説明

芳香族炭化水素の残留量が低いリン酸カルシウム多孔体

【課題】毒性物質である多環芳香族炭化水素の残留量が少ない、リン酸カルシウム多孔体を提供する。
【解決手段】有機体炭素の濃度が5mg/L以下であることを特徴とする、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体、及び、β-リン酸三カルシウム微粉末を焼成してリン酸カルシウム多孔体を作製する工程において、250〜550℃の間で炉内温度を一定時間維持するか、又は、250〜550℃の間で炉内温度の昇温速度をその前後の温度における昇温速度の1/3以下に低下させることを特徴とする、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に埋植して使用される人工骨;骨補填材;微細生体の生化学物質的分離、細胞培養担体、及び、精製吸着剤等に利用されるリン酸カルシウム多孔体、特に、芳香族炭化水素の残留量が低いβ-トリカルシウムフォスフェート製リン酸カルシウム多孔体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリン酸カルシウム多孔体の製造方法の代表的な例としては、リン酸カルシウム微粉末に解膠剤(起泡安定剤)を水溶液にしたものを添加し混合し、この混合液に起泡剤(界面活性剤)を添加して連続した微細な空孔を有する多孔性流動体を調整し、この多孔性流動体を乾燥処理することによりリン酸カルシウムの骨格を有するリン酸カルシウム多孔形成体を作製し、その後、このリン酸カルシウム多孔形成体を電気炉などを用いて300℃/hr程度の昇温速度で1000℃以上の温度まで定常的に加熱して焼成し、前記解膠剤と起泡剤を分解消失させると同時にセラミックスとして焼結を行い、リン酸カルシウム多孔体を製造する方法を挙げることが出来る(特許文献1)。係る製造工程を図1に示す。
【0003】
或いは、従来のリン酸カルシウム多孔体の製造方法の例としては、ワックス系バインダーを含有しかつリン酸カルシウム系セラミックスの微粉末からなる顆粒予成体を所定直径の顆粒になるように粉砕して顆粒状成形体を得る工程と、リン酸カルシウム系セラミックスの微粉末からなる水性発泡スラリに前記顆粒状成形体が分散するように混合する工程と、前記顆粒状成形体を混合した前記水性発泡スラリを所定形状の型に流し込んだ後乾燥焼成する工程とを具備することを特徴とする骨補填材の製造方法(特許文献2)を挙げることができる。
【0004】
リン酸カルシウム微粉末としては、ハイドロキシアパタイトおよびβ-トリカルシウムフォスフェート(β-リン酸三カルシウム)等が知られている。ハイドロキシアパタイトを原料とする人工骨は骨と結合し初期強度はあるが非吸収性である。一方、β-リン酸三カルシウム原料とする人工骨は吸収性であって自家骨に置換されるという特性を有している。このようなリン酸カルシウム微粉末のメカノケミカル的な製造方法の例として、特許文献3及び特許文献4、並びに、非特許文献1等を挙げることができる。
【0005】
このような従来方法での加熱焼成では、加熱による解膠剤や起泡剤(界面活性剤)又はバインダー等の添加物の分解消失が充分に行われない場合があり、その結果、これら添加剤に含まれる炭素原子に由来して多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons)が生成され、生体に影響を与える程度の量の多環芳香族炭化水素がリン酸カルシウム多孔体に残留する。
【0006】
多環芳香族炭化水素とはものが燃える(不完全燃焼)ときに発生する化学物質の総称で、約50の化学物質が存在するとされ、強い発癌性を示すものや、発癌を促進させるものがある。
【0007】
因みに、上記の特許文献1及び特許文献2に記載された従来の方法においては、焼結工程は所定温度(例えば、1000-1300℃)まで一定の昇温速度(例えば、300℃/hr)で加熱し、その後、その所定温度で一定時間保持するか、又は、単に所定温度で一定時間焼成するものである。更に、製造されたリン酸カルシウム多孔体における多環芳香族炭化水素の残留量に関しては何等記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2597355号公報
【特許文献2】特開平5−237178号公報
【特許文献3】特許第3262233号公報
【特許文献4】特公平3−69844号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】鳥山素弘、川村資三、他、湿式粉砕法を用いたβ−リン酸三カルシウムの合成、窯業協会誌、94:78-82, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リン酸カルシウム多孔体の使用目的の一つに人工骨があるが、このような生体内へ適用される場合を考えると、特に、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体のように生体内に吸収される特性を有する材料から成る人工骨等におけるこのような多環芳香族炭化水素の残留量を極力減らすことが強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、リン酸カルシウム微粉末を焼結させてリン酸カルシウム多孔体を製造する工程を熱分析を利用して分析した結果、解膠剤や起泡剤(界面活性剤)又はバインダー等の添加物から生成する多環芳香族炭化水素を焼結工程において、約250℃〜550℃の温度領域において、一定時間、滞留させる(維持する)、又は、この温度帯での昇温速度を遅くすることによって、充分な熱エネルギーを加えて上記の添加物を分解消失させることが可能であり、その結果、焼成時にリン酸カルシウム多孔体に含まれる有機体炭素(Total Organic Carbon:TOC)を低減させることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、以下の各態様に係るものである。
