、チオール反応性の標識試薬との反応前に除去されるべきであり、チオールの空気酸化から保護されたサンプルはジスルフィドに戻る。チオール反応性の官能基としては、アルキル化試薬、例えば、ヨードアセトアミド、マレイミド、及びブロモメチルケトンが挙げられ、これらの試薬とチオールとの反応は、通常、生理学的pH範囲(pH6.5から8.0)において室温以下で迅速に起こり、化学的に安定なチオエーテルを生じる。チオールはさらに、イソチオシアネート及びスクシンイミジルエステルを含むアミン反応性試薬と反応するが、最初の生成物は通常は不安定である。
【0175】
ヒドロキシ基の反応性。タンパク質(例えば、セリン、スレオニン、及びチロシン)、ステロール、及び炭水化物中のアルコールは、生体分子中に豊富であるが、水性媒体中では反応しない。ある種のアルコールは、酸化(例えば過ヨウ素酸塩を用いて)されてアミン又はヒドラジン標識試薬により容易に修飾されるアルデヒドになる。
【実施例】
【0176】
当業者は、過剰なルーチン実験を用いずに、本明細書中に記載される特定の手順、実施態様、特許請求の範囲、及び実施例の多くの等価体を認識するか、又は把握することができる。このような等価体は、本発明の範囲内であるとみなされ、添付の特許請求の範囲によってカバーされる。本明細書全体で引用される全ての参考文献、登録特許、及び公開された特許出願の内容は、本明細書中に参照により組込まれる。本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらはさらなる限定とみなされるべきではない。
【0177】
上にさらに充分に説明されたように、低分子(m/Z<600Da)の被分析物の定性及び定量MALDI−MS分析は、課題があるままである。低分子を分析する目的で、大量に荷電されたタグと誘導体化合物との単純で有効なカップリング反応を開発した。軽い同位体及び重い同位体の標識試薬(式XX、ここで、R=−OC及び−OC)の対を、各誘導体についてそれぞれ573及び500Daを加えて、開発した。原則的に、メトキシ炭素原子の同位体標識も可能である。種々の低分子被分析物を標識し、低フェトモル範囲でMALDI−MSによって分析した。タグ化被分析物は、マトリックス及び反応混合物のクリーンアップなしで検出し、低分子、アミノ酸、合成ペプチド、刺激物(すなわち、アムフェタミン、メタムフェタミン、及びペンテルミン)及び他の化合物(添付の図面を参照)の系統だった定量分析を可能にした。
【0178】
【化45】

【0179】
方法及び装置:トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスホニウム酢酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(TMPP−Ac−OSu、式XX)を、ペプチド配列決定に使用した。Watsonら,Anal.Biochem.268,305−17(1999)。本発明は、重水素化TMPP−Ac−OSu(d27)標識試薬を開示し、ここで、各メトキシ基は重水素化されている(R=C)。固定された正電荷を含有する活性化されたエステルTMPP−Ac−OSu、及び重水素化TMPP−Ac−OSu(d27)を白色結晶性粉末として調製し、H、13C、31P NMR、ESI−MS、及びMALDI−MSによって特徴決定した。標識試薬の無水アセトニトリル溶液(10nmol/μL)を、感知できるほどの分解もなく、室温で数ヶ月、デシケーター中で保存した。
【0180】
【化46】

【0181】
種々の低分子一級アミン及び二級アミン、アミノ酸、合成ペプチド、及び制御された物質(例えば、アムフェタミン、メタムフェタミン及びペンテルミン)を試験した。トリエチルアンモニウムビカーボネートバッファ中の100から0.1pmol/μLの範囲の被分析物を、同じ条件下で誘導体化し、MALDI−MSによって首尾よく分析した。被分析物(例えば、アミノメチルナフタレン)を20%CHCNを含むトリエチルアンモニウムビカーボネートバッファに溶解した。TMPP−Ac−OSuストック溶液を無水CHCNを用いて調製した(10nmol/μL)。プラスチック管中で被分析物180μLと標識試薬20μLとを約10秒間攪拌することによって、典型的な標識反応を行い、室温で約30分インキュベートした後、10%TFA(50/50%CHCN/EtOH)を添加し、例えば、式XXにおけるような標識されたアミノメチルナフタレンを得た。
【0182】
【化47】

【0183】
20から100mMの濃度を有するトリエチルアンモニウムビカーボネートバッファは、本適用において使用するのに許容し得た。3から10モル過剰の標識試薬は、約30分以内にカップリング反応を完了させるのに十分であった。反応混合物は、MALDI−MS分析と適合性であり、標識された被分析物は、10,000倍過剰の試薬が使用された場合であっても、反応混合物のクリーンアップなしに直接的に分析することができた。TMPP−Acタグ化分子の適合性のさらなる証拠が、マトリックスをもちいることのない直接的なLDI−MS分析からも観察された。反応混合物は、レーザー分離イオン化マススペクトロメトリー(IDI−MS)のためのステンレススチールプレート上に置かれた(1μL)。MALDI−MSのために、反応混合物10μL及びマトリックス30μL(50/50%CHCN/EtOH中の10mg/mLのシアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)を混合し、この1μLを、MS分析のためにプレート上に置いた。
【0184】
覚醒剤の定量的分析のために、TMPP−Ac−OSu(d27)を標準溶液とあわせ、TMPP−Ac−OSuを覚醒剤を入れた溶液と反応させた。次いで、2つの等量の溶液を混合し、この1μLをMALDI−MSで分析した。TMPP−Ac標識された被分析物を1フェトモルの低いレベルでMALDI−MSによって検出した。TMPP−Ac−標識された覚醒剤を、軽い化合物及び重い化合物の両方のピーク強度と比較することによって、定量的に分析した。
【0185】
【化48】

