説明

芳香族化合物を製造するための統合法

−C脂肪族炭化水素を、キシレン回収ゾーン(55)の異性化ユニット(51)にリサイクルして、異性化ユニット(51)の効率を上げる芳香族複雑系流動スキームを開発した。この改良により、資本および運転コストが節約される芳香族複雑系が得られ、投資に対するリターンが増える。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
[0001]
本発明は、ナフサを、ベンゼン、トルエンおよびキシレンという基本的な石油化学中間物へと転化させるために使用できるプロセスユニットの組み合わせである芳香族複雑系流動スキームに関するものである。未抽出のトルエンおよびより重質の芳香族を処理する金属触媒アルキル交換法とオレフィン飽和プロセスとに基づいて、改良流動スキームによって、装置および処理工程のアイテム、例えばデヘプタナイザー塔(deheptanizer column)が省略されるので、パラキシレンを製造するときに有意な経済的利益が得られる。更に、改良流動スキームによって、CおよびC脂肪族炭化水素富化流を加えることによって異性化ユニットの効率が改善される。
【0002】
[0002]
大部分の新しい芳香族複雑系は、ベンゼンおよびパラキシレンの収率を最大にするように設計される。ベンゼンは、ベンゼンの誘導に基づく多くの異なる生成物(エチルベンゼン、クメン、およびシクロヘキサンを含む)で用いられる用途の広い石油化学的構成単位である。パラキシレンも、重要な構成単位であって、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル中間物を経て形成されるポリエステルの繊維、樹脂およびフィルムを製造するためにもっぱら使用される。而して、芳香族複雑系は、所望の生成物、利用可能な供給原料および利用可能な投資資本に従って多くの異なる方法で構成できる。広範囲のオプションにより、ベンゼンとパラキシレンの生成物スレートバランス(product slatebalance)を変えるときに柔軟性が得られ、下流の処理要求条件を満足させることができる。
【0003】
[0003]
Meyersは、McGraw−Hillから出版されているHandbook ofPetroleum Refining Processes,2d.Edition において、従来技術の芳香族複雑系流動スキームを開示した。
【0004】
[0004]
Bergerに与えられた米国特許第3,996,305号では、ベンゼンおよびキシレンを製造するためのトルエンおよびCアルキル芳香族のアルキル交換に主として関する分別スキームが開示されている。アルキル交換法は、芳香族抽出法とも組み合わせられる。分別スキームは、統合的な経済的利益のために、塔に2つの流れが入り、そして塔から3つの流れが出る単塔を含む。
【0005】
[0005]
Bergerに与えられた米国特許第4,341,914号では、プロセスから得られるキシレンの収率を上げるためのC10アルキル芳香族のリサイクルを伴うアルキル交換法が開示されている。アルキル交換法は、好ましくは、パラキシレン分離ゾーンと、アルキル交換ゾーン供給原料からの混合キシレンを受容する連続ループとして運転されるキシレン異性化ゾーンと、そして流出物分別ゾーンとも統合される。
【0006】
[0006]
Schmidtに与えられた米国特許第4,642,406号では、非金属触媒を使用し、異性化ゾーンとしても同時に機能するアルキル交換ゾーンを用いるキシレン製造のための高度に過酷な方法が開示されている。高品質ベンゼンは、キシレンの混合物と一緒に製造され、パラキシレンは、その混合物から吸収分離によって分離することができ、そして、異性体が減少した流れはアルキル交換ゾーンへと戻される。
【0007】
[0007]
Boitiauxらに与えられた米国特許第5,417,844号には、ニッケル触媒の存在下で、石油を水蒸気分解するときに、オレフィンを選択的に脱水素する方法が開示されており、そしてその方法の特徴は、触媒を使用する前に、硫黄含有有機化合物を、使用前の反応器外で触媒に組み込む点にある。
【0008】
[0008]
Russらに与えられた米国特許第5,658,453号では、統合された改質およびオレフィン飽和のプロセスが開示されている。オレフィン飽和反応は、混合気相を使用し、改質油液に水素ガスを添加し、好ましくは白金族金属および任意に金属変性剤を含む耐火性無機酸化物と接触させる。
