苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置

【課題】田植え作業において、運搬車で圃場まで運搬した苗箱から、育成している苗を抜き出すときに、それの前作業として行う、苗箱内面からの苗の根部の剥離作業の作業性の悪さを改善する。
【解決手段】育成した苗が収容されている苗箱を積載して運搬する運搬車の荷台に、育成した苗が収容されている苗箱を、略水平な姿勢として支承する支持台を、地表に立つ作業者の作業高さ位置に配位して装備せしめて、苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は苗箱で育苗した土付き苗を、田植機で本田に移植する田植え作業において、苗箱内に敷き詰めた床土にからんで繁茂している苗の根部を、苗箱の床面から剥離して、苗を田植機の苗のせ台に載置し得る状態に用意しておくために、苗箱内から苗の根部を剥離する作業を行う際に、苗箱を剥離作業に適応する作業高さに支承せしめる苗箱支持装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
田植機を用いて行う田植え作業は、苗を土付き苗として苗箱で育苗し、この苗を、育苗箱（苗箱）ごと、運搬車で、田植えする圃場の畦畔まで運搬し、そこで、運搬車の荷台から畦畔に降ろし、畦畔において、苗箱内に育苗した苗の根部を苗箱の床面から剥ぎ取り、苗箱から遊離した状態として、苗箱から抜き上げ、これを圃場内に待機している田植機に装填し、田植機を運転操作して田植機の植込爪の作動により植え付けていくことで行われる。
【０００３】
この田植え作業において、苗を苗箱から抜き上げて取り出す作業は、運搬車で圃場まで運搬した苗が育成してある苗箱Ａを、運搬車の荷台から、または荷台に搭載した苗箱運搬用の棚枠から、取り降ろして畦畔に置き、その苗箱Ａ内の苗Ｂを、苗箱Ａの一端側において、図１にあるように掴んで引き上げ、これにより、苗箱Ａの床面から浮き上がってきた苗Ｂの根部ｂの底面に、樹脂材によりヘラ状に成形してある掻き取り刃Ｃを挿し込んで、根部ｂの苗箱Ａ床面に対するからみ付きを剥ぎ取り、苗Ｂの根部ｂが、苗箱Ａ内面から遊離した状態にし、次いでこの状態から苗Ｂを掴んで引き上げ、苗箱Ａ内から抜き上がることで行う。
【０００４】
この苗箱内に育成している苗を苗箱から取り出すときに、その前作業として、掻き取り刃を用いて行う、苗の根部を苗箱内面から剥離させる作業は、田植機が機体に載架した苗を植えきって、畦畔にまで戻ってくるまでの間に、畦畔で待つ作業者が、運搬車の荷台または棚枠から苗箱を順次取り降ろして、各苗箱ごとに行う。
【０００５】
この、苗の根部を苗箱の内面から剥離する作業は、格別の作業台を用いず、運搬車の荷台に装架した棚枠から引き出した苗箱を、畦畔の地表面に置いて、畦畔の地面を作業台とすることで行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
田植え作業において、苗箱で育苗した苗を苗箱から抜き出して、田植機に装填するときの、前作業として行う苗の根部を苗箱内面から剥離しておく作業は、格別の作業台を用いず、苗箱を畦畔の地表面に直接に置いて、地表面上で行うことから、作業者は、一枚の苗箱に対し苗の根部の剥離を行う度ごとに、立って運搬車から苗箱を取り出す作業と、取り出した苗箱を、中腰にかがんで地表面に降ろす作業と、地表に置いた苗箱内に対しかがみ込んで、掻き取り刃を挿し込み、苗の根部を剥ぎ取る作業を行うことになり、疲労の激しい労働が強いられるようになっているので、その作業性を改善すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、上述の課題を解決するための手段として、育成した苗が収容されている苗箱を積載して運搬する運搬車の荷台に、育成した苗が収容されている苗箱を、略水平な姿勢として支承する支持台を、地表に立つ作業者の作業高さ位置に配位して装備せしめたことを特徴とする苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置を提起するものである。また、これに併せて、
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台の側框の外面に装備せしめたことを特徴とする苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置、および、
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台に載架した苗箱搬送用の棚枠の外面に装備せしめたことを特徴とする苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置、および、