【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1A】図1は、CIDスペクトルを示す。図1Aは、1個の電荷を有するペプチドGMDSLAFSGGLのCIDスペクトル(m/Z 1053.5)を示す。図1Bは、TMPP−Ac誘導体のCIDスペクトルを示す(m/Z 1626.5)。この結果は、ペプチドのMSシーケンスにおける本発明のTMPP−Ac−OSu標識試薬の有用性を示す。「A Picomole−Scale Method for Charge Derivatization of Peptides for Sequence Analysis by Mass Spectrometry」,Watsonら,Anal.Chem.69,137−44(1997);「Charge Derivatization of Peptides to Simplify Their Sequencing with an Ion Trap Mass Spectrometer」,Adamczykら,Rapid Commun.Mass Spectrom.13,1413−22(1999)を参照。標識試薬は、ここにおいて配列の効力範囲(直接的なフラグメント化)及びイオン化効率(固定された電荷)を増すために使用し得る。
【図1B】図1は、CIDスペクトルを示す。図1Aは、1個の電荷を有するペプチドGMDSLAFSGGLのCIDスペクトル(m/Z 1053.5)を示す。図1Bは、TMPP−Ac誘導体のCIDスペクトルを示す(m/Z 1626.5)。この結果は、ペプチドのMSシーケンスにおける本発明のTMPP−Ac−OSu標識試薬の有用性を示す。「A Picomole−Scale Method for Charge Derivatization of Peptides for Sequence Analysis by Mass Spectrometry」,Watsonら,Anal.Chem.69,137−44(1997);「Charge Derivatization of Peptides to Simplify Their Sequencing with an Ion Trap Mass Spectrometer」,Adamczykら,Rapid Commun.Mass Spectrom.13,1413−22(1999)を参照。標識試薬は、ここにおいて配列の効力範囲(直接的なフラグメント化)及びイオン化効率(固定された電荷)を増すために使用し得る。
【図2】図2は、トリプシン消化の直接的な誘導体化の結果の概要である(Hviangら,Anal.Biochem.268,305(1999))。本発明の方法及び試薬は、トリプシン消化の配列決定を容易にし得る。例えば、「Protein Sequencing by MALDI−PSD−MS Analysis of the N−tris(2,4,6−trimethoxyphenyl)phosphine−Acetylated Tryptic Digests」,J.T.Watson,Anal.Biochem.268,305−17(1999)((β−Endorpnin,Human GIP,Bovine GHRF,Cytochrome C,Myoglobin,Rabbit G−3PD,BSA,Phosphorylase b,E.Coli,and β−galactosidase);及び「Complete Sequencing of Anti−vancomycin Fab Fragment by Liquid Chromatography−Electrospray Ion Trap Mass Specrometry with a Combination of Database Searching and Manual Interpretation of the MS/MS Spectra」,J.C.Gebler,J.humunol.Methods 260,235−49(2002)を参照。図2は、ペプチドの高い配列効力範囲及び直接的な配列決定に対する本発明の適用を示す。疎水性ペプチドの増加した配列効力範囲、増加したイオン化、及び単純化したサンプル調製(脱塩は必要ではない)は、本発明の有利な特徴である。固定された電荷を有するTMPP誘導体化された分子はさらに、より高いイオン収率のために、質量分析のための改良された有効性を示し、検出感度の増加をもたらす。
【図3】図3は、実施例において議論される標識反応の生成物のMALDIマススペクトルを示す。
【図4】図4は、TMPP標識されたナフタレンメチルアミンのマススペクトルである(200fmol、マトリックスなし)。
【図5】図5は、以下の混合物の誘導体化反応を示す:2nmole/μL L−アラニル−L−アラニン、L−カルノシン、L−システイン、L−アスパラギン、L−ナフタレンメチルアミン(80%/20%の50mMトリエチルアンモニウムビカーボネート/CHCN中)20μL及び130nmole/μL TMPP−Ac−OSu(CHCN中)2μLを混合し、50℃で90分放置し、次いで、0.1%TFA水溶液1.2mLを添加した。次いで、この反応混合物5μLを10μLマトリックス(10mg/mLのCHCA)と混合し、この1μLで標準的なMALDIプレートにスポット形成し、MALDI−MSで分析した。標的分子約10pmoleをこのプレートにスポット形成した。サンプルを洗浄することも脱塩することも必要ではなかった。
【図6】図6は、図5において記載されたサンプル10pmoleのMALDIマススペクトルである。
【図7A】図7Aは、標識されていない化合物のMALDIマススペクトルの比較である(図7A−フルレンジ)。
【図7B】図7Bは、標識した化合物のMALDIマススペクトルの比較である(図7B−フルレンジ)。
【図8】図8は、標識した化合物のMALDIマススペクトルの比較である(ズーム)。
【図9】図9は、誘導体化された混合物100fmolのマススペクトルである。この図は、本方法の感度を示す。
【図10】図10は、マトリックスなしの混合物の誘導体化のマススペクトルである。
【図11】図11は、疎水性ペプチドのイオン化に対するTMPPラベルの肯定的効果を示す。