【0009】
[0009]
Buchananらに与えられた米国特許第5,763,720号では、ZSM−12のようなゼオライトと白金のような水素化貴金属とを含む触媒上で、C+アルキル芳香族をベンゼンおよび/またはトルエンと接触させることによって、ベンゼンとキシレンを製造するためのアルキル交換法が開示されている。硫黄または流れを使用して触媒を処理する。
【0010】
[0010]
Ichioka らに与えられた米国特許第5,847,256号では、好ましくはモルデン沸石であるゼオライトと好ましくはレニウムである金属とを有する触媒を使用して、Cアルキル芳香族を含む供給原料からキシレンを製造するための方法が開示されている。
【0011】
[0011]
米国特許第6,740,788号では、従来の複雑系と比較して、装置および処理工程のアイテム、例えば改質油スプリッター塔および重質芳香族塔が除いてある芳香族複雑系流動スキームが開示されている。
【0012】
[0012]
本発明は、キシレン回収セクションにある従来のデヘプタナイザー塔を省くことができるように配置され且つ運転される芳香族複雑系流動スキームを提供する。本発明によって、資本コストは低減され、運転コストは低減され、そして、C芳香族の収率が改善される。更に、CおよびC脂肪族炭化水素富化流を加えることにより、異性化ユニットの効率が増す。
【0013】
発明の概要
[0013]
およびより軽質の炭化水素およびガスを実質的に含んでいない塔頂留出物においてトルエンおよびより軽質の材料が除去されるように運転され、且つ、全ての異性化ユニット流出物を、デヘプタナイザー塔に流さずに、改質油スプリッターへとリサイクルすることができる、改質油スプリッター分別ゾーンを有する芳香族複雑系流動スキーム。CおよびC脂肪族炭化水素富化流を異性化ユニットへ導入することにより、より効率的に且つより低い温度で前記ユニットを運転することが可能となる。いくつかの脂肪族炭化水素は、より軽質の脂肪族炭化水素および芳香族へと転化され、それにより、プロセスの全収率は増加する。C脂肪族炭化水素は、改質油スプリッター分別ゾーンで除去されるので、キシレン回収ゾーンに蓄積しない。本発明の別の実施態様は、ナフサをパラキシレンに効率的に転化させるプロセス工程をベースとする装置を含む。
【0014】
[0014]
図は、トルエンおよびより軽質の成分を含む塔頂留出物と、キシレンおよびより重質の成分とを含む塔底流を生成する改質油スプリッター分別ゾーンを運転することを含む、本発明の芳香族複雑系流動スキームを示している。改質油スプリッター分別ゾーン塔頂留出物から抽出蒸留によって分離されるCおよびC脂肪族炭化水素富化流は、異性化ユニットへとリサイクルされる。本発明の芳香族複雑系は、デヘプタナイザー塔を含まない。
【0015】
発明の詳細な説明
[0015]
本発明の芳香族複雑系への供給原料は、ナフサであってもよいが、パイガス(pygas)、輸入混合キシレンまたは輸入トルエンであることもできる。芳香族複雑系に供給するナフサは、まず最初に水素で処理して硫黄および窒素の化合物を0.5重量ppm未満まで除去し、次いで、その処理したナフサを改質ユニット13上へと通す。ナフサの水素処理は、ユニット11においてナフサ水素処理条件下でナフサ水素処理触媒とライン10のナフサを接触させることによって行われる。ナフサ水素処理触媒は、典型的には、酸化コバルトまたは酸化ニッケルの第一成分、更に酸化モリブデンまたは酸化タングステンの第二成分、そして典型的には高純度アルミナである第三成分の無機酸化物担体から成る。
一般的に、良好な結果は、酸化コバルトまたは酸化ニッケル成分が1〜5重量%および酸化モリブデン成分が6〜25重量%であるときに得られる。ナフサ水素処理触媒の組成を調整して全ての成分の合計が100重量%となるようにアルミナ(または酸化アルミニウム)を調整する。本発明に使用するための一つの水素処理触媒は、米国特許第5,723,710号で開示されており、前記特許の教示は参照により本明細書に引用したものとする。典型的な水素処理条件は、1.0〜5.0hr−1の液空間速度(LHSV)、炭化水素(またはナフサ供給原料)に対する水素の割合50〜135Nm/m、そして10〜35kg/cmの圧力を含む。
【0016】
[0016]