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台に対し装脱自在に装着し、かつ、苗箱支持用の台部を上向き回動により折り畳み自在とした苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置、および、
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台の側框の外面側に装着し、側框には、該側框の外面側への回動を規制する補助支持装置を装備せしめることを特徴とする苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置を提起するものである。
【発明の効果】
【０００８】
本発明手段は、苗箱を積載して運搬する運搬車の荷台に、苗箱を支承する苗箱支持台を、地表に立つ作業者の作業高さ位置に配位して装備せしめているのだから、作業者が運搬車の荷台上から苗箱を引き出したとき、作業者は、その苗箱を持った姿勢のまま苗箱を苗箱支持台の上に載架して、立った姿勢で苗の根部の剥ぎ取り作業が行えるようになって、作業がかがみ込んだ無理な姿勢をとらずに楽に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【０００９】
【図１】苗箱内で育苗した苗を苗箱から取り出すときに、前作業として行う苗の根部の剥離作業の説明図である。
【図２】本発明による苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置を装備せる運搬車の全体の概要側面図である。
【図３】同上の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置の側面図である。
【図４】同上装置の後面図である。
【図５】同上装置の平面図である。
【図６】同上装置の苗箱を支承せしめた状態時の後面図である。
【図７】同上装置の同上状態時の平面図である。
【図８】同上装置の同上状態時の側面図である。
【図９】同上装置の、支持台の台部を折り畳み回動させた状態時の後面図である。
【図１０】同上装置に、補助支持装置を付設した状態時の後面図である。
【図１１】同上状態時の平面図である。
【図１２】別の実施例装置の後面図である。
【図１３】同上の平面図である。
【図１４】同上の側面図である。
【図１５】同上の支持台を折り畳み格納させた状態の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１０】
次に実施の態様を実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例１】
【００１１】
図２は本発明の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置を装備せる運搬車の全体の概要側面図、図３は同上の要部の側面図、図４は後面図である。図において、１は運搬車、２は運搬車１の荷台１０上に載架した苗箱運搬用の棚枠、３は運搬車１の荷台１０上に装備せしめた苗の根部剥離支持台である。
【００１２】
運搬車１は、通常使用される普通のトラックであるが、この例においては、荷台１０の左右の側縁に、起伏回動自在の側框１１・１１を装備し、後縁側に起伏回動自在の後框１２を装備する軽トラックを使用している。
【００１３】
運搬車１の荷台１０上に載架した苗箱運搬用の棚枠２は、田植機による田植え作業の際、本田に挿苗して植え付ける苗を、育成した苗箱ごと運搬するよう、多数の苗箱を多段に載架し得る棚枠状に組み立てられている通常のものであり、運搬車１の荷台１０上に積み込み載架してある。
【００１４】
育成した苗の本田への運搬は、苗を育成した苗箱ごと、運搬車１の荷台１０に載架して行うが、多数枚の苗箱Ａを効率よく運搬するため、通常、荷台１０にこの棚枠２を載架し、その棚枠２の各棚段２０に苗箱Ａを差し込んで支架することで行っている。この棚枠２の棚段２０に支架して運搬した苗箱Ａは、圃場の畦畔に運搬車１を停めたところで、運搬車１の周囲に立つ作業者が、棚枠２の棚段２０に沿い苗箱Ａを引き出し、畦畔の地表面に置くようにする。
【００１５】
苗の根部剥離作業用の支持台３は、運搬車１により圃場の畦畔まで運んだ苗箱Ａから苗Ｂを抜き上げるときの前作業として、図１にて示しているように、掻き取り刃Ｃを用いて、苗Ｂの根部ｂを苗箱Ａの内面から剥離させる作業を行うときに、苗箱Ａを、作業者が立った姿勢で作業できる作業高さ位置に支承せしめておくための作業台であり、運搬車１の荷台１０の高さ位置が、その荷台１０上の苗箱Ａを作業者が立って扱える作業高さ位置となることから、この荷台１０の高さ位置を規準として、運搬車１の車体を利用しこれに組み付け支架することで装備せしめる。
【００１６】