【図12A】図12A及び12Bは、トリプシン消化Cytochrome C(トリエチルアンモニウムビカーボネート20mM中)81pmole/μLの400μL及びTMPP−Ac−OSu 33.8nmole/μL(CHsCN中)の100μLを混合し、混合物を室温で3時間放置し、次いで、この反応混合物10μLと0.1%TFA水溶液990μLとを混合し、この2μLをMassPrep Target Plate上にスポット形成し、乾燥することによって調製した、Cytochrome Cトリプシン消化物200fmolのマススペクトルを示す。ペプチドについての配列効力範囲の比較を誘導体化されていない(図12A)サンプルを用いて同定した。誘導体化されていないサンプル=GDVEKGKKI−FVQKCAQCHTVEKGGKHKTGPNLHGLFGRKTGQAPGFTYTDANKNKGITWKEETL−MEYLENPKKYIPGTKMIFAGIKKKTEREDLIAYLKKATNE(効力範囲:54/104=52%)。
【図12B】図12Aおよび図12Bは、トリプシン消化Cytochrome C(トリエチルアンモニウムビカーボネート20mM中)81pmole/μLの400μL及びTMPP−Ac−OSu 33.8nmole/μL(CHsCN中)の100μLを混合し、混合物を室温で3時間放置し、次いで、この反応混合物10μLと0.1%TFA水溶液990μLとを混合し、この2μLをMassPrep Target Plate上にスポット形成し、乾燥することによって調製した、Cytochrome Cトリプシン消化物200fmolのマススペクトルを示す。ペプチドについての配列効力範囲の比較を誘導体化された(図12B)サンプルを用いて同定した。誘導体化されたサンプル=GDVEKGKKIFVQKCAQCHTVEKGGKHKT−GPNLHGLFGRKTGQAPGFTYTDANKNKGITWKEETLMEYLENPKKYIPGTKMI−FAGIKKKTEREDLIAYLKKATNE(配列効力範囲:81/104=79%)。
【図13】図13は、以下に議論されるいくつかのアミンの構造を示す。
【図14】図14は、図13の誘導体化されていないアミン(2pmole)のMALDIマススペクトルである。
【図15A】図15Aは、異なるpH値で誘導体化された6アミンの比較である。
【図15B】図15Bは、異なるpH値で誘導体化された6アミンの比較である。
【図16】図16は、種々のアミンの標識反応のpH試験の結果である。
【図17】図17は、種々のアミンの標識反応のpH試験の結果である。
【図18A】図18Aは、MALDIマススペクトルにおけるいくつかの特徴的なピークを示す。
【図18B】図18Bは、MALDIマススペクトルにおけるいくつかの特徴的なピークを示す。
【図19】図19は、いくつかの抗生物質の標識反応を示す。
【図20】図20は、抗生物質の定量分析において使用される典型的なマススペクトルを示す。
【図21】図21は、抗生物質のMSデータの較正曲線である。
【図22】図22は、図19における標識反応の変換比の試験の結果を示す。
【図23】図23は、図19における標識反応の変換比の試験の結果を示す。
【図24A】図24Aは、MALDI方法の非常に低い検出限界を示す。
【図24B】図24Bは、MALDI方法の非常に低い検出限界を示す。
【図25A】図25Aは、ウシ腎臓抽出刺激における抗生物質の試験の結果を示す。簡単に言うと、新鮮なウシ腎臓1グラム及びEtOH(2%CHCOOHを含む)10mLをプラスチック管に入れ、粉砕し、遠心分離にかけて沈殿物を除去した。この溶液を新しい管に移し、50mMトリエチルアンモニウムビカーボネート溶液30mlを添加した。腎臓抽出物2mLと50mMトリエチルアンモニウムビカーボネート溶液10mLとを混合することによってブランクの腎臓抽出コントロールを調製した。ノルフロキサシン59pmole/μL、シプロフロキサシン97.5pmole/μL、及びロメフロキサシン108.3pmole/μLを添加することによって、薬物添加腎臓抽出物を調製した。結果は、低フェトモルからピコモル濃度までの範囲の望ましい較正曲線により、MALDI−MSによる抗生物質の定量分析を示した(30フェトモル以下での検出を含む)。
【図25B】図25Bは、ウシ腎臓抽出刺激における抗生物質の試験の結果を示す。簡単に言うと、新鮮なウシ腎臓1グラム及びEtOH(2%CHCOOHを含む)10mLをプラスチック管に入れ、粉砕し、遠心分離にかけて沈殿物を除去した。この溶液を新しい管に移し、50mMトリエチルアンモニウムビカーボネート溶液30mlを添加した。腎臓抽出物2mLと50mMトリエチルアンモニウムビカーボネート溶液10mL とを混合することによってブランクの腎臓抽出コントロールを調製した。ノルフロキサシン59pmole/μL、シプロフロキサシン97.5pmole/μL、及びロメフロキサシン108.3pmole/μLを添加することによって、薬物添加腎臓抽出物を調製した。結果は、低フェトモルからピコモル濃度までの範囲の望ましい較正曲線により、MALDI−MSによる抗生物質の定量分析を示した(30フェトモル以下での検出を含む)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被分析物(前記被分析物は露出した基を含む。)を含むサンプルを得る工程;及び
(b)前記被分析物を、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによって前記被分析物が標識試薬のトリアリールホスホニウム基に結合する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の標識試薬と反応させる工程
を含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法。
【請求項2】
(a)反応基を有するトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程;
(b)露出した基を含有し、前記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる被分析物を含有するサンプルを得る工程;及び
(c)前記標識試薬を前記被分析物と反応させて、前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる、工程
を含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法。
【請求項3】