(1)有機体炭素(Total Organic Carbon:TOC)の濃度が5mg/L 以下であることを特徴とする、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体。
(2)β-リン酸三カルシウム微粉末を焼成してリン酸カルシウム多孔体を作製する工程において、250〜550℃の間で、炉内温度を一定時間維持するか、又は、炉内温度の昇温速度を1/3以下に低下させることを特徴とする、上記β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体の製造方法。
(3)上記の製造方法によって製造されたβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体から成る人工骨又は骨補填材。
【発明の効果】
【0013】
従来のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体における有機体炭素の濃度が約30mg/L以上であるのに対して、本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体における有機体炭素の濃度は5mg/L 以下である。このように、本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体は、発癌性を示す化合物も数多く含まれる多環芳香族炭化水素の残留量が極めて低いので、特に、人工骨等の生体内へ適用される素材として非常に優れた特性を有するものである。又、本発明方法によって、焼成工程で解膠剤、起泡剤又はバインダー等の添加物が確実に分解消失されるので、得られるリン酸カルシウム多孔体における多環芳香族炭化水素の残留量を極めて低い値とすることが出来る。更に、本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体から成る骨補填材を使用することによって、従来のものに比較して生体内で骨形成が優位に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リン酸カルシウム多孔体の製造工程。
【図2】焼結前のリン酸カルシウム多孔体の熱分析。
【図3】従来の焼結加熱工程(縦軸は炉内温度、横軸は時間)。
【図4】実施例1の焼結加熱工程(縦軸は炉内温度、横軸は時間)。
【図5】実施例2の焼結加熱工程(縦軸は炉内温度、横軸は時間)。
【図6】実施例3の焼結加熱工程(縦軸は炉内温度、横軸は時間)。
【図7】実施例1で製造した本発明のリン酸カルシウム多孔体の顆粒をウサギの大腿骨に埋植した後、4週間後の組織写真。下の写真は上の写真の四角部分を拡大したものである。倍率は、それぞれ、4倍(上図)、及び25倍(下図)である。
【図8】実施例1で製造した本発明のリン酸カルシウム多孔体の顆粒をウサギの大腿骨に埋植した後、12週間後の組織写真。下の写真は上の写真の四角部分を拡大したものである。倍率は、それぞれ、5倍(上図)、及び25倍(下図)である。
【図9】TOCの濃度が約30 mg/L の従来のリン酸カルシウム多孔体の顆粒をウサギの大腿骨に埋植した後、4週間後の組織写真。下の写真は上の写真の四角部分を拡大したものである。倍率は、それぞれ、4倍(上図)、及び25倍(下図)である。
【図10】TOCの濃度が約30 mg/L の従来のリン酸カルシウム多孔体の顆粒をウサギの大腿骨に埋植した後、12週間後の組織写真。下の写真は上の写真の四角部分を拡大したものである。倍率は、それぞれ、5倍(上図)、及び25倍(下図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体は、有機体炭素(TOC)の濃度が5mg/L 以下、好ましくは4.5mg/L 以下であることを特徴とする。尚、リン酸カルシウム多孔体はCa3(PO)を成分とし気孔率が約75%の多孔体であって、径が100〜400μのマクロポアと径が数μのミクロポアを有する。
【0016】
多環芳香族炭化水素は種類が多いため、各々の種類毎についての含有量を調べること、及びその結果を評価することは大変困難であることが知られている。従って、リン酸カルシウム多孔体における多環芳香族炭化水素の残留量と相関する物性値として、リン酸カルシウム多孔体における有機体炭素の濃度を測定し、それらの値を本発明のリン酸カルシウム多孔体における多環芳香族炭化水素の残留量を示す指標とする。
【0017】
ここで、TOCの定義は「JIS K0102 22. 有機体炭素」による。TOC濃度の定量方法は「JIS K 0102 22.1 燃焼酸化―赤外線式TOC分析法」に準じて測定する。具体的には、リン酸カルシウム多孔体を乳鉢等を用いて粒径が30μm以下となるまで微粉化し粉末状試料とする。この粉末状試料を日本工業規格JIS K0577の水質規格A4に相当する純水を用いて、固体:液体比が1:10で混合し溶液とする。この溶液を超音波洗浄器に30分間かけて成分を溶出させる。その後、遠心分離機にて3,000rpmで20分間遠心分離し、得られた上澄み液を0.45μmのマイクロフィルターでろ過し、ろ液を上記の赤外線式TOC分析法における測定試料として使用する。
【0018】