改質ユニット13では、パラフィンおよびナフテンを芳香族へと転化させる。このユニットは、実際に芳香環を作り出す複雑系における唯一のユニットである。複雑系における他のユニットは、様々な芳香族成分を個々の生成物に分離し、そして、様々な芳香族種をより高い価値の生成物へと転化させる。改質ユニット13は、通常は、芳香族の製造を最大にするために、リサーチ法オクタン価(RONC)100〜106のガソリン改質油を製造するのと等しい非常に高い過酷度で動作するように設計される。この高度に過酷な運転によって、改質油のC+フラクション中の非芳香族不純物は非常に少なくなり、且つ、CおよびC芳香族を抽出する必要性が排除される。
【0017】
[0017]
改質ユニット13では、ライン12からの水素処理されたナフサを、改質条件下で、改質触媒と接触させる。改質触媒は、典型的には、第一成分である白金族金属、第二成分である変性剤金属および典型的には高純度アルミナである第三成分の無機酸化物担体から成る。一般的に、良好な結果は、白金族金属が0.01〜2.0重量%および変性剤金属成分が0.01〜5重量%であるときに達成される。ナフサ水素処理触媒の組成のバランスをとるために、全ての成分の合計が100重量%となるようにアルミナが設定される。白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウムおよびイリジウムから選択する。好ましい白金族金属成分は、白金である。金属変性剤としては、レニウム、錫、ゲルマニウム、鉛、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明で使用するための一つの改質触媒は、米国特許第5,665,223号で開示されており、前記特許の教示は参照により本明細書に引用したものとする。典型的な改質条件は、1.0〜5.0hr−1の液空間速度、改質ゾーンに入る炭化水素供給原料1モルにつき1〜10モルの水素、および2.5〜35kg/cmの圧力を含む。改質ユニット13で製造される水素は、ライン14で前記ユニットから出る。脱ブタン塔は、改質ユニットの一部分であり、脱ブタン塔を動作させて、ガスと、Cおよびより軽質の炭化水素とを分離し且つ取り出す。
而して、改質油は、ガスと、Cおよびより軽質の炭化水素を実質的に含んでいない。「実質的に含んでいない」とは、本明細書では、ガスおよびCおよびより軽質の炭化水素を5質量%以下、好ましくは1質量%以下で含む流れと規定する。
【0018】
[0018]
任意のクレー処理器(clay treater)(図示せず)を使用して残留オレフィン汚染物質を処理することができる。粘土処理器では、オレフィンは、しばしばC11+へと重合され、そしてそれは、芳香族複雑系において、下流で取り出される。
【0019】
[0019]
ライン9における芳香族、非芳香族を含み且つガスとCおよびより軽質の炭化水素とを実質的に含んでいない改質油を、ライン18におけるエチルベンゼン脱アルキルおよび異性化ユニットの流出物と組み合わせ、次いでライン19を介して、改質油スプリッター分別ゾーン54に送る。改質油スプリッター分別ゾーン54は、一般的に、少なくとも一つの分別塔を含む。改質油スプリッター分別ゾーン54は、ライン21におけるトルエンおよびベンゼン、およびC、Cおよびより軽質の脂肪族炭化水素を含むトルエンおよびより軽質のフラクションと、ライン22におけるキシレン、より重質の芳香族およびCおよびより重質の脂肪族炭化水素を含むキシレン+富化フラクション(xylenes−plus−enriched fraction)とを製造する。改質油スプリッター分別ゾーン54の塔底からのライン22におけるキシレン+富化流は、芳香族複雑系のキシレン回収セクション55(下記)に送られる。
【0020】
[0020]
トルエンおよびより軽質の炭化水素を含むライン21は、塔底流29においてベンゼンおよびトルエン生成物流を製造する芳香族抽出ゾーンの主蒸留塔27へと送られ;ライン28における副生物ラフィネート流を廃棄し;そして、ライン61におけるC−C脂肪族流を製造する。べンゼンに比べてより軽質であるかまたはべンゼンと共沸する汚染物質を含むラフィネート流は、ガソリン中にブレンドすることができ、エチレンプラント用の供給原料として使用することができるか、または、改質ユニット13にリサイクルすることによって追加のベンゼンへと転化させることができる。液・液抽出または組み合わせされた液−液抽出/抽出蒸留法の代わりに抽出蒸留を使用すると、経済的な改善を得ることができる。しかしながら、液・液抽出法は、適当な代替法である。