前記標識試薬が、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)被分析物(前記被分析物は露出した基を含む。)を含むサンプルを得る工程;及び
(b)前記被分析物を、下式
[ArR]X
及び
[ArR]X
〔式中、
各Ar及びArはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、ArPの分子量はArPの分子量とは異なっており;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の少なくとも2つの標識試薬と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程
を含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法。
【請求項5】
(a)それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬(前記標識試薬の反応基は全て同じであり、前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量が互いに異なっている。)を得る工程;
(b)被分析物(前記被分析物は、露出した基を含有し、前記露出した基は、前記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;及び
(c)前記標識試薬を前記被分析物と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程
を含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法。
【請求項6】
前記トリアリールホスホニウム基の分子量における違いがマススペクトロメトリーで識別可能である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物の分子量における違いがマススペクトロメトリーで識別可能である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
(a)被分析物(前記被分析物は露出した基を含む。)を含むサンプルを得る工程;及び
(b)前記被分析物を、下式
[ArR]X
[ArR]X
[Ar**R]X
〔式中、
各Ar基(すなわち、Ar、Ar、及びAr**等)はアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、各標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は固有であり;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の少なくとも2つの標識試薬と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程
を含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルを調製する方法。
【請求項9】
(a)被分析物(前記被分析物は露出した基を含む。)を含むサンプルを得る工程;及び
(b)前記被分析物を、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の標識試薬と反応させることによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び
(c)前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリーによって分析する工程
を含む、サンプルを分析する方法。
【請求項10】
(a)反応基を有するトリアリールホスホニウム標識試薬を得る工程;
(b)被分析物(前記被分析物は、露出した基を含有し、前記露出した基は、前記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;
(c)前記標識試薬を前記被分析物と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる、工程;及び
(d)前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリーによって分析する工程
を含む、サンプルを分析する方法。
【請求項11】
前記標識試薬が、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)被分析物(前記被分析物は露出した基を含む。)を含むサンプルを得る工程;及び
(b)前記被分析物を、下式
[ArR]X
及び
[ArR]X
〔式中、
各Ar及びArはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、ArPの分子量はArPの分子量とは異なっており;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の少なくとも2つの標識試薬と前記被分析物と反応させる工程;及び
(c)前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する工程
を含む、サンプルを分析する方法。
【請求項13】
(a)それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬(前記標識試薬の反応基は全て同じであり、前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は互いに異なっている。)を得る工程;
(b)被分析物(前記被分析物は、露出した基を含有し、前記露出した基は、前記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;及び
(c)前記標識試薬を前記被分析物と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物が形成させる工程;及び
(d)前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する工程
を含む、サンプルを分析する方法。
【請求項14】