本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体を製造する為の好適な方法は、β-リン酸三カルシウム微粉末を焼成してリン酸カルシウム多孔体を作製する工程において、250〜550℃、好ましくは300〜500℃の間で炉内温度を一定時間、例えば、約2〜4時間維持するか、又は、250〜550℃の間で炉内温度の昇温速度をその前後の温度における昇温速度の1/3以下、例えば、約100℃/毎時まで低下させることを特徴とする製造方法である。即ち、本発明の製造方法は、従来のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体の製造方法(概略を図1に示す)における焼成工程に特徴を有するものである。
【0019】
本発明の製造方法の具体例として、以下の工程から成る方法を挙げることができる。
β-リン酸三カルシウム微粉末に解膠剤を水溶液にして添加し混合する工程;
得られた混合溶液に起泡剤を添加して連続した微細な気孔を有する多孔性流動体を調製する工程;
得られた多孔性流動体を乾燥処理してリン酸カルシウムの骨格を有する多孔形成体を作製する工程;及び
得られた多孔形成体を加熱して前記解膠剤及び起泡剤を分解消失させると共に前記リン酸カルシウム多孔形成体を1000℃以上に加熱して焼結する工程。
このように、焼成工程以外は、従来の工程と同様に実施することが出来る。例えば、焼成工程における通常の昇温速度は約200℃/毎時〜400℃/毎時であり、最終的に約1000℃〜1300℃まで昇温される。
【0020】
前記β-トリカルシウムフォスフェート(β-リン酸三カルシウム)は公知であり、市販されている任意の微粉末を使用することができる。
【0021】
前記解膠剤としては、当業者に公知の任意の物質、例えば、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等からなる水溶性高分子化合物を用いることができる。
【0022】
前記起泡剤としては、当業者に公知の任意の物質、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、又は、これらの非イオン界面活性剤に酸化エチレンを添加したものを用いることができる。非イオン性界面活性剤を使用することにより、隣合う起泡との壁面が破泡し、連通した起泡を持つ多孔体とすることができる。
【0023】
前記バインダーとしては、当業者に公知の任意の物質、例えば、パラフィンワックス、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、及び寒天等がある。
【0024】
例えば、上記の製造方法によって製造された本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体は、人工骨又は骨補填材等の主材料として好適に使用することが出来る。尚、人工骨は形状に基づき、大きく汎用型及び専用型に分けられ、汎用型には顆粒状、多孔体(ブロック体、円筒体等)及び形状賦形型があり、専用型には、適用部位に応じて、人口耳小骨、開頭穿孔術用、錐体固定用、及び骨盤用等の多種類の形状がある。本発明のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体はこれら多種類の用途の中で、特に汎用型用として好適に使用される。
【0025】
以下、参考例及び実施例を参照して本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによって何等制限されるものではない。
【0026】
(参考例)
β-トリカルシウムフォスフェート微粉末に解膠剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)を混合し、起泡剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を添加して多孔性流動体を調製した後に乾燥させたものを、常法に従い熱分析を行い、分解焼失による重量の減少を確認した。その結果を図2に示すが、炉内温度が200℃近辺から重量減少が始まり、550℃近辺でほぼ終了した。この間に熱分析のピーク値が数箇所見られた。これによって、解膠剤および界面活性剤がほぼ250℃〜550℃近辺での加熱処理において、最も分解消失されることが判明した。従って焼成時にこれらの温度領域で一定時間、滞留させる(維持する)、又は、この温度帯での昇温速度を遅くして充分な熱エネルギーを加えることによって、TOC値を低減させることが可能となると考えられた。
【実施例1】
【0027】
粒径が0.3μm以下のβ-トリカルシウムフォスフェート微粉末10gに解膠剤として10%ポリアクリル酸アンモニウム塩を加えて混合した。つづいて、起泡剤としてポリオキシエチレンノニルファニルエーテルを添加した後、攪拌機を用いて均一に起泡するように混合し攪拌した。攪拌後、前記多孔性流動体をパラフィン紙で内張りした所望形状の容器に流し込み、ひきつづき恒温恒湿槽に入れ、40℃の雰囲気中で20時間乾燥した。乾燥後、アルミナ製容器に移し、300℃/毎時の昇温速度で300℃まで昇温させ、300℃で4時間の滞留を行い、その後300℃/毎時の昇温速度で1000℃まで昇温させ、該1000℃で40分間保持し焼結を行なった(図4)。
【0028】
実施例1で得られた焼結品は、多環芳香族炭化水素の代替値として、TOCの濃度は4.3 mg/L 、電気伝導率が3.97mS/mであった。また、焼成されたリン酸カルシウム多孔体は連通した気孔を持ち、その気孔径は0.2〜0.8mm近であった。また、X線回折の結果、かかる多孔体は出発原料と同じβ-トリカルシウムフォスフェートの結晶構造を有していた。一方、比較として、300℃で4時間の滞留を行わない従来の方法(図3)で製造したリン酸カルシウム多孔体のTOCの濃度は30.0 mg/L、電気伝導率が8.50mS/mであった。 尚、各実施例において、電気伝導率は「JIS K 0102 13.」に準じて測定した。