この苗の根部剥離作業用の支持台３の運搬車１の車体に対する組み付けは、荷台１０の周縁部など運搬車１の外面の適宜の部位に組み付けてよく、また、荷台１０に装架してある棚枠２を利用し、それの外面に組み付けるなど、車体に付設した部材に組み付けてよいものであるが、この例においては、荷台１０の左右の側縁に、ヒンジ１３により起伏回動自在に装備してある側框１１を利用し、これに組み付け支架してある。
【００１７】
１１は運搬車１の荷台１０の側框であり、緊締金具１４により起立させた状態に保持せしめてある。支持台３は、この起立状態の側框１１の上縁部に、アングル状の掛止金具３０により引き掛けて運搬車１の車体に対し取り付け装着する取付枠３ａと、この取付枠３ａに組み付ける苗箱支持用の台部３ｂとからなる。
【００１８】
取付枠３ａは、上端側に前記アングル状の掛止金具３０を装備して、左右に並列する複数の帯板状の組付座板３１・３１と、それら組付座板３１・３１の上端側と下端側とに渡架連結する断面チャンネル状の左右に長い上下の枠杆３２・３２とで、側框１１の外面に沿う枠状に組み立てられている。
【００１９】
台部３ｂは、前記取付枠３ａの外面側で、前述の枠杆３２の下面側の部位に、それぞれ設けたブラケット３３と、そのブラケット３３から運搬車１の外面側に向け突出する腕木状の梁材３４と、それら梁材３４の突出端側に前記枠杆３２と平行するように設ける外側枠杆３５とで、平面視において囲い枠状に構成してある。そして、苗箱Ａを、台部３ｂの外側枠杆３５で支承するようにしている。
【００２０】
この支持台３は、組付座板３１からの突出長さが、略、苗箱Ａの前後長さ（約６０センチ）の半分程の約２５センチであり、載架した苗箱Ａの前端縁を、断面チャンネル状に形成してある枠杆３２の内腔に差し込んで、上下方向に係合させることで、図８にあるように、載架した苗箱Ａを、それの後半側が枠杆３５から外方に突出して宙に位置する状態となって支架されるようにしてある。
【００２１】
この支持台３は、育成した苗が収容されている苗箱Ａを、運搬車１の周りに立つ作業者が、立った姿勢で扱える作業高さ位置において、略水平な姿勢に保持せしめて支架し得るようになればよく、例えば、枠杆３２と枠杆３５との間を板張りとした台板状にするなど、適宜の構造に構成してよい。
【００２２】
また、この支持台３の運搬車１の車体外面に対する装着は、この実施例においては、取付枠３ａの上端側に設けたアングル状の掛止金具３０を、荷台１０の側框１１に引き掛けて、組付座板３１を側框１１の外壁面に当接させることで行い、掛止金具３０を引き上げることで脱れる装脱自在の装着にしてあるが、熔着または取付ネジによる固着状態の装着とする場合がある。
【００２３】
また、この支持台３は、運搬車１の荷台１０または荷台１０上の棚枠２から引き出した苗箱Ａを載架して、その苗箱Ａ内の苗の根部を苗箱Ａ内面からの剥ぎ取る作業を行うときだけ必要なものであって、運搬車１の荷台１０に載架して運搬した苗箱の全てに対し苗の根部の剥離を終えた後は、必要がなくなるものであるから、荷台１０の側框１１への装着が固着式であった場合には、運搬車１の荷台１０に空になった苗箱Ａを載架して、路上を運転するときに、側框１１から棚状に突出している支持台３が、運搬車１の車巾を増大させるようになる。
【００２４】
このため、この例の支持台３は、ブラケット３３に接続させて設けた腕木状の梁材３４は、ブラケット３３に対し軸３６により上下に回動自在に連結し、略水平な姿勢より下方への回動をストッパーにより阻止して、水平な姿勢から上方への回動だけが自在になるようにしてあって、これにより、図１０に示しているように、側框１１に沿う姿勢に折り畳んで、車巾の増大を避けるようにしてある。
【００２５】
また、このように折り畳んだときの折り畳み巾Ｄは、荷台１０の側框１１の内面と、荷台１０上に載架する棚枠２の外面との間に形成される荷台１０上の空きスペースＥの巾より狭くなるように設定してあり、これにより、使用しないときに、折り畳んだ状態として、この空きスペースＥ内に落とし込んで格納し得るようにしてある。
【００２６】
図９及び図１２において、４は支持台３を、運搬車１の荷台１０の側框１１に装着したときに、側框１１の後端側の部分の直立姿勢を補助的に支持する補助支持装置である。
【００２７】
この補助支持装置４は、苗箱Ａを、図６、図７にあるように、側框１１に装着した支持台３上に、苗箱Ａを並列させて載架したとき、荷台１０の後框１２が立てた姿勢にあり、かつ、緊締金具１４により後框１２と側框１１の後縁部分とが、連結している場合は支障ないが、荷台１０の後框１２が開放してあって、側框１１の後縁部と後框１２との連結がないときには、直立状態の保持のための車体との連結のない側框１１の後端側が、苗箱Ａの荷重により、車体の外面側に向け倒れるようになるから、これを防ぐために、側框１１を直立する姿勢に保持さすよう補強する手段である。
【００２８】