前記各標識試薬が、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく、各標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は固有であり;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マススペクトロメトリー技術が、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化マススペクトロメトリー又はエレクトロスプレーマススペクトロメトリーである、請求項1から14に記載のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記技術が定量的である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)それぞれ反応基を有する少なくとも2つのトリアリールホスホニウム標識試薬(前記標識試薬の反応基は全て同じであり、前記標識試薬のトリアリールホスホニウム基の分子量は互いに異なっている。)を得る工程;
(b)被分析物(前記被分析物は、露出した基を含有し、前記露出した基は、前記反応基と反応してトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成することができる。)を含有するサンプルを得る工程;及び
(c)第1容器中で、第1標識試薬を前記サンプルの第1部分と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び
(d)第2容器中で、第2標識試薬を前記サンプルの第2部分と反応させて前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成させる工程;及び
(e)前記第1容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物と前記第2容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物とを併せて混合物を形成する工程;及び
(f)前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物をマススペクトロメトリー技術によって分析する工程
を含む、サンプルを分析する方法。
【請求項18】
前記第1容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を前記第2容器からのトリアリールホスホニウムに結合した被分析物に対して定量的に比較する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記定量的な比較が、トリアリールホスホニウムに結合した被分析物の相対量と相関関係にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルの第2部分に対する前記サンプルの前記第1部分の比率が予め決定され、明確である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記比率が、前記トリアリールホスホニウムに結合した被分析物のMSシグナルに対して相関関係にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1標識試薬で標識された被分析物のシグナルと、前記第2標識試薬で標識された同じ被分析物のシグナルにおける違いが、前記混合物中のこれらの濃度の違いに対して直線的に関連する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
各Ar基が、置換又は非置換のアリール基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
各Ar基が、置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
各Ar基が、置換又は非置換の芳香族炭化水素からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
各Ar基が、置換又は非置換の、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、及び6−キノリル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
各Ar基が、置換又は非置換の5−及び6−員環単環基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
各Ar基が、置換又は非置換の、フェニル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びピリミジニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
各Ar基が、置換又は非置換の多環式アリール基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
各Ar基が、置換又は非置換の、ナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、インドリル、ベンゾフラニル、プリニル、デアザプリニル、及びインドリジニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
2つのAr基が一緒になって1つの二価芳香族基を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記二価芳香族基が、置換又は非置換の1,1’−ビナフタ−2,2’−ジイル、フェニレン、及びキシリレン基からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