【実施例2】
【0029】
粒径が0.3μm以下のハイドロキシアパタイト微粉末10gに解膠剤として20%ポリアクリル酸アンモニウム塩を10cc加えて超混合した。つづいて、起泡剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1.8gを添加した後、攪拌機を用いて均一に起泡するように混同し攪拌した。攪拌後、前記多孔性流動体をパラフィン紙で内張りした所望形状の容器に流し込み、ひきつづき恒温恒湿槽に入れ、50℃の環境で24時間乾燥した。乾燥後、アルミナ製容器に移し、300℃/毎時の昇温速度で500℃まで昇温させ、500℃で4時間の滞留を行い、その後再び300℃/毎時の昇温速度で1300℃まで昇温させ、該1300℃で1時間保持して焼結を行なった(図5)。
【0030】
本実施例2で得られた焼結品のTOCの濃度は3.5mg/L 、電気伝導率が4.3mS/mであった。焼結品を切断して形状を観察した結果、気孔は連通しており、その気孔径は0.5mm近であった。また、気孔率は約80%であり、実用的な強度を有し、使用に充分に耐えるものであった。更に、X線回折の結果、かかる多孔体は出発原料と同じハイドロキシアパタイトであった。
【実施例3】
【0031】
実施例1において、昇温速度を室温から250℃までは、300℃/毎時、250℃〜550℃の間の昇温速度を100℃/毎時で加熱し、550℃を超えた時点から再度300℃/毎時の昇温速度で1000℃まで加熱し、1000℃で40分間保持し焼結を行なった(図6)。
【0032】
本実施例3で得られた焼結品のTOCの濃度は4.9 mg/L 、電気伝導率が4.1mS/mであった。また焼成されたリン酸カルシウム多孔体は連通した気孔を持ち、その気孔径は0.2〜0.8mm近であった。また、X線回折の結果、かかる多孔体は出発原料と同じβ-トリカルシウムフォスフェートの結晶構造を有していた。
【実施例4】
【0033】
実施例1で製造した、本発明のβ-トリカルシウムフォスフェート製リン酸カルシウム多孔体を顆粒状にし、ウサギ大腿骨に埋植して骨形成の状況を調べた。コントロールとして実施例1で製造した比較品を使用し、両者の比較を行った。
【0034】
埋植4週後及び12週後にウサギを屠殺し、常法に従いHE染色にて組織学的評価を行ったところ、本発明のβ-トリカルシウムフォスフェート製リン酸カルシウム多孔体の方が、優位に骨形成が行われていることが確認できた。図7〜図10にそれらの結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のリン酸カルシウム多孔体は、生体に使用される人工骨;骨補填材;微細生体の生化学的分離、精製若しくは吸着に使用される固定化酵素担体材;骨充填剤や骨置換剤;及び;細胞培養用担体等の多様な分野・用途で有効に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機体炭素の濃度が5mg/L 以下であることを特徴とする、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体。
【請求項2】
有機体炭素の濃度が4.5mg/L 以下であることを特徴とする、β-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体。
【請求項3】
β-リン酸三カルシウム微粉末を焼成してリン酸カルシウム多孔体を作製する工程において、250〜550℃の間で炉内温度を一定時間維持するか、又は、250〜550℃の間で炉内温度の昇温速度をその前後の温度における昇温速度の1/3以下に低下させることを特徴とする、請求項1又は2記載のβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体の製造方法。
【請求項4】
300〜500℃の間で炉内温度を2〜4時間維持するか、又は、250〜550℃の間で炉内温度の昇温速度を100℃/毎時にすることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
β-リン酸三カルシウム微粉末に解膠剤を水溶液にして添加し混合する工程;
得られた混合溶液に起泡剤を添加して連続した微細な気孔を有する多孔性流動体を調製する工程;
得られた多孔性流動体を乾燥処理してリン酸カルシウムの骨格を有する多孔形成体を作製する工程;及び、
得られた多孔形成体を加熱して前記解膠剤及び起泡剤を分解消失させると共に前記リン酸カルシウム多孔形成体を200-400℃/時の昇温速度で1000℃以上に加熱して焼結する工程; から成る、請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたβ-リン酸三カルシウム製リン酸カルシウム多孔体から成る人工骨又は骨補填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−137040(P2010−137040A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99342(P2009−99342)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【特許番号】特許第4392460号(P4392460)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(509204714)株式会社カタリメディック (3)
【Fターム(参考)】