そして、この補助支持装置４は、この例においては、支持台３の組付座板３１の上端側に設けてあるアングル状の掛止金具３０を利用し、この掛止金具３０の先端側に、図１０において鎖線に示している如く、掛止金具３０を側框１１に係止した状態において、荷台１０の内方に向けて突出する部材４０を設けておき、この部材４０と、荷台１０上に載架してある棚枠２の底部の枠材２１との間に、アングル状の連繋杆４１を渡架連結して、荷台１０の側框１１が、支持台３に載架した苗箱Ａの重量で、荷台１０の側縁に設けたヒンジ１３中心に外方に倒伏回動するようになるのを、荷台１０上の棚枠２の重量により抑えるようにしている。
【００２９】
この手段において、アングル状の連繋杆４１の上端側と掛止金具３０の先端側に設けた部材４０との連結は、部材４０に設けた上下方向の穴と、棒状に形成した連繋杆４１の上端部との嵌合により行い、連繋杆４１の下端側と棚枠２の底部との連結は、アングル状の連繋杆４１の下端側の水平部を、棚枠２の底部を構成している角パイプよりなる枠材２１の内腔に、図８にあるよう挿入して嵌合さすことで行っていて、これによりこの連繋杆４１による補助支持装置４を運搬車１の車体に対し装脱自在にし、使用しないときに、前述の支持台３と同様に、取り外して荷台１０上の棚枠２と側框１１との間の空きスペースＥに格納しておけるようにしている。
【実施例２】
【００３０】
図１２乃至図１５は別の実施例を示している。この例は、運搬車１に装備せしめる苗の剥離作業用の苗箱支持装置を、運搬車１の荷台１０上に装架した苗箱搭載用の棚枠２の外面に装着した例である。
【００３１】
この例の苗箱支持装置は、支持台３が、左右に長い断面チャンネル状の枠杆３２と、この枠杆３２の左右の端部に寄せた部位の下面側に、それぞれ取り付け固着した左右のブラケット３３・３３と、それらブラケット３３にそれぞれ接続した左右の腕木状の梁材３４・３４と、それら梁材３４の突出端側に前記枠杆３２と平行する状態として渡架連結した外側枠杆３５と、で構成してあり、苗箱Ａの支持を、外側枠杆３５の上に苗箱Ａを載せ、その苗箱３５の前端縁を、チャンネル状に形成してある枠杆３２の内腔に差し込んで、上下方向の動きを係止することで行うことについては、前述の実施例１の支持台３と同様であるが、実施例１における組付座板３１及びその組付座板３１の上面に設ける掛止金具３０は無く、チャンネル状の枠杆３２の背面側を、棚枠２の枠柱２２の外面に当接して、ネジまたは溶接により枠柱２２に対し固着することで、棚枠２の外面に組み付け装着するようにしている。
【００３２】
また、ブラケット３３に基端側を接続する腕木状の梁材３４は、ブラケット３３に対し軸３６により上下に回動自在に接続し、ブラケット３３に設けるストッパー（図示省略）により略水平な姿勢以後の下方回動を規制して、苗箱Ａを支承するようにし、使用しないときには、上方に回動させて、図１５にあるよう、棚枠２の外面に沿う状態姿勢に折り畳み格納し得るようにしてある。
【符号の説明】
【００３３】
Ａ苗箱
Ｂ苗
Ｃ掻き取り刃
Ｄ折り畳み巾
Ｅスペース
ｂ根部
１運搬車
１０荷台
１１側框
１２後框
１３ヒンジ
１４緊締金具
２棚枠
２０棚段
２１底部の枠材
２２枠柱
３支持台
３ａ取付枠
３ｂ台部
３０掛止金具
３１組付座板
３２枠杆
３３ブラケット
３４梁材
３５外側枠杆
３６軸
４補助支持装置
４０部材
４１連繋杆

【特許請求の範囲】
【請求項１】
育成した苗が収容されている苗箱を積載して運搬する運搬車の荷台に、育成した苗が収容されている苗箱を、略水平な姿勢として支承する支持台を、地表に立つ作業者の作業高さ位置に配位して装備せしめたことを特徴とする苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置。
【請求項２】
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台の側框の外面に装備せしめたことを特徴とする請求項１記載の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置。
【請求項３】
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台に載架した苗箱搬送用の棚枠の外面に装備せしめたことを特徴とする請求項１記載の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置。
【請求項４】
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台に対し装脱自在に装着し、かつ、苗箱支持用の台部を上向き回動により折り畳み自在とした請求項１記載の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置。
【請求項５】
苗箱を支承さす支持台を、運搬車の荷台の側框の外面側に装着し、側框には、該側框の外面側への回動を規制する補助支持装置を装備せしめることを特徴とする請求項１記載の苗の根部剥離作業用の苗箱支持装置。

【図１】