各Ar基が、非置換フェニル、非置換ナフチル、非置換インデニル、非置換アントラセニル、置換フェニル、置換ナフチル、置換インデニル、及び置換アントラセニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記置換基がアルキル又はアルコキシ基である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記置換基が、ハロゲン;C−Cアルキル基;(C−Cアルコキシ)−置換C−Cアルキル基;C−Cアルコキシ基;C−Cアルキルチオ基;C−Cアルカノイル基;C−Cアルカノイルオキシ基;及びC−Cアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記置換基が、C−Cアルキル基又はC−Cアルキルアルコキシ基である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ArP基が、置換又は非置換の、トリフェニルホスフィン、ナフチルジフェニルホスフィン、ジナフチルフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、9−アントリルジフェニルホスフィン、9−アントリルジナフチルホスフィン、ジフェニルピレニルホスフィン、ジナフチルピレニルホスフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記ナフチルが1−ナフチル又は2−ナフチルである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記置換基が、ハロゲン;C−Cアルキル基;(C−Cアルコキシ)−置換C−Cアルキル基;C−Cアルコキシ基;C−Cアルキルチオ基;C−Cアルカノイル基;C−Cアルカノイルオキシ基;及びC−Cアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記置換トリフェニルホスフィンがトリ(p−メトキシフェニル)ホスフィンである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記標識試薬が下式
【化1】

〔式中、
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
a、b、及びcは独立して0から5の整数であり;
、Y、及びYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルホヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、但し、前記Y基はいずれも前記R基と反応しなく;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記標識試薬が下式
【化2】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
、Y、及びYが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、及びヘプチルオキシからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記標識試薬が下式
【化3】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記標識試薬が下式
【化4】

〔式中、
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;
nは0から5の整数であり;
Yは、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、前記Y基はいずれも前記R基と反応しなく;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
、Y、及びYが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、及びヘプチルオキシからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記標識試薬が下式
【化5】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記トリアリールホスホニウム標識試薬がそれぞれ同じ化学構造を有し、各トリアリールホスホニウム標識試薬は、他のトリアリールホスホニウム標識試薬と比較して、同位体が豊富である、請求項2に記載の方法。
【請求項49】
トリアリールホスホニウム標識が、12C、12C、H、又はHの同位体が豊富である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
、Y、及びYが、O12、O12、O13、及びO13からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記被分析物の露出した基が求電子性であり、前記反応性官能基が求核性である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記被分析物の露出した基が求核性であり、前記反応性官能基が求電子性である、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記被分析物の露出した基がアミンであり、前記反応基がイソチオシアナート、スクシンイミジルエステル、又はアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記被分析物の露出した基がアルコール又はチオールであり、前記反応基がアルキル化する基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記アルキル化する基が、ヨードアセトアミド、マレイミド、又はハロゲン化アルキルである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記Xが、ハライド、トリフレート、サルフェート、ニトレート、ヒドロキシド、カーボネート、ビカーボネート、アセテート、ホスフェート、オギザレート、シアニド、アルキルカルボキシレート、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、アルコキシド、チオアルコキシド、アルカンスルホニルオキシ、ハロゲン化アルカンスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、ビサルフェート、オギザレート、バレレート、オレエート、パルミテート、ステアレート、ラウレート、ボレート、ベンゾエート、ラクテート、シトレート、マレエート、フマレート、スクシネート、タートレート、ナフチルレートメシレート、グルコヘプトネート、又はラクトビオネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
