説明

苗の栽培装置

【課題】 育苗箱の設置や取り出し作業が容易になると共に、苗床の構築や苗床の平面積の増大も容易になり、また根切りも容易に行なうことができる苗の栽培装置を提供することにある。
【解決手段】 地面1に載置した周囲四辺の辺材5と、この辺材の各端を接続する平面L形で、かつ筒状体により形成したコーナー具4とで枠体2を構成し、周縁部が上記辺材の上面から外方にはみでて上記枠体内に防水シート6を敷設し、このシート上に波板7、ネット8を順次載置し、このネットの上下いずれかに根切り糸21を配置し、上記ネット上に育苗箱Aを載置して苗を栽培す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗作りの栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗代作りは、田畑の土壌を細かく砕土すると共に、給水しながら平均化して苗床を作る。
【0003】
勿論、苗床には、成育に必要な肥料が散布してある。
【0004】
次に、この苗床に育苗箱(例えば、特許文献1、特許文献2参照)を押し沈めて栽培する。
【0005】
その際、育苗箱の底面が苗床の表土に密着しなければならない。その理由は、苗床に育苗箱の底面が密着しないと育苗箱の土壌が乾燥して苗が育たない。
【0006】
【特許文献1】特公昭47−49246号公報
【特許文献2】意匠登録第384504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、育苗箱が硬質合成樹脂製のための苗代の表面がやわらかくなくてはならないが、非常にやわらかいと育苗箱に詰めてある土壌及び種籾が没落するおそれがある。
【0008】
さらに、苗床の表面が固いと、育苗箱と苗床の密着が難しく、密着させるには、育苗箱を苗床の表面よりある程度土中に埋める必要があるので、育苗箱を押え込む大変な労力が必要になる。
【0009】
また、育苗箱を苗床から離すとき、苗床の表土を乾かせて硬くし、苗の根と同時に育苗箱の下部の土を切り取らなければならない。
【0010】
上記の切り取りには、既知の苗取器が用いられる。
【0011】
この苗取器は、把持棒と、この把持棒の先端から突出する二叉杆と、この二叉杆の先端間に張設したワイヤとで構成され、育苗箱の両側外側に二叉杆の先を位置させると共に、ワイヤが苗床と育苗箱の底との間を通過するように把持部を引き寄せながら上述の根と土を切る。
【0012】
しかしながら、ワイヤに苗の根やワラくず、ゴミなどがからまってたまるので、スムーズに根切りすることができず多大な労力を必要とし、しかも育苗箱は一枚づつ力を入れて取るため能率も著しく低下する。
【0013】
すなわち、連続して育苗箱を取ることができない。特に土中に育苗箱を押し込んであるので、育苗箱の裏の空間に床土が入り込んでいる。
【0014】
この状態で上述の苗取器のワイヤにより根切りを行なっても、ワイヤによる育苗箱の底のそぎ取りによって喰い込んでいる土のそぎ取りができない。このため、取り出す育苗箱の重量が増し、搬出などの取り扱いが大変になると共に、重労働になって腰痛などを引き起こしやすい。
【0015】
勿論、上述の問題をなくするためには、現場で包丁などを用いて土の掻き落し作業が必要になる。
【0016】
上記の作業が不充分な場合、田植機を用いて植付けを行なうと、育苗箱の下面に存在する土と根とのからみなどにより育苗箱に対するスムーズな苗のつかみ取りができず欠株の発生原因にもなる。
【0017】
また、苗床の土が柔らかいと苗が土中に根を張っているため苗の根が切れずに育苗箱の持ち上げにともない苗が育苗箱から抜け、苗床に苗が残ることもあった。
【0018】
特に、田畑の一部に設けた苗床の周囲が泥状になっているので、長靴を着用しての作業になり、運動靴などの軽装では、作業が(育苗箱の取り出しなど)困難になり、また苗床の肥料が周囲の土壌に浸透し、かつ拡散して周囲の土壌が富栄養化する。
【0019】
すると、成育途上の稲に各種弊害(病虫害や稲の倒れなどの)が発生する問題があった。
【0020】
そこで、この発明の課題は、育苗箱の設置や取り出し作業が極めて容易になると共に、苗床の構築や、苗床の平面積の増大も容易になり、また根切りも容易に行なうことができる苗の栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するために、この発明は、地面に載置した周囲四辺の辺材と、この辺材の各端を接続する平面L形で、かつ筒状体により形成したコーナー具とで枠体を構成し、周縁部が上記辺材の上面から外方にはみでて上記枠体内に防水シートを敷設し、このシート上に波板、ネットを順次載置し、このネットの上下いずれかに根切り糸を配置し、上記ネット上に育苗箱を載置して苗を栽培する。
【0022】
また、前記辺材の途中に筒状の継ぎ足し具を配置して、この継ぎ足し具の両端から辺材の対向端を嵌入して、枠体の平面積の増加をはかる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、この発明の苗の栽培装置によれば、地面上に方形状の枠体を載置し、この枠体内の地面に敷いた防水シートの周縁部を枠体の各辺材の上面から外方にはみ出すようにして、供給した成育に必要な水(肥料の混入ずみ)の貯溜槽とするので、田畑の土壌を細かく細土すると共に、給水しながら平均化して苗床を作る著しく手間のかかる作業が不要になり、そして長靴を使用しなければ作業できない(泥状化による)不便が、運動靴の使用で可能になる。
【0024】
そして、貯溜槽を形成する防水シート上への肥料の混入ずみ水を供給するため、苗床のような浸透がなく、育苗箱の土壌や苗に対する水分や肥料の吸収が容易になって、成育に貢献すると共に、従来のように肥料の吸収(浸透)にともなう苗代が富栄養化になって各種弊害の発生する問題をなくすることができる。