【0021】
[0021]
抽出蒸留は、殆ど等しい揮発性を有し且つ殆ど同じ沸点を有する成分の混合物を分離する技術である。従来の分別蒸留によってこの種の混合物の成分を分離するのは難しい。抽出蒸留では、分離しようとする炭化水素含有流体混合物の入口より上において主蒸留塔中に溶媒を導入する。その溶媒は、蒸留によって様々な炭化水素含有流体成分の分離を容易にするのに充分なより低い温度で沸騰する炭化水素含有流体成分とは異なるより高い温度で沸騰する炭化水素含有流体成分の揮発性に影響を及ぼし、そして前記溶媒は塔底フラクションと一緒に出る。適当な溶媒としては、テトラヒドロチオフェン1,1−二酸化物(またはスルホラン)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはテトラエチレングリコールが挙げられる。非芳香族化合物を含むライン28におけるラフィネート流は、主蒸留塔の塔頂から出る。その一方で、溶媒およびベンゼンを含む塔底フラクションは下方へと出る。しばしば、ラフィネートは、洗浄塔(図示せず)へと送り、水のような洗浄流体と接触させて、あらゆる残留している溶解した溶媒を除去する。ライン61におけるサイドカットC−C脂肪族炭化水素流を、極微量溶剤除去ゾーン62に通して、残留溶解溶媒を取り出す。ライン63における実質的に溶媒を含んでいない流れを、以下で詳細に検討する異性化ユニット51に導入する。実質的に溶媒を含んでいない流れは、せいぜい10ppm以下、好ましくは1ppm以下の溶媒を含むのみである。本発明の一つの実施態様では、極微量溶剤除去ゾーン62は洗浄塔であり、また、本発明のもう一つ別の実施態様では、極微量溶剤除去ゾーン62は水洗浄塔である。
【0022】
[0022]
代替の実施態様では、抽出蒸留ゾーンは、2つ以上の塔、すなわち、上記したような主抽出蒸留塔および一つ以上の分別蒸留塔を含むことができる。この実施態様では、抽出蒸留塔からの塔頂留出物は、上記段落で記載した実施態様においてサイドカット流から取り出されたC−C脂肪族炭化水素を含む非芳香族炭化水素を含むだろう。溶剤除去ユニット(図示せず)を使用して、塔頂流に存在するあらゆる溶媒を分離およびリサイクルすることができる。次いで、分別蒸留塔(図示せず)を使用して、C−C脂肪族炭化水素の少なくともいくらかを他の非芳香族炭化水素から分離し、次いで、その分離されたC−C脂肪族炭化水素を、以下で検討するように、異性化ゾーンへと導出する。
【0023】
[0023]
主蒸留塔27からの塔底流29は、溶媒回収塔64に送られ、そこで、ベンゼンおよびトルエンは塔頂ライン65で回収され、そして溶媒は塔底68で回収され、主蒸留塔27へと戻される。抽出蒸留および溶媒回収からの塔頂ライン65における高純度のベンゼンおよびトルエンの回収は、典型的には99重量%を上回る。ベンゼン乾燥機塔56を使用して、塔頂ライン65の高純度ベンゼンから水を除去して、乾燥べンゼン生成物流57を製造することができる。水は、ライン67でベンゼン乾燥機塔56から除去する。トルエンも、ベンゼン乾燥機塔56においてベンゼンから分離する。トルエンは、ライン66で取り出す。ライン66におけるトルエンは、追加のキシレンを形成させるために、アルキル交換ユニット36へリサイクルするか、または、アルキル交換ユニット36にリサイクルするためのライン6と組み合わせる。
【0024】
[0024]
トルエン塔8からのトルエン塔頂留出物を、ライン6を介して、アルキル交換ユニット36に通す。アルキル交換ユニット36に導入する前に、ライン6におけるトルエンを、通常は、重質芳香族塔3によって製造されるライン41におけるCおよびC10アルキル芳香族富化流と組み合わせ、次いで、ライン34を介してアルキル交換ユニット36に充填して追加のキシレンおよびべンゼンを製造する。また、既に検討したように、ベンゼン乾燥機塔56からのライン66におけるトルエンは、ライン6と組み合わせることができる。あるいは、組み合わせずに、ライン6、66およびライン41それぞれを独立にアルキル交換ユニット36に導入できる。
【0025】
[0025]
アルキル交換ユニット36では、供給原料は、アルキル交換条件下でアルキル交換触媒と接触する。好ましい触媒は、金属安定化アルキル交換触媒である。前記触媒は、ゼオライト成分、金属成分、そして無機酸化物成分を含む。ゼオライト成分は、典型的には、MFI、MEL、MTW、MTTおよびFER(IUPACゼオライト命名法委員会)の構造を含むペンタシルゼオライト、ベータゼオライト、またはモルデン沸石である。好ましくは、モルデン沸石ゼオライトである。金属成分は、典型的には貴金属または卑金属である。貴金属は、白金族金属であり、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、そしてイリジウムから選択される。卑金属は、レニウム、錫、ゲルマニウム、鉛、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウムおよびそれらの混合物から成る群より選択される。卑金属は、別の卑金属または貴金属と組み合わせることができる。好ましくは、金属成分は、レニウムを含む。アルキル交換触媒における適当な金属量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%、そして非常に好ましくは0.1〜1重量%である。アルキル交換触媒における適当なゼオライト量は、1〜99重量%、好ましくは10〜90重量%、そしてより好ましくは25〜75重量%である。アルキル交換触媒の残りの部分は、無機酸化物バインダー、好ましくはアルミナから成る。本発明で使用するための一つのアルキル交換触媒は、参照により引用したものとする米国特許第5,847,256号で開示されている。
【0026】
[0026]
アルキル交換ユニットで用いられる条件は、通常は200℃〜540℃の温度を含む。
アルキル交換ゾーンは、概して1〜60kg/cmの適度に高い圧力で運転される。アルキル交換反応は、広範囲な空間速度で達成することができ、空間速度が速いほど、転化率の犠牲の下に、より高い割合でパラキシレンが生成される。液空間速度は一般的に0.1〜20hr−1である。供給原料は、好ましくは、気相で且つライン35を介して供給された水素の存在下で、アルキル交換される。液相でアルキル交換させる場合、水素の存在は任意である。存在する場合、遊離水素は、アルキル芳香族1モルあたり0.1モルから10モル以下の量で、供給原料およびリサイクル炭化水素と会合する。この水素のアルキル芳香族に対する割合は、水素の炭化水素に対する割合も意味している。
【0027】
[0027]
アルキル交換ユニット36からの流出物は、ライン17を通してアルキル交換ストリッパー分別ゾーン52に送る。アルキル交換ストリッパー分別ゾーン52では、ライン2を介してLPGおよびガスを取り出し、アルキル交換ストリッパー分別ゾーン52からのベンゼン、トルエンおよびより重質の炭化水素をライン1で導入する。ライン1は、ベンゼン乾燥機塔56からのライン66と組み合わせ、そしてその組み合わせをトルエン塔8に導入する。または、その流れは、トルエン塔8に独立に導入してもよい。一般的に、プロセスのユニット中に導入する前に流れを組み合わせる実施態様では、組み合わせずに、ユニット中に独立に流れを導入することも許容される。
【0028】
[0028]
芳香族複雑系のキシレン回収セクション55は、少なくとも一つのキシレン塔39を含み、そして一般的に、典型的には芳香族複雑系から得られるパラキシレン生成物である少なくとも1種のキシレン異性体を分離するためのプロセスユニットを更に含む。好ましくは、前記パラキシレン分離ゾーン43は、ループ状方式で更なる回収のためにリサイクルすることができるパラキシレンを含む平衡または近平衡の混合物へと残留アルキル芳香族化合物を異性化するための異性化ユニット51と一緒に運転される。而して、改質油スプリッター分別ゾーン54からのライン22におけるキシレン+富化流は、キシレン塔39に充填される。キシレン塔39は、非常に低レベルのCアルキル芳香族(A)濃度を有するライン40中の塔頂供給流をパラキシレン分離ゾーン43へと導くように設計されている。A化合物はパラキシレン分離ゾーン43の中で脱着剤循環ループで蓄積させることができるので、キシレン塔39の上流で、この材料を除去することはより効率的である。キシレン塔39からのライン40における塔頂供給流は、パラキシレン分離ゾーン43に直接に充填する。
【0029】
[0029]
キシレン塔39の下部からの材料は、ライン38を介して、C11+材料とCおよびC10アルキル芳香族との両方に富む塔底流として取り出す。ライン38におけるC11+材料とCおよびC10アルキル芳香族化合物との混合物を、重質芳香族塔3の中に導入し、そしてそこで、ライン41のCおよびC10アルキル芳香族富化塔頂流をC11+材料42富化塔底流から分離する。CおよびC10アルキル芳香族化合物富化塔頂流は、追加のキシレンおよびベンゼンの製造のために、アルキル交換ゾーン36に送った。
【0030】
[0030]
あるいは、複雑系でオルトキシレンを製造しようとする場合、キシレン塔は、メタキシレンとオルトキシレンを分割し且つ塔底へ目標量のオルトキシレンを落とすように設計される。次いで、そのキシレン塔塔底物を、高純度オルトキシレン生成物が塔頂で回収されるオルトキシレン塔(図示せず)に送る。オルトキシレン塔の塔底からの材料は、CおよびC10アルキル芳香族とC11+材料とに富む流れとして取り出し、そして上記のように重質芳香族塔3に通す。
【0031】
[0031]
パラキシレン分離ゾーン43は、当業において公知である分別結晶法または吸着分離法をベースとすることができ、好ましくは吸着分離法をベースとする。前記吸着分離は、1パスあたり高い回収率でライン44において高度に純粋なパラキシレンを回収できる。分離ユニットへの供給物中に存在するあらゆる残留トルエンを、パラキシレンと一緒に抽出し、仕上塔58で分別して取り出し、次いで、ライン59を介してアルキル交換ユニット36へと選択的にリサイクルする。仕上塔58を有することによって、キシレン塔39を運転するときの最適化および柔軟性が得られる。なぜならば、キシレン塔からの塔頂留出物中のあらゆるトルエンが、仕上塔58において、パラキシレン生成物から取り出され、そしてアルキル交換ユニット36へとリサイクルされるからである。極めて高純度のパラキシレン生成物、すなわち99重量%超の純粋なパラキシレンが、ライン60におけるプロセスから取り出される。
【0032】
[0032]
パラキシレン分離ゾーン43からのラフィネート45は、パラキシレンに関して通常は1重量%未満のレベルまで殆ど完全に低下している。水素およびラフィネートは、アルキル芳香族異性化ユニット51に送り、そこで、キシレン異性体の平衡または近平衡分配を再確立することによって追加のパラキシレンを製造する。パラキシレン分離ユニットラフィネート45中に存在するあらゆるエチルベンゼンを、使用される異性化触媒のタイプに従って、追加のキシレンへと転化させ、C芳香族へとアルキル交換させるか、または、脱アルキルによってベンゼンへと転化させる。上記のように、C−C脂肪族炭化水素流も、異性化ユニット51に導入する。CおよびC脂肪族炭化水素はエチルベンゼンのキシレンへの転化における中間物であるので、反応混合物中にC−C脂肪族炭化水素が存在すると、あらゆるエチルベンゼンのキシレンへの転化がより迅速に起こる。更に、C−C脂肪族炭化水素により、前記ユニットは、より低い温度で効率良く運転される。
【0033】
[0033]
アルキル芳香族異性化ユニット51では、ラフィネート45は、異性化条件下で異性化触媒と接触する。異性化触媒は、典型的には、モレキュラーシーブ成分、金属成分、および無機酸化物成分から成る。モレキュラーシーブを選択することによって、ベンゼンに関する総需要に従って、エチルベンゼン異性化とエチルベンゼン脱アルキルとの間の触媒性能を制御できる。而して、モレキュラーシーブは、ゼオライト性アルミノシリケートまたは非ゼオライト性モレキュラーシーブであってもよい。ゼオライト性アルミノシリケート(またはゼオライト)成分は、典型的には、MFI、MEL、MTW、MTTおよびFER(IUPACゼオライト命名法委員会)の構造を含むペンタシルゼオライト、ベータゼオライト、またはモルデン沸石である。非ゼオライトモ性レキュラーシーブは、”Atlas of Zeolite Structure Types”(Butterworth−Heineman, Boston, Mass.,3rd ed.1992)によると、典型的には、AEL骨格タイプのうちの1種以上、特にSAPO−11であるか、またはATO骨格タイプのうちの1種以上、特にMAPSO−31である。金属成分は、典型的には、貴金属成分であり、貴金属に加えてまたは貴金属成分の代わりに任意の卑金属変性剤成分を含むことができる。貴金属は、白金族金属であり、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびイリジウムから選択される。卑金属は、レニウム、錫、ゲルマニウム、鉛、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウムおよびそれらの混合物から成る群より選択される。卑金属は、別の卑金属または貴金属と組み合わせることができる。異性化触媒における適当な総金属量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。アルキル交換触媒における適当なゼオライト量は、1〜99重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは25〜75重量%である。アルキル交換触媒の残りの部分は、無機酸化物バインダー、典型的にはアルミナから成る。本発明で使用するための一つの異性化触媒は、米国特許第4,899,012号で開示されており、前記特許の教示は参照により本明細書に引用したものとする。
【0034】
[0034]
典型的な異性化条件は、0℃〜600℃の温度および50kg/cmの圧力を含む。
触媒の体積を基準とした供給原料の液時炭化水素空間速度(liquid hourlyhydrocarbon space velocity)は0.1〜30hr−1である。炭化水素は、水素対炭化水素モル比0.5:1〜15:1以上、好ましくは0.5:1〜10:1で、ライン46のガス状水素含有流との混合物中で触媒と接触する。異性化のために液相条件が使用される場合、水素はユニットに加えられない。
【0035】
[0035]
少なくともキシレンの混合物を含む異性化ユニット51からの流出物は、ライン18を介して改質油スプリッター分別ゾーン54に送る。異性化ユニットと改質油スプリッター分別ゾーンとの間に従来のデヘプタナイザー塔は不要であり、異性化ユニットの全ての流出物を、改質油スプリッター分別ゾーン54に通すことができ、それにより、資本コストと常時掛かる光熱費がかなり節約される。デヘプタナイザー塔の塔頂においてキシレンから除去されたであろうCマイナス炭化水素は、改質油スプリッター分別ゾーン54に通し、そこでキシレンから分離させる。
【0036】
[0036]
而して、本発明の芳香族複雑系は優れた経済的利益を示す。これらの改良により、資本および運転コストが節約される芳香族複雑系が得られ、また、前記複雑系における投資に対するリターンが増大する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】キシレンおよびより軽質の成分を含む塔頂留出物と、キシレンおよびより重質の成分とを含む塔底流を生成する改質油スプリッター分別ゾーンを運転することを含む、本発明の芳香族複雑系流動スキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベンゼン、トルエン、およびC−C脂肪族炭化水素を含む供給流を抽出蒸留ゾーンに導入し、そして、ベンゼンおよびトルエンを含む塔底芳香族炭化水素流、C−C脂肪族炭化水素を含むサイドカット脂肪族炭化水素流、およびC−C脂肪族炭化水素を含む塔頂脂肪族炭化水素流を分離する工程;
(b)C−C脂肪族炭化水素を含むサイドカット脂肪族炭化水素流を処理して、C−C脂肪族炭化水素を含む実質的に溶媒を含んでいないサイドカット脂肪族炭化水素流を生成させる工程;
(c)C−C脂肪族炭化水素を含む実質的に溶媒を含んでいないサイドカット脂肪族炭化水素流、水素、そしてキシレンの非平衡混合物を含む非平衡キシレン流を、異性化ゾーンに導入して、異性化条件下で異性化触媒と接触させ、そしてパラキシレンを含む異性化ゾーン流出物を生成させる工程 を含むキシレンを異性化する方法。
【請求項2】
該異性化触媒がモレキュラーシーブ成分、金属成分、およびよび無機酸化物成分を含み、そして該異性化条件が0℃〜600℃の温度、大気圧〜50kg/cmの圧力、および0.1〜30hr−1の液時炭化水素空間速度を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
ベンゼンおよびトルエンを含む塔底芳香族炭化水素流を分別塔に通して、ベンゼン富化流およびトルエン富化流を分離させ、そして該トルエン富化流をアルキル交換ユニットに通す工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
(a)ナフサ流を水素処理ゾーンに提供し、そしてそこで、該ナフサ流を、水素処理条件下で水素処理触媒と接触させて水素処理されたナフサ流を提供する工程;
(b)該水素処理されたナフサ流を改質ゾーンに通し、そしてそこで、該水素処理されたナフサを、改質条件下で改質触媒と接触させて、芳香族成分を含む改質油流を製造し、そして、ガスとCおよびより軽質の炭化水素とを、改質ゾーンで取り出して、ガスとCおよびより軽質の炭化水素とを実質的に含んでいない改質油流を得る工程;および
(c)該改質油流および該異性化ゾーン流出物を、独立にまたは複合流で、改質油スプリッター分別ゾーンに導入して、ベンゼン、トルエン、およびC−C脂肪族炭化水素を含む該供給流と、キシレンおよびより重質の炭化水素に富む流れとを製造する工程 を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
該水素処理触媒が、酸化コバルトまたは酸化ニッケルの成分、酸化モリブデンまたは酸化タングステンの成分、および無機酸化物担体の成分を含み、そして、該水素処理法条件が、1.0〜5.0hr−1の液空間速度、ナフサ供給原料に対する水素の割合50〜135Nm/m、および10〜35kg/cmの圧力を含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
該改質触媒が、第一成分である白金族成分、第二成分である変性剤金属、および第三成分である無機酸化物担体を含み、そして、該改質条件が、1.0〜5.0hr−1の液空間速度、水素の炭化水素に対する割合、すなわちナフサ1モルにつき1〜10モルの水素、および2.5〜35kg/cmの圧力を含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
(a)キシレン分別ゾーンにおいて該キシレンとより重質の炭化水素とに富む流れを分離して、塔頂キシレン流と、CおよびC10アルキル芳香族炭化水素およびC11+成分に富む流れとを製造する工程;
(b)CおよびC10アルキル芳香族炭化水素とC11+成分とに富む該流れを、重質芳香族塔に通して、C11+成分富化流からCおよびC10アルキル芳香族炭化水素富化流を分離する工程;
(c)該トルエン富化流、該CおよびC10アルキル芳香族炭化水素富化流、またはそれらの組み合わせを、アルキル交換ゾーンに通し、そしてそこで、該流れを、アルキル交換条件下で、金属安定化アルキル交換触媒と接触させてアルキル交換生成物流を製造する工程;および
(d)該塔頂キシレン流をパラキシレン分離ゾーンに通して、パラキシレン富化生成物流を濃縮し且つ取り出し、そして請求項1(c)の該非平衡キシレン流を生成させる工程を更に含む請求項4記載の方法。
【請求項8】
該金属安定化アルキル交換触媒が、ゼオライト成分、金属成分、および無機酸化物成分を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
該金属成分が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびインジウム、レニウム、錫、ゲルマニウム、鉛、コバルト、ニッケル、インジウム、ガリウム、亜鉛、ウラン、ジスプロシウム、タリウム、およびそれらの混合物から成る群より選択され、そして、該ゼオライト成分が、ペンタシルゼオライト、ベータゼオライト、モルデン沸石ゼオライト、またはそれらの混合物から成る群より選択される請求項7記載の方法。
【請求項10】
該アルキル交換条件が、200℃〜540℃の温度、1〜60kg/cmの圧力、そして0.1〜20hr−1の液空間速度を含む請求項7記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537560(P2009−537560A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511188(P2009−511188)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/068838
【国際公開番号】WO2007/137017
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】