がアニオン性Y基であり、前記標識試薬が両性イオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも2つの異なる標識試薬を含み、それぞれの標識試薬は、下式
[ArR]X
〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の異なる分子量を有する、組成物。
【請求項59】
少なくとも2つの異なる標識試薬を含み、それぞれの標識試薬は、下式
【化6】

〔式中、
Pはリン原子であり;
Rは、反応基(前記反応基は、前記露出した官能基と反応して共有結合を形成し、これによってトリアリールホスホニウムに結合した被分析物を形成する官能基を含む。)であり;
a、b、及びcは独立して0から5の整数であり;
、Y、及びYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ;スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロイル基からなる群から選択され、但し、前記Y基はいずれも前記R基と反応しなく;及び
は負に荷電した対イオンである。〕
の異なる分子量を有する、組成物。
【請求項60】
各標識試薬が同じ化学構造を有し、各標識試薬は他のトリアリールホスホニウム標識試薬と比較して同位体が豊富である、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
標識試薬が、12C、12C、H、又はHの同位体が豊富である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
、Y、及びYが、O12、O12、O13、及びO13からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記標識試薬が以下の構造:
【化7】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項64】
前記標識試薬が以下の構造:
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記標識試薬が以下の構造:
【化8】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基であり;及び
Ψは反応性官能基である
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記反応性官能基が式−COL(Lは脱離基である。)の活性化エステルである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
LがN−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、N−ヒドロキシスクシンイミジル、又は置換アリールオキシ基である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記標識試薬が以下の構造:
【化9】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基であり;及び
Ψは反応性官能基である。〕
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項69】
前記アリール基が、置換されていないか、又はハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C−Cアルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、C−Cアルキルカルボニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリル、アラルキル、及び芳香族及びヘテロ芳香族基からなる群から選択される置換基で置換されている、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記基が、カルボン酸、カルボン酸の誘導体、又はカルボン酸の活性化エステルである、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記Ψ基が、ハロアルキル、ハロアセトアミド、ハロメチルベンズアミド、マレイミド基、又はスルホネートエステルであり、前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルスルホン酸、又はアリールスルホン酸である、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記Ψ基が、ヨードアセトアミド、マレイミド、又はハロメチルベンズアミドである、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記Ψ基が、イソシアネート又はアシルニトリルである、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記Ψ基が、カルボン酸、カルボン酸の活性化エステル、アシルアジド、アシルハライド、対称又は非対称酸無水物、アクリルアミド、アルコール、チオール、アルデヒド、アミン、アジド、イミドエステル、スルホネートエステル、ハロアセトアミド、アルキルハライド、スルホニルハライド、ヒドラジン、イソチアネート、イソチオシアネート、又はマレイミド基である、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記Ψ基が、カルボン酸、スクシンイミジルエステル、アミン、ハロアセトアミド、アルキルハライド、スルホニルハライド、イソチオシアネート、又はマレイミド基である、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記Ψ基がスクシンイミジルエステルである、請求項65に記載の方法。
【請求項77】
前記Ψ基が、アシルアジド、アシルニトリル、アルデヒド、アルキルハライド、アミン、酸無水物、アニリン、アリールハライド、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、スルホニルハライド、又はチオール基である、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記標識試薬が以下の構造:
【化10】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Rは結合基であり;及び
Xは脱離基であり;及び
Lは脱離基である。〕
を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
Zが、C、N、O及びSからなる群から選択される1から20個の水素ではない原子を有し、最も長い直鎖セグメントが1から6個の水素ではない原子を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
Zが1個のメチレン基である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
Zが式−(CR’R”−のポリメチレンであり、nが1から10であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、又はアリール基である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
Zが式−(CH)(CR’R”−のポリメチレンであり、nが1から9であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、又はアリール基である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記被分析物が、タンパク質、ペプチド、酵素、免疫グロブリン、ハプテン、抗原、アミノ酸、ホルモン、レセプター、核酸、ホルモン、化学物質、ポリマー、病原体、毒素、糖類又は多糖類、ステロイド、ビタミン、治療薬物、乱用薬物、細菌又はウイルス、上述のいずれかの組み合わせ又はフラグメント、又はこれらの代謝物、又はこれらに対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項84】
前記被分析物が、食物添加物、農薬、界面活性剤、接着剤、樹脂、有機汚染物質、又はプロセス薬品である、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
前記被分析物が治療薬物又はこれらの代謝物である、請求項1に記載の方法。
【請求項86】
前記被分析物が乱用薬物又はこれらの代謝物である、請求項1に記載の方法。
【請求項87】
前記サンプルが、雨水、又は海洋、河川、湖、池、又は小川からの水である、請求項1に記載の方法。
【請求項88】
前記サンプルが生体組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項89】
前記サンプルが、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、腹水液、汗、リンパ液、又は他の体液である、請求項1に記載の方法。
【請求項90】
請求項1の標識試薬と、本発明の方法において使用するための使用説明書とを含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルの調製において使用するためのキット。
【請求項91】
請求項1の標識試薬と、バッファ化学物質とを含む、マススペクトロメトリー分析のためのサンプルの調製において使用するためのキット。
【請求項92】
酸、塩基、緩衝薬剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、防腐剤、金属キレート化剤、これらの水溶液又は有機溶液をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項93】
【化11】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基であり;及び
Xは結合基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。
【請求項94】
【化12】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。
【請求項95】
【化13】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。
【請求項96】
【化14】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基であり;
Lは脱離基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。
【請求項97】
【化15】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基であり;
Xは脱離基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。
【請求項98】
【化16】

〔式中、
各Arはアリール基であり、これら全ては同じであっても異なっていてもよく;
Pはリン原子であり;
Zは結合基である。〕
からなる群から選択される構造を有する標識試薬。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【公表番号】特表2006−523845(P2006−523845A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510002(P2006−510002)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/011426
【国際公開番号】WO2004/092707
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】