【0025】
また、根切り糸の手繰り込みによって根を切断するので、手間のかかる苗取器の使用が不要になると共に、スムーズな育苗箱の取り出しができて、取り出しに多大な労力を要せず、その結果腰痛などを引き起こすこともない。
【0026】
そして、根切り糸による苗取器のような切り残しのない根切りにともない田植機の植付機構でのスムーズな苗のつかみ取り出しができて、株の欠落がない。
【0027】
さらに、ネットに育苗箱を載置する形式のため、育苗箱の底面に土が付着せず、田植機への載積の作業性が良好になる。
【0028】
また、波板の各溝状と敷設ネットとの間に空間ができるので、成育にともなう根が上記空間にスムーズに侵入して成育の妨げにならず、かつ根切り糸により切断した根は空間に充満して根の回収作業が容易になる。
【0029】
さらに、方形状の枠体も、コーナー具の筒状体に辺材の端を嵌入することにより組み立てることができると共に、辺材の長さの選択によって平面積を自由に決定することができ、また辺材の途中の継ぎ足し具の使用によって平面積を大きくすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0031】
この発明の第1の実施形態では、図1から図7に示すように、田畑やその他の農地、空地などの地面1に平面方形状の枠体2を載置する。
【0032】
上記の枠体2は、例えば図4及び図5に示すように、二本の筒状体3、3を平面L形に(一方の筒状体3の側面端部に他方の筒状体3の端面を当接して、当接部分のスポット溶接により固定する)配置して形成したコーナー具4と、このコーナー具4を四角に配置すると共に、各筒状体3、3に四辺の辺材5の端部を嵌入して形成する。勿論、限定されない。
【0033】
上記の辺材5としては、例えば木製の角材を所定の長さに切断して使用する。
【0034】
次に、枠体2内の地面に合成樹脂製などの防水シート6を敷くと共に、防水シート6の周縁各辺縁部分を辺材5の上面から外方にはみ出すように折り返して溢流防止部とする。
【0035】
その際、防水シート6の周縁を地面1に打ち込むアンカーピン(図示省略)によって止めてもよい。
【0036】
しかして、枠体2内の防水シート6上に波板7(例えば市販の合成樹脂製の)を、波板7の上にネット8(市販の合成樹脂製品などの)を敷設する。
【0037】
上記のネット8は、図示の場合、上下に二枚使用したが、限定されず、一枚であってもよい。
【0038】
その後に、ネット8上に周知の育苗箱Aを順次並べて載置する。
【0039】
上記の育苗箱Aは、図6及び図7に示すように、上下面が開放する枠体11と、この枠体11内を仕切る縦横の仕切板12とで構成され、仕切板12によって区劃された空間に土13を入れ、次いで播種aをまいてその後に覆土14する。
【0040】
上記土13及び覆土14は、育苗箱Aの移動の際抜け落ちないように押圧して詰め込んである。
【0041】
勿論、育苗箱Aは、図示の構成に限定されず、周知のポット形成のものであっても、或いは、四方を囲い、上面を開放した育苗箱であってもよい。
【0042】
また、育苗箱Aの下側には、手繰り込みによって根を切断する根切り糸21が設けてある。
【0043】
上記の根切り糸21は、図1に示すように平面コ字状にして、並べた片方育苗箱Aの外側にあり、根切り糸21の両端は、並べたもう片方の育苗箱Aの外側に位置させて、根切り糸21の両端をつかんで手繰り込む。
【0044】
すると、手繰り込む根切り糸21によつて育苗箱Aの底から下方にのびた根が切断される。
【0045】
なお、図示の場合、上下のネット8間に根切り糸21を介在したが、育苗箱Aとネット8との間に根切り糸21を配置してもよい。
【0046】
そして、枠体2内の防水シート6上には、成育に必要な水を(肥料を混入した)供給しておく。
【0047】
この供給した水の水位は、育苗箱Aの底が水没する程度にしてある。
【0048】
なお、下方にのびた根は、波板7の各溝条に向う。
【0049】
この発明の第2の実施形態では、図8及び図9に示すように、筒状の継ぎ足し具31を設けて、この継ぎ足し具31の両端から枠体2を形成する辺材5の端部を嵌入して、辺の全長を長く、すなわち、枠体2の平面積の増加を図る。
【0050】
上記継ぎ足し具31は、平行する二辺に限定されず、平行四辺に使用することもある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す一部切欠平面図
【図2】同上の縦断正面図
【図3】同要部を示す縦断拡大正面図
【図4】枠体の平面図
【図5】コーナー具の斜視図
【図6】育苗箱の斜視図
【図7】同一部切欠拡大正面図
【図8】第2の実施形態を示す平面図
【図9】継ぎ足し金具の斜視図
【符号の説明】
【0052】
A 育苗箱
a 播種
1 地面
2 枠体
3 筒状体
4 コーナー具
5 辺材
6 防水シート
7 波板
8 ネット
11 枠体
12 仕切板
13 土
14 覆土
21 根切り糸
31 継ぎ足し具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に載置した周囲四辺の辺材と、この辺材の各端を接続する平面L形で、かつ筒状体により形成したコーナー具とで枠体を構成し、周縁部が上記辺材の上面から外方にはみでて上記枠体内に防水シートを敷設し、このシート上に波板、ネットを順次載置し、このネットの上下いずれかに根切り糸を配置し、上記ネット上に育苗箱を載置したことを特徴とする苗の栽培装置。
【請求項2】
前記辺材の途中に筒状の継ぎ足し具を配置して、この継ぎ足し具の両端から辺材の対向端を嵌入したことを特徴とする請求項1に記載の苗の栽培装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate